再び身体を起こし、冷蔵庫にもたれ、精液でヌメる指先でローションの蓋をどうにか開け、左手に持った妖怪のようなホールの口の中に透明な粘液を垂らした。一瞬、人間の体液を餌として食べさせている錯覚に陥った。妖怪を飼ってる気分とでも言おうか…
実際、このホールに自分の性器を押しこむのはとてつもなく変な感じだった。黒いホールは無機質なただの道具だったが、このフェラホールは妙な生々しさがあって、その感じは僕の不得意な変な生命感を漂わせていた。今まで自分から他人の口に性器を押し込んだことなどない。これが無生物だとわかっていても、形状からくる視覚的効果で僕は挿入を躊躇させられている。その違和感は複雑な様相を帯びてきた。人にすら自分から入れたことがないのに、“ヒト”ではなく“妖怪”の口に中に自らの性器を挿入するのだ。元々自分が狂っているのを知っているのに、更に妖怪の口の中に自分の性器をわざわざ自分から挿れるという行為が、その狂気の更に常軌を逸したものに思えてくる。
狂うというのはどこまでも果てがないんだな…
狂気の上塗りをするというその場面で、僕はなにか遥か遠い景色を見ているような気分になった。ついでに自分の気も遠くなっていくようだった。それにつけ込むように頭の中が性感で痺れてきた。
「だ…め……」
身体を起こしたのにまた床に倒れ込みそうになっていく。疲労も相まって、平衡感覚がおかしい。でもムダな時間を浪費してる場合じゃない。倒れたらその体勢ですればいい。それに挿入を躊躇するのはビジュアルの問題だ。この妖怪を視界から除外すればいい。僕はそのまま抵抗せず、ドサッと横向きに床に倒れた。掴んだホールの入り口を手探りで自分の性器にあてがった。先っぽが歯に当たった。そのまま僕は一気にホールに性器を突き挿れた。
「んっ…!」
思ったより狭くて、黒いホールよりずっと柔らかい肉様の孔、その中にザラッとした舌、陰茎の根本に当たる歯の感覚…様々な感触がカスケードで襲ってくるその変な感覚のリレーは、今までされた何人かのフェラチオとはその誰のものとも全く違っていた。しかし当然ながらさっきの黒いホールの感覚とは全く異質で、僕の小脳はありがたいことに唐突な未知の刺激によってまた騙されかけていた。僕はゆっくりホールを引いてみた。
「んっは…」
動かすとまるで複数の何かに犯されているみたいに感じた。変だ…変になる…感覚の統一性が無くて意図も方向もバラバラで。
「んんっ…んっ…ん…あ…」
思わず声が上ずった。妖怪…というより、これは“キマイラ”だ。ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つギリシャ神話の怪物。ナマコのような管状のはらわたで先っぽを柔らかく飲み込まれ、獣のようなザラザラした舌で舐めとられ、薄い前歯が亀のように付け根に噛み付く。それぞれがなんの脈絡もなく自分の欲望だけを満たそうと、手前勝手に僕の性器を貪り続けているかのようだった。そして結局は全員が僕を喰らおうとしていた。
それがなにか僕の性器を切り取ってしまいたいという例の欲望に火をつけた。
「ああ……早く…食べろよ! さっさと噛み切って食べちゃったらいいんだ!」
自然に歯のついた口の部分を両手で鷲掴んで、僕は自分で自分を咀嚼させていた。噛み切らせたい…寺岡さんの半分本気の咀嚼力を思い出す。その力を掛けられるのか、このABS樹脂の歯に…
持ち方を変え、上下の咬合を合わせて一気に根本を噛み締めさせた。
「くぅ…!」
かなり食い込むが、やはり自分の股間に添えた手ではそれ以上は上手く力が入らない。どうしていいかわからず、焦燥のまま噛み込ませたまま腰を前後に動かすと、歯がゴリゴリと根本をしごく感覚に違う快感が膨れ上がってきた。たまらずにそのまま、歯で根本を削るように無茶苦茶にホールと腰を前後に動かし続けた。
「は…あっあっ…ああああっ!!」
皮膚が擦り剥けるような刺痛が走ったと思ったら、そのまま僕は発射していた。腰が抜けるような浮遊感が下半身に広がる。さっきの黒いホールとは違うイキ方。機械的な自動的にイッた感じではないが、インキュバスのような魔物によってたかって搾り取られた、この世のものではない虚脱感があった。
これでようやく終われる…
思ったより早くイッてしまったことに僕は少し感動していた。2本オナホールを用意していた先見性に、自分で自分を褒めたかった。中に挿れたまま、僕は横向きに寝た格好で少しの間ぐったりしていた。そして終わったことを確かめようとホールを抜こうとした。ホールの奥はどうやらウロになっていて先端を飲み込んでカリを締めている構造だった。奥に溜まった精液がそのウロから空気を完全に押し出してしまったらしく、中で先端が吸い付いて、片手ではなかなか抜けてくれない。仕方なく両手でホールをぎゅっと握りしめ、思い切り腹の方にそれを引き抜いた。
「んっあ…!」
ズルズルと引き抜くだけの間の、その短いはずのストロークの中で、キマイラを構成する3匹が名残惜しげに僕の性器にバラバラのあの感触で自分勝手にむしゃぶりついてきた。その瞬間僕のそれが、ビクン、と痙攣した。
「うそ……」
僕はまだループの中にいた。脱力感に苛まれてるのは身体だけ。性器だけがまるで自分のものではないみたいにドクドクと熱を帯びて屹立していた。
「いやだ…いや…だ…」
うわ言のように僕はいやだを繰り返していた。悪い夢のように醒めても醒めても夢の中から出られないような気がした。自分のモノに触りたくない。現実を受け入れたくない。僕は思わず手に持っていたホールをキツく握りしめた。ホールの中の粘液の音が、グチュッと言って耳に届いた。まるでキマイラが僕を嘲笑うかのように。悔しくて思わず叩きつけようと肘を曲げると、手に持ったホールの顔が視界に入った。肌色だけのはずの妖怪の顔の唇と歯が、ところどころ赤く染まっていた。
血だ。恐る恐る触りたくない自分の性器の根本に指を這わせた。
「つッ…」
ヒリッとした刺痛が走り、また性器がビクンと震えた。あの歯で皮膚が削れたのだろう。指を見ると、赤い液体が指先を染めていた。なぜか痛みが僕の股間を更に硬くしていた。
なにも考えたくない。落胆と絶望がのしかかってきているから。それでも終わらせなくちゃ僕がこれを始めた意味がない。考えちゃダメだ…考えたら死にたくなるだけ。僕はその血のついた妖怪をもう一度股間に充てがった。歯の感触が先っぽに当たる。ジン…と下半身が痺れて、その性感に僕は耐え切れず喘いだ。
「いやだ…いやだ…いっ…くふぅ…」
終わっていないことを受け入れたくないのは変わらなかった。それでも無理矢理性器を押し込んでいった。ザラッとした舌が先端から根本までを一気に舐め上げると、いやだという声すら自分の淫らな息遣いに飲み込まれてしまっていた。股が自然に大きく開き、背中が床に着いて、そのまま仰向けになっていた。考えなければ考えないほど、思考を放棄すればするほど、性感は膨らんでいった。腰が独りでにくねり、身体が反りかえって性器をホールに深々と突き挿れていった。ジュボジュボと自分がさっき放った精液がホールの中でいやらしい音を立てる。溺れていく。何に溺れているのかは理解できなかった。性感? 自暴自棄? それとも終わらせたい執念?
わからない。でも頭の中がかき回されるようにシナプスが一斉に発火する。股間から痺れが電撃のように脊髄を遡上していく。ホールを掴んでいる手はこの3匹の獣に支配されているのかも知れない。僕が動かしているんじゃないみたいに、なにかに貪られて好き勝手いじくりまわされているみたいだった。
時折根本の剥けて出血している皮膚に歯が当たる。その刺痛は以前にも僕を襲ったような気がする。思い出す気もないのに、おぼろげな記憶を勝手に脳が遡って行く。なんのためかもわからない。遡る途上でもそのヒリッとした痛みが僕の感覚神経を襲う。その度にイキそうになる。
傷…傷…血…裂けて…閉じて…開いて……誰…?
「…るぞ」
どこかで声がする。
「…おい…岡本…?」
バタンとドアが閉まる音がした。部屋にその人は入ってきた。
「おかも…と…あ?…どこだ?」
聞き慣れた声…黒いスーツ…大きな背中…その人はキッチンを振り向いた。
「あ…そこか。なにそれ」
ああ、傷を洗ったんだっけ…痛かったな、あれは…あれ…は…
振り向いた幸村さんの顔を見た途端、僕は傷の痛みの記憶を源まで上りきっていた。ナイフの傷、それを洗っている僕。
「あっ…あああっ!」
気が遠くなるほど全身が痺れたようになり、僕は耐え切れず叫んでいた。
《お久しぶりな近況》
再開お待たせいたしました。すべてこれ冬虫夏草なのです。冬虫夏草に始まり冬虫夏草により、冬虫夏草が私自身と言っても過言ではありませぬ。なぜならこの文章は冬虫夏草が書いているからなのです!
…と、初っ端から頭の煮えてる架空線ですが、まぁそれは通常運転なので置いといて、貧血も最近は少しづつ回復傾向ですが、夏の疲れと弱ってても休めない職場の多忙でお疲れモード、残った気力も体力も回復に回し、創造性にやる餌はない、とばかりに更新にも手がつけられなかったのですが、その間転んでもただでは起きられないとばかりに貧血に効くという安全なサプリ&漢方を探しているうちに行き着いたのが冬虫夏草。
夏が始まった頃は貧血で動けない時にチベットで高山病や滋養強壮に効く紅景天という漢方を飲んでいました。ロシア、北欧などの国々ではロディオラと言って、ヨーロッパでも持久力と仕事の生産性の増大や疲労とうつ病の治療に何世紀にもわたって使用されてきたという優れもの(貧血の動悸息切れに速攻で効きます)。それに更にブーストして体力に余裕を作り、更に赤血球だけじゃなく足りない白血球の免疫も上げてやろうと画策し、抗癌作用にも優れた冬虫夏草を選択。
これが届いて飲んだすぐからなんだかいきなりぐったり感が消えて、なんとなくPC開いてなんとなく僕止めの続きを書き始めてたんですよこれが。この1カ月弱くらい何もする気が起きなかったのに、1カプセルでいきなりこれってスゲー。
そして朝っぱらから再び冬虫夏草を飲み、ほぼ毎日続きを書けてます。スゲー冬虫夏草。この状態、冬虫夏草が書いてるってあながち嘘じゃないです。やはり「天然のバイアグラ」と言われるだけのことあります(そこかよ)。