僕の熱は、小島さん…隆の“どうしていいかわかんねぇ”に紛れてどこかに消えていった。母親が何故か僕を日常の静寂なる死に引き戻してくれるのと多分違う方法で、隆は僕の熱をうやむやにしてくれるように思えた。松田さんと違ってそこには“生かして殺す”ようなマッチポンプな仕組みがない。ちなみにマッチポンプというのは『マッチで自ら火事を起こして煽り、それを自らポンプで消す』というとても偽善的な行為のことだと隆が教えてくれた。
「…つまり松田はお前のことをわざわざ墓の中から殺すために起こしたくせに、自分がさもお前に必要な顔して抱いてたんだろ?」
「墓の中っていうのも自覚なかったですよ。起こされてから死んでたんだって認識出来たんですから」
「俺だってやろうと思えばそうできるんだぜ。実際やっちまいたくてウズウズするんだけどな」
「なんでやらないんですか? 今日はそれをするんだって言ってたのに」
結局、小島さんは僕を犯すこともなく、助手席に僕を乗せてどこへ行くともなく車を走らせていた。ちょっと間があってから、小島さんは僕の質問にぶっきらぼうに答えた。
「なんだろうな。ドSの部分の俺がお前に関しては萎えちまってるからな」
「ドSなんですか」
「わかるだろうが! まったく…お前のことベルトで殴ってんだぞ! 顔張り倒したの、もう忘れたんかい!」
小島さんは呆れたように大きな声で僕を罵倒した。
「サービスなのかなって。あんまり気持ちよくなかったですが」
「それだよ。そこがダメなんだよ。普通の子は確実に泣いたり喚いたり怯えたりするんだよ。それがたまらなくて勃つんだろーが」
「ああ、そうなんですか」
「ええ、そうなんですよ!」
「殺しちゃうの、ダメなんですか」
「殺したらお前みたいにうんともすんとも言わなくなるだろっての」
「僕みたいに…?」
「裕、お前死んでんだよ。死人はなにも言わないの。俺はね、苦しがってる反応が見たいの。やめて、とか、許して、とか言われてすんごい興奮すんの。死人は命乞いしねーだろ? わかった?」
「ええ、今わかりました。言ってくれなきゃわからないですよ」
「言わなきゃわかんない奴には用はないの!」
「それじゃあ僕に用はないですよね」
小島さんはそれを聞いてまた黙った。すごく不満そうな顔でへの字口をしている。なにか考えているみたいだった。そのうち大きく息を吐いて、口を開いた。
「なんなんだろうなぁ…フツーは見た目だけで入れ込むことねぇんだけどなぁ…多分アレだな…首絞めただけでイクって子、初めてだったからかもなぁ。調教しがいのあるドMの子だと思ったんだけどなぁー」
小島さんは赤信号でハンドルにもたれかかり、またタメ息をついた。小島さんはタメ息が多い。
「俺が間違ってた。俺が生きてるってだけで興味の外だときたもんだ。参るよ。俺がお前に惚れてもらうには、首でも吊んねぇとその可能性もねぇんだろ?」
なんか誰かが同じこと言ってた気がした。
「いずれ、お前をほんとに好きになってどうしようもなくなったヤツは、マジで首吊るかもな。それしか愛される目がねぇとしたら…そしたらお前、どうするよ? お前に愛されたくて、誰か自殺したらさ」
小島さんは僕を横目で見た。
「そしたらお前、その屍体見てさっきみたいに欲情して狂うのか?」
「僕なんか相手にそんな選択する人いますか?」
「俺が吊ったら?」
「ええ…?」
「俺がお前に本気で愛されたくて、お前の前で天井からぶらさがってたら?」
「そんな選択…するんですか?」
「例えばだよ。例えば」
「実際にその状況になってみないと…わからないと思います」
「当たり前なこと言ってんなよ。想像しろよ」
「想像ですか…あまりしたことがないんで」
「とことん普通じゃねぇな、お前は」
「ええ。それに愛されたいっていうのが実感としてよくわからないので、それも難問ですね」
「ああ…そっか…お前は永遠の片想い人間だったっけな。どうすればその歳でそんなに充足してられるんだろうな、おい」
「充足? なにが充足してるんですか?」
「愛だよ、愛情だよ。お前、よっぽど親から愛されて育ったのか? …いや、そんな育てられ方してたら愛し愛されるってこと十分知ってるはずだよな…」
そう言うと、小島さんはいきなり押し黙った。また、不意打ちのように考えたこともないことを言われて、僕もなんと答えていいかわからなかった。変な沈黙が漂った。
愛されて育つということの実態が感覚や実際の行為としてよくわからない。だいたい僕は親のことを、この前の怪我まではっきり意識してはいなかったと思う。あんなに長い会話をしたことがなかったのだ。母親のことはそれでもエピソードがいくつか記憶にある。それは母親が、松田さんや小島さんのように、僕に無理やり関わろうしたこともあった、ということだろう。でも、父親はどうだろう。仕事で忙しく、生活は小さい頃からすれ違っているので、ほとんど会話はない。僕に関わるということはない。僕も興味はない。
「お前の親ってどんな親なんだ? 裕、お前もしかして虐待とかされてんじゃねーのか?」
「いえ、虐待はないです」
「放置も立派な虐待だぞ」
「…僕のほうが親を放置してるのが状況としては正しいですかね」
「興味ないから?」
「はい。興味ないです…あ、正確には“興味なかった”ですね。母親とこの前手首切った時に初めて長く話したんですけど、認識が新たになりましたから」
「オヤジは?」
「ないです」
「なにが?」
「関係が」
「関係ないの?」
「向こうも僕も互いに興味ないっていう感じです。それで関係も自然になくなってるっていうか。顔は覚えてます。話をした記憶があまりないですね」
「向こう…って自分の父親のことな。向こうはねーわな。お前、親の名前も覚えてねーんじゃねぇよな?」
「さすがに学校の書類とかで書かされますから覚えました」
「なんかいやな覚え方だわ。で、なんの仕事してんの?」
「さあ、スーツ着て会社行ってるんで多分ビジネスマンじゃないでしょうか」
「おいおい、なんの仕事だって聞いてビジネスマンはないだろ」
「八百屋とか炭鉱労働者とかではないって意味で」
「わっかりにくいな」
「たしか…大手の商社だったんじゃなかったっけ…小学校の社会の宿題で父親の仕事についてってやった気がします」
それもはっきりと覚えてはいなかった。
「小さい頃ネグレクトとかされてたんじゃねーの? 今もかもしんないけど」
「ネグレクト…?」
「育児放棄」
「さあ…普通に生活してましたけど」
「お前のフツーは当てにならんわ。小さい頃の記憶っていつ頃からあるよ?」
「そうですね…いつからでしょう」
最古の記憶を思い出すとか、そもそも小さい頃の記憶を辿ったことがない。
「幼稚園とか保育園とかあるだろ」
「幼稚園は行ってました。制服を覚えてる」
「入園したのは?」
「さあ…でも園の庭で虫拾ってました」
「小学校は?」
「覚えてます。入学式とかも。なんで学校に行くのか不思議でした」
「ちゃんと飯とか食わせてもらってたのか?」
「はい。むしろあまり食べないので、食べろって母親によく言われてたかも」
「お前、いつから生きてるものに興味ないんだ?」
「え? ずっとです」
「ずっと、ねぇ」
「物心ついてから…って言うんですかね、こういうの。生きてるものに興味があったことを覚えてないです、逆に」
「虐待じゃねーのかなぁ。そうだよな…お前恐怖感ないもんな。叩かれてもとっさに顔とかかばわねぇしな」
「そういうもんなんですか。親から叩かれた記憶ないなぁ」
「逆に言えば、叩いてもくれなかった、てか? でもネグレクトの割にはお前身ぎれいだし、礼儀正しいよな…非常識だけど。そっか、科学博物館とか連れてってくれてるしな。ソフビの恐竜とか買ってもらってるしな。母親は普通の人なのかもしんねぇな」
「多分、僕がいろいろ興味がなくて、母親は困ったんじゃないですかね。友達できないとか心配されてたような気がします」
「とすると問題は父親だな」
なにが問題なのか、僕にはよくわからなかった。
「なにか問題でも?」
「またそれか。お前はなにかを疑問に感じることはないのかよ」
「さあ…」
「淋しいって思ったことくらいあるだろ。オヤジと遊びたいとか、ホントにただの一度も思わなかったのか?」
「ないです」
「生きてるから?」
「はい。そのとおりです」
「お前さ、ほんとにその親、お前の本当の親か?」
「ええ、多分」
「多分て…」
「言われたことないし、尋ねたことがないから可能性としてそれは理論的にはありますよね」
「一回聞いてみろ」
「なんでですか?」
「お前が変だからだよ!」
小島さんはイラッとしたみたいに即答した。また変だと言われる。松田さんにも言われた気がした。
「つまりホントの親に育てられないと僕みたいになるってことですかね」
「可能性はあるよな」
「変じゃ…まずいですかね? 僕、自分が変だと思ってなかったんで」
「…マズいってか、お前が不便だろ実際。これから生きてく上でよ」
「そうですか?」
「そうだろ」
思えばちょっと前まではまったく不便じゃなかった。こんな目に遭うとは予想もしていなかったのだ。
「…確かに今、不便ですね。自分が生きてる違和感で気が狂いそうになるなんて」
「生きてることを受け入れろよ。生まれたからにはそれが基本なんだよ」
「受け入れたらこの違和感はなくなるんでしょうか?」
「なくなるかもな」
「受け入れるって、どうやればいいんですか?」
「どう…やる?」
「受け入れるって、どういうことなんですか?」
小島さんはそれを聞くと黙り込んだ。考えているようだった。
沈黙の中で、車が広い道を急に左折した。細い道を辿って繁華街の端まで来ると、車はどこかのビルのパーキングに入った。
「降りろ」
「あ、はい」
小島さんはパーキングの奥の自動ドアに向かった。僕について来いと言った。
自動ドアの中はフロアがあって、壁にパネルがあり、番号と部屋の写真が縦横に整然と並んでいた。部屋番号の隣に値段が書いてあり、その隣に四角い押しボタンが付いていた。小島さんはその一個のボタンを押した。プラスチックの長いバーのついた鍵が下の取り出し口から出てきた。ホテルの鍵みたいだった。小島さんは僕の肩を押して、近くのエレベータに乗せた。
部屋の中には広いベッドがあった。素通しの大きなガラスの向こうにはバスルームがあった。大きなソファがあった。小島さんは僕をそこに座らせた。
「いわゆるラブホってやつだ。松田と来たことあるか?」
「いいえ。初めてです」
「なんで来たのか、とか訊かねぇの?」
「訊いたほうがいいですか?」
「いいんじゃねーか? お前のためにも」
「あ、はい。じゃ…なんで来たんですか?」
「もう…なんだかな。あのな、お前に、生きてることを受け入れさせに来た」
「そうなんですか」
「どうすればいいかわかんねぇしな。お前は生きてる違和感をエロいこと以外感じねぇんだろ? じゃあ、エロいことするしかねぇんじゃね?」
「ええ、まあ」
「成功するかしないかはわかんねーけど。それに俺まだおまえのこと1回しか抱いてないし」
「ああ、はい」
小島さんは僕の隣にドスンと腰掛けた。そしてズボンの後ろポケットからスマホを出した。耐衝撃性の壊れにくそうなゴツいスマホ。壊れにくいというのは魅力がないに等しい。小島さんはしばらく画面を片手でいじっていたが、そのうちウンウンとうなずいて、僕をチラッと見た。
「イケるか、これ」
そう言うと、僕の目の前に5インチのスマホの画面が差し出された。最初に目に飛び込んできたのは灰色の背景の中の真っ赤に染まったシャツだった。
「あああっ!」
僕は思わず片手で叫んだ口を覆っていた。カラーだ…赤い…全身赤い…潰れてる…アスファルトだけが灰色で、そこに飛び散った浮き上がるような赤…血液…割れた頭蓋骨…赤い…赤い…真っ赤…真っ赤…
「くあああっ…!!」
僕は口を押さえたままソファから前のめりに落ちていた。跪いて床に手をついて崩れそうな身体を支える。
「ビンゴか」
小島さんはゆっくり僕の身体に覆いかぶさってきた。
「なんでですか! なんで!」
「これしかねぇだろ…お前が生きてることわかるの、これだけなんだろ?」
そう言うと画面が再度、うずくまった僕の目の前に差し込まれた。血の赤が視界を埋め尽くす。血の海で崩れた飛び込みの轢死体…でももう目を離すことが出来ない。事故じゃない…これは事故じゃない!
「やめてええええっ!!」
後ろ抱きに羽交い締めにされた。画面を見せられながら空いた手で股間を握られる。
「うくぅっ!」
「お前がやめてって言うのが聞きたかったよ」
耳元で囁かれる。なぜだろう、耳が熱い。
「いやだ…いやなんです…この…身体が…いや…だ…」
喘ぎながら僕は小島さんに訴えた。
「…いやって言え…もっと…もっと言えよ」
「嫌だ…僕はこんなの嫌だあああっ!!」
「でも逃げられねぇだろ? ほら…もっと見ろよ。大好きなんだろ? 良いんだろ?」
「やめてええええぇ!! 僕を返してよ!! 元に戻してよ!! 小島さん…僕を…屍体のまんま抱いてくれるって…言ったじゃない…」
「小島…じゃねぇだろ…ほら…じゃあ俺に懇願しろよ…泣きながら俺に許しを乞えよ…裕…お前の泣く顔が見たいんだよ…」
小島さんの声が興奮で震えてる。僕を助けてくれる小島さんはどこかに消えた。
「お願いです…お願いだから落として…もういやだ…どうにかしてください…さっきみたいに…ねぇ…た…隆……隆!!」
隆は僕の耳に口を付けて息を吹き込んだ。僕の身体が勝手にビクンとはねた。
「裕…裕…すげぇ良いよ…お前…俺の名前覚えたんだ…えらいぞ…」
身体が変わっている。こんなところで感じなかった。勝手に震えてる肩や膝を認めたくない。熱が上がっていく。僕がこの世でただひとつ嫌いだと思っているものが僕の中にある。そのたったひとつの嫌悪だけを頼りに隆は僕を責める。だがそれに気づいてしまった以上、隆はそれをとことん貪るだろう。僕を苦しませるために。それでも僕は隆の見せる画像から目を離せない。その快感に僕は手錠のようなもので繋がれている気がした。苦痛と快楽がせめぎ合ってる。2つは同じ質量を持っているかのように、互いを叩き合いながら凌駕することもなく絡みあう。同じように画像の生み出す陶酔と嫌悪もまた、同じものから発して2つに僕を分け合う。僕は2つに裂かれる。
「お前の身体…感じやすくなったな」
簡単に下半身を剥き出しにされる。隆にも容易にわかるほど僕の皮膚はこの世の感覚を感受するようになっていた。それは“他人”というものが現れて、その騒音を聞いているうちにシグナルを読み取れるようになっていることと関係しているような気がした。太ももの内側に滑らされた手の平に僕はわなないた。
「くうっ!」
「松田のせいでもねぇ。俺のせいでもねぇよ。お前の中にはこんなのが眠ってた。それだけだ」
「起こさなくても…僕はそのままで…良かった…!」
「そんな保証はねぇんだよ。この世ってのはそんな自分の好きにはなんねーんだよ。こうやって思いもかけないとこで自分の望みもしないことが起きるんだ。鉄の塊みてぇに炉に放り込まれて、ボコボコに叩かれて勝手に形を変えられてく。自分がどう抗おうとな」
そう言うと隆は片手で僕の手首の包帯を外し始めた。赤黒い短い傷口が顕わになった。
「小さいけど…深そうな傷だな。だけどお前を死なせはしない。そんな楽させねぇぞ。俺は嫌いなものに縛り付けられて悶え苦しむお前を嬲りたい。それをお前はやめられなくなるんだ。時間の問題だぜ…そんな身体になるまでな…」
隆はソファの上に画像を映したスマホを投げた。そしてソファに座りながら僕を引きずり上げ、自分の股間に僕の顔を押し付けた。ズボンの中のパンパンに張り詰めたものが僕の頬にグリグリと押し当てられた。彼のズボンからベルトが引きぬかれ、膝まで引き下ろされると、赤黒い隆のペニスが弾け出してきた。
「口開けろ」
言われるままに口を開けると、顎を掴まれて大きく無理やり開かされた。すぐにそこに固いペニスが押し込まれた。
「噛むなよ」
僕は初めて人の性器を口で咥えた。僕の中にある熱と同じモノが外側から押し込まれるのが、肛門を犯されるよりもはっきりと伝わってきた。大きなものがすぐに喉を塞いだ。息が苦しい。後頭部を押さえつけられて、僕は吐き気を催した。
「うぐっ」
「吐きそうか」
亀頭が唇まで引き戻される。息が上がる。
「ちゃんとしゃぶれよ」
しゃぶれと言われてもどうしていいかわからない。
「お前初めてか」
入れられたまま訊かれて口では答えられないので、目で頷く。
「そうだな…松田は気を失ってるのしか勃たねーしな」
また奥まで詰め込まれた。
「んんっ…」
「これすると大抵は息が出来なくて苦しがる。でもお前には逆効果だな」
気道と鼻腔の開口部が同時に固いもので塞がれて、僕は窒息しそうになった。数秒で肺の中の酸素が二酸化炭素に変わっていく。30秒…たった30秒で血液がこの酸素を使い果たしたらチアノーゼが始まる。痙攣と脱糞、そしてその先には…仮死…
期待をわざと裏切るように、隆は僕の顔を股間から引き剥がした。
「なっ…なんで…」
「ああ、お前の好きなことしちまうとこだったわ」
「なんでやめる…の…」
「欲しいか」
「やめないで…やめないでよ…!」
「やめないでなんて言われてもそそんねーしな」
小島さんは死神ともアイルランド兵士とも違うモードになっていた。生かしも殺しもしないのは、まるで捕虜を拷問する将校のようだった。問題は僕がなにを自白したら許されるのかということで、僕にはそれがなにかわからなかった。
「さあ、入れてやるぞ」
「うぐっ!」
また、固いモノを深く押し込まれる。またさっきのように大きな亀頭が気道を全部塞ぐ。5秒…10秒…頭を押さえつけられて、吐きそうになっても緩めることは出来ない。メガネが顔からずれる。でも、30秒、もう少しで酸欠が始まる。指先がかすかにしびれるような感覚がした。
抜かないで欲しい。もうこのまま終わらせて欲しい。そう思うと、僕の両手がいつの間にか隆の腰に縋りついていた。その途端、隆は僕の頭をつかみ僕の身体をまた引き剥がした。両手が虚しく空をかすめた。
「なんで…!」
僕は隆の顔を見上げた。いつも助けてくれたのに。これは生きることを受け入れる儀式なのか? でも、死の静寂を当たり前に享受していた頃、僕は死のうなどとは一瞬たりとも思わなかった。だから、そこに戻るだけで良いんだ。これじゃ隆は佳彦と同じだ。僕を屍体のまま抱くなんて、僕をおびき出す餌に過ぎないじゃないか。見上げた顔は笑っていた。欲しい物をちらつかせて取り上げるのを繰り返す隆は、とても楽しそうだった。
「もう…助けては…くれないんですね…」
なにかわからない悲しみが僕を襲った。涙が不意に溢れてきた。
「裕…お前、泣けるのか…」
驚いたように隆が呟いた。どういう意味かわからなかったけど、僕は泣きながら頷いた。こんな短い間に2回も泣くなんて、どうかしている。すると隆が顔からずれて落ちかけた僕のメガネを外した。
「くわえろ…早く!」
「もう嫌です…」
「早く!」
頬を掴んで無理やり僕の口を開かせると、隆は僕の口に再び自分のモノを突き刺した。さっきと違って僕の口の中で激しく喉の奥まで何度も突き入れ始めた。
「ああ…いいよ…いい…裕…」
涙と吐き気が止まらない。苦しくて隆のシャツの端を掴んだ。飲み込めなかった唾液が口の端から溢れる。
「良い…たまんねぇよ…裕…あああっ! 出るっ!!」
僕の喉の奥で大量の精液が弾けた。一番奥まで亀頭が突き入れられ、精液を飲み込めなくて思わずむせた。
「ぐふっ…ぐほ…」
「ああ…いい…」
その音を聞いて、隆は喘ぎながらまた口の中をペニスでかき回した。固いものはほとんど緩んでいなくて、興奮しきったまま僕の口の中で痙攣していた。
ご閲覧ありがとうございます。