ジリリリリ……
大きめにセットした目覚ましの音で目を覚ます。
眠気がこびりついたままの頭で冷蔵庫へ向かい、コンビニで買ったサンドイッチとインスタントコーヒーの朝食を済ませる。
親からは自炊しろと言われているが、そんな贅沢をする暇はとてもない。
今日からまた会社に泊まり込みだと思うと憂鬱になる。
研究員の仕事は面白いし、給料にも不満は無いが、人員不足は何とかして欲しいものだ。
「行ってきます」
誰もいない部屋に別れを告げ、運動不足解消のためロードバイクで出勤。
30分かけて会社に到着し、セキュリティカードを使って職場に入る。
ロッカーで研究用の白衣に着替え、同僚と雑談をしながらエレベーターに乗り地下3階へ。
そこにある地下研究室が今の職場だ。
出入りは厳重に管理され、X線検査装置と生体認証をパスしなければ入ることすら許されない。
機密を守るために必要なのは解るが、毎度毎度なのはうんざりする。
「お早うございます」
挨拶をしながら自席に座ると、さっそく上司が声をかけてきた。
『彼女』を研究した成果をお偉方に報告するため、早くレポートを提出しろとのことだ。
言われなくても解っている、という言葉をぐっと飲み込み、本日の実験に使う資料を用意し仕事場へと向かう。
頑丈な扉と鉄格子に隔たれた檻の中に、『彼女』はいた。
「元気にしていたかい、ヴィーナスちゃん」
声をかけると、金属製の椅子に拘束されていた彼女がビクッと反応する。
年の頃は高校生くらいだろうか、長い髪に大きなリボンが印象的な美少女だ。
橙色を基調としたセーラー服風の戦闘服を着ていて、丈の短いスカートからは長い脚が伸びている。
被検体番号42号、通称セーラーヴィーナス。
1か月前、妖魔と呼ばれる魔物と交戦し消耗した所を傭兵部隊が捕獲した、わが社の貴重な実験材料だ。
「むむーっ、むむーっ」
牢屋に入るなりセーラーヴィーナスは喚き始めた。
だがクツワを噛まされているため、声にならない。
両手は肘掛に、両脚は開き気味にしてガッチリと固定されている。
首や腹部も締め付けている金属製の拘束具は、セーラー戦士といえども壊せない頑丈なものだ。
彼女がこの椅子から逃れる事は、絶対にできない。
「さあヴィーナスちゃん、今日も実験の協力を頼むよ」
椅子の背後にある機械からコードを摘まむ。
そして先端の吸盤を、セーラーヴィーナスの肌へと付けていく。
肩、腕、腹、太腿、そして胸。
股布の下にも吸盤と、失禁用のカップを取り付ける。
羞恥を感じたのか、クツワを咥えたまま悶える彼女の姿はとてもカワイイ。
個人的な撮影を禁じられているのが実に残念だ。
「それではヴィーナスちゃん、そろそろ実験開始だ、今日はレベル3から始めるよ」
その声に彼女はビクリと反応する。
瞳には恐怖の色が浮かんでいた。
パチンと音を立ててスイッチを入れると、機械が唸り声をあげ、彼女の肌へ電気が流れた。
「むぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!! んんんんんんんん!!」
がくがくと、手足の拘束具を引き千切らんばかりの勢いで痙攣するセーラーヴィーナス。
常人なら即座に感電死する電圧だが、彼女の華奢な身体は見事にそれを受け止めている。
エナジーと呼ばれる不思議な力が、彼女を守っているおかげだ。
この未知のエネルギーを解明するために、会社は莫大な資金を投じている。
結果を出さないわけにはいかなかった。
「ヴィーナスちゃん、レベル6まで一気に上げるよ」
「むっ、むぐぅぅぅぅぅゥゥゥゥゥゥ!!」
これ以上ないというほど大きく目を見開くセーラーヴィーナス。
長い髪はバチバチと音を立てて青白い火花を散らし、吸盤を取り付けられた部分からは白い煙が上がっている。
口の端には白い泡が浮かび、涎が肌に落ちる度にジュワッと音を立てて蒸発した。
普通なら瞬時に黒焦げにある電圧だ。
しかし彼女の肌には数か所の軽い火傷があるだけで、筋肉や内臓も損傷こそあるものの、生命活動はしっかりと維持されている。
「凄いよヴィーナスちゃん、やはり君は最高の研究材料だ」
手や足の指がでたらめに動かして悶える彼女に、掛け値なしの誉め言葉を贈る。
まったく素晴らしい力としか言いようが無い。
このエナジーの秘密を解明し、実用化することが出来れば、医療、科学、産業と言ったあらゆる分野が劇的に進歩するだろう。
人類の偉大な進歩のため、計器に目を光らせ慎重に実験データを記録する。
「よく頑張ったねヴィーナスちゃん、いったん休憩だよ」
そう言って機械のスイッチを切ると、バチバチッと激しい火花がセーラーヴィーナスの全身を走った。
そこで電気が止まり、彼女は数度痙攣してから大きく息をつく。
「むぐっ……んぅっ……むふぅっ……」
荒く苦しそうな声がセーラーヴィーナスから漏れる。
大きく呼吸をしたいのに、クツワのせいでうまく息ができないようだ。
呼吸困難となれば、彼女の回復状況について正確なデータを記録できないかもしれない。
そのため特別にクツワを外すことにした。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
解放された口で大きく息を付くセーラーヴィーナス。
相当に苦しいのだろう、全身からは脂汗が流れ、口元から流れる涎を止めることが出来ない。
だが計器を見ると、身体の修復は既に始まっていることが確認できた。
内臓や筋肉の損傷はエナジーにより回復し、血圧や心拍数もみるみる正常値へと戻ってく。
「大した回復力だ、本当に君の身体はどうなっているんだい?」
「あっ、いやぁっ!」
胸を触ると同時にセーラーヴィーナスが悲鳴を上げる。
発育の良い胸は柔らかくて張りもあり、なかなかの揉み心地だ。
陰部を触るとビクビクと可愛い反応を見せる。
なにしろこちらは偉大な実験のため、恋人を作る暇も無く働いているのだ。
この程度の役得が無ければ、労働に耐えることなどできるものではない。
「も、もうやめて……許して……」
楽しみの最中に、セーラーヴィーナスが涙を浮かべて哀願する。
まったく美少女戦士らしくない情けない言葉だ。
このエナジーの力が解明されれば、人類はより豊かになり、何千万、何億という人が救われるかもしれない。
それを理解して、少しくらいは我慢して欲しいものである。
科学の発展に犠牲はつきもの、これは仕方がない事なのだ。
「そろそろ回復したようだね、じゃあ次の実験だよ」
機械についているボタンを押すと、パカッと天井が開いた。
ロボットアームに吊りされられて降りてきたのは、ガトリング砲。
銃口は当然、椅子に拘束されたセーラーヴィーナスに向けられ、狙いを外さぬようオートで照準が合わされる。
「い、いやぁっ! いやぁぁっ!」
悲鳴と同時に、彼女にクツワをするのを忘れたことに気が付く。
だが今さら嵌めなおすのも面倒なので、このまま実験を続行する。
どうせ舌を噛んた程度では死なないのだ、たまには美少女戦士の悲鳴を聞くのも悪くはない。
計器が作動しているのを確認すると、もう一度ボタンを押した。
「キャァァァァァァァァァァッ!!」
毎分4000発の勢いでガトリング砲が火を噴いた。
タングステン合金弾が、セーラーヴィーナスの全身へ容赦なく降り注ぐ。
「イヤァァァッ! ヤ、ヤメテェェェェッ!!」
弾丸の嵐に悶え苦しむセーラーヴィーナス。
だが恐るべきことに、これほどまで撃ち続けても彼女の身体を貫通する弾丸は一つも無い。
これもエナジーの作り出す力のおかげだ。
彼女の身体には薄いバリアのような物が張られており、それが防弾チョッキのような役割をして致命傷を防いでいるのだ。
だがそれにも限度があるようで、彼女の受けるダメージは少しずつ大きくなる。
エナジーが彼女の身体を守る限界を見計らい、ガトリング砲の射撃を止めた。
「がっ……あぁ……うぅ……ぅぁ……」
弾丸の嵐が終わったセーラーヴィーナスは、小さく呻くとそのまま白目をむいて失神した。
首の拘束具のせいで項垂れることもできず、こちらを向いたまま、だらしなく口元から涎を垂らしている。
「おやおや、みっともない姿だ、ヴィーナスの名前が笑っているぞ」
失笑しつつ、実験のデータを資料に書き込む。
そして上に報告するためのレポートを作成する。
これだけのデータがそろえば、エナジーの秘密を解析するのはもうすぐだ。
この成果には、お偉方もさぞ喜ぶに違いない。
「これは次のボーナスが楽しみだなあ。最近は親孝行をしていないし、親父とお袋には、旅行でもプレゼントしてやるか」
喜ぶ両親の顔を思い浮かべ、フフッと小さく笑う。
この仕事は確かにキツイ。
だが知的好奇心を満たし、毎日を充実させてくれる。
そんな仕事ができる自分はきっと幸運なのだろう、そんな事を考えながら、レポートを作る手を早めた。