大和の国、盗賊団おたふく隊の根城であるからくり屋敷。
その広大な敷地の片隅には、おたふく隊に逆らう者を尋問する拷問蔵がある。
そして今日もこの場所で、潜入に失敗したくの一への苛烈な拷問が行われていた。
「くぅっ、ううっ……」
薄暗い部屋の中。
後ろ手に縛られ柱に括り付けられた忍装束の女が、苦しげな呼吸を繰り返す。
三角形の木を並べた板の上に正座させされた女の太股には、重たい二枚の平石が積まれていた。
「女、確かヤエとか申したな。なにが狙いだ、どうして我らを探っている?」
力士の姿をした男が、石抱きの拷問を受けるくの一の顎を指でクイッと上げる。
おたふく隊の首領、若乃福である。
「何を言っているのか全然わからないわ……」
「嘘を申すな!」
怒声を上げた弟の貴乃福が、三枚目の石を持ち上げた。
そして乱暴にヤエの脚の上に積む。
「ぐぅっ!!」
堪えきれぬ呻きを漏らすヤエ。
全身は苦痛の汗でびっしょりと濡れている。
「ほぅ、そんなに暑いか、なら少し涼しくしてやろう」
嘲るように笑いながら、若乃福がヤエの服に手をかけた。
上肢の装束を剥ぐと、ヤエの両胸の果実がぽろりと露になる。
「なかなか形の良い胸をしているではないか」
貴乃福が太い指でヤエの豊かな乳房を揉みしだく。
「くの一は女も武器にすると聞く。今までこの乳でどれだけの男を喜ばせて来たのだ?」
はっはっはっと、拷問蔵に力士兄弟の嘲笑が響く。
しかしヤエは果敢にも兄弟を睨みつけた。
「なかなかいい度胸だ」
貴乃福が、四枚目の石をヤエの前に積んだ。
「ギャァァァァァァ!!」
甲高い悲鳴をあげるヤエ。
痛みに息がつまり、瞳から涙がこぼれる。
そして必死に苦痛から逃れようと足掻き始めた。
「ほれ、暴れるな。せっかく積んだ石が崩れてしまうではないか」
若乃福はヤエの脚の上に乗せた石を縄で縛る。
そしてその縄をヤエの首に掛けた。
これでどんなにヤエが暴れても、積まれた石から逃れることはできなくなった。
力士兄弟は、両胸を露にして石抱きの責めに悶えるくの一の様子を眺る。
それはヤエにとっては、苦痛と恥辱に耐える地獄のような時間であった。
顎先からは汗が滴り、重石の上に小さな水溜りができる。
責める者、耐える者ともに無言のまま、時はゆっくりと残酷に流れて行く。
「貴様の正体は、だいたい想像はついている」
ヤエが浅く息をつき、こらえ切れぬ呻きを漏らし始めた頃を見計らい、若乃福が詰問を再開した。
「大方、江戸の秘密特捜忍者隊に所属するくの一であろう。今の公儀を見よ、あれが命を賭けるほどの存在と思うか?」
「……………」
ヤエは無言で答えた。
「さっさと白状して楽になれ、今なら命だけは助けてやらんことも無い。せっかく美しく生まれたのだ、こんな所で命を散らせたくも無かろう」
しかし貴乃福の言葉にも、ヤエは無反応であった。
「仕方ないな」
若乃福が抱き石に足が掛け、重石を揺さぶる。
「ギャァァァァァァ!!」
眼を見開き、悲声を張り上げるヤエ。
緑の髪を振り乱し、上体をよじって暴れ始める。
しかし縄で幾重にも縛られた身体は、その程度で自由になるはずもない。
「た……たすけ……て……」
遂にヤエの頬から涙が流れ落ちた。
「ならば吐け、吐くまでこの苦しみは続くぞ」
若乃福がヤエの左胸の乳首を摘むと、くいっと捻る。
「ヒィィィッ!!」
「いい声を出せるではないか」
情けない悲鳴をあげるヤエに、貴乃福が嘲笑を浴びせる。
「吐かんのならそれでも良いぞ、貴様のような美女を責めるのは、我々には最高の愉悦だからな」
ヤエは貴乃福に何か言い返そうとした。
しかし苦痛を堪えるだけで精一杯の身体は、言葉を発することも許さない。
「では我々をせいぜい楽しませてくれ、苦しみ抜いて死ぬまでな」
若乃福は竹刀を手にヤエの背後に立った。
顔を真っ青にしたヤエは、歯を食いしばり来るべき激痛に備える。
「あうッ!」
肩を打つ鋭い痛みに、ヤエは呻いた。
続いて貴乃福が容赦なく、背中を竹刀で打ち据える。
「うッ! ああッ! あぐっ! ひいっ!」
重石で下腿を責められ、更に上肢を竹刀の打撃で責められたヤエが悲鳴をあげ続ける。
「吐け、吐かぬかっ!」
若乃福が怒声をあげて竹刀を振り下ろす。
「うぐッ!」
乳房を打たれ、ヤエは息を詰まらせた。
そしてがっくりと頭を垂れる。
太股の上に乗せられた石の上に、だらりと涎を垂らしながら、ヤエは失神していた。
この日のヤエへの拷問は、これで終了した。
しかし力士兄弟の拷問は、次の日も、その次の日も、更にその次の日も行われた。
その度に拷問蔵には、苦痛に呻き、そして鳴き声が響き渡った。
その地獄の日々は、ゴエモンという名の義賊がおたふく隊の基地に攻め込み、力士兄弟を倒すまで続いたのである。