性癖上はMでも作品の中の男は嫌がってたり苦しんでる方が良いという考え、あると思います!
尚、本作は軽度ですが残虐描写があります。加えて、同じく軽度ですが人を不快にさせる恐れのある表現があります(汚い系です)。ご理解の程よろしくお願いします。
この作品は「pixiv」と「ノクターンノベルズ」にも掲載しています。
俺は清(きよし)、大学2年の夏、もう一人暮らしも大学生活も慣れたもんだ。
だが俺には悩みがある。もう悩み続けて1年が経つ・・・・・・
今日は土曜日、本来なら気分も上々であるところ、俺は一人部屋で頭を抱え続けていた・・・・
俺の部屋はワンルームだ。学生の身分故に金銭上の制約があるものの、軽く潔癖な気がある俺としては築浅物件以外住みたくなかった。
結果的に選択肢もアクセス悪めのワンルームとなったが、築浅物件に安く住めて、部屋に文句は無い。部屋には。
ピンポーン、と呼び鈴が鳴る。玄関の扉を開けると、
「やっほー!清くん、遊びに来たよ♪」
俺の彼女、藍(あい)が軽く手を振って挨拶をする。
彼女は黒髪のロングに少しウェーブが掛かったヘアスタイルで、優しい二重の目をした美人だ。
俺は県内の中堅にも満たない私立大学に通っているが、彼女は同じ県内とは言え日本でも名の通った国立大学に通う才女。
賢い彼女は家庭教師や教育系のYoutube活動で自身の学費や生活費さえも賄っている。そんな彼女との出会いはネットゲームでのオフ会だった。
半袖Tシャツにデニム地のホットパンツ、ローカットのスニーカーという夏らしい装いで、
シンプルな恰好だが張りのある胸元やくびれのある腰回り、むっちりとした足など、身長160cm半ばくらいの扇情的な体つきを目立たせている。
大学の友達からも散々煽られるほどのスペックと理想的なルックスを持った彼女だが、その彼女こそ俺の悩みの種なのだ。
「ああ、上がって」
俺はこの時点で不安を殺しながら言う。
「失礼しまーす♪」
スニーカーを脱いで彼女が廊下に上がる。
「わー涼しいー」
と彼女は廊下まで漏れ出す冷房を感じながら奥の部屋へ向かう。
すると早速目についてしまった。彼女は靴下が汚いのだ。
彼女の靴下は白のクルーソックスだったが、足裏の部分がくっきりと黒ずんでいた。
染み出すようにその周辺部分も薄く黒ずんでおり、毎度のことでも内心げえっと思ってしまう。
しかもこの物件は駅から遠く一定距離を歩く必要があるためか、歩く彼女の良い匂いに交じって汗臭さも鼻を突いた。
こういう事情もあり、俺の方から家に行くよ、と提案するも彼女は「私の部屋は汚いから・・・」と断るのだった。
まあ部屋が汚いのは想像に難くは無いが、潔癖気味な俺はせめて彼氏とはいえ他人の部屋に上がる時ぐらい・・・と思ってしまう。
「やっぱり綺麗だねー」
と部屋に入るなり彼女は言う。
ワンルームではあるが俺の部屋は広めだ。中央にソファーとローテーブル、そこから壁に面した位置のテレビを鑑賞できるようになっており、
入り口から見て右にはベッドと寝具を配置している。几帳面な俺は片付けの頻度も多い。
さて、もう午後の二時半を回っている。俺は目の前の"悩み"の所為でまだ何も食べていなかった。
「俺は昼食べてないけど外暑いしピザでも頼むよ。藍ちゃんはお昼食べた?」
藍は俺の一つ上だが、さん付けは他人行儀だからやめて欲しいな、と言われちゃん付けに落ち着いている。
「食べたー。でも何か軽くつまめる物欲しいかも」
と答えが返ってきた。
「分かった。ゆっくりしていって」
と内心では思っても無いことを俺は言う。
廊下側に出てスマートフォンから電話注文をする、自分用に一人前サイズのピザとポテトが一つになったセット、彼女用にはポテト単品を注文した。
部屋に戻ると、目に入った光景を見て早速心の中で天を仰いだ。
彼女がローテーブルに座りテレビを見ていたのだ。
このローテーブルは某有名木材家具店で買ったもので、そこそこ奮発したものである。造りはいいが本来用途と違う使われ方をされたローテーブルは彼女の体重を受けてギシギシ歪んでいる。
俺はやんわりと
「あのさ、ソファーで一緒に見ない?」
というも
「えーでも清くんのテレビ小さいし」
と失礼な返答が得られるのみで、彼女はその場を動く気配を見せなかった。
いや、テレビの大きさに対する言及なぞもはや失礼とも思わない(相対的に)。それよりもローテーブルに尻を乗せる行為だ。
この部屋にテーブルはこれしかなく、しかも俺がこのローテーブルで食事を取っているのは彼女も何度も目にしているはずである。
そのローテーブルにデニム越しとはいえ平気で尻を乗せられる神経が俺には理解できなかった。
もっと強く言うか迷う。だが情けないことに以前彼女が癇癪を起したときインドア派だった俺はたいした抵抗も出来ず一方的に殴られた過去がある。
諦めた俺はスマートフォンやテレビを見て時間を過ごした。チラチラとローテーブルに乗ったままの彼女のホットパンツが目に入ってしまう。
またピンポーン、と呼び鈴が鳴る。ピザの宅配だろう。
「来たみたい、出てくるね」
と俺が言うと
「はーい」
と彼女は返事をする。
代金を渡し、セットとポテト単品が入った箱を受け取ると、部屋に戻った。
ポテトを彼女に渡すと、
「ありがとー♡」
と笑顔で言う。やっぱり可愛い。相変わらずローテーブルから退く気は無さそうだが。
そして自分用のセットを手に俺はソファーに座る。俺は僅かな期待を込めて言う。
「あのー、食べるからさ・・・・」
「うん?どうぞ?」
と気にした風も無く返された。確かに俺も美人な彼女のとは言えつい先ほどまでお尻が乗っていたローテーブルで食べる気にはなれないが・・・
俺は片手で箱を保持しながらもう片手でピザを食う。自分でも驚くほど慣れた物で手を汚すこともなく食べ進める。
するとテレビの画面が次々に切り替わる。彼女がチャンネルを回し始めたようだ。
(食べながらなのに器用なもんだな・・・・)
程度にしか最初は思わなかったが、斜め後ろからその理由を目に入れてしまいまたも絶望する。
彼女はリモコンを床に置き、足で操作していたのだ。
左足を横から添えながら、右足の親指でボタンを操作する。残りの右足指もリモコンの側面を抑える形だ。
可愛い彼女が綺麗な黒髪を揺らしながら、細長いリモコンを靴下で器用に、楽しそうに操作する。
まるで足コキのようだった。それでも嫌悪感が勝り興奮するどころか萎えた。なんで人様の所有物でここまで勝手なことが出来るのか?・・・・
心が削られつつも8切れ中7切れを食べた頃だった。時刻は午後3時55分、ちょうど番組がひと段落したようで、彼女はローテーブルから立ち上がった。
彼女の体重から解放されたローテーブルがギッシィィと音を立て俺の疲弊した精神に追撃を与える。
彼女は
「ちょっと足が落ち着かないから靴下脱ぐね♡」
と俺の許可も待たずに靴下を脱ぎ始めながら言った。そして
「ほいっ♡」
と言いながらテレビの方を見たまま脱いだ靴下を後ろに放り投げた。
パサッ
それは最悪の結果を生んだ。片方の靴下が俺の顔に当たり、一瞬黒ずんだ靴下の裏、足指のあたりに視界を埋め尽くされたと思ったら、
汗のつんとした生臭い匂いと履き古された靴下のカビっぽい匂いが嗅覚を襲った。
靴下はすぐに俺の太ももに落ちたが、一瞬とは言え何が起こったかをハッキリ理解出来た俺は強烈な不快感を感じた。
そして箱に残った最後のピザの方を見ると、そこにもう片方の靴下が落ちていた。しかもよりにもよって足裏にあたる最も黒ずんで汚れた部分がピザに面している。
あまりの出来事に動揺していると、彼女も気付いたようで
「あっ、ごめんね♡でもまだ食べられるよね♡」
と言うとそれぞれの靴下をつまみローテーブルにそのまま置いた。ピザに乗った靴下は付着したチーズの一部を細長く引っ張り、ローテーブルと周囲の床を汚した。
「涼しくて気持ちいい~♡」
と裸足になった彼女は人の気も知らないで言う。潔癖気味の俺は最後に残るこのピザは絶対に食べたくなかった。いやこんなの俺じゃなくても誰だって食べたくないに決まってる。
俺は僅か数秒程度の間に普段珍しいぐらい頭をフル回転させ、このピザを食べずに処分する方法を考えた。
彼女は変なところで勘がいい、中途半端なごまかしでバレたらまた癇癪を起されてしまう。
目を盗んでゴミ箱に捨てるか?いや、几帳面さが災いしてつい最近空にしたばかりだ。ここに捨てるのはごまかしが効かない。
トイレに流す?いやいやいや、ピザを持ちながらトイレに行くなんて不自然すぎる。そもそも廊下に戻ること自体おかしい。
わざとピザを落として理由を作った上で捨てたらどうか?これは賭けすぎる。勘のいい彼女に見破られ詰問されたら最悪もっと酷い目に合う。
結局俺は、残されたピザを我慢して食べることにした。くるっと丸め、(俺にとっては)相当の覚悟を決めて一口で口に入れる。
当然咀嚼もしたくなかったが、一口が大きいため何回かはせざるを得なかった。
正直言って味は対して変わらない。だが感情の面では別だ。
彼女の汚い靴下が乗ったまさにそのピザという事実を知っている俺は首筋からぞわっとする感覚が広がった。
そしてそれを飲み込む。感情でそのピザを受け入れられないせいか、胃からぐぐっとせりあがるような感覚が喉まで来て、それをなんとか堪える。喉の奥に焼けたような感覚が残る。
この2分も経たないぐらいの葛藤とここまでの積み重ねで潔癖気味の俺は精神的ダメージが蓄積し既に半泣きになっていた。
「わーふわふわ~♡」
そして彼女の声が聞こえる。妙に高い位置から聞こえた。目を向けてみると、
なんと彼女は俺の枕の上に裸足で立っていた。
俺はいつでも寝られるように朝起きてすぐにベッドメイクを済ませている。今日もピシッと綺麗に寝床の準備をした。
だが彼女は当然のように俺の掛け布団を踏み荒らし、こともあろうに俺が頭を乗せる枕の上に躊躇なく立っていたのだ。
俺は震える声で
「なななな、何、何してるの?」
となんとか言葉を紡ぎだす。すると彼女は
「え~?ちょっと汗かいちゃってて♡」
と悪びれた様子も無く言った。
俺が頭を乗せて寝るはずの枕を、足ふきマットにしていたのだ。
俺にはとても長い時間に思えたが、彼女が靴下を脱いでからほとんど時間が経っていない。
彼女は枕に汗を擦りつけるように、ねじるようにに枕を踏み続け、
溜まりやすい足指の汗は、その足指で枕の端部を掴んで横にスライドさせるように拭き取った。
この光景を見た俺は堪えられずついに泣き出してしまった。
彼女も俺の異変に気付いたようで
「え?何?」
というとベッドから降り、
「どうしたの?」
と聞いて来た。彼女は
「何か辛いことでもあった?話聞くよ?」
と言いながら、枕をベッドの端に寄せ、それをクッションにしながらベッドに腰かけいった。
今度は頭を乗せる枕を尻の下敷きにする行為。これを見た俺はさらに泣き声を大きくしてしまう。
「ご、ごめん・・やっぱり俺は無理・・・」
俺は下を向き泣きながら言う。顔が崩れて彼女と目を合わせることが出来なかった。
ズタボロになった感情をかろうじて支えつつ言葉を振り絞る。
「やっぱり俺には無理なんだ。テーブルに座ったり足でリモコン弄ったり枕を踏んだりするの」
それを聞くと彼女は、
「ごめんね・・・知らないうちに不愉快な思いさせちゃったみたいで・・・・」
「私、どうしたらいいかな?」
と聞いて来た。
もう付き合って1年だ。ここに至るまで、やんわりとも、はっきりとも、再三に渡って、何度も何度も振る舞いを改善するようにお願いしてきた。
だから今回は意を決して言った。
「別れよう。藍ちゃんにはきっと他にい-------」
と言いかけた瞬間、側頭部に強烈な衝撃を受けソファーから弾き出された。
頭部に引っ張られるように体も態勢を崩し、床に尻もちをつきながらソファーの方を見た。
彼女が足を突き出している。俺の側頭部を蹴飛ばしたようだ。明らかに怒った表情は俺を委縮させた。
「何それ。私はこんなにも清くんのことが好きなのに」
嘘では無いであろうことは知っていた。稼ぎがあるとは言え記念日にはいつも高価でセンスのいいブランド品をくれたし、
一方の貧乏学生の俺が安価なプレゼントしか渡せなくてもとても嬉しそうにしてくれた。
チェーン店での食事でも喜んでくれたし、浅い経験ばかりの俺の話を楽しそうに聞いてくれた。
英語や数学等の勉強も、相手からすればあまりに低レベルであろうところから丁寧に、優しく教えてくれた。
俺が情報系の資格に受かった時はまるで自分のことのように喜んでくれ、遠慮する俺を入ったこともない洒落た鉄板焼きのお店で祝ってくれた。
まあ、彼女のインターン用履歴書にその2ランク上の資格が記載されているのを見てしまったりもしたが・・・・。
ほんの一瞬の間にまるで走馬灯のように彼女との出来事が思い出され、
(俺、情けないよな・・・・)
と感傷に耽り、目の前の脅威から意識が外れているところに
バチンッ!
と、尻もちをついたままの俺の顔面に彼女の足裏が叩きつけられた。
刺すような痛さに一気に現実に引き戻される。俺は驚きと恐怖で尻もちをついたままシャカシャカと不格好に彼女から距離を取ろうとする。
彼女はゆっくりとした足取りで歩いて俺の方に向かってくる。俺は尻もちをついた状態のまま、部屋の入口近くの壁に背中が触れ、追い込まれる形となった。
「私と別れて、どうするつもりなの?」
彼女は聞く。泣きながら俺は
「お互い価値観の合う----」
と言い終わらないうちにまた彼女の足裏を顔に受けた。壁に挟まれ後頭部にも激痛が走る。鼻から出血が始まったようで彼女が足を引くとき踵のあたりに血が付着しているのが見えた。
「お互いって何?」
言いながら彼女は蹴る。泣いている俺の顔を躊躇無く。
「他の女でも作るつもりなの?」
また彼女は蹴る。今度はこめかみのあたりからも出血が始まったのか、目の上あたりからつーっと液体が垂れるような感覚を感じた。
「私以外の女を彼女にするなんて許さないから。他の女が寄らないようにその顔グチャグチャにしてあげる。」
と言いながら彼女は足の甲で頬を強打するように蹴ったり、足裏を押し当て捻るように顔を歪ませたり、とにかく顔への攻撃を続ける。
蹴られ、踏みにじられながら俺はなんとか言葉を発する。
「ごめっグッ・・・別れなッ・・・別れないかっ・・・らっ・・・」
蹴られる度に言葉が遮られたがなんとか言えた。彼女は
「本当!?」
「良かった~♡」
というと先ほどの恐ろしく威圧感のあった表情からぱあっと可愛らしい笑顔に戻った。
先ほどまでの態度も恐怖ではあったがこの切り替えの早さも不気味で別種の恐怖を感じた。
「あっ大変。清くん顔が」
というと彼女は高そうな光沢感のあるハンカチを取り出ししゃがむと、血と涙で汚れ、腫れ上がった俺の顔を拭き始めた。
「ごめんなさい・・・私清くんとどうしても別れたくなくって取り乱しちゃって・・・」
「でも別れないって言ってくれて良かった♡私はどんな顔になっても清くんのこと、愛してるからね♡」
彼女はこういうが俺は恐ろしさでもう愛情を感じる余裕なんか無かった。
そんなに愛しているならなんでいつまでも振る舞いを直してくれないのか。なんで恋人の顔を平気で何度も足蹴に出来るのか。
性別がどうの頭の良さがどうのという問題ではない。彼女の価値観や感情の起伏は完全に俺の理解を超えていた。
しかし、そんな疑問を口にだして言えるはずもない。今後も続く絶望を想像し鬱屈とした気分になっていると、俺の顔を拭き終えた彼女が立ち上がって言った。
「ちょっと脚が疲れちゃったかも」
俺は内心で「は?」と思った。散々人の顔を蹴りつけた直後のこの台詞にである。
そして近くの壁に掛けていた俺のカバンを二つひょいひょいっと取り上げると、
壁にもたれ掛かり、足を広げて床に座ったままの俺の足の間に、それらのカバンが二つ重なるように無造作に落とす。
そしてなんと、その二つの重なったカバンに右足を乗せて言った。
「マッサージして欲しいな~」
あまりの常識外れな振る舞いに理解が遅れるが、どうやら俺のカバンを高さを稼ぐための踏み台に使ったらしい。
重なった上の方のカバン、足が乗っているカバンは入学祝いに親から買ってもらった本革製の上等な物だ。
先ほどまで俺を蹴った血で汚れた右足。もっとも血が付着しているであろう足の裏が伏せた状態でも分かるほどべっとりと汚れている。それをさも当然かのように俺のカバンに乗せる。
怯んだ俺は言葉を返せずにいると・・・・
「ね~え♡マッサージ、お願い♡」
と彼女は言う。さっきまでの出来事で枯れたと思っていた涙がまたこみ上げ始める。俺はそれを堪えて言う。
「いや、マッサージとかしたことないし・・・・」
というと
「いいよ~清くんがやってくれるなら疲れも取れるから♡」
と間髪入れずに返された。やるしかないらしい。
やり方は全く分からないが、それらしい感じでホットパンツの付け根のあたりからほぐすように揉み始める。
「あっ気持ちいい~♡」
どうやら彼女には満足頂けているようだが、俺は先ほどまで自分をボコボコにした脚をマッサージしている現実にうちひしがれた。
徐々に下へ向かって揉んでいくにつれて俺の顔を歪ませ、血で汚れたままの足先がチラチラ見えてしまう。
彼女の綺麗な足に触れる、なんて喜びは無かった。早く終わりたかった。カバンから足をどけて欲しかった。
しかし手を抜こうものならまた地獄が始まるかもしれない。相応の時間をかけてやるしかない。
そして脛や踝のあたり、この辺りは硬くて揉みようも無かったがそれらしくさすると、
「ありがと~清くん上手いね~♡」
と彼女が言った。満足したようで何よりだ。
「じゃあ、次は左足もお願いね♡」
と続けて彼女は言う。俺は嫌だという感情を出来るだけ表に出さないように頷くと、
彼女は右足を浮かす。
小さくペリペリッと音がしたと思うと、俺のカバンの表面に乾いた血液で彼女の足跡がクッキリ残った。うっすら指紋が分かるぐらいはっきりしている。
ズタボロどころか粉微塵、灰になりかけている俺の精神状態なぞ知る由もなく、彼女は左足を俺のカバンに乗せるのだった。
「うん、なんか脚が軽くなった感じ!」
俺に気を使ったつもりで言ってるのだろうか、しかしようやく終わったという安堵感はあった。
「じゃあ家庭教師があるから、シャワー借りるね」
と彼女が言うので快諾した。
シャワーを貸すのは歓迎だ。なんなら毎回来てすぐに案内したいくらいだ。そして家庭教師があると言う。
今日はもうゆっくりしよう・・・とほっとしながら考えていた。
彼女は身支度を整える。彼女は化粧道具、肌着やTシャツの替え等を持参してきていた。
いや、これは俺が仕向けたことだ。ただでさえ遊びに来る頻度が高いのに同棲なんてことになったら命に係わる。その最初の防衛線、"部屋に私物を置かせない事"から俺は手を抜かない。
毛織製品にわざとそれらしい穴を開けて「虫食いになるから・・・・」と言ったり、
空いたスペースに彼女が言及すると「そこに観葉植物を置くつもりでさ」と言って帳尻合わせのために本当に置いたり、
部屋に備え付けの棚など見えないスペースの収納はそれらしい日用品で埋めてわざと空きを作らないようにしていた。
彼女はホットパンツ以外をすべて着替えて、準備を整えると。
「じゃ、行ってくるね♡」
と彼女は手を振る。俺は玄関先で見送る。やっぱり彼女は見てくれは可愛い。それでも内心は行って"来ないで"くれだった。
俺は部屋に戻り、ソファーに寝転がる。彼女が荒らしたベッドをまたベッドメイクしなおす体力は残っていなかった。
天井を見ながら考え事を始める。あの恰好で家庭教師か・・・と見送った彼女の姿を思い出す。
生徒と間違いがあったりしないのだろうか、いや出来れば間違いがあって欲しい。でも最近は異性の家庭教師はつけないって話も・・・・
と意味のない思案をしていると、そのまま眠りに落ちた。
「ただいま~」
と、自分の家でないのに清の部屋に戻った藍は言う。家庭教師を終えた藍は清の部屋に戻ってきたのだ。
藍は合鍵を持っていた。勿論同棲を避ける本人の許可を得て貰ったものではない。隙を見て型を取り複製したものだ。
呼び鈴に応答が無い場合はこうして勝手に入るのは実は一度や二度ではない。だが清がいないと見るや用が無いのですぐ退室していたことから、
合鍵の存在について今日まで清が知ることは無かった。
「清くん?」
呼びかけるも反応が無い。部屋に入って見渡すと、清がソファで熟睡しているのが目に入った。
「ふふっ可愛い♡」
寝たままの清の額に軽くキスをする。今晩は寝ているとは言え清が居ることが確認できた以上すぐ帰るつもりは無かった。
「起きるまでテレビでも見ようかなあ」
藍は言うと、床に落ちたリモコンに目をやる。
当然のようにリモコンの電源ボタンを踏み付けようとした時、清の言葉を思い出した。
「やっぱり俺には無理なんだ。テーブルに座ったり足でリモコン弄ったり枕を踏んだりするの」
藍はここに至っても何が無理なのか理解していなかったが、とりあえず床のリモコンを拾い、手で電源ボタンを押し、そのままリモコンをローテーブルに置いた。
そしてローテーブルのリモコンの隣に自然と腰掛けようとした時、また先ほどの言葉を思い出す。
思い留まった藍は清が寝ているソファの方へ向かう。
俺、清は部屋に帰った。すると俺の彼女、藍が部屋中を掃除しピカピカに磨き上げ俺を出迎えてくれた。
「おかえりなさい♡」
俺は彼女に礼を言う。今日の晩飯を作ってくれるらしい。期待を込めて待つ。
出てきたのはステーキだった。盛り付けは添え物に至るまで完璧だ。
ステーキを切り分け、口に運ぶ所作は気品に溢れており、見ているだけでうっとりするほどだった。
「藍ちゃん、今度さ、テーブルマナー教えてよ」
「うん?いいよ~」
まさに非の打ちどころが無い彼女だ。俺は幸せにつつまれていると、突然周囲の光景が歪み、溺れるような息苦しさを覚えた。
なんで?洪水?体に重圧を感じる。水圧?もうそんなに水位が?沈むような感覚を感じる。そして目が覚めた。
「あっ起きたね♡おはよう♡」
と彼女の声が聞こえる。視界はホットパンツに覆われていた。
「えいっ」
というとまた視界が暗くなる。彼女が俺の上に座っているのだ。
ソファーの上なので後頭部はやわらかいが、デニム地は硬く顔が痛い。息もしずらい。
「ごめんね清くん。私反省したんだ。」
「男の子って皆お尻大好きだよね♡今度から清くんのお顔に座ってあげるから好きなだけ味わっていいよ♡」
とんでもなく飛躍した一言に一撃で頭の処理容量は限界に達した。美人で可愛く、スタイルに優れた藍は今までも男子からの嫌らしい視線を受けてきたのであろうことは分かる。
まあそこから男が大体女のお尻が好き等と考えても概ね間違ってはいない。だがどこから俺の顔に"座ってあげる"などと言う発言が飛び出すのか。
テレビの音声が聞こえる。ローテーブルの件か?まさか俺がそこに言及したことを「ローテーブルに座るくらいなら俺に座れ」と曲解している?
「ほらほら、ど~お?」
と彼女はお尻を揺らす。デニム地が擦れて痛いし、いよいよ息が苦しくなってきた。
俺は彼女のお尻を持ち上げようとすると同時に下半身を暴れさせて苦しさを示した。
「あっごめん・・・・」
分かってくれたか、とほっとしたのも束の間、
「デニム越しじゃ痛かったよね♡」
というとホットパンツを脱いで下半身は下着になった。白地にレースの付いた見るからに上等なパンツだ。
俺はというとまた絶望の淵に戻される。
「や、やめて・・・」
というと彼女は
「もう、遠慮しなくていいよ♡」
といって、下着も脱ぎ始めた。彼女の(見る分には)白く綺麗なお尻が露わになる。
「じゃ、座るね♡」
「やめモゴッ・・」
と否定の言葉を紡ぐ隙も与えられず顔の上に座られる。
不幸中の幸いで先ほど家を出る前にシャワーを浴びているからか、不快な臭いはあまりしなかった。
だがなんで人の顔に、生のお尻で、ためらいもなく座ることが出来るのか。俺には分からなかった。
そりゃそういう性的嗜好をもった人が居ることは知っている。
しかし相手の同意も得ず、排泄物を出すような不浄な場所を相手の顔面に押し付けるなど、そういった一部の人以外に対しては失礼極まりない。
俺なんか彼女が金を積んで頼んできたとしても断るだろうぐらいの行為。それを彼女は平然と行っている。
直接お尻で座られると密着が強く、俺はまたすぐに息苦しくなった。
「ンンンンンンンンーッ!」
俺は彼女のお尻の下で叫び、また腕でお尻を持ち上げようとし、下半身を暴れさせる。
「ふふっ♡そんなに必死に触って、気に入ってくれたみたいね♡」
とまたしても彼女はズレた発言をする。俺はもう死ぬかもしれないんだ。彼女のお尻の下で。
意識が遠くなっていく。まるで無防備になった意識に彼女が直接座っているかのようだった。
彼女のお尻を受け沈められるかのように、ゆっくり感覚が押し下げられ、遠ざかっていく。
夢で見た理想の彼女は8割ぐらいは今も俺の顔面に座り俺を苦しめ続ける彼女と変わらない。
だがほんの2割ほどの違い。品性と性格が俺にとっての天国と地獄を分けた。
俺を愛してくれるなら美人じゃなくても、可愛くなくても良かった。頭が悪くても良いし貧乏でも良かった。
なんでその致命的な所に欠点を作ったのか。そしてなんでよりにもよって俺と引き合わせたのか。
抵抗する術が無くなり思考も回らなくなった俺は神かこの世か、そういう何かを憎んだ。
そして俺は意識を失った。
30秒ほど経過し、清の動きが無くなったことに気が付いた藍はハッと腰を上げる。
お尻の下の清は白目を向いて口をあんぐりと開けていた。
「清くん!?」
藍は血の気が引いていくのを感じながら清の様子を確認する。
清は張り付いたような苦悶の表情を浮かべながらも呼吸はしていた。
「良かった~無事見たいだね」
無事かはさておき、呼吸から生きていることを確認出来た藍は大きく息を吐きながら肩を撫でおろす。
先ほどの死の可能性がよぎった焦りから心臓はまだバクバクしている。
すると藍は白目を向いている清のまぶたを手で閉じてやり、下着とホットパンツを履きなおした。
自身のカバンから肌触りの良いブランケットを取り出す。冷房が効きすぎている時の調節用だ。清の家に遊びに来るときは長居を前提に準備が良い。
ブランケットを清の体を覆うように伸ばし、あんぐりと開いた口を隠すように掛けた。
安らかに眠っている(ように繕われた)清の頭を撫でながら藍は言った。
「これからもよろしくね♡清くん♡」
清の地獄はまだ終わらない。