今回は、skebでの依頼品です。
内容はこちら。
https://skeb.jp/@aikosyaHoKoku/works/28
バイトの採用が決まった女性に届いた首輪。
それをつけるとなんとトナカイになってしまい、そのままクリスマスのお仕事をするはめに!?


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【リク作品】サンタさんに聞いてみよう!Vol.24『トナカイってどうしてるの?』

 ホッホッホ、皆さん元気かな? ワシはサンタクロースじゃ!

 今日も皆さんから届いた質問に、しっかりと答えていくぞい。

 さてさて……今日の質問はこちらじゃ!

『サンタさんはソリをトナカイさんに引かせていますが、どうやってトナカイさんを集めているのですか?』

 いい質問じゃな。

 確かに、ワシらサンタのソリを引いてもらうのには沢山のトナカイが必要じゃ。

 しかも空を飛んでもらわんといかんし、細かい方向修正も大事じゃな。

 近頃は飛行機なんかも多いからのう……トナカイ自身の判断力も重要になるわけでな……

 さてさて、では!

 ワシらがどのようにこの問題を解決しているのか、見てみるとしようかの!

 

「あ、来た来た! うふふ、選考通ったんだ!」

 この女性——お名前は仮名じゃが、恵理子さんとしておこうかの。

 サンタ協会から送られてきた小包に、ウキウキしておるのう。

 実は恵理子さん、選ばれたラッキーレディなんじゃ。

「でも、不思議よねぇ。友達にも教えてあげたのに、だーれも同じページ見つけられないって言ってたし……私も履歴から行ったけど、もう無かったのよね」

 ワシらのお仕事のお手伝いバイトは、誰でもできるわけじゃないんじゃ。

 厳正なる審査で選ばれた人にのみ、特別な荷物をお届けしておるぞ。

 ああ、これは普通に宅配便じゃ。がっかりしたかの?

「まあ、よかったわー。まだ彼氏もいないから、クリスマスイブって暇なのよね。それにお給料もなかなかいいみたいだし、ラッキーラッキー!」

 そう、バイトじゃからな。

 しっかりと出すものは出しとるんじゃぞ。

 ん、なんじゃって?

 今日はトナカイの話だろ、なんで人間の話をしとるのかって?

 ホッホッホ、慌ててはいかんぞぉ。

 まだまだ、お話は始まったばかりなんじゃからな!

 おっと、恵理子さんが箱を開け始めたわい。

 どれどれ……?

「あ、お手紙……ふんふん、クリスマス本番の前に研修があります。24日は指定の場所・時間にて、同梱の首輪をおつけください……はいはい、お昼にあそこね。え、首輪?」

 どんなお仕事でも、大事なのは研修じゃ。

 この仕事は特殊じゃからな、研修だけでも半日くらいかかってしまうんじゃ。

 もちろん、その研修も時給が出るぞい。

 ホッホッホ、すごいじゃろ?

 おやおや、恵理子さん……首輪を見て首を傾げとるわい。

「首輪って……ちょっと大きすぎない? これじゃ、ブカブカじゃないのよ」

 早速つけとるのう、感心感心。

 じゃが、まだその時ではないから何も起きないんじゃ。

 何事も、タイミングが肝要ちゅうわけじゃな。

「そういえば、どう言う仕事なんだろう? 誰でもできるって書いていたけど、よく読んで無かったわ……まあ、誰でもできるなら大丈夫か!」

 うむうむ、恵理子さんはなかなか楽観的じゃな。

 ワシらのお眼鏡にかなうのもわかるわい!

 このように、応募者から厳選した人たちに贈り物をしていくわけじゃ。

 何が起きるのか、何をするのか……不安じゃけど、ワクワクもする。

 まさにクリスマスの時の子供、そのものじゃのう!

 では時間を進めて、当日じゃ!

「えーっと、ここよね? ふうん、誰もいないみたいだけど……」

 よしよし、時間通りじゃな。

 えらいぞぉ、子供に夢を贈るならまずそう言う所からじゃ!

「まあいいわ、首輪をつけるのよね。だ、誰も見てない、わよね!?」

 キョロキョロと辺りを見て、ブカブカの首輪をつける。

 さあ、サプライズじゃ!

 首輪が光り、いきなり吹雪のような光景が恵理子さんを覆っていくのじゃ。

「きゃっ、な、何!?」

 屋内だったはずなのに、激しい雪で体が冷える感覚。

「ちょ、ちょっと、どうなって、ブオッ、ブオッ!?」

 何やら、声の調子が変なようじゃな?

 首輪がいつの間にやらぴったりのようじゃし、頭が重いようじゃ。

 ホッホッホ、別に首輪が小さくなったわけじゃないぞ。

 恵理子さんの首が太くなって、首輪にフィットしてしまったんじゃ!

「ブォオ、ォオオオオ!?」

 さて、さて。彼女の顔も伸びてきて、いい感じじゃなぁ。

 寒いところでも呼吸しやすいような鼻になっていって、ツノも出てきとる。

「ォオオオン!?」

 おおっと、転んでしまったようじゃが……大丈夫!

 手、手というか前足じゃな?

 前足がしっかりと地面を踏み締めたおかげで、ちゃんと立っていられるぞい。

 彼女はもう気づいとるかも知らんが、寒さだってへっちゃらじゃ!

 なんてったって、なかなかご立派な毛皮が体を覆っとるからのう。

 そう、もうお分かりかな?

 あの首輪を指定されたタイミングでつけると……トナカイになるんじゃよ!

 これなら、人間としての知性を持ったトナカイになってくれるからの、こちらも楽なんじゃ。

 ただ、今度は違う問題が起こるわけじゃな。

「ブォ、ブォオ!?」

 おっとっと、四つ足になったのが理解できとらんようじゃのう。

 フラフラ、フラフラと安定しておらん。

 さあそろそろ、しっかりとトナカイになってもらった事じゃし研修開始じゃ!

 吹雪が晴れたと思ったら、恵理子さんは沢山のトナカイに囲まれておったんじゃ。

 ホッホッホ、もちろん……みんな、人間が変身したトナカイじゃ!

「トナカイの皆さん、こんにちは。今年も子供の夢のため、お願いいたしますぞ」

「ォオオ、ブォッ!?」

 びっくりしとるようじゃが、トナカイになっとるから鳴き声しか出せないんじゃ。

 万が一子供に見られた時、トナカイが喋ったらびっくりしてしまうからのう。

 仕方ないといえば、仕方ないんじゃな。

「さて、初めての方はソリの引き方の研修がありますので、あちらにお願いしますじゃ」

「ブォ、ォオオオン!?」

 キョロキョロしておる恵理子さんに、研修役のサンタがやってきたのう。

「よしよし、怖がらなくても大丈夫じゃぞ。しっかり仕事してくれたら、戻れるからの!」

「ブォ、ブォオオオ!?」

 始まった以上は、中断はできないんじゃ。

 いきなり動物になって、動物扱いされる。

 なかなかショッキングかも知らんが、ワシらもそれは百も承知。

 それを乗り越えられるような逸材だけが、このお仕事に巡り会えるわけなんじゃな。

 さてさて、マンツーマン……マンツートナカイというべきかの? の指導、開始じゃ!

 数頭のトナカイが、専属のサンタの指示通りに動き始める。

 とはいうものの、いきなりできるわけもないわい。

 ワシも何度かやったことがあるんじゃが、結構バランスが難しくてのお。

 ほれ、トナカイは頭もツノも大きいじゃろ?

 前のめりになって、転んでしまうんじゃな。

 おっとっと、恵理子さん、言っている側からこけてしもうたな。

 怪我は……うむうむ、頑丈な肉体だから無かったみたいじゃな。

 ううむ、しかしのう、状況が状況だけにゲンナリしているようじゃ。

 しっかりと仕事をできるのかのう、不安じゃな。

 ん、おお?

 何やら、横にいたトナカイが……鳴き声で、恵理子さんに呼びかけとるみたいじゃぞ。

 トナカイ同士はちゃんと意思疎通ができるんじゃ。

 今回は特別に、何を喋っているのか聞こえるようにしてみるぞ、ほれ!

「大丈夫かい、君?」

「あ、う、うん、大丈夫。でも、これ、どうなってるのよぉ……」

「わ、君、女の子なの!? 僕も全然分からないんだけど、やるしかないみたいだからさ」

「言ってたもんねぇ、仕事終わらないと帰れないって。あーあ、こんなんじゃ暇してた方がよかったわ」

「まあまあ、せっかくなんだし頑張ろうよ。僕も不安だったんだけど、トナカイ仲間がいて安心したっていうか」

「トナカイ仲間って……そうね、そっかぁ、私、トナカイなんだもんねぇ」

「そうそう、僕だってトナカイ、らしいからさぁ。あー、僕、トナカイになってる? 君、トナカイに見えるけど」

「うんうん、トナカイよ。動物園にいそう」

「ひどいな〜、それだったら君だって、動物園にいそうだよ?」

「うふふ、あー、変なの! なんだろ、これって、夢だったりする?」

「どうなんだろ、僕もよくわかんないけど……で、大丈夫? 立てるかい?」

「あ、うん、立てる立てる。でも、なんか上手く歩けないのよ……フラフラしちゃうっていうか」

「あー、分かる分かる。なんだろ、人間の感覚だと頭が下がっちゃうから、上見る感じでさ」

「こう?」

「あー、そうそう。それで歩いてみて?」

「わ、わ、わ、なんか、いい感じ、あっ、きゃっ!?」

「おっ、おっとぉ、平気!?」

 おお、素晴らしいのう。

 同じ境遇だからか、トナカイ同士で会話が弾んでいるようじゃ。

 どうやら、男性のトナカイのようじゃが……優しく、恵理子さんに教えているようじゃぞ。

 もちろん研修担当のサンタもトナカイ経験はあるんじゃがな、今まさになっている方がわかることもあるってもんじゃ。

 ふらついた恵理子さんの体を、優しく支えてあげているようじゃ!

「ね、ねぇ、慣れるまで、寄っかかって歩いてもいい?」

「オッケーオッケー、僕はだいぶ慣れてきたから、いけると思う」

 二頭のトナカイが、息を合わせて歩いていっとる。

 うんうん、いいコンビじゃ!

 流石にこの二人だけでソリを引けるわけではないんじゃが、一緒のグループにした方が安定しそうじゃな。

 研修の途中には、しっかりと食事も出るぞい。

 まあ、もちろん……トナカイ用じゃがな!

「ねぇ、なんか、行儀悪くない、これ?」

「でも、こんな手じゃ箸とか持てないだろ?」

「そうなんだけどねぇ……なんか嫌なのが、ただの草って感じなのに、とても美味しくない? これ」

「なんだろう、僕らがトナカイだから、じゃない? ほら、草食動物だろ?」

「えー、なんか、本当になっちゃったって実感ばっかりで嫌になっちゃうじゃない!」

「ほらほら、夢だと思いなよ。トナカイになるバイトの夢!」

「うふふ、変な夢! なんか、夢だとしてもおかしいっていうか」

「あはは、そうだよねー。自分だけじゃなくて、他の人までトナカイになってるとか、僕もわけわかんないや」

 もしゃもしゃと草をはみつつ、楽しそうにおしゃべりをしておるようじゃな。

 面白いもんじゃろ、こう言うのも。

 二人とも人間なんじゃが、今はトナカイ。

 元の姿を知らないのに、いや、知らないからこそ……こうやって、気兼ねなくおしゃべりできるってわけじゃ。

 今日だけのバイトで、今日だけの姿で、今日だけ一緒。

 ううむ、なかなかロマンチックじゃな!

 そんなこんなで、お二人……二頭は仲良く研修を終えてとうとう本番じゃ。

 ハーネスをしっかり固定して、ソリと接続して。

 最近の主流は、四頭引きじゃな。

 お二人さんを挟むように、他のトナカイが一頭ずつ左右にいるフォーメーション。

 なかなか、サマになっとるじゃないか!

 プレゼントの袋を持ったサンタクロースがソリに乗り、いざ発進じゃ!

「ねえねえ、サンタさんって……空、飛んでるわよね?」

「だよ、ね。僕も気になっていたんだけど……」

「ハハハ、そうだぜお二人さん! 飛ぶんだぜぇ、俺たち!」

「でも、安心してね。私たちは、普通に走るように動くだけでいいのよ!」

「え、え、え」

「ど、どうしたの? も、もしかして君、高い所——」

「ホッホッホ、では出発するぞぉ、メリィー・クリスマァース!」

 サンタが手綱を引き、ベルを鳴らし。

 雪が降りしきる街中へ、ソリが滑り始める。

 徐々に加速すると、ふわりと浮き始めて……

「あっ、あっ、あっ、あっ、地面、地面、私、地面、離れてるぅううう!?」

「だ、大丈夫だって、僕が横にちゃんといるから、頑張って!」

「そうだぞ、新入りさん! 俺たちが止まっちまうと、本当に落ちちまうぞ!」

「あれ、めっちゃ怖いのよね。一回やらかしたけど……ああ、そうなったら走ったら浮くから! なんとかしてあげる、うふふ!」

「えっ、あっ、は、はい……」

「よ、よかったね。僕らだけじゃなくて、先輩の……先輩トナカイ? の人がいてくれて」

 ちょっとふらついているものの、ソリはどんどん高く飛んでいく。

 雪を掻き分け、真っ暗な夜の空を飛んでいくのじゃ。

 もちろん、サンタだって大変なんじゃぞ。

 雪で視界が良くない中、方角を間違えないようにしないといけないんじゃ。

「わ、私、飛んで、走って、浮いてるのに、走って、わ、わ、わ、わぁ……」

「ゆ、夢だって思っても、夢でも、なんか、ぶっ飛んでるっていうか、は、はは、なんだ、これ……」

「お二人さん、それでいいんだよ、それで!」

「そうそう、こんなの、現実なわけないでしょ? トナカイになって、ソリを引いて、飛んでるのよ? ぜーんぶ夢なんだから、のびのびやりなさーい!」

「だってさ。ほらほら、僕が横にいるから、安心して。なんなら、練習の時みたいによっかかったっていいからさ」

「う、ううん、わ、私だって、今は、トナカイだもんね。が、頑張らなきゃ!」

 素晴らしいのう、素晴らしいのう!

 四頭のトナカイが声を掛け合って、ソリを導いて。

「ようし、トナカイたち! 雲の上に飛び出すぞぉ!」

 サンタがトナカイ達に号令を出したようじゃな。

 エリアの近くまでは、体力を温存せんといかん。

 それには……高く飛んで、天気の影響をなくすのが一番なんじゃ!

「さあ、お二人さん! 走れるかぁ!?」

「ほら、ほら、ほら! 雲に突っ込んで、突き抜けちゃうわよー!」

「よ、よし、頑張ろう! 走って、走って!」

「う、うん、うん!」

 速度が増し、高度が増し。

 一直線に分厚い雲に入っていくと、何にも見えない世界が広がっとる。

 それも束の間、パァッと視界が開けると……

「ホーッホッホッホ、トナカイ達! 今宵は満月、美しいぞぉ!」

 空たかく煌々と輝くは、綺麗なお月様。

 暗雲を下にして、雲一つない夜空。

 そこはまるで、トナカイ達のためのプラネタリウムのようなんじゃ……!

「わあ、すっごーい! 見て見て、オリオン座が見えるわ!」

「ほんとだ、あっちには……」

「こらこら、お二人さん。まっすぐ走らないと、逸れちまうぞー?」

「でも、何回見ても綺麗よねー。満月だなんて、今年は大当たりじゃない!」

 恵理子さんは目をキラキラさせながら、満天の星空にうっとり。

 これはのう、やったことある人にしか分からんのじゃがな……

 本当にすごいんじゃぞ、あの高さを走って空を見上げる感覚は。

 トナカイになっとると、意外と寒くなくてのう。

 実はあれ、ソリに乗っているだけのサンタの方が寒いんじゃぞ。

 じっとしているのもあってな、なかなかきついんじゃ。

 一方、トナカイはというと……今の恵理子さんのように、もうハイテンションじゃ。

 全力で体を動かして、美しい景色を見ながら仲間内でおしゃべりして励まし合って。

 サンタは一人、寂しくソリの上。

 まあ、その代わり……子供のそばにプレゼントを置けるのはワシらの特権なんじゃがな、ホッホッホ!

「ようし、そろそろ配達エリアじゃ! トナカイ達、頼んだぞぉ!」

「だってよ! ほら、速度を落としていくぞ」

「急に落としたらダメよー。高度も急に落ちちゃうから、びっくりしちゃうわよ」

「わ、わかりました!」

「は、はい!」

 なだらかに減速し、降下して……

 再び、雪世界じゃ。

 ここからは、サンタの腕の見せ所。

 ルート構築、トナカイへの指示、素早くも丁寧な配達。

 熟練の技の見せ所じゃな。

 トナカイは止まって、動いて、止まって。

「うふふ、楽しいなぁ……」

「あれ、そうなのかい? てっきり嫌になってるかなって」

「えー、じゃあ、あなたは嫌なの?」

「いや、全然! トナカイになるのって、楽しいよ!」

「実を言うと、私も!」

「お二人さん、なかなか気に入ってるじゃねぇか。ずっとトナカイになっちまうぞ、そんなこと言ってたら!」

「そ、それは嫌ですよぉ!」

「そうそう、私はちゃんと、人間だもの!」

「うふふ、どーかしら!」

 四頭はすっかり仲良くなって、冗談まで飛ばしておるようじゃな。

「さあさあトナカイ達、お仕事はおしまいじゃ! 帰るぞぉ〜!」

 仕事を終え、サンタが帰還していく。

 帰りは楽なもんじゃ、一直線じゃからな。

 まあ、トナカイが飛ばしに飛ばすもんじゃから……大変ではあるのう。

「あ、そうだ。あなたのお名前、聞いてなかったわね。私、恵理子って言うの! あなたは?」

「僕は——」

 

「あっ、えっ、えっ!?」

 恵理子さんが起きたようじゃな。

 今日は25日、クリスマス。

 時計はちょうど、八時をさしておるのう。

「わ、私、首輪つけて、トナカイになっちゃって、あれ、喋れる? あ、手だぁ……ん、嘘ぉ、やっぱり、夢だったわけ?」

 目をこすりながら、起き上がって。

 っと、その時じゃ。

 彼女は、何かが枕元にあるのに気付いたようじゃな。

「なんだろ、これ、輪っかみたいな……ちょ、ちょっと、く、首輪!?」

 そう! つけるなりトナカイになってしもうた、魔法の首輪があったんじゃな。

 夢じゃあなかった、と言うわけじゃ。

「え、えっと、とりあえず、ケータイ……あ、わ、入金メール来てる、わ、わわわ、こ、こんなに、すごい!?」

 次々にやってくる、恵理子さんへのサプライズプレゼント。

 子供のために頑張ってくれたんじゃ、ご褒美はたっぷり用意せんとのう。

 ただ、お金だけがプレゼントっちゅうのは悲しいじゃろ?

 ふふふ、お楽しみはこれからなんじゃ!

 クリスマスが終わり、年が明けて、二月になって。

 恵理子さんの街で、雪が降り始めたんじゃ。

「雪……」

 思い出すのは、あの夜の出来事。

 雪の空を走って飛んだ、あの夜。

「楽しかったなぁ、トナカイになって走るの」

 恵理子さんがそう呟いた時。

 ゴトリ、と大きな音を立てて床に落ちたのは……あの首輪。

「あ、そういえば、適当にしまってたんだった」

 ドキドキしているみたいじゃのう、さあさあ、どうなる?

「も、もう一度、トナカイになっちゃえないかな?」

 冗談めかしつつ、恵理子さんは首輪に首を突っ込んで。

 するとたちまち、その顔はトナカイに大変身、じゃ!

「ブ、ォオオ!?」

 鏡に映った自分に驚いている間に、体もどんどんトナカイに。

 あっという間に、恵理子さんはあの時のトナカイになってしまったわけじゃ。

「ブオッ、ブォオオ!?」

 大慌てするが、心配はいらんぞい。

 はずみで首輪が外れ、人間に元通り。

「えっ、戻っちゃった? あれ、あんなに戻りたいって思っても、戻らなかったのに?」

 流石に、お仕事中に戻ると危ないからのう。

 逆に言うと……そうじゃないなら、自由自在じゃ。

 恵理子さんがなんだか、ソワソワしてるのう。

「そ、外で、変身して、走りたいな……」

 我慢できずに家を出て、誰もいない所で首輪をつけて……

 再び、トナカイに大変身!

 なになに?

 日本でトナカイがいたら大パニックになるだろう、じゃと?

 ホッホッホ、サンタパワーを甘く見たらいかんぞぉ!

「あっ、恵理子さん。お出かけですか?」

 お隣さんがトナカイを見て、そう声をかける。

「あっ、え、はい……」

 本当は鳴き声なんじゃがな。

 お隣さんには、こう聞こえるんじゃ。

 すごいじゃろう!

 どこからどう見てもトナカイなんじゃが、周りの人たちからは……恵理子さんのままなんじゃ!

 なんなら、電車とかにも乗れるぞぉ。

 窮屈なだけじゃから、おすすめはせんがの。

 ワシもよく、ソリに乗ったまま変身して先輩に叱られたもんじゃ。

 恵理子さんは恐々四つ足で歩いてみるんじゃが……

 サンタパワーのおかげでだーれも気にせん。

 少しずつ早くなる足。

 大きな体が勢いをつけて、大きな音を立てて動き出し。

 車にも負けないような速度で、彼女はトナカイとして駆け抜けていくのじゃった。

「すごい、すごい、私、こんなに、速いんだぁ!」

 もちろん、自分がトナカイである以上……いつばれるか、ヒヤヒヤしとるようじゃがな。

 それがますますドキドキするのか、わざと人の多い所を通っとるようじゃ。

 人通りの中をかき分けて、たどり着いたのは……運動公園。

 なるほど、そこならのびのびと走れるのう。

「さーて、どうしよっかなー!」

 恵理子さんがノリノリでいなないた、その時じゃった。

「あっ、もしかして、恵理子さん!?」

 ビクッと体を震わせ、声の方向を見る。

 なんと、そこには……

「うわあ、やっぱり、恵理子さんなんだね!?」

 そう、あのトナカイ君がおったんじゃ!

 ドスドスと、力強い歩みで迫ってきて。

「え、もしかして、練習の時から、一緒だった!?」

「そ、そう、僕、僕! え、へへ、なんか、またトナカイになれちゃったから、つい、きちゃったんだけどぉ……」

「そ、そっかー、そっかぁ」

 あるのう、周りが気にしてないから平気じゃったはずなのに……同じことしている人に会うと、急に恥ずかしい事って。

 まあ、側から見ると男女がモジモジしとるだけに見えるんじゃが、本人らはしっかりトナカイとして認知できてしまうわけでな。

「ね、ねぇ、せっかくならさ、い、一緒に、走らない?」

「あ、えっと、う、うん……」

 どこかぎこちないまま、二人は並んでトコトコと歩き出し。

「ぼ、僕、久しぶりに変身したんだよね。え、恵理子さんは?」

「わ、私も、今日が、久しぶりで」

「そ、そっかぁ……」

 うーん、歯痒いのう。

 何しにきたのかわからんような、もどかしい感じ。

 青春じゃのう、全く。

 恥ずかしくなったのか、恵理子さんが先に駆け出して。

 それを追いかけるように、男性の方も走り出す。

「あはは、恵理子さん、走るの、上手くなったねぇ!」

「う、うふふ、そっちだって、久しぶりなのに、上手くない?」

「大地、青山 大地!」

「え?」

「僕の名前。まだ、言えてなかったからさ」

「あ、そ、そっかぁ……やっぱり、夢じゃなかったんだ」

 聞きそびれた彼の名前を聞いて、恵理子さんは運命を感じておるようじゃ。

「ね、ねぇ、大地君……時々、ここでかけっこ、しない?」

「う、うん、恵理子さんがいいなら、喜んで」

 全力で走りながら、二人はそんな約束をして。

 それからと言うものの、お二人さんはしょちゅう出会うように。

 でも、どこか恥ずかしいんじゃろうなぁ。

 必ずこの公園で、トナカイの姿で顔を合わせて。

 まるで人間の姿の方が仮の姿かのようじゃな、ホッホッホ。

 何度も何度も、会っているうちに……

「ねぇ、大地君? 変身、解いてみない?」

「えっ、でも」

「怖い?」

「僕は、いいんだけど」

「じゃあ、せーので行こうよ」

「わ、わかったよ」

「「せーの」」

 桜が散る頃に、二人はやっと、初めて人として出会ったと言うわけじゃ。

 そこからはもう、とんとん拍子。

 どんどん仲良くなって、深い仲になって。

 トナカイの姿でも、人間の姿でもやり取りを繰り返し。

 そしてとうとう、おめでたいその時がやってきたわけじゃ。

「結婚、おめでとーう!」

 陽が落ちるのが早くなってきた頃に、お二人はご結婚。

 どうじゃ、素晴らしいじゃろ?

 トナカイバイトの報酬に、素敵なラブロマンスがもらえたってわけじゃのう。

 ホッホッホ、勿論それ目当てじゃ採用なんてできんぞう!

 あくまでも、頑張ったご褒美じゃからな……!

「ねぇねぇ、お色直し、トナカイに変身しちゃわない?」

「んもう、恵理子ったら! みんなからは人間に見えるからって、よくないだろ?」

「そう言ってても、ちょっとウズウズしてるくせに!」

 すっかり、トナカイの姿も気に入ったようじゃのう。

 いやぁ、助かるんじゃ!

 こうなってくれると、本人が希望する限り参加してもらえるからのう!

 毎年入れ替えするよりは、絶対に楽じゃからな。

 夜空を飛べるおまけ付きじゃから、お二人さんも新婚旅行としてエンジョイできるじゃろ。

 

 と、こう言うわけなんじゃな……!

 トナカイの姿に馴染めそうな人に体験してもらって、馴染めた人に何度もお願いして。

 トナカイの数が足りなくなることのないよう、毎年補充しておると言うわけじゃ。

 ホッホッホ、もしかすると君たちの中にも、適任者がおるかも知らんのう。

 運が良ければ、今年は……君にも首輪が届くかも知らんぞ。

 その時は、しっかり頼むぞい! 先輩もサポートしてくれるから、安心安全じゃ!

 今回の回答コーナーは、これでおしまいじゃ!

 さあさあ、良い子はもう寝る時間じゃぞー。

 

 

 おしまい……?

 

 

 

 

 

「あっ、大地君、そんな、そんな、激しく、あっ……♡」

 人間用のホテルにも関わらず、そこにいるのは二頭のトナカイ。

 荒い声を漏らしつつ、体を重ね合わせていた。

「だって、だって、恵理子だろっ、トナカイのまま、こうしたいって、あっ、中、いい、いいよぉ……♡」

 上に覆い被さっているトナカイは腰を揺らし、メスのトナカイの中のナニを動かしている。

「だって、だってぇ、この姿の方がぁ、体力あるんだもぉん、あっ、あっ、あぁあああん♡♡♡」

 激しい新郎の責めに、たまらず新婦は甘い鳴き声をあげる。

 そう、二人には言葉に聞こえるのだが……所詮トナカイはトナカイ。

 部屋に響くのは、ただただ鳴き声と荒い呼吸音。

「だから、だから、我慢してたのに、いっぱい、しちゃいそうだから、しちゃいそうだから、しちゃうから、あっ、あっ、恵理子、好き、好きだよぉ、愛してるよぉ♡♡♡」

「私も、私もよぉ、大地君、ずっと、ずっとぉ、一緒、一緒よぉ、もっと、もっとぉ♡」

 お互いの声を聞き、体臭を嗅ぎ。

 やっと結ばれた肉体は遠慮容赦なくお互いを求め、決して離すことがない。

「いいっ、いいぞぉ、好きだ、好きだ、好きだぁ♡」

「私っ、私ぃ、このまま、このまま、大地君の、子供、生んじゃい、たいぃ♡ 生ませて、生ませて、生ませて♡」

「もう、もうっ、もう♡ 僕ら、人間なんだからぁ、でも、でも、でも、僕も、僕も、このまま、ずっとこのままでっ、いいっ、いいかも、いい気がする、だって、だって、この姿だと、何倍も、何倍もぉ、恵理子のことぉ、好きにっ、好きになれるから、あっ、あっ、ぁああああああっ♡♡♡」

「あっ、あっ、あぁあああっ、私、私の中に、大地君の、大地君のが、いっぱい、いっぱい、入ってくるっ♡♡♡」

 二頭のトナカイは共に果て、結婚初夜の熱気をたたえたまま……愛しさに、体を委ねていくのであった。

 

 

 

 こりゃこりゃ!

 勝手に人の情事を覗くでない、いかんぞそう言うのは!

 えっ? 夢を配るためのトナカイの姿で、ああ言うことをしてもいいのかって?

 まあ……その……別に、仕事をちゃんとしてくれるなら、問題ないというか……

 け、結構、ええもんなんじゃぞ、あれ、うむ。

 と、とにかく、いかんもんはいかん!

 ほれ、おしまいじゃ、おしまい! また次回!

 

 

 本当におしまい


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