【リク作品】私、賢者になるんだわ! ~オークにしかなれないとか、聞いてなーい!~ 作:愛鋼熊
オリジナル:ファンタジー/恋愛
タグ:R-18 TF transfur オーク
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https://skeb.jp/@aikosyaHoKoku/works/33
魔導士の女性が賢者になるため、ギルドに到着!
ところがびっくり! オークにしか転職できないって、どうなっちゃうの!?
「よーし、やっと着いたわね……」
古く大きな建物を見上げ、目を細める。
今日と言うこの日のために、私……カルナは魔導士として頑張ってきたのだ。
「実績もいっぱい積んだから、なれるでしょ……賢者に!」
上級職。それはみんなの憧れ。
私の住んでいるような田舎の村では噂でしか聞かないような存在。
ついに、ついにそんな存在に私がなるのだ!
ドキドキしてきた。
ごくりと覚悟を決め……私はギルドのドアを押すのだった。
「えっ、え?」
「ですから、形式が違いますので……」
が、ところが。
「だ、だって、私、こんなに色々」
「何度も説明していますけども——」
うそうそ、そんなのって、あり!?
私はパニックになり、頭が真っ白になる。
係の人が若干呆れた顔で、もう何度目だろうか……自分でも分からないほど繰り返された説明を始めた。
つまりだ、はっきり言ってしまうとだ。
無駄だったのだ。
ギルドに所属してから活動し、ギルドでの実績を積み重ねれば上級職になれるらしく。
ど田舎にそんな物、あるわけもなく。
正確に言うと無いことはないんだけど……本物に比べると真似にすらなっていなかったようで。
私が自信満々で持ってきた依頼の達成書も、書式がデタラメで驚かれるほど。
わぁ。
賢者になるはずだったのにぃ。
とはいえ、ここですごすごと帰るわけにはいかないわ。
じ、実績があればいいんだから、今からでも実績を積めばいいのよ!
そう、そう! 魔導士としては自信、あるんだし!
落ち着きを取り戻しつつ、私はギルド加入の窓口へと足を運ぶ。
「ごめんなさいねー、最近人が増えてねぇ」
「え、え?」
一難去ってまた一難。
こんなのってあり?
「どの職業も人気でねぇ、正直管理がちょっと行き届いていないのよ」
さ、さすが都会、とでもいえばいいのかしら。
感心している場合じゃ、ないんだけどぉ……
つ、つまりだ。は、はっきり言ってしまうと、だ。
『間に合っている』と言うわけだ。
ど、どう見たって、あの窓口にいる新人魔導士より、私の方が腕が立つのにぃ!
そんな事を言ったって、ルールはルールだって言うことは分かる。
でもでも、こんなのってないわよ。
これだけ頑張ってきて、何もできずに門前払いだなんて。
「ど、どの職業も枠無いんですか!?」
「無いことは無いですけど……やめておいた方がいいですよ?」
あ、あるんだ!
この際、なりふりかまってなんかいられない!
戦士でも、荷物運びでも、なんなら遊び人でもやってやるんだから!
とにかく実績、実績のためにはギルド加入!
「な、なんでもいいんです! ギルドに認められた職業なら、なんでもやりますから!」
「そ、そこまで言うなら。ただし、自己責任ですからね」
係の人が、書類を持ってくる。
や、やった、本当にあるんだ!
私は安堵のため息をつきながらその紙を覗き込み……
え、何この職業?
え?
これ、職業なの?
本当に?
「ね、やめておいた方がいいでしょ?」
「や、やります! やりますって!」
ああ……後には引けないわ、私もう。
「ブヒッ、本当に、姿も変わってる……」
「はい、転職完了です。元の姿に戻るには、うちでもう一度変身させる必要があるのでお忘れなく」
すっかり変わり果てた私を見ても、担当の人は顔色ひとつ変えない。
「あ、あの、ブヒ、魔物になる職業って、何するんですか、ブヒッ」
上手く喋れない。
少し長く、前に突き出した鼻がやたらと詰まるというか、息が荒いっていうか。
「ほら、魔物って人よりも優れた能力が多いでしょう? それを生かした活動をしてもらえれば実績になりますよ。書類にも例があるので、参考にしてくださいね」
「は、はいぃ……」
目を落とす。
うぅ、スリムが自慢だったのに、なんかめちゃくちゃ大きくなった体が視界に入るよぉ。
『オークの向いている活動』
何度見ても、こう書いてある。
いやまあ、サインしたのも自分なんだけど……
そう、私はオークに転職したのだ。
ま、まさか、人間辞めちゃうとは思わなかったけど……
我慢よ、私!
この経験だって賢者になるには大事なんだから!
あ、でも、どうしよう。
オークから賢者になったら、オークの姿の賢者になっちゃうのかしら。
うわ、全然賢くなさそう。
なんて、馬鹿なことばっかり考えているうちに……転職後の説明も終わり、晴れてギルドに加入できたわけで。
う、嬉しいはずなんだけどなぁ。
私はため息を漏らしつつ、建物の裏口から出ていく。
自然に足が大股になる。
すっごく恥ずかしい。
大丈夫かしら、知り合いとかいたら恥ずかしいわね。
……わかんないか、今の私オークなんだし。
オークなんだけど、私なんだよねぇ……
幸い、ギルド加入の証があるため魔物職に就いた人間と言うことくらいは周囲に伝わるのだが。
あれ、でも待って?
それ結局、「進んでオークになった人間」って事はバレてるってことよね?
急に恥ずかしくなってきたというか、我に返ったというか。
でもここまでやって、「やっぱりいいです」もアレだし。
や、やれるだけやってみるのよ、私!
書類に目を通す。
「ブヒッ、とりあえず、これから、フゴ、フゴッ」
まずは鼻が鳴るの、なんとかしないとなー。
ノッシノッシと歩いて、私は森に移動する。
いつもならご自慢の杖でかき分け、器用に進んでいくんだけど……
図体が大きくて重いわ、武器も槍だわ。
全然勝手が違う。
ちょっと無茶しちゃったかも、最初は街でお仕事した方が良かったかしら……
ふと耳を澄ます。
人間だった頃よりも、色んな音が響き渡る。
そりゃあもう、うるさいくらいに。
そんな音の洪水の中に……こちらに向かってくる音。
魔物だ!
私は音のする方向に集中し、武器を構える。
こういう森の中でこの速さ、ほぼ間違いなくコボルトね。
数は一匹。それなら……!
私の予想通り、茂みからコボルトが飛び出してきた!
よし、もらった!
「ンゴっ、ファイアシュート!」
私の得意な魔法が……
あれ?
「ブヒ? ファ、ファイアシュート!」
あれ。
「ファイアシュート、フゴッ、ファイアシュート、ファイアシュート!?」
手に持っている武器をブンブン振りながら、私は何度も叫ぶ。
待って待って、なんで出ないわけ!?
私を見ているコボルトがドン引きしている。
そんな目で見ないでってば。
恥ずかしいから。
今の私、オークなんだから!
……あ、そっか。
オークだから人間の魔法、使えないんだわ。
そもそもこれ、杖じゃなくて槍だし。
え? どうやって戦うの、これじゃあ。
「え、えい!」
槍を叩きつけるように振ってみるも、コボルトは余裕でかわしてくる。
そのまま私の背後に回ろうとしてきて、私も……
「きゃっ!?」
足がもつれる。
太い足が思いがけないものを踏み、バランスを崩してしまい。
転んだはずみに槍がすっぽ抜け、道具ポーチも外れ。
「待って待って、コボルトなんかに!?」
ど、どうしよう!?
こんなところで……
「どりゃああああ!!!」
と、その時。
野太い声と共に、大きな塊が横から飛び出し……コボルトは抵抗する間もなく、吹っ飛んでしまった。
「え?」
もしかして、白馬の王子様!?
「おうおう姉ちゃん、一人で散歩たぁ感心しねぇぞ」
豚のおじ様だった。
い、いやまあ、私と同じオークなんだけど。
「あ、ありがとうございます……って、あれ、会話できてる!?」
私、一応人間なのに!?
待て待て。このオークのおじさんも人間なのかもしれない。
よくよく探せば……
「あぁん? 何言ってんだ、オーク同士で会話しねぇで、誰と会話すんだよ」
オークだった。
へ、へぇ、魔物職になると、その魔物と普通に会話できるんだ……
コボルトとかゴブリンになれたら、魔法の研究捗るのかもしれない。
「あ、えっと、あはは……」
「こんな所でなーにやってんだ? 見たところ、よそもんみたいだがよ」
「え、えっと、なんていうか……」
どうしよう。こんな時、人間だって言わない方がいいのかしら。
私が困っている間にも、オークはズンズン近づいてきて。
「おいおい、ひでぇなこりゃ。足首捻ってんぞ……立てるか?」
思ったより親切。へぇ……
感心している場合ではない。
「え、えっと、い、タタ、イタタタ!?」
激痛が走る。強そうに見えてもやっぱり脚は弱点。
転んだ時に思いっきり捻った足が、ジンジンと痛み始める。
「ありゃりゃ、ここじゃ手当てもできねぇな。待ってなよ! 俺の村、すぐそこだからよ!」
「む、村!?」
「お前村も知らねぇのか!? まあなんでもいいや、じっとしてろよぉ!」
わ、わ。
オークのおじさんが私を軽々と持ち上げ……
待って待って、これってお姫様抱っこみたいじゃない。
憧れてはいたけど、オークの姿でオークにされるのはなんか違うっていうか、ええっとぉ。
でも、降ろしてとは言えないし。
どんどん森の中に入っていく。
つまりそれは、どんどん人の住んでいる所から離れていくというわけで。
どうしよ。
「あー、ずいぶん派手にやったなこりゃ。治るのに数日はかかんぞ?」
ここは魔物の村。
オーク以外にも色々いて、思ったより賑やかで。
このオークのおじさんの家で、私は手当を受けている。
あ、ありがたいんだけど、ちょっと困るというか。
「え、えっと、そんな気にかけてもらわなくてもいいですよ」
「なーに言ってんだぁ! フゴッ、あのまま野垂れ死にたかったのか?」
激しい鼻息が、顔に直撃する。
意外と臭くない……のは、私もオークだからかしら。
「だ、だって、私、オークじゃないので」
完全にうっかりである。
ぽろっと、口から漏れてしまったというか。
少なくともこのタイミングじゃないでしょ、私。
「そう。それで?」
「そ、それでって……」
もっとこう、リアクション無いの!?
「だってよ、最近は物好きな人間が魔物の姿になるの、流行ってんだろ? ガタイが大人なのに槍も使えねぇ、森も歩けねぇオークがいたら……そりゃあ、生粋のオークじゃねぇのはだーれでもわかるっての」
ご、ごもっともですぅ……
何も言い返せない。
「あ、一応確認するけどな。呪いでその姿にさせられた、とかじゃねぇんだろ? 自分からなった口だろ?」
「えっと、い、一応、はい」
これしかなかったからなんて口が裂けても言えない。
人間の時より口はおっきくなってるけど。
「じゃあ、なりたくてなったんならもう半分オークみたいなもんだろ。だったら、俺が見捨てるわけにゃいかねぇ! 半分でもちょっとでも、オークならオークが助けてやんねぇとな!」
す、すごい、このおじさん、かっこいい……!
ドキッとしちゃう。
「と、いうわけでだ。必要なら俺がオークとしてのイロハを教えてやってもいいんだが……どうする?」
「お、お邪魔じゃないです?」
「ぜーんぜん。暇つぶしにゃちょうどいいっていうか、張り合いがあるわな。俺の手伝いしてもらえるなら、仕事も捗るしな」
「え、えっと、じゃあ、お、お願いします……」
「よっしゃよっしゃ、じゃあよろしくな。俺はドンガ。あんたは?」
「わ、私、カルナって言います」
「カルナな、じゃあよろしくな」
ごつい手が差し出される。
私も反射的に、同じくらいごつい手を差し出し。
ぎゅっと握られた手は、どこか心地良く。
「じゃあ、オークとしての最初のレッスンするとするか」
「な、なんですか?」
「オークの飯に、慣れてもらうことだな! ガハハハ!」
ドンガさんが大声で笑いながら、キッチンに消えていく。
「わ、わぁ、人間の時、こういう出会いって一回も無かったのになぁ……」
運命って、なんか皮肉なものである。ホント。
「へぇ、あんたかい。ドンガのところに転がり込んできたっていうオークは」
「あ、はい、初めまして」
「ああご丁寧に、初めまして。大丈夫かい? ドンガのやつ、なかなか暴れん坊だから気をつけなよ〜」
「あ、ははは……」
翌日。
足の痛みも引いてきたので、何気なく村を散策していると……
会うわ会うわ、色んな魔物。
今喋っているおばちゃんだって、ガーゴイルだし。
「でもあんた、いったいどこから来たんだい」
「そのですね、離れた森にいたんですがちょっと山火事に遭いましてぇ……」
気を利かせたドンガさんが、最初に教えてくれた事。
自分は同族だからいいが、村の魔物に対して迂闊に人間であることは言うな。
確かにそりゃそうなのよね。
私だって、お隣さんが魔物だってなったらびっくりしちゃうし。
「あらあら、大変だねぇ。何かあったら言ってちょうだい! 石細工ならいくらでも教えたげるからね!」
「ありがとうございます!」
とはいえ、そこに注意したらすごく居心地はいい。
ドンガさんの人望が篤いのもあるのか、みんな優しくしてくれる。
まあ、調子に乗ったらダメだけどね。
あくまでも私は転がり込んできたオークなんだから、うん。
「おう、カルナ! 歩くのは問題なさそうかー?」
「あ、はい、大丈夫です!」
のしのしとドンガさんがやってくる。
一晩一つ屋根の下で過ごしたのもあるけど……すっごく、頼もしく見えた。
「んじゃ、今日は簡単なところからやんぞ。俺の畑、一緒に行くか!」
「畑、ですか?」
「あー、ドンガの兄貴! そろそろ大根、取れるんじゃねぇっすか?」
「ああ、そうだな。明日くらいに様子見てみるから、できたら持っていくわ!」
「ひぇー、助かりますぜ! 兄貴の作る大根、うまいんすよぉ!」
村の魔物たちと会話しつつ、ドンガさんはズンズン進んでいく。
私はその後ろを、ちょっと恥ずかしくなりながらついていき。
「カルナ、オークっていうのはな、前のやつと同じくらい堂々と歩かないとかえって目立つんだぜ」
それに気づいたのか、ドンガさんが耳打ちをしてくる。
「えっと、は、はい……」
同じように歩くのも恥ずかしいけど、私が目立つのも恥ずかしい。
意を決して、のしのし歩いてみて。
あー、なるほど。
こう歩く方が、バランス取りやすいわね。
「どうだぁ、雑草あるか?」
「はい、こういう作業はよくやっていたので分かります!」
村の手伝いでしていた作業を、改めて違う姿で行う。
それはそれで、なんだか楽しくって。
「へぇ……」
チラリと周囲を見た後、そっと近づいてきて。
「人間ってぇのは、全部魔法とかでするんじゃねぇのそういうの?」
人間に対してそういう偏見あるんだ、魔物って。
「しませんよぉ、みんながみんな使えるわけでもないですし、こうやった方が安全で早いでしょ?」
「ふーん、なるほどなぁ。じゃあ、料理は?」
「できる人は火とか魔法で用意しますけど、野菜とかは普通に刃物で切りますよ」
「え? 戦闘とかでよくそういう魔法使うじゃねぇか」
「あー、あれですか? あれ、『とりあえず切れればいい』程度なので……例えば大根に使っちゃったら、真っ二つになるかもしれないし、みじん切りになっちゃうかもしれないしで」
「はいはい、なんとなくわかったぜ。なんだ、そっかぁ。人間って恐ろしい奴かと思っていたが、わりかし俺たちと似てるんだなぁ」
「うふふ、失礼かもしれないですけど……昨日、私もそんなこと考えてました!」
「あ、そうなのか? ガハハ、こりゃ面白いな。他に聞かれるとまずいが、人間のこと色々教えてくれよな!」
楽しそうに鼻を鳴らしながら笑い、私の肩を叩き。
なんだろう、裏のないというか垢抜けているというか、憎めないっていうか。
日が暮れ始め、私はやっと作業を終えて。
「ふぅ、でも、大変ですね。いつもお一人でやっているんでしょ?」
「ああ、だから半分ずつ面倒見てるんだけどな……カルナがいてくれたおかげで、全部終わったから助かったぜ!」
「そ、そんな、私なんて全然!」
「いーや、そんな事ないぜ。俺より丁寧にやってるし、すっごく助かったぞ」
ちょっと嬉しくなる。
「明日も畑仕事ですか?」
「うーん、大根の確認はするけどな。明日はもっと人間がやらなさそうな事、やってみるか!」
「へぇ……?」
オークがする、人間のやらなさそうな作業。
私はその時、あまりピンと来なかったのだけれど……
今日の作業なんて屁でもないくらい、大変な事をするのだとは知る由もなかったのだ。
「トリュフ、ですか?」
「そう、トリュフ」
「売るんです?」
「そうだなぁ、俺らは食べないからな」
「え? 美味しいのに……」
「あー、うん、そうだな、そうだ、人間だから食ったことあるんだったな」
あれ、どうしたんだろう。
今日のドンガさん、やけに歯切れが悪い。
「臭って探すんですか? 鼻、結構効きますもんね」
「ええっと、いいか、カルナ? これだけはマジで言っておくけどな」
いつになく真剣な顔で、ドンガさんが私を見てくる。
「は、はい」
「多分俺より、カルナの方がすぐに場所を見つけ出せると思うんだ」
「あ、分かった! それがちょっと悔しいんですね? んもう……」
「最後まで聞けっ」
「あ、はい」
どうしたんだろ。
「いいか? 場所が分かったら、俺に教えろ。絶対に、ぜぇ〜〜〜〜〜〜〜ったいに、カルナが掘り出そうとするなよ? いいな?」
「はぁ、分かりました。ありそうだったら、ここですって言えばいいんですね」
「そう、そうだ。俺が掘り出すから、カルナは待ってろよ」
「はいはい、大丈夫ですって。頑張りますよ!」
「おう、頼りにしてるぜ!」
ドンガさんが四つん這いになり、鼻をひくつかせる。
私も真似をして、地面に鼻を近づけて。
草の香り、土の匂い、かびっぽい臭い。
いろんな匂いが鼻に入ってきて、ちょっとパンクしそうになって。
あ、あ、なんか、この臭い、トリュフっぽい。
鼻を動かし、手足を動かし。
クンクン、クンクン。
どんどん臭いが強くなってくる。
なんだか頭がチリチリするのは、人間より敏感だからだろうか?
ますますそれが強くなっていき、一点に集中するような感覚がして……
「ドンガさん、多分ここです!」
「お、もう見つけたか? よしよし、俺に任せろ!」
私が指定したポイントを、ドンガさんが慎重に掘っていく。
なるほどね、分かったわ。
オークの力だと、トリュフを壊しかねないから……それで、ドンガさんは自分が掘るって言ったのね。
でも、時間がかかりそう。
その間に私がどんどん見つければ、その分ドンガさんも助かるわよね。
よーし、頑張ろっと!
クンクン、クンクン。
あ、あったあった……
私は丁寧に作業しているドンガさんの後ろ姿をチラッと見つつ、トリュフ探しを再開する。
思ったより近くになるじゃない、余裕余裕!
ドンガさんの真似をして、蹄のような手で掘り返してみる。
人間の手だと大変だけど、オークの手なら楽ちん、楽ちん。
臭いを嗅いで確認しつつ、掘り進めていく。
明らかに反応が強くなっていき、ドキドキしていき。
な、なんだろう、お宝探しみたいだから、私、興奮してきているのかしら!
うふふ、楽しいわぁ!
フゴフゴと鼻がなっているのにも気づかず、私は夢中になって掘っていく。
とうとう、黒く丸い物が出てきて……
「あ、みーつけた!」
それを摘もうとするのだけど、ちょっと砕けてしまい。
あちゃ、やっちゃったー。
私は初めて収穫したそれをよく見ようと、目の前に持ってきて。
プゥンと、強いその香りが鼻をつき。
したい。
ん、なんだろう。
したい、したい、したい、したぁい♡
あれ、なんか、私、変じゃない!?
ムラムラする、ムラムラする、する、する、したいしたぁ〜〜〜い♡♡♡
思わず、収穫したトリュフを口に捩じ込んで思いっきり噛んで。
ブワッと、脳に突き刺さるような香り!
エッチしたい、エッチしたぁい、もう、メチャクチャにしてほしい、エッチエッチエッチエッチ!!!
あ、あ、我慢できない、私、セックス、交尾、しちゃいたい、しちゃいたい、しちゃいたぁ〜い♡♡♡
「おーいカルナ、あったぞぉ!」
あっ♡
ドンガさんの声だぁ♡♡♡
ドンガさん、好き好き好き好き大好き大好きエッチしたぁい♡♡♡♡♡
私はもうメロメロのドッキドキ、愛しのおじさんの元に駆けていく。
「ん……あっ、おい、こら、あれだけ言ったのに、バカァああああ!!!」
あぁ〜ん、どうして逃げちゃうのぉ、エッチしよう、エッチエッチ♡
ねぇねぇ、ドンガさん、エッチしたくなぁい?
私したいのぉ、エッチした〜い♡
エッチ、エッチ、エッチ♡
もう、我慢できないんだってばぁ、逃げないでよぉ♡
ドンガさんはどんどん走っていく。
私は焦ったくってぇ、四つん這いになって、全力で追いかけてぇ、エッチしたいんだもぉん♡
あ、あ、川で立ち止まってる、捕まえちゃう、捕まえちゃう、好き好き大好き、エッチエッチぃ〜♡♡♡
私は勢いよくドンガさんに飛びついて、避けられて、川に飛び込んじゃって……♡♡♡
……
……
つ、冷たぁーーーーーい!?!?!?
「す、すまんな、お、俺も口で説明するの、恥ずかしくってな……」
「わ、私の方こそ、約束破ってごめんなさい」
ズブ濡れになった私を、優しくドンガさんが拭いてくれる。
ええっと、つまりだ。
どうしてトリュフの香りに、オーク、それもメスのオークが敏感かというと。
発情に関係する神経が刺激される香りだからそうで。
そうとも知らずに、私は大きなトリュフを噛んでしまったわけで。
思い出しただけでも、めちゃくちゃ恥ずかしい。
「ま、まあ、気にすんなって。トリュフのせいだからな、ずっと好き好き言いながら突進してきて、ヤベェとは思ったけど」
言ってたんだ。
ますます恥ずかしいですぅ……
「まあ、まあ、次からは気を付けて」
「は、はい」
ドンガさんはバツが悪そうに、頭をぽりぽりかいている。
ちょっと悪いことしたな、と空いている手をそっと握り。
「お、な、なんだ!?」
あ、驚かせちゃった。
「えっと、ドンガさんって、優しいから」
「ば、バカ言うなって、心配なだけだ」
ほんと、いい人なんだ。
「ほら、あと少しだぞ! がんばれ!」
「ブヒ、ブヒ、結構、大変ですよぉ……わ、わぁ!」
オークとしてのスタミナをつける訓練。
高い山に登り、見えた景色。
「すごい、すごーい! ギルドの建物が、あんなに小さく見えるんだ……」
近くで見た時は、あんなに大きかったのに。
ここから見下ろすと、とても小さく見えて。
「よっし、飯にするか」
「はぁーい」
私は自然にドンガさんに近づき、体を押し付けるように座る。
「なんだなんだ、どうしたんだ?」
「なんでもないですよーだ」
「そっかぁ」
なんだろう。私、ドンガさんの事、好きなのかもしれない。
あの時はトリュフのせいかもって思ったんだけど、数日経ったのにまだ思っているから……本心なのかも。
「そう言えばよ、カルナ」
「どうしました?」
「お前、ギルドとか言ったけどよぉ……いつか、あそこに帰るわけか?」
「あー……多分、はい」
「多分ってなんだよ、多分って。帰らなかったらずっとオークなんだろ?」
「そ、そうなりますね」
別に、ドンガさんがいるならそれでもいいかなって思っている自分がいる。
「いいのか、オークのままで」
「え、え?」
少し真面目なトーンで、ドンガさんが尋ねてきた。
「いや、オークになりたいからオークになったっていうよりは……何かもっとしたい事があるからオークになったって感じだからよ。どうすんのかなって」
「あ、ええっと、それはそう、っていうか……」
「なーんか、いいよなぁ。人間って、なりたいものになれんだなぁ……」
ドンガさんが、遠くを見ている。
あれ、私、イヤイヤでオークになったはずなんだけど……今は、オークでいられるのがなんか嬉しく思っている気がする。
どうしたらいいんだろう、私。
このままオークでいても、いいのかしら。
ドンガさんに聞いてみたくなったけど……どこか寂しそうな目をしている彼に、かける言葉は見つからず。
私は黙って、彼の手を握る。
ぎゅっと握り返してきたその手は、変わらず温かく。
「ええっと、私買い物行ってくるね」
「おう、気を付けてなー」
「あ、ドンガさんったら! 行ってきますの、鼻ポン!」
「えぇ? お前なぁ、あれ、恥ずかしいんだぞ?」
「何言ってるんですか! ドンガさんからやってきたくせに」
「はい、はい。行ってらっしゃい!」
ドンガさんが、私の鼻に鼻を当ててくる。
お互いの息がぶつかり合ってちょっと膨らむ感じがするのが心地いい。
私はルンルン気分で、村を歩く。
ノッシノシと地面を踏み締め、快晴の中を歩き。
「おー、カルナちゃん! 今日は一人でお出かけかい?」
「ええっとですね、ドンガさんの仕事に必要な物を買っていくんです!」
「そうかぁ! ああ、そういえばカルナちゃん、聞きたい事があるんだけどねぇ」
「なんでしょうか?」
ご近所さんに声をかけられ、私は首を傾げ。
「ドンガさんとこにきてから、そろそろ一ヶ月だろ? どうなんだい、ここ?」
「ええっとぉ……大好きですよ! 土と木の臭い、吸い込むだけで落ち着くっていうか」
「違う違う! ドンガさんの事だよぉ!」
「え? ドンガさんの臭いも吸い込むと落ち着きますけど」
ご近所さんがガクッとずっこける。
「えぇ……からかってたりするぅ? 仮にも男女でさ、一緒にいんだろ? ほら、結婚とか考えねぇの?」
「け、けけけけけけ……」
私が!? ドンガさんとぉ!?
「考えねぇかぁ〜〜〜〜。まあ、それもカルナちゃんらしいなぁ。いやね、ドンガもいい年だろ? なんか、考えてんのかなって」
「あ、あはははは、あははははは……」
笑って誤魔化すので精一杯。
その後、私は買い物の間……ずうっとその事で頭がいっぱい。
結婚、結婚、結婚、結婚。
どうしよう。聞きたいけど、ちょっと勇気がないというか。
ちょっと休憩しようと、森の入り口で腰掛けた時。
鼻がひくりと、解決に使えそうな物の臭いをキャッチするのだった。
「ただいまー」
「おう、おかえり。ちょっと遅かったな」
「あ、ごめんなさい。立ち話してて」
「いいっていいって。そんな急ぐもんじゃねぇし」
作業の手を止めて、ドンガさんが私を見てくる。
私はそっと近寄って、お腹をすり寄せて。
「なんだなんだ、今日はいつもよりちょっと積極的だな?」
ドンガさんはニコニコしながら、お腹を合わせ返してくる。
やっぱり、好きなんだよな、ドンガさんの事。
でも、好きってだけで結婚して、いいのかしら。
私、人間なのに。今はオークだけど。
もしかしたら、人間に戻りたいってなる日が来るかもしれないのに。
そうしたら、ドンガさんはどうなっちゃうんだろ。
ぼんやりと考え込んでいた、その時。
むにゅっと、鼻に何かが触れる。
「どうした、考えごとかー?」
ドンガさんの鼻が、私の鼻を押してくる。
んもう、積極的なのはどっちなんだか。
「ま、真面目な話、していい?」
「いつもしてるだろ」
「茶化さないで」
「はいはい」
「私ね、ドンガさんの事、好きなの」
「好きって、どのくらい」
「すっごく」
「すっごくかぁ、そりゃすげぇなぁ」
「結婚したいくらい」
「結婚かぁ、そりゃすげぇなぁ」
「ええっと……」
「って、結婚んんんん!?!?」
なんで似たようなリアクション取っちゃうんだろ、私たち。
「う、うん、結婚」
「待て待て、カルナ、人間だろ」
「オークだもん」
「人間だろ?」
「じゃ、じゃあ、ドンガさん、私と結婚、したくないの?」
「……」
「し、したくない、の?」
ちょっと不安になる。
「い、いや、そ、そりゃ、一生、一緒にいたいけどよ」
「けどよ、って」
「カルナが人間なら、俺と結婚しちゃうと色々と大変だろ」
「そういうのは置いておいて、問題がないなら結婚してくれるの?」
「そりゃあ、したいさ。そして家族持ってさ、一生仲良くさ」
「私だって、そうしたい。だって、ドンガさん、ドンガ、好きだもの」
お腹を合わせたまま、私は思いをぶつける。
「……人間なんだぞ?」
「オークだってば」
「でも、人間だろ?」
「オークですって」
「でも……」
「と、とにかく! 私の事、好きなんでしょ? 愛して、くれているんでしょ?」
「そ、そりゃあ、もちろん」
「じゃあ、じゃあ、私、オークのままがいいもん。オークだもん」
「でも、カルナが人間で……」
「違うってば! ほら、証拠、見せてあげる!」
「お、おい、それ、おぃいいいい!?」
ドンガさんが大慌てしている。
でも、もう遅いもんだ!
私は慎重に掘り出しておいた、黒い丸いそれを口に放り込み、思いっきり噛み潰し……
あぁああああ〜〜〜〜〜好き好き好き好き好き大好き〜〜〜〜♡♡♡
「ドンガ、ドンガァ、大好きよぉ♡♡♡」
えっちしよ、えっちしよ、えっちしよぉ♡♡♡
「ま、待てって、お、おい!?」
もう、待てるわけないじゃないの、こんなに好きなのにえっちしたいのに好きなのにぃ♡♡♡
「待つってどのくらい? 二秒? 五分? 一時間?」
「え、えっと、そういうのじゃなくて、カルナ……」
「もう、もう、もう、私、好きなんだってばぁ、好きなのに、好きじゃなダメなの、ドンガも好きでしょぉ♡」
「だ、だから、カルナは人間だろ!?」
「じゃあ、じゃあ、今、私はどうして、こんなに、好き好き、言ってるんでしょうか、好き好き好きぃ♡♡♡」
「そ、そりゃあ、カルナがトリュフを……ああっ!?」
「分かった、分かった、分かってくれたぁ? なんで私がこうなってるか、トリュフで興奮するのは、人間、オーク、どっちでしょう、ああっ、好き好き、正解したら、ファーストキッスをプレゼントぉ♡」
「そ、そうか、そうだよな、カルナ、オークなんだよな……」
「正解、正解、大正解、私はオーク、ドンガが大好きなオーク、ドンガと一緒にいたいオークだもぉ〜ん♡♡♡」
我慢できない、好きっ、好き♡♡♡
私は飛びついて、押し倒して、口付けして、鼻をめちゃくちゃに擦り付けて、ドンガのお腹に私のお腹を押し付けてぇ、ああっ、好き好き、サイコぉ〜〜〜♡♡♡
「よし、よし、俺も、もう、我慢しねぇぞ、カルナ、大好きだっ……!」
「ブヒッ、ブヒィ、ドンガ、嬉しい、好きっ、ブヒッ、私、ドンガと一緒に、好き好き好きぃ♡♡♡」
「俺も、俺も、好きだぞ、カルナ、一緒にいてくれ、もう、お前がいないなんて、俺も、フゴッ、フゴッ、考えられねぇ、ンゴっ、から、一緒にいてくれぇ♡」
ゴロン、と私と彼が仲良く転がり、上下が逆転し。
激しい、荒い息が私の顔にかかってくる。
ああっ、いいっ、いいっ、いいっ、いいっ♡♡♡
早く、早く、えっちえっちえっちえっち♡
ドンガは服を脱ぎ、股間のおっきいのを露出させる。
あぁ〜、たまんない、たまんない、たまんなぁ〜い♡♡♡
もう、もう、待ちきれないわぁ、早くドンガと、一つに、なりたぁい♡♡♡♡♡
トリュフがガンガンにキマり、意識が今にも飛びそうになっている。
私の中に、彼が入ってくる刺激。
その凄さに、私の頭は早くも真っ白になってしまい——
「ふぅ、よく寝た」
「あら、起きちゃった?」
もう、お昼だろうか。
窓から差し込む光が、だいぶ角度をつけている。
「昨日はすごかったなぁ……みんなみんな、俺たちを祝福してくれて」
「そうねぇ。あ、ごめんなさいね。私ったら、ついあんなこと言っちゃって」
「でも、良かったと思うぜ。カルナが人間だって事、みんな受け入れてくれて」
「それは、ドンガがみんなから愛されてるからじゃない?」
「カルナだって、そうだろ?」
同じ布団の中、私はドンガに身を寄せる。
昨日、とうとう結婚式を挙げた私たち。
式の途中、私はとうとうみんなに秘密を明かしてしまい。
流石に驚かれたものの……ドンガがそれを綺麗にまとめ、式は大成功を納めたのだ。
「でも、かっこよかったわよ、あなた。『元が人間だろうがなんだろうが、こいつは俺の奥さんだ』なんて」
「そんなこと言ったっけぇ……よく覚えてねぇや、恥ずかしいな。ハハハ……」
ちょっと照れながらも、鼻でツンツンしてくる。
「んもう、朝からしたいの?」
「酔っ払ってどっかの誰かさんがさっさと寝ちゃったからな」
「あ、ご、ごめんなさい……」
「いいっていいって。もう、俺たち、夫婦だろ?」
「うん、うん……」
「じゃあ、これから時間なんて、たくさんあるじゃねぇか」
全裸のままの夫が、またがってくる。
私は抵抗もせず、それを受け入れて。
もう、何度目だろうか。
身も心も愛している旦那のペニスは、すんなりと入っていく。
「あっ、好きよ、ドンガ、あっ、あっ♡」
「俺も、俺も、幸せだよ、カルナ……」
ゆっくりと、でもしっかりとしたピストンに体を委ねる。
私の中で、彼の物が前後する。
ちょっと寝ぼけている頭も、ピリピリと研ぎ澄まされ。
「あっ、あっ、でも、ちょっとだけ、トリュフ、欲しいかも♡」
「ダメ、ダメ! あれ使ったら、すぐにカルナ、理性失うんだから! 最初の時、大変だったんだぞ!?」
思い出してしまう。
気づいたら全身精液まみれで、横には干からび切ったドンガがいて。
何にも覚えていなかった。
ただ、満足しきった肉体の疲労だけがあって。
「うふふ、ごめん、ごめんってば♡」
「俺だって頑張るから、あんなもの使わなくったって、気持ちよく、なってくれよな、あっ、くそ、出る、出るっ♡♡♡」
「ん、んもう、だからぁ、早いんだってば、あっ♡」
こういうことはやたらとせっかちな旦那を笑いつつも、注がれる感覚が愛おしく感じる。
ああ、私、幸せだわぁ。
旦那の激しい鼻の音に合わせ、私も思わず鼻を鳴らして幸福をシェアするのだった。
おしまい