…ハイグレっていいよね。
我らの暮らす世界とは別の世界に存在するホンガーン王国、この中心部に位置するタリキ城の中庭では一人の女騎士が稽古に励んでいた。模造刀を力強く振る騎士の名はアルテミス、別の世界では女神の名を関するだけあり容姿は長身、ブロンズヘアーの長髪、キリッとした目、青い瞳、誰もが振り向くような美女だった。内心胸のサイズが小さい事や、恥ずかしがりやで人前では無口になる事が気になる18歳の女性である。
武芸全般に秀でており、剣を使えば負けなし、槍で薙げば周囲の敵は吹き飛び、斧を振り下ろせば魔物は裂け、弓を射れば百発百中、魔法も攻撃と補助を使いこなす……文字通り化け物と言ってよい女傑である。さらに民には心優しく子どもの面倒見も良い。国の外にいる魔物はアルテミスが倒してくれる。アルテミスの存在はホンガーン王国に生きる人々にとって女神のような存在であった。
さて、タリキ城にも大勢の兵士がいる。いるのだがアルテミスの存在がここで悪く働いている。
ふあ~あ、訓練なんてかったるくてやってらんないぜ。
そうそう、アルテミス様がいれば魔物なんて楽勝だもんな。
俺たちの出番なんて来るわけないぜ。それより今日帰りに一杯どうだ ?
アルテミスがいれば大丈夫、自分たちは戦わなくてもいい、ただ適当に生活していればいい。
そんな考えが人々に蔓延していたのだ。あまりにも絶対的な存在が近くにいれば自分一人くらい努力しなくても大丈夫だろうと考えた事がみなさんもあるのではないだろうか ? だがアルテミスは一人であり国を守る為には質は大事だがそれ以上に量が大事である。国を守るのは兵士一人一人なのだが……。
堕落していたのは兵士だけではない、民や国王もである。アルテミスの存在により魔物からの被害がグンと減り土地への被害が少なかったために物資の余裕ができたのだ。最初は民も魔物対策を考えて努力していたが途中でアルテミスがいるから安全だと油断した。
王も民への施しも忘れなかったが段々と酒池肉林に溺れるようになった。美女を侍らせ毎日宴会、王妃も王に愛想をつかし美男を城へ招き王と同じことをする……ただ一人、二人の間に生まれた幼きショタ王子だけが現状に危機感を抱いていたが誰も聞く耳を持たなかったのである。
端的に言えば、この国の連中はだらけきっていた。これをアルテミスのせいだというのは大きな間違いであろう、各々がするべきことを放棄したからの現状なのだから。
そんなタリキ城にも妖精の悪戯という危機が迫っていた。以前アルテミスは王国を襲撃していた妖精たちを撃退したのだが、人間を襲い苗床にしようとするゴブリンやオークとは異なり妖精は悪戯をするために生きているような連中であり行動が全く読めないのである。悪戯といえば可愛く聞こえるが、頭上に石を落としたり人間を崖から突き落とすという悪戯の領域を超えている為に討伐対象となったのである。
王国から少し離れた森の中にアルテミスはいた。仲間はいない、国王は『アルテミスが一人いれば十分であろう』と丸投げした。兵士たちもアルテミスに応援の言葉をかけるだけでなにも援助は無し。とことんわが身大事な連中である。というわけでアルテミスは一人で妖精討伐という任務を言い渡されたのであった。
「ふう……風の探査魔法にも異常はなし……こんな広大な森の中からどうやった妖精を探し出せばいいのかしら」
本来は魔導士が複数人同行して妖精の位置を特定し、先制攻撃か範囲魔法で仕留めるのが定石であるがここにはアルテミス一人しかいないので地道に探索するしかないのである。
『来たよ来たよおっかない女』
『私達で勝てるかなあ ? 』
『あのへんてこな道具試してみようか ? 』
『そうしようそうしよう』
悪戯することに関しては天下一品である妖精は、ある道具を森の中で見つけた。その道具は別世界でいう"銃"という物なのだが、妖精たちは"これ"が悪戯に使えると即座に見抜く。しかし"これ"がなんらかの理由で1回しか使えない事も見抜いていたので、ここぞというとびっきりの悪戯のときまで残しておこうと決めていたのだ。
まさに即断即決、妖精たちはアルテミスに対し風魔法を仕掛けた。
「……奇襲 ! ? 」
アルテミスもすぐに対処に動く。風魔法相手に回避は愚策、あまりにも攻撃範囲が広すぎて回避しきれないからである。定石はこちらも風魔法で打ち消すか防御魔法で耐えるかのどちらかである。
アルテミスが取ったのは風魔法での迎撃である。魔法の撃ち合いともなれば魔力の高い方が勝つ、上手くいけばアルテミスの魔法で妖精を一網打尽にできると考えたからだ。確かに間違ってはいない……が、今回は失策だった。1本の光線がアルテミスめがけて放たれる。ピンク色の光線は物理法則を無視するかのように風魔法を貫通しアルテミスに迫る。
「別の攻撃 ! ? 間に合わないッ……うああああッ ! ! 」
予想外の攻撃に対し反応が遅れたアルテミスは光線の直撃を受けてしまう。アルテミスの身体がピンク色の光に包まれ発光するもダメージは全く無く、光もおよそ5秒ほどで消え去った。
「な、なんだったんだ今のは……! ? 」
ダメージが無いことを不思議に思うアルテミスだったが違和感に気が付く。身体が言う事をきかず、妙に肌寒いのだ。
「な、なんだこれはッ ! ? 」
アルテミスはほんの少し前まで軽鎧に身を包み剣を装備していた。だが、今の彼女はハイレグという真っ赤な薄布1枚しか身に着けていなかった。へその部分がひし形に、股下が細く露出しているのは銃を作った者のこだわりか ? 履物もブーツを履いていたのにいつの間にか踵の高い真っ赤なハイヒールを履いている。もしこんな姿で冒険に出たら、冒険を舐めているとしか言えない服装である。
明らかに異常事態だが、アルテミスはそれどころではない。彼女の頭にはある単語が思い浮かぶ。
"ハイグレ"と……。
「ハイ……グレ……ハッ ! わ、私はなぜこんなポーズを ! ? 」
アルテミスは無意識のうちにガニ股になる。両手は股関節の前に移動し、ハイグレの言葉と同時に斜め上へ引かれる。
「こ、こんな事をしている場合では……ハイグレ……ちがう ! 私は ! ハイグレ ! ど、どうして ! ? 」
今は妖精を倒さなければならないのだがアルテミスが取った行動はハイグレという奇妙な行動である。
「魔法をハイグレッ、つ、使っハイグレ ! 何なのこれハイグレェッ ! ! 」
アルテミスはあらゆる行動が取れない。魔法は使えず剣もどこかに行って無い。ただできるのはハイグレと叫びバカみたいな行動を取る、これだけなのだ。
『これ壊れちゃったね』
『でもこの女倒せたね』
『この女利用できないかな ? 』
『うーん……』
戦いの音は止み、森に聞こえるのは木の葉が風で揺れる音、川に流れる水の音や魚が水面で跳ねる音……そしてアルテミスのハイグレと叫ぶやかましい声だけである。特にアルテミスの叫び声は森の静寂をかき消すほどの音量であり、森の動物も騒音の主であるアルテミスを警戒しているのか彼女の周囲に集まっていた。
『そうだ、この女を利用してあのお城を私たちの遊び場にしよう。ついでにいろんな魔法を使ってみよう』
妖精たちの考えは一つにまとまり行動に移した。
「ハイグレ ! な、なにをするのハイグレェッ ! ? 」
妖精はアルテミスに二つの魔法を重ね掛けした。"浮遊"と"魔除け"である。浮遊は対象を浮かび上がらせる魔法で重い物を持ち運ぶのに適しているが、浮かべるだけなので物を動かすには別の力が必要な魔法だ。次に魔除けは対象よりも弱い敵を近寄らせない魔法だが一定歩数を歩くと効果が切れてしまう。
妖精は確かに人間にとっては厄介だが野生の感を持つ動物にとっては餌にすぎない。すぐ居場所がバレてしまうからである。そこで妖精はアルテミスを徹底的に利用しようと考えた。まず浮遊と風魔法を組み合わせてアルテミスを移動させる。浮遊は対象物を浮かび上がらせるだけなのでこれだけでは使い物にならないのだが、風魔法を推進力にする事でハイグレしかできないアルテミスの身体を移動させたのだ。それだけではなく、アルテミスを浮かべる事で"1歩も歩かせることなく移動させて魔除けの効果を持続させた"のである。
アルテミスの身体は浮かび上がるとゆっくり前進を始める。ハイグレを続けるアルテミスの身体に大勢の妖精たちが飛び移り、まるで船を動かす船乗りたちのようにアルテミスの進行方向を変えながらタリキ城に移動していく。
アルテミスは妖精が自身の身体にくっついている事はわかっていたが、ハイグレしかできない今の彼女にはどうすることもできない。
『この女なぜ、とかどうしてとしか言わないよね。きっと口下手なんだよ』
『不愛想だしね。絶対友達いないよこの女』
『ほ~ら笑え~コショコショ』
「ハイグレ ! あはは ! や、やめて ! ハイグレ、ハイグレ ! 」
魔除けの魔法をかけられたアルテミスは妖精の仲間だと認識されており、妖精に攻撃を仕掛けようとする野生動物たちは1匹もアルテミス達に危害を加えられなかった。森の動物よりもアルテミスの方が強いからである。わかりやすく言えばアルテミスのレベルが高いのだ。
むき出しになっている腋を、へそを、首筋を、踵を、股関節、身体のあらゆる所を妖精にくすぐられ大笑いする乗り物アルテミス号と化した彼女は妖精操縦のもとゆっくりと、しかし確実にタリキ城へ向かい前進していった。
*
タリキ城の城下町に住む人々や町の見張りは近づいてくるアルテミスを見ると『あっ、今日も帰るの早かったな』程度にしか考えなかった。だが接近してくるにつれて怪訝な表情を見せる。当然だろう、アルテミスは地面スレスレに浮きながら移動してくる。さらに誰も見た事も無いとんでもない姿と奇妙なポーズで大笑いしながら向かってくるのだから。おまけにハイグレという呪文のような言葉を何度も叫んでいる。
「あはは ! いや、いやだ、ハイグレ ! やめて、こんな姿ハイグレ ! 見られたくない ! あははハイグレ ! 」
泣く、笑う、悲しむ、様々な感情を顔に浮かべながら妖精に操られるアルテミスは城下町に到着した。
「あ、あのアルテミス様、いかがしました……うおッ ! ? 」
「ハイグレ ! ご、ごめんハイグレ ! なさいハイグレ ! 」
アルテミスに触ろうとした門番が魔除けの力で弾き飛ばされる。謝るアルテミスだったがそれでも妖精の魔法は全く解ける様子が無く次々と城までにいた一般人や近寄ってくる兵士を蹴散らしながらゆっくり移動していく。
お母さん、アルテミス様どうしちゃったの ?
シッ、見ちゃいけません。
なんだよあの姿、まるで痴女じゃねえか ! ?
アルテミス様、まさか誘ってるのか ! ?
よせよせ、なぜだか近寄れないんだよ。
おねえちゃんおもしろ~い。ハイグレ ! ハイグレ !
アルテミス様おやめください ! 子どもたちが真似しています。どうしてそんなハレンチな姿を ! ?
他者の反応は様々だったが、共通点は"誰もアルテミスを助けようとしない"事である。自分たちが危機に陥ったらアルテミスに助けを求め、いざアルテミスに異常があっても誰もが助けに行かない。傷つくのが嫌だから、それが大多数の人間なのだろう。
「た、助けて、ハイグレ ! はははお願い、ハイグレ ! だれかぁッ ! ハイグレ ! 」
(どうして ! どうして誰も助けてくれないの ! ? )
アルテミスが助けを求めても誰も動かない。ハイグレと叫ぶアルテミスを気味悪がる者、真っ赤なハイレグ姿のアルテミスをエロい目で見る者、間抜けなポーズを取るアルテミスを嗤う者、国民は皆アルテミスを見捨てた。
タリキという町と城に住む者達に絶望しながらも笑いながらハイグレを続ける無敵の空中要塞同然であるアルテミスは開けっ放しだった城門をくぐり玉座の間まで前進していった。
「なっ ! ? アルテミス、何をしているのだ ! ? 」
いつも通り宴会の真っ最中だった王様や王妃は突然の乱入者であるアルテミスに度肝を抜かれた。
「へ、陛下……ハイグレ、ご無礼をハイグレ ! お、おゆるしハイグレ ! ははは ! 」
空中浮遊し国王陛下の御前で爆笑する無礼を働くアルテミス。取り押さえよと命令する国王夫妻だが、やはり誰もアルテミスに近寄れず魔除けの効果で吹き飛ばされる。
『ここだよここ、あの椅子から大きな魔力を感じる。あの椅子にこの女を移動させれば面白い事になるよ』
『オッケー、多分アルテミスってこの女の名前だよね ? よしいけアルテミス、生意気なオッサンを倒すんだ』
「いや、いや、やだぁッ ! ハイグレ ! 身体がいうこときかない ! こんな姿見られたくない ! 笑いたくないのに ! あはははは ! ! ハイグレッ ! 」
誰も笑い叫ぶアルテミスの進行を止められず国王夫妻は吹き飛ばされ玉座から転がり落ちた。玉座の上にガニ股のまま立ったアルテミスは自然とその場にいた全員を見下ろす形となる。
国王夫妻や兵士が、大臣がアルテミスを見上げる。誰かがゴクリと生唾を飲むが幸いにもアルテミスのハイグレと叫ぶ声にかき消された。男が見ているのがどこか一目瞭然だろう、アルテミスは美人だし、そもそも赤い色は非常に目立つ。この世界には存在しないハイレグ水着やハイヒールは全て赤で統一されている。さらに股やお尻の食い込み、股間に近いほど生地の面積は狭いので丸見え状態となっている。アルテミス自身は先ほどからなんとなくわかっていたが、わかった所でどうしようもない。今のアルテミスはハイグレしかできない身体なのだから。
(みんな私の……あそこ見てる……やだよ、まだ彼氏だっていないのに、年上の男の人に見られて……)
『あ~、また泣き虫になりそう。ほらほら笑って、スマ~イル』
妖精たちがアルテミスの口元を無理矢理吊り上げて笑顔にする。妖精の悪戯に抗う事ができないアルテミスはひたすら耐えるしかない。既に身体は疲労困憊、森で光線を浴びてから数時間も同じ姿勢で大声を出し笑い続けている、本来であれば倒れても不思議ではないのだが例の光線による力がそれを許さない。
さて、妖精が注目した玉座……ここはタリキ城の魔力が全て集中する場所だったりする。歴代の国王は玉座に座り有事の際は玉座で魔力を溜めて大火力の魔法で外敵を薙ぎ払うのだ。では国王の資格とは何か ? 至ってシンプル、玉座の上にいる事である。あまりにもいい加減な判別方法だが国や大陸の名前から察するに"問題があったら誰かが何とかしてくれるだろう。俺は知らん"と玉座を作った本人は考えていたのかもしれない。
つまり、今の国王はアルテミスという事になってしまう。アルテミスにとっての外敵とは誰か ? そんな事は言うまでもなく"自分を助けてくれず奇異の目で見ていた国民全員"に違いない。
『見ないで ! みんな出ていけェッ ! ! 』
アルテミスの強い願いが大規模な転移魔法を発動、アルテミスの拒絶反応に該当した国民や王族はただ一人を除いて城下町の外へ追い出されてしまった。
アルテミスに頼り切っていた者達は皆だだっ広い野原にポツンと追いやられてしまったのである。
人間の気配がまるで感じられなり静寂なはずである城の中で聞こえるのは、風の音、妖精の話声、アルテミスのハイグレと叫ぶ声だけである。
『邪魔な人間いないね。これで思いっきり遊べるよ』
『ところでアルテミスどうしよう ? このままだと死んじゃうよ ? 』
『そうだよね、これじゃあお水も飲めないしご飯も食べられないよ』
妖精たちは考え込む。いまだに玉座の上でハイグレを続けるアルテミスだったが、このままでは妖精の話した通りアルテミスは助からないだろう。ハイグレ銃は妖精が森で見つけたのを悪戯目的で使っただけなので仕組み等に関しては何もわかっていない。アルテミスのハイグレ化を治す方法なんて知るわけがないのだ。
『なにかショックを与えてみよう』
そう決めた妖精だったがどんなショックを ? そう考えた時、唯一城から追い出されなかったショタ王子がが玉座の間へ入って来た。
「みんなどこへ……アルテミス ! な、何をしているんだい ! ? 」
「ハイグレ ! し、ショタ王子……ハイグレ ! 見ないで……ハイグレ ! 見ないでください ! 」
ショタ王子はあまりにも衝撃的な現場に言葉を失うがそれでもアルテミスに向かって歩みを進める。
「アルテミス、なにか呪いをかけられたのかい ? それとも妖精の魔法で ? どうすれば元に戻るんだ……」
(王子……私を心配してくださっているのですか ? )
王子も年若いとは言え男、アルテミスの煽情的な姿に興奮し下の息子がスタンダップしているのは間違いない。だがこの場面ではアルテミスを助けようとする気持ちの方が上回った。
この健気な王子を妖精が利用しないわけがない。妖精は風魔法の応用で音を変え"アルテミスの声真似"を行った。
『王子……聞こえますか ? アルテミスです。私は何者かの呪いにかかり、こんな姿にされてしまいました……』
「ハイグレ ! わ、私の声……あはは ! ! 」
妖精は転移魔法の後で中断していたくすぐり攻撃を再開、アルテミスに余計な事を言わせない為……そしてなによりも自分たちが楽しむためである。
「アルテミス ! 呪いはどうしたら解けるんだい ! 僕にできる事ならなんでもするよ。いつもアルテミスに助けてもらっているんだ。今度は僕がアルテミスを助ける番だ ! 」
(王子…… ! )
初めてかけられた言葉にアルテミスは胸がドキドキしていた。ハイグレのやりすぎではなく、アルテミスが欲しかった言葉をくれたからである。
『え ? え~とそれは……ズッコンバッコンやっちゃって♪』
「「 ! ? 」」
この言葉に驚く王子とアルテミス……もっともアルテミスは笑わされていた為心の中で驚いたのだが。
『王子、それで治るかどうかわかりませんがやってみてください。私を助けて、私のショタ ! 』
妖精はテンションが上がったのかノリノリでアルテミスが言わないような言葉で王子を誘う。顔を真っ赤にするショタ王子ではあるが意を決したかのように1歩踏み出す。
「……わかった。一応僕も知識だけなら教えを受けている。いくよ、アルテミス」
「ハイグレ ! 」(お、おやめください王子 ! )
『呪いでハイグレしか話せませんが、王子……感謝いたします。ちなみに今のは、私は準備万端よ♪ と言っています』
「ち、ちが……ハイグレ ! 」
この場を取り仕切るのは妖精、まともに話せないアルテミスと漢として覚悟を決めた王子は既に妖精のおもちゃになってしまった。妖精の浮遊魔法で天井を向いた状態で床へ降ろされたアルテミスだったが、それでもハイグレは止まらない。
「ご、ごめんよアルテミス、初めてだから……すごいなぁ……もうこんなに濡れてる。汗もびっしょりだ、大変だったねアルテミス。僕も全力で挑むよ」
王子は未熟な自らのモノをアルテミスの中へ入れた。
「 ! ? は、ハイグレ ! ハイグレ ! 」
『王子、とてもいいです。さあ、もっと動いてください。もっと私の中をかき乱してください』
「わ、わかったよアルテミス ! 」
腹話術氏と化した妖精はアルテミスの本音を言い当てるかのように言葉を紡ぐ。王子は小さな体で懸命に腰を動かす。モノを入れて出して、男を知らないアルテミスの身体は王子を受け入れるように自然と足を王子の腰にまわす。たとえハイグレの呪縛から完全に逃れていなくても女の身体に眠る欲情が勝ったのだ。
「アルテミス、アルテミス ! 好きだ ! 君が欲しいんだ ! アルテミス ! 」
「ハイグレ ! ハイグレ ! 」
『ショタ、私もです ! ショタのお子様チンポ ! 私だけのモノです ! 私のショタ ! 』
心に眠る想いを吐き出すショタ王子、顔を真っ赤にしてだらしないアヘ顔をさらし玉座の間でハイグレと叫ぶアルテミス、演技に熱が入り変な気持ちになってきた妖精。三人の行動はラストスパートに入った !
「出る、出るよアルテミス ! 」
「ハ、ハイグレェッ ! 」
『出してください ! お子様チンポから子種を ! ショタァッ ! 』
ショタ王子が青い欲望をアルテミスの中へ吐き出しアルテミスの身体が全てを受けとめる。妖精たちも顔を真っ赤にし二人の性行為を目の当たりにした。中には目を手で押さえる妖精もいたがしっかり指の隙間から覗いていた。
するとゼンマイがきれた人形のごとく、アルテミスのハイグレが止まった。
「と、止まった……ようやく……」
ハイグレ銃の効果が切れたのか、はたまた別の作用か ? 理由は不明だがついにアルテミスは身体の自由を取り戻した。
ショタ王子は初めての性行為による緊張で、アルテミスは全身にかかる凄まじい疲労によって仲良く力尽きる。
なお、外に追い出された国の連中は、最初は中に入れろと怒鳴り散らし、次に懇願し、お次は魔物の襲撃にビビりアルテミスに助けを求めるが聞こえるわけもなく弱い兵士が犠牲に。アルテミスにようやく許されたのは人口が激減した時だそうな……。ま、自業自得ですね。
*
翌日
「お、おはようアルテミス」
「お、おはようございます王子」
ギクシャクする二人ではあるが初々しい恋人のようである。
「と、ところでアルテミス、まだ着替えないのかい ? 」
王子はアルテミスの服装を恥ずかしそうに見る。アルテミスが着ているのはいまだに昨日のハイレグ水着とハイヒールのままだ。
「じ、実は着替えようとしたのですが、何故か他の服を着ると嫌悪感が……まだ呪いの影響があるのかもしれません」
どうやらハイグレ銃の効果はまだ微妙に残っているらしいが、内心喜んだのは王子の秘密だ。
「そ、そうか……まずは妖精から城を取り戻さないと」
『まあまあ変態のアルテミス、もう少し遊ぼうよ』
『そうそう、どうせだから外の連中もう少し反省させておこうよ。僕たちも飽きたら森に戻るからさ』
「私は変態では……でもまあ、もう少しくらいなら……」
アルテミスはチラッと王子を見る。なんだかんだ言ってガッツリ王子とお楽しみする気満々のようだ。
「お、お手柔らかにお願いするよアルテミス」
眠れる猛獣を起こしたショタ王子は今後しばらく腰痛に悩まされたそうな……。
アルテミスとショタ王子、2人が今後どうなるかは皆様のご想像に……1つ言えるのは、決して不幸にはならないでしょうと…