勇者パーティーの戦士さん 世界を救う裏側で勇者くん♂とラブラブ♡生活 作:庭鳥
オリジナル:ファンタジー/恋愛
タグ:R-18 ボーイズラブ 男の娘 異世界 勇者 ファンタジー ホモ
勇者パーティーで蔑まれる無能戦士さん、表面はいいが本性は暗めな勇者くん♂あとは愉快なサブキャラ扱いの女性陣二人(聖女さんと魔法使いさん)によるホモエロ小説です。BLタグは仕方ないので付けましたが、あくまで男性向け作品なので注意です。
「ハァァァッ!!」
気合の声とともに植物型の魔物が切り裂かれる。敵を一刀両断しその体液を浴びたのは、あどけない表情をした少年とでもいうべき年頃の者であった。彼は剣を収めると笑顔で振り返った。
「もう大丈夫ですよ!」
「あ、ああ……ありがとうございます!勇者様っ!」
感極まったようにボロボロの服をした女が縋り付いた。彼女は半泣きのまま、よほど怖かったのだろう、その少年に向かって言葉を続けた。
「あなた様がいらっしゃらなければ本当にどうなっていたことか……っ! ありがとうございます、ありがとうございます……っ!」
「ご安心ください。僕たちが街まで送り届けます。もう心配することは何もありません。」
勇者はそのように言った。その少し遠く……引き倒され、幾つかの死体が転がった馬車の横で、二人の女が腕組みをしながら口端をあげて眺めていた。ふと、その一人の三角帽を被った細身の女がにやついたまま口を開いた。
「いやー、やっぱり勇者さまは凄いねぇ。ああやって英雄としてふるまえるのも才能かな?」
「そうでしょう。まあ裏の顔を知ったらあの人もガッカリするかもしれないですが……。」
「まあガキくさいところはあるわよね。あーあー、勇者っていうにはちょっと威厳は足りないわよねー。まったく!いつまでも手がかかって困るわーっ!」
「そうですね。ちゃんと私みたいな可愛くて有能な人が近くで支えてあげないと……。」
「……。」
「……。」
二人が無言で睨みあった。チッという舌打ちの音が、どちらともなく響く。
「死ねよ、アバズレ聖女が……。」
「まあ魔術師さんったら、頭だけじゃなく口まで悪いとは……。治してあげたいのだけれど、臭すぎてちょっと近寄れないわね……。」
二人はブツブツと言い争いながら歩き始めた。しかしふと、魔術師は後ろを振り向いた。後ろでは、気弱そうな中年男がよたよたと歩いてきていた。彼女は怒りをぶつけるように、彼に向ってぶっきらぼうに声を出した。
「ねえ~、戦士さんもこの女、聖女っていうには性格悪いって思うわよね~?」
「あ、ははは……どうでしょう……。」
「まあ酷い。否定してくれないなんて、あなたは冷たい人ですねぇ。
「アハハ! 言えてるっ!」
三角帽子の魔術師は、先ほどまで険悪な雰囲気であった聖女の言葉に無邪気そうに笑った。聖女の方は、杖を突きながら腹立たしそうに歩き始めた。意外と性格が悪いと言われたのが効いているようであった。実際彼女の素行が、聖女という呼び名とは程遠いものであるのも事実なのである。勇者に聞こえやしなかったかとチラチラと視線を向けている。彼女は声を微妙に荒げながら、振り返りもせずに言った。
「何を黙ってるのですか、さっさと行きますよ。」
「タハハ……すいません……。」
「ほら、ぼさっとしてないで荷物持ちなさいよ。ドーセ、アンタ戦闘じゃ少しも役に立たないんだから!」
「わ、わかりました。」
御年35歳。彼のクラスは戦士。最も多く、最も殉職率の高い壁役のクラス……しかし彼は……一般的にという意味ではなく、魔王討伐を目指す勇者パーティとしてはとてつもなく弱かったのである。そういう理由もあり、理不尽に……ではなく……命のかかわる戦闘で役に立たないという極めて妥当な理由で……彼は普段から仲間に軽んじられていたのである。
彼はソリを引きながら大荷物を抱えて歩いていく。馬車も欲しいが武器も欲しい、鎧も欲しい、盾も兜も食料も必要だ。なんなら酒や紅茶だって欲しかった。小国から出発した勇者パーティーは、世間から受ける羨望のまなざしとは裏腹に経済状況は良くなかった。結果、戦士の彼が大半の荷物を引っ張って歩いているのであった。聖女はそんな彼の様子を見て、愉快そうに顔を歪めていった。
「まあ大変そう……でも荷物持ちくらいしか出来ない無能なんだからしょうがないですよね……。恨むなら神々ではなく、自身の才能のなさでも恨んでくださいね。」
「あ、ははは……。」
「……。」
いつの間にか、勇者が彼らのそばに立っていたので二人はぎょっとした。護衛対象の町娘には一応注意を向けているようであったが、彼は冷たい視線でパーティーメンバーを見ていた。それは先ほどまで勇者としてふるまっていた風貌とは異なっていた。彼は魔術師と聖女と一緒にいた、戦士のほうを見ると「フン……。」と不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「また二人とも戦士さんをからかっているんですか。……いいから早く行きましょうね。その人とあんまり長くしゃべってると肺が腐りますよ。」
「お、勇者くんもなかなか言うね~! そうしよっと!」
「私も肺が腐るのは嫌ですわん……。まあ私ならそのくらい治せますけど……。」
そういって彼らは歩を進めていく。チラリと一瞬だけ勇者は振り返り、重そうな荷物を持った戦士を侮蔑的な目でにらみつけた。
「フンっ!」
勇者が不機嫌そうにカチャカチャと剣を揺らしながら歩いていくのを、ぼんやりと戦士は眺め続けていた。昼下がり、彼らのパーティーはまだ未熟。街は近く、しかし未だ魔王への道は遠かった。
* * * * * * *
その街の歓待はなかなかのものであった。勇者たちは街の名士から丁重に迎え入れられ、質のいい寝床と食事まで提供された。その代わりに面倒ごとを二、三頼まれもしたが……まあこれもいつものこと、お決まりのパターンであった。
「それで部屋割りはどうするの?」
「いや……どうするって魔術師さん……。」
宿屋のテーブル席の前で、装備を脱いで楽な姿勢になった彼らが話し合っていた。聖女は、わけのわからぬことを言うなぁ、とでも言いたげな胡乱な目つきで魔術師を見ていた。
「二部屋なんですから、普通に性別ごとに分かれるでしょう。」
「えー、そう?アタシは別に勇者くんと一緒でもいいけど!」
「慎みなさい、親しき仲でも分別はわきまえるべきですよ。」
「慎み~?」
今度は魔術師が聖女を胡乱な目で見る番であった。魔術師が明らかに、聖女が服の中に隠している酒瓶の辺りを見ていたので、聖女はこの女が余計なことを言わないかと額に汗を浮かべて焦っていた。ちなみに彼女の所属する教会では、酒は禁制品である。
「僕も……。」
ずっと黙っていた勇者がしゃべり始めた。彼も革鎧を脱いで、剣こそぶら下げているもののラフな部屋着になっていた。筋肉質な体つきこそしているが、まだ幼さが残ったようなしなやかな肉体が見て取れていた。勇者は先ほどまで町人に見せていた愛想のいい顔ではなく──恐らくこちらが素の性格なのだろう──冷たい表情のまま、肘をテーブルについたまま言った。
「僕も戦士さんと一緒でいいかなと思いますよ。」
「んじゃ、けってーい!」
魔術師がそのように元気に言って立ち上がった。その手にはきらりと光る金属製のカギが包まれていた。魔術師がちらりと勇者のほうを覗き見ながら、階段をのぼって二階に歩んでいく。そのあとに聖女が続いた。
(まあチャンスはいくらでもあるわよね……? 旅は長いんだし。)
(勇者様は好きですけど、晩酌も見られたくありませんわん……。まあもっと仲が深まれば自然とお近づきになれるはずですわん。私のほうが可愛いですし……。)
彼女たちは各々、そんなことを考えながら寝静まりに行った。まあ彼女らも言い争いこそするが、そんなに仲の悪いわけではないのだ。いやおそらく嫌悪こそ覚えているだろうが、睡眠欲求を抑えてまで争うほどの憎しみでもないのであった。
彼女らを男性陣はテーブルに座ったまま見送った。ちなみにテーブルの隅で戦士はずっと縮こまっていた。初めから彼に発言は求められていなかったようであった。
「早く寝に行きましょう、さっさと鍵かけたいので急いでください。」
勇者がクールな顔でそういった。その微妙に紅色が差し込んだ頬は若者とは思えないほど達観としていて超然としたものであった。まさしく彼が勇者にふさわしいと……誰もが魂で感じ入るような、そんな美しい表情なのである。
* * * * * * *
「お゛っ゛♡♡♡ ケツマンい゛ぐ゛ぅ゛っ゛♡♡♡」
……と、部屋の中では……先ほどまでクールぶっていた勇者はよがり狂っていた。パンパン♡♡と肉体が前後に揺れるたび、ぷるぷるとした無毛の金玉とチンポが揺れていた。その表情は感じ入る快楽とは逆に、苦悶するかのように大口を開けて歪んでいる。
「ハァー……ハァー………。」
勇者の後ろにいるのは戦士であった……。無論、ただ突っ立っているだけではない。目の前の美少年たる勇者に向けて腰を打ち付けているのである。彼は一瞬疲れたように、息をついたが、キッと睨むように勇者の視線が飛んできた。
「休んじゃ駄目ですよ !!♡♡♡ もっと突いてください!!♡♡♡♡」
「わ、わかりました……。勇者さん……。」
「お゛っ゛♡♡♡ そ゛こ゛ぉ゛効くゥ……♡♡♡」
勇者は恍惚の表情で低声で唸っていた。その顔はとても勇者として世間に見せられるものではない。仲間たちに見せたやや陰気な少年然としたものでもない。獣めいた、肉欲に溺れる只の人……というよりもただの色狂いのような下品な感じ顔であった。
「もうイ゛ク゛ゥ゛……♡♡♡ イク、イクゥ……♡♡ 出ます、出ます♡♡♡ チンポイキもケツイキも来ちゃいますぅぅぅ……♡♡♡」
低声を出しながら勇者はビクビクと絶頂した。うねりをあげるアナは……勇者の言葉を借りれば
「……ハァ♡♡……ハァ♡♡」
彼はそうして、二つの絶頂の余韻を感じていた。二種類の絶頂に同時に達する……というのはなかなか難しいことであるが、しかし彼は当然のようにしていた。これは極めて彼が慣れているということを示していた。同様に、やはり慣れたような表情で、彼は結合していた部分を引き抜くと、戦士の方に振り向いた。
戦士は、絶頂に至ったばかりの勇者を気遣って、動きを止めていた。勇者はそれを、ありがたがるような、不服に思うような、頬を朱色に染めたままの淫靡な表情をしながら見ていた。彼はぬぷりと肛門に指を入れて、確かめるように、感じ入るようにかき回した。そうしてから、指を見つめて、何の躊躇いもなく指を愛おしそうに咥えると、それをなめながら口を開いた。
「まだ、イってないですよね……? ん、ちゅぶ……♡♡」
「え、ええ……まあ。」
「良いですよ……僕は大丈夫なので……ん♡♡」
その言葉とともに、ぬらぬらとした我慢汁と腸液で濡れぼそった
彼らがこういう関係になったのは少し前であった。であるにも関わらず、最近は毎晩彼らはまぐわっている。一日たりとも空ける日などない。
曰く……「旅は長いんですから。」、「パーティーに迷惑をかけないように男だけで処理しましょう。」、「勇者パーティーが娼館通いなんて、評判にかかわります!」……なんて言葉とともに大抵勇者のほうから誘っている。……その言葉がホモセックスのための口実づくりであることに気づけぬほど戦士は鈍いわけでもなかった。だが現状、ずるずると彼とこのような関係を続けている。
(なんか、良いのかなぁ……。)
戦士はそのように思っていた。自身が勇者パーティーなんぞにいることについて、彼とこんな関係を続けていることについてなど……。しかし男同士、ということを感じさせないほどに勇者は美しい……いやむしろ可愛らしいのである。元々の見た目もそうであるが、脱げばさらにすごい。鍛えられた程よい筋肉の乗っているが発展途上と感じさせる体が……鎧で蒸れるのだろう、それを脱いで服を脱ぎ去った時の芳醇な香りはどうにも彼にエロシティズムを感じさせてしまうものであった。
それこそ男同士……なんていう不慣れな行為について忘れさせてしまうほどに。
香り、そう汗の香りである。時折戦士は、女の汗の香りをかぐことがある。同パーティーである聖女と魔法使いのものである。それは勿論意識的に、ではない。旅を続けていれば、戦闘を重ねれば……共に過ごす時を重ねれば、どうしてもそのような機会は巡ってくるのである。
……だがそこにあまり、興奮を見出すことが彼はなかった。正確には、以前よりもならないようになったのである。その時、目の前で乱れる勇者の身体から飛び散る汗の一つが彼の顔にかかった。勇者が汗をかくほどの、激しいホモセックスである。男の汗の香りである。通常何も思わぬはずの……以前は何も思わなかったはずのその香りをかぐと……どうしてか得体のしれないゾクゾクとした性欲が沸き上がってきてしまうのであった。
戦士はベッドに寝そべった勇者に、覆いかぶさるようになると、耳に向かって興奮をそのまま囁くようにしながら言った。
「う……♡ すいません、勇者さん……♡ 出ます……♡」
「いいですよ……このまま……♡♡ んん……!♡♡」
ドピュルルルル……♡♡
……と、そんな風に。勇者は戦士の射精を受け止めた。ぬぷり、ぬぷり。引き抜かれてみれば、戦士の雄々しいペニスはぬらりと濡れている。勇者は恍惚とした表情でそれを見ていた。
「ハァ……ハァ……。」
戦士は心地よい疲労感に溺れ始め、ベッドにべったりと手をついた。それを勇者はねっとりとした陰性の瞳を向けた。睨むようにも、懇願するようにも見える。だがどちらも違うのだろう。彼は愛おしそうに一瞬、戦士の手に触れると唇が触れ合いそうな距離でささやいた。
「あーあー、疲れちゃったんですか? 全くしょうがないですねぇ。」
勇者が体制を変えた。
「ほら♡♡ ほーら♡♡」
勇者はそうして、男性にしては大きい尻を揺らした。掴めそうな程の尻肉、白濁が漏れ始め淫靡な穴、汗のたまり始めた膝裏。明らかな誘惑である。世界を救うはずの勇者の、である。戦士のしだれたペニスが再び生気を取り戻し始めていた。勇者はそれを見て、粘つくような笑みを浮かべながら、彼に向かって枝垂れかかっていった。
* * * * * * *
旅の始まりのころ、彼らは同じように宿屋の部屋で寝泊まりをしていた。魔王を討つとかいう大義を任され……王国の騎士団の一兵卒であったはずの彼が、勇者パーティーの一員として任命され……そしてしばしの間、気の合わない仲間たちと数日過ごした日のころであった。
その日も戦闘をこなし、戦士は泥のように疲れていた。それに彼の本心として、このパーティーは居心地の良くないものであった。魔王を討つという大義すらも、他国の動向を警戒して軍を動かさないという王国の態度を、ある程度見抜いていた彼にとっては空虚なものに思えていた。彼は他のパーティーメンバーのように、勇者としての責務に舞い上がれるほど若くもなく、そして有能でもなかった。
表面は取り繕っているようであるが口数が少なく寡黙な勇者、同様に繕っているが陰湿な性格でどうやら戒律違反の常習者らしい聖女、お転婆で色恋沙汰に夢中な魔法使い……彼はどうにも彼らに対し、疎外感を感じ違うものであると思っていた。事実、違った。若くなく、強くなく、自信すらない。勇者のことも、他よりましといえどそれほど戦士は好きではなかった。
「戦士さん。」
ランプの消えた暗闇の中で、その声は聞こえた。宿屋の中でしばしの間静寂が支配した。
「…………。」
戦士は眠ったふりをしようとしたわけではない。ただ、どのように返答をすればいいのか迷っただけだ。身じろぎもせず、この距離感の掴めない若き勇者に何と答えればいいか迷っただけだ。だがそれが結果的には、狸寝入りとなったのだろう。それ以上の勇者の言葉は聞こえず、何か小さな声が聞こえてきた。
(……え?)
彼は初め、聞かなかったふりをするつもりであった。
「ウ、ウウ……。」
そんな、声が聞こえた。予想だにしてはいなかった。聞こえたのは勇者のすすり泣く声であった。声を抑えて、気を付けなければ同じ部屋であるのに聞き逃しそうなほどの小さな声で嗚咽している。
「勇者さん……?」
「……っ!?」
戦士は声を出した。出さなければならないと思った。その声とともに嗚咽が瞬時にとまった。再び静寂が暗闇の満ちた空間に響く。……もしかしたら、気のせいであったのではないかと……彼は思わないでもなかった。泥のような睡眠感覚がもたらした幻想であったのではないか、と。しかし耳にはあの哀れっぽい泣き声が響き続けていた。幻覚ではない……と、彼は思いなおしてから……ベッドに横たわったまま声を出した。
「勇者さん。」
「…………。」
「泣いて、いたのですか?」
「…………。」
「…………。」
「……泣いて、いました。」
静寂の後、よく通る声が聞こえた。しかし掠れた泣き止んだばかりの声であった。その発言は勇者にとって珍しいものであった。彼の普段の、超然とした様子からは想像もつかぬ声色であった。
「……そう、ですか。」
「ええ……。」
「…………。」
「……フフ、なんで泣いてたって聞いても良いんですよ。」
勇者がそのように独り言のようにつぶやく声が聞こえた。ごろり、と彼が寝返ったのだろう。衣擦れの音が戦士の耳に聞こえた。彼の息遣いの方向が変わった。
「僕は……戦いたくなんてありません。」
「戦いたく、ない……ですか。」
「殺されたく、ないんです……。怖いんです。でも、皆よりも強いから、僕が魔王に挑まなきゃって……それが当たり前みたいになって……。重くて苦しんです。怖いのに、期待が嫌で嫌でたまらないんです。」
「……それは。」
「フフ、勇者なのに! ……おかしいですよね?」
「いえ、おかしくは……戦闘なんです。殺し合いなんです、から……恐怖くらい誰でも感じると……。」
「そうですね、でもね。それを乗り越えるから"勇者"なんです。……僕は、恐ろしい。乗り越えたくもない。……ただ逃げ出したい。使命からも、期待からも……ほんとはね、世界なんて救いたくすらありません。自分が可愛いだけの俗物なんですよ。」
暗闇の中、毛布のずれる音ともにそのような声が聞こえた。戦士はその中で視線を感じた。多分、彼は勇者に見られていた。月明りすらささない暗闇の中で、見えないはずの勇者の黒髪と紫の瞳を幻視した。
「戦士さんは童貞ですか?」
「えっ!?」
「童貞、ですか?まじめな質問です。」
勇者は確かに、極めて真面目そうな声色で問いかけた。戦士はその質問に戸惑い、しどろもどろになりながらも記憶を洗う。ドウテイ、童貞……。頭の中の辞書を総動員して、同音異義語を検索しまくる。……だが童貞なのだ。彼の問いかけはその一点であったのだ。彼は観念して答え始めた。
「い、いえ……実は違いますが……。」
「……そうですか。僕は童貞です。……嫌ですね、なんか。一回もセックスも出来ずに死ぬなんて。」
「セッ……!?」
「なに動揺してるんですか、僕たち何回も一緒の宿で眠っていますのに……。」
何回も一緒の宿で寝ていますのに……ナンカイモイッショノヤドデネテイマスノニ……。
……と、戦士の頭の中でその言葉が繰り返し
……その声は、そんな天性の誘う月の魔力を感じさせる声色であったのだ。明らかに、はっきりと、知らずとも、意識的としても。そんな声色であったのだ。床のきしむ音が戦士の耳に届いた。
「ねえ、戦士さん。」
「……な、なんでしょうか?」
「僕の童貞、もらってくれませんか……?」
「え、あ……童貞?」
「童貞です。」
床がきしむ、暗い影が近づく。彼の息遣いが荒い。……勇者が言葉をつづけた。
「童貞だけじゃなく……処女も……初めてのキスも……手を初めてつなぐのも……抱きしめるのも、られるのも……。全部全部、もらってはくれませんか?」
「……っ!?」
窓から月明りが差し込んだ。照らされたのは裸体……勇者は全裸であった。均整の取れたやや筋肉質な体、しかし身長はそれほどでもない……。艶やかな黒髪と、紫色の瞳は明らかに、興奮に取りつかれている。寝汗だろうか、
「僕は世界を救う勇者になります。貴方は僕を救う救世主になってはくれませんか?」
「……勇者、さん。」
いつの間にか服を脱いだ勇者が、するりと戦士のベッドに潜り込んできていた。彼のやや長めの黒髪が、戦士の顔にしだれかかった。
「勇者、さん……ぼ、僕は……。」
「知ってます。」
勇者が短くつぶやいた。彼が胸元に、まるで眠るように倒れかかってきた。或いは戦士に抱き着いてきたのだろう。……震えていた。その体は、どちらの理由で、なのだろう。雨に打たれたように小さく震えていた。
「僕は……ボクハ……。」
「……うん。」
「……僕なんかで、よければ。」
「ん、ちゅぷ……。」
待ちきれなかった……とでもいうように、戦士が言い終わった瞬間に彼の唇は塞がれた。舌が入ってくる、手が巻き取られて両手とも指と指を絡ませあう……勇者の体温が直に伝わってくる。彼の手が器用に、或いは無理やりに、戦士の衣服をはぎ取り始めた。
「戦士さん……っ♡♡ 戦士さん……!♡♡」
「……っ!♡」
勇者が抑えきれぬ欲望を煮立たせるように、戦士の鍛え上げられた尻に触れた。
…………というのが、つまりは初夜であった。戦士が拒めるわけもなかった。人間として、大人として、戦士として、そして何よりも男として。……彼の朱のかかった顔を見れば、そんなわけもないのだけれど、まるで
戦士が脱力感とともに目を覚ました時には、既に日が昇っていた。
「ごめんなさい……。戦士さん。」
朝になった時、勇者はそれだけ呟いた。彼はその時も泣いていた。戦士は何かを言おうとして、何も言わずに彼を抱きしめた。抱きしめても彼は泣いたままだった。むしろ、すすり泣きから、泣き声は強くなっていった。
「僕が、守ります。貴方は、僕が……。」
勇者の嗚咽の中に、そんな言葉が混じっているような気が、戦士にはしていた。
* * * * * * *
「んん!!♡♡ なかで出してくださいっ!!」
「ンン……勇者さんっ!♡♡」
ドピュ……ルルルル……♡♡
やや弱い勢いの吐精であった。ある意味当然だ、それはもう既に本日五回目の射精であったからだ。戦士はやや疲れたように前側に──つまりは勇者の背中にのしかかるように──倒れかかっていった。そのまま弱弱しそうに囁いた。
「勇者さん……。」
「……なんですか?」
勇者が睨んだ。一瞬だけ戦士がひるんだ。あくまで一瞬だけ……。彼はそれでも遠慮がちに、ペニスを引き抜いてから口を開いた。
「そろそろ寝ませんと……明日に響きます。」
「……ダメ。もう少し。」
勇者がそんな風にワガママでもいうように……実際我儘ではあるのだが、そのように呟いた。彼のこのような態度は、珍しい。"夜"に珍しいというわけではなく……"昼"の態度と比べてである。我儘どころか、他人の願いを聞いて回る態度から考えればとんでもなく珍しいのである。
彼はほとほと疲れ切ったらしい戦士の首に手をまわし、ほとんど目をつぶりかけている彼をベッドに横たえた。そして、やはり寝かせる気はないようだ……というよりも。
ちゅ……♡
……と。一瞬だけの、だが永遠の愛を誓うような口づけの音……であった。……それは。
「明日に響いたっていいんですよ……。ドーセ貴方は僕が守るんですから……。他の何に、代えても……。」
パンパン♡♡ パンパン…♡♡ パンパンパン…………♡♡ ……………♡♡
* * * * * * *
戦士が起きると既に部屋に勇者はいなかった。時刻は恐らく七時半ころ。長い冒険の経験で、彼は眠っていてもほぼ完ぺきな体内時計を保てる能力があった。彼はほんの少しだけ身支度を整えると──どのみち整えるような部分は少ないので──パーティーが待っているであろう宿屋の一階に向かっていった。
「あ、遅ーいよ!おっさん!もう何時だと思ってんの!」
「……まあ無能なだけじゃなく、寝坊も。これには流石に慈悲深い私もびっくりですわん……フフフ。」
そんな風に聖女が笑う。……もう戦士にとっても慣れたものだ。このようなぞんざいな扱いは。まあ他から見れば、ただの寝坊……その
……と、その時戦士は気づいた。壁にもたれかかって勇者がこちらを見ていた。その頬に朱色はない。……いやよく見れば、微妙に赤色に染まっている。知っていなければ、朝日の中に溶けそうなほどの、薄い色で。
「戦士さん。」
「勇者、さん……。」
「遅いですよ。」
「は、はい……すいま、せん……。」
戦士は一瞬だけ恨みがましい目で勇者を見た。無論、お前のせいだろ……。或いは君が寝かせてくれなかったせいだろう!?♡♡ ……という意味である。どちらもそれほど遠い意味でもない。
勇者は気まずいのか、目をさっとそらして、宿屋の入り口の扉を開けた。一足先に、鎧の音を響かせながら、外に出る。春風感じる新鮮な空気を吸い込んでから、彼は振り向いて言った。
「行きましょうか。今日も世界が僕たちを待っています。」
こうして彼らの日々と秘密は過ぎていく。彼らは勇者パーティー、人々の期待という呪いと祝福を背負う者たち。豪勇無双にして、そしてただの秘密を抱えた者達でもある。魔王の討伐までの道は厳しく、いまだ遠い。
……ってね!勇者くんとのホモエロ小説でした!ずるずると引きずられるように体を重ねる関係って……なんかいい感じにエッチッチですね!久々に中々良いものが書けた気がします!
ただ作者の独り言的反省点として、ちょっとストーリーラインに重きを置きすぎて、実用部分の流れがどうにも真っすぐではなく使いづらい、というのが残りました。続き物になりそうな予感がするので、次回が来たらご改善"されたかもしれない"のをお楽しみくださいっ!!ご覧いただきありがとうございましたっ!!