キーン、コーン、カーン、コーン。
(やっと授業が終わりましたの……やっぱり数学はハードですの……)
ため息をつきながら机の上を片付ける。次はお昼休み、今日のお弁当は確か──
ブーッ、ブーッ!
突然、鞄の中の携帯が震える。授業も終わったばかりだというのに、こんな早くに連絡を飛ばしてくるなんていったい……
『夏美ちゃん、今日もお願いしていいっすか…?』
通知画面に表示された文面を見て、ドキリとする。そのメッセージの送り主は、私の二つ前の席に座るきな子からだった。
わざわざメッセージで言ってきたにも関わらず、彼女はなんだか薄ら赤い、艶っぽい表情で私の方をうかがってくる。そんな顔で見つめられたら、他の人にもバレてしまいますの。
鼓動が早まっていくのを感じつつ、きな子にメッセージを返す。
『またですの?もうこれで三日連続ですの』
その返信を見た途端、きな子は泣きそうな顔でこちらを見つめてくる。
『ダメっすか…?』
……そんな顔で、そんな言葉を送られたら、断るものも断れないですの。
なんだかまたメッセージを返すのも癪な気がして、呆れた顔を返事にした。それを肯定と受け取ったきな子は、嬉しそうな顔をしながらとてとてと駆け寄ってきて、耳元で告げてきた。
「いつもの場所で待ってるっす」
そのままのフォームで廊下へ出て行って、すぐに姿が見えなくなった。
まったく、人の気も知れないで……
*
きな子と“こういうこと”をするようになってから知った場所、普通科校舎のあまり使われていないトイレ。実際に使っている最中に他の人が来たことは数度もない。
トイレのドアの前に立ってその先に待つきな子の姿を考えると、決まって緊張する。それはそうですの、だってきな子はクラスメイトで、Liella!の仲間で、そんな彼女があんな姿を……。
こうしている間にも休み時間は過ぎて行ってしまう。私は息を整え、目の前のドアを開いた。
電気は点けずに、一番奥の個室へ向かう。そして合言葉代わりのノックのリズム。
私たち以外誰もいない静かなトイレに音が響いて、その直後にガチャンと鍵の開く音が聴こえる。
ゆっくりとドアが開かれていく。その先にいたのは──制服を脱いでワイシャツとタイツだけになったきな子。そして下半身には、あるはずのない異様な物が屹立していた。
私の手に余るほど長い肉棒に、暗い中でもぬらぬらと妖しく光る先端部。恐ろしく立派に反り上がったそれは、紛うことなき男性器のそれで。
そう、彼女はいわゆる両性具有だった。
「もうこんなに……一人でしていたんですの?」
「だって、いつ来るかわからないっすし……」
そう言うきな子を座面に座らせて、私も膝をついて股間のものと対面する。
この瞬間、やっぱり何度していてもドキドキする。私の顔ほどもある全長は尋常ではない熱をもっていて、これが作り物や幻ではない、正真正銘の生きた肉であることを実感させられる。
正中を伸びる筋は兜のような形の先頭に繋がっていて、怒張しきってなお収まらない興奮が、先走りとなって鈴口から溢れだしていく。
「夏美ちゃん、早く……」
「え? ああ……」
目の前の光景に惚けている私を急かすきな子の顔は、彼女の持つ暴力的な淫部とは裏腹に、羞恥への許しを乞うような弱々しい表情で。
嗜虐心に増幅された興奮が私の姿勢を前のめらせ、鼻につく恥部特有の臭いがさらに脳を誘惑する。
これは彼女のため、そう思わなければなにかが外れてしまいそうだった。
大きく口を開け、彼女のモノを含もうとする。漏れ出た吐息が先んじて触れて、それは獲物が現れたのを察知した獣のようにぴくりと揺れた。
そのまま頭をまるまる呑み込み、全体の半分ほどの部分で口を閉じた。
まずは亀頭をゆっくりと舐め上げる。筋から平坦な方へと舌を動かし、また筋の方へ一周させる。
「うぁ……」
こうしただけできな子は声を上げて腰を引かせてしまう。ねだったくせに逃げるなんて、と意地の悪い心が働いて、彼女の腰に手を回してしっかりと押さえつけた。
ぬるぬるとした先走りを舌にまとわせて、そのまま皮に覆われた竿棒を根元近くまで深く咥え込む。この大きさをここまで入れ込むのは流石に苦しく、えずくような声が出てしまうけれど、しかしこうしたときのきな子のとろけそうな顔がどうにも癖になってしまって、喉奥まで封じられる苦しさも忘れてつい受け入れてしまう。
そこから何度かストロークして全体に刺激を与えたあと、今度は口を外し、棒と頭を繋ぐ筋の周りを舌先でちろちろと刺激する。
「ひぁっ、夏美ちゃっ……!」
唾液で艶めかしくぎらついている凶悪な淫棒が、私の与える快楽に合わせて身を弾ませている。
まるであの温和なきな子の一部であるとは思えないほどの圧を持つそれも、自分が主導権を握るそのときだけは非常に可愛らしく思えて、普段は意識することもない嗜虐心の影が差す。
口での刺激を止め、手で軽く茎をしごいていく。随分と力強く感じた棒も、先ほどまでより更に強張って硬くなっていた。
「きな子、もう出そうですの?」
「な、なつみちゃんっ……いじわるしないでほしいっすっ……」
一瞬なんのことだかわからなかったが、びくびくと震えるきな子の一物がその意味を教えてくれた。どうやらこのゆったりとしたストロークが焦らされているように感じるらしい。
その声に私の心は煽られて、口角が上がったような気がした。
「きな子、ならどうしてほしいんですの? 言ってくれなきゃわからないでしょ?」
手から伝わってくる熱の塊は今にもその熱を放出しそうで、それに気づきながらわざと刺激を弱くする。きな子の目には溢れそうなほどの涙が溜まっていて、抱えきれない羞恥と崩れかけた理性の狭間に揺れているのが見て取れた。
そして、か細い声でこう告げる。
「なつみちゃん……も、きなこ、しゃせーしたいっす……がまんできないっ……!」
ふふっ、やっぱり可愛い。
きな子の言葉に満足して、改めて彼女へと向き直る。唾液と絶えず流れ出る先走りにまみれた陰茎は、薄暗い個室にグロテスクな光を反射させていた。
まずは亀頭に唇を付け、間髪入れずに根元まで一気に咥え込む。そのまま数度深いストロークをしたあと、今度は浅いところで先の方を刺激し、裏筋と先端を舌先で何度も何度も刺激をしていく。
緩急をつけて、アプローチを変えて、何度も何度も何度も。
「うぁ、それっ……! なつみちゃ、もうでちゃうっ……!」
瞬間、口に含む肉棒がまた一段と強張って硬度を増した。
張り詰めた一物に通る道を、白くねばついた濁流が駆け上がり、迸っていく。
そのイメージを想像してふと、一滴たりとも無駄にしたくないと、そう思った。
「なつみちゃんっ、なつみちゃんっ、なつみ、っちゃ……!」
どくん、どくん……どくん。
気づいた時には、そのどろりとした生温かい体液を舌に受け止めていた。
最後の吐精を終わらせた陰茎から口を離して、改めて口腔の異物に意識を向ける。三日間連続での性処理に関わらず、その濃さも臭いも粘度も、一日目とほとんど変わるところがなかった。
半ば放心しているきな子を見て、先ほど思った衝動を実行してみようと思った。いつもはそのまま吐き出してしまうこれだって、彼女の一部なのだから。
意を決し飲み込もうとして、しかし思った以上に喉は受け付けず、異物感を押し込んで無理やりに食道へ流し込む。
生温く生臭く気持ちの悪いそれも、しかしきな子のものであると思えば不思議と脳が麻痺してしまって、涙が出そうなほどの飲みにくさも背徳感となって背筋を駆け巡っていく。
全てを飲み干して口内に不快なぬるつきだけが残ったとき、心の底から“これ以上”を求める思いが湧き上がっていた。
わかっている。もう休み時間もほとんどないし、ましてやここは学校で。何か言葉を探しても、その全部が否定だった。
それでも──身体は熱く、心は疼く。
「夏美ちゃん……」
どうしようもない思いの中、いつの間にかに意識をはっきりとさせていたきな子の声が聴こえた。そして私の肩をつかみ、頬を紅潮させたまま目を合わせて言う。
「えっち……したいっす……」
心の疼きが高鳴って、鼓動として出力される。増幅していく心音は痛いほど速く、強く、破裂しそうな心臓に恐怖を覚え、無意識で口から酸素を求めた。
このまま目を合わせていたら呑み込まれそうで、ふっと視線を逸らしてしまう。その際に口から出た言葉も、自分の気持ちから考えれば驚くほど冷静だった。
「だ、ダメですの……もうすぐ授業が始まりますの、そろそろ教室に──」
刹那、ぐいっと正面に向かされて、驚きに噤んだ口がきな子の唇に塞がれた。
「んむっ……! ひあ、こっ……!」
そのまま、繋がった唇から彼女の舌がねじ込まれていく。その日初めての直接的な刺激が頭に叩き込まれ、ギリギリでせき止めていた理性にひびが入るのを感じた。
口の中をぐちゃぐちゃにされていく感覚が脳を埋め尽くそうとするとき、突然下腹部から強烈な快感が発生し、全身を駆け巡っていく。
「ふぁっ……!? あぁっ……!」
スカートが捲られ、きな子の手が下着の中、そしてその奥の恥部にまで到達する。
硬くなってもなお腰に押し付けられている巨大な棒に敵わない小さな突起も、今までの行為にあてられて随分敏感になっていた。そこが数度指の腹で弾かれ、彼女の手はまたさらに奥、蜜に塗れた穴へと伸びていく。
自分の中に侵入してきた繊細な指は、異物感を覚えるよりも先に快感をもたらしてくる。
迷いなく動く指の動きが、絡み合う舌と舌が、暗く狭い個室に響く粘性の水音が、そのすべてが脳を支配する快楽に変換されて、もはや理性など先ほど飲み込んだ白濁液と同じ形になっていた。
思考が白くそまっていく。なにも考えられなくなっていく。こんな無理やりにされているのに、ああ、きなこ──
「~~っ……!!」
身体がいくつか大きく跳ねて、それからきな子が離れて自由になる。余韻が頭をたゆたう中、私の身体は個室のドアに背中を預けてずりずりと床に落ちていった。
ぼうっとしたような意識の中、私の愛液に塗れた指を見ながらきな子が言う。
「でも……夏美ちゃんだって、こんなにもしたがってるじゃないっすか……」
そのとき初めて、自分がずっと、きな子のメッセージを見たあのときからずっと、“興奮”していたのだと気づいた。
*
「夏美ちゃん、ゆっくりでいいっすからね」
「わかってますの……」
きな子が座面に座って、私が向かい合ってその上に跨る。いわゆる対面座位の形だが、狭い個室に微妙な高さの便座が合わさって非常に身体に悪そうだった。
少しずつ、自分のペースできな子のモノを吞み込んでいく。鈴口、亀頭、カリ首と来て、どんどんと侵入する異物感にストップをかけたくなる。しかし場所が場所だけにそこまで柔軟なことも出来ず、とにかく一息つけるところまでは行こうと決心した。
「はーーっ……」
そのままぐっと腰を沈め、全体の四分の三ほどを呑み込んだあたりできな子の太ももに着地した。
「くっ、ふーーっ……」
「夏美ちゃんっ、大丈夫っすか……?」
「だいじょぶっ、ですの……でも、しばらくこのまま……」
下腹部を貫く強烈な異物感。硬く、太く、長い。その存在感に呼吸を浅くしつつも、しかしある気づきがあった。
実のところ、ここまでの行為に至ったのはこれが初めてではない。しばらく前にきな子の家で経験済みだった。
だがそのとき体験した破瓜の痛みは尋常ではなく、自分の中身がめりめりと広げられていく感覚は耐えがたいものだった。
けれど今回は痛みもほとんどなく、むしろこれまでの長い興奮のおかげか快感に近いものまで感じかけている。
全身を、性器同士すら密着させて熱を交換しあうこの時間に、余計な感覚がないのがなんだか嬉しかった。
そろそろ馴染んだ頃だろうか。腹深くの感触にもある程度慣れてきて、少し動いてみようかという気も湧いてきた。
「きな子……ちょっとずつ動いてみますの……」
「わ、わかったっす……」
足を使ってゆっくりと腰を上げる。入れるときには何も思わなかったカリ首も、引き抜くときにはぴったりとくっついた膣ヒダにいちいち引っかかって刺激を与えてくる。
「うぁ……夏美ちゃんのナカ、きもちいっ……」
もちろんその刺激を感じるのは私だけではなくて、顔を緩ませたきな子がとろけた声を上げ始める。
その気持ちよさがどれほどのものか、知る由がないので不思議な感じがするけれど、しかしそう言われて悪い気はしなかった。
何度か抽送を繰り返して、腰の上下も中を行き来する肉棒にも慣れてきた。快感はまだ掴みきれていないが、とりあえずきな子を満足させようといろいろな動きで刺激を試みる。そう思った次の瞬間。
「ふぁあっ!?」
「な、夏美ちゃん!?」
動きを変えてすぐ、今まで感じたことのない快楽が膣内から電撃のように広がった。
何が起こったのかすぐには理解できず、落ち着きを求めてきな子にすがる。荒い呼吸が止まらない。心臓の音が鳴り止まない。“求める心”がどこまでも昂っていく。
もう一度、あの気持ちよさを味わいたい。
「はぁっ……はぁっ……!」
身体を後ろの方に反らしながら、腹の方へきな子のモノを擦りつけるように動く。
「はっ、あっ……!」
何度も、何度も、そのたびに頭へ電気が走る。強烈な快感は恐怖を孕みながら、しかしその動きは止まらない。止めることができない。
「あっ、あぁっ……!!」
「夏美ちゃっ……!」
また、あの感覚がやってくる。汁にまみれた肉棒と肉壺が擦れあう音が聞こえる。そのみず音と、しらなかった自分のこえ、きなこの荒いこきゅうが、わたしのなかで響いてふえて、うめつくしていく──
「ぁ、っくぅ~~~っ……!!!!」
今までで一番深く、長い絶頂。強すぎる快楽は身体を蝕んで、気持ちよさと苦しさが同時に存在する頭のおかしくなりそうな感覚が襲ってきた。
そこから逃れるようにきな子の方へ身体を寄せる。大きいけいれんが過ぎ去って、息が整えられるくらいまで余韻が抜けてきたところ、一つ気づいたことがあった。まだ、きな子は──
「──夏美ちゃん」
「え……?」
そう言うとともに、彼女の両手が私の腰をしっかりと掴む。そして繋がった体勢のまま唐突に立ち上がった。
「ちょ、きな子!?」
「ごめんなさいっす、夏美ちゃん……でも、きな子ももう……!」
頭と両肩が後ろのドアにぶつかって、腰を前、きな子の方へ突き出すような形になった。そうして私が完全に身動きを取れなくなった状況で、きな子がおもむろに抽送を始める。
「まって、きな子っ……! 私、イったばっか……!」
「あんなふうになってる夏美ちゃん見て、抑えられるわけないっす……!」
言いながら、腰の動きが速くなっていく。きな子は自らの肉棒を下からまっすぐに突き上げてきて、上半身が反れて形の変わった膣内もお構いなしに剛棒をゴリゴリと擦りつけてきた。
同じ箇所への刺激でも、自分で動くのと相手に動かれるのではわけが違う。さっきまでとは比較できないほど大きな力で、一切の容赦なく蹂躙される。その刺激はもはや気持ちいいどころではなく、きな子が腰を引き、打ちつける度に暴力的で鈍重な快楽が全身に叩き込まれていった。
「あ゛っ、きなっ、こぉ……!」
「はぁっ……! はぁっ……! 夏美ちゃんっ……!」
もはや彼女自身自らの欲望をコントロールできていないようで、うわごとのように私の名前を呼びながら腰を動かしている。
私の最奥が貫かれるとともに、肺から押し出された空気も苦痛のような声に変換されていく。結合部に目を向けると、私はきな子のモノのすべてを呑み込んでいた。
絶頂が止まらない。彼女が動くたびに身体の芯から震え上がり、快楽の濁流が襲い来る。今まで味わったことのない感覚に脳が焼き切れそうだった。
ふと悟る。次で最後だ、と。次の絶頂が来た瞬間、自分の中の意識の糸が断ち切れる。そんなイメージが湧き出して止まらない。
怖い。それでもきな子は遠慮なく身体を打ち付け、私の中の潮位を高めていく。快感と恐怖と、しかし確かにある彼女への気持ち。薄れ始めた意識に様々な思いがごちゃ混ぜとなって、すがるようにきな子の方へ身体を動かす。
背中へ回した腕からは、薄いシャツ越しに温かな体温が伝わる。こんなにも怖いのに、しかしなぜこんなにも。ああ、恋というのは本当にしょうがない。
落ちる、落ちる。その寸前で、きな子の言葉がふっと流れ込んできた。
「なつみちゃんっ……! すきっ、すきっ……! なつみちゃっ……!」
ああ、やっといってくれた──。
「わたしもっ、きなこぉっ……!」
どくっ、どくっ、どくっ……どくん。
長い射精が終わって、身体を重ねながらゆっくりと座面に座り込む。そのまましばらく放心したが、きな子に抱きついて体勢が変わったこと、射精後は抽送が収まったことが合わさって、なんとか気絶することだけは免れたようだった。
ぼんやりとした意識の中で、先ほどのきな子の言葉を反芻する。あれは快楽の中のうわごとだろうか。そうであったなら、私の言葉もまたうわごとになってしまうのかもしれない。せっかく伝えた言葉がそんな結末を迎えてしまうと思うと、どうにも虚しかった。
そんな思いを抱きながらふときな子の方を見てみると、なぜか彼女は目元に涙を浮かべて顔を俯かせていた。
「きな子、どうして……泣いてるんですの?」
そう聞くと、彼女は震えた声で話し出す。
「だって、きな子っ……! 夏美ちゃんの気持ちも知らずに、ずっと自分だけの都合でこんなことっ……! ごめん、なさい……!」
その姿が、初めてきな子と“こういう関係”になったときの光景と重なる。この個室で初めてきな子の秘密を知らされて、目に涙を浮かべながら「夏美ちゃんにしか頼めない」と処理を頼んできた彼女の姿と。
正直、なぜきな子が謝るのか理解できなかった。私の好意が露呈したからといって、今更なんだと言うのだろう。でも彼女は私と違って心優しいから、妙な罪悪感を覚えているのかもしれない。
もっと早くに気付いていれば、伝えていれば、こんなに拗れることもなかっただろう。そう思うと、目の前で震える彼女を救う責務がある気がして。
「……ばかきな子っ」
「あたっ!?」
額に軽くデコピンをした。
さっきまでの張り詰めていた空気が一気に緩んで、一気に笑いがこみ上げてきた。なぜデコピンされたのかも、なぜ笑われているのかもわからないきな子は呆気にとられた顔をしている。
「じゃあ、一つだけ……教えてほしいですの」
一通りの笑いが収まってから、きな子の方へ身体を沈みこませて、顔を見ないように聞く。
「私のことが好きなのは……本当ですの?」
すると間髪入れずに、はっきりした声で。
「それだけは絶対に本当っす。きな子は夏美ちゃんのこと、本当に、心の底から……大好きっす!」
強く、強く抱きしめられる。
「……なら、いいじゃありませんの」
ああ、なんて幸せなんだろう。一番になるって、愛を貰うって、こういうことなんだ。
「ねぇきな子、どうせ五限はもう始まってますの。遅れて行くくらいなら……ね?」
「んっ……夏美ちゃ……」
絡み合った想いが結ばれて、幸福の花が咲く。いつか実を落とし、枯れてしまうそのときまで。