カップリングはウツシ×カガミ
※pixivとAO3にも投稿済み
その日ウツシは任務を熟していた。大社跡でマガイマガドの狩猟という何ということのない任務。
「ふぅ・・・」
狩猟に成功し、一息吐いたその時。
ザシュッ!
突如後方から聞こえた鋭い刃物が肉を切り裂く音にウツシは驚いて振り向いた。そこには鋭い一太刀を受けて後退するジンオウガの前に仁王立ちする白い髪とコートの人物の後ろ姿があった。
――まさか。
「油断するな。行くぞ。」
振り向かずに言い、双剣を構え直すとコートを翻し、ジンオウガへと向かって行く。ウツシも慌てて後を追った。
*
「・・・・カガミ。君なのか?」
「ああ、久しぶりだな、ウツシ。」
ジンオウガを仕留めた後、改めて共闘した男を見たウツシにカガミは口元を覆っていた布を下げて顔を見せた。記憶の中の少年と比べたら随分と大人びているが、端整でクールな面差しは確かにウツシの幼馴染みのカガミだった。
「ジンオウガが忍び足で近づき、お前を背後から襲おうとしていた。一仕事終えて気が緩んでいたのか?」
「ははっ・・・もう少し近づけばきっと気づいたとは思うけど、まあ、礼を言うよ。」
ウツシは頭を掻いた。そして改めて幼馴染に向き直る。
「いつ帰って来たんだ?」
「今日だ。お前を探したんだがいなくて、ミノトさんにここだと聞かされた。」
「そうか。依頼は熟したから俺はもう里へ帰るけどカガミはどうする?」
「俺はお前を探しに来ただけだ。俺も里に帰る。」
「そうか。なら一緒に帰ろう。」
ウツシは嬉しそうに笑って頷き、カガミとともに歩き出した。
*
「今、王国諜報部隊隊長なのか?出世したじゃないか!」
里への帰り道。互いの近況を話す中で幼馴染の地位を知り、ウツシが感嘆の声を上げる。
「言うほど大したものでもない。お前の方は?」
「弟子が二人いる。一人は猛き焔という二つ名の里の英雄でもう一人は“タイシ”という少年だ。」
「ほう?里に帰ったら彼の指導か?」
「いや。依頼がいつ終わるか読めなかったら今日の訓練は休みにしたんだ。」
「ああ・・・」
「君は?君はいつまで里にいられるんだ?」
ウツシの問いかけにカガミは一瞬“?”という顔をしてしまう。
『有能なハンターをスカウトして来てくれ。』
数日前に軍上層部から下った指令。カガミの頭に多くの知り合いの顔が浮かんでは消えていき――
――ウツシ。
狩猟の腕を磨くと行って故郷を飛び出して以来、数年の間会っていない友を思い出した。
「・・・まあ、一週間、というところかな。」
ウツシをスカウトできたらすぐに帰るつもりだったが、どうやら彼は自分が休暇を取って里に帰ってきたと思っているらしいことから、とりあえず当たり障りなく答える。
「そっか!一週間いられるならゆっくりできるな!」
ウツシの顔が嬉しそうに綻び、彼の子供のように素直な感情表現にカガミは少々面食らう。
――変わらないな。
もはやとうに忘れたはずの感情が蘇りそうになってカガミは慌てて心に蓋をする。
「そういや、さっき俺を探しに来たって言ってたけど・・・」
ふと思い出してウツシが言うと。
「ああ。実はお前に話があってな。」
「話?そんなら今夜、飲みながら話さないか?」
カガミがウツシの方を見ると、口元は隠れていたが柔和に細められた目で彼が微笑んでいるのがわかった。数年ぶりに再会したばかりだというのにいきなり本題に入ろうとしていたカガミは自身の性急さを恥じた。
「そうだな。」
「よし。それなら日が暮れる頃、集会所で。」
ウツシは快活に笑った。
*
そして夕刻、集会所。
カガミが中に入ると忍者マスクも防具も着けていない、比較的軽装のウツシが既に木の幹の周りに設置されたカウンター席に座っていて人好きのする笑顔で手を振った。
「とりあえず濁酒とつまみを何品か頼んでおいたよ?」
カガミが無言で隣りに座ると、ウツシが言った。
「ああ。何でもいい。」
「もっと軽装で来ればいいのに。」
ウツシが狩りに出る時と変わらぬ出で立ちの幼馴染を見て言うが。
「常在戦場。ハンターはそうあるべきだろ?」
特に何の感慨もなくあっさりと返される。
「まあ・・・」
そのとき頼んだ酒と肴が運ばれて来て、苦笑を浮かべたウツシの顔がぱっと輝いた。どぶろくから二つの杯に濁酒を注ぎ、一つを自身の口元の少し上まで合図のように持ち上げる。カガミもそれに倣い、口元を覆う布を顎の下まで下ろすと二人はほぼ同時に杯を干した。
二人は暫く他愛のない話をしつつ杯を重ねていき、ほろ酔いになったウツシが頬杖をついてふと、ぼんやりと隣に座るカガミの方を見た。
「それで話って?」
ずっと切り出す機会を窺っていたカガミははっとしてウツシを見返す。
「・・・・話す前に、確認しておきたいのだが。」
「何を?」
「お前は俺の話に決断を下せないほど酔ってはいないだろうな?」
「へ?何か決めなきゃいけないような話なのかい?」
突拍子もないことを言われた割には暢気にウツシが訊き返す。
「ああ。それに翌日になって今話したことを『覚えていない』ということもないな?」
「んー、大丈夫だと思うよ?この程度で記憶がトんだことなんてないから。」
カガミがウツシの琥珀色の双眸を見ると、冷静な判断ができるくらいには理性が残っているように思われた。
「ウツシ・・・」
カガミが意を決して身体ごとウツシに向き直る。
「実は・・・王国では有能なハンターが不足している。そこでお前のことを思い出して・・・スカウトに来た。」
「・・・・・・。」
ウツシは少しの間無言でカガミを見ていたが、気落ちしたように溜息を吐いた。
「今更?」
――今更?今更とはどういうことだ?
普通ウツシの言葉通りに捉えるならば、以前そういう機会があったけれどそのときはスカウトしなかったのに何故今スカウトするのか、という風に聞こえるが、そういったことはなかったためカガミの頭は混乱した。
「・・・君が、里を出て行ったときのことだよ。」
カガミの思考を読んだかのようにウツシが続ける。
「君は里を出るとき、俺に別れを告げた。『一緒に来るか?』とは言わなかった。」
「・・・・・・。」
今度はカガミが言葉を失う番だった。ウツシがグイっと杯に残っていた酒を一気に干す。
「期待してたのに。」
ウツシは眉をハの字にして微苦笑を浮かべた。カガミはウツシの言葉に呆気に取られた。――が。我に返ると急に怒りが湧いてきて握り締めた拳をワナワナと震わせた。
「・・・・こそ、」
「ん?」
ウツシがカガミの呻くような呟きがよく聞こえずに訊き返すのとカガミが勢いよく立ち上がるのが同時だった。
「お前こそ俺を引き留めなかっただろうが!」
ポカーン・・・
間抜けな顔で見上げるウツシとカガミの大声に振り向く周囲の人々。一瞬シーンとなった皆もすぐに我に返ってまるで“何も見てないし聞いてません”といった態度を装う。ウツシも我に返るとさっと立ち上がり、店主に『つけといて!』と叫んでカガミの手を引き、集会所を飛び出した。
*
「・・・ねえ。」
集会所を出てから少々気不味い空気の中、二人とも無言でカムラの里をあてどもなく歩いていたが、ウツシが思い切って口を開いた。
「君に訊きたいことがあるんだ。俺の家で飲み直さないか?」
『お前こそ俺を引き留めなかっただろうが!』
ウツシは集会所でカガミが叫んだ言葉が気になっていた。あれはどういう意味なのだろう?引き留めるべきだったのか?自身が引き留めたら彼は里に留まってくれたのだろうか?
「いいぞ。俺も(王国の待遇など)話さねばならんことがあるしな。」
結局のところ、まだウツシからスカウトの返事をもらっていないことから、カガミは彼の提案に頷いた。
二人がウツシの家に着くと彼は行灯を灯し、囲炉裏に火を起こして客人に座布団を勧めた。
「大したものないけど。」
と言いつつ、ウツシはどぶろくと煎った木の実が盛られた皿、そして杯を二つ、盆に載せて厨房から持って来ると座布団の間に置いた。
「・・・・王国では、」
濁酒を注いだ杯を口元に運びながらカガミが口を開く。
「衣食住の心配は無用だ。住居は石造りのものが主流で機能的、俺が今住んでいるフラット(アパート)は王国が手配してくれたものだ。十分な食い扶持ももらえている。」
「へえー、君がいい暮らしをしているのを聞いて安心したよ。」
ウツシが邪気の無い笑顔を向けるが、カガミはそれにイラッとした。自身の暮らしぶりに感心してほしいわけではない。
「・・・で?どうなんだ?」
「え?何が?」
「スカウトの話だ!」
キョトンとするウツシにカガミが思わず声を荒げる。ウツシは思い出したように、
「ああ・・・」
と呟いた。弱ったような顔で後ろ頭を掻く。
「・・・話の途中だったね。でも答える前に、君に訊きたいことがある。」
「何だ?」
「集会所で君が叫んだ言葉・・・あれはどういう意味?君が里を出ると言ったとき・・・俺に引き留めて欲しかったの?もしも・・・あのとき俺が引き留めていたら君は里に留まったのかい?」
「・・・・・・。」
カガミは言葉に詰まり、だが何か言わねばと口を開きかけたり閉じたりする。本音を言えば留まったと思うが、それを言えるわけがなかった。言ったら自身の気持ちも吐露してしまいそうで――
物心ついた頃からカガミは同じ門弟であるこの男に恋をしていた。だが彼との友情を失うのが怖くて気持ちを伝えることはできなかった。そして互いが道を分かつ、運命の日。
『君なら何処ででもやっていけるさ。応援してる。頑張れよ!』
爽やかな笑顔とともに言われた言葉。カガミは心の何処かでウツシが引き留めてくれることを期待していたのだが――その言葉とともに彼の初恋は終わった。それから。武者修行の旅の果てに辿り着いた王国に士官したカガミはがむしゃらに任務を熟し、今の地位を得た。
「そ・・・そんなこと、今更どうでもいいだろう!」
カガミはムキになって言ったが、ウツシの目は真剣だった。
「俺にとっては重要なことだよ。教えて?」
「・・・・・・。」
暫く無言でウツシを睨んでいたが、カガミはやがて視線を落として溜息を吐いた。この話題にケリをつけなければスカウトの返事をもらえないのであれば致し方ない。
「・・・・ああ。里に留まっていただろうな。」
「何故?」
「何故、って・・・」
再び目を上げたカガミは何かを期待するようなウツシの琥珀色の双眸にかち合いウッ、となる。無難な答えを探して頭をフル回転させるが、適当な答えは見つからなかった。
「・・・・俺も、君が『一緒に来るか?』って言ってくれるのを期待してた、って言ったろ?」
カガミが答えないのに焦れてウツシが口を開いた。
「もちろん君がそう言ってくれれば共に行くつもりだった。・・・君が、好きだったから。」
「ウ・・・ウツシ・・・」
「・・・・ねえ。」
さり気なくどぶろくやつまみ、杯が載った盆を横に押し遣り、ショックを受けて呆然とする幼馴染にウツシが身を乗り出すと、カガミは気圧されて両手を後ろに付き、上体を引いた。
「君は?」
「え・・・?」
「俺のことどう思ってたの?」
「それ・・・は・・・」
カガミの頭がこの状況を切り抜けるための言葉を探してグルグルするが、結局見つからなかった。そしてついに。
「お前は俺の初恋だった!だが友情を失うのが怖くて言えなかった。里を出るという選択はお前の気持ちを確かめるための賭けだったんだ!」
カガミはやけくそで叫んだ。ウツシはそれを聞いて目を丸くしたが。
「ははっ・・・」
次の瞬間、肩を震わせて笑い出した。
「不器用な君らしいよ。」
「な・・・」
カガミはついカッとなって上体を起こすと両手でウツシの襟を掴むが――彼の熾火のような熱が燻る黄瞳と間近で見つめ合って静止した。
「・・・それで。今回のスカウト、そういう意味なのかい?」
「え?」
「『一緒に来るか?』ってこと?」
「・・・・・・。」
かつての想い人に改めて問われてカガミは再び言葉に詰まった。単なる任務(実際そうだが)のはずの、今回のスカウト。だがウツシに問われてこれが二度目の”賭け”なのだと気づく。
――だが今更?
集会所でウツシが言ったことと同じことを思う。そしてカガミの冷静な部分はウツシが先ほど『好きだった』と言ったことを気にしていた。今も好き、とは言っていない。
――二度目の失恋なんて御免だ。あんな思いは二度としたくない。
とうに忘れたと思っていた、若き日のほろ苦い失恋を思い出す。まだ少年だったあの時ですら真っすぐに想いをぶつけることができなかったのに今、できるわけがない。理性がカガミの心にブレーキを掛けるが――カガミは今まさに幼馴染の精悍な貌を間近に見て、信じられないほど自身の動悸が激しくなっていることを自覚し、戸惑った。
――俺はまだ、コイツのことを?
自身の一途さに心の中で呆れながらも必死に心を抑え込もうとする。――が。
「カガミ・・・」
ウツシの、金色がかった琥珀色の双眸が灯火に煌めき、その形の良い唇が自身の名を紡いだとき――僅かに残っていたカガミの戸惑いも躊躇いも霧散した。
「そうだ!」
カガミは叫んでウツシに勢いよく口づけた。
口づけは、僅かに濁酒の味がした。触れてみて、初めてわかる。如何に自身がこの瞬間を待ち望んでいたか。
「はあっ・・・ウツシ・・・」
「カガミ・・・」
離れていた長い時を埋め合わせるかの如き貪るような口づけを漸く解くと、互いを見つめ合い、呟いた。
「その・・・、」
とウツシが決まり悪そうにカガミの片手を取り自身の下腹へと導いた。
「君と接吻しただけで俺もう、こんななんだけど・・・」
「な・・・」
触れさせられたそこは既にガチガチだった。
「え・・・と、よかったら、でいいんだけど・・・抜いてくれない?」
ウツシに弱ったような貌で上目遣いに尋ねられてカガミが再びウッと言葉に詰まる。
――展開が早過ぎないか?
思ったもののすぐに。
「いいぞ!」
男は度胸、とばかりに頷いて見せる。
――たかがヌくだけだ。他人のブツに触れるのが初めてとは言え、躊躇するような歳でもない。
「ほんと!?じゃあさ、服を汚すと悪いから脱いだ方がいいよね?」
「え?・・・まあ、そう、だな。」
カガミはウツシの言葉に一瞬戸惑ったものの、すっくと立ち上がって物々しいベルトを解きコートを思い切りよく脱ぎ捨てた。こう、と決めたらカガミは迷うタイプではない。ホーバークをも脱ぐとやや細身だがしっかりと筋肉のついた身体の輪郭が露わになってウツシは目を瞠った。
「おお・・・相当鍛えているようだね。」
「当たり前だ。」
カガミがアンダーシャツに手を掛けながら憮然として答え、ウツシを睨む。
「お前は脱がないのか?」
「今脱ぐよ。君に目が釘付けになってしまって。」
立ち上がって袴の腰紐を解いて床に落とし襦袢も脱ぐと、下着のみの姿になったウツシの、惚れ惚れするような体躯が惜しげもなく灯火に浮かび上がった。
――俺よりもガタイがいいじゃないか。
筋肉でパンパンに張った肩から二の腕、胸を見てカガミは生来の負けず嫌いから心の中で歯噛みするが、気を取り直して。
「よし。座れ。」
「んーと、布団敷くからちょっと待って?」
確かに小さな座布団の上ではやりにくい。カガミは大人しくウツシが布団を敷くのを待った。ウツシは居間の隣りの畳敷きの就寝スペースに移動してそこの隅に置いてあった布団を敷くと、振り返ってにっこりと笑い、片手を差し伸べた。
「おいで。玉藻なる我が背(海藻が波に靡くように私に靡き寄り添って来た恋人よ)。」
カガミはウツシに恋人扱いされたことに真っ赤になって開いた口を閉じることも暫し忘れていたが――ハッと我に返るとぎこちなく彼の手に手を重ねた。手を繋いだまま二人が布団に腰を下ろし、ウツシが膝を立てた脚を開いたとき。
「えっ!?まさか君、口でしてくれるの?」
脚の間に蹲った幼馴染を見てウツシが驚き、そこでカガミはハタと気づいた。ウツシは別に口でしてくれとは言っていない。なのになぜ自分は当然のように口でしようとしているのか?手でしてやればいいではないか。頭ではそう考えたが、カガミは下着越しに存在を主張するウツシのモノを味わいたいと思ってしまった。
「・・・ああ。口でしてやる。」
そう言うとカガミは窮屈そうに納まっているウツシの雄鶏を下着から解放してやった――の、だ、が・・・
――デカい。
脱がせた下着の下から現れたウツシのイチモツを見てぎょっとした。
――だがここで怯んでは・・・
カガミは覚悟を決めてウツシ自身を咥え込んだ。
「・・・ぅ・・・」
口と手で施される愛撫にウツシが呻いて両手を後ろにつく。快楽に溶けそうになりながらも、何とか片手と腹筋で後方に倒れ込むのを防ぎながら、空いた手で懸命に奉仕するカガミの髪をそっと梳いた。そして。
「う・・・カ、ガミ・・・、出・・・る!」
くぐもった呻きとカガミの髪を強く掴んだのを合図に、ウツシは達した。
「・・・不味い。」
「君、無理して口で受け止めなくても・・・!待ってて今、布を・・・!?」
口の中を舌でなぞって眉を顰めたカガミに口中を拭う布を取って来ようと立ち上がりかけたウツシは自身の出したものをカガミが嚥下するのを見て言葉を失う。
「無理なんかしていない。お前のなら、いい。」
カガミが含み切れず口端から伝った白い一筋をグイと拳で拭った。
「カガミ・・・」
「ウツシ・・・?おい!・・・あっ!」
突如押し倒され、下着の膨らみをパクッと食まれてカガミは身体を撥ねさせた。そしてウツシが一度身を起こして下着をカガミの脚からするりと抜き去る。現れたモノを見て。
「君も興奮してくれているようで嬉しいよ。」
と言って笑った。そして芯を持ち、勃ち上がりかたものを片手で柔く掴むとその裏筋を恭しく舐め上げて先端を咥え込んだ。
「あっ・・・!ウツ・・・シ・・・!!」
舌で鈴口に与えられる堪らない快楽に、ほどよく筋肉がついた腿にウツシの頭を挟み、引き締まった腰を蠢かせ――更に加えられた手に依る愛撫に、とうとうカガミは短い悲鳴と共に達した。
「・・・・はあっ、」
「ははっ・・・いっぱい出たね。溜まっていたのかい?」
ウツシがベッと舌を出して見せる。彼の舌には白い物が付着していたが口中にはほとんど残っていなかった。
「お前・・・、飲んだのか?」
「ああ。俺も君のなら大歓迎だよ。・・・けど、もっと君と接吻したいからお互い口を漱ごうか?」
ウツシはそう言ってはにかむように微笑った。
*
布団の上で二人、夢中で触れ合った後。枕もとの行灯の灯りが部屋を淡く照らす中、向かい合って横たわった二人は、時折さざめくように笑いながら口づけ、互いの裸の身体を撫でた。
「・・・・スカウトの件、だが。」
ふいに、真顔になってカガミが切り出した。
「ああ。お前と行くよ。」
「いや、他を当たることにした。」
「え?何で?」
ウツシが目を丸くするとカガミは。
「理由は、タイシだ・・・フゲン様に頼むこともできるだろうが、責任感の強いお前のことだ。彼の指導を途中で投げ出したくはないだろう?」
「ああ。だから俺は彼も王国に連れて行くつもりだ。異国での見聞は彼のその後の人生にきっと役立つに違いないよ。」
「・・・・あー、・・・と、まあ、そうかもしれないが・・・」
ウツシの返答に常のカガミらしくなく、歯切れ悪く言い淀む。心なしか顔が赤い。そして蚊の鳴くような声で。
「本音を言えば・・・お前が愛し過ぎて・・・いつでも会える距離にいたら仕事もそっちのけでお前のことばかり考えてしまうんじゃないかと心配なんだ。」
そんなことを素直に口にしてしまうくらい、カガミも初恋の成就に有頂天になっていたのかもしれない。
「な・・・」
ウツシが頬を染める。カガミは笑って。
「・・・一緒にいるだけが愛の形じゃない。遠く離れていたって俺たち二人の心は繋がっている。だから・・・このままでいい。会おうと思えば会えるしな?」
「・・・・・・」
「・・・・・・ウツシ。」
「・・・・・・」
「・・・・・・ウツシ?」
返事もせず掛け布団に顔を埋めるように俯き押し黙ってしまったウツシを訝しく思いカガミが顔を覗き込もうとすると――ウツシは唐突に顔をバッと上げた。彼の顔は紅潮し琥珀の双眸は潤んでいるように見えた。
「・・・・カガミ。」
「ど、どうした?」
「・・・また元気になっちゃったんだけど・・・」
「は?」
何が、と言い掛けて彼に掴まれた手首を再び下腹に導かれて理解した。
「おまっ・・・さっき出したばかりだろうが!」
まさかまた口で、と言うことではないだろうなとカガミが声を荒げるが、捨てられた子犬(子ジンオウガ?)のようなウツシの眼差しに口を噤んだ。カガミは小さく舌打ちをして。
「・・・・仕方ない。抜いてやる。・・・!?」
ただし今度は手で、と言い掛け、天井までの視界をウツシの顔に遮られて初めて、カガミは自身が押し倒されたことに気付く。
「ウツ・・・?」
「・・・・カガミ。」
「な、何だ?」
ウツシの眼差しに何か不穏なものを感じてカガミは少し身構えた。
「せっかくだから、さ。もっと先に進みたいんだけど・・・」
「へ・・・?」
「繋がりたい、ってこと。」
――・・・・・・?・・・・・・!!
「んなっ・・・、無理だ!」
ウツシの言わんとしていることを理解してカガミは叫んだ。行為の知識はあったものの、行為ができる身体になるまで時間も労力もかかることは理解していた。その気になってすぐにその場でなんて上手くいくはずもなかった。だがウツシは微笑んで。
「君と俺ならやれるよ。ともに修行していたとき、フゲン殿の厳しい指導にも耐えてきたじゃないか。」
――はあっ!?
「そ・・・!?」
それとこれとは話が別、と言おうとしてウツシが思い切りよく掛け布団を跳ね退けカガミの膝裏を掌で押して腿が胸につくほど折り曲げたのに息を詰まらせた。そしてウツシが自身の後腔を見ているのに気づきカッと頬を染める。
「ばっ・・・馬鹿、見るな!!」
「解せば何とかなりそうだよ?」
「絶っっ対ダメだ!」
楽観的に言うウツシにカガミが必死で反駁するが、ウツシは据わった目でズイ、と顔を近づけて。
「俺たち、両想いだってわかるまでこんなに長い年月が掛かったんだ。思ったときにすぐに行動に移さないとあっと言う間に髪も白くなっちゃう・・・って、お前は元から白いな?」
はは、と笑い、すぐに真面目な顔になると。
「だから、さ?」
「・・・・・・」
「今!試そ♪」
ウツシは腹が立つほどイイ笑顔で言った。
*
「・・・・ぅ・・・おい、どうだ?」
結局。拒否することができずに腹の下に半分に折り畳んだ座布団を入れ、布団の上で俯せになり尻を突き出した格好で後腔をウツシに解されながら、カガミが訊いた。
「んー、もう少し、かな?」
菜種油でぬるぬるした指でカガミの中を掻き回しながら、ウツシが答える。不思議なもので最初は(物理的にも精神的にも)到底無理だと思っていたのが、ウツシに押し切られていざその”準備”をされているうちに、もどかしいような物足りないような思いがカガミの中で大きくなっていき、早く彼のモノが欲しいとさえ思っている自分自身に気付いた。
――懸命に忘れようとしていたはずが・・・俺は今もコイツにベタ惚れなんだな、くそっ!
カガミが心の中で毒づく。
「そういや君、宿は?」
ふとウツシが思い出したように、訊いた。
「戻らないとマズい?」
「狩場のキャンプに泊まるつもりだったから宿は取っていない。」
「え!?狩場のキャンプに泊まるつもりだったのかい?」
カガミは『何を驚いているのか』とでも言いたげにちら、と背後に目を遣った。
「別に・・・十分快適に過ごせるだろう?」
「そうじゃなくて・・・」
どこの狩場もそれなりの距離を小舟を繰らなければ辿り着けない。もしも、“こんな”展開にならず集会所であのまま飲み続けて酷く酔ってしまっていたら。てっきりカガミが宿を取っていると思い込んでいたウツシは如何に彼が酔っていても『一人で帰れる』と言われれば彼のプライドを傷つけぬよう、そこで手を振って別れてしまっていただろう。
――ウチに連れて来てよかった・・・
ウツシは心底そう思った。そして。カガミの後腔を解すウツシの指はいつの間にか三本に増えていて、楽に出し入れできるほどになっていた。
「・・・よし。もうそろそろいいかな。」
ウツシは指を抜くと、布団の脇に置いていた菜種油の瓶を傾けて掌に垂らし、硬く勃ち上がった自身のモノに塗り付けた。それからカガミの腰に手を掛けて更に高く突き出させる。ウツシ自身の先端が“後ろ”に当てがわれるのを感じ、カガミの胸が期待に高鳴る。
「行くよ?」
「ああ。・・・来い。」
期待に上擦ってしまいそうな声を努めてぶっきら棒に聞こえるように答える。
「・・・・う・・・」
硬い幼馴染の肉棒が身体を拓き入って来て、カガミは声を押し殺し呻いた。あまりの痛みに血の気が引くような心地がしたが――
「カガミ・・・」
親しみを込め気遣うように自身を呼ぶ、ウツシの優しい声に、腰を掴む彼の手の大きさと温かさをふいに意識して胸がジン、となる。
――ウツシに与えられるものなら、いい。
異物感も痛みも、それがウツシによるものだと思えば構わなかった。そしてどのくらいの時が過ぎたのか――カガミの尻たぶにウツシの引き締まった腹が触れたことで、少しずつ、ゆっくりと時間を掛けて押し入ってきたものの”すべて”が入ったことがわかった。
「あ・・・」
次の瞬間、カガミは背中から抱き締められてウツシの温かな体温に包まれる。肩に唇が触れた後、甘えるように背に頬ずりされ、ウツシの撥ねた髪がカガミの背を擽った。
「・・・・君の中、すごく気持ちいいよ・・・」
耳元で掠れた、吐息のような声でウツシが囁くとカガミに泣きたいような気持が込み上げる。
――コイツのすべてが愛しい。
不覚にもカガミの目に零れ落ちそうなほどの涙が溜まったが、後背位の体勢ではウツシが彼の顔を見ることはなかった。――そして。そのまま幾ばくかの時が過ぎた。
「・・・いつまでそうしているつもりだ?遠慮するな、動けよ。」
「・・・・ああ。」
互いの体温が溶け合い、ウツシのモノが自身の身体に馴染んだ頃。カガミが表情とは裏腹に強気の言葉を発すると、ウツシは静かに上体を起こして再び彼の腰を掴み慎重に動き出した。
「あ・・・・、は・・・っ・・・!」
「カガミ・・・!」
最初は遠慮がちだった抽挿も段々激しくなり、今ではほとんどぶつかるような勢いになっていた。ウツシの腹がカガミの尻を叩くパンパン、という音が淡い灯火に照らされた部屋の中に響く。
「カガミ・・・!好きだ・・・!!」
「ウツシ・・・、俺も・・・!・・あ・・・っ!おま・・・、前・・・もっ!」
絶頂が近いことを悟ったウツシは片手をカガミの前に廻して彼のモノを掴み、強めに扱き始めた。できれば一緒にイきたかった。
そして――二人はほぼ同時に弾け、カガミの出したものは布団を、ウツシのものは幼馴染の白い尻を穢した。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「はぁ・・・は・・・ははっ・・・」
カガミはイッた後に急に笑いが込み上げて来て、ごろりと寝転がって仰向けになるとウツシを見上げた。
「想う相手との行為がこんなにも心と身体を満たすものだとは・・・今日は俺の人生で最高の日だ。」
「・・・・・・」
自分との行為が『悦かった』と言われているようでウツシが思わず赤面する。カガミはそんなウツシを見て軽く笑った。だが赤い顔のまま動こうとしないウツシにカガミが眉を顰める。
「・・・・出したら終いなのか?」
「?」
――普通、出したら終わりじゃないのか?・・・・!もしかして2ラウンドめのお誘いってこと?
ウツシは思ったが。
「接吻してはくれないのか?」
「あ、ああ!もちろん!」
ウツシは自身の勘違いに気付き慌ててカガミに口づけた。互いの髪や頬を愛撫しながら舌を絡め、吸い、歯列と口蓋をなぞる。
「・・・やはりお前のスカウトを止めて正解だったな。」
長い口づけを終えると、カガミが言った。
「お前が近くにいたらずっとこうしていたくなる。」
「カ・・・」
ウツシは真っ赤になって二の句が告げなくなってしまった。カガミは笑って今は恋人となった幼馴染を引き寄せ、もう一度口づけた。