アニメ温泉回の後
「大丈夫でしょうかお二人とも…」
不安そうに振り返るアイの手を引いてクイーンは部屋に入る。
「大丈夫大丈夫、スペードのお熱も下がったしおじいちゃんの腰は安静にするしかないからね」
温泉のドタバタがあって、スペードが熱を出して倒れたというので部屋を取り、シルバーハートは腰を痛めて部屋を取った。
二つ部屋を取った片方をスペードとシルバーハートに、その付き添いであるアイとクイーンがもう片方に、男女分かれて泊まることになった。
クイーンは振り返って顔を見上げる。
「それともスペードとお泊りしたかった?」
いたずらっぽい笑みを向けられて、アイは真っ赤になってブンブンと首を振る。
「ふふっ冗談よ」
「……そうですね。お熱は下がったのですし、シルバーハートさんのお世話をスペードさまにさせてしまうのは心苦しいのですが」
「そうそう、わたしたちはゆっくりしましょ。せっかく露天風呂付きの部屋なんだし!」
座卓のある部屋の奥にはベッドがある寝室、外にはほのかな明かりに照らされた露天風呂が見える。
部屋は落ち着いた感じにしつらえられていたが、どの調度品も怪盗が予告状を出してもおかしくないレベルだった。
「お風呂も特別なお湯なんですって! 入りましょうよ!」
「えっ、でもさっきも入りましたよね」
「せっかくだから入らないともったいないでしょ」
強引に手を引かれてふたりは露天風呂へ出る。
ヒノキの湯舟に温泉がこんこんと流れている。控えめな照明と月明かりが露天風呂を照らしていた。
クイーンはさっさと浴衣を脱いでお湯につかった。
「どうしたの」
アイは浴衣姿のままで風呂場のドアに立ち尽くしていた。
「その、恥ずかしくて」
「さっきも一緒に入ったでしょ」
「先程は湯浴みも着てましたし……」
大浴場では体を隠す湯浴みがあったが、部屋には用意されてないようだった。
「わかった、じゃあ向こう見てるから」
クイーンがぷいっと外の方を向くと、今さら入らないとも言えなくてアイは脱衣所に戻る。
少しの間を置いて戸の開く音が聞こえ、体を流した音、湯につかる音がした。
何故かクイーンはドキドキしてきた。
「何か入ってますね」
その声に振り向くと、アイの顔が思ったより近くてドキッとする。
アイはお湯に浮かんでいたネットを指差す。
「薬草でしょうか」
ネットをつかんで眺めると、草のような果実のようなものが色々入っている。
「これが特別なお湯、なのかしらね。そういえば体がポカポカしてきたわ」
アイが身を乗り出してのぞき込む。
「木やドライフルーツっぽいものも入ってますね」
まつげが長い、と思った。
小さな明かりに照らされるアイのシルエットに目を奪われていると目があって、アイは不思議そうにこちらを見た。
「う、ううん、肌がキレイだな、と思って。さすがアイドルよね。何かやってるの?」
「特には……睡眠や基本的なスキンケアは気をつけていますが。妹に叱られるので」
「そう、大浴場では『美人の湯』に入ったし、わたしもキレイにならないかしら」
クイーンはお湯をすくって肩にかける。
「クイーンさんこそ充分キレイです」
アイにジッと見つめられて顔が熱くなる。のぼせてきたかもしれない、さっきお湯に浸かったばかりなのに。
「さっそく効果があったとか? ねえダークアイ、触ってみていい?」
返事を待たずに二の腕に触れる。
「あ……ッ」
思いも寄らない嬌声がアイの口から漏れた。
二人の間に妙な空気が流れ、アイは真っ赤になって顔を背ける。
「な、なんだか私も熱くなってきました」
「そ、そうね、一回上ろうか」
慌てて立ち上がるとクラっと目眩がした。
「クイーンさん!」
アイに抱きとめられる。
「大丈夫ですか?」
ふたりは裸で抱き合う格好になっていた。肌は密着し、胸を互いに押し付け合っている。
「クイーンさん?」
アイが心配そうにのぞき込む。
熱い。
触れている肌がやけに熱く感じる。
「ご……ごめっ……ああんッ」
体勢を正そうとして体を動かすと肌が擦れ合わさり、思わずクイーンの口から声が上がる。
恥ずかしくてさらに熱くなり、離れようとしたクイーンはもう一度バランスを崩した。
「きゃあっ」
ふたりは絡まり合って床に転がった。
気づくとアイを下にして抱き合っている。アイの胸に顔を埋めていた。
「ご、ゴメン!」
手をついて身体を起こす、そこでクイーンは動きを止めた。
腕の下には一糸まとわぬアイがいる。
「キレイ……」
控えめな明かりがアイを照らす。温泉で上気した肌はピンクに染まり、濡れた肌が光を反射してアイ自身が発光しているように見えた。
お湯の流れる音だけが聞こえる。
アイは逃げることも体を隠すこともできず、顔をそらすことしか出来ない。
「……恥ずかしいです」
「やっぱり肌がキレイ」
クイーンはお腹の辺りに指を滑らす。
「……あッ……」
「きめ細かくて吸い付きそう」
「っ……ッ……!」
指は脇腹を、首筋を、鎖骨を、ゆっくりとなぞる。
アイは触られるたびに体の奥がビリビリと反応する。口を閉じても声が漏れた。
「さすがアイドルね。スタイルがいいわ」
「!」
焦らすように身体を巡っていたクイーンの右手がふくらみに向かう。
「っ……ダメ……ッ」
「すごくキレイよ」
「恥ずかしいです……ぁ……」
小ぶりながらピン、と上を向いた乳房がクイーンの手に収まる。
やわやわとその感触を確かめた。
「やっ……んんッ」
おかしい。
反応してしまう身体に抗いながらもアイは考えていた。
クイーンがこんな事をするとは思えない。
アイ自身も肌に触れられるだけで頭の奥が痺れるようになり、抵抗したいと思うのにクイーンにされるがままになってしまう。
必死に自分の反応を抑えながら辺りを見回すと、湯船の横にプレートが見えた。
「やッ」
ふいに指が先端を捉えた。
「あっ……あ…………ッ」
くにっくにっ、と弄ぶたびにアイはあえぐ。
「ふふっ可愛い」
「あっ……やめッ……」
「いいの? やめちゃって」
「…………」
それには答えられなかった。
強く押さえつけられているでもなく、やめてと言って体をそらすことは出来るはずなのに。
涙目で見上げられてクイーンの嗜虐心が煽られる。
「本当に美味しそう」
もう一方のピンク色の果実をついばんだ。
「………っ」
舌で転がし、音を立ててしゃぶり、歯を立てる。
「んんッ……!!」
身体が大きく跳ねる。
「……痛かった?」
顔を上げて聞くと、アイはぎゅっと目をつむったまま首を振る。
「もう1回……いい?」
顔をそらしたままなのを肯定だと取って、またついばむ。
「あッあッ……んん……ッッ」
アイの乳房を貪るたびにクイーンの胸がアイの身体に当たる。敏感になった乳首が擦りつけられて、身体の奥が疼く。
クイーンは身体を起こして馬乗りになるとアイの手を取って自分の胸に当てる。
「お願い、触って」
クイーンの身体が逆光に照らされてシルエットが浮かび上がる。
キレイだ、とアイは思った。
大きくもピン、と張った乳房は柔らかくずっしりと感じる。
じっとりと汗をかき、きめ細やかな肌が手に吸い付く。
アイはこわごわと指を動かした。
「あんッ」
アイの指に合わせて乳房が変わっていく。
「あああッや、あ、あ……くっ……ああぁああ!」
指を動かすたびに大きく声を上げるクイーンに、先程まで触られていたのとは違う感覚を覚えた。
「……んんッ……もっと、」
「こう……でしょうか」
ぷっくりと膨らんだ先端を両方の指でとらえる。
「もっと、もっと強く……ああッ、んん!ああん!」
揉みしだかれながらクイーンもまたアイの胸に手を戻す。
「ッ…んっ……クイーンさん……!」
「ダークアイ、もっと…!」
互いの名を呼び合って、胸を揉み合い合った。
「……はぁ…はぁ……」
肩で息をするクイーンはアイに倒れ込み、胸に顔を埋める。
「大丈夫、ですか? ……ひゃんっ」
クイーンは再びその頂きを口に含む。
「あああッやっ、あッ、んんッッ」
アイはもう声を抑えられなくなっていた。
快楽に身を委ね、それ以外のことが考えられない。
もっと、もっとクイーンに触ってほしい。もっと乱して欲しい。
クイーンもアイの声を聞きたくて、もっと淫らにしたくてたまらない。
クイーンは手を下の方に滑らす。
「!」
下腹部をなぞり、わずかな茂みをかき分ける。
「やっ、ダメ……!」
かまわず指はその奥へと進んだ。
「………ダメッ……あッ…」
クイーンの指は蜜が溢れ出しているスリットをなぞる。
「やめて…くださ……ッ」
その割れ目を押し広げ指を差し入れようとした時、
「……やっ……スペードさま…ッ……!…」
「!」
その言葉でクイーンは我に返る。
アイは涙を流してすすり泣いていた。
「……………………………」
温泉の流れる音だけがしていた。
「…………ごめん」
クイーンはそれだけ言うと風呂場から出て行った。
アイも軽く体を流すと浴衣を着て部屋に戻る。
クイーンは寝室のキングサイズのベッドの端にもぐり込んでいた。
「……クイーンさん……」
「ゴメンね。わたし、どうかしてたわ」
こちらを向かずに言う。
「クイーンさんのせいじゃありません。湯船に『子宝の湯』って書いてあったんです。多分あのお湯に媚薬の作用があったんじゃないでしょうか。
わたしだって……その……どうかしてたのでおあいこ、です」
「でも、あんなことしたのは事実だし」
したこと、されたことを思うと、恥ずかしくてここから消えてしまいたくなった。
アイはベッドに乗る。
ギシ、と背中で音がしてクイーンは身を固くした。
頭にそっと手が乗せられる。
「頭がぼうっとしてまともな判断ができなかったんです。夢だったとして忘れませんか?
明日になったら、いつも通り『おはよう』って言って笑ってください」
「……うん」
頭をなでられて小さな子どものようにうなずく。
ギシ、と音が離れていく。
「おやすみなさい、クイーンさん」
「……おやすみなさい、ダークアイ」
小さなライトを残して照明を消す。
最後までクイーンはアイを見なかった。
アイはベッドの反対側の端にもぐり飲む。
衣擦れ、呼吸の音ひとつひとつにクイーンは耳をすませた。
眠れそうもない。
アイが寝返りして布団が動くとビクッと反応してしまう。
まだ身体の奥が疼いてたまらない。アイは寝ただろうか。
クイーンは自分の胸に手を当てた。
「……っ……ぁ……」
アイに触られたことを思い出して乳房を揉み、乳首を強くつまむ。
「んん……っ……」
されるがままのアイを、淫らに声を上げるアイが脳裏に浮かび、どんどん身体の奥が熱くなる。
内股に指をすべり込ませ、秘所をなぞる。
「……んっ……ダーク…アイ……ッ」
アイも眠れるはずがなかった。
クイーンの荒い息を耳にして、身体が疼く。
「……ッ……」
気付かれないようにゆっくりと浴衣の間に手をすべり込ませる。
クイーンがしてくれたように自分の胸を触る。
「…ぁ……」
声を押し殺す。
触れるだけで身体が反応するのはまだ媚薬が効いているから、淫らなクイーンが目に浮かぶのは媚薬が効いているから。そう言い聞かせてアイは自分の身体を慰めた。
***
「おはようクイーン!」
朝食会場に入るとシルバーハートが真っ先に声をかけてきた。
「おはようおじいちゃん。腰の具合はどう?」
「ハッハッハ、この通りじゃよ」
軽やかに腰をひねって見せる。
「おはようダークアイ」
「おはようございます、スペードさま。お熱は大丈夫でしたか?」
「ああ。部屋の露天風呂が腰に効くお湯だったし師匠ももう平気みたいだ」
「スペードさま達のお部屋は腰に効くお湯だったんですね」
アイは心の中でほっと息をつく。
「ダークアイ達はゆっくりしたかい?」
「え……ええ」
「いいお湯だったわね。ダークアイ」
クイーンが腕に抱きつく。
腕に胸の感触があってアイの鼓動が高まる。
「いや本当にいいお湯じゃったわい。もう一日ぐらい泊まっていこうか」
「いいわね。ねえ、ダークアイもまた泊まりましょ」
指をからませてクイーンは笑いかける。
アイは肯定も否定もせずにうつむいた。
身体の奥が疼く。やっぱりまだ媚薬が効いているかもしれない。