メモアプリの駄文をただ消すのが惜しいと思っただけ。
「被告人、あなたは国の許可を取らずに医療行為を行い、それによって街に亜人種が増えて風紀を乱すどころか、教会の教えに背く邪悪な術で他者の魂に触れたのは許しがたい行為である。よって被告人を国外追放とし、永久的な商人資格の剥奪、教会の利用を禁ずるものとする」
暴論すぎる罪状の読み上げに、怒る気力すら湧いてこない。異世界に転生した俺は、王国での商売のやり方を間違えてしまい、人間至上主義に睨まれ、徹底的に潰されたところだった。
なんというか、もう疲れた。
せっかく転生したファンタジーな異世界で剣や杖を握って太く短い人生を送るなんて出来ないと始めた商売で、未開拓な市場で金貨を稼ごうとするまではよかったが、リラクゼーションサロンを医療行為と言われるし、客層が街であまり見ない長命種ばかりで、口コミが拡がってやたらと増えてきてるよなぁ……と思ってはいたが。
国を出てからどうしようか。開拓村の募集に参加して農民となって慎ましく暮らすか、教会利用禁止という縛りで冒険者にでもなって最後の思い出作りをするか。……建設的ではない。永久的な商人資格の剥奪が痛すぎた。
「──裁判長、急ぎ報告がッ!」
「何事ですか」
「罪人を引き渡すようにと交渉にきた他国の使者が来まして。裁判の中止をするようにとの王命です」
「なんと。裁判は終わり、被告人はもう」
「……遅かったか」
◆
「?なんだ」
小石を跳ねながらガタガタと揺れる馬車の中で仮眠も取れず、ただ目をつぶって思案していたのだが、突然馬車が停止したのでなんだと立ち上がる。しかし、荷台の小窓は閉められたままで、馭者の男も馬もやけに静かで胸騒ぎがした。
「アレン殿ですね?」
外から馬車の扉が開かれて、トントンと軽快に人が入ってくる。赤褐色の肌色にくねくねと癖のある銀髪をしたエルフの美青年だ。
上質な布の軽装に緑の外套を羽織っており、腰には短い剣とポーションベルト、腿には杖のケースが巻かれた姿は密使のソレだった。
「俺は罪人だが、馭者や馬は悪人じゃない」
「ご安心を。術で眠っていただいているだけです。あとで責任を問われるかも知れませんが、私共も怒っていますので」
「……魂に触れたのは、エルフ達にとっても禁忌だったのか」
だからこうして待ち伏せして、確実に俺の命ごと禁術を闇に葬ろうと──
「誤解です。むしろ我々はアレン殿が発見した新たな魔法の体系に可能性を感じています。なのでぜひ、我が祖国に来ていただきたい」
「待て、エルフよ話が違うではないか」
外から赤い鱗の竜が頭を突っ込んで、荒げた鼻息で荷台が軋んだ。風の加護を纏っているのだろう、近くにいることに気づけなかった。
「……チッ、耳聡いな。人間に変身した姿しか見たことがないでしょうが、こちらの竜はあなたのサロンの熱心なファンでして。アレン殿が牢に閉じ込められている間にその他の種族も交えて協議を行いました。……魔王国に人間の自治州があるのはご存知ですか?」
「初めて聞きました」
魔王国は知っている、現在は長い体戦中だが魔王国の国王は地底から来た悪魔であり教会の宿敵だと教会の日曜学校で教わったことがある。けれど、そんな国に人間が住んでいるのは初耳だった。……おそらくは、教会にとって都合が悪いということなのだろう。
「そこで、店を構えていただきたい。我が祖国はアレン殿の新生活を支援しますよ」
「支援も等分だ。必要な素材があれば3代に続く竜の宝物庫はいつでも開くからな」
・・・・・。
話のスケールが大きすぎて、クラクラしそうだ。自治州?竜の宝物庫?……えぇ……。
「ありがとうございます。期待に応えられるように頑張ります。アグニさんも、またいらしてください」
「!竜の姿である我を見抜くか。さすがはアレン殿だ。……さて、話は決まったな?」
「行きましょう。この竜がアレン殿を運び、私が護衛します」
差し伸べられたエルフの青年の手を握り、竜の背中に飛び乗った。風の加護によって無風状態で飛翔する竜の羽ばたきは圧巻で、俺が悩みの坩堝に陥っていた国はあっという間に遠く離れ、ちっぽけな世界で狭窄的だったと思い知った。俺にはこんな翼は生えていないが、縁を結び、俺を助けてくれた。
この出会いに感謝を。
「資金的な問題で実現出来なかったアイデアがあるのですが、いろいろと試せそうですね。アグニさんも気に入ると思いますよ」
「なんと!竜の宝物庫はガバガバだ。好きなだけ使ってくれ」
「おいっ!風の加護があるとはいえ、上下に動くな」
◆
馬車がすれ違える程度の広さの街道を挟んだ両側を背の高い建物が並び、空にはもうもうと煙が昇る街並みをぐるりと見渡してから深呼吸をすると、空気が馴染みの無い街の味がした。コツコツと石畳を革靴の底で叩いて俺は目的地へと向かう。
「ダントン市長」
「アレン君、よく来たね。それでは調整の話の続きなんだが──」
ヘレストピーク自治州の中央都市であるヘレストピーク市の市長であるダントンさんは人間であり、俺が店を構えることについて親身になってくれている頼れる人だ。
魔王国での人間の地位向上の為に尽力してきた偉大な市長であり、俺のサービス業を快く受け入れてくれた人達の一人だ。
店の立地は広い土地を確保する為に中央から少し離すことになったが、人権運動の過激派のことを考えると、ここがベストだと判断した。
そして建築が進み、とうとう明後日には店をオープンするところまでやって来た。
今日はプレオープンで、お客さんが朝と昼に二人来ることになっている。
「ジル君、掃除はもういいから接客をお願いね」
「はいっ!頑張ります!」
準備が大切な仕事なので、一人では限界があった。なので、接客に人間とノームのハーフである好青年なジル君ともう一人を新たに雇用していた。
店の奥で花の種から油を絞り出して調香した特製オイルを温めていると、お客さんの来店を知らせるベルが鳴った。
「来たぞアレン!プレオープンに呼んでくれて感謝する。昨日は楽しみで眠れなかった!」
顔を出すと、人間の姿に変身したアグニさんが仁王立ちしていた。ジル君に目配せをするとスッと後ろに下がり、俺が引き継いだ。
「アグニさんの協力があってお店をオープン出来るので、こちらこそどれだけ感謝しても足りないぐらいです。うんと気持ちよくするので、寝ていってもいいですよ」
「それはつまり、スペシャル8時間コースということか!?」
「ん、8時間はちょっと揉み返しとか、ね……お香を焚いてベッドに移っていただきます」
「ちょっとした冗談だ。アレン、そろそろ」
「はい。では、こちらの部屋でこの衣服に着替えてください」
それから部屋を移り、着替え終えたアグニさんが遅れて来ると、タオルを敷いた寝台の上にうつ伏せで寝かせた。
半身浴をしている心地になるぬるま湯のような温度のスライムプールで下半身を包み込み、用意していた特製オイルをアグニさんの背中の肌の上に垂らし、照明の光が反射してテカるオイルを肌に馴染ませるように塗り広げていく。
竜であるアグニさんの肩甲骨を剥がし、押し込むと指が奥へと入っていくので、肩を持ち上げて揺らし、筋肉を緩めていく。
あーー、とかうーー、とか結構な声量で溶けた声を出すアグニさんの反応に不快な様子がないかを観察しつつ、ふにふにとした二の腕や手のひらを揉んで血行が善くなってきたところで足の裏に移った。
スライムゼリーの温度を焼け石で調整しつつ、足の裏を指圧する。
「うぐっ」
「肝臓が悪いですね。心当たりはありますか?」
「人魚の無精卵をたくさん貰ったから、つい」
「ほどほどにしましょうね」
「あぁ……アレン、その」
「いつもの、もっと痛くですか?」
「そうだ、頼む……ひぐぅっ!?……カハッ……ひいっ♡死ぬぅぅ♡」
言われた通りにただめちゃくちゃ痛いだけのツボを押すと、アグニさんが今日一番に喜んだ。竜は戦いの中で進化して、痛みで高揚するようになったのだと以前に言っていたが、他の竜は否定していたのでアグニさんがただ痛いのが好きなだけだった。
俺が足の裏を押す度に余裕のない悲鳴を出し、スライムプールの粘性の関係で浮き上がっている腰をキュッ、キュッ、と締めつけたり、ガクガクとお尻を痙攣させる光景はかなりヤバイ絵面なのだが、わざわざ指摘するのもあれなので黙っておく。
「ふぅ……最高だった。足はもういい」
「どうぞ」
ごろんと転がって仰向けになり、上体を起こしたアグニさんは玉の汗をかいており、急いでスライムプールをどかし、水分補給に用意していた果汁割りのドリンクを渡し、タオルで優しく当てて汗を拭った。
「我の魂は今、何歳に見える?」
「……200歳ぐらいでしょうか」
「200歳か。1000年も生き飽いて、竜の宝物庫である洞窟で植物のようにじぃっとしているだけの毎日だったが、アレンのおかげで若い頃の活力を取り戻した。老いは呪い、化粧は魔法だな。この前も、我の魂の若々しさをみて、ナンパをしてきた竜がおったぞ。あのロリコン竜が!我が1000歳と聞いて逃げていく顔の愉快なことっ!」
「あははっ!……アグニさんの得た自信は、俺の誇りです。人間の目で見ても、アグニさんと初めて会った時と比べて印象が変わりましたね」
「ほう。どう変わった。詳しく教えてくれ」
失言だったと気づいたときには遅く、据わった竜の目で射抜かれたと錯覚するほどの視線にうっ、と息が詰まる。
「初めて会ったとき、髪が埃や脂でボサボサな、女を捨てている血生臭い冒険者が来たなぁ……と」
「……えっ、そこまで?」
「でも、今は誰もが振り向く絶世の美女ですよ。とても綺麗な深紅の艶やかな髪は他の女性客も嫉妬するぐらいで、アグニさんが何を使っているのか聞かれたことがあります。来店される時の服も毎回違いますし、流行に囚われない個人の美を際立たせる様式への理解の深さはさすがだと感心してしまいます」
「ふへへ…っ…コホン。今度は褒めすぎだ。しかし、アレンは我のことをよく見ていたのだな」
「変わっていくアグニさんを見守るのは、楽しかったですから。とっても綺麗ですよ」
「嬉しいことを言う。アレンなら竜の宝物庫はガバガバだが、我の股もガバガバ開くぞ」
「1000年生きた竜おい。おっさんみたいな下品な冗談は困ります」
「──本気だが?竜は大抵ロリコンとショタコンしかいない。アレンは我の好みのタイプだ。初めてのときも金を払って触れ合うのが目的だった。魂も若々しくなった今、ムラムラが全盛期だ。昨日も夜なべしてオナニーをして、流れでセックスすることを妄想していた。隠していたが全て話してしまったことだし、一発どうだ?」
・・・・・。
「アレンさん、僕ちょっと買い出しに行ってきます」
「ジル君!?」
「目を見れば分かる。アレンは我のことが好きだろう?ほれ、我の股はガバガバだぞ」
寝台の上でアグニさんが股をパカパカ開いて閉じて、紙パンツは片足に垂れて、ピンク色で肉厚なまんこを指で拡げて尻を振る。
太い何かを咥えるように口を開き、舌をくねくねと踊らせる姿に目を奪われると、片手が股間を弄ろうと無意識に動いて驚いた。
ヌププッ、と中指と人差し指をまんこに挿入するとキュッ、と絞まる肛門の皺と指の熱さに気が動転し、ぬらぬらと愛液で塗れた指を自分の腰で拭った。
「避妊は……」
「アレンの子供が欲しい。我をアレンの子種で孕ませてくりゃれ♡」
ビュルルルル、ビューーッ、ピューゥ……。
で、俺が生まれたってワケ。
父さんは枯れている長命種をターゲットにしたマッサージと温泉とサウナと飲食と宿泊の複合施設を作って、長命種の美意識や購買意欲を高めることに成功した。長命種の数が急激に増えて社会問題になりそうだが、未来の誰かがなんとかするだろう。
母さんは三人目の子供が7ヶ月で父さんと妹と一緒に故郷に帰った。俺は学校があるので魔王国にいる。度々離れることにドルマン市長からは嫌みを言われたらしいが、母さんが黙らせたらしい。南無三。
エルフのお兄さんは父さんをエルフの国に連れてくる使命を与えられたがとき既に遅く、いつまでも帰国出来ないので酔った勢いで泣き脅して女王の前に父さんを連れていくことに成功したが、父さんの魂に触れる術は高度過ぎて再現性が無いらしく、結果として女王の魂が若々しくなっただけだと愚痴りながら、恋仲になった人間の女性とエルフの国に帰国した。エルフの女王が妊娠したと聞いたとき、なぜか父さんの肩が震えていた。
そして、長男である俺は父さんが諦めた剣と魔法の道で成り上がることを目指して、魔王国の士官学校で級友に恵まれながら訓練と勉強をしている。士官学校を卒業してからは従軍し、準男爵から男爵になることを目標としていのだが、それはきっと、母さんや父さんの財産を守ることに、役に立つ日が来ると信じている。
◆
「ふふふっ……ふふっ」
「女王様……?」
既に2000年生きていると言っていたエルフの女王様が魂に触れて若々しくする術を受けたいと言って、その我が儘を咎められる者もおらず、施術したのだが、様子がおかしい。
「【催眠支配】……兵達よ。お前達は私の家具である」
「「「はい、女王様。我々は家具です」」」
意識はあるが、動けない。泥の人形に心だけが閉じ込められてしまったかのようだった。
「家具達よ、服を脱げ」
「「「はい、女王様」」」
睫毛が長く、美しい瞳の色をしていて、妖しい切れ長な目、端正な顔立ちと綺麗な肌、すらりと伸びて丸いヒップラインと形の良いおっぱい、毛の無い脇とまんこ。そんなエルフの美女達が全裸で並んでいる。
「アレン殿は、この中でどれが一番好みで?」
「そのダークエルフです」
言葉が勝手に出てきて驚く。ダークエルフはこの国に来て初めてみたなと感動していたので、確かに気になってはいた。他の言葉を発声することは出来ず、流れを見守ることしか出来ない。
「そうか、指名された家具よ。アレン殿の子を孕め。アレン殿も、中にたっぷりと子種を注ぐのです」
「はい、女王様」
涼やかな瞳に鼻が高く、大人っぽい少女のような不思議な雰囲気の銀髪ダークエルフが、冷めた黄金色の瞳とその長身で俺を見下ろしながら、モデルのような美しい歩き方で俺の前まで来るとターンした。
そして、膝立ちになって肩と頭で地面に接地し、尻を高く上げて両手で尻を肌に沈むぐらいの力で掴み、横に拡げた。
アナルとまんこの内側を見せつけられて、ゴクリ、と唾を飲む。
亀頭がぶちゅうっ、と柔らかい肉に沈み、キメの細かい大きな美しいお尻を揉み上げると、グイグイとダークエルフのお尻の方が迫って、膣の内側をゾリゾリと肉ひだの甘い抵抗に刺激されながら、根元まで入ってしまった。
骨盤の上を掴み、腰をぶつけると、俺の中の雄が歓喜して、ドクドクと精子が溢れてきた。今まで気づいていなかったが、俺はダークエルフが性癖だったらしい。
「アレン殿、次は誰を?」
「アレン殿、次は誰を?」
「アレン殿、次は誰を?」
・・・・・。
この問答は、俺が女王様を選ぶまで続いた。
「私が来て欲しいと頼んだときは、必ず来るのですよ」
──チュッ。
女王はお腹を慈しむように撫でながら、最後に一つの暗示を残して、俺はヘレストピークに帰国した。
もう一度エルフの女王に会ったとき、2000年の魂の若返りの反動で性欲が暴走してしまったと照れながら教えてくれた。そのときの帰りにも同じ要領で女王に第二子を仕込んでから帰国したので、冷や汗が止まらない。ダークエルフさんがヘレストピークに来た時は、心臓が止まりかけた。なんでも娘の魔法の才能が凄いので、魔王国で育てて学校に入れたいらしい。俺は惜しみなく資金援助と魔王国にいる長命種のお客さんのコネで、二人が快適に暮らせる住まいを用意した。
そして今俺は、アグニの故郷にいる。
「旦那様、こんな噂を聞いたんだが。エルフの女王の子は、人間のハーフらしい。何か知っているか?」
◆
「お兄ちゃん。……お兄ちゃん?……お兄ちゃん!」
「ここでは隊長と呼べと、いつも言っているだろう。……なんのようだ」
「えっへへ~♪呼んだだけでーす隊長」
「……お前、受理してやるから異動願を書け」
「ひどい!?」
竜人とハーフエルフの腹違いの兄妹が、救国の英雄になったとかならなかったとか。
──終わり。