今回はskebでの依頼品です。
リクエスト内容はこちら。
https://skeb.jp/@aikosyaHoKoku/works/42
ご依頼、ありがとうございました!

事故でオークになってしまった女性。相方のオークの家に転がり込んで色々していたら、いつの間にやら好きになっちゃった!?

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【リク作品】私、オークになっちゃった! ~あれ、結構こいつ、好きかも?~

「あ、ルーク。ちょうどいいや、一緒にギルド行かない?」

「おー、カオルじゃん。俺は別にいいけど、どうしたんだよ」

 一人の女性が、オスオークに声をかけています。

「次の仕事見繕う所でね。ルークとは何度も組んでるから、一緒だとやりやすいし」

「なるほどねぇ。俺もカオルとだと息が合うし、行こ行こ」

「ひゅーっ、話が分かるオークねぇ! 好きだよー、ルーク!」

 からかうような声で話しかけながら手を伸ばし、下顎から上に伸びている立派な牙に触れ。

「だから、触るんじゃねえって!」

 眉を潜めつつ大声を出し、手を振り払い。

「んもう、いいんじゃない別に。結構触り心地いいから気に入ってるのに」

「だーめ、これは俺のなんだぞ? そんなに撫でたきゃ自分の撫でろよ」

「ないもん、人間だし」

「ま、まあ、そりゃそっか。とにかくやめろって言われたらやめてほしい、うん」

「何それ? いい時もあるってこと?」

「ん〜……んー……」

 鼻をひくつかせ、低い唸り声を上げ始め。

「え、なになに? あるの?」

「いや、まあ、ないなぁ……多分。少なくとも今の所は」

「もったいつけてそれぇ? まあ、勝手に触っちゃうけど!」

「あのなぁ」

 仲がいいからこそできる、しょうもない言い合い。

 そうこうしているうちに二人はギルドに到着。

「あ、そういえば今日はフリーマーケットしてるんだっけ?」

「まじか、そうだっけ? くっそー、金持ってねぇや……漁るの、大好きなんだけどな」

「んー? 貸してあげよっか?」

「お、いいのか!? 助かる助かる!」

「その代わり、牙触っていい?」

「それはダメ」

「けちー」

 イチャイチャと軽くふざけつつギルドの建物内に二人が入った次の瞬間。

 建物全体がカッと輝き、爆発音が鳴り——

 

「んっ、フゴッ、これ、どうしたらいいのよぉ!?」

「お、落ち着けって、か、かわいいぞ?」

 べそをかいているカオルを、ルークが必死に慰めています。

「ンゴっ、ふゴォ、か、かわいいって、私、ブヒィ、こ、こんな、お腹、もう、まんまる、ゴッ……」

 何度も鼻を鳴らしながら、自分の腹に手をやります。

 いろいろなものがしっかり詰まっているかのような丸い腹は、ゴワゴワの毛に覆われていて。

 先ほどからずっと鳴り続けている鼻の穴は正面を向いていて、ヒクヒクと動き。

「しょ、しょうがないだろ、オークになるなんて、なぁ、大変なのは分かるけど」

「ひぇ〜ん、私ぃ、もう、人間に戻れないかも、フゴッ、ゴォ……」

 そう、なんと……ギルドでの事故の弾みに、カオルはオークになってしまったのです!

「うーん、どうするかな、ええっと、あー、くそ、俺が無事なのがかえって申し訳ないって言うか、ええっとぉ……」

 建物のあちこちで、パニックの後始末中。

 どうやら、フリーマーケットの魔導具が暴発したのが原因のようなのですが……

 連鎖的に反応したらしく、何がどうなってどうなったのか全然把握できない状態。

 奇跡的に無事だったルークはどうしようもなく、ブヒブヒ泣いているカオルに声をかけるしかできなくて。

「と、とりあえず、俺の家、来るか?」

「えっ、る、ルークの家ぇ!?」

「し、仕方ないだろ。このままカオルの家に帰ったって困るだろうし」

「で、でも、ブヒッ、家の方が、落ち着く気がするんだけど」

「前、カオル自慢してたじゃん。めっちゃオシャレな部屋だって」

「うん、うん……あ」

「か、かわいい女の子がオシャレな部屋にいるのは似合ってるけどよ、いくらかわいくてもオークが人間のオシャレな部屋にいるの、どうかなって」

「あー……鏡とか割っちゃいそう」

「だろ、だろ? だったら綺麗じゃないけどさ、俺の家ならオークの家だし……ま、まあ、悪くないんじゃないかなって」

「でも、ルーク大変じゃない?」

「カオルの方が大変だろ? 問題ないぜ」

「そ、そう? ル、ルーク、結構かっこいいのね……」

 知り合いのピンチに手を差し伸べてくる素敵さに、ちょっとドキッとしてしまい。

「ん、なんか言ったか?」

「だ、大丈夫、なんでもないない! フゴッ、じゃ、じゃあ、ルークの家、連れて行ってくれる?」

「おう、まかせろまかせろ」

 のしのしと歩き出すルークを、慌てて追いかけ出すカオル。

「あっ、えっ、なんか、股、開いちゃう……」

「え? そう言うもんだろ……って、いっけね! 服、破けちゃってるじゃねぇか! 俺は裸でもいいし、これ羽織っとけよ」

 骨格的にのしのし歩きになるのを恥ずかしがる彼女に、さっと服をかけてやるルーク。

「え、へへ、ありがと、ルーク……」

 照れながらも癖で手を牙に伸ばし、軽く撫で。

「い、いいってことよ、と、とにかく、いくぞ?」

 ちょっと落ち着かない様子でルークが歩き出し、慣れないながらもカオルはそれについていくのでした。

 

「狭いけど、まあ……しばらくはいるといいや」

「そう? 結構広いじゃない。思ったより綺麗だし」

「そうかぁ? 結構散らかってる気がするけどな」

 体の小さい、正確に言うと小さかったカオルとガタイのいいルークで少し違う評価。

 カオルは初めて入った相方の家に興味津々。

 オーク用の家具を見て、色々と調べ始め。

「意外と馴染むの早いんだな、カオルって?」

「ンゴっ? あ、あー、そっか、私オークになってるんだった。なんか、部屋の色々が気になっちゃって忘れてたわ」

「つ、つえ〜……」

 好奇心の強さがメンタルを支えているのを知り、感心しきりのルーク。

「あ、そうだ。食事は何度も一緒にしたことあるけど、お風呂とか寝るのって人間と違うのかしら?」

「んー? あー、人間って浴槽に浸かるとか言うけど……俺はシャワーで済ませちゃうからウチには浴槽は無いぞ」

「はいはい、シャワーは? お湯?」

「気分次第だな。まあ、大体お湯だ。あ、いけね……!」

 カオルの質問に回答しつつ、何かを思い出した顔。

「あら、どうしたの?」

「ウチ、布団一組しか無いんだわ。お客さん変な所で寝させるわけにもいかねぇし、俺は違う所で寝るかな」

「そ、そんな、それってダメじゃない!?」

「じゃあどうすんだよ、一緒に寝るっていうのか?」

「わ、私は、いいけど、ルークが嫌なら、なんか考えるけど」

「お、俺も、別に、嫌って言ってるわけじゃないけどよ」

「じゃ、じゃあ、よくない?」

「ん、おう、まあ、そう、かもな!?」

 変に意地を張るせいで、同じ布団で二人仲良く寝る流れに。

 側から見ればそれがどういう意味を持つのか分かるのですが、オークになってしまったという事象のせいで二人ともやや混乱した状態。

 仕方ないといえば、仕方ないのですが。

 

「ごめんねー、この体、腕が上手く後ろに回せなくって」

「ああ、いいっていいって。俺もガキの頃は全然上手く洗えなくってお袋によくやってもらったもんだ」

 浴室に湯気が立ち込め、お湯の流れる音。

 椅子に座っているカオルの背中をルークが流していきます。

「なんかコツ、とかあるの?」

「コツかぁ。人間がどうやって背中洗ってるのか知らないからなぁ」

「こ、こうやって洗いたいんだけど……」

「あー、ダメダメ。上からだと全然届かないって。そうそう、横から……うまいうまい。まあ、今日は俺が洗ってやるから練習だけしてな」

「うわぁー、結構関節の動き方違うんだぁ……」

「そういえば人間って四つん這い下手くそだもんなー。オークって結構四つん這いにもなるから、そこがあるんじゃないのか?」

 泡立った背中をマッサージするように洗っていって。

「あっ、ブヒッ、ブヒィ」

「あれっ、痛かったか!?」

「あ、あ、あ、ち、違うの、き、気持ちよかったからぁ、その、恥ずかしい、鼻、鳴っちゃって」

「あ、そ、そっか、ははは、じゃあいいや」

 カオルの体を洗ってやるルーク、気持ちよくってついブヒブヒ何度も鳴いてしまうカオル。

 指摘すると恥ずかしそうだし、指摘しないと音が大きくなっていくし……

 ルークにとっては判断がとても難しく。

「よし、終わり! 先に出てていいぜ」

「えー、それじゃ悪いわよ。私もルーク、洗ってあげたいんだけど」

「ん、してくれるのか? 結構大変だぜ?」

「だってだって、やってくれたのにお返ししないのはダメでしょ? ほらほら!」

 いつものようにルークの牙を触りながら、カオルが肩をポンポンと叩き。

「お、おう、わ、分かったって、痛くしないでくれよ?」

「う、うん、頑張ってみるわ!」

 カオルが気合を入れて、お返しを開始。

 ところが……

「あた、イタタタ! 腰、腰壊れる!?」

「えっ、あれっ、もしかして私、かなり強くなっちゃってる!?」

「お、オークだから、な……」

「そ、そっか、ご、ごめぇん……」

「ま、まあ、慣れていけ、な? おー、いてぇ……」

 自分の力の制御ができないカオル。

 まだまだ、前途多難といったところ。

 

「え、えっと……」

「な、なんだよ」

「わ、私、はみ出していいし、真ん中で寝なよ」

「お、俺も、別に大丈夫だから、カオルが真ん中で寝ろって」

 意地を張り合った結果。

 寝床に入った二人なのですが、妙に距離をとっているため……

 二人とも体が布団からはみ出し、半端に掛け布団を被っている状態。

「で、でも」

「だってよ」

 変な所で息が合い、同時にお互いの方を向き。

 布団の真ん中で、お互いの鼻が、腹が急接近。

「あっ、わ」

「あ、ああ、す、すまん」

 気恥ずかしくなって、目を逸らしてしまい。

「ね、ねぇ」

「な、なんだ?」

「こ、このままで、寝ない?」

「お、俺、いびき、うるさいぞ?」

「た、多分、わ、私の方が、鼻鳴っちゃうと思う、けど」

「そ、そうか?」

「う、うん……」

 人間とオークの時はそんなに意識しなかったのに、オーク同士になったせいかどこか落ち着きが無く。

「え、えっと、お、おやすみ」

 気を紛らわそうと、ルークの牙をまた触るカオル。

「お、おう、おやすみ……」

 特にそれにはリアクションせず、返事をするルーク。

 ドタバタして疲れたのか、二人は程なくして……仲良く大きないびきを立て、眠りについたのでした。

 

 

「う、うーん、いつもだったらここ、通れるのに」

「カオル、結構スリムだったもんなぁ。まあ諦めろって、代わりにこっち通れるからよ」

 オークになったとはいえ、仕事は仕事。

 ルークと一緒に、いつも登っている山に来ているのですが……どうにもこうにも、少し上手くいきません。

「い、今の私が太ってるみたいに言うの、やめてよぉ」

「大丈夫大丈夫、オークの中だとどっちかと言うと痩せてるから!」

「あーんまり慰めになってないわよ、それ」

 体型の変化のせいで、愛用のルートが使えずに困惑してしまい。

「それより、こっち側で登れそうか? 昨日の力の具合だと、無理じゃなさそうなんだけど」

「えっとぉ……こう、四つん這いで登ればいいの?」

「そう、そう、そう。もっと顔を地面に近づける感じで」

「ん……あ、あれ、草の臭い、すっごくする」

「あ、へぇ。やっぱり人間とオークで嗅覚違うのか」

「ルークもこんなに色んな臭いするの?」

「カオルに話振っても全然しないって言われるからしなくなっただけで、結構してるぞ」

「ひどーい、私が悪いみたいじゃない」

 鼻を鳴らしつつ、なんとか少しずつ坂を登り。

「あ、悪い悪い。あー、違う違う、そうじゃないそうじゃない、まず手でこうやって……」

 四苦八苦しているカオルをフォローするため、一旦降りてくるルーク。

 まさに手取り足取り彼女のオーク式登山術をレクチャーし……カオルはわずか一日で、かなり上手く登れるようになり。

「えへへー、ありがとう! 助かったわ!」

 いつものようにルークの牙をチョンとつつきつつ、山の頂上でカオルが大喜び。

「人間からオークになって大変だと思っていたけど、カオル本当に馴染むの早いなぁ」

「うーん、新しいことをしているってワクワクがあるから、私が今オークだって事よく意識から抜けちゃうのよね。逆に、オークの生活に慣れてきた頃の方が……オークになっちゃった事、考え込んじゃうかも」

「うーん、そっか……じゃあさ、明日買い物でも行くか?」

「え、どうしたの急に?」

「ほら、カオルが今言ったろ? 慣れてきたら考えちゃうかもしれないなら、今のうちにオークでも悪くないってなればマシになるんじゃないか?」

「そ、そうかな」

「何もしないよりはいいと思うぜ? オークの女性物の服とか着てさ、オークはオークで可愛くなれるって感じるの、いいと思う」

「あー、そう言われたらそんな気がしてきたわ。でも、オークって可愛い服着るの?」

「あっ! ひどいなそれ! オーク界のファッション雑誌とか読んだことねーだろ! すごいんだぞ!」

「あっ、ごめんごめん、私も別に人間のファッション雑誌とか読んでないからつい、ごめーん!」

 照れ隠し、罪滅ぼしにまたルークの牙にタッチ。

「ま、まぁ、じゃあ明日はそんな感じで!」

「うふふ、仕事じゃない一緒のお出かけ、初めてじゃない?」

「そうだなぁ……そうと決まれば、木の実探しさっさとやっちまうぞー」

「はーい! ええっと、どうやるんだっけ?」

「まずは探す木の実の臭いを集中して覚えてだな……」

 まだまだ完全に慣れているわけではありませんが、少しずつ前進していくカオル。

 そんな彼女を、ルークはしっかりと支えてあげて。

 いつもより仕事のペースは遅いものの、なんとかやり遂げる二人なのでした。

 

「えっ、これ、オークの服なの!?」

「俺も初めて見たけど、すっごいなこれ……」

「お客様、お目が高いですね。こちら当ブランドの最新作でして……」

 そして翌日。

 大型の服屋のオークコーナーで、二人は目を丸くする。

 ニコニコとオーク店員が説明してくるものの、全然頭に入ってこず。

「ね、ねぇ、ルーク、私、これ着て、似合う、かしら?」

「ちょ、ちょっと、可愛くなりすぎるから、ダメじゃねぇか?」

「え、え、今なんて!?」

 想像以上の衣服の華やかさにたじろぎ、何を言っているのかお互いに分からなくなり。

「で、でも、カオル、なんか服買ってた方がいいだろ?」

「もっと普通の、人間みたいな服ないのかしら」

「うーん、どうなんだろ」

「おやおやお客様、人間のファッションにご興味が?」

「え、えーっと、あ、は、はい……」

 まさか元人間というわけにもいかず、ややお茶を濁し。

「ちょうどいい、当ブランドのモニターをされてみてはどうでしょう?」

「も、モニター」

「モニターって、あれか? 試しに着てもらって、周囲の反応とか見るやつか?」

「その通り。当ブランドは種族の垣根を超えたファッションに挑戦しておりまして、第一弾が人間のオシャレ要素を組み込んだオークファッションなのです! ところがですねぇ、だーれもご興味がないようでして……」

「話だけでも聞くか、カオル?」

「う、うん、ルーク、一緒にいてよね」

 不安を誤魔化そうと、またしてもルークの牙に手を伸ばし。

 そんな彼女の背中にそっと手を当て、ルークは仲良く店員の話を聞くのでした。

 

「こ、これ、似合ってる?」

「正直めっちゃ可愛い」

 テラス席で食事をしている……のですが、カオルはどこか落ち着きがなく。

 オークと人間のファッションを組み合わせているので、カオルは違和感無く着られているのですが……自分自身の姿に慣れていないせいで、ちょっと困惑している様子。

 一方のルークは、とびきり可愛くなったカオルにちょっとドギマギ。

 どこを見たらいいのか分からず、目のやり場に困るほど。

「か、可愛いなら、ちゃんと見てよぉ」

 不満げに鼻を鳴らし、抗議の声。

「か、可愛すぎて見てらんないんだって」

「え、なんか言った?」

「なーんにも」

 そんなに意識していなかった女性が同種族になるわ、かなりのオシャレさんになるわ。

 ルークが落ち着かないのも仕方ないのですが、カオルはなかなかそれに気づけません。

 彼女も彼女で、相方と同種族になった事で距離感が変わり、まだ慣れない状態。

 せっかくのお出かけ、二人はなんだかんだで楽しむのですが……どこかまだ、打ち解けはしていないままなのでした。

 

「んじゃ、行ってくるぜ」

「はーい、今日もルークの好きなもの作っておくわね」

「おう、ありがと! ちょっと遅くなるかもだけど、頼むぜ!」

 それからしばらくの時が過ぎ。

 いつも二人で仕事するわけではなく、単独での仕事の日もあるわけで……

 そう言った時は留守番役が家事をするルールになっていました。

「えへへ、今日は何にしようかしら」

 オークの体に慣れきったカオルは何の苦も無く体を動かし献立を考えます。

「まずは洗濯しないとね」

 溜まった洗濯かごを持ち上げ、洗い場に持って行き。

「あーあ、どうしようかなぁ……朝ごはんの時に言うのが一番良いんだけど、今日も言えなかったし」

 ぶつぶつと独り言を言いながら、ゴシゴシと洗濯を始め。

「でもルークの事だから、絶対流される気がするのよねぇ」

 考えに夢中で、ちょっと作業にも身が入っていないご様子。

 一体、何に困っているのでしょうか。

「まあ、オークの姿だからそう思ってるだけって言われたらそうなんだけどぉ……でも、私、ルークの事、大好きになっちゃってるの、嘘じゃないんだよなぁ……」

 そう、カオルはルークと共に過ごすうちにすっかり愛するようになっていたのです。

 ですが、そういうのを言い出すのは勇気がいるもの。

 ましてやそのうち人間に戻るかもしれないのに、軽々しくそういう話をするのも考えもの。

「う〜ん……」

 完全に注意力散漫になってしまい、うっかり手にしていた衣類を落としてしまい。

「あっ、いけない」

 拾い上げると、それはルークの下着。

「私、私、こんなに好きなのになぁ、何で気づいてくれないのかなぁ」

 鼻に押し当て、大きく息を吸い。

 肺の中いっぱいに、ルークの臭いが浸透していき。

「んもう、私、本気なのに、でも、私も何だか、上手く言えないし、あっ、なんか、ちょっと、ドキドキしてきて、ま、まぁ、後で、掃除すれば、良い、良いもんね、あっ、あっ♡」

 股間に手が伸び、割れ目に指が触れ。

「ん、んっ、んっ、んっ♡」

 鼻に下着を押し付けているせいで、鼻の音が響かなくなり。

 ルークにしてもらいたい事を代わりに自分でやり、頭の中をルークでいっぱいにしてしまい。

「ああっ、好き、好き、好き、ルーク、大好き、ゴッ、ああっ、好きよぉ、ブヒィ……♡♡♡」

 感情が大きくなればなるほど呼吸も荒くなり、鼻のなる音も大きくなり。

「んっ、あっ、この体、すっごく、敏感だから、あっ、〜〜〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡」

 びく、びく、と全身が震え、絶頂に達し。

「ふぅ、ふぅ、ふう……」

 ふと見ると、鼻水まみれのルークの下着。

「ま、またやっちゃったぁ、しっかり洗わなきゃ……」

 一回致して落ち着いたのか、気合を入れ直して家事再開。

 ちょっと火照りは残っているものの、なんとかかんとか問題なく……一日の作業を終わらせられるのでした。

 

「あぁー、やっぱりカオルの飯はうまいなぁ!」

 一仕事終えたルークが、満面の笑みで料理をがっつき。

 それに負けじと、カオルも食事をかき込みます。

「今日はどうだったの、お仕事?」

「上手く行った上手く行った! お土産もあるんだぜ」

「え、お土産?」

「ほれ」

「ほれって、何これ、箱?」

 ぶっきらぼうに置かれた箱に手を伸ばし、観察し。

「開けていい?」

「開けてほしいな」

 妙な言い方をする、と不審がりながらも箱を開けると……

「えっ、何これ、指輪、えっ?」

「お、おう、指輪」

 もじもじとしながらルークが答えます。

「ど、どうしたの、これ?」

「あ、あれだろ? 人間は結婚してほしいって時に、指輪渡すんだろ?」

「ああ、うん、そうだけど……え、待って待って? え?」

「結婚してほしい」

「待って待って、えっ、ちょっと、急に!?」

「ま、まあ、カオルにとっては急かもしれないけどよ、お、俺にとっては急じゃなくてさ」

「え、う、うん」

「知らないから仕方ないし、説明したらちょっと変な感じになるだろうから黙ってたんだけどよ」

「うん」

「オークの世界ではな、オスの牙を触るのは……あなたが大好きって意思表示なんだわ」

「え」

「だからカオルが人間の頃はやめろって強く言ってたんだけど、同じオークの姿で……しかも可愛いだろ? なんだ、その、されるの、嬉しくて止める気にならなくて」

 何気なくしていた行為の意味に、恥ずかしくなってしまうカオル。

 もちろん、人間の頃に触っていた時にはそんな意図なんて全くなかったのは事実。

 その延長で続けていたので、理解した今急に恥ずかしくなってしまい。

「後さ、気づいてないと思ってるかもしれないけど……俺が寝た後、お腹当たるくらい近づいてきてから寝るようになったろ?」

「あ、あ、あ、あ」

 カオルの顔は、鼻の先まで真っ赤っか。

「……寝る時にそんな事して良いのは、オークの世界では夫婦だけなの! 言わないでいたけど!」

「あ、は、はぁい……」

 ルークを好きになればなるほど近くにいたくなって、寝る時はこっそりと身を寄せていたのですが……

 バレていないと思ったことがバレるのは、ものすごく恥ずかしいもの。

「ま、まあ、でも、俺にそうしてくれるってことは、多分好きなんだろうなって思ったんだけどよ、どう言ったらいいか思いつかなくってこうしちゃって……え、ええっと、びっくりさせたなら、ごめんな?」

「え、えっと、一つだけ、聞いていい?」

「何個だっていいぞ」

「じゃ、じゃあ、ルークは、私と一緒に暮らすの、いいの?」

「ずっと一緒にいたい」

「あ、そ、そうなんだ、そ、それは、なんで?」

 相手の勢いに飲まれ、一つと言いつつ質問を追加してしまい。

「カオルが好きだから」

「でも、私、人間なのに——」

「そりゃ、最初惚れ出したのはオークの姿になったからだけどさ。もうそんなの関係ないさ、人間に戻れる方がいいだろうし、それだったらそれで——」

「わ、私は、オークとして、ルークと一緒にいたいって思ってるの!」

 その発言に、ルークはギョッとしてしまい。

「いやいやいや、いいのかよ、そんな」

「いいから言ってるんだってばぁ、んもぉ〜、ずるいんだからぁ〜! 私からどう告白しようか悩んでたのに、こんな事されたら絶対叶わないじゃないのぉ〜!」

 ルークはルークなりに告白仕方を考えてくれていたのに、自分はオナニーばかりして誤魔化していた事実が恥ずかしくなってしまいます。

「あ、あれ、カオル、困るかなって」

「困らないわよぉ、むしろ私から告白してルークが断ってくるかもって困ってたのに!」

「何だ、そっかぁ……えっと、なんか、ヤキモキさせて、ごめんな?」

「その懐の広さもずるいぃ!」

 完全に一枚上手の行動をされ、真っ赤な顔でブヒブヒ鼻を鳴らし。

「んまあ、ええっと、改めて、結婚してくれますか?」

「あ、はい、します、します」

「んーっと、人間の場合、この後どうするんだ?」

「ちょーっとだけ、いい?」

「おう、なんだ?」

「こう言う事はね、外食している時にする物で……こうやって普通の食事してる時にする物じゃない、のよ。一応」

「ありゃま。勉強不足だったぜ」

 不満げな発言に見えますが、顔はもうニッコニコ。

 それにつられるようにルークも笑顔になり、食事を続けて。

 

「ねぇ、もしかして……時々わざと洗ってもらってるのも、気づいてたの?」

「そりゃあなぁ。全然汚れたまってないのに、『背中の真ん中が上手く洗えてない気がする』って何度もせがまれたら気がつくだろ」

 シャワーを浴びながら、カオルがルークに体を洗ってもらい。

「ねぇねぇ、相手に体を洗ってもらうのってオークの世界ではどう言う意味があるの?」

「え? 親子関係だけど……体をちゃんと洗えないようじゃ、一人前にはなれないからな」

「あ、べ、別に、そこは、意味ないんだ……」

「何でそもそも、ガタイいいオーク二人でシャワー一緒に浴びる必要があるんだよ……」

 若干ロマンチックな展開を想像していたのに、そこはざっくり流されてしまい。

「んもう、人間だと……そういうの、あるのよ」

「そういうって、どういう?」

「ほら、すぐに体洗えるでしょ? だから……」

 振り向くなり、ルークの鼻に自分の鼻を軽く当て。

「こう、甘えたり」

 シャワーを止めながら、ぎゅっと身を寄せて。

 大きなお腹が押し合って、形を変えて。

「わ、わ、やめろよ、まだ準備が」

「いやよ、もう我慢できないんだもの」

 鼻の次は口が触れ合い、お互いの吐息が交換され。

「全く、カオルはオスの性欲知らないからそんな事、言ってるんだろ?」

 徐々にルークの目つきが険しくなり、鼻息も荒くなり。

「じゃあ、ルークの好きにして、もうずっとルークと一緒なんだから、ルークが私をどのくらい好きか、あっ、あっ、あっ!?」

 ルークが肩に甘噛みしつつ、彼女の肉体を押し倒します。

「んぅ、ブヒッ、ブヒィ♡」

 荒々しさの中にある優しさに、心を躍らせて。

 ゴツゴツの手が、乳房を包み込み。

「ブゥ、ぅん、あっ、あっ、フゴッ♡」

 力強い愛情表現でも、オークの肉体は難なく受け止めます。

「あっ、好き、好きって言ってぇ、ルーク、ルークぅ♡」

「大好き、大好きだぞぉ、俺の、俺のものだぁ、ふゴォ、ごぉお、もう、もう、絶対、離さないからなぁ♡♡♡」

 聳り立つ逸物を強引に捩じ込み始め、カオルの体に激しい衝撃が走り。

「あっ、おっ、おっ、おおおおっ、もっとぉ、もっとぉ、おっ、おっ、おぉおおっ♡♡♡」

 鼻の音が聞こえないほどの大声を出し、喜びを露わにし。

「カオル、カオル、カオル、カオルぅ♡」

「ルーク、ルーク、ルーク、ルークぅ♡」

 二人は見つめ合い、腰のリズムに合わせて名前を呼び合い。

 少しずつ言葉が減っていき、鳴き声が、喘ぎ声が増えていき。

 お互いに限界まで抑え込まれていた愛が爆発し、その夜は……何度も何度も絶頂し、丸いお腹がより丸くなるほどにカオルはルークの愛の証を注ぎ込まれてしまうのでした。

 

「気をつけてね、あなた」

「おいおい、気をつけるのはお前の方だろ? もうすぐ生まれるんだから……」

 そっと鼻キスをしながら二人が言葉を交わします。

「大丈夫、何かあったらお隣さんに助けてもらうから」

「全く、オークって結構一度にたくさん生むんだぞ? 大丈夫なのか?」

「大丈夫だって、私もオーク、でしょ?」

「そうだったな、すまんすまん。でも本当に、無理はするなよ? 心配なんだから」

「うふふ、嬉しい」

 言葉にできない愛を確認し合うかのように、もう一度鼻を触れあわせ。

 あれから更に時は経ち。

 ギルドでの騒動も解決し、元に戻れるようになったのですが……

 ルークと共に生きることを決めたカオルには、人間に戻る理由はどこにも無く。

 オークのまま彼と一緒に住み、結婚し、妊娠し。

「うふふ、沢山生まれてきたら、賑やかになるわねぇ。名前、考えとかないと」

 思いがけなく手に入れた幸福に目を細めながら、彼女は子供たちがいるお腹をそうっと優しく、撫でてやるのでした。

 

 

 おしまい


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