原作:Wonderland Wars
タグ:R-18 ガールズラブ オリ主 アンチ・ヘイト Wonderland Wars ワンダーランドウォーズ シリアス ウィキッド・ドロシィ アンチ・ヘイトは念のため 錫の新兵
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オリジナル神筆使い、設定資料集要素、キャラヘイト、エロ(行為あり)、メタ要素あり。
心身ともに体調がよいときにお読みください。
「へっへーん! ウィキッドとの愛の巣ストーリー書けちゃった!」
「必ずしも《神筆使い》は自分で物語を書ける必要はないが……マスター、素晴らしい才能だな」
「ウィキちゃんに褒められた~嬉しい~!」
ウィキッド・ドロシィは今のマスターが好きだ。そのマスターはというと、自作小説のノートを手に女の子としてはしゃいでいる。
この異世界の図書館に集められた《神筆使い》たち、彼ら彼女らは世界の脅威となる《闇》と戦うため、それぞれの《キャスト》との絆を深めて研鑽していく。なかなか相性のよいパートナーと巡り会えずに苦戦する者もいれば、複数の《キャスト》をいずれも使いこなして高いレベルに達している者もいる。
そしてウィキッドとマスターについては、初めての出会いがそのまま一生の関係――というと大袈裟だが、マスターにとって初めて戦いから息がピッタリで、そのまま他の《キャスト》には目もくれずウィキッドとだけ戦っている。
今日だって『全国対戦』で他の《神筆使い》を圧倒して気持ちよく帰ってきたところだ。このところは『対戦』の方は短い時間で切り上げて、屋内の時間を過ごすことが多い。今日はそういう流れで、彼女が持ってきたノートを読まされている。
バカっぽく騒ぐマスターに呆れることもある。だが自身の《物語》において「異世界からオズの国に召喚され、元いた日常から引き離された少女」という設定を背負っているウィキッドにとっては愛おしい時間だった。
「一緒にコーラ飲むとか映えるし、ひゃくえん……ああ、今は十円玉も必要か。一緒に飲んじゃお~」
「フフ、いずれ『ありふれた日常への憧れ』衣装も私に用意してくれるか?」
「そのうちかなぁ。とりあえずあっちのお部屋いこっ!」
扉が閉められたあと、どこからか吹いてきた風がノートをぱらぱらとめくっていく。
*
ちゅういがき
勝手に見るな!!!!みたらコロす!!!(爆)
わたし「あ、あれれ!?ここどこ!?右も左も真っ白だよ!」
ウィキッド「そこに看板がある。『セックスしないと出られない』部屋ってあるぞ」
わ「お、女の子同士なのに…あっ、注意書きもある!どれどれ…ええ!?…はずかしいよぉ。ハダカであんなことやこんなことしたら出られるって言われても……///」
ウ「大丈夫だマスター。私がついている。私だってその……は、初めてだが上手くやってみせるさ」
わ「あぁん…/// ウィキちゃんはいつもの服でもおっぱい出ちゃっているし麻痺してない??w 女の子でもおっぱい見せるのドキドキしちゃうの!」
ぽろん。
わ「じ、実は着やせするタイプで、いつもはあんまり大きいって言われないんだけど…ウィキちゃんも見せてよぉ」 ばっ!たゆん。
ウ「くっ…!男どもからいやらしい目を向けられるのはもう慣れっこだが、女同士となると…」
わ「そっかー、修学旅行で女の子でお風呂入ったりするとこういうこともするんだよー」 ふにゅふにゅ 「わーいやわらかーい」
マシュマロみたいに柔らかい肌とハリのあるおっぱい、いつもあんなエッチな格好をしているのに絶対に隠れている乳首が晒される。マスターの特権でつんつんくりくり。エッチなことが好きな子として描いてあげるから、痛くない、気持ちよくなれる。
ウ「ああん…///なんかへん…」
わ「だいじょうぶ。ほら、こっちも」
くちゅくちゅ、ウィキッドの秘められた秘密の花園から卑猥な音が立つ。奥の方、降りてきてる子宮の入口を指でつっついてあげるとすごい声をあげてくれる。
ウ「っああああっっ!!っああああっっ!!やぁん…っ♥♥♥すき…っ♥♥♥やぁん…♥♥♥っひっ…!!やぁん…♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥やぁあっ♥♥♥」
ビクビクッ! 桃色に染まった頬を、エロ汁で光ってる指で愛おしく撫でる。
「ふふ、とろとろ顔でかわいい~♥」
*
(続きはなく、白紙のページが続いている。)
(他にも中途半端に数ページだけ使われたノートが散らばっている。)
*
今のマイブームは、トランプを使った運試し。あるいは占い。
懐からランダムに一枚引いて、絵柄をみて、ここ数回で引いた他のカードを思い出して、役ができたらちょっと良いことがあるし、できなかったらそのまま忘れる。それだけ。
(……『スペードの10』。三回前には『ダイヤの10』だったから、ワンペア)
マスターと楽しく過ごしたあと、今さっきまでまさに過ごしていた部屋の扉に背中を預けながらカードを眺める。ドアが意に沿わない形で開きも閉じもしないよう、蓋をするよう。
落ち着かない気持ちのときにこのトランプ占いをしてしまいがちで、だから役が成立するかどうかの結果以上に、スペードを引いたというだけで鬱々とした気分が強まる。騎士の意味も持つが、他にも死も意味する絵柄。
「おや、この時間からひとりですか? 貴女の《神筆使い》に用事がありましたが」
「マスターは帰った。この部屋に入っても無意味だ」
図書館の司書であり《神筆使い》たちの育成も担う、《四創聖》マメール・ロワだ。
背中の向こう、部屋にはコーラの空き缶とかマスターの私物かつ好き放題妄想をぶちまけたノートとかが中で散らかっている。あまり人を入れたくない。あとで片付けしておこう。
「空振りですね、また別の機会にしましょう。いつでも身体は空いてますから!」
「ええ、そうしましょうか」
マメールの後ろに別の人物がいる。腰に提げたハートの器が特徴的な少女――“錫の新兵”だ。
この子はウィキッドのマスターが扱っている“新兵”と別の個体のようだった。ライトイエローの髪はストレートで長く、瞳はオッドアイ。衣装は踊り子のように露出が多く、子供のように瞳と頭が大きな立ち姿にはかえってアンバランスに見えなくもない。
「私は“新兵”ひまわりです。覚えておいてくださいね」
「よろしく。お近づきのしるしに握手でも交わそうか」
“新兵”はそれぞれの《神筆使い》に与えられ、育成を任される。おのおの異なる名付けもされ、衣服や装飾だけでなく容姿も変えられるらしい――伝聞の形なのは、名付けだけは行ったがその後まともに『冒険譚』の探索など行っていないためだ。ひとりの《神筆使い》があらゆる《キャスト》に精通する必要はない
のと同様に――実際ウィキッドのマスターは『ウィキッド・ドロシィ使い』として突き詰めている――“新兵”の育成も義務ではないから、そのスタンスになんら問題はない。
「何かあるのなら、私や“新兵”ああああが伝言することもできるが」
名前としては奇特なセンスだが、マスターがそう名付けたのだから突っこむところではない。口出ししたところで一度つけた名前が変わることもないのだからなおさらだ。
マメールと“新兵”ひまわりが顔を見合わせ、ウィキッドには伝わらない何かしらの疎通をしたあと、
「申し出はありがたいですが、直接話をする必要がありますので」
「ごめんね、ああああちゃんによろしくね」
耳で聞いて客観視するとやっぱり変な名前だな、と改めて思った。マスターは相当に変な人かもしれない。
*
マメールと“新兵”ひまわりの来訪があったぞ――そうマスターに伝えて以後、ぱたりと図書館自体へ足を運んでくれなくなった。今は中庭の日陰、“新兵”ああああと一緒に所在なげに体操座り。
「なあ、ああああはどう考える?」
「ひとりで悩むのも、私のような空白の“新兵”に尋ねるのも無為な時間だと断じます。気になるのであれば、当人に確認するのが最も確実でしょう」
どんなにやる気のでないときでも一日に一回は欠かしていなかった『全国対戦』での鍛錬どころか、他愛もない雑談にすら来てくれない。《神筆使い》の候補者は多数いるというし、スポーツにせよ勉学にせよ適正がない者が無理に続ける必要もない。不祥事を起こして立ち去る者もいたが、頂に登れないことを知って自然消滅的に足が遠のく者の方が数としては多い。
去った者たちのひとりになってしまっただけかもしれないし、そうなればウィキッドが来客について伝えたこととは無関係かもしれない。ただの偶然に関係性を見出そうとするのは落とし穴だと、ギャンブラーとしての戒めからおのれに言い聞かせても、胸のざわつきが収まらない。
ネクタイを指先でいじりながらトランプを引く。他人の前でする仕草としては失礼だが、“新兵”ああああは許してくれるだろう。せめて失礼の度合いを減らすため、絵柄を確認次第すぐに片付けた。今回は役なし。
「習慣の連続が途切れたために欲求不満になっているではないかと私は推測します。マスターは不在ですが、行ける範囲で探索することを通して鍛錬を試みるべきと提案します」
《キャスト》たちは主たる《神筆使い》不在では戦いにならない。だがそれぞれに与えられた基本設定に準じた、基本性能ならパートナーなしでも行使できる。例えば『火を継ぐマッチ売りの少女』がマスターと力を合わせて太陽にも負けない火を作ることはあっても、逆に氷や水の生み出すことはないように。そのような反転を起こすとしたら、根本から《物語》を改変してしまう《闇》でしか起こり得ない。
そして『西の地を治める魔女』たるウィキッド・ドロシィとて、銃の腕と勝負強さをはじめから備えている。
「行ってみようか、私たちだけの『冒険譚』へ」
「赤い道とも黄色い道とも違う道、探してみましょう。サポートします」
アナスンに示されたものとは少し違うが、自分たちだけの物語作り。
格好つけた“新兵”ああああの言い回しはウィキッド自身に似てきたかもしれない。新兵は『空白』ゆえにどんな色にでも染まる特徴がある。
そして“新兵”ああああの言葉に応じるかのように――隠されていた小路、あるいは見方によっては落とし穴にも見える通路がそこに現れた。底の光が見えないくらいに暗くて深い。
「今までなかった道です。以前から存在していたとして、これを見落とすほど私もウィキッド・ドロシィも節穴でないと自己評価します」
「《闇》の気配はないな……マメールに報告はできるか? 私がこの場に残って、異変がないか見張ろう」
「了解です」
鍛えられた“新兵”ならば圧倒的な戦闘力も持つが、“新兵”ああああはまったく強化がされていない。もしも敵が出現したときなどに対応できるのはウィキッドの方だ。スムーズに役割分担が決まり、ああああは中庭から建物へと駆けていった。適切な指示を出せばしっかり働いてくれる子だ。
(風が吹いている)
穴の向こうから外で吹き出す流れを感じて見張っていたところ――向きが反転した。突然の変化に心の準備ができておらずたたらを踏んでバランスを崩し、そのまま真っ逆さまに落ちていった。
「きゃあああ!?」
*
(ずいぶん落ちたな……)
穴の底まで転がっていったが、どういう仕組みか負傷はしていなかった。代わりに入口だった穴はそれそろ夜空の月くらい遠く小さくなってしまっている。『オズの魔法使い』は同じく少女が主人公で異世界を旅する『不思議の国のアリス』と関連づけられることもあるが、だからといって真似た体験をさせなくてもいいのに。
薄暗い。腕が届く範囲での空間を把握しつつ、目を慣れさせるとレンガが敷き詰められた一本道のトンネルだということが分かった。トレードマークでもある薔薇の眼帯はここでは危ない、と外す。お気に入りの帽子も落としてしまったらしい。こちらは残念な気持ちになった。
動かず救助を待っても、おそらく何者もたどり着くことができないようになっているだろう。この場所はただの物理的な穴でなくある種の物語における装置だ、という確信があった。『義経記』であれば五条大橋、『浦島太郎』であれば竜宮城。ならばウィキッド・ドロシィがここに導かれたのは何か意味のあることで、足を前に動かさなければ状況も動かないようになっているはずだ。
人の気配はない。フランジブル弾――跳弾の危険を減らすよう加工されたものだ――を一発、奥に向けて放つ。音の反響からトンネルの深さを推測する。道はひとつしかないし、もしも救助が来ても元いた場所に引き返すこともできそうだ。
壁に手をつきながら足を前に進める。目が慣れたことでかろうじて把握できる程度の視界なので、足元のレンガが何色なのかまでは分からないままだった。
「本棚……?」
トンネルの行き止まり、屋外のように舗装された道とは不釣り合いな本棚が現れた。
本もぎっちりと詰まっているが、その一冊を抜いてみると表紙だけのハリボテ、肝心のページがちぎり取られている。他の本も背表紙を軽くノックしてみるが、同じ状態だった。
全部はまず無理だが、一冊だけは持ち帰ってみて調べてみたい。
不思議なことに、落ちた場所に戻ったところ緩やかな登り坂になっていて外への出口もできていた。出たら元いた“新兵”ああああとマメールが待っていて――呼ばれたマメールは入れなかったという――件の空っぽの本も渡す。
ところが事情の聞き取りも兼ねてマメールに同行していたところ、移動のわずかな時間のうちに持ち帰った本はかき消えてしまった。
物品は持ち帰れなかったものの、帰還したウィキッド自身を検証した結果として《闇》に侵されるような症状は確認されなかった。そして現状でウィキッドにしか穴に侵入できないならば追加調査も困難という。無害であるならば対応の優先順位も低いということで、再びあの穴を見つけても報告だけして関わらないように命じられた。
*
穴のことを普通なら忘れるくらい、日が経った。
「おまたせ! ほぉら、ああああの実装記念日だからちょっとしたお祝い!」
三人分として、いちごの乗ったケーキ、シュークリーム、モンブランがそれぞれ選べるように梱包されている。マスターの本来いる現実世界では色とりどりの菓子が女子のお小遣いでも手に入る、という。“新兵”ああああがびりびりとシールを剥がす。ウィキッドはケーキのフィルムを外す手伝いをした。
「ごめんね、最近は寂しがらせちゃったもんね」
どぼどぼと紙製のコップにオレンジジュースを注いで、マスターが持つ便利な板状の電子機器からかわいいっぽい音楽が流れ、女子会っぽいものの準備は完了。
「私たち《キャスト》は想像から生まれた存在であり、生身で生まれたマスターたちのように記念日を祝う必要があるのかは議論の余地があります。しかし……この胸に生じる温かなゆらぎは、嬉しいという感情、でしょうか」
『空白』の心であるはずの“新兵”ああああの頬がほころぶ様子を見ると、ウィキッドまで同じように嬉しいという感情を覚える。他人のめでたい出来事を喜ぶことができる。アナザーゆえに失うモノばかりの物語であった『願い叶える魔女狩り娘』、血と硝煙の臭いが濃いファミリーのボスにとっては久しく忘れていた心の動きだ。
控えめに拍手をしながら、祝いの言葉を口にする。
「……おめでとう、ああああ」
――でも、マスター。
――ああああの祝いだというのなら、私にまで内緒にする必要はあったのか?
――もっと大きな隠し事、ないか?
こっそり手元でカードを一枚めくる。またスペードだった。
*
――私にだって、秘密は、ある。
ささやかなパーティの日からまたマスターは来なくなってしまった。むしろ記念日を忘れてないだけマシと前向きに考えた方がいいかもしれない。
隠し事をするようになってしまったのはウィキッドも同じだから、マスターの態度も許せるようになってしまった、気がする。
言いつけに背いて、例の穴をまたひとりで探索していた。
落ちるたびに先代の魔女からもらった眼帯も外す。ウィキッド・ドロシィを示す記号たる装飾を外してしまっても、ここには誰もいないし来れない。
はじめはあの本棚以外に何もない場所だったのに、訪れるたびにスポットライトで部分部分を照らすように小道具が増えていた。勉強机、コーラの缶、ゴミ箱、背もたれがあってくるくる回る椅子、生活感がどんどん増している。
いつもの本棚の前に立つと、最初にトンネルへ導いたときのようなつむじ風が起こり、髪が舞い上げられ、そしてどこからか大量の紙が――ページが現れる。風が止んだら、散らばったのを拾い集める。奇妙な作業を何度も何度も何度も、ここに来ては繰り返していた。
拾ったページはトンネルにある限りは消失しないようで、表紙しかない空っぽの本たちが日に日に厚くなっていく。どこかの《神筆使い》が使っていた《ブック》のようだ。
(マスターと同じように、もう筆をとらなくなってしまった人なのだろう)
不思議なことに、複数ある本のうちページはどれもバラバラにしか現れない。おかげでどの本もまだ復元が完了してないのだが、一斉に完成しそうなところまでは作業が進んでいる。
今日は、今日も、修復作業の手を止めて、分かる範囲で内容を読み解く。そういう日にする、今決めた。
(どれも、『ウィキッド・ドロシィ』を喚んで共にした人のもの……)
『このウィキッド』にとっては記憶にないことだが、この世界で喚び出された当初の『ウィキッド・ドロシィ』は《キャスト》として非常に不安定ゆえ腕利きの《神筆使い》らをもってしても上手く扱えなかったらしい。強さとは掛け算のようなもので、銃だって射手が名人だとしても銃や弾丸が劣悪ならばまともに飛ばず、逆もまた然り。その弱さ、豆鉄砲ぶりを嘲るための呼び名は多岐にわたり、いくつも書かれていた。
くるくる回る椅子に浅く腰掛ける。読み進めるだけで胸が痛くなり、縋るようにカードをめくった。次の一枚の結果次第で、強い役ができるかもしれない並びになりつつある。でもスペードが連続していると、気分はよくない。
あと数ページで復元が完了する。そのためのページもあのつむじ風から出揃っていて、あとは綴るだけ。だが完成させる勇気が出なくて、今日は、今日はと先延ばしにばかりしている。
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穴から帰還すると、すぐ近くで見覚えのある“新兵”――ひまわりが単独で鍛錬していた。出口が毎回少しずつずれており、今回は『修練場』のそばだったようだ。
帽子も眼帯も外したままだが、ひまわりだけしかいないならいいか、とそのまま見物する。
「たぁっ! はっ!」
鍛えられた“新兵”の一撃は模擬戦用のターゲットを粉々にした。
「敵を撃破しました! 次、行きます!」
彼女らの扱う銃剣とウィキッドの使う拳銃は似て非なる武器だが、ほんの少しだけ親近感を覚える。以前だったらマスターがいつ現れてもいいように図書館へ戻って待っていただろうが、どことなく諦めの境地に至りつつあり、“新兵”ひまわりの様子を眺めて時間を潰すことにした。
やがて集中力も散り散りになった頃、“新兵”ひまわりの方から声をかけてきた。
「……ウィキッド・ドロシィですね。マスターは元気にしていますか?」
“新兵”ひまわりは初めて会ったときも、今も、『このウィキッド・ドロシィ』のマスターに関心を向ける。誰かが鍛えた“新兵”なのだから、彼女にも育ての親とも言えようマスターはいるだろうに。それも、片手間なんかではない、リソースをかけて磨き上げてくれるような。
「こちらの? ああ、この前も『全国対戦』で他の《神筆使い》たちからひとつ抜きん出た腕前を見せつけたよ」
自分の言葉が上滑りする。この前、というのはどれくらい前だったか。“新兵”ああああの記念日を祝った日は久しぶりに組んだような気がする。気がする、というのは、あれもすっかり前のことだから、他と混ざっていても不思議でない。
「あれだけ息の合う主を持てると、《キャスト》としての私も鼻が高い。ファミリーの頭領たる私が他人に用いられるだなんて、はじめは抵抗感があったがすっかり……すまない、自分の話ばかりしていたな」
「気にしないでください。私が訊いたことに適切に答えてくれただけです」
適切。適切と言えない自分の言葉。
後ろめたいことがあるらしいマスターに対して自分も秘密を持つことで赦しの感情をなんとか形成した。しかし“新兵”ひまわりは嘘やごまかしのない子で、彼女への中途半端な発言を自覚すると手に嫌な汗が滲んできくる。
「少し気になってな。――物語の結末をみた者というのは、どういう景色が見えるのかと」
話題を変える。いまだに“新兵”ああああが提案した『隠し事について当人に確認する』という手段に踏み出せないままでいる不安を、言葉を変えて彼女に尋ねた。
「結末というのは、ただのピリオドです。物語を作るのはエンディングのいちシーンでなく、それまでに積み上げられた過程です。私のこの清純の心が、私の出会ってきたみなさんとの触れあいで育ったのと同じ……」
“新兵”ひまわりの腰に提げられたハートが光を反射し、きらりと。
「ひとつだけ、助言をするならば」
アドバイスというよりも脅しのように。
「ピリオドが打たれるまでは、カンマをいくらでもねじこんで延ばすことができます。でも終わったとき、真実が確定したとき、終着点から先はないことはお忘れないよう」
心がかき乱れて、カードをめくろうと無意識に懐に手が入りかけた。占いになんて頼らない、頼れるのは自分の足。戻した。
*
翌日、眼帯も帽子も揃えてあの穴に入った。一日開けたのは逃げのためでなく、自分の心を落ち着かせるため。
整理だけして綴らなかった最後のページを収めた。するとこの空間で集めてきた分厚い本たちが光り輝き、寄り集まり、今までの厚さに見合わない、薄い一冊の本になり、見た目にそぐわない重たい音とともに地面に落ちた。
黒いインクのような《闇》やその汚染を表す特徴はない。触れてウィキッド自身が侵されるような代物ではないと確認してから持ち上げる。
ごく普通の――以前にマスターが持ち込んでいたノートとそっくりな見た目なのに、重たい音の原因にもなっていたのが、表紙を閉じる厳重なロック。
仰々しく光って現れたくせに、ウィキッドはこれに鍵なんて持っていない。
(寄り集まって、一冊になった)
複数の作者がひとつの作品を作り上げる形式もある、あるが、ここでは――
(本の主、今までの厚い《ブック》の主、『私』との関係性……)
「『貴女』にとっての誰だったのか。ピリオドを打つときが来たようですね」
「ひまわりによって連れてこられました。より未知の領域ですが、引率者がいれば深度を揃えられたので」
“新兵”ひまわり、“新兵”ああああが揃って現れる。
「私はここに入れるのです。だって、マスターだった人の《ブック》が封じられた場所だから」
ひまわりのマスターに会ったことはない、『私』は無関係――本当に?
「そして『私というウィキッド』もここに入れた……聞かせろ。手札は揃ったのだろう」
懐からまた一枚、トランプを取り出す。これまでの四枚から次に出る一枚が何なのか、確信があった。
ギャンブラーの誤謬でしかなくても、自分が歩いてきたこの物語に次のトランプは必然だと。
『スペードのA』。
『スペードの10』、『スペードのJ』、『スペードのQ』、『スペードのK』、そして最後の『スペードのA』。ロイヤルストレートフラッシュ。
最強の役。もとい――場に出てしまえばゲームが終わってしまう役。
「マメールから特別に、鍵を借りてきました」
ひまわりの手から受け取る。ためらいはない。
黒地に赤でマークが記された表面と、白色に細かく文字が記された裏面のカードが鍵。
鍵をかざす。シャランとした電子音と共に解錠される。
開く。雑にぱらぱら流し見するのでなく、一ページ目から順番に。
まず最初はデカデカとわざと太く仰々しい文体での一言のなぐり書き。
*
みたら56す
*
(似ている)
違う。彼女が書いたノートと似ているんじゃない。
同じ。あのノートとこのノート。
*
みたら56す
ウィキッド「うっ、なんだここは?」
俺「そこに看板がある。『セックスしないと出られない』部屋ってエロ漫画じゃねえんだからさあ」
俺とウィキッドの目が合った。いつもクールな彼女が目をそらした。イヤなのか。一気に怒りが怒髪天し逆上する。
俺「なんだその顔は! お前みたいなザコキャラ、身体くらいでしか役に立てないだろう!」
ウ「きゃあっ! マ、マスター、心の準備が…」
俺「いつもこんなスケベな格好で誘惑しやがって」
ぽろん。一気にベッドに押し倒す。逃げられないよう両手両足を押さえながらジャケットを取り払う。ブラもつけてない胸がこぼれ出た。
俺「声と見た目だけで、TeirならZだよ!くそっ」ズブブブッ!
ウ「ああっ!せめて、はじめてだから、やさしくぅ…!」
俺「うるせえ!くっきつい」パンパンパン!パンッ!
つぶつぶしたところを削ぎながら子宮をどついてやると声が甘くなる。キャラパが足りてないくせにコッチはTeirSだ。SSSだ。ヒマ◯ッツがキ◯ワリ通り越してカガヤクタイヨウになったようなものだ。最新作にもそんなのいないが(セルフツッコミ)
ウ「あっ!///また大きくなってる!あっあっあっあっ!熱くてこわれるっ!」
俺(くそっ、こんな乱暴なのじゃなくてもっと平穏にしたかった。せめてイかせて最低な中で最高の体験にしてやる!)
くちゅくちゅ、ウィキッドの秘められた秘密の花園から卑猥な音が立つ。腰を振れば水しぶきが飛び散っていて、潮も吹いているのかもしれない。判断力も鈍ったまま腰を振っていた。奥の方、降りてきてる子宮の入口を先でつっつくとすごい声が上がる。
ウ「っああああっっ!!っああああっっ!!やぁん…っ♥♥♥すき…っ♥♥♥やぁん…♥♥♥っひっ…!!やぁん…♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥やぁあっ♥♥♥」
ビクビクッ!
お互いに何を言っていたかも覚えていないのに、ウィキッドに「好き」と言われたのが耳に届いた途端にこの一発で妊娠させてやるとばかりの量の精液が発射された。ごぼごぼと音を立てて溢れた。あまりに天国の気持ちよさ。
「あ…ああ…ますたー…」
*
(続きはなく、書きたいところだけ書いて終わっている。)
*
同じ。同じ筆跡。同じ展開。
目眩がしそうだ。黙って見守るだけだった“新兵”たちと共に穴から外に出る。こんな最悪の気分でも、太陽は昨日までと変わらず、ウィキッドの情緒に応じて忖度することはない。
「読み終わりましたか、新兵たち、ウィキッド・ドロシィ」
現れたのは“新兵”ひまわりに封を解く鍵を貸してくれた張本人、マメール・ロワ。
《闇》と戦うにあたっての指揮官ともいえる存在であり、図書館Wonderlandの管理者であり、21世紀の日本を中心に集められている《神筆使い》たちの案内人。
「また、問題行動の報告を受け――調査が終了しました」
淡々とした口調のマメールから醸しだされる圧迫感が苦しい。トランプを握りしめる。ぐしゃぐしゃに潰れてしまう。折れ曲がって使い物にならなくなるのもいとわずに力が強まる。
もう理解していて、最後まで聞き届けるのが怖いだけで、もう……。
「怖くありません。私も一緒です」
「ああああも元気づけていますよ。震えないで」
トランプとノートを握っていた拳を緩める。落ちて、空いた手を“新兵”たちに握ってもらう。冷や汗が少しだけましになる。
「本日、違反行為を繰り返す《神筆使い》の資格を停止いたしました。……再び別人になりすまして現れることもあるでしょうが……」
あくまでマスター自身の行いの結果で、彼女――いや、彼に付き従う《キャスト》でしかないウィキッド・ドロシィは結末へ寄り添うことしかできない。でも同伴者でしかなくても、同伴者もまた登場人物で、感情の動きがあって、言葉があって、物語を紡いでいく糸の一本になる。
「ふ……ふふふ…………」
心を支えてくれていた“新兵”たちの手を離す。一度は落とした銃を拾い直す。
西の魔女、ウィキッド・ドロシィの『続編』はここに決まった、決めた。
「次の私もまた、このことを忘れているのだろう。だが次こそは――私自身の手で、裁きの弾丸を撃ちこんでやる」
ノートと共に落としてしまっていた、借りたカード状の鍵を拾い直す。
もうウィキッド自身が本筋に干渉できる要素はなく、マメールは退室しようとしていた。その背中へ言葉を投げかける。
「この鍵はもういいのだな?」
マメールの首が縦に動く。
なら、遠慮なく。
ウィキッド・ドロシィ得意の早打ち二連射。黒いカードにふたつ、風穴が空いた。
*
(書きかけのまま終わったノートがいくつも残されている。)
(他にも中途半端に使われたAimeが散らばっている。)
(いくつかはアカウントが停止されている。)
(まだ停止されていないものもある。)
ハーメルンの使い方よくわかってないんでなんかあったら言ってください。