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https://skeb.jp/@aikosyaHoKoku/works/45
ご依頼、ありがとうございました。
怪獣化が普通になっている世の中で、怪獣になってしまった女性のお話です。
「あーあ、なんでこんなんになっちゃったんだろ」
私は手鏡を覗き込み、ため息をつく。
うあー、顔が大きすぎて鼻しか映ってないじゃん。
私の手には小さすぎるそれの角度を変えたり、距離を離してみたり……
そうこうしていると、やっと私の顔がフレームの中に収まった。
どこからどうみても人じゃない、どっしりとした顔。
まあ、わかりやすく言えば『怪獣』、なんだけどぉ……
問題なのは、私の顔がそれだという事実。
もちろん、特殊メイクだとか被り物だとかそういうのじゃ全く無い。
まあ、まあ、テレビで見た事はあるんだけど。
年に数百人くらい、突然怪獣になってしまう病気があるっていう話。
でも私の周りにそんな人は全くいないし、そもそも感染とかする病気でもないから爆発的に増えるわけでもないみたいだし。
遠い非日常の話だとばかり思っていたんだけど……
そう、全く理由も分からないままになってしまったのである。怪獣に!
よりによってかなりゴツい怪獣になっちゃったので、旦那さんである昭夫の服ですら小さいくらい。
病院で診てもらったけど、まあ……恐ろしく珍しいってわけじゃないから意外とあっさり診察終わっちゃったし。
うん、うん。
今の所治療法が無いっていうのも困りものなのよね。
あー、どうしたらいいんだろ!
流石にこの巨体で事務仕事は難しいので、怪獣としての生活に切り替える必要が出たわけなんだけど……それはそれとして、問題があるのだ。
体格だけじゃなく、骨格も人間じゃなくなったので……なんというか歩くのも一苦労。
大股開いてのしのし歩かなきゃいけないし、尻尾も上手く使えない。
人間の頃だったら転んでも「いったーい」で済んだんだけど、今の体重だと家が壊れかねない。
「あ、恵理子?」
「わっ、どうしたの、昭夫」
「ごめんごめん、びっくりさせちゃったか。ほら、予約していた施設……そろそろ時間だから、行ってみようか」
「あ、もうそんな時間? うん、分かった」
私は文字通り重い腰をあげ、旦那に歩み寄る。
「で、でっかいな、ほんと……」
まるで小型犬のような顔の角度で、私の顔を見上げてくる。
「い、言わないでよぉ」
人に聞かれていると思うと、自分の低い声が一層気になってしまい。
「ええっと、外歩くけど……大丈夫か?」
「まあ、もう三日目だしね。ちょっと気にはしてるけど、なんとかするわ」
『そういう病気がある』と理解している大人はいいんだけど、その他諸々はそうもいかない。
犬や猫は鳴き叫ぶし、子供は泣いたりはしゃいだりちょっかいかけたり色々してくる。
んもう、おもちゃじゃないのよ私?
と怒ったところで仕方がない所もある、んだけども。
今日は昭夫が一緒にいてくれる分、幾分か気は楽……なのかも。
ちょーっとだけ恥ずかしいので、大きな帽子を深く被り、顔を隠した気分になる。
「よし、行きましょ!」
あんまりクヨクヨしていても、愛しの旦那に悪いしね。
私はちょっとだけ明るい声を出し、どしどしと歩き出す。
あ〜、自分からこんな足音するの、やだぁ〜……。
「はいはい、斎藤恵理子さんですね」
「は、はい」
緊張しているのは別に、知らない所にいるからってだけではない。
「あはは、驚きましたか? この施設、職員もみんな『怪獣』なんですよ」
ワニのような長い口を豪快に開いて笑っているのは、受付の……お姉さんだろうか、お兄さんだろうか。
人間じゃなくなっていると、それこそ性別の判断は見た目じゃ難しいんだなぁ。
……あ、それこそ自分もそうか。
変な所に感心してしまう。
「でも、徒歩でいらっしゃったんですよね? じゃあ歩行に問題はないみたいですか?」
「え、えっと、尻尾が上手くコントロールできなくってぇ」
「あ〜、分かります分かります! 私もなりたての時、買ったばかりのノートパソコン粉砕したことがあってぇ」
ワニだけにゲタゲタと笑いながら、そんなことを言っている。
めちゃくちゃ人生……怪獣生? 満喫してるじゃん、すごい。
「よしよし、では歩行のトレーニングの中級から始めましょうね。えーっと、施設の案内を係のものがしますので。旦那様は待合室の方でお待ちくださいー」
「えっ、一緒にいてもらった方が安心なんですけど……」
「あー、気持ちは分かるんですけどね。ほら、皆さん『人間じゃなくなった』わけでしょう? ですから、『人間のまま』の人に見られるのがしんどい人も多いんですよ。……いやまあ、興奮する方もいらっしゃいますけどね?」
「あ、あー、そ、そっかぁ」
この施設には私と同じような人がたくさんいるわけだ。
見世物みたいに人からジロジロ見られるのは確かにイヤだろう。
今の所、私は気にならないけど……この体に慣れてきたらそう思っちゃうのかもしれない。
「あ、斎藤恵理子さんっすね。自分、尻尾あり二足怪獣の歩行コース担当っす。今から講座始まるんで、案内するっす!」
また違う怪獣の人が来て、気さくに挨拶してくる。
「え、えっと、尻尾あり……え?」
「あー、移動しながら説明しますね。どぞどぞ!」
私は昭夫と別れ、施設の奥に進んでいく。
「簡単に言いますと、尻尾の有無・翼の有無・歩く時の足の数でグループが分かれてるんすね」
「ふんふん」
「例えばうちの所長は翼がある四つ足歩行だったりすんすけど、恵理子さんと所長に同じ歩行レッスンするのは無理じゃないすか。歩き方違うんだし」
「な、なるほど」
「んで、逆に……翼で飛べる場合、飛ぶ練習もいるんすね。一緒のグループにしちゃうと、飛べない方は退屈でしょ? 時間って大事っすからねぇ」
喋り方的に、この人は私より年下なんだと思う。
でも、歩き方と言い、堂々とした振る舞いといい……怪獣としては私より先輩なんだろうなぁ。
「じゃ、ここっす。あー、そだそだ。尻尾族のルール、一個だけ」
「ルール?」
「尻尾は踏まれても怒らない、これ守ってください。どうしても足も尻尾も変に動いちゃって、踏んづけちゃう場合があるんで」
「ええっと、踏まないように気をつける……んじゃないんです?」
「あ、そう思うでしょ? 違うんすよー、歩くのに集中すると尻尾に意識が行かなくなるでしょ? そうすると勝手に動いた尻尾が人の足元にこう、シュッて滑り込んじゃう時があって」
「あ〜……」
思っていたよりもずうっと大変そうだ。大丈夫かしら私、怪獣としてやっていけるのかな。
「皆さん、こんにちはー。新入生っす」
「ありゃ、俺よりでかい人が来た!」
「ヒェー、尻尾太いなぁ」
「なってから何日くらいです?」
一斉に、声が飛んでくる。
わ、わー……
みんな怪獣だから、どんな人なのかもよく分からないし……
一種の仮面舞踏会みたいなもんになっているからか、どこか全員明るい雰囲気。
「はいはい、講座始めるっすよー。じゃ、ついでに皆さんも復習しましょうね」
先生の鶴の一声で、みんな歩行の練習を始める。
な、なんだ、私だけじゃないのね。
同病相憐れむ、というと聞こえは悪いけど……どこかほっとしちゃったのは事実だった。
「お、終わったか?」
くたくたになった私が戻ってくると、昭夫が待っていた。
「う、うん、今日はひとまずおしまい」
「恵理子さーん、登録カードできましたのでお渡ししておきますね」
やたらと頑丈なカードが手渡される。
「す、すごいですねこれ」
「すごいでしょそれ。私も寝ぼけて何度か噛んだことあるんですけど、傷一つ付かないんですよそれ」
逆に怖い。
「では旦那様も、色々とお願いしますね」
「はい、頑張ります」
何の事だろう?
帰り道で、聞いてみる。
「ああ、恵理子をサポートする方法、何があるか聞いてみたんだよ。そうしたら色々パンフレットとか貰っちゃって」
ひらひらと、小冊子を見せてくれる。
「ふうん、どんなことが書いてあるの?」
「体が大きく変化しているから、できたことができないので色々としっかり注意しようって事かな。まあでも、逆にできなかったことができるようになっているのでそれも見つけてあげろ、だってさ」
「うーん、できることかぁ……何かあるかしら?」
「まぁ、慌てなくてもいいんじゃないか? そのうち見つかるだろ。それより、講習はどうだった?」
「えへへ、私みたいな人、何人もいたからそこは安心しちゃった……けど、みんな違う怪獣だから横の人を見て真似するのも難しくって」
私は初めて保育園に行った子供のように、色んな事を喋りながら歩く。
まだ一回目だけど、教わったおかげか……おしゃべりに夢中でも、歩くのに難儀する感覚はあまりしなかった。
「えーっと、卵……」
「割ろうか?」
「あ、おねがーい」
昭夫も積極的に声をかけてくれるおかげで、問題なく料理も作業が進む。
「へぇ、フライパンは問題ないんだな」
「うーんとね、指で挟めば持てるし……腕、太くなったでしょ? 全然疲れないから、そこはいいのよね」
「なるほどなぁ、見た目通りのパワーってわけか」
「も、もう、ひどいんだ!」
「ごめんごめん」
山盛りの私の分、普通の量の昭夫の分。
分けてよそって、仲良く食事して。
「そうだ、恵理子。お風呂、一緒に入るか?」
「えっ、な、何、いきなりどうして!?」
「そ、そんなびっくりするなって。今日教わったんだけど、どうしても怪獣の体だと上手く洗えない所が出るからちゃんとパートナーが洗ってやる方がいいんだってさ」
「えっ、えっ、でも、私、こんなゴツゴツの肌なのよ?」
「うん、だから専用のブラシを買わせてもらった」
「あ、そんなのあるんだ……」
「まあだから安心しろって、なんとかするから」
「う、うん、分かった……」
気持ちはありがたい、んだけども。
結果から言うと……一回目は大騒ぎ。
気をつかって優しく洗ってくれるのはいいんだけど、それがくすぐったくてくすぐったくて仕方なくて!
尻尾が暴れちゃって、昭夫の方が泡だらけになっちゃって。
うーん、なかなか難しいわ……。
あ、後、ブラシでゴシゴシされるの、『人間じゃない』感じがしちゃって……そこはちょっと、しんどいものはあるわよね。仕方ないんだけどぉ。
まぁ、そんなこんなで時は流れて数ヶ月。
すっかりこの体の動かし方も慣れてきて、生活には困らないくらい。
「さーてと、今晩は何作ろうかしら」
今日は週に一度のお晩酌の日。
昔はそんなに飲めなかったけど、怪獣になってからは割と飲んじゃうようになってきてる。
「糠漬け出して、あ、溶いた粕に漬けといたあれ焼いてもいいわね」
冷蔵庫を覗き込み、色々と考える。
「ただいまー」
「あ、おかえりー」
「ふう、なんか疲れちゃったな今日。ちょっと部屋で休憩してくるよ」
「あら、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、ちょっと疲れているだけだから」
「そう? 何かあったら呼んでね」
いつものように、私の鼻先を撫でてくれる。
風邪でも引いたのかな、とその時は思っていたんだけど。
「うわぁーーーーーー!?」
とんでもない声が聞こえ、私が部屋に飛び込んだのはわずか数分後の事だった。
「え、え!?」
「お、俺、これ、どうなってる、た、立てないぞ!?」
「あ、あー、尻尾ありの四つ足ぃ……」
びっくりしているのに、口から出たのは冷静な分析。
うん、そうなのだ。
「えっ、恵理子、どういう、んっ!?」
「え、えっと、ごめんごめん、えっ、さっきまで人間だったわよね!?」
「お、俺も、ちょっと目を瞑って起きたらもうこうなってて、う、うお、四つん這いでしか歩けないぞ!?」
「わ、わぁ……」
昭夫も怪獣に、しかも私と違うタイプのになってしまったのだ。
「えっ、どうしようこれ、俺、おっとっと!?」
「あ、あ、落ち着いて落ち着いて! 足と手を同時に動かすんじゃなくって、最初は一本ずつ動かして……」
「えっ、恵理子、知ってるのか?」
「ま、まぁ、隣の講座の声も聞こえるから……ちょっとは分かるっていうか」
私はなんとか、昭夫に歩行のコツを破れかぶれで教えていく。
「あ、あー、やっとうまく歩けた、ふぅ……」
数十分後。
なんとか思い通りに歩けるようになったようで、のしのしと私の元にやってくる。
「大丈夫?」
「い、いざなってみると、全然ダメ、かな」
「分かる分かる。私も最初はそうだったもん」
「えぇーっと……」
「施設の予約、しとこっか?」
四つ足タイプの怪獣の一番の問題点。
『手』の概念がほぼ無くなってしまうので、細かい作業がやりづらいのだ。
例えば棒状のドアノブに手を引っ掛けて開けることはできるけど、丸いタイプは掴めない、みたいな。
しっかりと施設に通っていた甲斐があって、こういうのはすぐに分かる。
「あ、ありがと……」
へとへとになって、床でへばっちゃってる。
んー、私と同じくらいの身長はありそうなんだけど……四つ足で立っているから、むしろ背が縮んだようにも見えちゃう。
「とりあえず明日行こうね、えーっと……」
「ご、ごめん、とりあえず、ベッドまで運んでくれないか?」
「はいはい、よい……しょっと」
確実に重たくはなってる。
さすが怪獣。
……それを軽々運べている自分にも改めてびっくりしちゃうけど。
「何か飲み物、持ってこようか?」
「あ、いや、その……」
本当に熱でもあるんじゃないのかしら。
怪獣になりたての顔が真っ赤っかだ。
「どうしたの?」
「い、一緒に、寝てくれないか?」
「え、え!?」
「だ、ダメか?」
べ、別に、断る理由はないんだけど、考えたら最近、そういうの、してなかった、わね……。
「い、いいけど」
多分、私の顔も真っ赤なんだろうな。
おずおずと、ベッドで添い寝する。
「うわ、でっかいなぁ、恵理子」
「昭夫だって」
横になって並ぶと、ほとんど変わらない大きさ。
「あっ、ちょ、ちょっと」
「えっ、ん、わ、え、えっと、ち、違うんだって、やろうとしてるんじゃなくて、か、勝手に、尻尾が、さ」
私の尻尾に……昭夫の尻尾が巻き付いてくる。
「うふふ、私も巻き付いちゃお」
さらにそのまま、捻るように尻尾を動かして。
「あっ、あっ、おっ、うわっ……」
足のようになった手で、顔を覆っている。
可愛い。
「なになに、どうしたの?」
大体予想はつくけど、わざと聞いてみる。
「え、えっと、その、ドキドキ、してさ」
「なーに結婚初夜みたいなこと言ってるのよ」
「じゃ、じゃあ、恵理子、なんでもないのか?」
「な、なんでも、ありまくりだけど」
「あ、あ、そ、そっか」
なんだろう、怪獣になってからあんまり昭夫にドキドキしていなかったっていうか、やっぱり怪獣になっちゃったら、人間には興味なくなっていたっていうか……
でも、結婚するほど好きな昭夫が怪獣になっちゃったわけで。
当然、私、ドキドキしちゃって。
多分昭夫も同じ感じなんだろうなって思う。
「ああ、恵理子、好き、好きだぞ……」
私の体をよじ登るようにして覆い被さり、口付けをしてくる。
あっ、ざらざらしてる。
「私も、好きよ」
負けじと抱きしめて、そのままぎゅっと抱きしめて。
「あっ、やべ、やべ、俺、俺、なんか、これ多分」
「うん、わかる、だってすっごくグイグイ、押してくるんだもん」
ご無沙汰だったのもあるのか、昭夫のアレがもうビンビンになってるのが分かる。
「え、えっとさ、お願い、あるんだけどさ」
「んっ、な、なぁに?」
「俺、う、うまく動けないから、ば、場所……」
「あ、う、うん、うん」
私は昭夫のお腹を掴んで持ち上げ、ちょっと下半身の方にずらす。
「んっ、こ、ここ♡」
「あっ、おっ、おっ、は、入って、いく、ぞぉ……♡」
ゆっくりと、昭夫の逸物が私にお邪魔してくる。
大きくて、硬くって、温かくって。
「わ、私、動いて、大丈夫?」
「な、なんとか、しがみついてみるさ」
木の枝に捕まるトカゲみたいに、昭夫が手を、足を私の背中に回す。
ちょうどおっぱいに顔を埋めてしまい、居心地悪そうにしている。
ちょっと可愛い。
「あっ、んっ♡」
ベロリ、と舐められてついよがってしまい。
その拍子に逸物が私の中を刺激して、全身ばビクビクして。
「んっ、恵理子、恵理子、あっ、あっ♡」
「昭夫、もっと、もっと、私、好きに、して♡」
まだ慣れないながらも、必死に腰を動かしてくれている。
その度に、私の、体にも、あっ、あっ、すごく、熱い、感覚が、どんどん、どんどん、どんどん♡
「あっ、あき、昭夫、ぉお、ぐぉお、ぐぉおおん♡♡♡」
漫画みたいな鳴き声が出てちょっと恥ずかしい。
でも、気持ちよくって、止められなくって、何度も、鳴いちゃう、鳴いちゃう、鳴いちゃう♡
「え、恵理子ぉ、ぎゃぉ、ぎゃォオオ、ぎゃぉおおお♡♡♡」
それに負けじと、昭夫も鳴き声をあげてくる。
それを聞くだけで、また心が、体がジンジンと痺れてしまい。
「ぐぉ、ぐぉおお、ぐぉおおおおん♡♡♡」
「ぎゃぉ、ォオオお、ぎゃぉおおお♡♡♡」
頭が真っ白になって、ピンクになって、ぐちゃぐちゃになって。
どのくらい時間が経ったか分からないけど、私たちは仲良く……同時に果て、変わらぬ愛を再確認するのであった。
「昭夫ー、そろそろ行こっか」
「オッケー、準備万端だぞ」
季節は巡り、四月。
「うふふ、一緒に働けるなんてね」
「でも、俺と恵理子は違う部署だろ?」
「大丈夫大丈夫、建物は同じなんだから」
四つ足で歩く昭夫にペースを合わせ、ルンルン気分で歩いていく。
目指すは、ずっとお世話になっている施設。
そう……私たちは二人揃って、この施設の職員に就職できたのだ!
確かに、二足歩行の私と四つ足歩行の昭夫では一緒のグループで働くことはないのだけれど……
いいじゃない、別にそこは。
どっちにもちゃんとした場所がある、それが一番幸せなんだと思うし。
何気なく、夫の顔を見る。
「なんだ、何かついてるか?」
「ううん、なんでも」
昭夫もどこか、嬉しそうな顔で見返してきた。
うふふ、今日から頑張るぞー!
いいお天気の空に、二人の大きな足音がのしのしと響き渡っていた。
おしまい