趣味で書きました。
和泉愛依ってそんなにエロの話が多くない印象で、愛依サマとなればなおさら、と思いました。

pixivにも投稿しています。
→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22191451

1 / 1
感想もらえたら嬉しいです。
pixivでも読めます
→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22191451


敗北の美酒

 

 

 夕暮れ時の293プロ事務所。今日は休業日だからか、いつものように誰かがテレビを見ていたりキッチンで何かしていたりすることもなく、リビングはガランと空っぽだ。

 

 ところが、和泉愛依が事務所のソファーに座っている。陽気なギャルという形容がぴったりの、おおらかで明るい彼女は珍しく――といったら苦笑いするだろうが――神妙な顔をしていた。

 

「それで、どうしたんだ、相談事って」

 

 休日出勤のつもりで事務所に来る所で、愛依にばったり出会った。また高校の補習に呼ばれたのかと思ったが、どうやら仕事のことで悩みがあるとのことで――いったん俺の業務は先送りにした。

 

「ホントはさ、いいコトだと思うんだけど」

 

 金に染まった毛先を指に巻きつけながら、愛依が言った。

 

 アイドルとしての和泉愛依は、クールで熱くてミステリアス。それは、過去の失敗から心の深い所に根を張った「あがり症」を乗り越えるためのペルソナだった。

 

 しかしながら、苦肉の策は見事にハマッた。いつしか「もう一人の和泉愛依」と本人も自覚するレベルになるまでに、寡黙な彼女は愛依に馴染んだ。ファンも――本当の朗らかな彼女を知る者も遂には――ストレイライトの和泉愛依を愛した。もちろんそれは、他ならぬ愛依自身だって、同じ気持ちのはずだ。

 

 そんな和泉愛依が、悩みを口にし始めた。

 

「ステージに上がった時にあんま緊張しなくなってきたからかな。その――MCとかで素に戻りそうになることがあって」

「経験を積んで慣れてきたから、自然体でもいられるってことかもしれないな」

「でもさぁ、うちって今までずっとアレでやってきたんだし、これからもそうありたいんだよね~」

「……愛依の言いたいことは、よく分かるよ。緊張しなくなるって、普通は喜ばしいことだものな」

 

 冷蔵庫から愛依が持ち出した炭酸飲料が、プシュッと弾ける音を立てた。ブドウ香料の混じった甘ったるい匂いが漂ってくる。景気よくゴクゴク飲み下そうとしていたが、愛依はすぐにしゃっくりを始めてしまった。

 

「リラックスしそうな時でも、ステージの上の緊張感を保っていたい。そういうことだよな」

 

 俺がそう言うと、ぱちんと指が鳴った。

 

「さっすがプロデューサー! や~、うちのことホントよく分かってるよね~」

「まぁ、付き合いもそこそこ長くなってきたしな」

「そだよね~。付き合ってから――えっと、付き合って……」

 

 アルミ缶を指でぺこぺこ鳴らしながら、愛依が言葉尻をすぼませた。

 

「どうした?」

「や、うん。その、ちょっとプロデューサーにさ、特訓付き合ってほしーんだけど」

「おう、いいぞ」

「いいの? どんな特訓かもまだ話してないんだけど、だいじょぶ?」

「愛依のためだったら、俺は何だってするぞ」

 

 俺は胸を張った。大袈裟でも何でもなく、そうした。担当アイドルのためだったら、何だってしてみせるとも。少しばかりの逡巡を見せた愛依だったが、真夏の向日葵みたいな笑顔が、パっと咲いた。

 

「んじゃ、お願いしちゃおっかな」

 

 プロデューサーとは付き合ってるし。

 

 特訓の内容とやらを話す前に、愛依はぽつりとそう呟いた。

 

 

 * * * * *

 

 

 愛依が休業日の事務所にやってきたのは、来れば俺一人だけはいるだろうという見込みがあってのことらしかった。溜まった学校の課題を事務所に持ち込んで一気に終わらせようという魂胆もあったようで、俺にスマホを預けると、真っ暗なテレビの前のテーブルにテキスト類を広げ、愛依は黙々と課題に取り組んだ。お喋り好きな彼女が静かに集中していたから、翌日の自分に楽をさせるために俺も仕事に取り組んだが――明らかにミスタイプが普段よりも多かった。

 

 

 ――アイドルのうちとエッチしてっ!

 

 

 あまりにも赤裸々な言葉が、頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。パソコンを立ち上げてからずっとそうだ。

 

 愛依の話の理屈は分かった。(許されないこととは分かっているが)男女としても『仲良し』になってしまった俺と一緒にいると、愛依は心地よく、リラックスできる。最もリラックスできる状態なのだそうだ。そんな、最も素の自分に戻ってしまう時間を、敢えて緊張感と隣り合わせのアイドルモードで過ごせば、ミステリアスな「あの子」を強固に保っていられる。それが愛依の言い分だった。

 

 冗談なのか本気なのか判別できずに困惑したが、俺の結論は揺るがなかった。壁にぶつかっては乗り越えてきた愛依が、また新たな壁にぶつかろうとしているのだ。担当アイドルのチャレンジを、プロデューサーが手助けしなくてどうする。第一、そこまでして愛依はアイドルとしての自分を保とうとしているのだ。ファンのために、自分のために、築き上げてきたものを守ろうとしているのだ。彼女のプロ意識は、あの緋田美琴すらも上回るかもしれない。アイドルを支える立場の俺は、そんな風に頭の中で熱弁していた。

 

 だけど――哀しいことに、俺も男だ。

 愛依の魅惑のカラダを思い出さずにはいられない。

 

 公式に発表しているスリーサイズは、上から順に90-58-88と、グラビアアイドル顔負けのスタイルを誇る。美白志向に待ったを突きつけるような小麦色の肌も、健康的な色気を醸し出すのに一役買っており、そういった意味でのアピールにも愛依は積極的だ。

 

 愛依は283プロで最も衣装の露出度が高い。デザイナーの意向もあるが、「せっかく肌を見せるんだから」と本人もノリノリだ。所恵美、大槻唯、城ヶ崎美嘉といった埼玉ギャルズの(愛依の本当の姿を知った上で)親しい仲間が露出に積極的なのも、愛依の大胆さに拍車をかけていた。

 

スタイル抜群で、きわどい格好をしていても、ミステリアスな落ち着きを崩さない、和泉愛依というアイドル。色好みの男性のみならず、その堂々たる姿に、女性からの人気も高かった。

 

 ――ヤバいな。

 

 脳内で、情事の記憶が再生されていく。

 

 ――勃ちそう……。

 

 

 * * * * *

 

 

「終わった~! プロデューサーはどう?」

 

 人目があった方がサボらず取り組めるからと、学校の課題を事務所に持ってくるアイドルは少なくない。その一人でありながら普段は撤退する結末を迎えることの多い愛依だが、今日はよく集中できていたようだ。課題を終わらせきって満面の笑みを浮かべる彼女に引き換え、不埒なことを考えていた俺の何と不甲斐ないことか。

 

「悪い、あと少しだけかかる。急いで終わらせるから」

「オッケー。じゃ、うちは準備してくんね」

 

 準備――何のだろう、とまた思考が脇道へ逸れそうになってしまい、襟を正す。ひとまず、半端な状態で止まったままの作業だけでも済ませておかなければ。

 

 そうして、時計をチラチラ見ながら十五分ほど経ち、アプリを閉じ終える頃になって、スリッパの足音が近づいてきた。いつもの愛依よりも足音の間隔が長く、ゆっくりだ。キャンディのフレーバーが混ざった香水が流れてきた所で振り向こうと思った瞬間、

 

 

「そろそろいい?」

 

 

 と楽屋のトーンで耳元に囁かれて、思わず肩が跳ねた。いざ椅子を回して視線を合わせてみると、凪の海原のように静かな黒の瞳と、微かに上がった口元があった。先程と変わらず私服姿ではあったが、纏った雰囲気はまるで別人。スターターとして使っているミネラルウォーターのペットボトルが、左手に握られていた。

 

 パソコンの電源を切り、止まるファンが休日出勤の終了を告げる。椅子に座る俺を、愛依が見下ろす。

 

「玄関は、閉めておいたよ」

「ああ、ありがとう――愛依?」

「誰も来ないよね?」

「確かにそうだ、がっ……!?」

 

 額がくっつきあう。「じゃあ、ここでいいよね」と、愛依は不敵に紡いだ。

 

「…………!!」

 

 愛依の指先に顎の先をなぞられた瞬間、急激に心臓が暴れだした。上腕や背中に、ぶわっと鳥肌が立ちあがる。

 

「こ、ここではやめておこう。開けているし、この広さは愛依だって気になるだろう」

「……ん、そう? ふふ」

 

 それ以上は迫ってくることもなく愛依は引き下がってくれたが、その双眸は猛禽類のようにギラついていた。

 

 

 * * * * *

 

 

 仮眠室には先に通された。後ろ手に愛依が扉を閉めた瞬間、漂う空気の密度が突如濃くなった気がする。「これは逃げられないぞ」と俺は直感した。

 

 派手な外見に関して、愛依は意外とセックスにはウブだった。何度か肌を重ね合った中でも、愛依は自分から誘ってくることはあっても、積極的にリードを取ってくることはまずなかった。しかし、俺をベッドに座るよう促し、隣に腰を下ろした彼女の雰囲気たるや――ここまで変わるものだろうか。

 

「……愛依?」

「どうしたの?」

 

 愛依が腰に手を回してきた。

 下から上へ、腰骨をなぞってくる。

 

「緊張してる?」

 

 呟く声が後頭部へ突き抜けていく。

 

「顔が赤いよ」

 

 腰に回っていた手が、太腿の上に登ってきた。もしかしてもう"触ってくる"のだろうかと背筋を伸ばしたのも、愛依に見られている。笑い混じりにお喋りする声が悩ましく溶け始め、前戯が進むにつれて静かになっていくのがいつもの流れだったが、今日は始めから静かだ。俺が息を吸う瞬間を狙い撃つタイミングで、的確にアプローチをかけてくる。

 

 

"ちゅ……ちゅる……"

 

 

 愛依は、さっそく舌を入れてきた。体重がかかり、口づけが深くなっていく。戸惑う俺を揶揄うような舌遣いだが、絡み合う踊り場はずっと俺の口の中だ。

 

「……今日は大人しいね」

 

 囁きと呟きの中間。愛依の口から発せられたしっとり静かな声色は、背筋をゾクゾクさせた。明るい彼女がそうするギャップは効果抜群で、その影響は早くも脚の間に表れていた。

 

「あたし(・・・)とじゃ、あんまり盛り上がらない?」

「い、いや……」

「そうだよね、だって」

 

 愛依が身を屈め、デニムジャケットの下に着たTシャツから深いIの字の谷間が姿を覗かせた。乳肉の潰れ合う音さえも聞こえてきそうなそこに目を吸い寄せられた途端、張りつめたテントの先端に人差し指が添えられていた。

 

「大きくしてる」

 

 愛依がぺろりと舌なめずりした。俺が興奮している証拠を掴み、ニヒルな笑みを浮かべる。

 

「アイドルのあたし相手でもこうなっちゃうんだ。……悪いヒト」

 

 不自然な丘の頂上がくるくるとなぞられる。

 

「いつもなら、先に脱がしてくるよね」

「や、その……っ! 愛依サマとは、初めてだから……」

「――ふぅん」

 

 

"かり、かり、かり"

 

 

 布越しのペニスを指先が執拗に引っ掻いてくる。愛依の前戯は拙いはずだったのに、と思っていたが、彼女の指先は快感のツボのさらにその芯を正確に射抜いてくる。スラックスの合わせ目はもう大きく歪んでおり、「ここに亀頭が隠れているぞ」と猛った肉欲がアピールを繰り返している。

 

「ねぇ、どんどん大きくなってる」

 

 少しトーンの低い声が耳を犯してくる。

 

「あ……ッ……」

 

 裏筋を何往復もなぞられて、腰が浮き上がった。くすくすと掠れた笑い声が、羞恥を煽ってくる。愛依の手に向かって腰が動く。だがその浅ましさは見透かされており、ただ下半身を捧げる情けない姿を晒すだけだ。

 

 

"ぎゅっ……♡"

 

 

「うっ、ぐ……」

 

 繰り出したパンチの、伸びきった腕を攻めるがごとく――腰を突き出した瞬間、ペニスを握り締められた。たったそれだけなのに、快感神経に直接電流を流されたような刺激が走った。

 

「ふふ、すごい。手の中で跳ねたよ」

「あっ……! ぁ、うぁ……」

 

 レモンを絞るように圧力をかけられ、ペニスの根元で焦燥感が泡立ち始める。手で少し弄ばれただけだというのに。息を乱す俺の唇を奪い、愛依が舌を巻きつけてきた。

 

 

"ちゅく……にゅちっ♡ ちゅっ、ぷ……♡"

 

 

 ねっとりしたディープキスの快感が、脳の中心にじんと響く。アルコールを思わせる酩酊感に頭がぼんやりし始めた頃、ベルトをするりと抜かれた。だが、ヒヤリとした危機感はすぐ期待に変わっていく。

 

「…………」

 

 ボクサーブリーフの合わせ目から引きずり出されたナマの陰茎を、愛依が見下ろした。下卑た欲望を軽蔑する視線か、それとも獲物を品定めする捕食者の目つきか。ともかくその目は冷たい。

 

 血管を太く浮き上がらせた怒張は、鼓動する心臓のリズムに合わせてピクピク頭を振っている。

 

 

"きゅっ……♡"

 

 

「うッ……」

 

 環になった指が根元から先端まで、圧力をかけながらゆっくり登ってくる。尿道の中から扱き出されて鈴口に膨れ上がった先走りがぷくっと膨れ、表面張力に負けて弾け、幹を濡らしていく。

 

「ねぇ、いつもより熱いよ」

 

 俺の耳たぶを舌先で転がしながら、愛依が囁く。息の温もりと、耳の入口をにちにち舐める音と、妙に優しくペニス扱きあげる手。温かい吐息が耳に吹き込まれ、脳が溶かされそうだ。

 

 

"ぬち……ぬちゅっ……♡ にゅちっ♡ ぬる~っ……♡"

 

 

「……ッッ」

「ガマンしないの。気持ちよくなってるんでしょ?」

 

"ちゅこっちゅこっちゅこっちゅこっちゅこっちゅこっ♡"

 

 平坦なトーンと共に、手コキが速度を上げる。

 

「あ、あっ、あっ、だめっ……♡」

「ふふ……可愛い。女の子みたい」

 

 

"にぢにぢにぢにぢにぢにぢにぢっ♡♡"

 

 

「あぁぁ、ダメダメダメッ、そんなに速くしたらっ♡」

「そんなに速くしたら?」

「でっ、出ちゃうからっ」

「出せばいいのに。漏らしちゃいなよ」

「だ、だッ、だめ……♡」

「こんなにヌルヌルにしてるのに、ダメなの? どうして?」

 

 

"ぐちっぐちっぐちっぐちっぐちっぐちっ♡"

 

 

 傘の根元を、先走りでヌラヌラになった手が滑っていく。

 

「あううっっ♡ うぅ~~~♡」

 

 半分裏返った情けない声をあげながら、ひたすら歯を食いしばって耐える。だが――

 

「やせ我慢は体によくないよ」

「ン、っむ……♡ おぉオ、っほ……♡」

 

 

"ちゅ……ぺちゃ♡ っぢゅ♡ ちゅる♡ ちゅぴ……♡"

 

 

 愛依は、ガードなんて固めさせまいと、重ねた唇を甘く優しく食んでくる。風通しの良くなったジェンガを根っこから揺らすようなディープキスに、睾丸がキュッと持ち上がり、幹の中腹まで絶頂感が上ってきて――そこで手が止まった。

 

 

 * * * * *

 

 

「フー……フー……」

 

 苛烈な手コキは止まったが、尿道のカウパーが、ぎゅっ……ぎゅっ……と搾り出される。

 

「どうして我慢しちゃったの?」

「どうして、って」

「『負けちゃう』って思った?」

 

 艶めかしい声が、心の隙間に忍び込んでくる。

 

 負け。

 

 その二文字が脳裏にこびりつく。こんな一方的に弄ばれるなんて恥ずかしい。愛撫に情けなく屈服してしまうのが悔しくて、意地を張っている。

 

 だが、自分でもよくわからなかった。愛撫を受けるのは、むしろ嬉しいはずなのに――いや、嬉しくないわけではない――まて、嬉しいのか……?

 

 思考が混濁する俺をよそに、デニムジャケットが愛依の肩を滑り落ちた。黒いTシャツは胸元で大きく膨らみ、引っ張られた裾からはヘソがちらりと見えていた。肌面積が一気に広がっていく。彼女のステージ衣装を思わせる、紫のラインが入った黒いブラが姿を現す。俺の目が釘付けになっているのを知り、愛依は挑発的に舌を覗かせた。

 

「そんなにジッと見て、気になる?」

「あっいや……」

 

 ペースをすっかり握られている。積極的で大胆な愛依は、自らのスタイルを見せつけるように、後頭部で腕組みした。彼女の狙い通り、俺の視線はまんまと腋に吸い寄せられた。下世話な欲を嘲笑するような冷えた眼差しが突き刺さる。愛依の肉感的なムチプルボディをつい見てしまうのは、男としてそう不自然なことではない。それは分かっているが、なぜか今日は、そうすることに妙なためらいを覚えた。しかし、目の前で展開されるストリップの引力は凄まじい。

 

「……見てるじゃん」

 

 勿体ぶるように指先がフロントホックを外し、拘束を解かれたHカップの乳肉が自重でとろんとまろび出る。褐色の健康的な肌の中にあってやや色素の薄い乳首は、ミルクをたっぷり注いだ甘口のカフェオレを想起させる色だ。股間が疼いた瞬間、射精を寸止めされていた怒張が頭を振った。すっかり凝視していた俺を見て、またクスクスと愛依が笑う。

 

 "この変態"――そんな罵りに尊厳が損なわれる恐怖は、なぜか背徳的な戦慄きになって腰を疼かせた。

 

「……もっと見たい?」

 

 ネイルを施した指が、白のスキニーパンツにかかっていた。

 

「え……うッ……」

「見たかったら、ちゃんと言葉で」

 

 突き刺さる視線にまたもやぞくりとする。

 

「み……見たい」

 

 唇が半ば勝手に答えていた。

 

「何が見たいの?」

「担当アイドルが脱ぐ所、見たいんだ。め、愛依の、ハダカ、を……」

 

 ――俺は、何を言っているんだ……。

 

「最低だね」

「すまん……」

「謝ってる割に、角度が上がってるよ」

 

 愛依の指摘通り、ペニスがぐぐぐ……と持ち上がっている。恐れやストレスは興奮とは真逆の感情であるはずなのに、見下され、罵られ、むしろ昂りを覚えてすらいる。

 

「ひどいこと言われて、興奮してるの?」

「……そんなことは――」

「おちんちんは『うん』って言ってる」

 

 

"ぐぐぐっ……♡"

"びき……びき、っ……♡"

 

 

「マゾなの?」

「ま、まッ、マゾじゃ、ない……!」

「でも、ここ、ほら」

「あ……♡」

 

 熱い陰茎を握られた。

 

「これで興奮するのは、マゾだよ」

「ち、が……」

 

 

"ぐぢゅっ……♡"

 

 

 否定する俺の言葉が、先走りの擦れる水音で打ち消される。

 

 マゾ。

 被虐で喜ぶ性的嗜好。

 

 

"ちゅこっ、ちゅこっ、ちゅこっ♡"

 

 

「プロデューサーって、マゾなんだね」

「ちっ、ちが、俺はマゾじゃ――あっ、あぁ♡」

 

 平坦な声色が睾丸をグツグツ煮立たせる。リズミカルに竿を扱かれて、一度は治まりかけていた絶頂感が戻ってきた。さらなる愛撫をねだるように、股が開いていく。フィニッシュを求めて腰を突き出すも、そこで刺激を止められてしまう。

 

「ふゥ……うぅぅっ……!」

「みっともないね。罵られて、おちんちんそんなに硬くして」

 

 返答を言い淀む俺をよそに、愛依はスキニーパンツも脱ぎ去った。むちっと肉付き良い太腿が、少しずつ露になっていく。そうして曲線の美しい脚を晒したと思ったらショーツもそのまま脱ぎ去り、あっという間に愛依は一糸纏わぬ姿になってしまった。身に着けているものといえばピアスやネックレスだけ。褐色の素肌を彩るゴールドは、どんな衣服よりも裸体の美しさを際立たせていた。

 

「どこ見てるの、変態」

「ひ……」

 

"びくっ♡ びくっ♡"

 

 内腿から陰毛にかけての濡れ具合を気にした俺を、愛依が見咎めた。またもや委縮する内心とは裏腹に、ガチガチの硬度を保つペニス。

 

 ――俺は、マゾなのか……?

 

 雨雲のように疑念が生じる。それに気を取られたら、ずるんとスラックスが引き下ろされて、下半身が丸裸にされた。

 

「四つん這いになって、お尻をこっちに」

 

 言われるがままに、ベッドの外へ尻を向けた。土下座を背後から観察されるような、屈辱的な姿勢。それなのに、股を開くよう指示されても、何の口答えもせず俺は応じていた。股越しに見えた肉竿には、太くなった血管が蔓のようにビッチリと巻き付いている。二度も寸止めされて、一刻も早く精を放とうと、ギンギンに砲身を熱くしている。

 

 

"れりゅっ♡"

 

 

「……ッ!?!?」

 

 睾丸を生温かいモノがはい回り、声にならない悲鳴が上がった。

 

「あッ、め、愛依、何を――――」

 

 

"ぐにゅっ"

 

"にゅるるるんっ♡♡"

 

 

 下半身が突如として、温かいスライムに呑み込まれた。陰になっていてよく見えないが、このしっとりした柔らかな温もりには覚えがある。

 

「捕まえた」

 

 

"たぷんっ♡"

 

 

 そう呟く声と共に、ペニスを包む壁がぬるりと滑る。剥きたてのゆで卵みたいにプルプルした肌が、汗か唾液か、ぬめった潤いと帯びて、にゅるにゅると亀頭をもみくちゃにする。股越しに見ると、俺の肉竿は愛依の乳肉に捕食されていた。何度となく俺の精液を吸ってきた魅惑の乳塊に、睾丸の中が煮立っていく。

 

「お、わッ……!」

「逃がさないよ」

 

 反射的に腰を引いたが、持ち上がった所を再び肉布団に捕らえられる。そのまま、ヌルついたほかほかおっぱいでズリズリと上下に擦られる。

 

 

"ぬちゅっ♡ ぬちゅっ♡ ぬちゅっ♡"

"ずりゅ♡ ずりゅ♡ ずりゅ♡"

 

 

「オ……オぉっ♡ あっ……♡」

「すごい格好。四つん這いで、犬みたいで」

 

 乳圧が強くなり、締め上げられたペニスがビクッと震えるが、Hカップの分厚い乳脂肪の前には無駄な抵抗だった。止まって耐えようとすれば乳風船に挟まれ、情け容赦のないシゴきに遭う。拘束を振りほどこうとしても、自ら腰を揺すってしまえば、女体の神秘がもたらす甘美な快楽に中毒する。

 

 

"ぱくっ♡ はむ、はむ……♡"

"ちゅぱ♡ ちゅぶ♡ ぢゅうぅぅ♡"

 

 

「んッ♡ ぉア♡ おッ、く、うくぅ……っ♡」

 

 そして、隙さえあれば、リップの跡がつきそうな唇の強い吸い付きと優しい舌遣いのグルーミングが、デリケートな睾丸へ飴と鞭を交互に与えてくる。

 

「め、愛依、どこで、こんな……♡」

「マゾは好きでしょ、こういう風にイジめられるの」

「だからっ、俺はマゾじゃ――」

「でも、気持ちいいんだ? あったかいのが漏れてきてるよ」

 

 露出は高くてもセックスにはややウブだった愛依が、男を堕とす責めを覚えている。それとも、はじめから彼女にはそういう知識があって、本性を恥じらいのカーテンで隠していただけだったのか。あるいは、愛依がサディズムに目覚めてしまったのか――

 

「ぅお……♡ おっほ、う、あっ、あっ……♡」

 

 

"にゅぷっ♡ ずりゅっ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅん♡"

"もぐっ♡ ころころ……♡ ぢゅぱ、ぢゅぱっ♡"

 

 

 床に膝立ちになった担当アイドルへ局部だけをみっともなく突き出し、一方的に二点責めを受け続ける。その恥辱に体が熱くなり、悔しさと情けなさが込み上げる。年長者としての、あるいは恋人をリードする男としてのプライドが、著しく傷つけられている。それなのに、性器へ断続的に走り続ける快感に、逆らって形勢逆転しようとする意志の力が溶かされていく。

 

「恥ずかしい声いっぱい出ちゃうね。ふふ、情けない……」

 

 ――あぁ、こんなのヤバい……!

 

 ――ヤバいのに……っ!

 

 下から咀嚼され、乳搾りされる牛のごとく。受け身でしかいられない屈辱的な搾乳パイズリがもたらすスリル混じりの快楽は、己の何かをへし折り、不可逆的な変化をもたらしていく。このまま果ててしまったら、俺は大切な何かを精液と共に排泄してしまう――そんな恐怖を抱いたが、パイズリと玉舐めのコンビネーションに、成す術なく追い詰められていくばかりだった。

 

 

"たぷっ♡ たぱ♡ たぱっ♡ たぱん♡"

 

 

「根元が太くなってきた。……イキそう?」

「ううッ、うっ……♡」

 

 愛依の問いかけを認めても、強がって否認しても、この窮地は変わらない。我慢を瓦解させようと摩擦は激しさを増し、舌の愛撫と絶え間ないキスが精液袋をトロトロに溶かしていく。

 

「は~……は~……は~……っ……♡」

 

 射精直前まで張りつめて、意志の力が緩んでいく。より強い快感を求めて、ピストンがひとりでに始まってしまう。

 

 

"ぶちゅっ♡ にゅるん♡ たぷ♡ たぷん♡ たぽっ♡"

"ぱちゅ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅ♡"

 

 

「ん……? どうしたの? 腰を振ったら負けちゃうよ?」

「わ、わ、分かってる、けどっ」

「イキたい? 白いの出したいの?」

「うう……うっ、だ、出したい、っ」

「どこに出すの?」

 

 

"むぎゅっ♡ ぎゅうぅぅぅ……♡"

 

 

 質問を重ねながら、愛依は乳圧と摩擦をどんどん強めてくる。

 

 

"ぎちっ……ぎちゅ……♡"

 

 

「早く答えないと」

「はぁ……はぁ……」

「ねぇ、どうするの?」

「む、胸っ……愛依のおっぱいに出したいっ♡」

「ふぅん……」

 

 上擦った必死な声が出ていた。営業先で頭を下げる時よりもずっと卑屈だった。しかも、相手は年下の学生の、担当アイドル。鼻で笑う声が背後から聞こえた瞬間、自尊心が音を立てて崩れていく。取り返しのつかないことをしたのに、それが甘い電流になって背筋を駆け上がってきた。

 

 

"ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡"

"ばちゅ♡ ばちゅ♡ ばちゅ♡ ばちゅ♡"

 

 

 ピストンが加速して、浅ましいピストンがびたびた肌を叩く。垂れ流しになっていた先走りと愛依の汗でヌルヌルの乳穴で、破裂寸前の剛直が熱く膨らんでいく。腰の奥からせり上がる焦燥感が厚みを取りだしたその時――

 

「いいよ――負けちゃえ」

「ア、 ッ……♡」

 

 

"ぶびゅるるっ♡"

 

"どぷッ♡ びゅうぅぅぅぅぅぅっ♡"

 

 

 背後からボソッと聞こえた一言がトリガーになった。音が聞こえそうな勢いで、堰を切った絶頂汁がドボドボ放たれていく。戻り道を封じる途方もない法悦と共に、惨めに傷ついた尊厳が排泄されていく。

 

 

"びゅく♡ びゅくん、びゅくん♡"

 

 

「ゔぉ……♡ あ゛あぁ……ッ♡♡」

「あ~ぁ……負けちゃったね」

 

 

"ぶびゅうぅぅっっ♡"

 

 

「どうしたの? 勢いが強くなったよ? 負けるの嬉しいの?」

「あ゛っ、ちが♡ あっ♡ お゛ぁぁぁぁ……っ♡♡」

 

 情けない敗北射精は数時間の我慢を経た排尿のような勢いで続き、ペニスが拍動すると、脳の皺が溶けそうになってしまう。グツグツに煮立った子種を無駄撃ちしながらも、ヘコヘコと腰をふりたくる。たった一度の射精なのに全てを吐き出したかのような倦怠感が広がっていくが、絶頂を迎える寸前の興奮に頭の中はまだ茹っている。

 

「ふふ、まだ出るでしょ」

 

 

"ぶっちゅ♡ ぐちゅっ♡ にゅぷ♡ にゅるっ♡"

 

 

「め、愛依……出たばっかり、だからっ」

 

 

"ぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっ♡"

 

 

「お゛……おおぉ……♡」

 

 尻の後ろで、粘液を泡立てる音がする。吐精したペニスが白泥を帯びた乳肉にまだ蹂躙されている。敏感になった陰茎亀頭が乳圧の中で潰され、圧倒的な体積差を思い知らされている。

 

 

"ぬぽぉ……っ♡♡"

 

 

 尿道の中の残り汁を根こそぎ搾り取られた所でようやく、ペニスが解放された。俺の吐き出した精液が泡立ち、肉竿のあちこちと乳壁が糸を引いているのが見えた。

 

 これで少しはインターバルを――

 

 

"かぽっ♡"

 

 

「おゥっ……♡」

 

 柔らかくなりかけていた陰茎が、温かくぬめったものに包まれた。母牛の乳首に吸い付く仔牛よろしく、下から愛依がペニスを咥えこんでいる。

 

「ん、ふ……ぶ、ぢゅ……」

 

 

"ぢゅっ♡ ぢゅるるっ♡ ちゅ、ちゅうぅ……♡"

 

 

 愛依サマは萎えることすら許してくれないようだ。苦しくなるギリギリの力加減で粘膜の隅々まで舌で嬲られ、半ば無理矢理に生殖器が硬さを取り戻す。

 

「さ、じゃあ……横になろうか」

 

 そのまま口で絶頂させようという意図はなかったようだ。負け竿は再び立ち上がらされ、ベッドに上った愛依が俺を誘う。ころんとベッドの中央に転がされ、二人で寝るには狭いシングルベッドで、愛依がマウントポジションを取った。

 

 ヘッドボードの近くにあったペットボトルを手に取り、愛依が水を一口飲んだ。もしかして、人懐こくて朗らかな、男女の時間には不慣れな愛依に、ここで戻ってくれるのか――

 

 

 * * * * *

 

 

「『戻る』って、思った?」

「えっ」

 

 俺の淡い期待は見透かされていたようだ。

 

「あたしが怖い?」

「い、いや、そういうわけでは」

「なら、いいよね」

 

 仰向けの俺に、愛依が上ってくる。突如として、視界が真っ暗になった。愛依が俺の顔に跨ってきたのに気付いたのは、陰毛に鼻の穴をくすぐられて数秒後だった。

 

「舐めて」

 

 頭上から降ってくる冷たい声。呼吸したらむせてしまいそうな、濃厚極まりないメス臭が肺の奥まで入り込んできた。唇にぬらっとしたものが垂れ落ちてくる。

 

「ほら、早く」

「も、もが……っ」

 

 空気の通り道が塞がれる。圧迫感と窒息感の中、空気を吸うために、口を大きく開くしかなかった。それでも息苦しさは解消されず、甘酸っぱい愛液の匂いを必死に鼻で吸い込む。

 

「も゛……フーッ! んっ、ご、ぉ……!」

「あはっ、息荒くして、必死だね。それとも、顔に座られてコーフンしてるの?」

「ン゛……! ン゛~~~~っ!」

 

 

"ぺちゃ♡ ちゅぴ♡ ぷちゅっくちゅっ♡ ずびっっ♡"

 

 

「……っ。そう……。ちゃんと舐めないと、どいてあげないよ……?」

 

 とめどなく垂れてくる生温い体液を必死で啜る。そうしないと空気の通り道を確保できなかった。隙間を少しでも作ろうと舌で粘膜をほじっていると、愛依は時折、湿った息を漏らす。だけど、顔にかかる重みは首の力だけで跳ねのけられるものではなく、上からかかる圧力が強くなればいとも簡単に窒息しそうになってしまう。

 

「舐めるならおっぱいの方がよかった? 赤ちゃんみたいにさ……」

「ふが……ぉふ……んぐぉ……」

「そんなことないか。こっちの方が好きそうだもんね」

「ひ、ひがふ……!」

「ねぇ、今、おちんちんがどうなってると思う?」

 

 ――やめてくれ、言葉にしないでくれ……!

 

 言葉にできない訴えは、息苦しさの中に溶けていく。

 

 

"むぎゅっ♡"

 

 

「オ゛おぅ♡♡」

「こんな乱暴なことされてるのに、どうして硬いままなの?」

 

 

"にゅこっにゅこっにゅこっにゅこっ♡"

 

 

「はっ♡ あ˝おぉぉぉん♡♡」

 

 痴態を突きつける手コキに、腰が跳ねてしまう。便器のように跨られ、ほとんど塞がれた視界の中、ギラついた目で見下ろす愛依が僅かに見えるだけ。

 

「ホント、救いがたいね」

「う……うぅ……♡」

「はい、おしまい。まぁまぁ気持ちよかったし……ちょっとは、ご褒美かな」

 

 ――ご褒美……?

 

 顔面にかかっていた圧迫感が持ち上がり、開放された。大きく息を吸って数分ぶりの酸素を肺の隅々まで行き渡らせていると、今度は腰の辺りに重みがかかった。

 

 

 * * * * *

 

 

「おちんちん、ナカに入れさせてあげる」

「あ……っ……」

 

 屈みこんで長い脚を大きく左右に開き、愛依が蜜穴を見せびらかす。女の穴蔵に亀頭を埋め込み、俺をさらに屈服させようとしているのだ。思惑通りになってはいけないはずなのに、怒張したペニスは胴を膨らませ、犬の尻尾よろしく揺れている。

 

「じゃあ」

 

 ――あっ

 

 

"くちゅ"

 

 

 不敵に笑う愛依。穴の先端同士が触れ合った瞬間の熱に、アラートが脳内で響いた。

 

「待った愛依っ、ゴム、つけてな――」

 

 

"ぬる……ずるんっ♡♡"

 

 

「うぅ、っ~~~~♡♡」

「ん……、ふふ……」

 

 抗議の声は、ペニスごと丸呑みにされてしまった。隔てるものの何もないナマの粘膜接触は、神経を焙る熱い快楽をもたらす。

 

 愛液で濡れそぼった膣ヒダがうねり、カリ裏のくびれまで吸い付いてくる。深い所でオスとメスが交わりあった充足感が爪先まで広がり、脳内で鳴ったはずの警報が遠ざかっていく。

 

「プロデューサーってさ。危ないのとか、恥ずかしいのとか、そういうの好きなんだね」

 

 

"くちゅ……くちゅ……♡"

 

 

 ゆっくりと、愛依が腰を回しだした。

 

「そういう、わけじゃ、っ」

「口ではそう言っても、正直だよ、カラダは」

 

 

"みち……♡"

 

 

 屹立した男性器は根元まで咥えこまれ、熱く潤った肉壺に食まれている。愛依のお腹にうっすらと筋が浮かぶと、ギチギチと締め上げられて、尿道の先走りが搾られる。ザラついた襞が亀頭の縫い目を舐め上げていく。軽く往復されただけでもう下腹部が浮き上がってしまった。

 

 

"たん、たん、たん、たん♡"

 

 

「あっ、ぅぐ……あ……♡」

「……ふふ」

 

 愛依がリズミカルに腰を使い始めた。結合部で淫らな水音が弾ける。甘い声こそあげないが、クールな佇まいの愛依も感じているのか、頬を紅潮させて、しきりに髪をかき上げている。

 

「いい眺め」

 

 俺を見下ろす目つきは獲物を嬲る肉食動物のそれで、唇をぺろりと舐めるその口で取って食われてしまうのではないかと怯えると同時に――俺は腹の奥で不穏な疼きを覚えていた。

 

 

"ぐちゅ♡ ぐちゅ♡ ぐちゅ♡ ぐちゅ♡"

 

 

「マゾなんだね。おちんちん、ナカで喜んでるよ」

「ちが……っ」

 

 

"ぐぐ……ぐ……♡"

 

 

「ほら、太くなった」

「う……っ」

「――マゾなんじゃん」

「あ、ぁ……ッ」

 

 前のめりになった愛依が、ワイシャツのボタンに手をかけた。

 

 

"ぷち……ぷち……"

 

 

 目を背けたい。

 なかったことにしたい。

 

 認知したくなかったはずの俺が、ボタン一つ外れるたびに暴かれていく。肌着のシャツを捲り上げると、愛依の指は胸板の先端へにじり寄り、何の用もなさない男の乳首をくすぐってくる。

 

 

"かりっ"

 

 

「あっ――」

「可愛い声出すんだね。大人の男の人が、こんな……ふふっ」

 

 

"ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡"

 

 

 肌の弾ける音が、テンポとボリュームを上げていく。愛依は獲物を捕食するクモになって、杭打ちピストンで激しくペニスを責め立てる。

 

 

"ずぶっ♡ どちゅ♡ どちゅっ♡ ごちゅ♡ ぐちゅ♡"

 

 

 しっかり体重をかけて奥深くまで突き入れるせいで、断続的に大波のような快感に襲われて、まるで身動きが取れない。隙だらけの乳首はといえば、時折爪を引っかけながら、指先が甘くカリカリと弄んでくる。

 

 

"ちゅぶ♡ ちゅびっ♡ じゅる♡ じゅっ♡"

 

 

「や……めっ♡ あぁ……♡」

「キスだよ? 痛くないよね?」

 

 唾液で湿った舌先が、乳粒をねりねり転がしている。胸の先端でぱちんと弾ける電流は甘い痺れをもたらし、体に刻み込まれていく。愛依が腰を打ち付けるたびに、90センチの巨乳が忙しなく跳ねまわり、時にはアメリカンクラッカーよろしく双丘がぶつかり合う。美味しそうな果実が目の前にぶらさがり、その先端では乳輪ごとぷくっと膨れた乳首がこれ見よがしに存在を主張する。

 

「う……あぅ、くぁ、あう、っ……♡」

 

 今されていることをそのままやり返したいのに、蜜壺にぐちゅぐちゅ捕食されるペニスの先端から、対抗心が吸い上げられていく。それどころか、絶えず尿道の中を先走りが濡らしているのも手伝って、限界が刻一刻と迫ってきていた。

 

「乳首も硬いね。こっちでも感じてるんだ」

「あぁ……愛依……」

「切ない顔して、どうしたの? 悔しい?」

「あぐ、っ♡」

 

 ちゅっ、と左の乳首が吸われて、腰が浮き上がる。

 

 

"ぶちゅっ♡ ぐぢゅ、ぐぢゅっ、ぐぢゅっ♡"

 

 

「さっきから、ずっとビクビクしてる。出ちゃいそう?」

「う……っく……」

「このままイッちゃったら悔しい(・・・)ね。また負けちゃう(・・・・・)ね、ふふっ」

 

 うめき声をあげる俺に、愛依は身を乗り出してきた。俺のよりも大粒な乳首がコリッと当たり、一瞬だけ愛依は息を詰まらせたが、それ以上には乱れなかった。

 

「……いい顔。情けなくて、辛そうで――美味しそう」

 

 唇が重なってきた。

 

「んむ、っふ……れちゅ……ぢゅるる、ぢゅぱっ……」

 

 男のプライドが唾液に溶かされ、絡みつく舌に巻き取られ、奪われていく。体の一部をちぎりとられるような苦しみが走ったが、愛依のディープキスは貪欲ながらも優しさを残しており、あっさり懐柔された俺はすがりつくようにヌラつく舌へ甘えてしまう。それすらも愛依にはお見通しだったのだろう。

 

 小さな乳首は大粒のそれに押し潰され、カクカク揺れる腰は、体重を乗せた杭打ちピストンに押さえ込まれてしまう。複雑にうねる膣ヒダが締め付けを強めて射精を促し、そして――腰に滞留していた疼きが弾けた。

 

「ん゛っ♡ むぉ……♡」

「――あ、っ♡」

 

 

"どくん……っ♡♡"

 

"びゅぐっ♡ びゅるるっ、ごぽ……♡"

 

 

 心臓が波打ち、微かな理性の抵抗は呆気なく崩れて、濃縮されたオス汁が放たれる。愛依は体重をかけて尻を深く沈め、奥へ引き込む膣奥の窪みが、子宮口へのディープキスを誘ってくる。温もりに包まれながら迎えるエクスタシーに、ドーパミンがドバドバ溢れ出し、全身へ駆け巡る。

 

「……また、負けちゃったね」

「あううっ♡ うぅ、っ♡ ぁああ……!]

 

 耳元で囁かれ、敗北射精が加速する。

 

「負けちゃうの気持ちいい(・・・・・・・・・・・)ね」

「はぁぁっ♡ おぉ……♡」

 

 

"ずぷ……ずぷ……ずぷ……♡"

 

 

 思い切り蜜肉を締めあげながら、愛依はゆっくり腰を上下させる。それは一仕事終えたオスへの労いではなく、オーガズムの快感をじわじわ長引かせ、てっぺんから下りてこられないようにする拷問のようなものであった。

 

「大変だね。ナカにいっぱい出しちゃって。どうするの?」

「あ、愛依……ご、ごめん――」

「ごめんって割には、おちんちん硬いままだね」

 

 

 ――悪いヒト。

 

 

 その一言を耳の穴から脳の芯へ吹き込んでくる。PC筋が遠隔操作されて、精液の残りを、ごぽっと膣奥へ送り込んでいった。

 

 

 * * * * *

 

 

 長い拍動がようやく治まったが、ペニスの痙攣はまだ続いていた。

 

「マゾ射精、終わった?」

 

 唇を啄む愛依に、辛うじてうなずく。マゾではないと言い返すのを、俺はもう忘れていた。

 

「は、ん……」

 

 

"ぐち……ぐちゅっ……ぐちゅっ……♡"

 

 

 蜜壺を攪拌しながら、愛依も湿った吐息を漏らしていた。

 

「まだご褒美欲しい? ――欲しいよね。こんなにしてるんだから」

 

 萎えることを忘れてしまったかのように、陰茎は膣奥で硬くなったままだ。

 

「負けっぱなしは悔しいよね」

 

 

"ぬぽ……♡ ずるん……♡"

 

 

 尿道の中身を念入りに搾り取ると、愛依は腰を持ち上げて、ナマの結合を解いた。横向きになって俺を促し、上下の逆転へと誘う。クリーム状になった体液のカクテルが、膣口からとろ~っと垂れている。そこを指で広げて、挑発的な目つきで愛依が誘ってきた。

 

「どう? 男の強い所、見せてよ」

 

 にち……と開かれた蜜穴は、ひくひく震えてナカのドロドロぶりを見せつけてくる。脚を広げる愛依は首筋までうっすらと紅潮し、瞳が潤んでいる。怒張した亀頭をあてがうと、眉根がきゅっと下がった。愛依も期待しているのだ。そう信じ切った俺は、それがフリである可能性も考慮せず、一気に腰を突き入れた。

 

 

"ずぷんっ♡♡"

 

 

「っ、ん……」

 

 狭い蜜道を奥へ奥へと引き込まれ、下腹部がくっつきあうまではあっという間だった。

 

「さっきより太いんじゃない? やる気出てきた?」

 

 俺の体の陰になっても愛依の余裕は変わらず、微笑すら浮かべていた。顎の先を持ち上げたのはキスを誘う合図だと思って、唇を奪う――奪ったつもりだったが、舌遣いの主導権がこちらにあるとは言い難かった。

 

「どうしたの? いい所(・・・)を見せるチャンスだよ」

「言われなくたって……!」

 

 挑戦的な愛依の顔から優越感を剥ぎ取りたくなって、腰を引き、すぐに沈め込む。天井へ引っかけながら奥まで深く出し入れされるのが愛依のお気に入りだ。だからきっと、こうしてやれば、たちまち甘い声で喘ぎだすに違いない。

 

 今度がこっちが鳴かせる番だ。

 見ていろよ。

 仮面の下の本性を暴いてやる。

 

 

"ぬぷっ♡ ずぷ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅ♡"

 

 

 ギシギシとベッドのスプリングが軋む。俺の吐き捨てた精液がずるずる滑って、激しくピストンを仕掛けても摩擦の全ては甘い快感に変換されていく。愛依は眉を八の字にして、時折声を漏らしはするが、淫靡に乱れる様子はない。それどころか「一生懸命だね」と俺の頬を撫で、首を伸ばしてキスしてくる。

 

「……可愛い」

「ど……どうして……?」

「あたしの体に訊いたら、分かるかもね」

「こ、この……っ」

 

 体は下でも心は上。そう念押しする目つきに、プライドを逆撫でされた。

 

 

"どちゅっ♡ ぐりゅっ、ごり……♡"

 

 

 亀頭が露出するまで腰を引き、Gスポットを磨り潰しながら最奥まで怒張を突き入れる。ギュウゥ……と蜜肉が締まり、さらなる刺激を求めて濡れそぼったヒダが絡みついてくる。

 

 

"ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡"

 

 

「ん……そうだよ、その調子……」

 

 肌のぶつかる音を立てながらのピストンに、愛依の呼吸が少しずつ浅くなっていく。喉から漏れてくる吐息には細い声が混じり出した。

 

 どうだ。これでそろそろ音を上げるだろう、と思いきや、

 

「もっと頑張らないと……また負けちゃう(・・・・・)よ?」

 

 と愛依は挑発を止めようとしない。

 

「ねぇ、おっぱいはいいの?」

 

 なんて、ピストンに合わせて派手に揺れる巨乳までアピールされた。まんまと乗せられて、乳肉へ指を鎮める。至宝の柔らかさに触れ、先端で尖る指先大に膨らんだ乳首を摘まむ。それでも愛依の反応は期待したほど大きなものでもなく、むしろ、俺の胸元に指を這わせ、甘い刺激を加えて反撃してきた。

 

 

"どちゅっ♡ どちゅっ♡ どちゅっ♡ どちゅっ♡ どちゅっ♡"

"ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ♡"

 

 

 俺の腰遣いが大きくなれば、ペニスに跳ね返ってくる快感も大きなものになる。何度も鳴かせてきたはずの女をよがらせることができない焦りの一方で、導火線はどんどん短くなっていく。トロトロの膣肉で扱かれるペニスは三度目の射精に備えて尿道を膨らませ、メス肉の最奥に孕ませ汁を注ぎ込もうと、睾丸を熱く煮立たせていく。

 

「愛依……っ」

「……ふふ、イキそう? またあたしに負けちゃうの?」

「ううっ、く……♡」

「カッコよくて素敵なプロデューサーが、負けるの大好きなマゾ(・・)だったなんて……」

 

 情けないね。

 カッコ悪いね。

 

 上を取っているのに優位性を覆せない俺を、愛依サマの端的な一言が抉っていく。「ほら、頑張れ」、「もう少しだよ」と、濡れた吐息の合間に、愛依が含み笑いする。

 

 腰の後ろに両脚が回ってきた。本体の操作権を奪われたかのように、ピストンが止まらない。もう耐えられる限界点は振り切っており、数秒後に訪れる爆発の時が、すぐそこまで迫っていた。

 

「……残念だったね」

 

 

 

 ――イけ。

 

 

 

"どくん♡"

 

 

「っ!! ああ、っ♡ う、お、おぉ、お……♡」

 

 

"ぴゅぐ……っ♡"

 

 

 結局俺は、三度目の正直を果たすことができなかった。諦めにも似た心境で放精する感覚が、脳の底に焼き付けられていく。

 

 

"びゅっ♡ びゅん♡ ぶりゅっ♡ どぷ、どぷ……♡"

 

 

 敗北射精の味を刻みつけられ、今までのオーガズムが過去になっていく。手に余る豊乳を握りながら、俺は大波に意識をさらわれていた。

 

 今度こそ、もう何も出ない。大人の尊厳も、リードすべき男の持つ誇りも、睾丸の中身ごと愛依の胎に呑まれてしまった。

 

 魂まで取られたような敗北感に脱力し、ぐったりと愛依に折り重なる。惨めな負けマゾとなり果てた俺は――背徳的で、奇妙な心地よさを感じていた。それを肯定しようとでもいうのか、愛依の腕は俺を慈しむように抱き締める。

 

「あぁ、う……め、愛依……♡」

「頑張ったね。すごく……よかったよ」

「うぅ……っ♡」

 

 子どもをあやす手つきで後頭部を撫でられる。

 

「――こんなプロデューサーも好き」

 

 上から組み敷いているのは俺なのに、主従はもう、逆転してしまっていた。

 

 

 * * * * *

 

 

 のぼせ上った頭が、茹ったままになっている。愛依はまるで芹沢あさひにそうするみたいに、俺の後頭部をワシワシ撫でてくる。凛とした双眸は人懐っこい輝きを取り戻しており、いつもピロートークの時にそうしてくるみたいに、脚を擦りつけてきた。

 

 愛依はもう仮面を外していた。まだ知らぬ本性を暴かれて茫然たる心境を脱することができない俺とは違って、愛依はチャレンジ成功の余韻に浸っている。

 

「プロデューサー、だいじょぶ?」

「あ、あ……あぁ、何とか」

「あ~……ゴメン! 調子に乗って、酷いこと言っちゃったかも!」

「え? あ、いや……」

「う~、怒ってる? 許して~!」

 

 まだ汗の気配が残る額同士がくっつきあう。実際問題、愛依の語彙力の問題なのかもしれないが、なじるにしてはそれほど尖ったワードチョイスではなかったのだが、金属疲労で折れた切断面に残る甘い虚しさは、言葉が何であったかよりも、何度も味わった敗北射精の中毒的な快楽で繰り返し自尊心を焼かれたことが原因だったかもしれない。しかしそれを言葉にしてしまうと、いよいよ後戻りできなくなる気がした。

 

「め、愛依はどうだった? ちゃんと最後まで『あの子』でいられたか?」

 

 腕にしがみつく力がぎゅっと強くなった。

 

「うん、これならステージでもバッチリいける。ありがとね、プロデューサー」

「あ、ちょっ、愛依、くすぐったい」

 

 頬に、鼻先に、唇に、ぷるっと潤いある柔らかさがじゃれついてくる。

 

「は~……それにしても、すっっっっごいコーフンした……♡」

 

 目をキラキラさせる笑顔に、ぞくりとした。

 

「えっと、愛依、それは」

「何て言うの? こう、うちが上になって、プロデューサーが何かツラそうにしてるの見ると、ゾクゾクしちゃってさぁ。もしかしてアレ? うちってSだったのかな? それとも――」

「…………っ」

 

 

「プロデューサーって、ホントにマゾ?」

 

 

「うッ」

 

 言葉に詰まった。理性はNOと即答しているのに、それをブロックするものがある。心の奥深くに埋もれていたものを覆い隠そうとしても、それは既に愛依が手の中に握っている。

 

 

「ね。マゾのプロデューサーさ……」

 

「すごい可愛かった♡」

 

 

 足首が絡み合ったそのとき、重い枷を嵌められたような気がした。

 

 

 * * * * *

 

 

 その日以後、愛依のペルソナはより強固で安定したものになった。素がそのまま表出するような失態は決して起こらず、それでいて少しずつ「クールでミステリアスな愛依サマ」にも表情の変化が起こり始めた。

 

 ソロの取材を終え、出版社の借りていたスタジオを出て、あとは車で送っていくのみ。事務所に立ち寄って荷物を回収してから愛依を送るか、それとも愛依を先に送ってから事務所に戻るか。後部座席に乗り込もうとする愛依が、ドアに指をかけて数秒静止した。

 

「どうした、愛依?」

「ん~、プロデューサー、この後ヒマ?」

「まぁ……今日急ぎでやらなきゃいけないようなことは、無いかな。愛依を送ったら早めに上がろうと思ってたけど」

「あ~、ならさ……どっか寄ってかない? や、事務所でもい~んだけどさ。あっ、でも事務所だと人がいるかぁ……」

 

 毛先を金に染めた髪を、紫のネイルを塗った指がくるくる弄ぶ。キャミソールの襟元に毛束の一つが吸い込まれていく。

 

 俺の視線を目敏く拾った愛依は、からかいと羞恥の混じった笑みを浮かべた。ピアスの揺れる耳がほんのり赤らんでいる。ハッキリ口に出すのは抵抗があると見えるが、愛依が二人の時間を求めているのは匂わされるまでもなく、よく分かった。

 

「今から帰る頃には事務所は閉まってる可能性が高いだろうな。平日に夜遅くまで残る子ってあんまりいないし」

「じゃあ……事務所?」

「ホテルの方がいいか?」

「っあ~……できれば♡」

 

 愛依は一瞬目を逸らしたが、俺がオーケーの返事を出すと、白い歯を見せて笑った。事務所に寄ってから「ご休憩」へ……と話が決まると、ペットボトルの水が視界の端に入る。一口水を飲んでから、愛依が手の触れる距離に近づいてくる。

 

「ね、どっちがいい?」

 

 

 

「いつものうちと――」

 

「――アイドルのあたし」

 

 

 

 ほんの一瞬で声の調子が変わり、照れくさそうにはにかんでいた愛依の表情がキリッと引き締まる。顎を指先でなぞられ、焙るような熱が脳裏に蘇って、車のキーを持つ手が震えた。

 

「……到着までに、決めておいてね」

 

 後部座席のドアが、静かに閉じられていった。

 

 終わり




どうでしたか?マゾの心は満たされたでしょうか?

よかったら評価、コメントなどお願いします。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。