コハクをはじめとするクオンツ族の末路。
敗北した八人のクオンツ族は、地面に横一列に打ち込まれた杭に後ろ手に縛られ、拘束されていた。無力で無防備な彼らに、帝国軍の兵士たちが暴行を加えている。拷問と、勝者の優越と戦闘の余韻から来る昂揚の発散を兼ねての行為だ。
「オラァ! 吐けや猫畜生!」
「ぐふっ!?」
「お前らはどうやったらいい感じの石になるんだよ!? アァ!?」
「いだっ、いだいっ……やめてっ、許してよぉ……」
「ほらっ、ほらぁ! 謝れ! 詫びろ! 無様に命乞いをしろ! 鳥キチ女がっ!」
「きゃっ……げふっ!? ごほぉ……! ぎひっ、くひぃ……!」
醜悪な喜悦を滲ませ、拳や蹴りを振るう兵士たちも、それを悠然と眺める指揮官のハイバニラも。必要な情報――クオンツ族の鉱石化の条件――を真面目に聞き出す気は毛頭なかった。単なる憂さ晴らし、ストレスフルな軍人生活の癒し、娯楽。それだけである。
拷問を趣味とするハイバニラは、基地に連れ帰った後、さあどうやっていじめてやろうかと妄想を逞しくし、悦に入っている。また同時に、この場でこその愉悦もまた、十全に味わおうとしていた。
「貴様らぁ……! やめろっ、やめるんじゃぁ……!」
夜の森に響く悲痛な叫びは、クオンツ族の長・コハクのものである。彼女だけは杭に縛りつけられておらず、未だ自由の身であった。仲間たちを嬲る帝国兵を止めようと、ただ独り奮戦している。
「セイ! セイッ、セイッ、セイィ……! くっ……このっ、このぉぉ……!」
ドレッドノートとの戦いで傷ついた体に鞭打ち、残された力を振り絞って、兵士たちに全力の攻撃を加えている。だが、超越者たるコハクの拳を受け、蹴りを叩きこまれても、彼らは皆涼しい顔であった。何事もなかったかのように、せいぜい雨粒一滴垂れてきた程度の反応で、彼女など存在しないかのように一方的な暴力を楽しんでいる。
「やめろっ、やめるんじゃ、貴様らぁ……! やめろと言うておろうに……! オリャッ、セイッ、エェーイッ……!」
拳打に、蹴撃に。伴う気合は、次第に小さく、弱々しいものになっていく。
「……ぷっ。くくくくっ!」
目にも止まらぬコハクの連打を浴びながら、そよ風に吹かれているようだった兵士の一人が、ついに吹き出した。それをきっかけに、示し合わせて素知らぬ態度を決め込んでいた兵士たちの間に笑いが伝播し、嘲りの大合唱となっていく。
「ぎゃははははは!」
「超越者様がざまあねえなあ!」
「くぅ……このっ、このぉ……! トリャァー……!」
激情に駆られ、身近で最も癇に障る声をあげていた男に飛び蹴りを見舞う。
「――カキーン♪ はい、1ダメージぃ~♪」
コハクの全身全霊の蹴りを受け、彼女の足裏で顔の大半を覆われながら、男の叩いた軽口が、これである
そう。コハクは、攻撃力1の呪いの針を装備してしまっていた。
もちろん、自らの意思ではない。
ドレッドノートとの超越者同士の死闘の末に、コハクは気を失った。そして目を覚ました時には、運よく漁夫の利にありついたハイバニラによって、ドレッドノートとマヌルは殺され、コハクはマヌルから奪った針を装備させられていたのである。
泣き崩れ、マヌルの亡骸に縋るコハクの後頭部に、ハイバニラは軽く蹴りを入れ、振り返った彼女に一瞥をくれると、踵を返した。
数秒の戸惑いの後、ようやく同胞たちに思い至った(※注)コハクは、後ろ髪を引かれつつも、女軍人を追いかけた。追いかけた先に待っていたのが、この絶望的な現状である。
(※注:「クオンツは仲間重いの種族」というのは、あくまで彼らの自認である)
「クソッ、クソぅッ……! このっ、このこのっ、このおぉぉっ……!」
薄ら笑いを浮かべる男の胸倉を、コハクは左手で掴むと、ドレッドノートとの戦闘で鉱石化した右の拳を遮二無二振るった。
白虎流ゴシン術も何もない。喧嘩殺法、と呼ぶにも値しない。
自制を失ったヒステリーの発露でしかなかった。
「バキ! 1ダメ~ジ♪ ボカ! 1ダメージ♪ バキィ! クリティカル! ……はーいやっぱり1ダメ~ジ~♪」
必死のコハクに、男たちはますます面白がり、悪ふざけを続ける。
ギャハハハ。
周囲の兵士たちが笑い、笑いながら囚われのクオンツに暴力を振るう。同胞たちの苦鳴に、握った拳に込める力が増すが、与えるダメージは固定である。
1ダメージ。1ダメージ。1ダメージ――
「おのれっ、おのれぇ……! っ!? なっ、あぁ!?」
諦観に蝕まれ始めたコハクの心中を見透かしたように、兵士たちは追い打ちを加えていく。胸倉を掴まれていた兵士は、お返しとばかりに、コハクの『胸』を鷲掴みにした。
「おほっ♪ 猫畜生の癖に、なかなか良いおっぱいしてんじゃ~ん? デッケ~。超越者の割に、チチのサイズは超越ってほどじゃあねーけど、まあ普通にデケェわ♪」
「なっ、き、貴様ぁ!? この痴れ者がっ……!」
「はーい。痴れ者でーす。なんですかぁ? ボス猫畜生さ~ん?」
「ふ、ふざけるなっ……! 戦いの最中に、こんなっ……放せっ……あぁ!?」
ぎゅむぎゅむと。男は服の上からとはいえ、コハクの胸を鷲掴みにするだけでは飽き足らず、揉みしだいてきた。
「ぷっ、くくく! 戦い! まだ戦いのつもりだったのかよー!?」
「さっすが猫畜生だわ。マジ頭ワリ~。やっぱ知能が人類の水準に達してねーよコイツら!」
馬鹿にしきった、しかしその通りな言葉を投げつけながら、二人の兵士が近づいてきた。コハクを左右から挟み込むと、その尻を片房ずつ勝手に分け合い、無遠慮に触ってきた。
「なぁ!? き、貴様らぁ!?」
民族衣装の袴越しとはいえ、兵士たちは力任せにコハクの尻房を揉みしだき、乱雑に撫で回してくる。布地の上からでも十分な刺激であり、妖しい疼きが生じ始める。
「や、やめんかっ……放さんかぁ……! このっ……ひんっ!?」
両手を振り回し、まとわりつく三人の男を剥がそうとするも、びくともしない。
彼らはますます調子に乗って、コハクの正面の男はコハクの乳首の位置にあたりを付け、そこに人差し指を突き刺したり、親指と人差し指で抓んで、捩じったり引っ張ったりする。左右の男は、尻への狼藉はそのままに、空いているもう一方の手を股間へと這わせてきた。女としての本能が危険を訴え、女族長の口から女そのものの悲鳴が漏れる。
咄嗟に両手を振り回すのをやめ、股間を抑えていた。だが、左右の男は意に介さず、臨機応変に矛先を変える。
「っ、ひゃんっ!? なっ、どっ、どこをぉ!?」
二人が指先を這わせ、なぞってきたのは、コハクの足の付け根、鼠径部であった。衣服に覆われておらず、素肌が剥き出しの上、その皮膚も薄い敏感なそこを、くすぐるように触られて、体の内側に忌まわしい炎が灯る。
「あっ、ふあぁ……!? や、やめぃ……放さんかっ……あぁっ!?」
体をまさぐる男たちの手首を掴み、引き剥がそうとするが、やはりびくともしない。
(なぜっ!? なぜなのじゃ!?)
こんなはずはない。超越者であるコハクと雑兵の間には、虎と子猫以上の開きがあるはずであった。なのに、まるで手籠めにされるか弱い女のように――いや。今のコハクこそ、正に「手籠めにされるか弱い女」である。
もちろん攻撃力1の呪いの針のためであった。
それでも、普通ならばこの場合は適用されないはずなのだが、コハクの怒りと憎しみがあまりに激しく、敵意に満ちているために、帝国兵へのあらゆる行動が「攻撃」判定となってしまっているのである。乳房を揉みしだき、尻を撫でまわし、鼠径部をなぞる手を払おうとすれば、それも攻撃扱いで固定ダメージ1分の力しか働かないのであった。
「やめいっ、やめぬかぁっ……!」
本人の意思とは裏腹に、ペチペチと男たちの手を撫でるようにはたくばかりのコハクは、傍目には「嫌よ嫌よも好きの内」のようにしか見えない。
「こらこら。お前らばっかり楽しんでるんじゃねーぞ!」
「俺たちにも遊ばせろよな!」
周囲の兵士からの抗議に、
「へへっ。わかったわかった。ほらよ!」
三人の男は微塵も惜しまず交代に応じた。すぐ近くの同僚へと、コハクを突き飛ばす。動揺のあまり、されるがままつんのめったコハクを受け止め、囲む男たち。
「うわっ!? くっ、貴様らぁ……! ああっ!? またっ……どこを、触っておるのだぁ!?」
「はーい。右乳でーす♪」「オレ左乳ー♪」
「右ケツもらいまーす」「じゃ、左ケツー!」
楽しそうにふざけて答える男たちに、コハクの必死さはなんとも惨めで、滑稽でさえあった。
「おい。お前らは揉むだけにしてくれよ。なかなかのデカパイなんだし、いいだろ? 俺はビーチクを集中攻撃してえんだ」
「なぁ!?」
一人増え、四人がかりで弄ばれるのかと思いきや、さらに一人が加わってくる。しかも、まるで我が物顔で、コハクの身体を勝手に分配してしまう。腹立たしく、屈辱的であったが、やはり抵抗は意味をなさない。されるがままになるばかりであった。
「クソッ……! なぜじゃっ、このぉ……あっ!? くっ、あっ、ふぁぁ……!?」
正面に立った五人目の男は、伸ばした両手で左右の乳首を抓んで、言葉通り、集中的な刺激を与えて来る。左右の乳房、左右の尻房をいずれも違う男に揉みくちゃにされながらだ。鎌首をもたげた女の本能が、コハクの体を、そして思考までをも蝕み始める。
そこに、なおも六人目の男が参戦してきた。
「お前らさー。可哀想だろ? いい加減、ここも弄ってやれよ♪」
軽い調子で言って、コハクと五人目の男の間にしゃがんだ男は、息を吹きかけてくる。言うまでもなく、コハクの股間にだ。
「ふあぁ!?」
初めて体験する奇妙な感覚に、素っ頓狂な声を上げてしまう。男はそのまま、伸ばした四指と掌を太腿に添えて、コハクの鼠径部に親指を行き来させながら、フーッ、フーッ、と股間に息を吹きつけてきた。
「しっかし、馬鹿みてぇな服だな! 足の付け根丸出しってなんだよ? 万年発情期淫乱猫畜生か」
「や、だめっ……そこはぁ……!」
「なんだぁ? 感じてるのか、猫畜生の親玉さんよぉ?」
「状況わかってんのかよ。エロい気分になってる場合じゃねーだろ」
「そうそう。お前ら全滅寸前、つーか全滅してんだぞ?」
「なのに発情するとか、マジ畜生だわ~」
「っ!? ち、ちが……あひぃ!?」
抗弁しようとしたところに、狙い澄まして一際強く息を吹きかけられ、確かな嬌声を零してしまう。ゲラゲラと笑う帝国兵たち。彼らの侮辱を、肯定する形にされてしまった。
「やめろ……やめろぉ……!」
悔しさと恥かしさで頭が真っ白になり、そうわめくことしかできない。すると、またもまとわりついていた男たちはあっさりと交代した。
「わかったよ。やめてやるよ」
「俺たちは、な! へへへへっ」
やはり同じように突き飛ばされる。待っているのは、また違う男たち。また同じようで、少しずつ過激になっていく玩弄であった。
「ああっ、あぁぁ!? や、やめぇ……!」
「も、もう、やめぬかぁ……あっ、あんっ、ふあぁん……!」
「あひっ、おひっ、ふおぉん……! ああ、いやっ、いやじゃぁ……」
何度も突き飛ばされ、責め手が入れ替わるたび。コハクの服は、次第にはだけていった。ついには全裸よりもよほど卑猥な半裸にされてしまう。
上着は合わせを解かれて、肩からは落ちて肘に引っ掛かっっている。袴は脱げ落ちて、やはり足首にかかっているいるだけであった。サラシはどこかへ行ってしまい、豊満な乳房は丸ごと放り出されている。頂点の粒果を暴かれた際には、意外なほど可憐な色合いを揶揄された。褌は何度も雑に引っ張られた結果、だるんだるんになって脱げ落ち、袴に絡まっている。
敵味方全員の前で開陳された性器と肛門も、帝国兵たちによって代わる代わるいじられた。手指で遊ばれるのは、まだましなぐらいだった。靴の裏や爪先で踏み躙られ、果ては「汚ねぇ猫畜生のマンコとかケツアナとか、触れるかよ!」とそこらの木の枝などで突かれ、突っ込まれた。
超越者ゆえのタフネスはそのままであることが、裏目に出てしまう。特に痛みを感じることもなく、刺激として受け取ってしまい、性感を励起されてしまった。
結果、コハクは完全に発情させられ、何度も何度も絶頂にまで達してしまった。しかも、「イったら仲間を思いっきり殴る」と宣言されたにも関わらず、だ。堪えきれず、コハクは帝国兵たちの粗雑な玩弄で繰り返し絶頂し、守るべき仲間たちを非道な暴力に晒してしまった。
「おっ、おほぉ……ああ、また、ダメじゃぁ……イク、イってしまうぅ……皆の者、すまぬ、すまぬぅ……!」
「っ、すまぬじゃねえよ、族長っ!? あんた、ふざけんなよ!? なにこんな状況で気持ち良くなってんだよ!? 頭おかしいんじゃねーのか!?」
ようやく気づき、けれどなお疑問形。やはり猫畜生ことクオンツ族の知能は、人類足るに至っていないと言えた。
「うっ、うう……す、すまぬっ、本当に、す……すまぬふぅ~んっ……あ、イクッ♪」
バキッ! ドゴッ! ボカッ!
「ぐえっ」「おごっ……」「ぐふ……!」
夜の山中に、八人分の打擲音が響き、八人分の血飛沫と、一条の雌潮が噴いた。
助走をつけての容赦ない蹴りを腹にぶちこまれた八人のクオンツ族は悶絶し、後ろ手に縛られた体をくの字に曲げて悶絶した。彼らを守り、導くべき族長は、敵である兵士たちに導かれ、悶悦に蕩けている。
「おっ、イク……♪ イったっ、イっちゃったのじゃぁ~んっ……♪」
痛みと体の損傷によって、八人のクオンツ族はみな失神し、殴っても蹴っても反応しなくなった頃、ようやく帝国兵たちにも飽きが来た。指揮官として、卒なくそれを見て取ったハイバニラは、引き上げの号令を出す。
八人は、地面から抜かれた杭に、後ろ手から「豚の丸焼き」スタイルに縛り直され、両端を担いで運ばれることとなった。
一方コハクは、自らの足で歩くことを強要される。屈辱と激悦のあまり自失した彼女は、諾々と従った。そこに、ハイバニラがいかにも同性らしい発想で、一つまみの調味料を加える。
全裸にした後、袴だけを穿き直させ、その裾を捲り上げたのである。捲り上げ、裾がコハクの頭上に達するまで捲り上げて、括ってしまう。裏返った袴に、コハクの上半身はすっぽり包まれてしまった。その巨大な巾着から、裸の下半身が生えているのだ。腰から上は丸ごと隠しながら、性器も肛門も丸出しにしたその下半身で、コハクは帝国まで自ら歩かされたのである。
時間とともに、いくらか正気を取り戻したコハクであるが、上半身を包む巾着になった袴を解くことさえ出来ないままであった。彼女の右手から離れなくなった、憎からず想っていた少年の形見。攻撃力1の呪いの針の針穴に、袴のほつれ糸を通されていたからである。これによって、袴もまた針に含まれるという判定になったことで呪いが適用され、外せない装備となったからだ。
ちなみに。
本当にまるで外せなくなったのは、ハイバニラとしても誤算であった。
仕方がないので、コハクは上半身は袴巾着のまま、突き出た下半身だけで肉便器として使用された。生命を維持するための栄養は、肛門から滋養浣腸によって摂らされた。
レベルが高いほどより良い鉱石となることは、オニキスが吐き、彼によってコハクはトドメを刺され、経験値となって彼を超越者へ、即ち次の処分対象として、その生を終えたのである。
コハク。
前半生を人類に仇名す凶悪な害獣として生きた彼女は、その晩年を袴巾着の下半身だけ肉便器としてわずかばかり罪を償った後、最上級の鉱石として死んだ。彼女はクオンツ族の最後の族長であり、彼女の代をもってクオンツ族は人類ではないとされ、以後は「猫畜生」と改められた。これにより、鉱石を取るための家畜として、人間の役に立つ益獣となったのである。