――――気が付けば、あれから10年もの年月が経っていた。
感想としては、『思い返せば長いけれど、指摘されると驚きを隠せない』といったところか。
アンダーグ帝国との往来も盛んになり、今やスカイランドのあちこちで見かけるようになった。
なんなら、お互いの子どもが一緒に遊ぶのも珍しくない。
助けを呼ぶ声は尽きることないけれど、世界が滅ぶような大きな危機は鳴りを潜めて実に久しい。
そんな、ヒーローにとっては喜ばしい、
私とましろさんが祝言を上げたのは、つい二か月ほど前のことだった。
あの日、守られる子供だったましろさんは、今や立派な大人となり。
心身共に成長した彼女は、自分の行動に責任が持てる様になった。
その上で、改めて私の隣にいることを望んで、選んで。
左手の薬指に、お揃いの指輪を付けてくれている。
・・・・正直嬉しい。
いつでも離れてよかったのに、それでも私の隣を選んでくれた。
私の全てを信じて、私に全てを託してくれているのが。
本当に誇らしくて、くすぐったい。
考えれば考えるほど、愛おしさが胸にこみ上げて来て。
もう二か月も経つというのに、気を抜くと顔が緩んでしまう始末。
プライベートならともかく、職務中までそうなるのは良くないので。
意識して仏頂面をしていた所為で、顔の筋肉を傷めてしまっていた。
閑話休題。
「――――ただいま戻りました」
「おかえりなさい、ソラさん」
スカイランド王都。
今日の職務を終えて、自宅に戻れば。
ましろさんが温かいご飯と一緒に出迎えてくれる。
「今日もお疲れ様でした」
「ええ、ありがとうございます」
脱いだコートならぬ、外したマントを受け取ってくれるましろさん。
「今日はカレーですよ」
「いい匂いしてました、楽しみです!」
同じ屋根の下で暮らして、同じ食卓を囲んで。
かつてソラシド市でも同じことをしていたはずなのに、『夫婦』ってだけで全くの別物に感じてしまう。
ああー、マジ幸せ。
こんな贅沢、他にあるぅ?
「こちらの生活には慣れました?何か不便はないでしょうか?」
「大丈夫です、前からちょくちょく来ていましたし、ソラさんやハト子さんがいろいろ教えてくれるので!」
「それはよかった・・・・これからも、遠慮なく頼ってくださいね?何せ、夫婦ですから」
「ふふ、はい!」
――――夕飯も堪能して、部屋着に着替え終えた私は。
リビングでましろさんを膝に乗せて会話する。
どうしても私を見上げる形になるましろさんは、上目遣いだ。
うーん、かわいい。
ましろさんは、仲良くなったご近所さんの話や、最近見つけた景色や花のことなど。
ニコニコ話してくれるその顔を、私もニコニコしながら相槌を打ちつつ耳を傾ける。
「――――それで、
「ふふ、エルちゃんも可愛かったですよね」
「そうですねぇ、今はすっかり素敵なプリンセスになって・・・・」
『大きくなったなぁ』と、感慨深く呟くましろさんに。
全力で同意する。
まだまだ実年齢は10を過ぎたばかりなエルちゃんだけども。
日々のお勉強や特訓を頑張っているお陰か、順調に素敵なレディに育っている。
更に『エルさんモード』も相まって、国民人気はうなぎのぼり。
育ての親としても、一臣下としても。
鼻が高いというものだよ・・・・。
「――――私達の」
ふと、ましろさんの視線が落ちて。
「私達の子どもも、きっと可愛いでしょうね」
「・・・・ええ、きっと」
・・・・実は。
所謂『初夜』を、まだ終えていない。
向こうから通っていたこれまでとは違い、夫婦となったこれからは定住することになる。
当然向こうとは生活様式も全く違う中で、妊娠・出産・子育てっていう『重労働』は。
流石にさせられないべ・・・・。
「・・・・あの」
なんて考えていると、ましろさんが身じろぎしたのに気が付く。
思考から戻ってきて見下ろすと、翡翠の瞳とかち合う。
「結婚したし・・・・」
「・・・・ええ」
「夫婦になったし・・・・」
「・・・・ええ」
「なので・・・・」
身を寄せられる、手を握られる。
向けられる視線には、熱が灯っていて。
「そろそろ・・・・いい、と、思うんですけど・・・・!」
段々を顔を俯かせ、声を萎ませながらも。
はっきりと伝えてくれたのだった。
・・・・かわいい。
本ッ当に!かわいい!
恥ずかしがっているのも、期待しているのも。
信頼してくれているのも。
言葉では表現しきれないくらいに嬉しくて、かわいくて、愛しすぎる・・・・!
このままベッドまで連れて行ってしまいたい衝動が、爆発的に湧きあがる。
・・・・いやいやいやいや。
(落ち着け、ビークール・・・・!)
欲望のままに動き出しそうだった体を、なんとか制した。
・・・・お互いに大人となって、夫婦になったから。
『そう』しても問題なくはないのだけれども。
「――――本当に、大丈夫ですか?」
――――だからこそ、ぐっとこらえる。
そうして来たからこそ、ここまでの信頼を得られたのだと分かっているから。
これからも、この人にとって安心できる存在であるために。
今までのやり方を続けることにする。
「確かに二月も経っていますが、『まだ二月』でもあるんです。焦らなくてもいいんですよ」
「・・・・ありがとうございます」
本心からの言葉を伝えると。
腕の中、ましろさんの顔が綻ぶ。
「でも、本当にいいんです」
きゅ、と。
手が、握られて。
「ソラさんだから、いいんです」
『それに』、と。
ましろさんが近付いてきて。
「これで、出来、なくても・・・・『番』には、なりたいです」
・・・・言われて、思い出す。
そういえば、まだ『番』になってなかったな?
いや、今までは未成年だったり結婚前だったりで、ブレーキがかかって。
噛むには至ってなかったんだったか。
・・・・冷静に考えると、やっぱり私はヤバい奴では?
未成年に手を出すって、大人のやることじゃないよな・・・・。
「――――ソラさん」
勝手にダメージを受けている所へ。
名前を呼ばれる。
考え事から戻って目をやると、唇を奪われて。
「せっかく夫婦になれたんですから、ね?」
耳元、煽る様に囁かれた。
・・・・バックドラフト、よろしく。
収まりかけた『欲』が、火力を取り戻すどころか。
さらに激しく燃え上がって。
・・・・嗚呼、もう。
そんなことされたら・・・・!
「・・・・止まれませんからね」
「はい」
体に触れながら、念を入れて問いかけると。
どこか微笑まし気に笑いながら、頷いてくれるましろさん。
もう、限界を迎えて。
その顔に、キスを落とした。
◆ ◆ ◆
「ひゃ・・・・!」
ましろの体が、半ば投げるようにしてベッドに倒された。
すかさず覆いかぶさるソラは、捕食者さながらに伴侶を見下ろす。
「そら、さ・・・・ッむ・・・・!」
そして、噛み付くようなキスをした。
口を開け、舌を差し出して。
応えるべく一生懸命開かれたましろの口回りを。
更に大きく開けた口で塞ぐ。
「ん、ふ・・・・っぁ・・・・!」
口づけの傍ら、ソラの手がましろの体を這う。
手のひらをべったりと付けたかと思えば、指先だけで撫でられる。
その抑揚が、ましろのへそ下を熱していく。
「ああッ・・・・!」
突然の水気に、体が跳ね上がった。
ちかちかする視界で胸元を見下ろせば、ソラが首筋に吸い付いている。
「ちゅ・・・・っじゅ・・・・!」
「ッ・・・・!」
あれよあれよという間に、強く吸い上げられて。
鎖骨の少し上、赤いキスマークを付けられた。
「・・・・脱がします」
囁きに、こっくり頷くましろ。
見えぬままに許可を得たソラは、裾に手をかけ。
故意にゆっくり上げて、じらしていく。
「ふぅッ!?・・・・ぅ・・・・ぁ・・・・!」
唇のみならず、鼻先や頬、首筋へのキスを止めないまま。
露になった肌を、指先で撫でていく。
すると、面白いくらいにましろの声が上ずって、一緒に体が跳ねて。
その反応を、ソラは目を細めて楽しむ。
「ッあ、ア、ぁあ・・・・!」
手の動きを変える。
指先を柔肌に滑らせ、ブラジャーの下へ。
もっちりした胸を一瞬蓄えると、背中側へ回して。
ホックを、外す。
「――――は」
そうして晒された胸は、『頂点』がすっかりしこり立っていた。
「は、は・・・・ふ・・・・ッは・・・・!」
興奮と、期待に。
ましろの吐息と視線が、熱を帯びる。
静かにほくそ笑んだソラは、『では遠慮なく』とばかりに片方にかぶりついた。
「ッアアアア!」
声が弾けて、体が反り返る。
差し出された胸を貪りながら、ソラは下腹部に手を伸ばす。
自分にだけ許された、一番大切な場所。
入り口に指を這わせて、『割れ目』に挿入すれば。
さらに跳ねるのが分かった。
「は、ちゅ、ちゅ、ッん、ちゅ・・・・!」
「ん、く、はふ、っ、ぁ、ちゅ、っちゅ・・・・!」
『割れ目』の指はそのままに、空いた片手でましろを抱き上げたソラは。
再び唇を貪り始める。
舌先を絡めては啄み、時には頬の裏や歯茎を撫でながら。
『割れ目』の刺激に跳ね上がる口内を、じっくりたっぷり味わい尽くす。
「っれ・・・・は・・・・ましろさん、みえますか」
ふと、口元に銀糸を紡ぎながら、ソラが妖艶に囁く。
「は、は、は・・・・ッ?」
「ほら、ここ」
快楽に溺れ、やや遅れて反応したましろへ。
ソラは見せつけるように指を動かして。
「もうこんなにぐしゃぐしゃ・・・・そんなに期待してくれてるんですね」
「――――ッ」
今度は熱を孕ませて囁くと、ましろの顔が爆発でもしたかのように真っ赤になった。
「ふふっ・・・・かわいい」
ほろりと零れたましろの涙を、獣のように舐め取れば。
かすかな塩味と苦味。
余韻すら逃すまいと舌なめずりをしながら、ソラは自らの部屋着に手をかけた。
指を引っかけてズボンを下ろせば。
派手なオノマトペが尽きそうな勢いでこぼれ出る、
とある民族の言葉をして、『鳥の頭』とも称される由縁が。
よく分かる形。
「――――いいって言ったのは」
足の間に体を割り込ませ、ましろの目の前で数回しごくと。
「――――貴女ですよ」
あっと言う間に先端をあてがって、突き込んだ。
何度経験しても、慣れることは出来そうにない鈍痛が。
ましろを貫く。
「――――ッ!!」
上がった甲高い声を、両手で必死に閉じ込めながら。
ましろは体をのけ反らせる。
「ふ、ふぅっ、ふ、ふ、ッ、ぁ・・・・!!」
「ッ、ぅ、んぁ・・・・!」
快楽から逃れようと、芋虫のようにのたうち回る様を見下ろして。
さしずめ自分は、それに群がるアリかと思いながら。
ソラは腰を振りたくる。
「は、はぁ、ッ・・・・声、聞きたい」
「ッ、は、ぁあ、アッ・・・・!」
腰を掴んでい手を放して、ましろのそれと指を絡め合えば。
蓋が取れた口から、喘ぎ声が囀る。
耳を傾けたソラは、満足げに微笑むと。
腰を更に加速させた。
「ぅう"あ"ッ!ああっ、ッふ、ぁ・・・・!!」
「んっ、っ、あ、ア、アァッ、は、はぁっ・・・・!」
柔肌がうねり、息が荒くなる。
嬌声とともに肥大化していく、快感。
「ァ、ッア、あ、ッぅあ・・・・!?」
胸をいじりながら、ましろを裏返せば。
後ろから突き込む姿勢が完成。
捕らえる様に抱え込むと、一度収まってしまったピストンを再開させる。
「ァ、ア、あっ、は、ヤッ・・・・!」
止まらない『責め』、自由の利かない体勢、緩む気配のない拘束。
言いようのない背徳感と興奮に、ましろの視界がちかちか瞬いて。
「ッま、ぇ、ま、て、ッまって・・・・!」
塗りつぶされそうな恐怖に、身を縮こませながら。
ましろはか細く叫ぶ。
「なる、なっちゃう、おかす、かし、ッ、ぁあ、アッ、はぁっ、か、ぁ、おかし、くっ、ッぅん、なっちゃ、ァアア・・・・!」
「――――はあ」
逃れようとして、逆に手を握り込んで。
自分から更に捕らわれるましろの耳元で。
「――――なっちゃいましょ」
ソラの吐息が、鈍く吐き出されて。
「えんりょ、ッしないで・・・・一緒に、おかしくなりましょお?」
一瞬の隙を突いて、組んでいた手を片方放すと。
ましろの首元の髪をかき分ける。
「ッァあ・・・・!?」
吹きつけられる。
興奮しきった、湿度の高い息。
甲高い声が漏れて、腰に力が入る。
測らずとも、締め上げて。
「ッぁむぅ・・・・!」
「――――ッ、ゥ・・・・アアア・・・・!」
――――視界が、ホワイトアウトする。
音にすらならないような、か細い声が漏れていることに気付いたのは。
色とビジョンが戻って来てからだった。
「ぁあ、アッ、あ・・・・は、あ・・・・」
どくどく、と。
遠慮のない『濁流』が注ぎ込まれる。
今までの『ゴム』越しとは違う熱に、ましろは小刻みに震える。
「は、は、は・・・・ふ・・・・」
一方のソラは、余韻にしばし浸った後。
固く閉じていた目を開けて見下ろせば、ましろのうなじで自己主張する噛み跡が見えた。
――――『
行為中に、αがΩのうなじに噛みつくことで成立する関係。
Ωはこれにより、発情時に出すフェロモンが安定し。
番った相手のみを誘惑する様になる。
・・・・実に、野蛮な言い方をすると。
今この瞬間から。
ましろの全ては、ソラのものになったのだ。
「――――ッ」
そのことに気が付いたソラの胸中で。
言いようのない万能感が、爆発する。
「ふっ、ぅ・・・・んっ・・・・!」
「ひぁ、ま、ぇ・・・・ッまって・・・・ぁだ、まだ、イッて・・・・!」
興奮のままに腰を揺らせば、眼下のましろは悲鳴を上げた。
「す、みま、せっ・・・・むり・・・・止まれっ・・・・っな、い・・・・!」
いつもなら聞き入れられる『待って』だが、今回だけは余裕がなかった。
「ゥ、っ、ふ・・・・ましろさん、かわいく、って・・・・!」
「っは、あああッ・・・・!」
腰を掴み、腰を振り。
欲望のまま、思うがままに。
番となった人の体を、ひたすら味わっていく。
柔い肌も、可愛い声も。
性器で蹂躙している『秘所』も。
もう、他の誰にも奪われる事が無い。
自分だけのもの。
「ましろさん、ましろさん、ッましろさん・・・・!」
考えれば考えるほど。
歓喜と、それに負けないくらいの背徳感が這いあがって来て。
それで起爆した快感が、ソラの思考を抉り取っていく。
嗚呼、そうだ。
Ωだと判明してから、ずっと。
初めて抱いた日から、ずっと。
「ず、と、こー、したかった・・・・ずっ、っと・・・・こう、ぅう、ハァ、ァ、ッハ、なりた、かっ・・・・ッ、はああ・・・・!」
「は、ぁ、う・・・・んんッ・・・・ッア・・・・っ・・・・そら、さん・・・・ソラ、さん・・・・ソラさんんん・・・・!」
矜持も、信念も。
何もかもを。
しゃらくせぇと、かなぐり捨てる。
「ハァーッ、ハァーッ、ハァーッ・・・・!」
天を仰ぎながら。
一突き、一突き。
突き込んで。
「あああああああああッ・・・・!」
「ぅあああああ・・・・!」
――――吐精しながら。
くったりと、覆いかぶさる様に倒れ込むソラ。
はふはふと浅く呼吸するましろを、そっと腕に収めると。
静かに頭を撫でた。
「・・・・んっ・・・・ソラさん」
ソラの手のひらの温もりに、ましろは気持ちよさそうに目を伏せながら頬ずり。
猫の様だなと思いながら、ソラは唇を落としたのだった。
◆ ◆ ◆
「すみません、がっつき過ぎました・・・・」
一通り終えてから、色々落ち着いて冷静になってみれば。
もう、謝るしかないことを色々やらかしていることに気が付いて。
顔を手で覆ってしまう。
いや、ほんと・・・・。
私ったら何してんの・・・・。
ああ、『ナニ』か。
って、やかましいわ!!
「あはは、わたしは気にしてませんよ」
隣で横たわるましろさんは、寛大にもほがらかな笑みを向けてくれる。
「むしろ嬉しいくらいなのに・・・・そんなに落ち込まれると、ちょっと寂しいです」
「ましろさん・・・・」
ううう・・・・その優しさが、今は潮水みてぇに染みる・・・・。
徹頭徹尾、勝手にダメージ受けてるだけなのもまた。
自分の滑稽さを晒している様で・・・・。
「ふふふっ・・・・」
一人で悶々と考えているのが顔に出たのか、どこか楽しそうに笑ったましろさんは。
私の胸元に顔をうずめると、猫みたいにおでこをぐりぐりこすりつけてくる。
うーん、かわいい(確信)
なんて、呑気に考えていると。
「・・・・名前」
ましろさんが呟いたのが聞こえた。
「ましろさん?」
「あ、その・・・・子供の名前、何がいいかなぁって・・・・」
『気が速すぎました』と、腕の中で照れくさそうな顔。
・・・・まあ、確かに。
『授かりもの』なんて言うくらいだし、確率は高くても今回で出来ると断言出来ないのも事実だ。
父母ともに問題なくても、出来ない人は本当に出来ないしね・・・・。
・・・・それはそうと。
「・・・・いえ」
ぎゅう、と。
愛しさのままに抱きしめて。
「・・・・一緒に考えましょう」
「・・・・はいっ」
するりと、ましろさんのお腹を撫でながら。
耳元で囁く。
――――そっと握り合う手の間に。
もう一つ、ちいちゃな手が加わるのは。
もう少しだけ、先の話だ。
蛇足のおまけ
ロウコさん
近所の若奥様、クシザスから嫁入りしてきた。
結婚5年目の人族。
ほぼほぼ同じ境遇のましろを気にかけてくれている。
最近第一子が誕生した。
ネーミングはうろこ雲。