続きは仕上がり次第、投稿予定。
「お兄ちゃん、昨夜はお愉しみでしたね」
俺のスマホはキリ香からの贈り物だ。迷子防止のGPSアプリが仕込まれている。妹名義のため、俺では解除できない。おかげで昨晩月代主任の処に一泊したのがバレてしまった。さっそくネチネチと叱られている。ちなみにスマホを置いてくるのはなしだ。万一のスタンピードや救助要請など、俺たち探索者にはエマージェンシーに応える義務があるからだ。
「主任が酔っぱらって手が付けられないって、受付嬢のお姉さんから連絡があった。それで彼女を担いで部屋まで運んだ。その時スマホを置きっぱなしにしたみたい。本人の名誉のためにも追求しないでくれると嬉しい。月代主任は後で母さんに説明するって言っていたから確認してよ」
『看破』も持っていないのに、キリ香は俺の嘘をすぐ見破る。だから途中まで本当の事を正直に話す。なおも半信半疑な義妹を誤魔化すため、俺は露骨に話題を変えた。
「昨日、初めて歓楽街へ行ってみた。夜の蝶のお姉さんって素敵だね。流し目がすごく上手。陰で特訓しているに違いない、いけないと分かっていても、ついて行きたくなってしまう。大人なっても、ならなくても夜のお店で心ゆくまで遊んでみたい」
「そんなの絶対許さない。それにお子様なお兄ちゃんなら、すぐに補導されちゃうよ。どうしよう、お兄ちゃんがいかがわしい遊びを覚えようとしている。これも全部あのいかがわしい本が悪いんだ。お母さんに言いつける。月代さんと受付嬢のお姉さんには責任取らすから覚悟して」
妹はぷんすか怒って通話を終えた。これで何とか有象無象にする事が出来た。それにしても「みよう本」を読むと、女性にいやらしい事をするようになるのか。妹は碌に読んでもいないのに、的確に真実を指摘した。
「想夜君たち、大丈夫かな? 主任と間違いは起きていないわよね? 新婚の上司がエースの美少年と不倫だなんて、さすがにこれはスキャンダルだわ」
「いつも猥談してるから勘違いされるけど、主任はあれで身持ちは固いのよ。強くて美人のエリートだし、おまけにスキル絶倫持ち、言い寄る男は多いのよ。だけどことごとく袖にしているらしいわ」
これは可愛いヤキモチなのか、アイドル受付嬢の州城尋が心配すれば、同僚の松枝小梢は悪戯っぽく笑う。あざとい彼女は、噂話を集めるのもお手の物だ。
「それより尋ちゃん、想夜君を大人として扱えっていうのが偉い人の希望よね。これって大人の女性として接しなさいと言う事でしょ。立候補しちゃおうかな。尋ちゃんも一緒にどう?」
重婚法案が成立すれば現実的には一夫多妻制となる。経済的に余裕があり、精力も旺盛な探索者の事を念頭に置いている。
「彼はまだ高校一年生よ。不純異性交遊は認められないわ。担当受付嬢として相応しい男女交際を教えなくては。手繋ぎから始めます」
「でも想夜くんは、戦闘特化の探索者よ。その気になったら私も尋ちゃんもおいしく食べられちゃう。尋ちゃんにその覚悟はあるのかしら」
「それは彼に対する侮辱だわ。想夜君ほど優しく強く高潔な美少年はこの世の中に存在しません」
州城尋はできるキャリアウーマン風なのに、男女の機知には疎かった。今の想夜は年上をわからせるのがマイブームなので、真面目な彼女は恰好の餌食となってしまう。
「それじゃあ抜け駆けしようかな。年上の女性に甘えられると男の子って弱いらしいの。でも彼、性技、性豪のスキル持っているから、泣かされちゃったらどうしうよう」
「彼が年上好きなのは知っているでしょう。お子様なあなたなんかは、想夜君相手にしないわ。私がお姉さんとして、彼を一人前の男性に導いてあげます」
あざとい小梢と経験もないのに強がる尋、受付嬢二人は何を勘違いしたのか姦しかった。二人ともこれから担当の探索者の少年の部屋にお呼ばれされている。精一杯おめかししていた。
京都へ出張する前の事だ。小梢ちゃんと尋さんは、俺が無事に帰還したなら、皆でお祝しようと言ってくれた。望みを一つ叶えてくれるらしい。それで今日、部屋へと招待している。もちろん、どちらか一人なら警戒されただろう。でも二人一緒ならと言う事で応じてくれた。
彼女達は俺の専属だ。絆されてくっつくのはよくある事、手を付けても非難されまい。ただ、そうすると二人一緒に選抜者にしてしまう。俺の周辺では親しい女性が相次いで選ばれているのだ。小梢ちゃんと尋さんまでそうなったら、ギルドに気づかれかねない。
でも俺は剣風紀との真剣勝負を控えている。少なくとも試合では彼女の方が格上だ。遺書も書いている。死ぬかもしれない。それに女神さまの権能がいつまで続くのか分からない。彼女達は良くしてくれた。だからこそ今日、感謝の気持ちを伝える。
チャイムが鳴って二人を迎え入れた。
「私たち、男の人の部屋にお邪魔するのは初めてよ」
「わっ、小梢ちゃん可愛い。目の保養! じっくり、たっぷり鑑賞したい」
この大人の受付嬢を、俺は馴れ馴れしくちゃんづけで呼んでいる。もちろん彼女もまんざらではない。羽織を脱げば、胸元の開いた真珠色のキャミソール、レースの裾はフリルになって幾重にも重なっている。クールグレーのミニと合わせてスカートを何枚も重ね履きしたように華やかだ。
「ヤダッ、想夜君のエッチ! 恥ずかしいなぁー」
真っ赤になってもじもじしている彼女を隅々まで舐め回した。解いてと言わんばかりの結ばれた肩紐、落とせば、大人らしからぬ可憐な胸が露出するはず。裾のフリルを捲るのは、スカート捲りをするようだ、焦らした挙句にプリーツを捲ってお尻と太ももを撫で廻すのだ。
魔力を帯びた欲望の視線、こんなものを浴びせられたら、普通なら嫌悪感を抱かれるはず。だけどモテる男を目指すなら、抱かれたいと意識させねばならない。『透視』スキルは敢えて使わない。プレゼントの中身を先に覗くのはマナー違反と思うからだ。俺は脳内で小梢ちゃんのブラとパンティーを想像する。きっと大胆な勝負下着をつけているに違いない。
「あ~ん、もう駄目。脱がされてしまいそう。それより尋ちゃんのも見て、見て」
堪らなくなった小梢ちゃんは同僚を生贄にした。尋さんのカーデを脱がせにかかった。大人の女性がじゃれ合うのは、そこはかとない色気が漂う。尋さんはノースリーブのワンピース、レモンイエローのデザインが優しい。いつもはきつめの美人さんだけに私服姿の彼女は新鮮だった。本当はこんなに穏やかで包容力のある女性だったのか。
「ジャジャーン!」
「ヒャン、恥ずかしいわ」
嫌がる尋さんを後ろ向きにしてくれた。背中が大きく開いている。シックな服装と思いきやあまりにも大胆、これが大人のお洒落だろう。『透視しないで本当に良かった。
ここで照れ隠しなのか、尋さんが真顔になった。お説教モードだ。
「今日、あなたのお母さん、薫子さんから小言を頂いたわ。夜の街を案内しないでって。妹さんに玄人さんと遊びたいとのたまわったそうじゃない。私たちも主任も平謝りよ。ちょっと迂闊だったかしら」
「私たち、あなたが無事だって聞いて、二人で抱き合って泣いたのよ。乙女の純情を踏み躙られた。ひどいよ。想夜くん責任取ってね」
妹のヤツ、やっぱり母に告げ口したのか。だけど好都合でもある。俺が二人の受付嬢に願うのは夜の街への引率だから。
俺は言葉に魔力を込めて、渾身の願いを口にした。真心が籠った言霊がお姉さん達の心に染みる。
「僕をキャバクラに連れて行って」
二人は呆然として見合わせた。
「どうしよう、夜の街って酔っ払いだらけで恐いの。物陰に引きずり込まれて襲われたらどうしよう。想夜くん離れないからしっかり護って」
仕事はできる小梢ちゃんはさっそくお嬢になり切った。俺にヒシとしがみついてくる。
「もう小梢、悪乗りしない。さすがにそれは、担当として認められません。私たち受付嬢はあなたが道を踏み外さないよう見守る義務があるの。お願いだからお金や権力に溺れないで。それに職務を離れて女性としても、あなたを健やかな大人へと導きたい」
「でも先輩のおじさんやお兄さんは言うよ。お前みたいなお子様は直ぐに女に騙されそうだから、今のうちに経験を積めって。稼いだら散財するのが探索者の義務だそうだよ。上級ならモテまくる、容姿だって若作りのスキルを持っている事にすれば何とでもなるって」
真面目な尋さんが激怒した。もちろん俺を心配しての事だ。
「ちょっと誰よ。想夜君に悪い遊びを教えようとしているのは。さあ、白状なさい。15歳にお酒を飲ませるのは犯罪でしょう」
「それは徳島の探索者の野郎どもほぼ全員。未成年の探索者ならジュースやコーラを注文すればお目こぼしされるらしいよ。それに年配の人が忠告してくれた。年上のお姉さんにチヤホヤされるのは今だけだって。歳を取ったらいくらお金を積んでも、その夢は適わないって。なら人生に悔いを残さないよう、今のうちに大人のお店に行ってみたかった」
先輩諸兄が夜遊びを強く勧めてくるのは、パーティメンバーの朱美と詩央が遠征で不在な事も大きいと思う。尻に敷かれそうな俺を心配して、今のうちに羽を伸ばせとの親心だ。それに俺は彼らの言い分にも理があるように思えた。
「僕たち探索者はダンジョンから戻ると心がざわつく。生き延びた歓喜、戦いの高揚、衝動が抑えられなくなったりする。その時女性に優しくされると落ち着くんだ。だから先輩たちは夜の蝶のお姐さんに慰めてもらって解消しているんだと思う」
俺たち探索者が女遊びをするのも故合っての事である。
「報告書ではぼかしたけれど、神戸でも京都でも僕は何度も死にかけた。でも頼ってくれる人がいる。へらへら笑って強がった。そんな僕でも小梢ちゃんと尋さんの笑顔が見たい、その想いで乗り越えてきた。お陰で無事に再会できたよ。二人は僕の恩人みたいなもの。いつも感謝している、ありがとう。でも今回はこれまでになく危なかった。心の底から突きあげてくるものがある。でも小梢ちゃんと尋さんに、邪な想いを抱くのは嫌だ。だから玄人さんに猛る想いを鎮めて欲しかった。心配かけて御免なさい。そして弱い僕を見捨てないで」
ませたエロガキだと思っていたのが真摯な悩みを抱えていた。彼女達は涙ぐんでしまう。それは担当の少年の心を汲んでやれなかった恥じらいの涙でもある。もう担当受付嬢としては放ってはおけない。
「でもさすがに未成年を夜のお店に連れていくのは無理だわ。でも何とかしてあげたい」
「想夜くん、そんなに想ってくれたのね。あなたの望み、なんだって叶えてあげる」
当然この返事は予想していた。そこで俺は代案を、実は本命を提案した。
「それじゃあ、ここでキャバクラごっこをしたい。小梢ちゃんと尋さんを指名して大人の雰囲気を味わってみたい」
二人をソファーに侍らせて体中を弄ってやる。そして目指すはお持ち帰りだ。
「キャバクラって、お客さんと恋人ごっこをする所よね。想夜くんと恋人ごっこなんて楽しそうだよ。尋ちゃんやってみようか。それで私たちにはいったい何をさせたいの」
「うん、お洒落トークを楽しみながら一緒にゲームをしたりする。お酒の代りにジュースを注いで飲ませて欲しい。美味しいお菓子を食べさせて」
言葉責めして罰ゲームで服を脱がす。そして飲むのはラヴジュース。最後は美味しくいただいてやる。だけど経験のない小梢ちゃんは誤解してしまう。それどころかニマニマと挑発してきた。
「え──ー!!! そんなのでいいの。もっと頼ってくれていいのに。いっぱい沢山、大人のサービスしてあげちゃう。もちろん尋ちゃんもね」
「コラ、小梢、はしたない事言わないで」
キャバクラがよく分かってなさそうな尋さんがスマホを取り出し、検索を始めた。
「ちょっと待ってね、今調べるから。何々、キャバクラはキャストが殿方の隣に座って、一緒にお酒を飲んだり会話を楽しむお店だそうよ。おさわりは禁止ですって。これなら許容範囲ね。心を込めて尽くしてあげる」
そんな訳ないだろう。尋さんはAIに騙されている。でもグッジョブ!