またの名を「海賊バギーが珍獣島海域で死亡しうる世界」
あとローグタウンでアルビダがお腹をさすっている描写ってさぁ……?
つまりぃ、……「こういうこと」もありうるっスよね? (※ただの邪推)
(※原作だと両方とも”頬”。)
産まれないほうがマシな世界。
そう切って捨てるには、法秩序が機能していないわけでもない。
この世界での法秩序が保たれるとは、海賊でも海軍でもない者……
”
天竜人による圧制こそあれども、天竜人の現れる国や島とは、わざわざ天竜人が足を運ぶほどの「天竜人が欲望を叶えられる場所」であり、天竜人の散財による恩寵を受けられ、天上金を支払いやすくなる場所でもある。
わざわざ世界政府の敵に回る国など、世界政府に加入できるほどの富がある国からすれば、最初から
経済ある限り。
いや、経済によって多少は改善されるとはいえ。
笑う悪人がいれば、泣く善人もいる。
ただそれだけの話である。
それだけが、いかに悲しい現実とはいえ。
それら天竜人の贅沢三昧、悪行三昧のいずれとも直接の関係がない、かつては民間人であった海賊による犯罪行為までもが圧政を口実に見逃されてもよい、という屁理屈にしてはならない。
「おごっ!? ぐぇ、えっ……」
「ボクは今、おまえの内臓に攻撃した」
伏せる巨躯の女海賊アルビダ。
”
「警告はした。
あんたはまだ、この島での海賊行為は働いちゃあいない。手配書は見たが、」
うめく海賊から拳銃をどう取りあげたものか、内心で考えながら男は続ける。
相手は腰に巻いたベルトから拳銃を失ってはおらず、手に持っていた棍棒はひしゃげてはいるものの、相手は海賊。
この程度で戦闘の意志を失う程度ならば、海賊の船の長などやれはするまい。しかし、手配書が写真だとはいえ、
「本人なのかどうか、ボクにはわからない」
「いやどう見ても金棒のアルビダだろっ!」
「似た特徴の女かもしれないだろ」
ほかの民間人からは、よく突っ込まれるが。
世の中には、他人のそら似というものがある。
ぐるぐる眉毛で金髪で片眼を隠している、ほかは似ても似つかない、そんな人相書きだけで人生を狂わされる、手配された本人とはまったくの無関係だった犯罪者だって世の中にはいるのだ。
前途ある貴婦人が真似をしただけかもしれない。
たぶん、きっと、おそらく、メイビー。
「投降か、逃走を提案する。
ボクとしては、これ以上の戦闘は互いのためにならないと思うんだが」
「……なめんじゃないよ、くそガキっ!」
ただでさえ脂肪分の大きい巨体をどう動かせばそうなるのか、一瞬で立ち上がって拳銃を構える女海賊アルビダ。
地を舐め、泥をすすらされ、それでも勝つと舞いあがる姿はさながら白鳥か。
「悪くない女だよ」
女海賊アルビダが女海兵であれば、彼はすぐさまアプローチをしたかもしれない。
だが相手は海賊で、彼はただの民間人で、どこにでもいる人間だ。
覇気なんて使えない。六式なんてもってのほか。
「モミモミの、」
拳銃に手を伸ばす所作は見えていた。
女海賊アルビダが構えた瞬間にあわせて、男は距離を詰める。
普通に考えれば、近づくだけでも弾丸が自分の肉体に当たる可能性が高まる。
とはいえ、同時にそれは、
「!? 見えな、」
女海賊アルビダの視界を、男の肉体で埋め尽くすことを意味している。
その一瞬の隙が、女海賊アルビダの意識を刈り取った。
「”
ずむり。
男の拳が女海賊アルビダの腹を打ち抜く。
激しい航海により鍛えあげられた腹筋の頑健さ、奪った富で培われた脂肪、それら女海賊アルビダを構成する過去の
己を妄信する狂気。あるいは己を信じる覇気とでも呼ぶべきもの。
それらすべてを貫いて、悪魔の拳による衝撃が女海賊アルビダの内臓を直接叩く。
「んお゛っ!? おっ……お……っ、」
ずん、と。
巨躯の落ちる音がした。
「自分を磨いてから出直すといい。
……ひとのことを言える人間でもないが。」
悪魔の力を使った男は、踵を返し、
「おい、そこの」
「はいっ!」
傍観していた男海賊へと話しかける。
己の船長の敗北を見届け、勝者への畏怖がとっさの態度に出てしまった男海賊は、
「おまえたちの船長だろ、連れて帰れ」
「はいいっ!」
海賊の矜持を忘れた。
自分たち男よりも強い女、……よりも強い、ただの民間人の男。
なんかもう男としての尊厳とか誇りとかをただでさえ女海賊の下ですり減らされてきたのに、海兵でさえない民間人の男に格のちがいを見せつけられて頭がおかしくなりそうだった。
そう思ったアルビダ配下の男海賊たちは女船長の五体を手分けして持ち、ようやっと持ちあげられた頃には、「やっぱこれ荷台のほうが早くね?」と愚痴りあい、「だろうと思って持ってきました!」と声をかけてきた少年へは「でかしたコビー!」と叫ぶ。
「ふん。なんだ、」
男は笑う。
「思ったより慕われているじゃあないか。」
女海賊アルビダとは男の船員でハーレムまがいのものを作り上げる支配により君臨する女傑だが、人間ひとりが恐怖で多数を従えるなんて簡単なことではない。
寝ている間に暗殺や袋だたきをされてサメの餌にされるくらいありえたはずだ。
無防備な今でもそうなっていない時点で、部下からは愛されているのだろう。
男は満足げに彼らの出港を見守った。
海賊だろうが何者だろうが、二度とうちに来ないでくれれば別にいい。
何せ自分は、ただの按摩士(マッサージ屋)なのだから。
男が得た能力は超人系の「モミモミの実」。
ふれたものをやわらかくさせ、そのかたちを思いのままにできる。
やわらかくしたものを通じて、相手の内臓へ直接打撃を届けることも可能。
その能力を駆使し、按摩士として数多の患者のコリを解決した男、それが彼である。
そう、男が与えたものは、内臓への直接の衝撃。
彼が直撃させた内臓がある部位は、
「んお、お……おぉンっ……♡」
「アルビダさま?」
少年コビーの手当に気づかず、股ぐらを押さえて悶えるアルビダ。
「はあ、くっ……ん、やあっ、」
「アルビダさま??」
怪訝な目で様子をうかがう少年を気にせず、あるいは気づけず、自分のたるんだ腹をまさぐり、ひとりの女が目覚めていく。
「きい、たぁっ……!
しびれて、ふるえて、負けて、ああ、」
だらり、と零れた
濃い化粧を溶かしながら、涙や涎が素顔の自分をさらしていく。
女海賊としての気位を忘れて、女アルビダは蕩けていた。腹部にある内臓、
「アタシよりも強くて、強い……」
水平線に消えゆく、略奪し損ねた島を目で追い、女アルビダは手を伸ばす。
さながら、男の残り香を追うように。
女としての渇望のままに。
「おと、……こっ……♡」
男への、恋心のままに。
自分を打ち負かした
女アルビダは改めて、夢を見いだした。
女海賊アルビダになった理由とは別の。
自由な女アルビダとしての、恋に生きる夢を。
そんなアルビダの強い意志に惹かれたのか。
彼女の船の倉庫にある桃のひとつが渦を巻いて、奇妙な紋様の果実に変わっていた。
たぶん続かないっス。
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