有償依頼108件目です。ご感想くださるとうれしいです。
ご依頼は http://skeb.jp/@freege_affected か、 http://twpf.jp/freege_affected からどうぞ。pixivリクエスト https://www.pixiv.net/request/plans/7443 も通常に戻しました。 ※pixiv、ハーメルンとくるっぷに転載しています。

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岡崎泰葉さん、担当プロデューサーの凌辱ごっこに付きあってあげる

『自分で頼んで、すぐ、ムリならいいんだ……みたいな態度、ちょっとどうかと思いますよ』

『甘く見てるとか、煽ってるとか……ってとられちゃうか』

『私以外に頼めるアテがいるんだ、って邪推しちゃいます』

 

 岡崎泰葉は口元だけで笑っていた。カメラとモニタごしに顔を合わせているプロデューサーの苦笑いが引きつっていた。

 

『頼める人は泰葉だけだよ、もちろん』

『これプロデューサーさんが書いたんですよね、それなら……』

 

 泰葉はウェブカメラにしっかり映るよう、A4に刷り出してクリップで綴じた“台本”を手にとってぺらぺらとめくった。プロデューサーのギョッとしたようすが期待どおりで、つい顔がニンマリしてしまって、とっさにその台本で顔を隠した。

 

『……私、ちょっと言いたいことがあるんです、よろしいですね?』

『それ、刷らなくてもいいようにデータで――』

『――刷るものです、台本は。ドラマでもなんでもいまだに刷るでしょう。必要なんです』

 

 台本の文字を鉛筆でなぞった。プロデューサーの綴った文字だと思いながらなぞると、彼その人に触れている気分が湧いてくすぐったくなった。

 

『それとも、これがただのラブレターって言うなら、止めておきますけど』

『こんなラブレターがあるかよ』

『ドキドキしちゃいますね』

 

 台本の後ろで、せいいっぱいかわいらしい笑顔を作った。勢い余って媚びた表情になってしまうが――(ウェブカメラごしだから、おおげさなぐらいでいいかな)――そのまま台本を持った手を下ろして、また彼に顔を見せる。

 

『演者として、だいじょうぶかなぁ……って、脚本家の意図を確かめたいところがありまして』

 

 プロデューサーと担当アイドルとして“だいじょうぶ”と程遠いやり取りだろう、というツッコミが、彼の目つきから届いた。

 

 

 

 

『なんで私の役の子って新体操やってる設定なんですか?』

『前に泰葉が新体操の衣装を着てたとき、楽しそうでかわいかったなぁ、って思い出して』

 

 “だいじょうぶ”じゃない関係にもいろいろある。プロデューサーとアイドルに限らず、ビジネス以上の親密な関係になることは、少なくとも芸能界ではままある。

 まず2人のビジネスは順調だった。2人で折り行った話をするときウェブカメラ、マイクに頼らなければならないほど忙しい、というのが泰葉の唯一の不満となるぐらい順調だった。

 泰葉の担当プロデューサーである彼は、業界の中では年齢・実績ともにそろそろ若手から中堅かという年ごろである。彼はともかく、泰葉は業界歴で彼より先輩だが実年齢で一回り近く年下である。だいじょうぶじゃない、の危険度が一段上がる。泰葉はかつて『プロデューサーが淫行条例でしょっぴかれたらどうしよう』と一度だけからかったことがある。

 

『新体操はずっと憧れてましたよ、レイプごっこの趣向じゃなければもっと素直に喜べましたよ』

『……変えたい?』

 

 芸歴の長い泰葉は業界の“だいじょうぶ”じゃない関係をチラホラ知っている。その事例のどれよりも自分たちがねじくれてしまっているだろう、と思っている。他人から聞いたら眉をひそめてしまう行為が、自分たちが密かにやっている側だと奇妙に誇らしく感じる。自分もいよいよ色ボケしたか、と危ぶむ。

 

『……わざわざ新体操の子をしばるんなら、リボンかロープです。チェーホフの銃って言うでしょう』

『それなら泰葉をイカせようとする演技も、フープとかクラブとか使ったほうが』

『それは嫌です』

『えっ』

 

 プロデューサーはセックスのとき、相手の女性を無理やり絶頂させるシチュエーションでしか興奮しない性癖である。泰葉は彼が性癖を満たすため書いた台本をチェックして、その主演女優を務めてやる前提で、台本に口を出している。

 

『自分の手で無理やり……って感じられなきゃダメですよね、あなたは』

『ダメ……かなぁ、どうだろう』

『あなたの手とか舌とかで直に、じゃなきゃ無理やりなんて嫌です……って、私が言ったら?』

『よろこ……んじゃいけない気がする』

 

 泰葉はプロデューサーと2回目に交わるまで、彼の性癖を知らなかった。

 初回は彼に処女を捧げた。ガチガチに緊張しつつも、彼に遠慮されて女としてのプライドが傷ついたり失敗で気まずくなってこのまま交際がフェードアウトしてしまったりのほうが恐ろしくて、泣きながら最後まで求めた――(それがたまたまプロデューサーさんの性癖をくすぐっちゃったのか、どうにか最後までできちゃって)――2回目、泰葉が余裕を持って構えているとプロデューサーが一転ぐんにゃりしていて驚いた。

 気になった泰葉が彼の性癖を聞き出した。

 

『プロデューサーさんって子どものころ好きだった女の子にいじわるしちゃってましたか?』

『……小学生のころは。中学に入ったら、さすがに』

『ふ~ん?』

『泰葉にそう尋問されるとゾクゾクする、プロファイルされてるみたいだ』

『役作りの参考にできたら、と』

 

 2回目は性癖の告白とともにプロデューサーから別れを切り出され、泰葉がとっさにレイプされながらイカされるふりをしてやった。経験済みで大胆になった少女が10年以上も磨き続けた演技力を駆使するとプロデューサーがあっさり絡め取られ、2人とも初回より堪能してしまった。

 以来“レイプごっこ”がお決まりになってしまって、ついに台本まで用意している。

 

『中学、高校ではどうだったんですか?』

『台本に出てくる男じゃなくって、俺のことを聞いているのかい』

 

 ウェブマイクごしだと、肉声より少しだけ明け透けな物言いができる気がした。

 

『この台本、演者の解釈にだいぶ依存してる感じがします……居るんですよ、“僕は演者さんの力を信じてるから”って殊勝な顔して体よく演者に投げっぱなしの脚本家さん』

『そうだね』

『脚本家としてのあなたが、主演俳優としてのあなたに投げっぱなしなんですよ、二重の意味で当事者です』

 

 泰葉が台本をぺらぺらめくってみせながら読み上げる。

 あらすじは――泰葉演じるヒロインが新体操の選手として、男に不祥事をもみ消してもらう。その代償にセックスを強要される。一定時間イかなければ挿入無しで済ませてもらうと約束して、イカされているが必死にイっていないふりをする。しかし度重なる絶頂で屈服し、イッたことを認めさせられ挿入される――というものだった。

 

『イッたこと認めさせられる直前に入れちゃったほうが、無理やりっぽくありませんか? ヒロインを踏みにじってる感じが強くなります』

『そうだね……ただ、もうこれ以上イカせられたら耐えられない……って趣向が、欲しくて』

『それ入れたあとに回しても』

 

 泰葉は、何度付きあってもまだプロデューサーの性癖が不可解だ、と――(無理やりイカせたいのに、おちんちん入れるのは許可がいるんですか……?)――呆れと羞恥と興奮が混ざったため息をついた。

 

『まぁ……いいですけど、書いたからには、そのとおりイカせてくださいね、それなら私も合わせてみせます……そんなに都合よくいくかわかりませんけど』

 

 泰葉は彼の手練手管について、それなりに信頼していた。

 

(無理やりイカせるって性癖のくせに……ある意味で相応に、お上手なんですよね……認めるの、しゃくですが……もしかして、元カノさんか誰かでいっぱい練習して……むしろプロデューサーさんの性癖ってそういう練習させられてるうちに……優しいふりしておいてひどいことするの似合うし……!)

 

 身を委ねるのがまんざらでもなかった。

 

 

 

※

 

「さて、稽古です」

「……稽古?」

「本読み、読み合わせときたら稽古です」

 

 泰葉の態度に、プロデューサーは面食らっているらしかった。

 

「レオタードもリボンもばっちりで、すっかり本番気分になっちゃったよ」

「本番のつもりでやるんですよ」

 

 2人ともオフの日をどうにか調整して――調整するあいだに泰葉はプロデューサーと話しあってさらに何度か台本に手を入れ――泰葉は彼の住むマンションの一室を訪れた。

 

「リボン、くるくる~っと……プロデューサーさん、どうですか? 前よりサマになってるでしょう」

「おおっ、誰かにレッスンつけてもらったんだ」

 

 泰葉が握るステッキに操られた淡いピンクのリボンが、巻き貝のような渦を形作る。彼の感嘆を聞いて気を良くしてしまいそうになり、必要以上に口元を引き締める。

 

「ご想像にお任せします」

 

 泰葉は、かつて仕事で着用したものとほとんど同じデザインのレオタードをプロデューサーに調達させ、いまそれをまとっている。

 レオタードは、メインカラーがパステルブルーで、デコルテ、胸元、スカートのすそに白い差しが入って、可憐さの中にスポーティーな印象を添えている。うなじと背中で留めるタイプで、遠くから見ると上半身は顔と手だけが露出しているように見えるが、近くにいるプロデューサー視点だと、泰葉が腕や肩を少し身じろぎさせるだけで鎖骨や首筋が透けてしまっているだろう。対してスカート部分はマイクロミニで、太ももが半分以上あらわになっている。それから白くみずみずしい素肌がすらりと伸びて、つま先だけ白いフィンガーソックスで覆って足の甲と足首で留めている。

 

「これまでやってきて思ったんですけど、セックスと殺陣って似ている気がします」

「タテって、あの時代劇とかで刀とか持ってやるあれかな」

「アドリブの幅が狭いんです、物理的に……一挙手一投足半呼吸ズレたら台無し、下手すればケガも」

「そんなに追いこまれてくれるつもりなんだ」

「追いこんでくれないんですか?」

 

 泰葉は、セックスと殺陣を演じるときもっと似ていると思っている点を、プロデューサーに伏せた。

 

(受けに見えるほうの誘導が、重要なんです……殺陣なら斬られ役が、今回なら……きっと、私が)

 

 自分で模造刀を振り回したことはないが、殺陣を共演者として見学したことなら何度もある。

 

(殺陣は、斬られ役が斬り役を誘導しています。長丁場の殺陣だと斬り役がとっさに動きを忘れがちで……斬り役はたいがい主役級で、ほかの場面の負担も重いから……斬られ役が「次はこっち」とか「ここ斬ってください」とか、さりげなくジェスチャーで教えたり……)

 

 プロデューサーから凌辱されるふりをしつつ「ここをいじって気持ちよくしてください」などとさり気なく教えてやるのか、と考える。レオタードの内側が早くもウズウズと落ち着かなくなる。

 

「プロデューサーさんは、お偉いさんらしい格好をお召しに?」

「ダブルでも着たほうがいいかなぁ、おじさんくさいイメージだけど」

「プロデューサーさんは私の……この子のコーチ役でしょう、それで問題もみ消してやる代わりにこの子の体を」

「よく知らないけど、もうちょっと動きやすい格好のほうがコーチらしいか……いっそ泰葉だけ着てて俺はハナから脱いじゃってるとか」

「……まぁ、いいですけど」

 

 プロデューサーが部屋着を脱いで部屋の端に畳んでいく。あらわになった肩や胸板にウズウズをあおられ、泰葉は八つ当たりのようににらみつける。

 

「怖い目だ。ふだんかわいいから、びっくりする」

「怖い目にあわされる役は、私なんですが」

 

 彼は下着1枚の姿になって、レオタードをしっかり着込んだ泰葉の姿を検分するようにゆったりと歩く。自分が着衣のままだと彼がマヌケに感じられる。早くも勃起しかけているようにふくらんでいる下着さえ、笑いを誘ってくる。

 

「怖い目、か」

「……男の人は知りませんけど、女の人にとって……無理やりイカされるって、本当に怖いんです」

「泰葉先生の講義、聞いておきたいな」

「だって……自分の体なのに、あなたに乱暴されて、うれしがって……私の心を、私の体が裏切って、否定してるみたいで」

「こんな感じかな」

 

 泰葉のお尻がいきなりむんずとつかまれる。

 

「は、ぁ、おっ」

 

 言葉も出ない。ウズウズが急に増幅され神経も肉も血も、彼からの刺激になびいていく――(ま、まだ、だめっ……)――立ち姿の真横から手を伸ばしてきた彼の顔をにらもうとする。首をもたげて見上げるだけで、歯を食いしばらなければならないほど意識を持っていかれていた。

 

「やっぱり怖い目だ」

「っく……だ、だめ……っ!」

 

 指が尻肉に食い込まされる。まるでパンでもこねるように無造作に動く。無慈悲な彼の指を味わった記憶が勝手に浮かび上がる。ただ所有権を誇示するためだけとでも言わんばかりの指の曲げ伸ばしが、いっそう引き立つ。

 

「……泰葉」

 

 彼の手が去ってしまう。被虐を恋しがるように、余韻がじわりと熱っぽく湿っぽく広がって、泰葉の肌と空気のあいだでわだかまっている。

 振り払うように、理屈をこねる。

 

「たぶん、ですね……新体操をやってる子は、役者やアイドルをやってる子と同じぐらい……嫌がります」

「無理やりイカされるのが? みんな嫌がるけど、特に、って意味か」

「どれも……自分の体を思い通りに動かして、思い通りに見せて、魅せて……それでナンボって商売ですから」

 

 理屈の次はおどけて見せる。大したことありませんでした、まだまだ余裕ですよ、と声音に乗せる。

 

「怖くなっちゃったよ、泰葉がメチャクチャ嫌そうで」

「でも興奮してるでしょう」

 

 股間のテントをさっきよりふくらませているプロデューサーを、泰葉は本心より大げさにせせら笑う。

 

「やるからには、私にしっかりついてきてくださいね」

 

 先輩風を吹かせるのが癖になっちゃったらどうしよう、と内心でも笑った。

 

 

 

「っ……っっうぅー……ぅ……! コーチ、この調子じゃ……時間切れなんて、あっというま、ですよ……っ……」

「そのほうがキミにとってけっこうな話だろう」

 

 レオタードごしの肌を、プロデューサーもとい“コーチ”にまさぐらせる。どう触れば趣向どおりに進めるか、どのぐらい示唆してやればいいのか、泰葉も手探りで反応してやる。

 

(セーフワードが“プロデューサー”って……そう口走った瞬間どんなに役に入り込んでても中断できそうですけど……まだ余裕ってときうっかり言わないよう気をつけなきゃ)

 

 ハードな快楽責めをする準備として、どうしてもだめなとき――演技ではなく、本気で限界だ――を知らせる合図、すなわちセーフワードを決めておいた。しかしいまのところ、泰葉はハードどころか、じれったさが表に出そうなのをがまんしている。

 

(こんなんじゃ、私が自分で触るより……)

 

 新体操の仕草は、ふつう手足を優雅に伸びやかに見せる。当初それらしく泰葉は動こうとしたが、彼の手と意図せずぶつかり合って失敗した殺陣のようになってしまった。いまは静止しながら彼の愛撫に身をさらしている。

 

(動いていないと新体操っぽさが……これじゃ見た目ヨガですよ、設定変えたほうがいいかも)

 

 ベッドでうつ伏せの状態から手を突いて上体を起こすポーズをとりながら、泰葉は台本の修正を考える――(なんでしたっけ、このポーズ……アザラシだったか、スフィンクスだったか)――彼が彼女の首筋からデコルテ、背筋の中心、脇腹など、皮膚の薄いところを指先だけで軽くさすっている。

 

「ぇ……んっ、ふっ、う……」

「まだ硬いね、もっと体がほぐれてもらわないと」

「……準備運動のつもりですか」

 

 彼の愛撫がじれったいのは台本どおりである。コーチが泰葉の弱点を探るため広く薄く探って回っている。さっきお尻をむんずとつかんできたのとは大違いだが、シーンの狙いは似ている。泰葉の体が物理的に彼の思うがまま、という趣向をお互いに刷りこむためのシーンである。

 

(この演技はできてる、って認めてあげます……私の弱点なんて、知ってるのに、知らんぷり)

 

 泰葉の体は、彼の手から与えられるごく微細な、気持ちいいとも気持ち悪いとも言えないはずの刺激から、快楽を得ようむずついている。神経が勝手に背伸びをしていると錯覚する。

 

「んっ……んぅ……!」

 

 あごと頬に手を回される。キスを迫られる。とっさの“ように”首を振って逃れる。

 

(プロデューサーさんって、ファーストキスどんなだったんだろ)

 

 彼がもうキスを迫らず、人差し指と中指で泰葉のくちびるを軽く撫でてくる。

 止める必要もない息を止めてしまう。

 

「キミはクールだね、呼吸まで止められてると、お人形さんを相手してるみたい」

「……人形みたいに言いなりにできる相手じゃなきゃ、だめなんですか」

 

 レオタードのスカートをつままれ、ぴらぴらとめくられる。びくん、と内ももや恥丘が反応しそうになって、すんでのところで押し殺す。

 

(……プロデューサーさんが子どもっぽいんです、こんな……人形遊びっていうか、おままごとみたいなえっちを、私に……)

 

 レオタードと太ももの境目のローレグを、彼の指先がなぞって何度も往復する。肌がほんの少しだけ火照っている。薄布に包まれた側と火照りがさらされている側と触り比べて熱を測っているのか、とあえて理屈っぽく彼の意図を想像する。

 

「ん、っ……私、そんな、触り甲斐のある体じゃ……あっ……」

「そう思うのなら、僕がキミのためにもっとがんばりたくなるように、キミにもがんばってもらえるね」

 

 触れられている、とかろうじてわかる程度のかすかな愛撫で、ぞくりとしたものがお尻から爪先や胸に染みていく。なんとも履き慣れない感触のフィンガーソックスを、八つ当たりのようにくしゃりと歪ませてしまう。

 

「縛るよ」

 

 彼の手が肌を離れてリボンをいじりはじめる。喪失感のようなもの――(これでせいせいしてるんですっ)――彼女自身に言い聞かせる。

 

「んっ……」

 

 縛る、と彼から聞かされたが、もとより束縛の道具でないリボンでは長さが不足する。彼はその長さを泰葉の腋や脇腹に回して、食い込ませるだけで使い切る。泰葉のレオタードに包まれたままの乳房をくくりだして、ふくらみを強調するよう結んでいる。

 

「かわいいよ、泰葉」

 

 この“新体操をやってる子”の呼び名に“泰葉”を使わせてしまったことを一瞬悔やむ。

 

「……色っぽくなくて、すみませんね」

「そうかな」

 

 形と締めつけ具合を確かめるように、彼が指と手のひらを使って泰葉の胸のふもとから触れていく。リボンでくくりだされて、緊張しないはずの脂肪までぴくりと反応する。

 

「ふぅっ……んっ……んっ……!」

 

 彼の手がもう一度リボンの縛り具合を見て、もう少しギリギリときつく締めなおす。切なくなってノドが煮えきらない声を鳴らす。

 

(ぜったい……おっぱいの、先、狙って……プロデューサーさんの手つきが、そう、言ってる)

 

 彼の指使いを待って、レオタードの内側で乳首がうずいている。指先で触れてもらえる期待感に心臓がはやる。彼が示して泰葉が修正した台本どおり、これから触れられるのはわかっている。けれど、触れてくれなかったらどうしよう、と背筋が震える。

 

「んっ、うっあっ……! あっ、おっ……!」

 

 泰葉は驚愕して、すんでのところで素に戻りかける。彼の指先で乳首をつままれ、すりすりとこすられ、そんな軽い刺激に不釣り合いな勢いの快楽が奔る。嬌声をあわてて押し殺す。かえって濃厚な快楽を吐露してしまった気がする。

 

「敏感そうだね、泰葉ちゃんのおっぱいって」

「……んっ……そう私が認めたとして、あなた、手加減してくれるどころか……ふっ、くふ……っ……」

 

 泰葉は自分の油断を痛感する。

 

(布越し……といっても……裏地が、けっこう……そうだ、この衣装プロデューサーさんに用意してもらって……)

 

 愛撫はふつう着衣越しより直に触れられたほうが強く感じさせられる。けれど摩擦する愛撫の場合はその限りではない。デリケートな部分を保護する布地でもたいてい人肌より表面が粗く、摩擦されたときの刺激がむしろ強く濃くなる。

 

「ふぅっ、んうぅぅっ……くぅ、んっ……っ!」

「ほら、ポーズ崩さないで」

 

 今までと違うはっきりした性感を、どうにか意識から追い出そうとする。こんなものなんでもない、と意地を張る。レオタードごしに完全に探り当てられた、と察してしまうほど乳首をしつこくすりすりと捉えられる。彼から見て、泰葉はコーチの指使いで気持ちよくなっているが耐えている、という演技になっているだろうか。

 もう意地が快楽によって追い出されかける。かわいくない表情になってしまうほど歯を食いしばる。

 

(前に……耳年増な子が言ってたっけ……「男からナマのほうが気持ちいいから、って言われてもゴムを外しちゃだめだよ」とか……「そもそも0.02ミリゴムでぴっちりしてて着けてるかどうか感触でそうそうわかるようなもんじゃない」とか……)

 

 泰葉はかつて聞かされた与太話を思い出す。気をそらすつもりで、そらしきれていない。

 

(……それ、気分の問題かも、ね……直かどうか、気分が違う……私が、道具で無理やりはいや、みたいな……)

 

 彼の手が、リボンでくくりだされた乳房の付け根に軽く指を立てて、むっちりした肉をぷにっと押しこんでは離す。彼が吐息を殺そうとしているつもりなのに、泰葉の髪にかすかにかかるのを感じる。

 

(……冷静なふりは、失格ですね……こんな私なんかに、夢中になっちゃって)

 

 泰葉は自分の体つきにちょっとした劣等感を抱いている。泰葉の身長155センチ、スリーサイズが79-55-80という数値は、バランスが良くて妙な特徴を持たず役者には向いている。しかしアイドルとしては心もとない。

 

(あーもぅ……なんで私、この人の口車に乗ってアイドルに……後悔はしてないけど……こんな性癖だって知ってたら、ぜったい無視して――)

 

 泰葉の思考がノイズに襲われる。

 

「あっ、ひっ……!」

 

 彼の指先が、いきなり泰葉の乳首まで戻って、小刻みな動きで弄ぶ。押し殺されかけた性感を揺り起こそうとする。

 その快楽に、泰葉が演技を続けて抗う。

 

(こんな……布越しで、ちょっとこすられただけで、こんなに、私……)

 

 触覚と別に、指と布がこすれるわずかな音が、泰葉の耳から脳裏をくすぐる。くすぐられるところを目で追ってしまう。彼のごつごつした指先が敏感なところを念入りにさすっている。

 

「ん、うぅぅ……コーチ、あなた、は……!」

「ぷっくりしてきたの、布ごしでもわかるようになってきたね」

「……そんな繊細な指先には、見えな……ぁ、あふぁ!?」

 

 スカートに隠れている太もものあいだをこっそりもぞつかせる。

 

「少し乱暴にしてあげよう」

 

 彼の手が、泰葉のレオタードの下腹部をつまんで引き延ばす。もぞつかせたところに食いこまされ、不意打ちの刺激を食らう。びくん、とはっきり腰を震わせてしまう。

 

(ちょっとプロデューサーさんっ……! 衣装、そんな、乱暴、に……!)

 

 彼をこっそり罵ることで、自分がまだ冷静だと言い聞かせる。

 

「……そ、そこっ……んっ、んくっ……!」

「ここ、触られたくないの?」

「あなたには……どこだって、触られたく、なんか……だめ、だめですっ……! や、やらぁっ……!」

 

 リボンでくくりだされた乳房の根元を、いらつくほど軽い力でつままれる。つんと硬くなった乳首を、彼の指がこすっては離す。さらに残りの手が太もものあいだをくすぐる。肌がいっそう火照って汗がじんわりにじむ。

 泰葉のまとうレオタードは水色と白で、もし体液で濡れたらすぐに色がわかってしまう。

 

(台本にあるとはいえ……怒っちゃうかも、私……だって……その……)

 

 まだイカされていない泰葉だが、台本のイッたことを認めさせられるくだりのことを心配する。泰葉がそこで失禁させられ……体がもう屈服している、ウソをついていたんだな……などとなじられ、耐えきれず絶頂を認めてしまう流れとなっている。

 演技で失禁することは困難なので、泰葉はあらかじめ多めに水分を摂取していた。その尿意が台本よりかなり先に現れてしまっている。

 

「あっ、ゃ、あ、んんっ……ひぁ……!」

「かわいい声だね、泰葉」

 

 彼の愛撫はまだじれったい。尿意を察しているのかどうかわからない。

 

「ひ、ぅ、ぁ……ふぇ、ぁ、あふぁ……っ」

 

 泰葉の肌が波打って乱れさせられる。すっかりしこりたった乳首を優しげに、しかし逃げようとしても振り切れないほどしつこくこすられる。それと同時に、内もものレオタードと下着をずらして入りこんだ指が、付け根のきわどいところをくすぐる――(こっちはもう直に触るんですか……なにそれ、もうっ……!)――愛撫されている少し奥が、待ちこがれるようにきゅんと悶える。彼の指先がじれったいのに、体がますます興奮する。下着が吸いきれなくなったものが、内ももをつたい始める。

 

「濡れちゃってる?」

「それ……そんな、こと……ただの、生理反応で……」

 

 やっとじらしから強制絶頂に進んでくれそうだ、というセリフ。聞いてとっさに安堵する。一拍遅れて、安堵を自覚してしまう。まったく演技と無関係に、彼から逃げ出すように顔を背ける。

 

(……お、おもらし、させてもらえる、って……それで、ちょっとホッとして……女の子として大事なところ、だめにされちゃった気がする……!)

 

 強制絶頂なり失禁なりまでなら、泰葉は台本をチェックしてプロデューサーと話し合った時点で――(納得は、してない、けど……)――覚悟していた。

 

(台本の子が……ここで、あぁ台本どおりだからおもらししてもだいじょうぶだ、なんて……思ってるわけないじゃない……っ!)

 

 内もものきわどいところをこすられる。ぴりぴりと尾を引く快楽が、波のように押して引いてと襲ってくる。波しぶきを打ちつけられるたび下腹部がますます切なくなる。彼の指使いはゆったりとしていながら、性感を的確に捉えてくる。

 

(台本どおりってわかってても、ちょっとムカつくなぁ……!)

 

 泰葉は自分が怒りと喘ぎ声とどちらを噛み殺しているのやら、という気分になる――(どんなに優しげな手つきや言葉でも、どんなにドキドキさせられても……この人は、私をオモチャにしてもてあそんで楽しんでる、最低の……)――怒りや悔しさを、自分の心に鞭打ってかき立てる。

 

「は、ひっ、あう、んっ……えう、んんっ……!」

「反応、よくなってきたね」

 

 かき立てるほどに――(オモチャにされるの、楽しんでるよね?)――という自分の意識の陰がくっきりしてくる。

 役者としての岡崎泰葉は、例えばホラー映画に出演したときなら、怖かったときの記憶を呼び起こして心や体を通してカメラやマイクに訴えかける。演技とは第一にその訴えかける技術である。

 いっぽう、そうしている自分から距離をとった意識も保つように――(距離をとらない演技だと手っ取り早く感情こめられるけど、消耗がきつくて……端役ならともかく、出番の多いメインキャストやってたら、もたない)――そう教えられ、実践してきた。

 

「く、う……んっ、ほぉっ……そんな、だ、ぇ……ひぐっ、んんっ……!」

 

 じわり、と自分の表面張力が決壊する予感を味わう。いじられているのは肉体のほんのごく一部なのに、頭やお腹の奥から快楽が燃え上がって、その熱にじわじわと全身が呑まれていく。

 

(手が、イカせにかかって……イッただろ、って問い詰めるの忘れてませんかっ!? 自分で書いたセリフでしょうが……!)

 

 凌辱者から「感じてるね」だの「イッたでしょ」だの癇に障る物言いをされれば、心が勝手に反発してくれる。それでがまんできる――(プロデューサーさん、忘れず言ってくださいって……!)――おかしな期待をしている、と気づく余裕は失っていた。

 

「ンああぁああ……っ!? あ、ぅ、あぁ、や、ぁああぁっ……!」

 

 もう腰がへこへこと浮き沈みして、べっとり発情した愛液の染みがレオタードに広がってしまっている。濡れると粘膜と布地がぺったり張りつく。愛撫でもたらされる摩擦の刺激がますますきつくなる。

 

「あっ……んっ、ほぉっ……ひぐっ、い、ゃ……も、ぉ……!」

「閉じちゃだめだって、もう」

 

 暴力的な快感に、演技より早く反射で太ももを閉じる。けれどいくら閉じても隙間から彼の指が侵入する。手が男の腕力で強引に退けられる。ベッドの上でのたうち回るうちに、あいだに膝を入れられ閉じられなくなる。それだけでもう理性が霞む。くすぶった性感がその先を期待してしまう。激しい愛撫ではないはずなのに、心にも体にも抗いがたい強制力を感じる。

 

「くっひ、ひ、おぉっ……ぁ、っく、う、ぅ……や、やめっ……!」

「いやだよ」

「……あ、あっ、あ、だ、めぇっ、来るっ、わたし、ぃ……!」

 

 レオタードにできた染みをまさぐられ、クリトリスをきゅっとつままれる。鋭い快感がびりっ、と体内を駆けめぐり、全身がおののく。呼吸さえままならないうちにまた下腹部から心地よさが沸き上がる。視界に光の粒子がちらつく。

 

(……い、イッて、なんて、わた、し……っ……!)

 

 口から漏れかけた絶頂の言葉を、手でとっさに押さえつけるのがせいいっぱいだった。ぴちゃ、びちゃ、とはしたない液がこぼれる。やがて彼の手も濡らしながらぽたぽたと垂れ流されて水たまりを広げていく。

 

「……泰葉」

 

 彼の呼びかけを聞いても答えられない。膣肉が貪欲に彼の指にまとわりついて、いやらしくひくついて、もっとしてほしくて、そんなときに言うセリフが見つからない。

 

(レオタード、濡れて、ぺたぺた、気持ち悪い……早く脱がせてほしい……でも脱がされたら、入れられちゃうなぁ……早すぎます……?)

 

 指先だけの彼に支配されているのを自覚させられる。もう一度、「泰葉」というつぶやきが聞こえた気がする。彼の顔を見る。のしかかられて、彼の後頭部や肩でシーリングライトの光が遮られている。まぁ興奮はしているんでしょう、と彼の呼吸の気配で察する。

 

「脚、広げて」

「……広げさせればいいでしょう」

「新体操の演技やってるときみたいに」

 

 泰葉は絶頂冷めやらぬ下半身で、よろよろと緩慢な動きで、どうにか限界まで開脚する――(さすがに穂乃香ちゃんみたいなのはムリです……)――ぎりぎりまで引っぱられ張り詰めた太ももの腱と筋肉の溝をそっとなぞられる。

 

「こんなときにイッちゃったら、攣っちゃわないか心配になるね」

「素か演技か迷うアドリブ、しないでください」

 

 レオタードをずらされ、湯気が出そうなほど愛液と熱のこもった秘所がさらされる。アンモニアの匂いが鼻まで届いて、ついに涙をこぼしてしまう。

 

「泣くほどだった?」

「……コーチ、知ってます? 私、泣いてみせるの、得意なんですよ」

 

 彼の指が一瞬ためらったあと、泰葉の膣肉に浅くもぐりこむ。くちゅり、と粘ついた水音を立てる。

 

(や、だ……だめ、これ、すぐ、イッちゃ、あっ……!)

 

 もう一つの意識が危機感を覚えるほどあっさり高められる。膣肉がむしゃぶりつくのを止められない。応じてか、彼がこんどは指を2本まとめて膣肉に埋めてくる。ぐちゅぐちゅとわざとらしく音を立ててかき回す。

 

「あぅ……んっ! ぁ……ああっ! ひ、ぃ……」

 

 快楽に呼吸中枢まで冒されてしまったか、浅い息しか吸えなくて、おとがいを反らせながら酸素を求める。限界ぎりぎりまで股を開かされたまま、両脚ががくがく痙攣しはじめる。

 

「イッちゃいそう?」

「い、ゃ……ちが、こんな、の……ぉ……!」

 

 簡単に昇り詰めてしまっている。台本では男性が書いたものらしく、イッた、とかイッてない、とか、絶頂が一瞬だけ垣間見える境地として扱われている。

 

(……それが、男の人の……かも、しれない、けど……)

 

 じわじわと体内にたまっていく快感が、もう絶頂の水位を超えている気がする。もう何をされても気持ちよくなってしまう。指の動きが、泰葉が絶頂に追いやるように急かす。ぐちゅ、ぐちゃ、と乱暴に膣肉をこすられる。

 

(なんだか……怖いぐらい、なんです……どんなひどいことされても、よろこんじゃうような……イクっていうか、イッちゃってるっていうか、そういう、の)

 

 イッちゃだめ、とくちびるでどうにか言い聞かせて演じる。彼に何がどこまで伝わっているかどうかうかがう余裕はない。

 

「おまんこ、よく反応してくれるね……泰葉ちゃん、こういう経験あるんだ?」

「……誰の、せいだと、思っ……んふぁあっ、と、とめ……ぃ、や……っ!」

 

 泰葉の膣内をぴらぴらと開いて、クリトリスを撫でてくる。必死の拒絶を、指先一つでかき乱される。ひくり、ひくりと膣奥までうごめいて、まだ遠いペニスをはしたなくねだってしまう。

 

(こんな、の……ほんとに……! だめ、おかしく、なる……)

 

「……僕も、興奮してきちゃうね」

 

 そう聞き取ってしまって、彼の指で触れえないところまで高ぶってしまう。声を抑えるのがせいいっぱいで全身がぴくぴくとわなないてしまう。

 

(は、はやく……イッたでしょ、とか、なんとか、問い詰める流れに、早く……!)

 

 しかし泰葉の意識の半分が、まだ演技にこだわっている。演技でなければ、音を上げるか腹を立てるか、とっくに終わってしまっている。

 

「あひっ……んぉっ♥ ひぅっ、あぅうっ♥」

 

 彼が指でクリトリスを巧みに責め立て、泰葉を追い詰めていく――(私を、こんなに気持ちよくさせちゃって……そっちばっかり……台本どこへ行ったんですか……!)――快楽も憤懣もごっちゃになって脳裏に泡立ってまとわりつく。

 

(私が強情を張れなくなって……降参して、イカせてくださいって頼み始めて……まさか、そうなったら萎えちゃわないですよね……そこまで性癖こじれてませんよね……?)

 

 快楽をこらえながら、泰葉の妄想がふらふらさまよう。愛撫によってとうに絶頂まで導かれぐすぐずに潤った膣内から、また一筋どろりと愛液が垂れ落ちる。

 

「だいぶ濡れてきたし、もっと深いところまで入れてみようか」

「お、おく……ぅ、ぅう……そんな、の……はぅ、ほぁっ、はぁっ……あああっ!」

 

 泰葉が膣奥を小突かれる。もっと固く長く太いものを知っているのに、中指と薬指でもう息が止まりそうなほど気持ちいい。さらに、親指かどこかでだましうちのようにクリトリスまでくにくにといじられる。

 

「あああうっあ゙っ! あひぃっ、んぐぅっ……♥」

 

 泰葉の意識から、何かがじゅっ、と蒸発するような泡が弾けてやまない。だらしなくあえいで口をぱくつかせ、頭を左右に振っている自分が演技しているのかすっかりイッているのかも曖昧になる。強すぎる快楽が怖くなって手足をバタつかせる。

 びりり、という音と、股間へ妙にすぅすぅとした解放感がいきなりやってきて気づく。

 

(……あ、ちょ、レオタード、もしかして、破け……ぷ、プロデューサーさんっ、ま、待って)

 

 泰葉の制止は言葉にならず、あいかわらず続く指マンで、嬌声とよだれと一緒に混ざってこぼれる。それから急に彼の指が抜かれる。安堵とも失望ともつかないため息をついていると、彼が枕元のうすっぺらい小箱をまさぐっているのが見える。

 

(あ……うぅう……おちん、ちん……)

 

 泰葉はそれを知っている。何度もそれで絶頂させられて、この朦朧としたときにも思い出せるほど記憶に焼き付けられてしまっている。

 

(なんですか、もぅ……勝手、ばっかり……私にはいじらせてくれないまま、おっきくして……)

 

 泰葉の体が、演技を忘れて彼を誘う。はしたなく太ももを開いて、膣肉をひくつかせる。手さえ痴態を見せつけるように添えている。

 

「何、やってるんです……わた、し、まだ……認めて、ません、から……イカされた、なん、て……♥」

「もう何回かイッてるでしょ……認めてないだけで」

「イッてませんったら……私が、ウソ、ついてるって、言いたいんです……?」

 

 言葉と裏腹に、泰葉は腰を浮かせて彼を挑発してしまう。自分で呆れるほど露骨に、じっとりと、彼の勃起しきったペニスへ視線を絡みつかせる。コンドームを着けたペニスは、むき出しに比べるとよそよそしく見える。さっき彼女自身が布越しにひどくじれったく責められた感覚を投影してしまう。

 

(こんなふざけたお芝居に付きあっちゃうぐらい、私……いっそ、プロデューサーをもっとふざけたヘンタイにしちゃえば……)

 

 彼のペニスがこちらの膣内に押し入ってきたとして、自分と同じぐらい悩ましく悶えてしまえ、と淫らな呪詛を視線に乗せて投げつける。

 彼が彼女の両ヒザに手をかけてくる。ぎらついた目つきは彼女をのけぞらせるほど熱っぽい。

 

「私、あなたにまだイカされて……ないのにっ……ウソつきっ、最低っ……あなたなんか……ぁ、あっ、ぉ……♥」

 

 ペニスをあてがわれ、亀頭の傘だけ膣口を押し開き、中にもぐりこむ。泰葉の意識が早くもチカチカ白飛びする。

 

「泰葉は……イッてないんだ?」

「イッて、なんて……そ、の……ぉ……っ、お、ねが……とめぇ……えああっ!」

 

 ぐりゅ、とペニスが半ばまで押しこまれる。泰葉がはっきりと腟内絶頂を迎えさせられているうちに、こんどは彼の手が泰葉の指先から前腕、ヒジと順に撫でる。二の腕から横にずれて、引き絞られたままの乳房をつつく。

 

「イッてないんだ?」

「い、イッて、な……んひぃっ!? な……ど、どうじ、なんて、ずる……ほっ、おぉぉぉぉっ……♥」

 

 泰葉は、彼の身動きを感じ取ったところがすべて絶頂の火種を宿すのを感じる。またレオタードごしに、乳房の付け根から乳輪までなぞられて、泣きたくなるほど胸に甘い絶頂を刻まれる。腟内まで反応してペニスを締めつけて、さっきを上回る二重絶頂に苦しみまで覚える。

 

(あ、あ……♥ だめ、とまら、なっ)

 

 ぷしゅ、と放尿のような勢いで愛液があふれる。彼の下腹部とのあいだでびちゃびちゃと生暖かく広がる。泰葉にとっても不意の痴態で、いままでどこかに張られていた糸がぷつんと切れる。

 

「う、ぉ……!? すごいな、泰葉の中……こうしてるだけで、出してしまいそう……」

「……さ、い……」

「泰葉……?」

「……もう、ひとおもい、に……わたし、イキました、から……う、うごい、て……っ」

 

 泰葉が快楽と屈辱で顔を歪める。その表情を手で隠しながらつぶやく。

 

(……こんなのに付きあってくれる人が、います? 私の、ほかに……ふふ、ぁは、あはっ)

 

 泰葉の中で絶頂以上の何かが弾けて、彼の侵入を一際奥深くまで迎え入れていった。

 

 

 

「は……ぁ、うっ! あぅ、あ、あっ……!! ぷ、ぷろでゅ……ごめんなさい、わ、わた、し……とまら、な、ぁ……」

「……止めてほしい、って意味じゃなさそうだね」

「だって……が、がまんの、限界、だったの……止めたら、ぜったい、許さな……だ、めっ、そこ、あたる、ダメな、ところ、キて……ほぉおぉおぉっ……♥」

 

 泰葉は正常位で押し倒されながら、反撃のように彼の肩には腕を、彼の腰には足を絡めてぎゅうぎゅうと力いっぱいすがりつく。その間も幾度と無く膣内絶頂を重ねてしまう。

 

(あ、あっ……また、イッたぁ……♥ これ、すご、い……!)

 

 彼のペニスが膣奥を小突くたびに、その形をしっかりと感じてしまう。膣ヒダをごりゅごりゅっ、とこそぎながら抜け出ていく。すぐに奥底まで突いて戻ってくる。そのたびに泰葉は深く重い快楽を刻まれる。

 

「だ、ダメだって、わかってるんです、こんな、の……ぷろでゅーさーさんに、され、たらっ」

「俺は……泰葉に愛されてるみたいで、むしろうれしい」

「愛して、なんて……ただ……こんな、ぎゅって、されたら……ぁ、あっ♥ だ、ぇっ♥」

「俺はもう演技どころじゃないんだが……泰葉は……」

「……ちょっと会えないだけで、寂しくなって……こんなおかしなこと付きあっちゃうぐらい、私が……」

 

 泰葉はプロデューサーの首元に顔を押しつけて離れようとしない。限界まで彼に近づきたいのか、泣きじゃくってくしゃくしゃの顔を彼の視界から隠そうとしているのか。

 

「ずっと……こうしていられるわけないのに、してたくなるとか……ぎゅってしてもらうだけで言いなりの女の子になっちゃいそう、とかっ……♥」

 

 もっとしてもらいたい。

 そう願っているうちは、そう見透かされてしまえば、どんなふざけた趣向でも――(むしろふざけているほど……!?)――気持ちよくさせてもらえてしまう。

 

「ぅ……♥ ぅ…んぁ……♥」

「つまり気持ちよくなっちゃってるわけか、泰葉は」

「き、きらいですっ、こんなのっ♥ 私は、あ、あっ……ん゙ぁ゙ひっ♥」

 

 頭や背筋が熱くなったり冷えたり忙しくて、自分がひび割れて壊れているのでは、と思う。

 

「だめだめ、だめっ……やめて、むり、むり、だか、ぁ……お゙っ、ほっ、ん゙っ♥」

「う、ぉ……やっぱりダメかぁ……こんなに締めつけてるのに……」

 

 彼は泰葉の腰や背中、肩などに手を回して愛撫しながら、ゆっくりとしたピストンで責めてくる。手加減というより、確実に、くまなく責めて絶頂に至らせる、という意思を感じさせる。

 

「ん゙ぉ゙……♥ ぎゃっ、あっ、こぇ、ほんと、おく、ぁ……お゙っほ♥ お゙っイ゙ぐっイ゙ぐっ……ぅ……っ……」

 

 泰葉は胴体を「く」の字に折り曲げたり、逆にエビ反りのように跳ねさせたりしている。ただ、手足が彼の肩や腰に絡みついたままで、胴体の動きが激しくも不可解な痙攣と化している。ピストンから逃げようとしているのか真逆にねだっているのか、どうとでもとれる前衛芸術の舞踊のようになってしまっている。

 

(あ……ぁ……イきすぎてるっ……ずっとイくの、止まらないっ……!)

 

 ぶじゅ、ぶじょ、という激しい水音がうるさいほど響く。すっかり膣を濡らされペニスを入れられたままメチャクチャに動いているせいで、結合部で空気と愛液が混ざって粘膜や皮膚でこすられ、泡立ってしまっている。その泡が弾けるだけで、泰葉の意識に白い花火が上がる。

 

(あ……ぁ……♥ もぅ、もうっ、イってる、こと、しか)

 

 また彼が腰を浮かせてピストンの動作に移ろうとすると、泰葉は彼の背中に回した手をぎゅっと握って、いやいやと首を振る。

 

「ああ、泰葉」

 

 プロデューサーは彼女のそんなしぐさに少し驚いてから、ふっと笑ったらしい。

 愛液どころか涙もよだれもあふれるほど気持ちよくて、そんな自分に少し呆れる。

 そこまでは彼女の記憶に残っている。

 

「ちょ、ちょ、ほんとに、だめ、だめ……ぐひゅっ、ま、ぁっ……ほっ、ほぉっ……ぉ、ゔっゔっ……♥」

 

 泰葉の嬌声が、ひゅうひゅうと苦しげな呼吸に取って代わられてからも、彼女の腰がむさぼるように踊った。彼のペニスを果てさせてからもしばらくつづいた。

 

 

 

※

 

「存外、私が無理やりイカせる側でもイケそうですね」

「……そうかな」

「けっこうそうでしたよね、さっき」

 

 泰葉は回復してシャワーを浴びて着替えて、プロデューサーにあらかじめ冷蔵庫に用意させていたケーキの――子役のころからのお気に入りのお店である――その箱を開けて中身を皿に移した。

 テーブルまで運んで、ナイフとフォークで小さく切って、自分で味わったり、プロデューサーに強引に食べさせたりしていた。強制、という体裁の絶頂で消耗した体に、幸福そのもののようなふわふわとした甘さが沁みた。

 

「こんなの付きあってくれる人、私以外にいるんでしょうか」

「泰葉以外にはこんなの冗談でも無理だ」

 

 ちょっと深刻そうな表情になった彼の顔つきに、クリームとスポンジを刺しているフォークをまた差し伸べた。

 

「私だってこんなのだいっきらいですーっ」

 

 彼のくちびるの周りにケーキのクリームを塗りつけて、お行儀悪く汚した。

 

「リボンもレオタードもメチャクチャになっちゃいました。リハーサルどうしましょう」

「もう使えないよな、もったいない」

「でもメチャクチャにするぐらいが、本物らしいですよね」

「そうだけどさぁ」

 

 ケーキに舌鼓を打ち終えた。

 泰葉がプロデューサーの部屋を見回して、くちびるを尖らせた。

 

「刷っておいてくれてないんですか?」

「台本リテイクのお時間か」

「私があれ持ち歩いてここまで来ると思ってたんですか~っ!」

「プリンタが……コンビニで刷ってくる、ちょっと待っててくれ」

「ついでにゴム買ってきてください」

「……まだあるだろ」

「そっちは冗談です」

 

 2人の一日が“だいじょうぶ”から程遠い行為で過ぎていった。

 

(おしまい)

 


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