二十歳の頃~大学のマドンナ・新田美波に童貞卒業させてもらう、プロデューサー~ 作:電柱保管
原作:アイドルマスター
タグ:R-18 オリ主 アイドルマスターシンデレラガールズ 新田美波 JD 大学生 童貞 手コキ フェラチオ 潮吹き 男の潮吹き 正常位 後背位 騎乗位 中出し クンニ 生 ディープキス
※キャラ設定は基本的に原作準拠ですが、作劇の都合上、多少改変している部分もあります。
▼Xアカウント:https://x.com/denchuhokan
ゼミ室の片隅でノートパソコンの画面とにらめっこをしながら、イベント用に購入した備品の領収書のチェックをしていた時だった。
「あの、プロデューサーさん、ちょっと訊いていい……あっ」
鈴の音を転がすような声に画面から顔をあげると、長テーブルの向かいで、新田美波が、しまった、とでもいうように口元に手をあてていた。
「ごめんなさい……杉田君、だよね」
「あ、あはは、いいよ、別に!」
白魚のような指を薄い唇に重ねたまま、申し訳なさそうに俺をうかがう新田さん。そのしぐさがかわいすぎて、俺はぎこちない笑みを浮かべて応じるだけでもう精一杯だった。
「ほ、ほら。なんか、みんな、もう、プロデューサー、プロデューサー、呼んでるし」
「うん……、ごめんね」
よほど気にしているのか、新田さんはまだ気まずげな表情を浮かべている。
だが、その時、俺のほうはまったく別のものに意識を吸い寄せられていた。
……胸の谷間! 新田さん、襟が大きめに開いたブラウスをお召しになっているせいで、角度的に胸の谷間が俺のほうに若干コンニチハしちゃってるのだ。マシュマロみたいに柔らかそうな双丘が寄り合って引かれた、ほのかな縦線。知らず知らずのうちに、俺の目はあまりにも煽情的なその光景に釘付けになっていた。
「……君、杉田君?」
「は、はひぅ!」
俺は心配そうな新田さんの呼び声で我に返り、馬鹿みたいに裏返った声を出してしまった。あわてて彼女のほうを見る。やべえ……新田さん、若干引いてないか? 胸に見惚れてたのがバレてたら、俺の大学生活はここで終了する……。
「ご、ごめん……それで、なんだった?」
俺は必死の思いで表情を取り繕って尋ね返した。目はマグロかってくらい高速で泳いでいたし、パンツの中の愚息も反抗期真っ盛りだったが……。
「うん、ええとね、パフォーマンス中に流す曲のことなんだけど……」
俺のそんな悪戦苦闘に気づいていないのか、新田さんはわざわざテーブルを回り込んで、俺のほうへすこし身を寄せてきた。手に持った書類を一緒に覗く体勢をとりたいらしい。……ヤバいって。
肌こそ触れてはいないが、新田美波の肩まであと数センチ。この距離はヤバい。ブラウンに染めた長い髪を耳にかけるさりげないしぐさも刺激的。いろいろと説明をしてくれているが、下半身で息子がごねだしたせいで、内容はほとんど頭に入ってこない。鎮まれ、我が息子よ……。同級生も大勢いるゼミ室で新田美波に発情してたなんて知れたら、大学生活どころか人生まで終わりかねないぞ……。
「あ、ああ……、それなら、教務課でイベント用の放送機材を借りられるんじゃなかったかな? 窓口で申請書類をもらって、先生にハンコ押してもらって」
パンツの下の暴れん棒将軍としのぎを削りながら、俺は新田さんからの相談になんとか答えた。新田さんの顔も見ることができず、しかも若干の早口。我ながら、女の子に慣れていない童貞丸出しの所作である。
「そうなんだ。それじゃあ、後で書類を出しておくね。ありがとう、杉田君」
「あ、ああ、うん」
新田さんは書類を胸に抱えて一礼すると、テーブルの向かい側へ戻っていた。そこで別の作業をしていたのは、同じゼミに所属する、植野さんと吉岡さんだ。仲の良い二人と楽しげに話しはじめた新田さんに、俺はあらためて見惚れた。
植野さんや吉岡さんには申し訳ないけれど、やはり新田さんの麗しさは群を抜いている。
卵型の美しい輪郭に、腰まで伸びたロングヘアー。切れ長でやや垂れ目がちなアーモンドアイは、凛々しさと穏やかさを見事に両立させている。滑らかで透明感のある肌は、芸術家が精魂込めて作り上げた高級陶器のようだ。
そして男目線でぜひ強調しておきたいのは、彼女が誇る抜群のプロポーションである。公称によれば、身長は百六十五センチ。健康的に引き締まったスレンダー体型は、ラクロス部で日々、溌溂と汗を流している賜物だろう。もちろん、ただ細身というだけでなく、出るところはしっかりと出ているのだからたまらない。お淑やかなファッションの下に隠しきれない魅惑の胸の膨らみが、学内でどれだけの男を惑わせてきたことか。
昨年の入学式で彼女をはじめて見かけたときは、こんな美少女がなぜこんな田舎の地方公立大学に? と、本気で驚愕したものだ。実際、新田美波の噂は瞬く間に全学中に知れ渡り、昨秋の大学祭でおこなわれたミスコンでは圧倒的大差で優勝。誰もが認める器量の良さにくわえ、飾らない人柄で人望も厚く、スポーツ万能で学業成績も申し分ないとあれば、もはや他の追随を許さないのも当然だろう。言うまでもなく、俺も彼女にエロき……もとい清き一票を投じたうちのひとりである。
ことほどさように新田美波は本気で女神と呼ぶにふさわしい美少女であり、本来であれば俺のような童貞のダサ坊が近づける存在ではない。
ところが人生とはわからないもので、大学二年になったこの四月から、俺は新田美波と同じゼミに所属することになったのだ。このゼミは、論壇誌にもよく寄稿している、それなりに有名な教授が受け持つこともあり、ウチの学科でも結構な人気がある。当然、志望者も多く、入室にあたっては一年次の成績や教授との面接で選考がおこなわれるのだが、なんの奇跡なのか、俺はその選考に通ってしまったのだ。自虐じゃないが俺は特に成績優秀というわけでもなく、一年の時に受けた基礎ゼミの担当がその教授先生だったから、というだけの理由でここを志望したのだが……。
そんな事情もあり、四月の頭に新規入室者の顔合わせがあるまで、俺は新田美波と同じゼミに入った事実を本当に知らなかった。もちろん、新田さんが入るから、という理由でこのゼミを志望したわけでもない(そういう不純な動機を抱いた者が多数いたせいで、例年以上に志望者が殺到したという話は後から聞いた)。信じてもらえないかもしれないが、本当にそうなのだ。童貞は嘘をつかない。
それに、同じゼミに入ったからといって、童貞がすぐ新田美波とお近づきになれるほど、世の中は甘くない。そりゃあ新田さんは誰に対しても優しいから、授業で顔を合わせば挨拶くらいはしてくれる。けれど、接点といえば本当にその程度。前期に持ち回りでおこなわれたゼミ発表は別々の班で関わりもなかったし、ゼミの慰労会などでも、彼女はつねにカースト上位勢っぽい先輩や同級生に取り囲まれていて、とてもじゃないが俺なんかが話しかけられる雰囲気じゃなかった。
そんな俺が新田さんから「プロデューサー」などと呼ばれ、ほんのすこしだけ頼りにされるようになったのは、この秋におこなう、あるイベントのまとめ役を俺が仰せつかったからだった。
俺たちの通う大学では毎年十月頃に、来年度の入学希望者に向けたオープンキャンパスが実施される。事前に申し込んだ参加者を対象に、キャンパス案内や入試説明会、体験授業などが開催されるのだが、俺たちが所属する学科では、一連のツアーのあとに、おまけでちょっとした余興がつくのが恒例となっている。学科に所属する学生有志がオープンキャンパス参加者の前で芸を披露するのだ。まあ、いうなれば、ただ授業を受けてもらうだけでなく、学生たちと身近に交流してもらうことで、大学生活の雰囲気をより深く味わってもらおうという、学科側からの粋な計らいである。
さて、問題はその余興の実行役は誰か、だ。学生有志とはいったが、じつのところ俺たちが所属するゼミの二年生がイベントを担当することが毎年のお決まりとなっている。理由はごく単純で、この企画の発案者が誰あろう我がゼミの教授先生だからだ。入学希望者はもちろん、ゼミ生にとっても自分たちでイベントを企画し実行することを通して、授業だけでは身につかない有益な学びがある……とまあ、どこかの雑誌のインタビューでそんな高尚な教育理念を語っておられたそうだが、学生たちの出し物を毎年、誰よりも楽しみにしているのが教授自身らしいから、半分以上、自分の趣味なのでは……と思えなくもない。一歩間違えるとアカハラ案件なのだが、ゼミ入室者はこの件も承知の上で志望しているはずなので文句は言えまい、というのが、学科長も務める権力者たる我が教授先生の言い分である。
というわけで例年通り、新入りのゼミ生である俺たちが今年のイベントの実行役を仰せつかることとなった。夏季休暇に入る直前に皆で話し合い、大学側に提案したイベントの内容は、創作ダンスの披露。ちなみにゼミで取り扱っている研究テーマとイベント内容はいっさい関係がないが、公序良俗に反してさえいなければ別に関係なくてもいいとのこと。マジで教授の趣味だろ、これ……。とにもかくにも、俺たちの企画は無事、教授と事務方からの承認を受け、夏季休暇明けの九月から本格的に準備に取り掛かっている次第だ。
そして企画立案をおこなった初回の話し合いの場において、なぜか本イベント全体のとりまとめ役に祭り上げられたのが、俺なのである。理由は、今年のゼミ同期の中で俺だけが浪人組で、皆よりひとつ年上だったから。なんとも強引な抜擢だが、それからだ、俺がゼミの皆から「プロデューサー」などと呼ばれることになったのは。ダンスのイベントのまとめ役だからプロデューサーじゃん! などと、誰かがノリで言い出したのだ。以来、皆おもしろがって、俺のことを「杉田プロデューサー」「杉田P」などと呼びはじめ、いつのまにかそれが俺のあだ名のようになっていった。
もちろんプロデューサーなんて本当に名前だけで、楽曲のプレイリストや振り付け、出演者の立ち位置などを吟味し、ステージを華々しく演出! などの格好いい役割なんてあるわけがない。俺がやっていることといえば、作業場所の手配だったり、予算の管理だったりと、細々とした仕事ばかり。要するに雑用係である。ちなみに、就活の際のアピール材料にもなるであろう正規のゼミ長は別にいる。教授の趣味全開の余興イベントのまとめ役など、完全な貧乏くじに違いない。
それでもありがたいのは、ゼミ生が皆、イベントに協力的なことだ。俺が指示を出すまでもなく自主的に動いて準備を進めてくれていて、その点では苦労はない。いまも午後の講義の合間だというのに、ゼミ生全員がゼミ室に集まって衣装や小物の作成に当たってくれている。これもプロデューサーである俺の人望ゆえ……ではもちろんない。
ゼミの皆をまとめる求心力を発揮しているのは、俺ではなく、間違いなく新田さんだろう。
今回の創作ダンスのステージにおいて、新田さんはセンターで踊ってくれることが決まっている。昨年度の学内ミスコン優勝者なのだから満場一致での推薦だったのだが、本人も頑張ると言ってくれたのはありがたかった。しかも表舞台に立つだけでなく、ステージ準備にも率先して取り組んでくれていて、そうなると俺を含めたほかのゼミ生もやる気を出さないわけにはいかない。本当にリーダーシップがある人材というのは、たぶん彼女のような人を指して言うのだろう。俺みたいな、なんちゃってプロデューサーじゃなくてね。
「それじゃあ私、教務課に行ってくるね」
新田さんは植田さんと吉岡さんに断ると、かたわらに置いてあったスマホを手にして席を立った。さっき言っていた機材貸出の申請書類を取りにいくつもりだろう。
だが、雑用といえばプロデューサーの出番だ。
「あっ、それなら俺が──」
と、俺がとっさに代わりを申し出ようとした、その時だった。
「あ、美波ちゃん! どっか行くの? だったら俺も一緒に行くよ!」
すこし離れた場所で別の作業をしていた男子学生が、俺を遮って名乗りを上げ、新田さんに近づいた。ゼミの同期生で、山崎という男である。
「教務課? 学科のじゃなくて、全学のだよね? なにしに行くの?」
「うん、ちょっと、申請用の書類を取りに……」
「へえ、書類。じゃあ、早いほうがいいよね。行こっか」
「ありがとう、山崎君。でも、本当に書類を取りに行くだけだから、ひとりで大丈夫だよ」
「でも、ほら、この時間、窓口も混んでるかもしれないからさ。つーか、俺も教務課に用事あるし」
「え……、そう……なんだ」
山崎のしつこい誘いに、新田さんは困ったように目を泳がせた。
あの野郎……! 俺は憤りを覚えて山崎をにらんだ。
この山崎、男だてらにデザインパーマなどを頭に当て、服装も今風のこざっぱりとしたものを着こなした、なかなかのイケメンである。いかにもカースト上位勢といった雰囲気で、ゼミの慰労会で先輩にまじって新田さんにアタックを仕掛けていた強者のひとりだ。
山崎は普段からことあるごとに新田さんに話しかけており、彼女への下心を隠そうともしていない。もちろん誰が新田さんにアプローチしようと自由ではあるのだが、だからって自分の作業を放り出してまでつきまとおうとするのは、やりすぎじゃないのか? ここはいよいよプロデューサーの強権発動だ、とばかりに俺は山崎を注意しようと席を立った──のだが。
「ちょっと山崎!」
しまいには背中を手を置いて新田さんを強引に連れ出そうとする山崎を叱りつけたのは、俺とは全然違う、女子学生の声だった。植田さんである。
「美波がひとりでいいって言ってるんだから、ひとりで行かせてやりなよ」
「そうだよ」と横にいた吉岡さんも同調して、山崎をにらみつける。「ていうか、山崎君、小道具作り、全然進んでないじゃん。美波に構ってないで、そっちを先にやりなよ」
ふたりの主張はまったくもって正論だった。というか、あれ……? 俺が言うべきこと、全部言われちゃってないか……?
「ちょっ……全然ってことはないっしょ!」
女性二人からの非難を受け、山崎はわかりやすくうろたえた。デザインパーマの雰囲気イケメンのくせに、山崎は意外に気が小さいところがある。
「つーか、こういう書類関係とかは二人で行ったほうがマジでいいんだって……なあ、そうだよね、杉田P!」
狼狽した山崎が助けを求めたのは、あろうことか俺だった。
「えっ……?」
植田さんと吉岡さんの剣呑な視線が俺のほうへ移る。いやいやいや……。俺もいま、山崎を注意しようとしてたんだけど……。なんで俺まで山崎側みたいになってるの?
「杉田君……」
場に不穏な空気が流れはじめる中、とうとう新田さんまで俺に心配げなまなざしを向けてきた。こんな状況でもなけりゃ女神から見つめられて小躍りしたいところなのだが……。
「あー……ええと……そうだなあ……」
男の下心と女子の友情の板挟みになって、さて、どうしたものかと目を泳がせていると、壁にかかった時計がふと目に止まった。時刻は現在、午後四時過ぎ。……うむ、ここはひとつ、なにもかもうやむやにするってことで手を打とう。
「あっ、やべ!」俺はゼミ室にいる全員に聞こえるよう、わざとらしく声を張った。「そろそろ出ないと、次の経済学概論、間に合わなくないか?」
「えっ!」
いがみあっていた山崎と植田さんが俺の言葉に反応し、揃って時計を見上げた。たしか二人とも次のコマの講義を履修していたはずだ。俺も同じ講義をとっており、教室で毎回、二人の姿を見かけているから、間違いない。
選択必修科目のひとつである経済学概論を担当する教授は出席に厳しいことで有名で、講義室への入室がすこしでも遅れれば問答無用で遅刻扱いにされてしまう。しかも遅刻と欠席が一定以上累積すると単位が貰えなくなるのだ。次のコマの講義開始時刻は、午後四時十分。俺たちが今いる五号棟から講義がおこなわれる二号棟まではすこし距離があり、エレベーターなどが込み合っていると、教室までの移動に五分はかかる。というわけで、次の講義を取っている者はそろそろ移動を始めたほうがいい。
「山崎も次の経済、取ってたよな?」俺はいかにも焦ったふうに荷物をまとめながら、山崎をけしかけた。「必修の単位落とすと面倒だし、とりあえず授業に行こうぜ。教務課はそのあとで寄ったらいいだろ」
「……ちっ、わかったよ」
デザインパーマのチャラ男といえど、必修の単位は落としたくないらしい。山崎は俺に剣呑な目つきを向けながらも、自分のバッグを拾ってゼミ室の出口へ向かった。
「あ、あの、杉田君……」
先に廊下に出た植田さんと山崎に続いて部屋をあとにしようとした俺に、新田さんが何か言いたげに声をかけてきた。
「あー……、なんか、ごめんね、バタバタして」俺は扉の手前で立ち止まると、下手くそなごまかし笑いを新田さんに返した。「悪いんだけど、書類、あとでもらってきておいて、吉岡さんと一緒に。山崎も言ってたけど、いちおう誰かと確認したほうが安心だし」
「えっ……あ、う、うん」
新田さんは戸惑いながらもうなずいてくれたが、よくよく考えれば訳の分からない指示だった。なぜ書類一枚手に入れるのにそこまで厳重なチェックが必要なのか……。吉岡さんにいたっては不審そうな顔つきで固まってしまっている。
いや、仕方ないだろ。場をむりやり丸く収めた風にするには、とにかく当事者を引き離すくらいしか思いつかなかったんだから。
うまく事を処理したとは到底言えないし、たぶん山崎からは恨みも買ったことだろう。逆恨みもいいところだが、仕方ない。これがプロデューサーの役割なのだ。……なんとも損な役回りではあるが。
なお、ゼミ室を出た俺は急いで次の講義へ向かったが、ギリギリで入室が間に合わず、その日、ただひとりの遅刻扱いとなった。……つくづく、プロデューサーとは損な役回りである。
*
事件が起きたのは、その日の夜だった。
遅刻扱いになった経済学概論の講義のあと、俺はもうひとつ別の講義に出席した。そちらも選択必修科目だから、単位を落とすと卒業に響く。俺は特段、真面目な学生というわけではないが、一浪して入学している手前、卒業は四年できっかり、と腹積もりをしている。その後の就職やらなんやらについてはまだ何も考えていないのだが……。
今日の最終コマの講義が終わって、時刻は午後七時半。陽はとうに落ち、あたりはすっかり暗くなっていた。
特に連絡はきていないが、イベントの準備はもうお開きになっているはずだ。というのも、授業以外でのゼミ室の利用には事前の申請が必要で、この日は午後六時までの約束で届けを出していた。その後の授業は入っていないものの、大学院生の皆さんが夜にゼミ室で研究会を開く予定があるとのこと。だいたい午後八時くらいから開始するらしいからそれまでには部屋を明け渡さないといけない。まあ、特に問題はないだろう。作業の終了時刻についてはゼミ生の皆に周知してある。各々、講義やサークル活動、バイト等の予定もあるだろうし、まさか残って作業している奇特なやつもいまい。
そう思いつつ、念のため確認だけしておこうと、帰宅前にゼミ室に戻り、扉を開けて電灯をつけて……俺は絶句した。
「……げ」
はたしてゼミ室は無人。だが中央に置かれた長テーブルの上には、工作の材料とおぼしきダンボールや画用紙、ビニールテープの屑が散乱していた。カッターナイフやはさみ、マジックペンなどの道具も置きっぱなしで、床にもゴミが落ちたままになっている。あきらかに俺たち二年のゼミ生の作業の残骸だ。
おいおいおい……どうなってるんだ、こりゃ。
俺はすぐにスマホのチャットアプリを起動させ、二年のゼミ生全員がメンバーになっているグループトークページに以下のメッセージを打ち込んだ。
《ゼミ室、カッターやら紙やら残ったままなんだけど、誰かまだ作業中?》
そのメッセージがトーク画面上に表示されると、すぐに数個の既読サインがついた。だが、しばらく待っても、返信はいっこうに来ない。
どうなってんだよとヤキモキしながらスマホの画面を見つめていると、ポンと通知音が鳴った。別のトークルームにメッセージが入った通知だ。
個人宛てのルームで連絡を寄こしてきたのは、なんと山崎だった。
《ごめん! 経済の授業の後、戻ってみんなで作業してたんだけど、みんなバイトやらなにやらで帰らなきゃいけない時間になっちゃって。片付けは明日みんなでやるってことになったから、そのままにしといてもらっていいっすよ!》
俺はおもわずスマホを握る手に力が入る。あの野郎……、なにが「そのままにしといてもらっていいっすよ」だ。そのままにしとけるわけないだろう! 俺は憤りつつメッセージを打ち込む。
《いや、ゼミ室、今日の六時半から院生の人たちが自主研究会で使うらしいから、片付けとかないとまずいわ》
すぐに返信がくる。
《マジか! それ、超やべえじゃん……》
山崎は続けて、ムンクの叫びみたいな絵文字まで送ってきた。なんとまあ、しらじらしい……。
たしかに自分たちの後の予定までは皆に伝えていなかったが、そんなものは廊下の掲示板に張られたカレンダーを見ればわかることだ。ゼミ室の使用予定はすべてそこに書き込まれている。
やってくれたな、山崎……。
おそらく奴は夜にゼミ室の使用予定が入っていることを知ったうえで、後片付けは明日でいいなどと皆を言いくるめたのだ。あれで奴はゼミ内ではそれなりに発言力があるから、真っ向から反対できる者もいなかったのだろう。それがデザインパーマの効果かどうかは知らないが。
なぜ山崎がこんな真似をしたかって? そりゃ決まっている。今日、俺に新田さんへのアプローチを邪魔されたことへの、意趣返しだ。
ゼミ室利用のルールを守らず、あとの使用者に迷惑をかけたとなれば、責任を取らされるのは当然、「プロデューサー」の俺である。責任といっても事務員さんや学科の先生方から多少怒られるくらいだろうが、もちろんいい気はしない。大学院生の人たちにも謝らなければならないだろう。
……なんとも子どもじみた嫌がらせだし、俺がグループトークに投じたメッセージの返信をわざわざ個人トークのほうに寄こすあたりに姑息さをひしひしと感じさせるが、ここでキレたら、あのデザインパーマの思うつぼだ。
俺は深呼吸をして気を鎮めてから、個人トークに返信を打ち込んだ。
《あ~、いいわ。このくらいなら俺が後片付けやっとくから、次からは気をつけてな!》
おどけた絵文字とともにそんなメッセージを送ると、山崎はやはりすぐに返事を寄こした。
《マジで! 悪い~、マジで恩に着るわ、杉田プロデューサー!》
もはや冗談に付き合う気にもなれなかった。おざなりなスタンプを送ってやりとりを終わらせることにし、俺はズボンのポケットにスマホを仕舞う。
散らかった室内をあらためて眺め、俺は短くため息をついた。
「……それじゃあまあ、やりますか」
すこしでも気持ちを奮い立たせようと、俺はあえてそう声に出しだ。パーカーの袖をまくりつつ、壁にかかった時計を見上げる。時刻は午後七時四十五分。備品類を所定の保管場所に戻して、ゴミを片付けてゴミ捨て場に持っていって……結構ギリギリかもな。
こりゃモタモタしていられない。
まずは目についたところから、と、長机の上に放り出されたハサミやらカッターナイフやらペンやらに手を伸ばしかけた、そのときだった。
「杉田君!」
切迫した声が背後から聞こえ、俺は驚いて振り向いた。
そして声の主を目にして、さらに驚きが増した。ゼミ室の扉のところに、新田さんが立っていたのだ。
「新田さん……? え……なんで?」
「あの……トーク、読んだから……」
すこし息を切らしながら言う新田さんの手にはスマホがあった。手帳型のかわいらしいカバーに見覚えがある。
「トークって、山崎……じゃなくて、ああ、グループトークのほうか」
俺と山崎の個人トークの内容を、新田さんが知っているわけがない。
とすると、俺がグループトークに打ち込んだメッセージを読んで、わざわざ駆けつけてくれたってことか。
「でも……新田さんも、皆と一緒に帰ったんじゃなかったの?」
新田さんはふるふると首を振った。
「私は優子ちゃんたちと一緒に六コマ目の講義を取っていたから、六時よりすこし前に作業からは抜けさせてもらっていたの……。だから、こんなふうになっているだなんて、ちっとも知らなくて……」
と、唇を噛みしめる新田さん。
……なるほど、そういうことか。要するに山崎は、新田さんと吉岡さんがその場からいなくなったのをいいことに、俺に対する罠を仕掛けたわけだ。二人がいたらさすがに暴挙には出られなかっただろうからな。つくづく小癪なデザインパーマである。
新田さんは散らかった室内に目をやると、深刻そうに眉をくもらせた。
「ゼミ室、この後すぐに大学院生の人たちが使う予定になっているんだよね……?」
「う、うん、まあ……」
さすがは新田さんと言うべきか、きちんとは伝えていなかったゼミ室の使用予定をしっかりと把握しているようだ。
「みんな後片付けもしないで帰るなんて……?」
「あ、あはは……な、なんでだろうねえ」
同級生への不信感を募らせつつある新田さんを制するように、俺は無理やり明るい声を出した。
「な、なんか皆、忙しいみたいで、明日、朝から片付けるつもりだったみたいだよ? まあ、ちゃんと指示を出さなかった俺も悪いよね」
あはは、とわざとらしい笑い声をたてながら、俺は足元に落ちていたゴミを拾いはじめる。
「あとは俺がやっておくからさ、新田さんも気にせず帰って。部活とかバイトとか……予定もあるでしょ?」
俺は腰をかがめたまま振り向いて、新田さんに笑いかける。来てくれたことは心の底から嬉しかったが、これはやはり、俺と山崎の問題だ。新田さんを巻き込むわけにはいかない。
だが。
「……私も、手伝う」
決意を固めたような表情で言うと、新田さんは俺の横にしゃがみこんだ。スカートが汚れるのも厭わず、せっせとゴミを拾い集める新田さんを見て、俺はおおいにうろたえた。
「い、いやいやいや! い、いいって、ホントに! ほら! こういうのって、プロデューサーの仕事だし!」
「よくないよ」新田さんはおどけようとする俺をいさめるように、すこしきつめのまなざしを向けてきた。「仕事っていうなら、後片付けなんて、本当は皆でやらなきゃいけない仕事でしょ。それを杉田君ひとりに押しつけるのは、違うと思う」
「け、けど……」
「それに……」新田さんはすこしためらうように目を伏せてから、横目で俺を見る。「たぶんだけど……山崎君、でしょ?」
……ああ、なるほど。
いまのひとことだけで、すっかり得心がいった。俺の下手なごまかしなんて、新田さんはハナからお見通しだったってわけだ。
そこからは俺も観念して、何も言わず新田さんの手を借りることにした。備品を片付け、ゴミを集め、床とテーブルの上も掃き清める。二人で手分けすれば、十分もかからなかった。
あとは所定の収集場所にゴミを持っていくだけだ。一杯になったゴミ袋の口を結び終えると、俺は新田さんのほうへ振り向いた。
「……その、ありがとうね。おかげで、助かった」
時刻はそろそろ七時五十五分。大学院生の人たちもぼちぼちやってくる頃だろう。新田さんがいなければ、ひょっとすると間に合っていなかったかもしれない。
「ううん、いいの」新田さんは穏やかに首を振ったが、すぐに申し訳なさそうに顔をくもらせる。「ごめんね……。せめて、真由ちゃんと優子ちゃんにも、声をかけられればよかったんだけど……」
植田さんと吉岡さんか。
「ええと……そういえば、二人は? たしか、六コマは一緒に受けてたんだよね?」
「二人とも予定があって、講義が終わったらすぐ帰っちゃったの……。今日はもうイベントの準備もないだろうから、って……」
「へえ、予定が」
「うん……二人とも、デートだって」
「デ……」
生まれてこのかた二十年、彼女のひとりもいたことのない人間には縁遠い外来語を聞いて、俺はわかりやすく固まってしまった。
「そ、そうかぁ、デートかぁ!」
おもいきり口元をひきつらせながら、無駄に声を張ってしまう俺。動揺を気取られたくなかったんだね。ど、ど、ど、童貞ちゃうわ! と叫ぶ時と同じ心理である。
デートかぁ……植田さんも吉岡さんも、付き合ってる人いたんだな。そりゃあまあ、俺のグループトークメッセージに気づいたとて、わざわざ返信もしてこないか……。
……ひょっとして今頃、二人とも、愛しの恋人とよろしくヤってたりして……?
……もしかして、新田さんも……?
などと妄想を飛躍させてしまったのが、いけなかったのだろう。
「に、新田さんは、大丈夫だった? その……今夜の予定とか……?」
知らず知らず、俺はそんな言葉を口にしてしまっていた。続けて、今までの彼氏の人数は? 初キスは何歳の時? 初体験は? ぶっちゃけ、体験人数を教えて? など、AV(単体物デビュー作)の冒頭インタビューばりの質問が矢継ぎ早に口をついて出そうになったが、そこまでいけばまごうことなきセクハラ事案。喉元まで出かかった下衆の勘繰りを、無理やり腹に押し込めた。
まあ、彼氏の有無くらいは山崎あたりがすでに訊き出してはいそうだが……。デザインパーマのくせに、ストレートに。
はたして新田さんは俺の下世話な心の内に気づいているのかいないのか、特に疑う様子もなく首を振った。
「大丈夫だよ。今日は
「え? コンピュータ室?」
意外だなと思ったのが顔に出てしまったのだろう。新田さんは急いだように言葉を足した。
「うん、取っている講義で中間レポートの課題があって──あ」
新田さんはそこでなにかに気づいたように言葉を止めた。
話の流れから、俺はなんとなく事情を推測する。
「あー……、ひょっとして、レポート、急ぎだったとか?」
だとすれば、新田さんにはやはり迷惑をかけたことになる。新田さんはやさしいから自分の予定を後回しにして俺を手伝ってくれたんだろうけど、そこは俺がもっと頑なにでも申し出をお断わりすべきだった……。
「あっ! そ、そうじゃなくてね、レポートは進めたいのだけど、そうじゃなくて……」
と、新田さんは慚愧する俺を気遣ったのかあわてたようにかぶりを振ったのだが、どういうわけかそのあとは、もじもじとした素振りを見せつつ、俺の顔をうかがってきた。え……な、なんだ?
「杉田君……このあとって、特に予定、ないんだよね?」
新田さんは妙にあらたまったトーンでそう訊ねると、訴えかけるような目つきで俺をじっと見つめた。
「えっ……う、うん」
俺はただならぬ雰囲気に気圧され、ぎこちなくうなずく。
「急な話で、本当に申し訳ないのだけど──」
新田さんは気まずそうに一瞬目を伏せたあと、すこし潤んだ瞳でまた俺を射抜いた。
「杉田君……このあと、私のお部屋に来てもらえないかな?」
ワタシノオヘヤニキテモラエナイカナ。
いったい何を言われているのか、童貞の俺が即座に理解するには、それはあまりにも難解な日本語だった。
*
新田美波の部屋である。
いや、もはや天国と言い換えてもおおげさではないのかもしれないが、とにかく、新田美波の部屋である。
場所は、大学から歩いて十分ほどの、閑静な住宅街。その一画に建つ、五階建ての小綺麗な賃貸マンションである。エントランスはオートロックで、カードキーを使うか、部屋の端末からロックを解除しないと玄関ドアは開かないらしい。
ウチの大学は地方都市の郊外にキャンパスを構えている事情もあり、一人暮らしをする学生が大学から徒歩圏内、あるいは自転車で通える範囲内で部屋を借りる例はめずらしくない。
ただ、それにしたって、このマンション、大学生の一人暮らしの部屋としてはかなりのハイスペックと言って過言はなかろう。木造アパートの1K、家賃四万五千円の俺の下宿とは雲泥の差だ。それこそ下世話な話、家賃だってかなり高いはず。
そんな立派な部屋を借りている理由について新田さんは、「一人暮らしをするなら防犯のしっかりとした部屋にしろって、お父さんがきかなくて」と説明してくれた。……お父上、お気持ちは、痛いほどわかりますよ。そりゃあ大事な愛娘、しかも新田美波を、俺が住んでいるような一階の六畳一間に住まわせるわけにはいかない。そこはやはり、オートロック付きマンションがマストだろう。
というわけで俺は、セキュリティのしっかりしたマンションのエントランスをくぐりぬけ、3階にある新田さん家に足を踏み入れた。いや、違うんですよ、お父上! 俺は新田さんからお招きを受けただけで、決して怪しい者ではないんです!
と、会ったこともない新田パパへの言い訳を心のなかで唱えつつ、俺は十畳ほどのリビングルームに通された。
「すぐに用意するから、すこし待ってて」
新田さんはお茶を出し、部屋の中央に置かれたベージュ色のシートの二人掛けソファを俺にすすめると、たぶん寝室であろう奥の部屋へ入っていった。
「う、うん」
俺は新田さんを見送ってからソファに腰を下ろすと、緊張で出されたお茶にも口をつけられない中、そわそわと室内を見渡す。正面にはオーク色のローテーブル、その向こうには同色のテレビ台に乗せた液晶テレビ、カウンターキッチンの横には食事用のテーブルと椅子など、洒落た家具が整然と配置されている。花柄が目を引くカーテンを吊るした窓の横には、緑葉を茂られた観葉植物。観葉植物って。そんな小洒落たものを部屋に置こうなどという発想がなかったから、目の保養であるはずのそのインテリアに、俺はむしろ軽い衝撃を受けた。
というか、待てよ。この葉っぱ、新田さんが吐いた二酸化炭素を利用して毎日、光合成してやがるのか。なんと贅沢な……。
などと、人間を辞めたほうがいいレベルで気持ち悪いであろう嫉妬を募らせていると、俺が腰掛けているソファの背後にある引き戸が、控えめな音をたてて開いた。
「ごめんね、お待たせして」
もちろん新田さんが戻ってきたのだ。新田美波の部屋に、新田美波がいる。至極当然のことなのだが、その事実に俺の心臓は高鳴った。
「い、いやいや、全然!」
俺はあわてて居住まいを正して首を横に振る。新田さんが奥の部屋へ行っていた時間は、ものの数分。その間に客人が室内をじろじろと見回し、あまつさえ観葉植物に対して嫉妬の炎を燃やしていたと知ったら、新田さん、どんな顔するんだろう……。
「え、ええと、パソコンって、それ?」
俺は考えるだに恐ろしい想像を振り払うべく、自分から本題を切り出した。新田さんの手には、一台のノートパソコンがある。黒の天板でモニターサイズはやや小さめの、モバイルタイプのノートパソコンだ。
「うん……見てもらえる……かな?」
新田さんは遠慮がちに言うと、ローテーブルにノートパソコンを置いて、俺のとなりに腰を下ろした。ソファのスプリングが小さく揺れると同時に、かぐわしい香りがふわりと漂ってきて、俺は新田美波の存在を強く意識した。
新田さんの自室で、新田さんと隣り合って座る。しかも二人きりで。こんな夢みたいな状況に俺を誘ったのは、ほかでもない、いま目の前に置かれているノートパソコンである。
パソコンが壊れてしまって困ってるの、杉田君、見てくれないかな──。
新田さんが俺を部屋に呼んだのは、つまりそういう事情からだった。
詳しい事情を聴くと、どうやら新田さんが所有しているノートパソコンの挙動が、二日前から突然おかしくなってしまったらしい。新田さんはそのノートパソコンを普段からレポート課題の作成などにも利用していたため、レポート書きが進められず、途方に暮れていたのだという。わざわざ大学のコンピュータ室に行ってレポートをやると言っていたのは、自分のノートパソコンが故障したからだったというわけだ。
もちろん本格的な故障となれば買い替えも検討すべきだが、パソコンは安い買い物ではない。修理できるならばそのほうがいいだろうし、レポートの締切もあって、対処はできるだけ早いほうがいい。
そこで新田さんが頼ったのが、俺というわけだ。
なぜ俺だったのか? これは至極単純な理由で、そのときたまたま俺が近くにいたからだろう。あとは最近、イベント関連の事務仕事でパソコン作業をしていることが多かったから、PC関係の知識が豊富と思われたか。いずれにせよ「杉田君って、パソコンに詳しい?」と上目遣いで尋ねられたら、うんとうなずく以外の選択肢はありえないだろう。たとえ、日頃のPC使用目的の九十パーセントが、エロ画像&エロ動画の収集だったとしても。
そんなわけでゼミ室の後片付けを終えたあと、俺は新田さんに連れられ、こうして彼女の自宅へとお邪魔している。ちなみにゼミ室は、無事、次の使用申請者である大学院生の皆さんに明け渡せた。軽く挨拶をして部屋の鍵を引き継ぐ際、先輩方は俺じゃなくて後ろにいる新田さんにばかり目がいっていたけれど、これはもう仕方がない。
「どうかな……? 直りそう?」
「と、とりあえず、電源、入れてみるね」
不安ゆえか、たぶん無自覚に体を寄せてくる新田さんにどぎまぎしつつ、俺はノートパソコンに手を伸ばした。
電源ボタンを押すと、小さなモーター音とともにノートパソコンが起動する。通常ならばここで、オペレーションシステムの起動画面やアカウントのサインイン画面に自動で移行するはずだ。ところが、しばらく経ってモニターに映し出されたのは、黒い画面に白抜きの文字列だった。しかもすべて英文である。
「このあいだから、何度か電源を入れ直しても、この画面が出てきちゃうの……」
新田さんが今にも泣きだしそうな声で訴えた。本当に困り果てていたんだろうな。まあ、コンピュータを使い慣れていない人がこんな画面を見たら、混乱するのも無理はない。
「直る……かな?」
「ええと……ちょっと待ってね」
俺はすこし身を乗り出して、モニターに映し出された英文にざっと目を走らせた。もちろん細かな内容までは理解できないが、どんな不具合が生じているかくらいなら、なんとなくわかる。
「えっと、確認なんだけど、このパソコン、いつから使ってるやつ?」
「大学に入学してからだから……一年半くらい、かな。あっでも、じつはそれ、お父さんからのおさがりなの。お父さんが仕事で使っていた物を譲ってもらって……」
「あっ、そうなんだ」
女子大生の持ち物にしてはやや無骨なデザインだなと思っていたが、どうりで。父親が娘にパソコンを譲るとは、仲が良いな、新田家。
「だから、お父さんにも電話して訊いてみたのだけれど、よくわからないって……」
新田さんはふたたび泣きそうな顔になる。俺はいたずらに不安がらせないよう、努めて声のトーンを上げる。
「も、もともとお父さんの仕事用とかなら、けっこう使い込まれてたかもしれないから、そのあたりが不調の原因かも!」
なんかお客さんから商品について質問を受けて嬉しくなった家電量販店の販売員みたいなテンションになってしまったなと思いつつ、俺はパソコンの操作にかかった。といっても、難しいことは何もない。一旦、パソコンをセーフモードで起動させ、今度は日本語で表示された指示に従って、システムファイルの修復を実行させただけだ。はたして、それでパソコンは修復再起動の画面へと切り替わった。
「うん、これで、とりあえずは大丈夫じゃないかな。しばらく待って正常に起動すれば、ふつうに使えるようになると思う」
「本当に? よかったぁ」
モニターから視線をきって振り向けば、新田さんが心から安堵したと言わんばかりに相好を崩していた。うわ……めちゃめちゃ可愛いんだけど! 新田さんのこんな顔を間近で見られるなんて、日頃からのエロ画像&エロ動画収集で多少なりともPC知識を蓄えておいて、本当によかった……!
「ウ、ウイルス感染とかの心配はないと思うけど、ひょっとしたらハードディスクの劣化が始まってるかもしれないから、同じ症状が続けて出るようなら、パソコン自体の買い替えも考えたほうがいいかも。念のため、データのバックアップもとっておくといいと思うよ」
「うん、ありがとう……。杉田君、本当にパソコンに詳しいんだね……」
「い、いやあ、それほどで……も……!」
新田さんから尊敬のまなざしを向けられる。
それはもちろん光栄だったのだけれど、そのとき俺の視線は、もうすこし下のほうへ吸い寄せられてしまった。
そう、魅惑の胸元である。
ざっくりと襟元が開いたブラウスから、胸の谷間がコンニチハしていた。
懸案だったパソコンの不具合が解消して安堵したのに加え、自室にいる安心感もあるのだろう。いやそこは男を招き入れている以上むしろ警戒しなさい、と斜め後ろあたりから空想新田パパの声が聞こえてきた気もするが、事実、新田さんの胸元は俺の目をいやおうなしに釘付けにしている。陶器のように滑らかな肌から漂う色香は、男の本能をどうしようもなく刺激した。
「ご、ごめん、新田さん!」
ズボンの中で剛直が一気にいきり立ったことを感じた俺は、あわてて新田さんに背を向けた。
「え……ど、どうしたの?」
当然のごとく、新田さんが心配そうに声をかけてくる。
心苦しかったけれど、いま振り向くわけにはいかない。これ以上、ここにいたら、本当にどうにかなってしまう。俺は足元に置いてあった自分のカバンを取ると、やにわにソファを立った。
「ほ、本当にごめん! パソコンはもう大丈夫だと思うから、俺、もう帰るね!」
「え!」
客人からいきなり帰ると言いだされ、新田さんも驚いたようだ。やや前かがみになってそそくさと退散しようとする俺に立ちふさがるように、新田さんも席を立った。
「ど、どうしたの、急に? ひょっとして、気分がすぐれないの?」
失礼を働いているのはあきらかに俺のほうなのに、俺の体調を心配してくれる新田さんは、やっぱり優しい。
「だ、大丈夫だから! ちょっと、急用を思い出しただけっていうか……」
そんな苦しい言い訳に、聡い新田さんが納得してくれるわけもなく。
「ひょっとして私……杉田君の気に障ること、なにかしちゃったかな……?」
今度はそんなふうに自分を責めて、うつむく新田さん。俺はさすがにいたたまれず、とっさに新田さんのほうへ向き直ってしまった。
「そ、そんな! 新田さんが悪いわけじゃ──あっ」
「あっ……」
正面から向かい合った俺と新田さんが、同時に小さく声をあげた。
新田さんの視線は斜め下を向いて、固まっている。凝視しているのは、恥ずかしげもなくテントを張った俺の下半身。新田さんの頬がかあっと赤くなり、あわてたように顔をそむけた。のっぴきならない男の事情がわからないほど、新田さんも初心ではないのだろう。
「ご、ごめん! こ、これはその……ち、違うんだ!」
俺は両手で股間をおさえ、ふたたび新田さんに背を向けた。時すでに遅しなのはあきらかだったし、何が違うのか自分で言っててもはや意味不明だ。
二人きりの室内に、沈黙が流れる。永遠とも思える気まずい時間が過ぎたあと、新田さんは静かに口を開いた。
「……座って」
「……はい」
逆らう余地など、なかった。俺は両手で股間をおさえたまま、しずしずとソファに腰を戻した。
そして新田さんも短く息を吐いたあと、俺のとなりに腰を下ろす。
ぴりついた空気。俺は緊張に息を呑む。なのに勃起がおさまる気配はいっこうにない。なんで……?
「……その、それ」新田さんが俺のほうを……俺の股間をちらりと見て、固い声で言った。「いつ……から?」
「ええと……」俺は目を泳がせながら正直に告白した。「この部屋に入ったくらいから、ちょっとヤバかったかも……」
新田さんがびくりと肩を震わせたのがわかった。怖がってるんだろうな……。そう思うと、おのれの身勝手な欲望の罪深さに胸が痛んだ。なのに勃起は……。なんでぇ……。
「そうなったのって……、私のせい……なんだよね?」
「……うん」
俺は素直に認めて、重々しくうなずいた。いまさらごまかしても無意味だ。
終わったな……。いや、終わったわ……。
童貞が大学のマドンナに劣情を催して下半身を膨らませたあげく、それを本人に気づかれてしまうなんて、人生最悪の瞬間だ。変態の誹りは免れないだろうし、明日から新田さんがいっさい口をきいてくれなくなったとしても、何も文句は言えない。いや、新田さんだけじゃない。万が一にもこんなことがゼミの皆に知られてみろ。俺は新田さんの部屋に上がり込んで狼藉を働こうとした鬼畜童貞野郎として学内に悪名を轟かせることになるだろう。植田さんや吉岡さん、そして山崎がさげすむように俺を見る姿が、目に浮かぶようだ。
……いや、違う。さっきから自分のことばっかじゃないか、俺。
本当に思いやるべきなのは、新田さんのほうだろ!
知り合いの男にいきなり勃起を見せつけられて嫌な気持ちになっているのは、間違いなく新田さんなのだ。傷ついているかもしれない女の子のことはなにも考えず、我が身可愛さにいじけてみせる。それこそ暴力的で許されざる行動だろうが!
プロデューサーなんて呼ばれて、新田さんとも少しずつだけど言葉をかわせるようになって、ついには部屋にまで呼ばれ、ひょっとしたら山崎なんかよりよっぽど新田さんから好感を持たれているかも、だなんて浮かれていた自分を、顔の形がわからなくなるまで殴ってやりたい気分だった。
そんなふうに、恥ずかしさやら情けなさやら罪悪感やらでもう消え入りたい気持ちになってうつむいていたのだが。
「……お礼」
そのとき、ほとんど聞き取れないくらいの声が俺の耳に届いた。
「え?」
おもわずおもてを上げる。
新田さんがすこし身を乗り出すようにして、こちらを見つめていた。その視線はなんだか、すこし熱を帯びているようにも思える。
「パソコン」新田さんはいつの間にか正常に再起動を終えていたノートパソコンにちらりと目をやってから、俺のほうに身を寄せる。「直してもらったお礼、しなくちゃでしょ? それに……」
「そ、それに?」
俺は生唾を呑みつつ訊き返した。すると新田さんは一瞬ハっとして視線をそらせたが、すぐに表情を取り繕って、また俺を見つめてくる。
「ううん……なんていうか、こうなっちゃうと、男の人ってすごく辛いん……だよね? このままじゃ帰れないだろうし……ね?」
新田さんは俺を熱っぽい視線で射抜いたまま、俺の胸にそっと左手を置いた。
「え? え? え?」
なにが起きているのかすぐには理解できず、俺は岩のように身を硬直させる。下手をすれば呼吸さえ忘れてしまいそうだった。
「嫌だったら……言ってね。すぐに、やめるから」
すこし緊張気味の声でささやきながら、新田さんは膨らんだ俺の股間に手を伸ばしてきた。
「うっ!」
彼女の繊細な指先に触れられた途端、俺は我慢できずにくぐもった声を漏らした。しかし新田さんは構うことなく、張りに張った俺の剛直に指を這わせてくる。布越しの愛撫にもかかわらず、想像をはるかに超えた快感が一瞬にして全身を駆け巡り、俺は総毛立つように身を震わせた。
なんだ、これ……? いったい何が起きているんだ?
まさか。まさか、まさか……嘘だろう?
「に、新田……さん……! こんな……、なんで……?」
俺は息も絶え絶えになりながらそれだけ絞り出した。混乱とよこしまな欲望に脳髄を蹂躙され、もはや思考が追いつかない。そんな俺の耳元に新田さんは口を寄せてきた。
「うまくできるか、自信ないけれど……下、脱いでもらっていいかな?」
「は、はいぃ……」
耳をくすぐる甘い声に情けなく返事しながら、俺は言われるがままにジーパンのボタンを外した。チャックも下ろして腿のなかばまでジーパンをずりさげると、残った下着は新田さんが手ずから脱がしてくれた。
ボクサーブリーフの下から、パンパンに張り詰めた剛直が、跳ねるみたいにしてまろび出る。切っ先からはもう大量の先走り汁がにじみ出ていた。下手をすると漏出がすこし飛び散ってしまった恐れすらある。
「すごい……こんなに、カチコチ」
新田さんは軽く目をみはると、釣り上げられた魚のようにびくびくと跳ねる肉棒をそっと摘まんだ。すさまじい快感が俺を襲う。
「あっ!」
「痛くない?」
俺はフルフルと首を振った。痛くなどあるものか。むしろ気持ちよすぎて一瞬、意識が飛びかけたくらいだ。
「動かす……ね?」
ささやくように言って、新田さんは肉胴に巻きつけた指をゆっくりと上下させはじめる。
「あ、あぁぁ……!」
信じられない心地よさに、俺の口からは自然と喘ぎ声が漏れていた。新田さんは快感を与えていると判断したのだろう、いよいよ掌で肉筒を包み、本格的な手コキを開始させる。
「痛かったら言ってね?」
「う、うあぁぁ……!」
優しく気遣ってくれる新田さんに、俺はもう獣じみた呻き声を返すことしかできない。
圧倒的な性感だった。いつの間にやら尿道口からは大量の我慢汁があふれ出している。それがまた、いい潤滑油になって、新田さんの掌が肉幹の上を軽やかに滑るのだ。なんと絶妙な加減の摩擦! 間断なく襲ってくる性の刺激は容赦なく俺の肉体を蹂躙した。
脳みそが茹だったように頭がくらくらとする中、なんとか薄く目を開くと、ソファの上に正座をするような体勢になって、怒張をしごく新田さんの姿が見えた。根っから真面目なんだろう、一心不乱に右手を振るその顔つきは真剣そのもの。そんな姿が愛くるしく、着衣のままなのに、いや着衣のままだからこそ、いやに煽情的で──射精感は一気に頂上へと押し上げられた。
「うっ!」
全身を駆け巡っていた快感が腰のあたりに集結したその刹那、欲望の樹液が鈴口から一挙に放出される。
「きゃっ!」
新田さんが驚きの声をあげたのも無理はない。肉筒の先から打ち上がった一発目は新田さんの頭を越えるほどの高度にまで達し、一部の飛び散りはあろうことか新田さんの右頬に引っかかったのだ。おもいがけない被弾に、新田さんはわずかに顔をしかめた。
むろん、溜まりに溜まった男欲の発射が一発でおさまるはずもない。新田さんはすでに手を止めているにもかかわらず、肉胴はなおも脈動を繰り返し、二度、三度と白いマグマをぶっぱなした。初回には及ばないまでも、その勢いはなかなかのもの。びゅっ、びゅっ、と間欠泉のように噴き上げた白濁流は、俺の下腹部を、そして新田さんの美しい手指に降り注いだ。
「す、すごい……! こんなに出るなんて……」
「かはぁっ! はぁっ! はぁっ……あ!」
大量射精の反動で激しく息を切らしたあと、ようやく俺は我に返った。指先と右頬から白粘液を垂らしながら呆然とする新田さんの姿が目に入り、俺はあわてて身を起こす。
「ご、ごめん、いきなり出しちゃって! お、俺、女の子にこんなふうにしてもらったこと、はじめてで……」
「う、ううん。大丈夫……」新田さんはあわてふためく俺にぎこちなくも微笑み返すと、白く汚れた俺の下腹部に目を落とした。「こんなにたくさん……溜まっていたのかな……? ……拭いたほうがいい?」
「あっ! そ、そうだね……」
たしかにこのまま放置していては、そのうち汚汁がソファに垂れてしまう。新田さんはローテーブルに置かれていたティッシュ箱に手を伸ばすと、抜き取った二、三枚で俺の腹や棒をやさしく拭ってくれた。自分の手を後回しにするあたりに、できた人間性を感じざるをえない。
「あ、ありがとうございます」
俺がなぜか敬語になったのがおかしかったのか、新田さんはくすりと笑いを漏らした。
「うん、いいよ。でも……」男汁を吸って生臭いニオイを放ちだしたティッシュを屑籠に捨てると、新田さんはふたたび俺の股間へ目をやった。「まだ全然、元気なままなんだね……」
「あ……」
そうなのだった。
あれだけ大量の精を放ったにもかかわらず、俺の勃起はいっこうにおさまっていなかった。それどころか、新田さんに後処理をしてもらった刺激で、聞かん棒はさらに張りを増している気配すらある。
「ご、ごめん! めちゃくちゃ気持ちよくしてもらったのに、こんな……」
「さっき、さ」と新田さんが恐縮する俺に遠慮がちなまなざしを向けてきた。「杉田君、いままで女の子とこういう経験ないって、言っていたよね?」
「う……」
返答に詰まった。我ながら焦って余計なことを口走ったものだな……。まあ、言わなくてもバレバレだった気もするが。
「エッチ、誰ともしたことない……ってことだよね?」
「……はい」
俺は刑事に尋問されて犯行を自白する犯人のようにすごすごとうなずいた。平素ならば、新田さんの口から「エッチ」なんてちょっと卑猥な単語が出た僥倖を味わい、できればそこは「セ〇ロス」って言ってほしかったなどと阿呆なことまで考えているところだったが、そんな余裕はもはやない。
そのときである。童貞を知られた恥辱に耐えて膝の上で固めていた拳の上に、美しい手がそっと重ねられたのは。
「え?」
おもてを上げると、新田さんがじっとこちらを見つめていた。やさしげなのに不思議な力強さがある、美しきメデューサの瞳で、俺は石になる。ごくりと生唾を呑む俺に、新田さんはさらに顔を近づけ、すっと目を閉じた。
そして彼女のやわらかな唇が、俺の唇に押し当てられた。
「っ!」
それはほんの一瞬の出来事だったが、俺の息の根を止めるには充分だった。驚きに固まる俺に、新田さんはあやしげに微笑みながら身を寄せてきた。
「……勘違い、しないでね。こんなこと、誰とでもするわけじゃないから」
すこし頬を赤らめながらそう言い含めると、新田さんはまた軽いキスをしながら、俺の右手を取って、自分の胸元にいざなった。
「ちょっ……!」
右の掌にいきなりやわらかな感触があり、俺はおもいきり狼狽した。なんだ? なにが起きているんだ?
「私もさわってもらえると嬉しいな……」
「あ、ああ……うん」
可愛らしいおねだりに理性を吹き飛ばされ、俺は言われるがままに右手を動かしはじめる。服の上からでもわかるほどやわらかなマシュマロをおずおずと揉みしだくと、新田さんはかすかに眉根を寄せた。
「ン……っ」新田さんは甘い声を漏らすと、もどかしそうな瞳を俺に向ける。「ねえ……直接さわって?」
「ちょ、直接?」
とまどう俺にあやしく微笑みかけると、新田さんは「ちょっと待ってね」と言って、自分の背中に両手を回した。ほどなくして、ブラウスの裾から細長い布切れが抜き取られる。ブラジャーだ! フリルがついた薄紫色の下着を脇へ置くと、新田さんはブラウスの裾を首元までゆっくりとたくし上げた。頂上に新鮮なチェリーのような突起を持つ、豊かな双丘がその姿をあらわす。
「うわ……っ」
俺はおもわず感動の声を漏らした。こんな得も言われぬ絶景を前にして、もう童貞だなんだと怯んでいられない。俺は本能が命じるままにメスの象徴へ両手を伸ばし、丸々と育ったその膨らみを左右から寄せた。
「ん……ふふっ」
新田さんから喘ぎとも笑いとも取れる声が漏れる。俺はうまくできているか一瞬、不安になったが、ここで引いては男がすたるとばかりに、双丘の頂上の踏破にかかる。ぷっくりと膨らんだピンクのポッチを指でつまむ。
「あっ! んんっ!」
心地よい弾力をそなえる小粒をぐにぐにと弄ると、新田さんは今度こそ嬌声を漏らし、びくりびくりと身を震わせた。新田さんを感じさせている! そう思うと俺の胸は感動に震えた。
俺は右手で引き続き乳首を攻めたてつつ、左手は大きめに動かして乳房を揉みしだいた。もちろん力を入れすぎないよう、細心の注意を払う。じんわりと汗ばみはじめた柔肌が、しっとりと手に吸いついてくる。
「んんっ……、はあ、あんっ……ん」
悩ましげに息を乱した新田さんは、すこし身をよじりながら、俺の脇の下から手を伸ばしてきた。繊細な指先が、無防備にさらされていた裏筋に触れる。それだけで性電流が走り、俺はおもわず背筋をひきつらせた。
「私ももう準備できたみたいだから……シテ、みる?」
新田さんからの淫靡な誘いに、俺は息を詰まらせた。
マジか。マジかマジかマジか!
「い、い、いいの?」
高まるばかりの心臓の鼓動にせっつかれるように、俺は新田さんに訊き返した。たぶん目などギラギラと血走っていただろう。
「うん……ちょっと待ってね」
新田さんはそんな危険な狼をなだめるように微笑むと、いったん俺から身を離した。スカートの裾から手を入れ、ショーツとストッキングをまとめて引き下ろす。履き物から長い脚が抜けて、彼女の女性の部分があわらになる。控えめに生えた恥毛とその奥に見え隠れする薄ピンクのラビアに、俺の目は否応なく釘付けになる。
「ん……」
新田さんはソファのひじ掛けに背を預けるようにして座面の上で仰向けの態勢をとると、俺に向けてその体を開いた。
「きて……」
「は、はいっ!」
俺はもう矢も楯もたまらず彼女の股のあいだに飛び込んだ。乳房と女性器は隠されもせずにさらされている。それでいてブラウスは乳房の上、スカートは下腹部のあたりに、たくし上げられて残ったままなのだ。日常と非日常が絶妙な配置で組合された彫刻のようなその姿に、俺は激しく劣情をかきたてられた。
「いいよ……すぐに来ても。おっぱいで気持ちよくしてもらって、もう充分に濡れているから」
新田さんの言葉に嘘はなく、こちらに向かって口を開いた媚貝はすでにあやしく濡れ光っていた。生まれてはじめて目の当たりにした淫靡な恥肉に、俺はごくりと唾を飲む。いっそのことそこにむしゃぶりつきたい衝動にも駆られたが、我が分身はそれを許さないようだ。割れ目から立ち上るメスの色香を本能的に嗅ぎ取っているであろう分身は、はち切れんばかりに張り詰め、鎌首を何度もびくつかせて俺をせっついていた。
「そ、それじゃあ……!」
俺は荒い鼻息を放ちながら右手で肉槍を構えると、いよいよ未踏の女裂に腰を近づけた。
「ンッ!」
「あ……と……?」
切っ先がやわらかな肉に触れた感触はあった。新田さんもぞくりと身を震わせたが、それ以上、肉槍が入っていく感じがない。拒絶を受けた気にすらなって焦っていると、俺の腕に新田さんの手がそっと重ねられる。
「入れるところはもう少し下で……。ゆっくりで、大丈夫だから」
そう言いながら新田さんはわずかに腰を浮かせた。挿入の角度を調整してくれているらしい。
「わ、わかった……」
彼女の誘導に合わせて、俺も切っ先をすこし下げてみる。
すると、くにゅりと先端が沈み込むような感覚があった。
「そう、そこ……っ」新田さんからすかさず指示がある。「そのまま、腰を前に突き出して……」
「う、うあああ……っ!」
言われるがままに腰を送り込むと、おのれの槍が肉に引き込まれていく、得も言われぬ愉悦に襲われた。粘膜と粘膜がじかに密着する感触は、まさに未知のもの。直前に一度、精を放っていなければ、この時点でなすすべもなく果ててしまっていただろう。
「ンン……はあぁ……」新田さんは眉根を寄せて悩ましげな吐息を漏らすと、薄く目を開いて俺をうかがった。「杉田……君。痛く……ない?」
それは女性側の破瓜の痛みから類推した問いかけなのだろうが、申し訳ないが愚問である。こんな極楽浄土にいざなわれておいて痛いなどと文句を垂れるなど、罰当たりもいいところだ。もう快感しかない。先端にも雁首にも肉筒にも、ペニスのすべての部分に蠢く肉襞が絡みついてくるようで、本当にこの世のものとは思えない悦楽だ。だから俺は息も絶え絶えに答える。
「大……丈夫……っ。ていうか、めちゃくちゃ気持ちよくて……!」
「そう……よかった……んっ!」何に反応したのか新田さんはびくりと身を震わせると、ねだるような視線を俺に送ってきた。「ねえ……動いて? 好きに動いていいから……っ」
「う……ん」
俺は息を詰めつつうなずくと、おそるおそる腰を前後させた。なにせ初めてで、はたしてこの動きで正解なのかもわからないが、とにかく膣にペニスを抜き差しする。AVで見る男優はもっと高速で腰を振っていたように思うが、どうやったらあんな動きができるんだ?
「あっ! ンウンっ、ああっ、イヤん……あンッ!」
だが新田さんは俺のぎこちないピストンに合わせ、艶めかしい喘ぎ声をあげてくれていた。ひょっとすると気を遣って演技をしてくれているのかもしれないが、その可能性を差し引いてもなお、俺の心はときめいた。
あるいはそんな男としての喜びを知ってしまったからかもしれない。
終わりの時は、唐突に訪れた。
「あっ! だめだ!」
勢いあまってそれまでよりも深く肉先を奥に突き刺した刹那、目の前で突然バチバチバチッと火花が散ったような感覚に襲われ、俺はとっさに大きく腰を引いた。
「あンッ!」
新田さんが驚きまじりの嬌声をあげた直後、俺の欲望は爆発した。
「うっ!」
くぐもった雄叫びが引き金となり、女裂から緊急脱出したばかりの鈴口から、濃厚なマグマが発射される。突然の暴発で、着弾点をコントロールすることさえ叶わない。狙いの定まらない吐精は新田さんの右腿の裏のあたりに飛び掛かった。
「あっ……んん……!」新田さんは一瞬だけ身をこわばらせると、けだるげに首を持ち上げて俺をうかがった。「出ちゃっ……た?」
「ご、ごめん!」
身を焦がす快楽からハッと我に返った俺は、あわてて謝罪の言葉を口にした。膣内で射精しなかったことだけは幸いだったとしても、断りもなく精液を体にかけてしまうとは……。
「ん……ちょっと、ごめんね」
情けなさでおろおろする俺をしりめに、新田さんはかたわらにあったティッシュへ手を伸ばした。右足をあげたまま腿の裏に付着した樹液を拭き取るその姿はやけに煽情的で……って、そんなことを言っている場合じゃない!
「ご、ごめん! 気がつかなくて! というか、変なところに出しちゃって……」
「ううん、気にしないで」新田さんはやさしく微笑みながら首を振る。「はじめてだったんだもん、しかたないよ」
新田さんは自分の脚を汚した男汁を拭い終わると、ゆっくりと身を起こして、慰めるつもりなのか、俺をやさしく抱きしめてくれた。
「あ……」
こういうとき抱き締め返していいものかもわからず、俺は両手を宙ぶらりんにさせる。そんな間抜けな格好で待機する俺の耳元に、彼女はそっと口を寄せてきた。
「汗……かいちゃったよね。シャワー、一緒に浴びよっか?」
もちろん俺に断る理由など、あるはずもなかった。
*
先に行っていて、と言われたので、俺はとりあえず一人でバスルームに向かった。新田さんは俺にバスルームの場所を案内すると、リビングルームを出て寝室へ入っていった。一緒に、とは言ったものの、女の子には入浴に際してもいろいろと準備があるのだろう。
ベージュの壁に囲まれたバスルームに入り、シャワーの蛇口をひねる。勢いよく噴射する水から湯気が出始めた頃合いを見計らって、俺はとりあえず汚れた股間まわりにシャワーをかけた。
ふと、奥側の壁に備えつけられた大きな鏡に目をやった。湯気でくもりはじめた鏡面には、誰あろう俺が映っている。もちろん自分に裸体になど興味はないが、新田美波の部屋のバスルームの鏡に自分が映っているのだと思うと、なんだか不思議な気持ちになった。
俺……したんだよな、セックス。
しかも、新田さんと。
信じがたい出来事だった。いまこの時は現実じゃなく、夢なんじゃないかとさえ思う。もちろん漫画みたいに頬をつねったりはしないけれど、これが永遠に醒めない夢ならば、もうそれで構わない。
童貞喪失。新田さんと。新田美波と。
考えるかぎりでの、最高の初体験ではなかろうか。
半裸の新田さんと肌を合わせ、限界まで張り詰めた肉胴を蠢く肉襞に弄ばれる、あの快感。あっという間に果ててしまったことだけが心残りだが、それにしても。
「気持ちよかったなあ……」
筆下ろしの余韻に浸り、それだけでまたもや欲望をむくむくと膨らませかけていた、その時だった。
「杉田君」
コンコンとノックの音とともに、不意に名前を呼ばれた。
「は、はひっ!」
俺は情けなくも裏返った声で返事をし、弾かれるようにドアのほうへ振り向いた。擦りガラスの向こうに、女体のシルエット。曖昧だからこそ想像をかきたてられるその光景に、俺は小さく息を呑んだ。
「入っていい?」
「い、いえあ!」
焦るあまりイエスなのかノーなのかはっきりしない謎の返事をしてしまったが、そこは新田さん、察してくれたらしい。
「失礼します」
慇懃な挨拶をともにゆっくりとドアを開け、新田さんがバスルームの中へ入ってきた。
もちろん、一糸まとわぬ姿で。
……ごくり。
生まれたままの姿の新田さんを目の当たりにし、俺はおもわず生唾を呑んだ。
おもえばさっき肌を合わせたときは、完全に脱衣はしていなかった。それはそれで眼福だったことに疑いようはないが、やはり全裸というものはなにか特別なオーラがある。
隠すものが何もないからこそ、新田さんのボディラインのすばらしさがありありとわかるのだ。細い肩、くびれた腰、すらりと伸びた長い脚。もちろん胸のふくらみは完璧な丸みを保っている。そして画竜に点睛を描き入れられたがごとく、白い肌に一か所だけ黒く浮かび上がるアンダーヘア……。これほどの美を目にしてなお冷静でいられるような心の余裕は、童貞を捨てたくらいでは身につけられるはずもない。
俺たちは洗い場に立ち、すこし手を伸ばすだけで抱き合えそうなくらいの距離で、向かい合う。
「ふたりだと、やっぱり、ちょっと狭いね」
「そ、そうだね」
すこし苦笑いを浮かべる新田さんは、ヘアクリップを使って長い髪を後頭部でまとめていた。そういえば女の子は温泉などに入浴する際、エチケットとして髪の毛をアップにするんだったか。……いや、温泉モノのAVから得たにわか知識でしかないのだが、エチケットだろうとなんだろうと、うなじをさらした新田さんはエロチックだった。
そんな下心満載な目で新田さんの肢体を拝んでいたのがバレたのか、新田さんが小さく笑いを漏らした。
「ふふ、なんだか、恥ずかしいけど、ちょっと楽しいかも」
「え?」
「子どもの頃、弟とよくこうやって一緒のお風呂に入っていたなあ、って思い出して。あ、杉田君が弟みたいって言ってるわけじゃないよ」
新田さんは本当に楽しそうだった。ちょっと焦り気味に弁明する顔がまたかわいいったらない。あと、合法的に新田さんと入浴できる新田弟が羨ましいったらない。
「あはは……」
ぎこちない愛想笑いを返しながら、俺はあらためて新田さんをうかがった。
実際のところ、新田さんは俺のこと、どう思っているんだろう……?
というか、どうして俺なんかと、その……、セックスをしてくれたんだろう……。
そんな疑問がまさか口から洩れたわけでもないのだろうが。
「……いまさらだけど、杉田君は、よかった?」と新田さんはやや不安げな表情になって、そう訊いてきた。
「え?」
「その……はじめての相手が、私で」
俺は目を白黒させた。まさかそんなことを訊かれるとは、夢にも思っていなかったからだ。
「と……とんでもない!」だから俺は全力で首を横に振った。「むしろ光栄っていうか、逆に俺なんかがこんな最高の体験させてもらってよかったのかっていうか……」
気持ち悪いくらいに早口になって思いの丈をぶつけると、新田さんは安心したのか、また笑みをこぼしてくれた。
「ほんとに……杉田君、
「え?」
なんでこのタイミングで急に、杉田Pの話題? と俺が面食らっていると、新田さんは何を思ったのか、すっと俺のほうに身を寄せてきた。その指が、俺の下半身に触れる。
「ねえ……杉田君の、また大きくなってるよ?」
「はうっ」
張りつめて敏感になった裏筋を指先でなぞられ、俺は情けない声をあげた。
そうなのだ。
俺の逸物は、この間の会話の流れなどまったく無視して、またもぐんぐんと成長を遂げていたのである。
いつから? と問われれば、これはもう、新田さんの生活感を嗅ぎ取りながらバスルームに足を踏み入れた時からだ。……いや、恥ずかしげもなく訂正させていただくと、はじめての挿入であえなく暴発してしまったときから、俺の堅物はさほど萎えていなかった。そりゃあ二度の発射で多少は硬度を落としてはいたものの、そこは血気盛んな我が息子、元気百倍の育ちざかりだ。いまではすっかり芯が入った立派な姿を取り戻しておられる。
「あんなに出したのに、まだ、こんな……。ねえ、ここでもう一回、シちゃおうか?」
新田さんはあやしげな誘いをかけながら、すでに逆手でゆっくりと肉筒をしごきはじめていた。
そうまでされては、断るなどもってのほか。
「い、いいの?」
それはもちろん、問いかけの振りをした懇願である。新田さんは妖艶な笑みを返すと、シャワーを止めて、俺の前にひざまずいた。
威嚇するように天をつく俺の怒張と、新田さんの顔が、真正面から対峙する。そして新田さんは上目遣いになって俺をうかがった。
「おクチでシても、大丈夫?」
え! まさか、フェラチオ?
「い……いいの?」
くどいようだが、これは心からのお願いである。息子氏もパンクロッカーみたいに頭をシェイクして俺の意見に同調していた。
「ん……ちゅ」
はたして新田さんは、放っておくと吠え出しそうな暴れん坊をやさしくつまみ、その先端にキスをした。息子はとたんに聞き分けがよくなり、喜びにその身を打ち震わせる。もちろん、それでしおらしくなるなんてことはなかったが。
だが、軽い挨拶もそこまで。新田さんはふたたび先端部分に狙いを定めると、今度は亀の頭の全体を、舌でベロベロと舐めまわしはじめた。
「うあぁあ……っ」
もっとも敏感な部分に軟体がぬらぬらと這いまわる感触がたまらず、俺は自然と声を漏らしていた。
新田さんの口撃は止まらない。舌先を突き出して亀の首筋をつんつんとつついたかと思うと、続けて肉筒の側面から根本まで舌でなぞり下ろし、帰りは裏筋を通って鈴口まで戻ってくる。全身をねちっこく蹂躙され、その証として彼女の唾液でマーキングされた肉茎は、いまや完全に新田さんの支配下に置かれていた。
「あ……む」
そして満を持して、新田さんは俺のモノを口に含んだ。亀頭部、胴、そして根本まで、新田さんはためらうことなく肉棒を口腔へ引き入れていく。
「ほおぅぉっ……」
敏感な部分の全体が生温かい感触に包まれ、腰がくだけそうになった。なんだ、これ。柔らかいのにわずかな締めつけもあって、口腔粘膜から直接、熱が伝わってくる感じがたまらない!
「ん、ん、ン、ん、んっ」
新田さんは右手で肉棒の根本を支え、左手は俺の太腿に置いて、キツツキみたいに頭を前後に振った。亀頭から胴を通って根本へ、そして根本から亀頭へ、たっぷりと唾液をたたえた唇がなめらかに滑っていく。彼女の頭が揺れるたび、こめかみのあたりからこぼれた毛先が俺の腿をさわる。生温かな鼻息も肉幹にふわりとかかる。溢れた唾液がたてるジュポジュポという卑猥な音がバスルームに反響し、耳朶を打つ。それらすべてが心地よく、そしておおいに官能を刺激した。
「あああ……っ、き、気持ちいいいよ、新田さん!」
俺はあふれだす感情をそのまま口にした。一心不乱に口奉仕を続けていた新田さんは、切羽詰まった俺の訴えを聴くといったん肉棒から口を離し、それでもなお右手で筒に刺激を与えながら、上目遣いに俺を見つめた。
「いつでも、好きなときに、出してね?」
慈悲深い許しを得た俺はすぐにでも果てそうになったが、肛門を引き締めるようにして、懸命にこらえる。三こすり半でイってしまった早漏の汚名を返上したい気持ちもあったし、フェラチオの悦楽をもうすこし味わっていたいという欲求もあった。
俺がまだ発射しないと踏んだのか、新田さんはふたたび逸物を口に含んだ。
「んん、ふぅ……ん……」
じゅぷ、じゅぷ、と水音をたてながら、新田さんはやはりリズミカルに唇を抜き差しした。口の中で舌ベロも絡めているのか、陰茎に時折、やや硬い刺激もあたる。それがまた性感のいいアクセントになっていることは言うまでもない。
「くっ! あ、あぁ……、ううっ」
このまま、されるがままにしゃぶられているだけでは……そう思った俺は、股間を襲う愉悦に耐えつつ、がら空きになっていた新田さんの乳房に手を伸ばし、ひと揉み、ふた揉み。
「んんっ!」
思いがけない仕打ちを受けた新田さんは一瞬、身をこわばらせたが、肉槍をくわえこんだまま、俺を見上げる。普段はおだやかなその目に不敵な光が宿ったのを、俺は見逃さなかった。
あ……これは、ヤバいかも。
「う……ん!」
ジュポッ! とひときわ派手な音を鳴らすと、新田さんは頬をへこませるほどに唇をすぼめ、ペニスを強く吸引した。
「ぐぅっ!」
ジュルルルッ! とまるで男の精をすべて吸い尽くさんばかりの強烈なバキュームに、俺もおもわず悲鳴を漏らした。それでも胸を揉む手を動かしながらかろうじて視線を下げると、新田さんは、どう? と言わんばかりの、ちょっと勝ち誇ったような目つきを返してくる。
急な胸揉みに怒った……というより、これは、負けるものか、と思ったんだろうなあ……。
普段からスポーツに打ち込んでいることもあって、新田さん、意外と負けず嫌いなところがあるから。
とにもかくにも、まさかまさかの、バキュームフェラである。新田さんはかなり奥までペニスを飲み込み、じゅっぽ、じゅっぽ、といやらしく吸いたてた。さすがに息が続かなくなったかいったん息継ぎを入れるも、今度は激しく唇をスライドさせて、肉幹を攻めてくる。もちろん舌先はトルネードするようなすばやい動きで粘膜に絡みついている。
ヤバい……本気だ。新田さん、本気だ!
こんなのもう……耐えられるわけがない!
「ぐはぁっ!」
新田さんがひときわ強くペニスを吸い上げた瞬間、俺はとうとう断末魔の叫びをあげた。視界がチカチカと点滅し、下腹部で精が爆ぜる。
「んっ! んんん……」
精液が鈴口から一気にあふれ出ると、新田さんはさすがに驚いたようだが、ペニスから唇を離すことはなかった。むしろ、脈打つ肉茎をしっかりとくわえこんで、どくどくと流れ出る樹液をすべて口内で受け止めてくれた。
射精が終わるのを待って、新田さんはゆっくりと陰茎から口を離した。
「う、うわ、ごめん! 口に出しちゃって……」
「ふぅ、ふっ」
唇を結んだ新田さんは、我に返ってあわてる俺に対して、声にならない鼻息でなにかを伝えると、覚悟を決めたようにすっと目を閉じた。
「ん……っ」
すこし顎を上げると、新田さんはわずかに眉間にしわを寄せながら、こくりと喉を鳴らした。
にわかには信じがたいその行為に、俺は目を丸くする。
「え……、まさか……! 飲んでくれたの……?」
「……すごく濃くて、ちょっと喉に引っかかっちゃった」
ほっそりとした喉に手をやりながら、新田さんはちょっとおどけたような苦笑いを浮かべた。
そんな健気な姿に、俺は胸を打たれる。と同時に、下半身の屹立にもまた快が響いた。
「すごいね……。まだ固いままだよ?」新田さんはその目にあやしげな光をともすと、膝立ちの態勢のまま、節操のない息子を右手で包み込んだ。「まだ……出る?」
「あっ!」
手コキが開始されるやいなや、俺はビクビクと腰を震わせた。言うまでもなく、射精直後の陰茎はきわめて敏感。そこにさらなる刺激を与えられようものならば、性感はリミットを越えて高まっていくしかない。
「に、新田さん! ダ、ダメ……ッ、もう……イったから……! こ、これ以上は、ヤバい……って、や、やめ……っ」
「やめていいの? でも、すごく固くなって、気持ちよさそうだよ?」
どういうスイッチなのか、新田さんの中の何かに、火がついてしまったらしい。小悪魔的な問いかけのとおり、新田さんはペニスをしごく手を止めようとしない。それどころか、びんびんとしなる男根を胸元に引き寄せると、さらに苛烈に手を振りはじめる。
「あ、あ、あ、あっ……!」
あまりの強性感にがくがくと膝が震え、俺はもう、立っているのもやっとの状態。それでもなんとか快感の嵐に耐え忍んでいたのだが、ついに射精感がぞわぞわと腰のあたりにのぼってくる。
いや……違う。これは、射精じゃなくて……!
「あああっ! に、新田さん! ホントにヤバいからっ! なんか、で、出る! 違うの出ちゃうから!」
「イキそう? イっていいよ?」
必死で訴える俺を急かすように、新田さんは俺の太腿にチュッとくちづけをした。
それが、限界突破の引き金になった。
「うぅあああぁっ!」
ブシュゥッ! まさしく水鉄砲のトリガーを引いたがごとく鈴口から透明な体液が噴射された。
「きゃあ!」
その発射を胸元に受けた新田さんが悲鳴をあげた。それでもなお右手でペニスをしごきつづけるものだから、鈴口からはとどまることなく微温水が噴出する。
「ん、ん、んっ!」
肉砲はコックが壊れた水道のように液体を噴き出しつづける。その勢いを自分の意思で止めることなどできず、俺はぞわぞわとした快感と妙な解放感を伴う発出にただ身を任せることしかできなかった。
「すごい……どんどん出てくる……! なに、これ? シャワーみたい……」
新田さんの感想はある意味で的を射ており、鈴口から飛び出す液体はそれこそシャワーの水流のように新田さんの肩や胸に降り注いでいた。
たっぷり数十秒は続いた放出が終わると、俺は潜水から戻った泳者のように大きく息を継いだ。
「はぁはぁはぁ……! 嘘、だろ……!」
俺は肩で息をしながら、天井を見上げてつぶやいた。
いわゆる、男の潮吹きである。その正体やメカニズムについては諸説あるようだが、いちおうは男のオーガズムの一種とされている。AVなどではMっぽい男優が出演する作品でおこなわれることが多いイメージのあるプレイだが、それがまさか自分の身に起きようとは……。
しかも、新田から手技を受けて。
「すごい……いっぱい出たね。ちょっとエッチなにおいもするし……」
新田さんはびしょ濡れになった自分の体を見下ろし、目を丸くする。においはほとんど感じられないと思うが、男潮の正体は結局のところ小便、という説もあるから、体にぶっかけてしまったのは本当に申し訳ない……。
「その……ホント、ごめん……。汚しちゃって……」
「ううん、気にしないで。お風呂だし、平気だよ」
恐縮する俺に、やさしく微笑み返してくれる新田さん。その心遣いが胸にしみる。
「ど、どうする? シャワー、したほうがいいよね……?」
「ん、そうだね……」新田さんはすこし考えるしぐさをしたあと、シャワーヘッドを手にして、栓を開けた。「体を流したら……ベッドへ行こっか?」
かたちのいい目元を蠱惑的にゆがめると、新田さんは適温になった湯滴を俺の股間へ注ぎかけた。
めくるめく夜の宴は、まだ終わりではないようだ。
*
バスルームを出てタオルで体を拭いたあと、俺は新田さんに誘われて、1LDKの最後のひと部屋、彼女のベッドルームへとお邪魔した。
六畳ほどの部屋の壁に沿って置かれたシングルベッドの縁に、俺と新田さんは隣り合って腰掛ける。おたがい、風呂上がりに使ったタオルを体に巻きつけただけの格好。恥部を隠されているといっても、頼りない布切れは新田さんの豊かな双丘をむしろ強調してしまってもいた。
「ん……」
俺の視線を感じたのか、新田さんが体を向きを変えた。目を閉じて、俺に向けてすこし顎を持ち上げる。
そのしぐさが意味するところがわからないほど、さすがに俺も阿呆じゃない。
俺は彼女の両肩に手を置くと、おそるおそる顔を近づけ、彼女と唇を触れ合わせた。
「あ……む」
俺を迎え入れた新田さんは、ついばむようなキスを数度繰り返したあと、不意に俺の口内へ舌を侵入させてきた。
「む、んん……」
俺は一瞬ひるみかけたものの、情けないところばかり見せてはいられないと、自分も舌を出して、彼女に応戦する。思い返せば、ここまでずっと新田さんにリードされっぱなしだ。童貞を捨てたばかりの未熟者とはいえ、バスルームの一件を含めれば、これが三回目。男の沽券、とは言うまいが、すこしはいいところも見せたい。俺は口を半開きにして突き出した舌を、同じように突き出された新田さんの舌と、チャンバラごっこでもするみたいに空中で絡み合わせた。
「はぁ……、んん、ちゅ……ぷ」
俺たちはふたたび唇を合わせ、口の中でも舌を絡ませあう。ちゅぱちゅぱ、じゅるじゅる、とたがいの唾液をすする音が耳朶を打ち、それだけでもう、沸騰しそうなほどに興奮が高まっていくのを感じた。
「……チュ……ンっ」
息継ぎをするかのごとくいったん唇が離れると、新田さんはそのタイミングで肢体をベッドに横たえた。脇のあたりで結んでいたタオルがはらりと落ち、豊かな双丘があらわになる。その頂点でぷっくりと実った桜色の果実に、俺はたまらず吸いついた。硬くしこったその実を舌で転がす。
「あっ……ン」
新田さんは俺のつたない舌戯にも敏感に反応し、甘い吐息を鼻から漏らした。交互に攻めたてられた左右の乳首は競うように硬度を増していく。
「下のほうも……いい?」
鼻息荒く問いかけた俺に、新田さんは小さくうなずく。
「……うん」
俺はもう辛抱たまらず、新田さんの唇をキスでふさぐと、閉じられていた彼女の股の間へ右手を滑り込ませた。指先の感覚を頼りに縦筋を探る。すると、そこにはもう、しとどに濡れたオアシスが。俺は水浴びでもするみたいに指を上下に動かした。
「はぁンッ」
新田さんは突然、びくりと体を硬直させて嬌声をあげた。どうやら偶然にも俺の指先が敏感な肉芽に当たったようだ。俺はここぞとばかりにその部分を集中的に攻めたてる。
「ああぁ……っ、ダメ……、そこ、感じすぎちゃう……!」
新田さんはたまらないと言わんばかりに身悶えした。眉尻を下げて唇を嚙みしめるその表情は愛らしくもセクシーで、俺の興奮をいやおうなく引き上げていく。
新田さんも快楽に翻弄されているのか、いつのまにか両足を開きはじめていた。
「に、新田さん! アソコ、舐めるから!」
俺は矢も楯もたまらず宣言すると、ついに門戸を開いた秘境めがけて頭から突っ込んだ。勢い任せの突入で攻略目標も定まらず、とにもかくにも、濡れそぼる陰唇にむしゃぶりつく。
「あンっ!」
雑な口愛撫でも勢いに負けたのか、新田さんは甲高い声をあげた。
俺は彼女の両膝裏に手を添えてさらなる開脚を迫り、ついにその全景をあらわした恥園を凝視した。
「うわ、すげ……!」
その光景のあまりの美しさと卑猥さに、俺は自然と感嘆を漏らしていた。
丈が短めの陰毛を乗せた恥丘は盛り上がりもごく控えめ。それでいて、すでに包皮が剥けて膨らんだ肉芽は炊き立ての米粒のようなつやつやとした輝きを放っていた。興奮ゆえか小陰唇のビラビラも外側に向かってすこし捲れており、中から覗くサーモンピンクの秘芯からは透明な愛液がじゅくじゅくと溢れ出している。
「恥ずかしいから、あまり見ないで……」
「ご、ごめん。でも、キレイだよ……」
お世辞ではない褒め言葉を口にすると、俺はフェロモンに誘われる蜂がごとく、淫靡な蜜の香りを放つ女芯へ、ふたたび唇を近づけた。
「アッ!」
新田さんの背が跳ねる。俺も今度は陰核に狙いをさだめ、すばやく舌先を動かして、この世でもっとも敏感であろう肉豆を細かくはじいた。未経験の口奉仕ゆえ、これで合っているかもわからないが、とにかく思うがまま、感じるままにやってみる。
「アッ、アッ、アッ、アンっ!」
俺の舌先が恥豆をはじくたび、新田さんは楽器になったみたいに艶めかしい声をあげた。
性感もうまい具合に伝播しているのか、秘芯からは粘液がとめどなく染み出していた。俺はべろりと陰唇を舐め上げ、こぼれそうになった愛汁を吸い上げる。やや酸味がかった女露は、舌鼓を打ちたいほどに美味だった。
「はふぁ……新田さん、痛くない?」
「大……アンッ……丈夫。ねえ……指も一緒にシて……」
「う、うん」
いやらしいおねだりを受けた俺は、クリトリスに舌を這わせたまま、その下部に開いた秘孔に、右の中指をゆっくりと挿し入れた。ぬらりとして熱を持った肉がすぐに指先に絡みついてくる。……言い訳に聞こえることは承知で言わせてもらうと、こんな穴に童貞がチンコを突っ込んだら、そりゃあ一瞬でイカされるって。
「あッ、ハァンッ……い、入口に近いところの……アンッ、上っ側に、気持ちイイところが……ンン、あるから……ン」
「こ、ここ?」
「ハアァァァア……ッ!」
案内に従って、膣口付近ですこしざらざらとした感触がある部分を指の腹で押し込むと、新田さんは途端にあられもない声をあげた。
「き、気持ちいいの?」
「ヒゥン、ヒン、ヒィン!」
むせび泣くような嬌声が確認への返事だろう。俺は爪を立てないよう注意しつつ恥肉の敏感部位を断続的に刺激、同時に舌で陰核を舐めまわした。もちろん、こなれたテクニックというわけにはいかず、むしろずいぶんとつたない手技舌戯だったろう。それでも、新田さんの感度は良好だった。
「ア、ア、ア、ダメダメダメ……! イク……ッ、イッちゃう!」
プシャッ!
新田さんが叫ぶと同時、彼女の陰部から、水風船がはじけたみたいに透明な滴がほとばしった。潮吹きである。
「うわっ」
俺は秘園に接近してクンニをしていたおかげで、その水しぶきをもろに顔面で受けてしまう。言うまでもなく、ご褒美だ。
「ゴメンね……、すごく気持ちよくて、吹いちゃって……」
新田さんは息も絶え絶えに言うと、やや定まらない目つきで俺をうかがった。
「ぜ、全然! むしろ、感じてくれて嬉しいよ」
まったく嘘偽りのない本心だ。
女性の場合、潮吹きはAV等における視覚上のパフォーマンスという側面が強く、快感はさほどでもないという説もあるが、新田さんの反応を見れば、まあ人それぞれなのだろう。なお、ほぼ尿だろうと推測される男の潮吹きと違い、女性の潮の成分は尿のほかにスキーン腺と呼ばれる尿道周囲腺からの分泌液も含まれるという研究結果もあるらしい。まあ、おしっこだろうとスキーンなんとかだろうと、男にとってそれがご褒美であることに違いはない。
だからこそ俺のほうでも、再突撃の準備はすでに整っていた。
しとどに濡れた雌芯を前にして、俺は欲望を充填した男槍を構えた。
「あ、あの……いい……かな?」
多くを言わない俺の問いかけに、新田さんはこくりとうなずいた。
俺はすぐさま新田さんに正面からおおいかぶさろうとしたが、ふと思いついて直前で動きを止める。
「あの……、後ろから入れてみてもいいかな?」
「え、後ろから……?」新田さんはちょっと驚いた顔を見せつつも、さすがは才女、すぐに俺の要求を理解してくれる。「うん……いいよ」
体を起こした新田さんは、両手と両膝をベッドについて、俺のほうへお尻を向けた。
「うわ……」
新田美波が一糸まとわぬ姿で四つん這いになって、こちらにヒップを突き出している! 筆舌に尽くしがたい感激に襲われ、俺はごくりと生唾を飲み込んだ。
「やっぱり、すこし恥ずかしいね、この格好……」
新田さんが向こうを向いたままつぶやいたが、俺は全力で首を横に振る。
「でも、めちゃくちゃキレイだよ!」
実際、やや背をそらせたポーズは無駄肉のない腰のくびれを見事に強調しており、見惚れるほどに美しかった。やはり思ったとおり、顔とおっぱいを直接見られないというデメリットを差し引いてもなお、後背位には抗いがたい魅力がある。
むそん、視姦だけでは満足できない。
「い、いくよ!」
進軍ラッパのごとく宣言すると、俺は肉槍片手に新田さんの臀部に突撃。あられもなく晒された秘部は肛門まで丸見えだが、膣口もよく見える。俺は迷うことなく適切な入口に切っ先を当てがった。そのまま腰を前へ。
「アンッ!」
「ぐう……っ」
ほとんど力を込めた感覚はないのに、肉槍はずぶずぶと秘裂へ吸い込まれていった。俺は新田さんの柔らかな臀部に手を置き、限界まで腰を押し込む。張り詰めた欲槍は遠慮なく恥肉を押し広げ、その先端を奥の奥まで食い込ませる。
「はぁぁぁっ……深いぃ」
新田さんが酩酊したかのような盛り声を漏らした。俺も感じたことだが、バックスタイルだと正常位にくらべてより深い挿入感を得られるらしい。男目線でつけくわえるなら、結合部もばっちり見下ろすことができるので、かなりエロチックだ。
バックをお願いして、本当によかった……!
「動く……ね」
もっともっと、新田さんを味わいたい。そう思った俺は、言うが早いか、自然と腰を使いはじめていた。最初はゆっくり……なんて余裕はもはやない。俺は初めからすばやいピッチで腰をスライドさせる。
「い、いや! すごいっ、ン、ン、ンンっ!」
激しい打ちつけに反応し、新田さんも驚嘆の喘ぎを発する。そのソプラノの嬌声に、結合部から漏れるニチャニチャという猥音が混じる。この上なく卑猥なオーケストラだ。
「ぐぁ……、めちゃくちゃ……気持ちいい……!」
俺もたまらず快感を訴えた。おもえば一度目は挿入後すぐに果ててしまったから、媚肉との戯れをこれほど存分に味わうのは初めてだ。
とにかく、気が狂いそうなほどに、気持ちがいい。
肉棒を抜き差しさせるたび、愛液にまみれた襞がまとわりついてくる。バックで深く入ることもあり、先端から根本まで、刺激されないところがないのだ。肉棒にとっては極上のマッサージである。
「ア、アン! すごい、イイ、イイよぉ……!」
勢いをつけて腰をぶつければ、豊かな臀部の肉が波打つように揺れる。新田さんは姿勢を保っていられなくなったのか、いつのまにか肘をついた体勢になり、快感に耐えるようにシーツに顔をうずめていた。
俺が新田美波を感じさせているんだ!
そう思うと、さほどSっ気は強くないはずの俺でさえ、征服願望を強く搔き立てられた。
しかも、ちょっと視線を下ろせば、涎を垂らして男を飲み込むいやらしいラビアまで目にできるのだ。これは、たまらない。
「くあっ! 新田さん、俺、もう限界かも!」
「アンッ! ま、待って!」
欲望のままに最高潮を目指そうとした俺に待ったをかけると、新田さんはみずから腰をずらして秘孔から肉栓を抜いた。締めつけを失った男槍は不満を漏らすかのようにビンと跳ね上がる。
「え……?」
突然のおあずけをくらってとまどう俺。しかし新田さんは体の向きを変え、俺を安心させるようにやさしくくちづけをしてくれた。
「すごくよかったよ。でも、やっぱり顔を見ながらもシたいから……ね?」
その瞳に妖艶な輝きをともすと、新田さんはそっと俺をベッドへ押し倒した。そして仰向けになった俺の腰にまたがり、やる気まんまんの屹立を指でつまむ。これはまさか……。
「き、騎乗位?」
「うまくできるかわからないけれど……」
そう謙遜しつつ、新田さんは濡れそぼった淫口へ肉棒の先端をたくみに誘導した。「ン」と小さな声とともに新田さんが腰を落とすと、ペニスは何の抵抗もなく淫裂へ飲み込まれていく。
「くぅあ……っ!」
逸物がじんわりとした熱と締めつけに包まれ、俺は愉悦に眉根を寄せた。ここまで正常位、後背位と体験させてもらってきたが、それらともまた違った挿入感だ。体位によって膣道の味わいも変化するんだな……。AVを見てオナニーしてるだけじゃ絶対にわからなかった。これが大人になるってことなのかな?
「アッ、アッ、アンッ、すごい……! これ、一番奥まで届いている……かも……」
挿入感覚の違いは女性側にもあるようで、新田さんは俺の上で腰を前後上下に揺らして硬物の肌触りを楽しんでいるようだった。攻めているのは自分なのに、それでいて打ちのめされているかのように顎を上げ、悩ましげな表情で快感の波に耐えている。新田美波のこんな淫らな姿、大学の連中はきっと誰も知らない。優越感に浸るわけではないが、友だちにも見せない姿を自分だけにさらしてくれているのだと思うと、たまらなく嬉しかった。
「くぅううッ、気持ちいい! 新田さん、もっと動いて! 俺も頑張るから!」
「アア、アアッ、ンッ!」
刻一刻と迫りくる決壊をすこしでも遅らせようと、俺は必死で会陰を引き締めた。だが、新田さんもついに本気を出しはじめる。両膝を立てて膝頭に手を置くと、杭を打ち込むみたいに、大きく、強く、腰を上下にピストンしだしたのだ。
「くほぉぉぉぉッ……!」
あまりに苛烈な攻めに、俺はたまらず咆哮を放った。肉胴はうねる襞に強烈に擦り上げられ、もはやノックアウト寸前。なんとか持ちこたえているのが奇跡と思えるほどの強刺激だった。
新田さんの激しい上下動にともなって、豊かな胸のふくらみはゴムまりみたいが跳ねるみたいにゆさゆさと揺れていた。臀部の肉は俺の太腿に当たってバチンバチンと音をたて、そこに結合部で粘膜がこすれ合う卑猥な水音がくわわる。愉悦の大海の中、空気を求めて大きく息を吸えば、甘ったるいような性の匂いが鼻孔に充満し、かえって窒息しそうにさえなる。
「ううう……! すごいぃ……っ、気持ちよすぎるよ、新田さん!」
「アァアアァンッ! イヤ……美波……美波って呼んで!」
新田さんはみずからも快感にむせびながら、切なげな目を俺に向けてきた。
その要求がなにを意味するのか、考えている余裕はなかった。
「美波!」
俺は求めに応じて叫び返すと、勢いよく上体を起こして彼女に抱きついた。
「きゃあん!」
体勢を崩して後ろへ倒れそうになった新田さんを、俺はすかさず抱き留めた。我ながらナイスプレイだ。俺は膝を曲げて正座のような姿勢をとると、新田さんの腰に手を回した。新田さんも俺にまたがったまま、俺の首に手を回してくれる。もちろん下半身はつながったままだ。
対面座位。最高度の密着感を誇る体勢をとった俺たちは、一瞬見つめ合ったあと、どちらからともなく唇を重ねた。
「ん、んん……チュパ、ン」
俺たちはたがいの存在を確かめるように、ねっとりと舌を絡め合う。唾液と唾液の交換。熱と熱の交換。そして、愛と愛の交換……とまで言うのは、さすがに自惚れがすぎるだろうか。
だが、勘違いでも構わなかった。いまは、いまだけは、新田さんの……いや、美波の思いを、全身で受け止めたい。俺は美波と激しい接吻を繰り返しつつ、下半身の抽送を開始した。
「ああっ、あっ、あっ、ふぅん」
ベッドのスプリングも利用して腰を突き上げると、美波のほうもそのリズムに合わせて体を上下に揺する。
「ああっ、深……いぃ……!」
ふたりの動きがシンクロし、肉槍が女の防衛線を突き破らんとばかりに奥まで刺さると、美波は淫らに喉を震わせた。
俺はといえば、もう声もだせないほどに追い詰められていた。快楽にむせぶラビアに根本まで食いつかれた男茎はすでにギチギチに張り詰め、睾丸も腹に引っ込みそうなほどにせり上がっている。ちょっとでも気を抜けば暴発すること必至である。
「ぐぅうううっ!」
それでも俺は歯を食いしばって懸命に腰を振った。限界はとっくに突破していたが、ここまでくればもう行くところまで行くしかない。
熱のこもった体からはいつのまにか汗が噴き出していた。それは美波も同じで、きめ細やかな肌はしっとりと汗ばみ、まるでオイルでも塗ったかのようにあやしくテカっている。濡れてた肌と肌の密着は、それじたいで濃厚なキスを交わしているかのようだった。ピストンの上下にともなって乳首もこすれ合う。俺たちは全身性感帯となって快楽を高め合っていた。
「くぅうっ……美波のま〇こ、どんどん締まって……!」
「杉田君のぉ……アン、お、おち〇んちんもすごく硬くて……い、いいぃ……っ」
家族にも大学の同級生にも決して聞かせられないであろう卑猥な単語を、それぞれが口にする。なにか心が通い合ったような気がしたのは、俺だけだろうか。
「む、うん!」
「ひ、ひぃっ!」
思いの丈をぶつけるような腰の突き上げを食らって、美波は悲鳴とともに背筋をそらせた。ずんずんずんと続けざまに下から肉杭を打ち込まれると、美波はもう密着姿勢を保っていられないのか、両手を後ろ側について体を支える。
「あぁあぁっ、ああっ……すごい……っ、また、イッっちゃいそう!」
もう気絶寸前なのかと思うほど頭をがくがくと上下させながら、美波は絶頂の予感を口にした。
「ううう……っ、お、俺も……もう……!」
俺のほうもさすがにこれ以上は耐えられそうになかった。男の精をすべて絞り尽くさんばかりに強く細かく蠕動しはじめた膣肉に、射精感が一気に高められていく。
「あぁぁぁっ……! 杉田君、来て! お願い……ン……、一緒にぃ……っ!」
美波からの淫らな誘いに肉欲が強く刺激された。だが本能の嵐の中でかろうじて残った理性が、俺に待ったをかける。
「み、美波……っ、ホントに……イく! ぬ、抜かないと……」
いまさらだが、コンドームはつけていない。このままでは、精液をすべて膣内にぶちまけてしまう。それはさすがにマズい。
「イ、イヤ!」
だが美波はあろうことか、その長い脚で俺の腰をがっちりと挟み込んだ。俺の申し出を拒絶するかのように。
「ピ、ピルを飲んでいるから! 大丈夫だから、あああぁッ!」
「えっ……!」
衝撃を受けて息を詰めた俺に構わず、美波はさらに声を張り上げる。
「ナ、ナカに! ナカに出して!」
絹を裂くような彼女の絶叫で、俺の理性もとうとう振り切れた。
「ぐあッ、美波ィ!」
ずどん、と女芯の最奥めがけて渾身の一撃を打ち込んだ刹那、先端から男の証が一気にあふれ出した。じかに見ずとも分かるほどの大量の精液が、美波の膣内へどくどくと注ぎこまれる。
「はぁぁああ……、イ、イくッ……、
美波は男欲の奔流を体内で受け止めながら、みずからも絶頂を迎えたようだった。スペルマを吸い上げるように収縮する淫壺の締めつけは、しばらく緩みそうもなかった。
「あ、あああぁぁ……」
俺はあまりの悦楽に朦朧とする意識の中で、全身をビクビクと痙攣させながら恍惚の表情を浮かべる美波を、ぼんやりと眺めつづけた。
*
それから後のことを、すこし話そう。
準備段階で多少の確執めいたものは生まれたものの、オープンキャンパスにおける俺たちゼミ生のイベントは、いちおうの成功を見た。前にも述べたように学部学科のシラバスともゼミの研究テーマともなんら関係のない創作ダンスだったが、オープンキャンパス参加者の皆さんは余興として楽しんでくれたようだ。なお、俺たちのパフォーマンス中、誰よりもノリノリで手拍子を打っていたのは、進学希望の高校生たちでも付き添いの親御さんたちでもなく、我がゼミの教授先生だったことは、忘れずに言い添えておく。
そして、イベントの終了と同時に、俺のにわかプロデューサー稼業もお役御免となった。ただし、なぜか俺に対する「プロデューサー」呼びはその後も変わらず続けられることになった。まあ、あだ名としてすっかり定着してしまったわけだ。
だが同級生の中でひとりだけ、二度と俺をプロデューサーと呼ばなくなった人がいた。
新田さんだ。
断っておくが、新田さんとの関係は、あの夜の後も大きな変化はなかった。さすがにニ、三日は照れくささももあって、おたがいなんとなく距離を置いていたけれど、イベントの打ち合わせという口実も手伝って、しだいに元通り、同級生として言葉をかわすようになっていった。
……そう、同級生として。
恋人どうしになる、なんてことは、決してなかった。
あの夜の出来事についてはどちらも口にしなかったし、もちろん他言することもなかった。当然、体を重ねたのも、あの夜の一度きりだ。
だから、新田さんがあの日、何を思って俺を受け入れてくれたのか、確かめることもできなかった。
こうして俺たちは何も特別な関係でない同級生としてその後の大学生活を過ごし、やがて卒業の日を迎えた。新田さんはもちろんのこと、俺も含めたほかのゼミ生全員、揃って四年で卒業できたのは、よかったと思う。
卒業後の進路についても、各々まずまず思い通りの道へ進めたようだ。
植田さんと吉岡さんはそれぞれ志望していた業界へ無事に就職。二人とも勤務地である大阪で忙しい日々を送っているらしい。それぞれ恋人との関係がいまも続いているかは……ちょっとわからない。
驚かされたのは山崎で、あのデザインパーマ、なんと大学院へ進学したのだ。研究室に残り、引き続き教授の指導の下、研究者を目指すらしい。あのデザインパーマがねえ……。つくづく、人間、見た目ではわからないものだ。
ただ、さらに驚くべき道に進んだのが、誰あろう新田さんだった。
新田さんは大学卒業後、東京へ出てアイドルになった。芸能人である。
……いや、「なった」というか、後から知ったことだが、新田さんは大学在学中からすでに芸能事務所に所属し、アイドル活動をしていたらしい。学生のあいだは学業を優先していたそうだが、それでも週に何回かは仕事やレッスンのため東京へ行っていたという。俺が知るかぎり、新田さんは講義やゼミも休まず出席していたし、おまけに部活もやっていた。相当忙しい毎日を送っていたはずだが、それで周囲には疲れた顔ひとつ見せていなかったのだから、まったく恐れ入る。文武両道にもほどがあるだろう。
はれて社会人となり、芸能活動を本格化させた新田さんは、瞬く間に人気アイドルとなった。すでにソロでの楽曲をリリースしており、有線放送などで彼女の歌声を耳にすることも少なくない。同じ事務所のアイドルたちと組んだユニットでは大きなライブも成功させているようだ。最近ではテレビのバラエティ番組や雑誌のグラビアページなどで見かける機会も多くなったから、世間的な認知度もあがっていることだろう。そうしたメディア出演時だとやけに肌の露出が多い衣装を着ているような気がするのだが、お父上の心情はいかばかりなのだろう……。
とにかくもまあ、新田さんは本当に遠い存在になってしまったわけだ。
だから、たとえば俺があの一夜のことをネットのどこかに書き込んだとしても、イタいドリーム小説だなんだと、鼻で笑われるだけだろう。
むろん、そんな真似はしないし、それでいいのだ。
最後に蛇足ながら、俺自身のことを話しておこう。
大学を卒業した後、俺も無事に地元の企業に就職することができた。業者向けに配達用のダンボールを製造・販売する会社だ。仕事はそれなりに忙しく、毎日ひぃひぃ言いながら外回りの営業に駆けずり回っている。ちなみに仕事の内容は大学での専門とはまるで関係はない。まあ、俺みたいな何のとりえもない人間が就職できただけでもめっけもんと言うべきなのだろう。
ただ申し訳ないことに、入社してまだ一年ちょっとだというのに、俺は最近、転職もいいかなと考えはじめている。仕事や待遇に強い不満があるわけではないが、本当にただ、なんとなくだ。
哀しいことに社会人になってからも女性との縁はまるでなく、もちろん家庭を築く予定もないから、これからの人生設計だとかたいそうなものを考えているわけでもない。なんなら転職するかどうかさえ決めかねているし。
ただ、本当になんとなくではあるが、就職を機に引っ越したアパートの部屋でエロサイトを眺めながら、やりたい仕事みたいなものを、ぼんやりと考えることはある。
つまりはまあ、美波からもう一度「プロデューサーさん」と呼ばれるのを目指すのもいいかなとか、そういったことだ。