人喰いの怪物アイに捕まってしまったユウは、彼女と屈辱的な一夜を共にすることになってしまった。

※これは『フェバル~TS能力者ユウの異世界放浪記~ 4章『I』 R18版』の設定に基づくifの短編エピソードです。4章のコンセプト的なお話です。
フェバル~TS能力者ユウの異世界放浪記~ 4章『I』 R18版
https://syosetu.org/novel/210662/
フェバル〜TS能力者ユウの異世界放浪記〜(本編)
https://syosetu.org/novel/13469/

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ユウアイなるは卑蜜の交わり

「ただいま。愛しき我が家」

 

 アイはユウを伴い、自宅(愛の巣)へと凱旋した。

 元々ユウが借りていた安アパートに、彼女の宿主たるアルシアが押しかけてきた形で始まった共同生活。

 二人の生活跡が滲む思い出の場所。

 周辺住民は既に皆喰らい尽くし、建物にはもう二人だけ。邪魔する者はいない。

 暴力的なアイがそこを壊さず取っておいたのは、かつて彼女であった名残か、密かに抱いていた欲求のためか。

 

「放せっ!」

 

 ユウは触手で全身縛り上げられ、宙吊りにされている。必死に暴れているが、魔力の尽きた非力な肉体では如何ともし難い。

 触手はアイが自らの身体を液状変形させて構成したものであり、元を辿れば数十万単位のヒトが材料となっている。

 

「暴れないの」

「う゛っ!」

 

 邪悪な笑みに口元を歪めたアイは、ろくに身動きできぬユウへ腹パンをめり込ませていた。

 二度、三度、四度。

 気力強化で防御を固められない女体にはよく響く。

 ユウは悶絶し、手足は力なくぐったりしている。

 

「ほんと。悪い子」

 

 加虐心を満たしたアイはくすりと微笑んで、たった今殴ったところを愛しそうにさする。

 力強く殴打したため、くびれた腰の真ん中辺りが内出血で痣になっていた。

 触れたところへ淡く白い光が流れ込む。

 アイはわざわざ己の生命力を用いて、痣を消してやったのだった。痛みを感じる程度には治し切ってやらないが。

 

「大事なカラダだもの。綺麗にしておかないと。ねえ」

 

 もちろん――我が身に迎え入れるべきものとしての意である。

 ユウはぞっとした。だが何か言おうとすれば、また何度でも痛めつけるとアイの冷めた目が脅していた。

 この場は何にもならないと悟る。

 無駄な消耗を避けるためにも、ユウは歯を食いしばって押し黙ることにした。

 

「それでいい。いい子だ」

 

 満足したアイはユウを引き連れて、部屋の奥へと向かう。

 そこに鎮座していたものは、狭い部屋に似つかわしくないサイズのダブルベッドだった。

 かつてアルシアが「気に入った」からと買ってしまった品で、実に部屋の三分の一以上を占めている。

 当時彼女が秘めていた仄かな、想いは確たる欲望へと昇華され。アイの内を満たしている。

 

「なにを、する気なんだ」

「一緒に寝ましょう」

「……は?」

 

 ただ添い寝するという意味でないことは、嫌でもユウにはわかった。

 

「だってお前、素直に食べられてくれないんだもの」

「当たり前じゃないか!」

「とっても気持ちいいのに」

 

 常識がまるで違うのか、一切の悪気なくただ残念がるアイ。

 ユウは自(女)ら(の)の(子)特殊性(になれること)によって、無抵抗でアイに取り込まれない体質を獲得している。

 ゆえに完全に詰んでしまったわけではないが……ユウは知識としては持っている。内心恐れていた。

 生物は食べられる瞬間にこそ、最も快楽物質を発するものだと聞いたことがある。

 一方、アイは度重なる血肉の経験として識っている。

 獲物がアイを受け入れ、アイが獲物と交わる。ともに一つになる。

 とろとろに溶け合って、新しいわたしになる。

 性の交わりをも超える共同作業――その恍惚と快楽を。

 だが今はまだ届かない。

 

「だからせめて。愉しみましょう」

 

 時折怪物としての本性が顔を出すのか、有無を許さぬ冷たい口調で告げるアイ。

 そして宙吊りにされていたのが、ベッドに仰向けで縛り付けられることになった。

 両手足と首が肉の枷に嵌められる。

 これから何をされるのか。嫌でも悟ってしまったユウは身震いした。

 

「やめて! お前となんかしたくないっ!」

「……つれないこと言わないでくれる? わたしにはこの子の記憶も確かにあるのだから」

「乗っ取って奪ったもののくせに!」

 

 ユウは殺さんばかりの目で睨み付けるも、それすらアイにとっては愉悦の糧だ。

 

「ふふ。そうよ。奪った。つまりね、もうわたしなの。親友の頼み一つくらい聞いてくれたっていいでしょう?」

「嫌だ!」

 

 泣きそうな声で身をよじろうとするユウだが、まともに動くことすら許されない。

 ユウは悔しかった。

 アルシアとは半年ほどの同棲生活だった。

 女子としてはややがさつで、でも優しくて。親しみやすくて。

 確かにちょっとスキンシップが過ぎるところはあった。女の子としての私が、ほんのり好きかもしれなかった。

 でもそれだけだ。未来を夢見ていた、一人の普通の女性だった。

 お前が乗っ取りさえしなければ。

 健全な親友関係のままだった。みんなに愛される歌姫になっていたはずなんだ!

 なのに。慣れ親しんだその顔で、その声で。

 欲望のままに私を貪ろうとしている。

 彼女のあり得ない、理性と常識によって抑えられていた一面をわざわざ見せ付けられているようで。

 見たくもないものを押し付けられて。

 それがただ襲われるよりも――とても、怖い。

 

「くそ、くそっ!」

 

 どんなに藻掻いても、ただ締め付ける力が強まるばかり。

 

「無駄な足掻きはしないことだ。一つ当たり十万のヒトは『使った』枷だもの」

 

 アイは勝ち誇った顔で、とうとう身じろぐばかりのユウの頬に手を触れた。

 翼等の余計な装飾は邪魔になってしまうため、今のアイはまったくの人型に変形していた。

 ただし、不完全な肉体は未だヒトならず。化け物としての特徴を色濃く宿している。

 綺麗に白の柔肌を残した顔以外は、薄桃に変色したゼリー様の肌がぬめり、テカっている。

 アルシアの顔だけが完全なる女神――その一部として、完全なるヒトのカタチをしている。

 まるで永遠を生きるものであると、高らかに主張しているかのようだった。

 アイは、天使と称された彼女の声で囁く。

 

「万全のお前ならば、簡単に破れるでしょう。だが今やお前は味方もなく、魔力も使い果たした小娘に過ぎない」

 

 改めて。無力を突き付けられる。

 ユウは苦しげに顔を歪めた。

 致命的な失敗だった。

 大敗を喫した仲間たちは皆、目の前のこの怪物に喰われてしまったのだから。

 ユウは、どうにか三人の巫女を逃がすことだけには成功したが……奮闘の末、魔力切れとなってしまった。

 そこをこの宿敵に捕えられてしまったというわけだ。

 そして一度捕まってしまえば……まったく希望が見えない。

 

「残念なことね。せっかく溜まろうとしている魔力も、わたしが端から吸い取ってしまうのだから」

「くっ……!」

 

 確かにユウは、全身を満たすべきはずの力が空のままになっているのを痛感していた。

 四肢に括り付けられた『生命或物乃枷』は、魔力吸収効果を備えている。

 リデルアースは魔力許容性の低い星だが、皆無ではない。

 今も大気から持続的にユウが取り込む魔力要素は、ユウから枷を通じてアイに注がれている。

 ユウから注がれるもの。アイはその味わいに、性的興奮の混じった歓びを得ていた。

 皮肉にもユウ自身の高い素質が、アイへさらなる力を与えている。

 心が折れそうになりつつも、ユウは気丈にも懸命に強がって言った。

 

「それでも、喰われてなんかやるもんかっ!」

「そうね。わたしはまだ、あなたを食べられない。精々がここへ縛り付けておくくらい」

「放してよ!」

「永遠にこのまま。千日手。それも悪くないかもしれないけれど。ふふふ」

 

 アイには余裕がある。状況の絶対的優位だけではない。

 ユウも悟っていた。揺るぎない自信の顕れであると。

 おそらく、永遠というものはない。

 放っておけば、邪魔される者のないアイは。際限なく人を喰らい、果てしなく力を増していく。

 そしていつか……三人の巫女さえも手にかけられたならば。

 女神の五体は一つの身に宿り、自分でさえも抵抗し切れない何かになる――確信にも近い予感があった。

 だから絶対にこの場から逃げ出して、成長し切る前に倒さなくてはならないのだ。なのに。

 

「それとも男に変身してみる? それでもやはり、破れはするでしょうね」

 

 アイはユウの腰の上に跨り、嘲笑混じりに見下している。

 

「ほら。やってみてもいいのよ? いつでもどうぞ」

 

 ユウは唇を噛み、顔をわずかに背けることでせめてもの悔しさと抵抗を示した。

 男に変身する。それだけはできない。

 こいつはわかっていて煽っている。

 なぜなら男では、この恐るべき怪物の固有能力【侵食】――その精神支配作用に耐えることはできないからだ。

 自ら終わりへ身を委ねる自殺行為だけは許されない。ほとんど詰みに近い状態だとしても。

 必死に打開策を考えながら、ユウは絶望的な気分がどんどん心を満たしていくのを感じていた。

 どうにもならない。逆転の一点が見つからない。頭で考えれば考えるほど。

 目の前のアイ(怪物)に、理解(わか)らされてしまう。

 

「うふふ。そう。その顔、とっても素敵……。それが見たかったの」

 

 アルシアの顔を貼り付けた怪物は、恍惚として自らの頬を両手で揉みくちゃにする。

 そして、愛しき者へ語り聞かせるように。アイは一つ一つの観測的事実をなぞった。

 

「強がりで、負けず嫌いで。何とかしなくちゃって。いつも健気で、一生懸命で」

 

 深紅の瞳を爛々と輝かせ、ずいと顔を引き寄せて。

 耳元で甘く囁く。

 

「なのに本当は」

 

 初めての邂逅で記憶を読んだから。自分にはよく解かっていると。

 

「怖がりで、甘えん坊で、泣き虫で」

「ううっ……」

「今だって、逃げたくて。泣きたいのを必死になって堪えていて」

 

 途端に無表情となり。

 ヒトなるものへの擬態など、一瞬で止め去り。

 見下すべきところを、たっぷりと視線に含めて。

 弄ぶように、ユウの首元を人差し指でそっとなぞりながら。

 アイは実に無感動に呟いた。

 

「下らない。馬鹿みたいに。無駄なことをしている」

 

 今や俎板の鯉となった宿敵(ユウ)を、わずかの間、ひどく冷めた目で俯瞰して。

 もう再び器の、アルシアとしての感情に身を委ね。うっとりとしていく。

 アイは宿主から自ずと湧き上がる気持ちの発露を欲望のまま存分に味わい、浸っていた。

 人の心。アイにはそれがわからない。

 しかし人ならざる化け物にとって、永遠に未知なる糧であり。

 食欲(最大欲求)に手向けられた極上のスパイスであることだけは確かなのだ。

 

「ああ。ユウ。お前はなんて可愛くて、どうしようもなく愚かで。尊いものかしら」

「い、やだ……! やめてよ……!」

 

 押し寄せる恐怖が、ユウの戦士であれという心の鎧を徐々に剥がそうとしていた。

 生娘のように怯え、身をよじろうとしてそれも満足にできず。ただいやいやと顔を背けようとするばかり。

 そんな憐れなユウの姿を、アイの宿主はいっそう愛おしいと感じている。

 可哀想なユウ。お前もわたしも運命の籠の鳥。

 ぜんぶ委ねれば、楽になれるのに。

 

「そんなところが――たぶん、そう。たぶんね」

 

 アイは両手でユウの顔を掴み、逃げられないようにすると、自らの顔を近づけた。

 唇が触れ、強引に舌がねじ込まれる。

 なおじたばたと暴れようとするユウを組み敷いたまま、存分に堪能する。

 舌と舌とが絡み合い、唾液が混ざり合って、ユウの内側へ注がれていく。

 欲望のまま、一心不乱に貪るだけのキス。

 なのに不覚にももたげる恍惚感に、ユウは混乱する。

 アイの体液には催淫作用があり、ユウの理性を溶かそうとしていた。

 どんなに心は嫌がっても、生理反応は避けられない。生来の甘えたがりで押しに弱い性分が、されるがままの現状を受け入れようとしている。

 そんな情けない反応を示してしまう自分が、ユウは心底嫌だった。

 生体としては雌同士の、密接で濃厚な絡み合い。

 どれほどそうしていただろう。

 頑なに折れまいとする意志と裏腹に、ユウの四肢は徐々に抵抗力を失い、弛緩していった。

 やはりこの子は崩れると脆い。効果の顕れにアイは満足して目を細める。

 瞳を瞑り、心ゆくままに味わい尽くしてから、唇を離した。

 ぷはっと甘だるい吐息とともに唾液が糸を引いて、やがてぶちりと切れた。

 それが何とも名残惜しくて、アイはユウの艶やかな黒髪をあやすように撫でていた。

 

「ねえユウ。わたしね。今とってもいい気分なの」

 

 もはや蕩ける顔で呆然と見つめるだけになったユウの耳朶を、甘い誘惑が打つ。

 アイは幸福と冷めたものの入り混じった感情で愛を囁きながら、爪を刃物のように尖らせる。

 普段なら乱暴に服を引き裂くものを、今は宝物を開けるように。中の柔肌を決して傷付けぬように、丁寧に引き裂いた。

 そして露わになる。

 アルシアとしては見慣れたもの。アイとしては初めて目にするユウの裸体。

 16歳のまま止まってしまった女の子のカラダは、元は男と生まれたと思えない。

 あどけなさに色気を含んだ顔も。見る者が見れば羨む豊かな膨らみも。優雅にくびれた腰も。

 そして薄っすらと毛に覆われた秘所は、とっくに蜜に濡れて。なんて素直なカラダかしら。

 五体のすべてが、このリデルアースの女神に収まるに相応しい美しさを備えている。

 羞恥と悔しさに悶えようとしても、蕩けた知性ではままならない。

 あられもない姿など、下手な女よりも女らしい。

 本来は女として生まれてくるはずだった命が【運命】によって捻じ曲げられたのだと、奴は言っていたか。

 おそらく本人も預かり知らぬ事実を咀嚼し、優越感とともに浸る。

 だが今生のお前が半分は男であろうと、関係ない。

 すべてわたしのもの。お前はわたしだけのものだ。

 アイは感慨深く頷き――ユウとカラダを重ねた。

 冷たい空気に触れて縮こまったユウの肢体が、アイの熱に浮かされたぬめ肌で温められていく。

 双峰の頂きの先端は、アルシアの一回り小ぶりなそれの先っぽと接合して、豊かな肉感とともにユウへ沈み込んでいく。

 

「ぁ、ん……」

 

 ユウは小さく喘ぎながら、ぼんやりと見つめた。

 恍惚に満ちたアルシアの顔が、上からじっとこちらを覗いている。

 

「聞こえるでしょう? わたしの鼓動。こんなにもドキドキしているの」

 

 圧し潰れた胸同士の感触を通じて、ユウはアイの胸の鼓動を感じていた。

 ユウに残った理性の欠片が、ろくなことにならないと警告している。

 けれどどうしようもなくて。ただユウはアイの一方的な想い(暴力)を聞かされるばかりだった。

 

「わたしは――そう。お前を愛しているわ。たぶんね」

「そ、んな――」

 

 もの、真実の愛なんかじゃない……。

 そう言おうとした唇は、アイの指先一つで容易に押さえられてしまった。

 アルシアが持っていたユウへの好感と、アイが持っていたユウへの深い愛憎。

 二つは混然となって、止め処なくおぞましい愛欲へと昇華していた。

 アイは欲望にこそ忠実な生き物である。何を憚ることもしない。

 これからすることなど、決まっている。

 アイはユウの耳元へ口を寄せると、魔性の声で誘惑した。

 

「我慢しなくていいのよ。わたしとあなただけの時間なのだから」

 

 そして、耳たぶを甘噛みする。

 とても柔らかくて美味しそう。喰い千切ってしまいたいけれど、決して大切なご馳走を傷付けないように。

 優しく、ねっとりと愛撫する。

 

「うあぁ……!」

「存分に啼くといい。わたしに可愛い声を聴かせておくれ」

 

 そう言うと、ナニカがユウの大切なところに触れた。

 

「ひゃん!」

 

 アイ特製の触手である。

 喰らったヒトの情報はすべて覚えている。幾十万の中から、雄として優秀な素体たちを選び出し……平均を模した。

 立派な生体ディルドの出来上がりだ。

 男根に模したそれの先端が、ユウの秘められた穴の表面をしきりになぞる。

 今か今かと入り込みたがるそれを、あえてたっぷりと時間をかけて焦らしていく。

 ユウはぎゅっと目を瞑り、漏れそうになる嬌声を必死に押し殺して感じ入っていた。

 その無様な様子を悦びつつも、ただ攻めるばかりが愉しみ方ではない。

 アイ自身も犯される感覚を味わうべく、あえて自らアルシアの女穴に宛がって同様に焦らす。

 つまりは双方攻めの生体ディルドが、ユウとアイを同時に犯そうと蠢いていた。

 さて。その気になれば、アイ自身の生体情報を乗せた精液すら吐き出すことができるだろう。

 ああ。それもいい。この女をわたしで染めてやりたい。

 素敵な発想に、アルシアのものだった顔が煩悩塗れに歪む。

 頭ではどんなに嫌がっていても、カラダは正直なもの。

 よほど気持ちがいいのか、ユウの呼吸はいつしか浅くなり、悩ましげな吐息を漏らすばかり。

 挿れて欲しいと。挿れたいと本能は願っている。頃合いだ。

 

「さあ、愛し合いましょう」

「い、やぁ……!」

 

 いよいよ我慢し切れなくなったアイは――互いの奥へ一気に押し込んだ。

 

「「んぁ、あっ♡」」

 

 ソレが二人を貫き、あられもない嬌声を上げたのは同時だった。

 すぐに動いてしまうのは、余りにももったいない。

 しっとりと肉棒を感じ取り、繋がったところを舐めるように観察する。

 ユウとアルシアの薄毛が繋がったところで触れ合い。わずかに身をよじれば淫らな水音が響く。

 当時彼女が淡く淡く望んでいた背徳的な光景が、そこにはあった。

 これがヒトのセックス。食べるよりはつまらないけれど、たいそう甘美なものだ。

 

「ぐすっ。ひどいよぉ……」

 

 仲間もいなければ、対抗する術もない。理性すらまともな状態ではない。

 最後の砦が貫かれてしまったユウは、あまりのショックにすすり泣くしかできなかった。

 

「わたし、だって。すきな、ひとと」

 

 したかったのに。

 そんな無垢の少女のような願いは、化け物には一切届かない。アイには理解できない。

 愛されたいカラダはとっくに受け入れているのに、心はまだ拒絶しようと泣いている。

 そんなユウを、最愛の人であるのに実験動物でも見るかのような、奇妙な感情とともに見下すアイ。

 今にも滴り落ちようとする紅い液体は、常人であれば破瓜の証。

 しかしユウの痴態からは、身体への苦痛の色は見えない。

 まったく痛みも感じさせないほど、我が体液による浸潤は完璧に効いている。なのにだ。

 

「へえ。生娘だったの」

 

 嘲るように言ってはみたが、そうとは限らないと思い直す。

 フェバルとは世界を一つ渡れば、肉体は旅立ちの日へ回帰するもの。この娘の処女性は幾度でも回復されるのだ。

 では実際はどうなのか。読み取った記憶から辿ることはできるが……野暮な話。

 今わたしは決定的にこの子を犯した。わたしの世界の初めてはこのアイだ!

 犯したいから犯した。アイにはその事実だけが重要だった。

 うふふ。もったいない。

 ベッドになどくれてやらないと。破れた血を一滴も余さず体表から啜り尽くす。

 もちろん溢れる愛液の一滴すらも逃さない。

 屈辱的な下の世話に、薄れた理性の中でユウはますます己を恥じた。

 そして容赦なく、抽挿が始まる。

 

「や、めてぇ。やだぁ……」

 

 もはや無力な少女と変わらないユウは、泣き喚きながらよがり狂う。

 アイはそれが愉しくて、触手で内側を擦りながら、ユウを言葉で嬲る。

 

「いいのよ。嫌なら、男になれば」

「ひ、ひぐっ……!」

 

 確かに男になれば、少なくとも女穴を犯されることはなくなる。

 だがそうすればたちまち喰われる。永遠にアイと一つになり、本当に終わってしまう。

 それだけはできない。こいつには負けられない。たとえどんなに惨めであっても。

 だから健気にもユウは、哀れな小娘のまま啼くことを選んだ。

 再び、アイがユウに重なる。欲望のまま乱暴に身体をくねらせ、擦り付ける。

 二人の玉汗が混じり合い、さらに淫靡な媚薬となってユウに吸い込まれていく。

 

「あ、あっ、あっ♡ あっ♡」

 

 とうとう我慢できず、喘ぎ声を漏らすユウ。あわれ悔し涙すら止め処なく流している。

 なのに最後の一線だけは護ろうとしていた。

 あろうことか一心不乱に仇敵へしがみつき、柔肌に噛み跡を残してまでさえ、懸命に耐えているのだ!

 理性による決死の否定と本能から生じる甘えが、この矛盾した行動をユウに取らせていた。

 まるで必死に求められているようで、アイはたまらなく興奮している。

 

「ああ。かわいい。ほんとかわいいわ。ユウ」

 

 愛おしくてたまらない。もっと壊したい。ぐちゃぐちゃにしたい。

 そうだ。こうしよう。

 アイは触手を大量に発生させ、いっぺんにユウへと注ぎ込んだ。

 口から、耳から。おしりの穴まで。

 

「ひぐっ!」

「はあ……はあぁ……♡」

 

 さらに深く繋がった感触があまりにも甘美で、アイから恍惚の吐息が漏れる。

 触手は決してユウを傷付けぬよう身体の奥深くへと侵入していく。アイの血肉がユウの内側のあらゆる箇所を犯し尽くしていく。

 もはや呼吸すらできない。強制的な快楽を与えられながら恐怖に引き攣るユウだが、なぜか息苦しさはなかった。

 

「ほら。肺胞の一片まで、わたしが満たしてあげる。わたしがいないと息もできないの」

「……っ!」

「わたしにぜんぶ、委ねて」

 

 そうして、比喩なくユウの全身はアイに満たされた。

 ほんの少しさえ力を込めれば。この愛しい獲物の臓物はずたずたに引き裂かれて死に至る。

 生殺与奪すら完全に掌握し。内側からもくまなく分泌される愛を受け取って、この乙女はすっかりとろとろになってしまった。

 だがもっと。もっと。こんなものではない。

 ユウ。お前とはいつか最高の融合をしたいの。

 お前はあくまでわたしを拒絶しようとする。

 わからない。

 愛し合うって、こんなに気持ちいいのに。食べることは、もっと気持ちいいのに。

 だからね。その可哀想な運命やら使命感やら何やら、お前を縛り付ける殻のすべてをひん剥いて。

 わたしだけになったお前を、わたしだけを求めるようになったお前を。

 わたしのものにしたいのだ。

 

「ア、イ」

 

 それは抵抗か。もっと違う造られた感情ゆえか。

 かすかに、だが確かにユウは相手の名を呼んだ。

 アイがどう受け取ったのかは、言うまでもない。

 

 ほら。こんなにもわたしを求めている。

 ユウ。もっとわたしを味わってね。わたしも味わうから。

 

 綺麗なところも汚いところも。いいえ汚くなんかないもの。

 胃液を舐め取り、汗を啜り。腸も隅々まで綺麗にし。愛液と涙で潤す。

 お返しに、触手のすべてから愛液を流し込む。

 ユウはずっと。蕩け切った顔でアイにしがみついていた。

 

「ねえ。そろそろ、いっしょに」

 

 口へ突っ込んでいた触手を自ら引き千切ると、最後はもう一度アイ自身の口でユウの口を塞ぐ。

 

「「~~~~~っ♡」」

 

 ともに果てた。

 互いに白目を剥き、足先まで痙攣するほどの情熱が双頭のディルドから注ぎ込まれる。

 ユウとアイの膣は、欲望の白濁液でいっぱいに満たされた。

 

 そんな。アイですら、ひととき理性から解き放たれるほどの余韻。

 

 ――そのわずかな隙を付いて、ユウは最後の抵抗を試みる。

 

 ほとんど壊れた理性で、それでも心は最後まで折れなかった。

 皮肉にもその原動力となったものは、アイ自身が注いだ愛情だった。

 それは彼女自身の誇る豊かな生命力から注がれるもの。

 幾分か、魔力をも含んでいた。

 だがほんのわずか。決して敵うほどではない。

 

 だから。

 

 ユウはしがみついたままのアイの背中に手を添えて――彼女ごと自分を撃ち抜いた。

 

 ユウに残された最大にして唯一の抵抗は……自殺だった。

 

 死したフェバルは、その身体を薄れさせていく。

 アイの伸ばした手が、空を切る。

 

「…………」

 

 そうして、誰もいなくなったダブルベッドで。

 胸にぽっかりと空いた穴を、アイは呆然と見下ろしていた。

 通常の生物なら死に至る傷だが、再生能力持ちのアイにはまったく痛痒にならない。

 だがまるで裏切られたようで、すぐに再生する気にもならなかった。

 

 ……ああ。ユウは。あの子は。

 

 あんなに溶かしたのに。まだ戦士であろうとしている。

 本当に独りぼっちになるまで、無駄な戦いを続ける気なのか。

 

「馬鹿な子。本当に、愚か」

 

 ユウ。ユウ。ユウ。

 ユウユウユウユウユウユウユウユウユウユウユウユウユウユウユウ。

 

 アイは己の肢体を抱きすくめ、何度も宿敵の名を心の内で呼び返す。

 

 お前は決してわたしから逃げられない。

 

 なぜなら、お前はフェバルなのだから。

 なぜなら、星脈は閉じているのだから。

 たとえお前が仮初の死を迎えても、このリデルアースのどこかで蘇るしかないのだから。

 

 ――わたしが本当にお前と一つになるのは、わたしが完全になるとき。

 

 今はまだ。そのときを待っている。

 

「また一緒に愉しみましょうね。ふふふ」

 

 残り香の火照る下腹部をさすりながら、アイはくすりと微笑んだ。


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