自創作の「疎遠になった幼馴染の距離感が最近になってとても近い気がする」の後日談になります。エロだけ楽しみたい方も楽しめるかもです。

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彩る奇跡を選べたら

◇

 

 聖なる日という名目にこぞって集まる輩が多いことに、どこか辟易してしまう自分がいる。名目というものが存在しなければ集まる人間なんていない。

 

 日常というものは常という文字を含ませているからこそ、そういった名目があったとしても、普段と同じように過ごさなければいけないような気がする。特別な日、というように意識をするのはどこか間違っている。そう思ってしまうのは、どこまでも俺の傲慢な思想のせいなのだろうが──。

 

「──イルミネーション、きれいだね」

 

「……そうだな」

 

 ──結局、そういう人たちに紛れるように、クリスマスイブという日を、恋人である愛莉と一緒に歩いている。どれだけ取り繕おうとも、自分もそういった大衆と何も変わらないことを思うと諦観を抱いて仕方がない。自分自身が特別だ、という意識があったわけではないけれど、そこに個としての意味をなくすことに寂しさを覚える。結局、俺もこの集団のうちの一人でしかないのだ。

 

 ──聖なる日、聖なる夜。もしくはその前夜。クリスマスイブという、今では恋人たちで過ごすことが主となってしまっている日。もともとは宗教の何かしらの日であったはずだ。詳細は思い出せるような気がするけれど、思い出すほどのものでもない。ともかく、そんな日に、俺は愛莉と一緒に出掛けている。

 

 少し寂れたように感じる遊園地。昼間に来た時にはそんな感慨を抱いてしまっていたけれど、夜になればクリスマスということを意識しているのか、そこら中に飾り付けられていたイルミネーションが青く光りだし、俺でも綺麗だと思える景色が広がる。特に花を咲かせていた場所に広がる幻想的な風景は息をのむほどだ。愛莉はそれを指さして微笑んでいる。同調するように、俺も彼女の言葉に相槌を打った。

 

 周囲を見渡せば、やはり俺たちと同じような恋人の群れ、もしくは子供を連れた家族が大半だった。その大半のすべてというわけではないが、すべからく手をつないでいるような気がする。それに漏れることなく、俺と愛莉の指も絡んで、そうして景色の中に紛れている。

 

 どこまでも静かな空気。周囲の感嘆の声は聞こえてくるけれど、雑音のように正確な言葉は届いてこない。ひらけた空間に吹く風が頬を撫でて、冬の寒さを感じさせる。一瞬、愛莉の手の握りが強くなって、俺はそれに応えるように握りを強く返した。

 

 彼女はその反応を感じて、俺のほうを一瞥する。特に台詞はなくて、ふふ、と微笑むだけを返す。俺はその握り以上に反応することはできなくて、ただ「本当にきれいだな」と言葉を吐くことしかできない。

 

「わたしよりも?」

 

「……ああ」

 

「うわ、恋人に対してひどくないですか翔也さんや」

 

「お前の場合は、きれいっていうよりかは可愛いって感じだから」

 

 俺がそういうと、彼女はひるんだように「うぉ」とだけ声を出す。その反応がどこか新鮮で面白かった。

 

 こういう反応が見られるのであれば、聖なる日というのも悪くはない。普遍的な日常の中に、少しばかりの特別が紛れることは、確かに楽しいことかもしれない。

 

 ……それでも、頭の中に過ることがある。一瞬、舌をかみしめたくなるような衝動に襲われるほどに、少し嫌な記憶が。

 

 

 

◆

 

「もう、やめないか」

 

 俺の部屋で働かれる彼女の行為に対して、そう言葉を吐くことしかできなかった。

 

「ろうひへ?」

 

 おそらく、どうして、と彼女は聞いてきたのだろう。彼女が正確に言葉を発音できなかったのは、彼女の口の中には、俺の男性器が含まれているからだろう。

 

「……ひもひよくらい?」

 

 声の振動で微かな感覚としてくすぐったさを覚える。きっと、それを心地いいといえば心地がいいのだろう。

 

 それまで彼女は懸命に首を、というか頭を動かして、それを口内で弄っていた。舌先で転がすように。初めてだから、たまに歯のかたい感触が当たった時もあった。もしくはわざとするように甘噛みを挟むこともあった。そのどれもが試験的なものであり、俺の反応を楽しむように、彼女は口の中で俺のものを舐っていた。

 

 でも、俺はそれに反応することができなかった。

 

 声を出すほどに気持ちよさはあった。心地よさもあった。心が満たされる感覚もある。だが申し訳なさが反芻する。その申し訳なさの大半が、屹立することのない自分のものに対してだった。

 

 目の前には彼女の裸体があった。ふわふわとしているいつもの髪の毛は、口淫を働く際に邪魔になるということで後ろに一本でまとめられている。見慣れない乳房と下半身がよく見える。華奢、とは言えない胸部のふくよかさ、その弾力は男であれば抗えない魅力がある。そうでなくとも、彼女を抱きしめればそれだけで心は満たされる。毛の生えそろった下腹部、彼女はそれを気にして片手でそれを隠していたけれど、そんな様子もいとおしい。興奮する材料にはなるはずだ。

 

 なるはずだけれど、それでも俺のそれが勃つことはなかった。

 

「私って、魅力ないのかな」

 

 彼女は俺から口を話して、ふう、と息を吐いた後に、寂しそうに言葉を紡ぐ。

 

「……違う、そういうことじゃない」

 

 俺は愛莉が好きだ。大好きだ。彼女を求めたいという気持ちはあるし、彼女の思いに応えたい気持ちがある。彼女が誰かに取られれば、人一倍、いや、それに収まらないほどの嫉妬心を抱いてしまうだろうし、今だって彼女の行為に対して報いたい気持ちがある。

 

 それでも──。

 

「皐とのことが、頭に過るんだ」

 

「……あー」

 

 愛莉は、思い当たったように相槌を打つ。

 

 ──去年の夏、俺は愛莉に告白された夜に、妹の皐に犯された。いや、犯されたという表現は間違っているのかもしれない。男女という間柄の表現がわからない。犯された、といえるのかもしれないし、なんとなくそれも違うという気持ちもある。端的にいえば、俺は妹に夜這いをされた。されてしまった。

 

 俺はそれを拒絶した。妹とは確かに歪な距離感があった。家族というだけではおさめられないほどの歪な距離感。だが、それは禁忌と言えるものであり、その恐怖で俺は彼女を拒絶し、突き飛ばした。

 

 愛莉の口の中に、俺のそれがあるとき、どうしても過ってしまうのだ。

 

『──起きちゃったんだね』

 

 そんな皐の台詞を、皐の口の中を、皐の行為を、皐の体の中を、ゼロ距離で感じてしまった快楽を、それに一瞬身をゆだねてしまおうとした罪を。

 

「……!!」

 

 途端に吐き気を催して、俺は近場にあった部屋のごみ箱に、酸味のある液体を吐き出した。愛莉はそんな俺の背中を宥めるようにさすってくれる。それがあまりにも情けなくて、吐き気とともに涙も流れていく。

 

「これは重症だねー」

 

 間延びした声で誤魔化そうとしている愛莉。でも、彼女の気持ちを思えば、彼女こそが辛いはずだ。

 

 好きな人に行為を求められない。俺だったら嫌だ。愛莉が同じ感受性を持っているわけではないだろうけれど、もしかしたらそんな気持ちにさせているのではないか、そんな気持ちになって仕方がなくなる。

 

「ごめん、ごめん……」

 

 俺は繰り返し、そんな言葉を吐くことしかできない。彼女はそんな俺に、いいよ、と背中をさすり続けてくれた。

 

 

◇

 

「いやー、本当にきれいだったね、イルミネーション」

 

「そうだな。最後に観覧車に乗れたら、もっときれいな景色が見れたかもな」

 

「そうだね。でも、しょうがないよ。あの行列を待つのは流石に耐えらんないでしょ」

 

 愛莉は苦笑した。俺はそれに、そうだな、と言葉を返す。

 

 聖なる日、その夜の観覧車はどうしようもないほどに混んでいた。ロマンチックを求める人間であれば格好のアトラクションであることは間違いない。俺も愛莉とあそこで結ばれたのだから、それを選ぶ人間がいることも分かる。

 

「だが、あそこまで行列ができるとは思わなかった」

 

 それほどまでの行列。人気のある料理店だったとしても、あそこまで並ぶことはないだろう。某有名な遊園地のジェットコースターと変わらないほどの人の並び。流石にそれに並ぶのは馬鹿らしい、ということになって、俺たちは遊園地から出ることを選択した。

 

 ここに来るまでの道はバスを使ったものの、帰るときにそれを使うことはできなかった。単純に、出たタイミングとバスの運行時間が重ならなかった。しばらく待てば来るみたいだったが、そうするのを愛莉は嫌がったため、俺たちは駅までの道中を、二人で歩いている。

 

 先ほどまでいた家族連れ、恋人たちはその道にいない。本当に世界に二人だけしかいないような、そんな感覚。俺は彼女の手の温もりが心地よくて、なんとなく繋いでいたそれを、殊更強く握りしめた。

 

「恋人つなぎですねぇ」

 

「恋人つなぎだな」

 

「ラブラブですねぇ」

 

「……ら、ラブラブだな」

 

 ぷぷ、と彼女が揶揄うような吹き出し方をする。その反応で自分がやっていることの恥ずかしさを認識してしまって、彼女から手を緩めようとする──が、俺以上に強く愛莉は手を握り締めて離そうとしない。「ちょっとした冗談なのに」と言い訳めいた言葉を笑いながら続けるから、仕方ないな、と返して、また彼女と恋人つなぎを続ける。

 

「駅に着いたらどうしよっか」

 

 愛莉が俺に聞いてくるので、思索を働かせながら、俺は以前より考えていたことを言葉に出すことにする。

 

「行きたいところがあるんだ」

 

 

◇

 

「お、大人のホテルですよ翔也さん……」

 

「……そうだな」

 

 きらびやか過ぎるとしか言いようがない光ばかりのホテル。けばけばしい、という言葉の表現が適切だろう。

 

 そんなホテルの前にたどり着いて、俺たちは息をのむことしかできない。

 

 駅にたどり着いてから、少し道を外れた場所にそれはあった。

 

 クリスマスイブ、この日にデートをすると約束をしていた日から、彼女に黙ってこっそり調べていた場所。遊園地付近の駅前、というのがあってか、この周辺にはそういったホテルがとても多い。……いや、関連性はないのかもしれないけれど、あまり考える事柄でもないかもしれない。

 

 結局、俺も大衆と似た考えしか働かせることができないのだ。聖なる夜に恋人と結ばれたい、精神的に、彼女とつながりたい。そんな気持ちを抱いてしまうのだ。

 

「そ、その気ということでしょうか翔也さん……」

 

「……その気だ」

 

「ひゅ、ひゅー」

 

 彼女らしからぬ動揺を見て、俺は笑いそうになる。攻守が逆転したように彼女を突っつきたくなる衝動に駆られるが、それはそれとして心臓がどぎまぎする感覚を忘れることはできない。

 

「それじゃ、行くぞ……」

 

「は、はい……」

 

 珍しくしおらしくなっている彼女の弱まっている手を、俺は強く握って、引っ張るように中に入っていった。

 

 

◇

 

「……まさか満室だとは」

 

「……いや、クリスマスだし、仕方ないよ」

 

 愛莉の苦笑に俺は目を逸らしながら息を吐く。

 

 大衆に紛れるということは、こういう事態も予想しておかなければいけない。

 

 俺たちが最初に入ったラブホテルについてはすでに満席、もしくは予約がとられている形態らしく、そもそも入室することもできなかった。愛莉が「この部屋可愛い」と言って指をさした部屋にしたかったものの、それらも予約がとられていたらしく、俺たちはそのあと二件のラブホテルをめぐり、そうしてようやく空いているホテルにたどり着いた。

 

 部屋の外観としては黒い革のような壁に施されたローズピンクがあげられる。あからさまなハート形で部屋の各所が彩られており、本当にラブホテルに来たんだな、という気持ちを覚える。

 

 俺たちは部屋に置かれている机に荷物を置いて、そしてソファーに座り込む。ソファーは思ったよりも深く沈み、うお、と声を出してしまう。愛莉はその様子を笑い、彼女の近くにあったリモコンで、壁に掛けてあったテレビを点灯させた──。

 

『──あっ、あん、あ──』

 

 ──が、すぐに彼女はテレビを消した。

 

「は、はは。ここ、ラブホテルだもんね。そりゃそうだよね」

 

「そ、そうだな」

 

 ドキドキする心臓を止められない。

 

 ラブホテルに来たからには、ひとつの目的が生まれる。その結果を意識せずにはいられなくなる。

 

 そういう場所だから、そういう場所だからこそ、特別な日に、そういう場所だから。

 

 頭に過り続ける邪な考え。普段なら振り払うはずの考えではあるものの、この場所であれば肯定されるべきもの。

 

「……シャワー、浴びてくる」

 

「えっ?! あ、はい!」

 

 動揺する声は重なる。俺は彼女に背を向けて、そうしてシャワーをするために浴室へと入り込んだ。

 

 

◇

 

 シャワーを浴びた後、洗面台の近くに置いてあったバスローブを着て、俺は彼女のいる場所に戻った。

 

 愛莉はというと、テレビを見ていた。テレビ、といっても、先ほど流れていた淫らなものではなく、ドラマ性がありそうな実写の映像。呆然と見ている彼女を邪魔するのも悪いという気持ちが働いたけれど、とりあえず俺は「あがったぞ」と声をかける。「う、ういっす」と愛莉からは声が返ってきた。

 

 そうして彼女は浴室のほうに行く。その間俺は何をすればいいのかを迷ってしまう。

 

 このホテルの備品を眺めようか、そう思って冷蔵庫の中や、ベッドの横にあったミニテーブル、というか引き出しの部分を漁ってみる。……まあ、そういったものが入っている。違う方に視線を移せば、テーブルの下に自動販売機のようなものがあるが、やはりそういったものばかり。俺は視線を逸らすようにして、愛莉と同じようにテレビを眺めることにした。

 

◇

 

「お、おまたせ」

 

 俺が昔見た刑事ドラマにうつつを抜かしていると、ぴとっと首筋に温かい感触を覚える。その感触と声に振り向けば──。

 

「……おお」

 

 俺と同じようにバスローブを着ている愛莉の姿。

 

 バスローブから少し見える肌色。隠すべきところは隠されており、彼女の紅潮している表情が視界に入る。

 

「……感想とかはなしですの?」

 

「……いや、すごく、きれいです」

 

「イルミネーションより?」

 

「イルミネーションより」

 

 彼女はそんな会話を笑って、近くにあったベッドに座り込む。俺は手に持っていたリモコンでテレビを消し、彼女に近づくように、同じくベッドに座り込んだ。

 

 ……そこからは、沈黙。

 

 どう会話をすればいいのかわからない。

 

 彼女と行為に失敗した時でさえ、あの始まりの時でさえ、気まずさというものはなかったはずなのに。

 

 どうにも、ここにいるとひとつの目的が、体を重ねるという目的が頭の中に反芻されて仕方がない。

 

「ねえ」と愛莉は言葉を紡いだ。沈黙という風船に針を刺して、そうして空気は緩和する。

 

「ここに来たってことは、そういうことで、いいんだよね」

 

「……ああ」

 

「翔也は、わたしとそういうことをしたいんだよね」

 

「……そうだよ」

 

「……そっか」

 

 愛莉はそういうと、頬を緩ませたあと、ゆっくりとベッドに倒れこむ。倒れこんだ振動が伝わってきて、俺は倒れこんだ彼女を覗くようにした。

 

 両の手を広げて、はだけたバスローブを隠そうとしない。豊満といえる胸がよく見える。この前だったら隠していた秘部も、そのままさらけ出したままだ。

 

「それじゃあ、しよっか」

 

 俺は、息を呑んだ。

 

 

◇

 

 最初、俺は導かれるように彼女の胸を触った。液体のように揺れる彼女の胸部と、それに対して形を持つような乳頭の感触の違いを楽しむようにした。だんだんと固くなる乳首の感触が少しうれしくて、それを口に運んだりする。

 

「翔也、赤ちゃんみたい」

 

 愛莉はそう言いながら、俺の頭を撫でてくる。なんか悔しい気持ちになって、口の中にあるそれを、舌で転がす。少し弾んだ振動がベッドから伝わってきた。

 

 改めて頭をあげて、彼女と俺の姿勢を頭の中で整理する。

 

 俺が彼女に覆いかぶさっている状況。俺は勢いのまま、愛莉の口に、俺の口を当てがった。

 

「……ん、ん」

 

 彼女から漏れる声を口の中で聞く。彼女に俺の呼吸を押し込むように舌をねじ入れながら。愛莉はそれに応えるように舌を絡めて口蓋を撫でる。普段は感じられないくすぐったさを反芻して、一度離して呼吸を整える。

 

「……してくれないかと思いました」

 

「……そんなことはない」

 

「だって、真っ先におっぱいのほうに行くんだもん」

 

「……魔力に逆らえなかっただけだ」

 

 俺の言葉に微笑む彼女の顔を見て、また彼女と口づけをする。今度は舌を絡ませることはなくて、唇の感触を唇で味わうだけ。

 

 数秒、いや、十数秒。それを繰り返した後、俺と彼女の口の距離はひらく。「あ……」と名残惜しそうな声を聞いたけれど、俺はそのあと彼女の顔から口をはなして、下腹部へと焦点をあてた。

 

 あまり見慣れない場所。

 

 中学生の時であれば、インターネットなどでそういったものを見ることもあったけれど、皐とのアレ以来、そういったものに対して嫌悪感を抱いてしまったから、見慣れなくなった場所。

 

 愛莉は恥ずかしそうにする。

 

「まじまじ見られると、流石に恥ずかしいです」

 

「……でも、今日は隠そうとしないんだな」

 

 彼女は、うっ、と声を漏らして、俺から視線を逸らす。どこまでも可愛い。

 

 俺は、彼女の秘部を見つめる。

 

 足は閉じている。先ほどまでは開脚していたけれど、俺の言葉に彼女は閉じてしまった。それをこじあけるようにして、両手で支えるようにする。抵抗はなく、すんなりと開く足。少し震えている太ももの筋肉を両の手で感じながら、俺は露になったそれを見つめる。

 

「……濡れてる?」

 

「……いや、それはシャワー浴びたあとだからだし」

 

 彼女は抵抗するような言葉を吐く。俺はそれに対して指をあてがう。ひぅ、と弾む声が聞こえる。でも、彼女の言う通り、シャワーを浴びたあとの水滴のようで、潤滑油のようなぬめりはない。

 

 ……まあ、そんなエロ漫画みたいなことがそうそう起こるわけないか。

 

 俺はそんなことを思いながら、彼女の秘部の周囲にある肉を触るようにする。

 

 少し厚ぼったい皮膚。弾力があって、ここを触るだけでも少し楽しい。ふうう、と愛莉が息を吐くのを感じる。俺は秘部の周辺にある皮膚をつまむようにして、間接的にそれを触るようにする。愛莉の声が大きくなったり、断続的になったり。

 

 ……直接的に触ることは、少し怖い。怖い、というか、愛莉が痛くなったりするのかもしれない可能性を考えて、踏みとどまってしまう自分がいる。けれど、ここで停滞していても仕方ない。俺は彼女のあそこを開くようにした。

 

 きれいな桃色をしていると思った。

 

 以前、インターネットで見たものよりも、すごく整っている色、そう感じた。

 

「……すっごく恥ずかしいんですけど」

 

「イルミネーションよりきれいだぞ」

 

「……ばか」

 

 俺は彼女の言葉を耳に入れた後、開いていた秘部の膣口に指をあてがう。んふ、と彼女から声が漏れる。痛くない? と愛莉に聞けば、大丈夫、と返ってくる。俺は少しずつ指を押し込めるようにした。

 

 頬の内側のような感触。だが、頬よりも熱くて、どこか脈がある。感触がそれらしい。波のようなものがある。

 

 横を撫でれば、おそらくヒダと言われるもの。上を撫でれば、少しつぶつぶ、というか、ざらついた感触のある心地。

 

 膣の上側を撫でると、彼女は足を大きく揺らす。反応がいいので、それを繰り返しさするようにする。出し入れ、というよりは、押し込むように。それでも膣口から垂れていく潤滑剤は指元まで届くのだけど。

 

「ここがいいの?」

 

「う、うん。なんか、なんかある……」

 

「何がだよ」

 

 俺は苦笑しながら、少しそれを強めに押すようにした。んんん、と大きくない声が聞こえる。彼女の顔のほうを覗けば、声が出ないように手で口を押さえている。

 

 可愛い、と思った。

 

 ここが弱点だというのならば、そこを執拗にいじるだけだと思った。指を二本入れることも考えたけれど、指一本だけでも彼女の中の圧力はすごかったから、それをすることはない。痛がってしまう愛莉を想像するのが嫌だった。

 

 んん、んん、と彼女は喘ぎ声を繰り返している。アダルトビデオとは違うあからさまなものではなく、本当に快楽を感じているような、そんな声だと思った。それが本当であるならうれしかった。

 

「──ちょっ」

 

 彼女の制止の声が聞こえた。そんな声が聞こえたのは、彼女の秘部に俺の口をあてがったからだった。

 

 指が膣口をなぞっている以上、俺はその上を舐めることしかできなかった。それ以外といえば尿道か、肉の豆たる部分しかない。だが、それを不思議と汚いと思う気持ちはなくて、舌で転がすようにした。

 

 視界に見えるのは、生えそろった彼女の陰毛と、揺れる胸。必死に抑えようとして手で塞いでいる様子。

 

 舐めても、特に味はない。そして、それが心地いいのかはわからない。俺は舐めるだけではなく、吸うことも頭に入れてみる。

 

「──それ、やばっ」

 

 反応が良くなる。彼女の中にある俺の指が一層締め付けられる感触。

 

 気持ちがいいと思ってもらえている。そんな充足感に満たされる。

 

 口元でじゅずず、と下品な吸出し音を出しながら、彼女の中の上部を撫でることをやめない。次第に「あっ、あっ、あぅ」と断続的な声が聞こえてきて、その果てが来る気配を指先で感じる。

 

 止めない、止めてあげない。彼女が、愛莉が快楽を覚えてくれるのが可愛い。うれしい。そうなってくれていることが、俺の指先が、舌先が、俺の口で、そうなっていることがうれしいから、止めない。絶対に止めない。

 

「──!!」

 

 愛莉は言葉にならない声をあげた。喉元で叫ぶような、そんな声だった。

 

 それでも執拗に、俺は行為を繰り返した。口のなかに広がる先ほどとは違う何かの味があった。それでも止めることはなかった。

 

「す、すとっぷ! と、とめて! とめて!」

 

 止めない。

 

「ちょ、ま、まじでお願い、お願いします。お願いしますからぁ」

 

 いやだ、止めない。

 

「あっ、あ……、──」

 

 ああ、と呆然とした声を愛莉があげたところで、俺の喉がごくりと鳴った。そこで、俺は止めることにした。

 

 

◇

 

「サディスト」

 

「うっ」

 

「へんたい」

 

「すいません」

 

「おしっこ飲み男」

 

「……いや、それは違う」

 

 一旦、休憩の流れになり、俺は彼女と一緒に横たわった。愛莉ははあ、はあ、と息を切らしていた。その休憩の後、彼女はいじけたように言葉を吐いた。

 

「というか、おしっこ……? したの?」

 

「うっ」

 

 彼女は威勢のよさを崩して、視線を逸らした。

 

「違うんです、なんか、いつの間にか出てて……。というか翔也だって飲んだじゃん」

 

「……俺、飲んでたの?」

 

「……気づかずに飲んでたのなら、本当に変態サディストじゃん」

 

 愛莉は苦笑した。俺はそれに視線を逸らすことしかできなかった。

 

 それじゃあ仕返し、と愛莉は横になっている。俺の上に覆いかぶさる。

 

 電灯の明かりが彼女で見えなくなる。逆光で見づらい景色の中、彼女は先ほどの俺と同じように口を俺にあてがった。

 

 舌のねじ込み、呼吸の強制作用。からむ唾液、撫でられる口蓋。これまで行ったすべての反復。

 

 それを繰り返した後、彼女は俺の胸をいじるようにする。

 

「だんだんかたくなってきましたねぇ」

 

「……生体反応だ」

 

「……ふーん。そういうこと言うんだ」

 

 ニヤニヤと揶揄うような表情を俺に見せた後、愛莉は俺の乳頭を噛むようにする。強めではなく、甘噛みするように。痛さと心地よさ、くすぐったさを覚えるような感覚。その歯の中で、舌先でちろちろと撫でられているのを感じる。う、と声を漏らすと、ふふふ、と彼女が俺の胸先で笑う息を吐くことを感じてしまう。

 

「男なのに、お胸で感じているとは情けないですな翔也氏」

 

「……男とか女とか、ないから」

 

「お胸で感じたことは否定しない、と。かわいいね」

 

 そうして愛莉の手は、俺の下半身に移る。

 

 ──以前は屹立できなかったそれが、破裂しそうなほどに血流を回して、固くなっている。

 

「こ、これが翔也のですか」

 

「前も見ただろうに……」

 

「い、いや。以前はこんな本気状態じゃなかったし……」

 

 ……確かに、と俺は彼女に同調した。

 

「というか、私で勃ってくれたんだ……」

 

 感慨深そうに愛莉は言葉を吐く。俺はその言葉に、そして現状に安堵の息をつく。

 

「愛莉の反応が可愛かったから」

 

 俺がそういうと、彼女は「ふ、ふん!」と照れ臭そうにしながら、体を俺の下半身まで移動させていく。

 

 俺のものと、彼女の顔が近くになる。以前とはきちんと状況が異なっているもの。きちんと態勢が整えられているもの。

 

 それを彼女はさするように手でつかんで、上下に動かす。

 

 久しぶりの感覚。自分でもしていないから、その感覚はどこか違和感のあるもの。自らの手でもないから当たり前のことだけれど、その事実を考えれば考えるほどに、下半身に血が行くような気がする。

 

「びくびくしてる」と愛莉は言った。俺はそれが恥ずかしくて、何も反応しないようにした。

 

 はむ、と咥える彼女の声。それと同時に亀頭が温もりに包まれる感覚。

 

 以前も感じた感覚ではあるものの、生ぬるい心地よさではなく、快楽を促すような感覚の気持ちよさ。うあっ、と声が漏れてしまうのを、彼女がうれしそうに笑う。その笑いの振動さえ快楽を増長させて、俺は彼女の表情を見ることができなくなった。

 

 手でさすられ続けながら、頬張られるそれ。舌で先端を転がされたり、裏のほうを舐められたり。おおよそ感じたことのない心地よさ。

 

「え、ええと、愛莉さん。ちょっと、一旦止めません?」

 

 ここからすぐに果てが来そうな気がして、もったいなさで制止の声をかける、が。

 

「ほへはしぇん」

 

 おそらく、止めません、と言ったのだろう。彼女はその言葉の通りに動きを止めることはしなかった。

 

「ほ、本気で出そうなので……、うぉっ」

 

 俺がそういった瞬間に、彼女は亀頭だけでおさめていたものを、さらに奥まで飲み込むようにする。彼女の両手は俺の胸付近にまで伸びていき、両の乳輪付近をまさぐるようにする。

 

「や、やばい……」

 

 ──搾り取られる。本能的な部分でそう思った。

 

 ぐぽ、ぐぽ、と擬音が下腹部から聞こえてくる。いよいよ本気になった愛莉に抵抗することはできなくなる。

 

「で、出るから離して──」

 

「──ほひはふ(のみます)」

 

「はい?! うっ──」

 

 そうして俺のそれは脈動を打つ。吐き出される感覚がする。俺の体の内側から引き出される何かがある。久しぶり以上の快楽に、一瞬、頭の中が真っ白になる。

 

 どくん、どくん、どくん。

 

 心臓の鼓動よりも大きく震えて、体に入っていた力がすべて抜ける。

 

 愛莉は俺のそれから口を離さない。頭で上下の動きを繰り返していて、俺の射精を絞り出すことを止めようとしない。

 

 ──ごくり。

 

 そうして、彼女は宣言通りに、それを飲みこんだ。

 

 

◇

 

 愛莉はベッドのほうへと移動して、枕に頭をのせるように横になった。俺はまだドクドクと体を流れる血流に呆然としながら、はあはあ、と息をつくことができない。

 

「どうですか、わたしのきもち、わかりましたか?」

 

「……はい、すいませんでした」

 

「よろしい」

 

 愛莉はニヘラ、と笑いながら、バスローブを横になったままで脱ぐ。俺も息を整えながら一度立ち上がり、彼女に同調するように裸になった。

 

 互いに裸になる光景。特別な日に、特別な空間で。それを意識するだけの空間で、それを行うために、裸をさらしあう。

 

「……まだ、かたいままだね」

 

 彼女は俺のそれを見て笑う。俺も自分が自分じゃない光景に、安堵と戸惑いを抱きながらも、彼女に近づくようにする。

 

「俺、愛莉とつながりたかったんだ」

 

 以前から思っていたこと。そのために今日という日を考えていたこと。だからこその現状に対する安堵。苦手意識の克服、トラウマのような過去に対する決別。

 

 わたしもだよ、と愛莉は返す。それを合図にしたように、俺は彼女の秘部へと近づき──。

 

「あ、そうだ、コンドーム」

 

 俺はベッドの傍らにある引き出しから、先ほど見つけたコンドームを取り出そうとする──。

 

「え、いらない」

 

 ──が、手に取った瞬間、愛莉にそれを払いのけられる。

 

「え」と俺。

 

「え?」と愛莉。

 

「いや、普通に子供、出来ちゃうだろ……?」

 

「……別に、私産むけど」

 

「……そういうことじゃなくて」

 

 真剣な目をしている愛莉に、どういう言葉を伝えればいいのかわからない。

 

 一時の過ち、というか、行為でその先の将来を決めてしまうのは、流石に違うだろう。

 

 俺たちはまだ高校生であり、そういった行為が許されるのは、互いに自立したときであると、俺はそう思って──。

 

「──だって、翔也、中で出したことはないんでしょ?」

 

 ──愛莉は、そういった。

 

「さっちゃんにもあげてない初めては、私がもらうって決めてるもん」

 

 彼女は、俺の目をとらえながら、そういった。

 

 

◇

 

 力が抜けていた体は、愛莉に覆い返されるようになり、彼女が上のほうになった。俺は抵抗することはなく、彼女に促されるままだった。

 

「それじゃ、いくよ」

 

 愛莉はそう言葉を紡ぐ。

 

「……本当にいいのか?」

 

「いいよ。私は一生を翔也と添い遂げる予定なの」

 

 そうして、0.01ミリの壁は、どこか遠くにおいやられた。

 

 彼女は秘部を、俺のそれにあてがう。ぬるぬるとした感触、彼女の口の中とは違う、熱い温盛のなかに、俺のそれは沈んでいく。

 

「う」と彼女は声を漏らした。だが、喘ぎ声によるものではなく、うめき声に近いような気がした。

 

「大丈夫か?」

 

「……へ、へいき」

 

 彼女は無理に笑って、そのままずぶずぶと俺のものを体の内側に受け入れていく。彼女のうめき声も深度を増すごとに大きくなる。それに比例して、彼女の肉体をなぞる俺のそれが締め上げられる感覚と、独特の肉ひだの感触を味わって、快楽を覚える。

 

 最終的に、すべてを飲み込んだ後、彼女は静止した。静止したあと、脱力して、俺のほうに倒れるようにした。体が重なり、重みを直に感じる。彼女の顔が目の前にあった。

 

「やっと、ひとつになれたね」

 

 愛莉は、そういった。

 

「……いいや」

 

 きっと、そうじゃない。

 

「俺たちは、前からひとつだったって、そう思いたいんだ」

 

 ロマンチック、とは言えない臭い台詞。でも、こんな特別な日であれば、それが許されてもいいような気がする。

 

 彼女がくすくすと笑う声。でも、いつもであれば感じる恥ずかしさも特にはなくて、俺もそれに同調して、彼女と笑う。

 

 彼女と顔が近い。だから、腕で抑え込むようにして、彼女と顔をゼロ距離にする。

 

 埋め込む口の中、舌の絡み合い。愛というものを物理的に表現する行為。すべてがつながったという幸福の享受。息を吐くのもためらうほどに、感触ですべてを、彼女を確かめる。

 

 接吻が終わってから、愛莉は「動かしていいよ」と言った。彼女はまだ苦しそうだったけれど、その気持ちを無碍にすることはしたくなかった。痛そうな表情を見たくはなかったけれど、それを受け入れることも、一つの愛だと思った。

 

 下から彼女を突き上げるのは難しい。彼女が重いわけではないけれど、俺の筋力の無さで、どうにもたやすく動くことができない。それでも、彼女を持ち上げるようにして、どうにか彼女の中で動こうとする。

 

 こすれる粘膜、口とは違い、男性器に快楽を促す作用しかない膣の感触。ぬるぬるとした感触のなか、波のあるうねりと締め付け。そこにヒダという感触もあって、射精を促す快楽は俺の中に蓄積される。

 

「ん、ん」と彼女は苦しそうな声を続けている。それが申し訳なくて、彼女の口を俺の口でまたふさいだ。

 

 彼女の苦しさが、俺の口の中から聞こえる。彼女を抱きしめるように背中に腕を回して、距離をさらに近くする。肌と肌だけが重なり、温もりだけが広がる。心地がいい、すべてが満たされていく。

 

 でも、流石に力を失って、俺たちは体勢を変えることにした。

 

 彼女がベットの上で仰向けになり、それに俺が覆いかぶさる。彼女の秘部に、俺のそれをあてがおうとしたところで気づくのは、彼女の膣口と、俺の根元にある少しの血液。

 

 ああ、俺たちは本当につながったんだな。

 

 そう思いながら、俺は彼女の中に入り込んだ。

 

「あああ!」と愛莉から大きく声が漏れる。勢いよく貫いてしまったのかもしれない。

 

 苦しいかな、苦しいかもしれない。でも、彼女の中にいることが心地よくて、その勢いを殺すことができずにいる。

 

 また、彼女と顔の距離を近くして、そうして体すべてを彼女に重ねる。重くないか不安になる。だが、それを受け入れるように、彼女は俺の背中に手を回す。

 

 互いに抱きしめあって、口づけを交わす。動きづらさはあるけれど、先ほどよりも疲れはなく、快楽を彼女の中に求めてしまう。

 

 指先で彼女の中を確かめたように、上を撫でるような動かし方を試してみる。なかなかうまくいかない。そもそも指先とじゃ大きさが違い過ぎる。でも、彼女にも快楽を共有したくて、なんとかそれを繰り返してみる。

 

 うめき声が、だんだんと小さくなる。断続的な、喘ぎ声のようなものが聞こえてくる。そんな気がする。愛莉がそう演出しているだけかもしれない。俺のそんな行為の甲斐がすぐに生まれるとは思わない。だから、彼女のその演出に甘えて、俺は彼女の中で、彼女の中を味わい続ける。

 

 味わい続けた結果、当たり前のように来る快楽の果て。

 

「もう、出そう」

 

 俺はふうふうと息を吐きながら、なんとか彼女にそう伝えた。彼女はにっこりと微笑みながら、俺の口をふさいだ後、耳元でささやく。

 

「いいよ。ぜんぶ、わたしに、だして」

 

 そうして彼女の足に抑え込まれる腰。彼女の中でしか果てることは許されない状況。俺は彼女の中で、彼女の体にゆだねるように、体重をかけて、最奥のほうで。

 

 ──果てた。

 

 

◇

 

「……痛くないか?」

 

 行為が終わった後、俺たちはベッドのシーツの中で、二人横たわって過ごした。そのあとにまた行為を始めることはなくて、二人で息を切らしながら天井を見つめたり、もしくは顔を見つめあったりした。

 

「うーん、痛みというか、違和感がある感じ。でも、苦しい感じじゃないよ」

 

 愛莉はそう言いながら、自身の下腹部を撫でる。

 

「もし、出来ちゃったらどうしようね」

 

「……その時は、高校やめて働くさ。きちんと責任はとる」

 

「でも、高校中退の人が働くってなったら、肉体労働しかないんじゃない? 翔也、やっていけるの?」

 

「まあ、頑張るさ」

 

 俺はそう微笑んだ。そう微笑むしかなかった。

 

 ──きっとこの日、俺たちはすべてがつながった。ずっと前から一つだったんだろうけれど、それでも、それ以上に二人で大きくなれた感覚を覚えた。

 

 正しいこと、それに理由を求めること。今まで囚われていた価値観が、すべてどうでもよくなる感覚。

 

 彼女と一緒ならば、苦難があっても、なんとか乗り越えられるように頑張れる。

 

 そんな気持ちを、聖夜に抱くことができた。

 

 

 

◇

 

「へ、部屋、あかないよ?!」

 

「え、マジで?!」

 

 部屋の中で清算することを知らなかった俺たちは、最後の最後で焦ることになったとさ。

 


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