BLEACH -The Buried Boy- 作:果糖蜜液
「あ、あれ…」
目の前には雲一つ無い透き通った青が広がり、少年は地面を背にして寝転がっていた。
何も記憶がない。俺は誰だったのか。
いや記憶がないというのは少し語弊がある。
記憶はあるのだ。
少年は死神でちゃんと護廷十三隊の面々の顔も思い出せる。
だが俺はその人たちとどう関わってきたのか、自分の生き様も、自分の名前が何なのかすらも覚えていない。
ゆっくりと起き上がり、あたりを見回す。
横には自分のサイズにはあまりにも大きすぎる住宅が並んでいた。
「なんなんだよこれ、兕丹坊の家か?」
見慣れない風景に多少の恐怖心はあるが、記憶の中にある知り合いに巨人みたいなサイズの男性がいるので然程怖くはない。
記憶として知っているがここは流魂街。
少なくとも瀞霊廷ではないことは明白だが、それでも広いのでここがどこら辺なのかわからない。
途方もなく歩いていると、前方からニつの影が近づいてきた。
目を凝らすとそこには記憶と同じ顔の人が二人こちらへ向かってくる。
だが近づくにつれ、二人の影に困惑していった。
記憶ではあの二人は俺と同じサイズのはずだ。だがこの二人は俺の十数倍の巨大なサイズで街を闊歩している。
二番隊の副隊長の大前田と隊長の砕蜂。
左の華奢な女性が砕蜂で右の恰幅のいい男性が大前田だ。
少年は二人に気づいてもらおうと手を大きく振るが、全く気づいてくれない。
やがて目の前まで来ると俺も手を振るのを止め、俺は砕蜂の足にしがみついた。
が、その瞬間納豆のような足の臭いが俺の鼻を駆け巡るが構わず必死でしがみつく。
せっかく知っている人に会えたんだ。ここで手を離せば次いつ知り合いが通るかわからない。
少年は砕蜂の大きな足首に顔を埋めた。
振り落とされないようにという理由もあるが実はこの少年、サイズフェチという特殊な性癖を患っていた。
端的に言えば体格差フェチ。つまり大きな異性や小さな異性が好きという変わった性癖なのだ。
ちなみにサイズフェチの中にも大きさの違いや対象が大きい小さいによっても好みが変わるので一概に全てが好きとは言えない。
少年は大きな女性が好きで子供の頃から小さくなるのが夢だったのである。
つまり今の状況は少年にとって最高のシチュエーションであり、ちょうど今大きい砕蜂の足の臭いを楽しんでいた。
たまに嗅ぎすぎて嗚咽を漏らしたりもするがそれでも一度深呼吸をしてまた嗅ぎ始める。
そうすること十数分、動いていた足が止まった。
少年は身体を後ろに傾げて進路方向へと向く。目の前には木で作られた巨大な扉がゆっくりと開いていた。
止まっていた足はまた動き出し、少年は離しかけた足袋を慌てて掴む。
中は門と同じように木造となっており、目の前の階段で上へ上がれるようになっていた。
「大前田、私は自室で休む。お前はどうする」
「お、俺は庭の花に水やってきますよ」
「そうか」
二番隊舎へ着くなり大前田はどこかへ行き砕蜂は二階へ上がる。
自室の戸を閉めた砕蜂は中央に敷いてある座布団へどかんと胡座をかき、ため息をつく。
「で、気づかないとでも思ったのか?私の足首にしがみつきおって」
少年は驚いた。
このサイズでバレていたのだ。
少年のサイズは大きく見積もっても十センチ程度しかない。
「い、一体いつから....?」
「無論お前が飛びついてきた時からだ」
なんと最初から分かっていたようだ。
少年は砕蜂の足首から離れ上を見上げた。
砕蜂は眉間に皺を滲ませ、少年を見下ろしている。
いかにもしぃ卯年を怪しんでいるようにも見えるがそれと同時に困惑しているようにも見える。
「さてお前は誰だ?」