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長い髪に櫛を通し、寝ぐせをなくす。
スキンケアも問題なく完了。
制服を着て、姿見の前に立つ。
「……うん、さすがは私。今日も完璧ですね」
自然と口から出る、十数年で板についてきた美少女としての口調。
私はスカートを揺らしながら姿見の前でいくつかポーズをとってから、学生カバンを手に取って玄関へと向かう。
「荷物はもう寮の方に送ったし……やることはもうない、はずですね」
誰が聞いているわけでもないが、そう言って。
私は十数年暮らして来た家を後にした。
※ ※ ※ ※
男女比9:1。
何度聞いても種として存続できんのかこれ? と疑問に思う割合だ。
そんな世界に転生したとはじめて知ったときは「ええ……」と困惑したものだけど、言い換えて見ればその分女性は慎重に扱われるということだ。
定期的に振り込まれる多額の支援に、不自由がないかのアンケート。
頼めば食材の購入から料理など、様々なことをする非接触ハウスキーパーの派遣。
その他もろもろ。
それらの手厚いサポートがなければ私のような身よりのない、か弱いロリ美少女など誰かの獣欲の餌食になっていたはず……ふふっ。
ただまあ、その分苦労することもあるもので。
「私のためだけに寮をもう一つ増設するとか言われたときはさすがに驚きましたね……」
「わが校に女子生徒が来るなど初のことです」はわかる。
「しかも入寮までしていただけるとは」もわかる。
「だからあなたのためにもう一棟寮を建てます!」
…………んん? ってなったね。
いやまあ理屈はわかる。
ここからウチの高校は安全ですよ、女子生徒一人のために寮を建ててそこに住まわせ卒業まで立派にサポートしましたよ。という実績を作って、次につなげたいのだろう。
「大きいし広いし、外には一人でも使用できるプールもある。お風呂はヒノキからバスタブ、サウナまで。うわ、防犯設備もすごいことになってますね……」
今日からここに一人で住むのか、私。
希少な女の子だっていう自覚はあるけれど、ここまでの待遇を受けるなんて、前世がなければ調子に乗ってしまっていたことだろう。
しかし。
「掃除も基本機械、食事も機械か自分の手で、管理人も呼ばれない限り建物の中には立ち入らない……招き入れたい来客に関しては、簡単な申請さえ済ませてしまえば自由に招き入れられる」
つまり、一年間この広い寮で暮らすのは私一人になるわけだ。
少なくとも寮を建てた人たち、建てるように命じた人はそのつもりで建てている。
同じ高校に通う男子たちも、同じように考えるはずだ。
世間一般もそれは変わらない。
「……ふふっ」
私一人を除いて。
※ ※ ※ ※
登校初日。
朝早くから教室に到着した私は自分の机を探し出して着席した。
そのまましばらく待っていると足音が近づいてきて、教室のドアを開けながら、二人の男子生徒が入ってきた。
「うーっし、一番の……ぉおおおっ!?」
「うっせえ! なんだよいきな……ぁあああっ!?」
こちらを見て仲良く硬直している二人に、会釈をする。
「おはようございます。お早いですね」
「えっ、ああ……はい、おはようございます」
「…………お、はよう、ございます」
うーん、やはりというかなんというか、緊張でガチガチだ。
まあこの男女比9:1とかいう世界だ。加えて女子は基本保護されているとなっては今まで女性と触れ合うどころか、見る機会もテレビか教科書くらいでしかなかったのだろう。
だが、ここは武士……じゃないや、女子の情け。気づかないふりをしよう。
「どうかしましたか?」
「えっ、ああ……いや、なんでもないです。いや、ハジメテ女の子を見たもので、はい」
「……教科書で見たのよりカワイイ」
「ばぁーっ!? 何言ってんだお前!」
「ふふ、褒めるのがお上手ですね、ありがとうございます」
にこりと微笑み、礼を言う。
さて、このままだと会話が終わってしまうので、こっちから切り出すか。
「教師の方が来るまで時間もまだありますし、少しお話しませんか?」
「えっ……っ、じゃあ、お話、お願いします」
「お話お願いします……?」
「語彙がヘンなんだよお前もわかれよっ! あーえっと……こういう時なんて答えるのが正解なんだっけ……?」
「まず落ち着いて、深呼吸すればいいかと」
「そ、そうだな。ですね……っ」
教室に深呼吸の音が響く。
「えーっと、それじゃあ、話しましょう。話しましょうで良いんだっけ?」
「どうせ縁がないからってお前そういう授業寝てただろ。俺もだけど」
「私は自然体のままの皆さんとお話したいのですが……」
「じゃ、じゃあ遠慮なく」
「……俺も」
二人は自分の席を見つけ、そこにカバンを置いてから椅子を持ってきた。
私の席を取り囲むようにして椅子を置く。
「では自己紹介を。私の名前は小鳥遊まどか、まどかと呼んでください」
「お、おう。よろしくまどか、さん」
「さん付けしなくてもいいですよ」
「マジで? ……別にへりくだったりする必要ないんだ」
「え、じゃあ、まどか……あー、いや、ちゃんで。まどかちゃんでお願いします」
「わかりました」
「俺の名前は――」
自己紹介から始まったトークはなかなかうまく進んだ。
私と二人は楽しく会話をして、やってきたクラスメイトたちの驚きの声を聞き、そのたびに自己紹介をし。
会話する人数や私の声に耳を澄ませる生徒を増やしながら、教師がやってくる少し前までおしゃべりを満喫した。
※ ※ ※ ※
「女子生徒が入ってくるてウワサ、マジだったんだ」
「しかもフツーに会話してくれたし」
「ああ、めっちゃ優しかったし……あと良い匂いがした」
「お前さすがにそれはキモイぞ」
注目の的になるのは気分が良いものだが、あまり長時間ともなるとさすがに少し気疲れしてくる。
されるだろうと予測していた質問攻めに関しては始業式で教師が注意していたり、男子生徒側にも遠慮があったりして特になかったが、ただ遠巻きに凝視されるだけというのも結構疲れるのだ。
というわけで、休み時間。
私は人のいない場所を探して、屋上の方へと向かっていた。
屋上には案の定入れないようだが、そこに続く階段に、それも始業初日にわざわざ足を運んでくるような人間はいないはず。
そう思いながら私は屋上の階段へと向かい――
「――まどかちゃん、めっちゃかわいかったな」
先客がいた。
「ああ、女の子ってなんか、写真と実物で違うんだな」
「握手してもらったときなんか、マジで手ぇ柔らかかったし……昔の人ってあの子と恋愛してセックスしてたってマジ? デマじゃねえの?」
「いや、昔でもあそこまでカワイイのはなかなかいないんじゃないか? テレビで見る人たちよりずっと、なんつーか、綺麗だし……」
というか、今日最初に会った二人だった。
トイレにでも行っているのかと思ったが、二人でゆっくり話をしていたらしい。
まあ、今の教室の雰囲気ちょっと異様だからな。
私を中心にして生徒たちは全員沈黙してるし、なんというか重圧を感じるくらいの視線の渦が出来上がってるし。
しかし、先客がいるなら仕方ない。
私が言っても緊張させて疲れさせてしまうだけだし、別の場所を。
「しかし、まどかちゃんエロいよな」
「……ああ、マジエッチ」
…………。
「まどかちゃんどんなパンツ履いてんだろうな?」
「白じゃないか?」
「いーや、俺は黒だと思うね。そっちの方がまどかちゃんの白い肌とのコントラストでよりエロいし」
「それ願望じゃねえか」
「願望じゃなくて推測だろ。つーか願望とか言うんだったら俺だってスカートたくし上げてパンツ見せてもらいたいわ。直接答え見たいわ」
「パンツの色をカンニングとかキモすぎだろ」
「じゃあ見たくねーのかよお前は。恥じらいながらスカートたくし上げてパンツ見せてくれるまどかちゃん」
「……見たい」
「…………」
私は無言で、階段の踊り場から姿を現した。
そのままゆっくりと、屋上へ続くドアの前にいる二人の元へ、足を進める。
「…………えっ?」
「いやでも彼女がノーパンという可能性も――」
「おいバカッ! まどかちゃんいるって!」
「えっ? …………あ」
顔を青ざめさせた二人にニコリと微笑みながら、私は言った。
「私のパンツ、見たいんですか?」
「…………あ、えと、その」
「す、すいませんでしたっ!」
「……すいませんでしたっ!」
急いで、土下座をする二人。
まあそれもそうだろう、同じクラスメイトではあるが学園から見ればその価値は雲泥の差だ。私が気分を害したと学校に伝えれば、この二人の席はすぐになくなる。
二人からすれば、今は退学の瀬戸際なわけだ。
「……私のパンツ、見たいんですか?」
「その、それははずみっていうか……その」
「悪気があって言ったんじゃなくて、えっと……」
「答えてください。正直に」
弁明を重ねようとしているところにそういうと、二人は泣きそうな顔になった。
なので、私のスカートのすそをつまんで、少し上げてやる。
「正直に答えてくれたら……”ご褒美”が、あるかもしれませんよ?」
「え……?」
「…………っ」
二人の視線が、地面から私の顔に。
そして私の顔から、少しずつ下にさがっていくのがわかった。
その視線は首筋から、胸元を通ってさらに下がり……下腹部、スカートでさえぎられたその奥に向けられているのがわかる。
ひらひらと指先でスカートを揺らす。
そのたびに、彼らの視線に宿る熱量と、粘度が増していく。
「私のパンツ、見たいですか?」
「見たい、です」
「俺も……見たいです」
指先で、しっかりとスカートをつまむ。
今まで揺れていたスカートが静止した。
「それで……白と、黒でしたっけ? お二人の予想は」
「……は、はい」
「そう、です」
こくり、と首が縦に振りながら、ぎこちない返答。
「それじゃあ、答え合わせ……しましょうか」
そう言って。
私は、ゆっくりと――スカートをたくし上げた。
涼し気な、空調の効いた風が太ももの隙間を流れていった。
しかし、下腹部に溜まっていた熱がそれで消えることはない。
「うぉ……っ」
「…………!」
食い入るように、私の――私からは決して見えない場所を見つめる二人。
ぞくぞくする感覚が背筋を駆け上がり、脳髄に甘いしびれが走る。
「それで……どうですか? 私のパンツは」
「く、くろ、でした」
「ふふ、それなら……正解した、ご褒美をあげないといけませんね」
「え……!?」
スカートをたくし上げて、下腹部を露出させたまま……もう、二歩。
私は前に出て、彼らとの距離を縮める。
狭い屋上の踊り場でそんなことをすればどうなるのか。
「ん……っ、髪がこすれて、少しこそばゆいですね」
「うわ、あぁ……!」
「…………っ!」
超、至近距離。
彼はスカートを頭にのせて、私の股に顔をうずめるような姿勢になった。
髪だけじゃなく、彼の荒い吐息が薄布一枚を隔てた私の秘所に当たる。
「どうですか……? 正解して、ご褒美をもらえた感想は」
「す、すごくエロくて……、良い匂いで……っ! しかもこれ、少し濡れてるのって……」
「じゃあ……私のパンツを濡らしているのがなんなのか、答えられたらまたご褒美ですね」
といっても、正体はこの状況を考えれば丸わかりだろうが。
まあそれでいい。これはサービス問題。形だけのものだ。
「え……じゃ、じゃあ!」
「ダメですよ」
「んむ――ッ!?」
ご褒美中に欲張って答えようとした彼の頭を手で押さえ、開いた口を私のパンツに押し付けて回答を封じる。
そして、私は食い入るようにこちらを見ていた不正解者へと目を向けた。
「じゃあ、前回間違えた……んっ、あなたから、答えて良いですよ……っ」
「…………あ、あい、えき……?」
「ふふっ、正解です……あっ、こら、そこから先はまだダメですよ」
友人が回答している間も、興奮が収まらなかったらしい。
顔をうずめた彼は舌先を器用に使って私のパンツをめくって、さらにその奥を味わおうとしている。ご褒美とは言えさすがにやりすぎなので、私が一歩引く形で引きはがした。
私のパンツと彼の口の間に銀の橋がかかり、そして切れる。
「もう……ただでさえ濡れてるんですから、これ以上濡らさないでください」
「で、でも……まどかちゃん、俺……っ!」
「そんなにせかさないでください。……これから先、機会なんていくらでもありますから、ね?」
「…………っ!」
「ふふっ、良い子ですね」
大人しくなったその頭を優しく撫でる。
そして、静かに待っていた、二問目の正解者の方を向いた。
「…………っ」
「それじゃあ、あなたのご褒美は、何が良いですかね?」
「お、俺は……!」
そして、彼が答えようとしていたその時。
私は廊下で響いていた足音や話し声が少し大きくなっていることに気づいた。
私たちのことに気づかれた――わけではない。
どちらかというと、時間にせかされたような動き。
「あ……っ、まずいですね、休み時間が終わりかけみたいです」
「ええ……っ!?」
「ドンマイ。じゃ、俺とまどかちゃんは教室に戻るから……」
「いえ、あなたも顔を洗ってきた方が良いと思いますよ」
自分の唾液でひどいことになってるし。
遅刻しそうなのに立ち上がろうともしないから、たぶんパンツも暴発でひどいことになってるんだろうな。
それでも顔に浮かんだ満面の笑みが示すように、彼は勝ち組だ。
その満面の笑みに対し、時間切れで絶望の表情を浮かべるもう一人。
「え、じゃあ、俺のご褒美は……」
「ええ、そうですね。残念ですが――」
ただ、負け組を作るなんて趣味じゃないし――
「――二問目のご褒美は放課後に……たっぷり、時間を使ってあげますね」
私が彼の手を取ってそういうと、彼はブルリと体を震わせた。
そして、赤面して顔をうつむかせて……ああ。
彼に何があったのか察した私は、その場を後にすることにした。
「それでは、私は先に戻ってますね」
「あ、ああ……俺たちは」
「もうちょっと、時間がかかる……かも」
私は先に戻り、教師の到着と同時に席につき、授業が始まった。
それから十分ほどして、二人は戻ってきた。
当然教師に叱られそうになったが、教師がふいにスンスンと鼻を鳴らしてから私のことを見て、二人の背をポンポンと叩いて「まあわかるよ」と言って、お咎めなしになった。
※ ※ ※ ※
かくして放課後。
教室には異様な空気が形成されていた。
誰が私を帰り道に誘うのかいやお前は誘うなというけん制と、そして俺以外が誘いやがったらコロスという殺意の入り混じった、恐ろしく張り詰めた空気だ。
だけどまあ、私が動く分には関係ない。
私は二人を誘おうとして席を立ち――
「た、小鳥遊さん……一緒に、帰らない?」
「――――」
――勇者が現れた。
殺意とけん制の入り混じった視線を感じていないのではなく。
それらを感じとった上で勇気を振り絞り、冷や汗をだらだらと流しながら私の前に立つ勇者が現れた。
すごい。
この完璧な「話しかけたらどうなるのかわかってるよな?」という一種の連帯感すら感じる、完成された雰囲気を跳ねのけるとは。
普段はたぶん爽やかなイケメンなのだろうが、今は全方位から向けられる殺意によって、汗で全身びしょ濡れになって私に話しかけている状態だ。第三者から見れば不審者である。
しかし、その瞳は強い光を宿している。
間違いなく勇者だった。
「あっ、えっと……迷惑でなかったなら、だけど」
「いいえ、そんなことありませんよ」
そう返すと、希望に満ちた顔になる勇者。
ただ、ごめん。
「ですが、その……今日は先約がいるので」
「そ、そうか……わかった」
絶望に沈む勇者。
「ええ、なので。明日は一緒に帰りましょう」
「……! は、はい!」
希望に満ちる勇者。
晴れやかな表情になった勇者は、周囲からの羨望と殺意のまなざしを受けながら、それでも堂々とした足取りで帰っていった。
そして、私はすたすたと教室を歩いていき。
「お待たせしました、それじゃあ一緒に帰りましょうか」
「お、おう……帰ろうぜ、まどかちゃん」
「……この一瞬が待ち遠しかった」
針のむしろとなっていた二人に声をかけた。
そりゃそうだ。男性教師のあの態度と、漂う香り。
男子高校生なら何があったのか、というかナニをしたのかは瞬時に理解できるだろうし、この二人は最初から私との仲を深めている。
要するに誰をオカズにナニをしたのか丸わかりの状態だった。
その状態で、周囲からの「ナニしてんだテメエら……!」という殺意の視線を放課後まで耐え忍んでいたのである。
さっきの彼が勇者だとしたら、こちらの二人はタンク役だ。
「それではみなさん、また明日」
そう言って、私と二人は教室を出た。
向かう先は私の住む寮だ。
「…………」
「…………」
「…………」
学校の昇降口を出て、先導する私の後ろを二人が付いてくる。
休み時間での出来事もあり、二人とも無言のまま。
私は背中に……というかうなじやお尻に向けられた視線を感じとりながら、寮へと向かう。
はたから見れば、若いボディガードを引き連れたお嬢様に思えたことだろう。
そして、歩いて数分もせずに、寮に到着した。
「うお、でっか……」
「すげえ力入れてんな……」
「ふふ、そうでしょう。私も初めて見たときは驚きました」
男子寮と同じ規模。
しかし、暮らす人数はせいぜい十人程度を想定した女子寮を見て、感嘆の声を漏らす二人。
そして、二人は踵を返して私に背を向け――
「じゃあ、俺たちはこれで……」
「……また明日」
「上がっていきますか?」
そのまま一回転し、私に向き直った。
「あ、あがっ、上がれんの!?」
「ここ、男子禁制だって話じゃ……!」
「申請をすれば入れますよ。それに申請も私の端末からできます」
そう言って端末を見せる。
二人は顔を見合わせてから、私の方を見た。
「お二人とも、帰るつもりだったんですか?」
「いや、でも帰り道で何もなかったし……なあ?」
「俺も……ここがゴール地点だと思ってた」
「ええ、下校のゴールなのは間違いありませんね。なのでここから先はボーナスステージです」
私は二人の片割れ――二問目の正答者との距離を詰める。
ネクタイをつかんで引っ張り、かがませて、その耳元でささやいた。
「それに、正解の”ご褒美”……まだですからね」
ごくりと。
二人が喉を鳴らしたのがわかった。
※ ※ ※ ※
二人は寮に入ってから私の部屋に到着するまで、ずっとぎこちない動きだった。
緊張だろうか、それともこの先への期待だろうか。
まあ後者かな。耳元で囁いてからずっと、カバンを腰の前に当てて歩いてたし。
そして少し歩き、私の入居している部屋……のリビングに入る。
部屋の隅にあるテーブルにカバンを置いていると、二人の口から感嘆の声が漏れた。
「おお……っ、これが、女の子の部屋……家具が全部でけえ!」
「俺たちの寮の食堂が丸ごと入りそうなリビングだ……」
「勘違いしているようなので言っておきますけど、この寮が最初からそうだっただけで、私本来の暮らしはもう少し質素ですからね?」
まあ、質素というのは他の女性と比べたらの話。
この世界におけるトップ層の中では控えめ、という意味だ。
「そ、そうなの? いやでも、ここすげえ……」
「ああ、マジで広い……」
「ちょっと、そっちじゃないですよ」
そのままふらふらとリビングへ進もうとする二人の裾をつまんで、引っ張る。
「え、と……? まどかちゃん、どこに?」
「……ドレスルームで正装にするとか?」
「ぶっぶー、ハズレです」
わざとらしく指でバツマークを作ってから、いう。
「――ドレスルームじゃなくて、ベッドルームです」
硬直した二人に、言葉を重ねる。
「それに、私がお二人を正装にするんじゃなくて、お二人が私を……ふふっ、どうしちゃうんでしょうね?」
それとなく近づき、二人の手を片方ずつ取って指を絡め、簡単にはほどけないようにする。
恋人つなぎというヤツだ。
そのままギュッと手を握れば、二人は神経に直接触れられたかのように、びくりと体を跳ねさせた。
「さあ……行きましょう? ボーナスステージに、ね」
ぎこちなく、それでも確かに首を縦に振る二人。
私は下腹部と背筋に走るゾクゾクとした快感に身体を震わせながら、二人を自らの寝室へと招き入れた。
この寮の寝室は結構広い。
寝るためだけに作られたのにこの広さということは、完全にヤルことやるのを想定しているんじゃなかろうか。と思うくらいだ。
まあ私以外はそんなの想定してないんだろうけど。
私は二人を招き入れて、部屋の中央で手を離す。
「それじゃあ、まずは休み時間にできなかったご褒美からですね。別れる前に何か言いかけていましたが……何がしたかったんですか?」
「えっ、いや、あれは……その、場の雰囲気に当てられてたというか」
「俺みたいにまどかちゃんのおまんこ舐めたかったんだって」
「おまっ! バカ!」
「良いじゃん、まどかちゃんめちゃくちゃ優しいし。断られるかもしんないけど言うだけならタダだろ?」
そういう親友の背中をバシバシと叩くが、視線はこちらへと固定されている。
どうやら相当期待しているようだった。
なら……その期待に、応えてあげよう。
「そうですか……それなら」
「?」
「まどかちゃん……?」
私は二人に背を向けてベッドの方へ向かうと、その縁に腰を下ろした。
高級なマットレスが沈み、私の体を受け止める。
「どうぞ」
「どう、ぞ?」
事態が飲み込めてない様子なので、言葉を続ける。
「良いですよ。私のそばに来て、跪いて、スカートをめくって、足をつかんで開いて。私のおまんこに口づけして……思う存分舐めても、良いですよ。……ふふっ、少し驚いてしまうかもしれませんけどね」
ひらひらと、休み時間の時と同じようにスカートを指でつまんで揺らす。
許可が出た。
それを理解した彼の動きは、さながら誘蛾灯に惹かれる虫だった。
ゆっくりと、それでも確かな足取りでこちらに歩み寄り、私の前に跪いて、足を割り開く。そしてスカートをめくり――硬直した。
「え、これ……」
「マジかよ」
「やっぱり、驚きます? ――今日の授業中、こうだったなんて」
外気に触れた私の秘裂が……下着に覆われていないことを知ったのだ。
ほかほかの、ぷっくりと膨らんだつるつるのロリまんこ。
ぴっちりと閉じて性を知らないようでいて、その実トロトロの愛液を垂れ流す据え膳まんこを男の眼前にさらしながら、私は言った。
「お二人と会った、その次の休み時間の時ですね。下着が濡れているのが気になって、お手洗いに行く振りをして……脱いじゃいました」
「じゃ、じゃあ、ずっと……」
「このままでしたよ? クラスの皆さんが真面目に授業を受けている間も、ずぅっと。少し屈んだり、足を開くだけでおまんこが見える状態で過ごしてたんです……クセになっちゃいそうでした」
呼吸が早まったのがわかった。
唾液を嚥下して喉が動いたのがわかった。
理性の限界を迎える寸前であろう男に対して、私は言った。
「――良いですよ、私のおまんこ。今だけはあなたのモノですから」
「…………っ!」
しゃぶりつく。かぶりつく。
そう形容した方が良いくらいの光景だった。
「んっ! ふふ……っ、あっ! すごい……っ!」
味わいつくし、しゃぶりつくそう。
そんな確固たる意志を感じさせるくらいの、舌の動き。
膣口も尿道も、クリトリスも……すべてを刺激し、舐め清めようとするその舌先と、少女の秘裂から湧き出るジュースを飲み干そうとする口。
そんな淫猥な光景を見て我慢ができなくなったのか、もう一人の男も呼吸を荒げる。
「ま、まどかちゃん、おれ、俺も……っ!」
「良いですよ……っ! 服を、脱いで……っ、ベッドの上に、上がってください……っ! あんっ、もう、嫉妬しないでくださいっ」
別の雄に意識を向けているのに苛立ったのか、舌先の動きがさらに獰猛になる。
膣口を舌でこすり、クリトリスを吸い、尿道をほじくる。速さも、弱点を突こうとする執念も強くなっている。
それに加えて私の方も元から興奮し、ほぐれていたからか。快楽の高まりがいつもと違った。
「いいっ、イイ……ですよっ、私も、もうっイキそうです……っ!」
「…………っ!」
それを聞いて、舌の動きが変わる。
より苛烈に、より私の雌の部分をいたぶるような動きに。
「……もっ、そろそろっ、イキます……!」
私はたまらなくなって、彼の頭に抱き着いた。
足で首を、手で頭を押さえつけ、私のおまんこに彼の口を密着させる。
頭の奥で、快楽が弾けた。
「~~~~~~~ッッ!!」
潮を噴いたのが、なんとなくわかった。
それは彼の頭にさえぎられて部屋に飛び散ることなく……そのまま、彼の口に入っていく。
「……んっ、んくっ」
「ぁあ……やっ、ぜんぶ、のまれてる……っ!」
噴いた潮をすべて飲み干していく。
そして、彼からの奉仕はそれだけに留まらなかった。
「…………っ」
「あっ、んんっ……ふふっ、ちゃんとお掃除出来てっ、良い子ですね……っ」
私に頭を撫でられながら、ぺろぺろと濡れたおまんこを舐め清めて。
膣口から尿道口、クリトリスのすべてを綺麗にお掃除した後に、彼は私の秘所から口を離した。
「――ぷはっ。……はぁ、はぁ、はぁ……」
「お、おい、お前大丈夫か……?」
「――――」
親友の声かけに無言でうなずいた後、呆然とした様子で地面に寝転がる男。
それと入れ替わるように、服を脱いで全裸になった男がベッドへと上がった。
その手には、あるものが握られている。
「こんどーむ、ですか」
「あ、うん……一応、配布されてたから」
「そうですか」
最初はこんな男女比崩壊世界でコンドームなんて必要なのかと思ったが、人工卵子で生殖そのものは安定して行えるため、希少な女性に望まぬ妊娠をさせないために存在しているらしい。
「えーっと、確かつけ方は……」
「つけてあげましょうか?」
「えっ、良いの?」
「良いですよ。……そ、れ、と」
私は膝立ちになった彼からコンドームを受け取り、そのまま――彼の股間へと顔を近づけた。
そこにそびえ立ったモノは、今日だけで何度か暴発した名残を……精液を付着させている。
「お掃除、してあげますね……ちゅっ」
「う、ぉ……っ」
ついばむような、触れるだけの口づけを亀頭に落とし、舐め始める。
付着した、乾きかけの精液を舐めとって飲み下し、私を孕ませようと精子を増産している玉袋を揉みほぐす。
この女性を大切にしなければならない、女性が優位の世界では発想すらないであろう、献身的な奉仕。
雄を上位に立てた、これからまぐわって、自分をハメ潰してくださる雄様への愛情表現。劣情を沸き立たせるための準備運動。
当然、この世界の雄には刺激が強い。
「やば……っ、これ、また出っ」
「だーめ」
「うぐっ、くっ、ぉ――!?」
ぎゅうっと、根本を締め付けて精液をせき止める。
片手で射精を押さえつけながら、もう片方の手でコンドームをくわえて……そのまま、口を使ってコンドームを装着する。
そのまま唾液を使って、コンドームを濡らせば――
「ふふっ、準備完了ですね」
「まどかちゃん、俺、もう……っ!」
「わかってますよ」
私は膝立ちのまま、ベッドの中央へと移動する。
そして、そのまま寝っ転がり――スカートをたくしあげて、股を開いた。
雄を迎え入れるための、雄に媚びるためのM字開脚。
女の子の弱点をすべてあらわにし、そこに突き刺さる視線に顔を赤らめながら、私は誘惑の言葉を吐く。
「お待たせいたしました。ボーナスステージのご褒美はこの私、小鳥遊まどかのほかほか据え膳ロリまんこです。世界でも希少な女の子の、その中でもさらに希少な現役女子高生おまんこ。たっぷり、堪能して構いませんよ」
「――――ッ!」
「やんっ」
私の体に、理性を失った雄の体重がのしかかった。
完全なマウントポジション。こうなってしまったらもう出られない。階段の踊り場の時とは違って女性ゆえの優位なんて欠片もなく、ただ雄に貪られるしかないのだ。
「…………っ、ここ、かっ!」
期待で震わせる雌を前にした雄としての本能か、彼は入れるべき場所を探り当てて――私の秘所を一突きで占領した。
「んん……くっ! おっきい、ですね……っ! 私のおまんこ、全部っ、あなたのモノにされちゃってます……っ!」
「ッ! エロすぎだろっ!」
「んあっ!?」
パァンッ! と音がしそうなくらいに、腰を叩きつけられる。
そしてそのまま、抽挿が始まった。
「くそっ、めちゃくちゃ気持ちいい……っ!」
初めてらしい不器用な腰振り。
しかし才能があるのか、それともやはり本能なのか。
それは回数を、時を経るごとに鋭く。雌を、私を屈服させるためのものに移行していく。
それと同時に、彼の理性もさらに緩んできたようだった。
「まどかちゃん、まどかちゃんっ……まどかっ! まどかぁっ!」
「あんっ、呼び捨て……っ、ダメっ、私のおまんこがっおちんちんもっと好きになっちゃいますから……っ!」
「まどかっ! 好きだっ!」
私の名前を、好意をしきりに叫びながら腰が叩きつけられる。
チンポが私の中を掘削し、子宮口が乱暴にノックされる。
子宮を通じて脊髄が、そして脳が揺さぶられるような快楽。
しかし、もともと暴発寸前だったものを抑え込んで性交に移ったためか、それも長くは続かない。
腰の動きが変化すると、彼の表情に苦しげなものが混ざり始めた。
「ああっ、クソ、もう……出るっ!」
「いいですよっ! きてください……っ!」
足首をつかみ、体重をかけられて、ベッドに抑え込まれる私。
全身を使って最後の、最高の一瞬にたどり着こうとする動きは、すぐに実を結んだ。
「あっ、いくっ、イキます……っ!」
「ぐっ、搾り、取られる……っ!」
「イっ、くぅ――――ぁっ、ぁあああああああああああッッ!!」
私より大きな体、雄の体にしがみつきながら私は絶頂を迎えた。
本来なら跳ねるはずの体は雄との体格差によって無理やり抑え込まれ、快楽を逃がし、軽減することすらままならなかった。
脳が焼けるような絶頂の快楽を、すべて受け止めることを強制される。
ばちばちと脳の片隅で火花が弾けるのがわかる。
どくどくと精液がゴム越しに注ぎ込まれるのがわかる。
ぜえぜえと吐き出される呼吸が混ざり合い、溶け合うのがわかる。
「…………」
「…………」
彼が、私を見ているのがわかった。
私が目を閉じると、少しかさついた唇が私の唇にあたり、にゅるりと何かが入ってきた。
私は舌でそれを出迎え、絡ませる。
「んっ、ちゅ……んむっ」
「――――」
しばらくすると舌が力を失い、同時に彼の体からも力が抜ける。
どうやら、今までの行為で感じた刺激が強すぎたらしく、意識をシャットアウト……つまりは気絶してしまったらしい。
「よい……しょっと。ん……っ」
彼の体を転がすようにして脇にどけると、中に入れられたままだったチンポがコンドームを置き去りにして抜けていった。
快感に悶えながら膣内に残されたコンドームを引っ張り出して結び、ぱんぱんに膨らんだ、本来なら卵子をレイプするはずだったそれをまじまじと見つめる。
「おお、今日だけで何度も出してるのに、よくこんなに出ましたね……お疲れ様です。……ちゅっ、んむ……っ」
私を絶頂にまで連れて行き、そして萎えてしまった彼のチンポ。
それを労わるように優しく口づけを落とし、お掃除を開始する。
丁寧に、根本からカリ首を舐め清め、亀頭の奥――尿道に残った精液まで吸い取って、お掃除は完了だ。
「あとは、そうだ。寝冷えしないようにシーツをかけて……っと」
「……小鳥遊、さんっ。あの……っ」
「ふふっ、わかってますよ」
私たちがまぐわっている間、待っていてくれたもう一人の雄の方を向く。
そのチンポは我慢汁を垂らしながらいきり立っていて、目の前の据え膳をハメ潰すのを今か今かと待ちかねていた。
当然、雌として――そんな雄を待たせるわけにはいかない。
「それで、あなたはどうしたいですか?」
「ど、どうって……」
誘惑する。
「さっきのように、私を力づくで押さえつけて、雄としての猛りを叩きつけたいですか? 足首をつかんで逃げられないようにしながら、びゅーびゅーと私の子宮に精液を注ぎ込むの、とても気持ちよさそうですからね」
挑発する。
「それとも、四つん這いになって獣みたいにまぐわいたいですか? 私のこの長い髪を手綱のように引っ張って、真っ赤になるまでお尻を叩いて……大人にしかできないお馬さんごっこ、なんて良いかもしれませんね」
扇動する。
「いっそのこと、私があなたの上にまたがって、腰を振るのもいいかもしれませんね? 本当なら奉仕するはずのあなたが奉仕されて、奉仕されるはずの私が一生懸命に腰を振って、あなたを楽しませるんです。ふふっ、想像するだけで気分が良いでしょう」
汗に濡れて、役立たずになった布切れを一枚ずつ脱ぎ捨てながら。
少女としての砦を自分から切り崩しながら。
淫らに、快楽への期待に笑いながら。
私は、言う。
「あなたは――どうしたいですか?」
※ ※ ※ ※
※ ※ ※ ※
登校二日目。
教室は朝から異様な雰囲気だった。
それもそのはず。
始業早々に男子二人が寮の門限ギリギリになって帰ってきたからだ。
それだけならまだしも、その二人はこの学校が始まって以来初の女子生徒を寮に送り届けてから、よりにもよって女子寮のなかで門限ギリギリまで過ごしたという。
「…………」
嫉妬、殺意、羨望、疑念。
様々な感情が渦巻く教室のなかを歩いて席に向かうと、一人の生徒が立ち上がり、こちらへ話しかけてきた。
「あのっ、小鳥遊さん……」
「おや、勇者さん」
「へっ? ゆう……?」
「ああいえ、なんでもありません。こちらの話です」
私はカバンを机に置くと、声をかけてきた生徒の方に向き直った。
「それで、何か御用でしょうか?」
「いや、その……っ、昨日のことなんだけど」
「ふふっ。昨日の、なんのことですか?」
「…………。ごめん、失礼なことを言う。わかってて言ってるよね?」
「ええ、まあ」
踏み込んだ一言に、あっさりと返される肯定。
教室がざわめいた。ついでに廊下で聞き耳を立てている群衆も。
誰かが唾を飲む音がした。
「なら聞かせてほしいんだけど、その、二人とは何を……」
「違いますよね?」
「……ちが、う?」
虚を突かれたところで、一歩距離を近づける。
ネクタイを手に取り、ゆっくりと、相手を屈ませる。
「あなたが聞きたいのは、そんなことじゃないはずですよ」
「ぼ、僕が聞きたい、こと?」
「ええ、そうです」
ゆっくりと、顔を近づける。
「あなたが聞きたいのは……んむっ」
「~~~~~~っっ!?」
唇を合わせて舌を入れ、驚いた様子の彼の舌を絡めとる。
ネクタイから手を離して耳をふさぎ、彼の頭の中がこの粘膜の絡め合いで、いっぱいになるようにする。
「んっ、んむ……ちゅっ、れろ……っ」
「……ッ、…………ッ!? …………ッ!」
数秒ほどの、観衆にまで音が聞こえるようなディープキス。
それを終わらせると、私と彼の間には銀の橋がかかり――そして、切れた。
同時に身体から力が抜けてしまったのか、彼は地面にへたり込んでしまった。
「ぷはっ……ふふっ。あなたが聞きたいのは――こうやって。私とあの二人が激しく舌を絡めたのか……ということじゃないですか?」
「…………っ」
「違いましたか? それじゃあ、色々と考えなければいけませんね」
絶句する観衆に対し、私は芝居がかった身振り手振りで言葉を重ねた。
「私があの二人を前に、衣服を一枚ずつ脱いで裸体をさらしたかですか?」
「それとも、あの二人の生殖器……いいえ、チンポにご奉仕したか?」
「ああ、媚びた言葉を並べ立てて、獣欲を煽ったかとか?」
「ふふっ、もっと直球に、浅ましく……セックスをしたか?」
「セックスをしたとしたら、どのようにしたか?」
「泣き叫びながら、快楽に蹂躙されて絶頂したのか?」
「自分から相手にまたがって、淫らに腰を振って奉仕したのか?」
一挙手一投足。
自分のすべてに視線が、獣欲に満ちたそれが注がれていることがわかる。
そして、自分の下腹部がそれに対し、興奮し始めていることも。
「ふふふふっ、知りたいですか? 私がそんなことをしたのか」
「…………」
こくりと、首が縦に振られた。
なので、私は答える。
「しましたよ。全部」
教室に、重く張り詰めた沈黙が下りた。
熱気と欲望に振り切れた、あまりにも淀んだ空気。
例えるならば、導火線に着火された爆弾か。
適切に処理しないと、私はこのまま周囲の興奮を煽った責任をこの身で取らされてしまうことだろう。
この華奢な体だ。簡単に抵抗を封じられ、男子生徒たちの、いやこの学校に在籍するもの全員の共用肉便器になってしまう。
そして一週間、いや一日もしないうちに父親のわからない子を孕まされてしまうことだろう。
「――――っ」
それも悪くない。
そう感じてしまっている自分の終わり具合に呆れながら、私は地面にへたり込んでしまった彼の傍にしゃがんで、言葉を続けた。
「羨ましいですか、あの二人は」
「…………」
こくりと、首が縦に振られる。
「妬ましいですか、あの二人は」
「…………」
こくりと、首が縦に振られる。
「自分も、してみたいですか?」
「……っ!!」
ぶんぶんと、首が勢いよく振られた。
「良いですよ」
「…………え?」
虚を突かれた表情だった。
「放課後にはなりますが。約束通りに一緒に下校して……何をするかは、その時までに考えておいてくださいね」
「え、あ……僕と?」
「そうです。あなたは昨日、あのプレッシャーの中でくじけずに、私に声をかけてくれましたからね。あの時は本当にすごいと思ったんですよ?」
こればかりは本音だった。
あの出来上がった空気、暗黙の了解というヤツに抗うのは並大抵の勇気じゃ出来はしない。
だから。
「――これはご褒美です」
私は、彼の頭を撫でた。
上下関係というものを、決定づけるように。
そして、観衆を相手に、言葉を続ける。
「私は、誰に対してもとまではいきませんが……素直に尊敬できる人たちや、好ましい人たちに対するご褒美は惜しみませんからね。今は無理でも、部活動や勉強で努力をし続けたり、それで成果を出せたのなら――」
私はにっこりと微笑んでクラスを見回し。
彼らと私との間に、確固たる上下関係が構築されたことを。
「――その時は、皆さんにもご褒美を差し上げますね」
私がこの学校の、女王になったことを確信した。