※この作品はR-18です。

転がりゆく石のように   作:鮫肌猫

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転石苔を生す 1


「──世の中クソだし、ハンターもクソだ。お前がどれだけ外面を取り繕ってようと、クソみたいなハンターである事には変わりない」

 

無数のガラクタが転がり、客は酒に後押しされるがまま下世話な話に興じる混沌とした酒場(ハンターショップ)、ノーブルシット。その主人たるバシネットの機械の瞳(サイバーアイ)が目の前の女を睨めつけるように光り輝く。

 

バシネット。彼は神に妖精、暴走したナノマシンまで"なんでもあり"の24世紀においてすら珍しい、完全なサイボーグである。全身が機械化された彼の威容は並大抵のものではない。

 

しかし

 

「流石はバシネット様、歴戦の英雄らしい含蓄に富んた素晴らしいお言葉です。このギミー、感服致しました!」

 

目の前に座る黒いスーツを着込んだ短髪黒髪のエルフ、"ギミーシェルター"は慇懃無礼とも言える態度を崩さない。その様子を、バシネットは感情の見えない瞳で眺める。

 

「ところでバシネット様、私としましてもあなたのような英雄と過ごすこの貴重な時間は惜しいですが、誰であれ、仕事が無ければ生活はままなりません。どうかこの哀れな私めに仕事を恵んで下さらないでしょうか?」

 

「おいおい、仕事を放り投げて仲介料を掻っ攫う奴の為にか?」

 

「それは誰の事でしょうか。あくまでも私は必要な情報を適した方に渡し、効率的な依頼の達成を計っているだけ。何より、私のモットーは"不幸のない取引"。勿論バシネット様が払う金額に変わりはありませんし、私が協力を仰いだ皆さんは納得の上で納得の報酬を受け取っていますとも!」

 

バシネットはギミーシェルターが行って来たという有名な複数の仲介を思い返す。なるほど、確かに否定は出来ない。否定は。

 

ギミーシェルター、彼女は退廃した堕天特区を支配するエルフの1員である。長い耳と均衡の取れた美しさ、そして酒場においてさえ自然と香ってくる心地良い芳香がその証左だ。本来なら堕天特区の頂点たる楽園区において何不自由ない生活を送っている筈の天上の人。しかし彼女は、何故か様々な依頼を請け負う便利屋、ハンターとしてその名が売れていた。

 

「分かった、分かった。そもそもこの依頼は指名依頼って訳じゃねぇ、受けたいなら好きにしな。結局、お前が何をしようが、こっちとしちゃあ依頼さえ完了してくれりゃいいんだ」

 

「素晴らしい。それでは、依頼の内容についてご教授して頂きたい」

 

バシネットは頷き、机の下から1枚の紙切れを取り出した。

 

 

 

 

 

【依頼内容】

事件内容:連続暴行事件の解決

事件現場:外壁区下層、繁華街の路地裏

達成条件:犯人の討伐か捕縛

報酬:100クレジット

期間:7日(168時間)

依頼主:現場一帯の顔役ら

 

 

 

 

「紙に書かれた通り、最近この辺りで連続暴行事件が起こってる。お前がするべき事はそいつをぶっ殺すか、矯正院に叩き込む事だ」

 

「ふむ....」

 

ギミーシェルターは紙切れを眺め、思案する。100クレジット、普通の人間であれば、数カ月は働かずとも過ごせるだけの金額。ハンターへの報酬としては妥当なものだ。しかし、ギミーシェルターは報酬の欄をサッと確認するだけに留め、他の点に注目した。

 

「依頼主が"現場一帯の顔役ら"となっていますね。辺り一帯で金を出し合ったという事でしょうか?」

 

「知るか。だが、依頼書にそう書かれてるからそうなんだろう」

 

「なるほど、了解致しました」

 

ギミーシェルターは手元の酒を飲み干し、席を外す。

 

「私にお任せ下さい。必ずや達成してご覧に入れます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜0時、依頼を受けたギミーシェルターは酒場を離れ、路地に出る。そんなギミーシェルターを一つの人影が追跡していた。

 

(あいつ....私が目を付けていた依頼を....)

 

名は、アスカロン。美しい銀の髪を豊満な胸に届くほど伸ばしたその女は、物陰からギミーシェルターを睨む。

 

別に、命を狙っているという訳ではない。大きな陰謀の端末として動いている訳でもない。そもそも彼女は新参者、そのような大それた依頼など、受けた事もない。しかし、半人前ながらも最低限の修羅場を乗り越え、そこらのチンピラと一線を画した力を得た彼女は....有り体に言えば、少しばかり調子に乗っていた。

 

(....くそっ、あんな奴に負けてたまるか....) 

 

そんな彼女にとって、ギミーシェルターは鼻持ちならない存在だ。ハンターとしての年季も、解決した依頼の規模も自分より遥かに上。だが、結局の所、現場に出るのはいつも他の誰か。なのに名声だけは積み上がっていると、そう考えていた。

 

(所詮は人任せのフィクサー、少し脅してやれば音を上げるはず....)

 

二人は既に酒場からかなり離れている。辺りには人の気配もない。アスカロンは拳銃を取り出し....

 

「──もし、そこのお方。私に何か御用でしょうか?」

 

夜闇よりも暗い瞳が、物陰に隠れたアスカロンに視線を合わせる。

 

「なっ....」

 

(馬鹿な、気付いていたのか!?一体いつから....いや)

 

(こんな奴に、舐められてたまるか....!)

 

驚きによって動作を止めたアスカロンは、しかし驚きそのものに反抗するかのようにゆっくりと闇の中から姿を現す。

 

「....フン、流石はギミーシェルター。勘だけはそれなりに鋭いらしい」

 

「私、木っ端ながらもエルフですので。超感覚(ESP)は問題なく持ち合わせておりますよ?」

 

「む....」

 

そこでアスカロンは自らの失敗に気付いた。エルフにはESP、鋭敏な超感覚が備わっている。彼ら、彼女らは文字通り別の世界を"視て"いるのだ。"大変革"以降世界に満ちた魔力の流れ、目の前の人間の感情、そして、生物の気配ですら、ESPは容易に看破してしまう。

 

「と、とにかく、そんな事はどうでもいい!」

 

心の中に湧き出した感情....羞恥を視られている事にも気付かず、アスカロンは言葉を続ける。

 

「お前が今受けた依頼。それは私が以前から目を付けて調査していた依頼だ。後から手を出すのは止めてもらおう」

 

「なるほど、それは申し訳ありません。ええ、そういう事でしたら私はキッパリと諦めます」

 

「手を出すというなら....待て、今なんと?」

 

あまりにも早い、一切の憎まれ言を内包しない純粋な降参。アスカロンは聞き間違いを疑い、聞き返す。

 

「私、依頼に手を出すのは諦めます」

 

しかし、答えは変わらない。望んでいた筈の宣言。なのに、この後に何を言えば良いのか困惑してしまう。

 

「....や、やけに素直だな。酒場では必ずや達成するだの言ってた癖に」

 

「勿論、依頼に対してはそれだけの意気込みを持っています。とはいえ、私が否定すればあなたはその銃で私を襲う、そうでしょう?」

 

「それは....否定しないが」

 

「であれば、私にはどうしようもありませんよ。だって、ほら──」

 

ギミーシェルターが手を広げる。その瞬間、彼女を包み隠していた黒のスーツが消え失せ、裸体が晒される。

 

「──!?」

 

「私の服は立体映像(ホロドレス)ですから。勿論、武器は持ち合わせていませんし、戦いとなれば一方的に嬲られるだけでしょう」

 

「それを説明する為に裸を晒したと!?」

 

堕天特区の人々にとって、情欲の対象に男女の差異はあまり関係がない。反駁しながらも、アスカロンの視線はつい目の前の裸体に集中してしまう。引き締まった美しい双丘と、その中央に位置する2つの乳頭。そして何より、毛の一本もない彼女の秘部は、その割れ目を惜しげもなく晒していた。

 

「....」

 

「ふふ、ですが、私も金(クレジット)が無ければ明日も知れぬ身──」

 

生唾を飲み込んだアスカロンに対し、ギミーシェルターは裸であるにも関わらず、普段の態度を崩さないまま恭しく跪く。

 

「お....おい、何をしている....?」

 

「報酬については、あなたのお心のままで結構です。なので、あなたが依頼を解決するその一助として、私を雇って頂けないでしょうか?」

 

「....っ....」

 

(....あのギミーシェルターが....懇願している。こんな路地裏で、裸のまま....私に跪いて....)

 

心の何処かで、"上"と見ていた相手からの懇願。決して認める事はないだろう。しかし彼女には、裸体への興奮と共に、"憧れ"を踏み躙る歪んだ優越感が芽生えていた。

 

「....フ、フンッ....そうやって私に甘言を吐いて、後で裏切ろうという魂胆だろう....」

 

「まさか、そのような事はありえません。私はただ、真摯にお願いをしているだけです....」 

 

「....それなら....」

 

ニヤリと、笑う。彼女はその辺りに散乱していたダンボール箱に腰掛け、靴とタイツを脱ぐ。

 

「....足を舐めろ、それが出来たら信じてやる」

 

そう言って足を差し出したアスカロンの頬は紅潮し、身体もいつも以上に熱を帯びている。彼女は、明らかにこの状況に酔っていた。

 

「ええ、勿論」

 

「んぅっ....!?」

 

だが、屈辱的とも言えるこの状況に対して、ギミーシェルターは一切逡巡する事なく差し出された足指を舐ぶり始める。汚れを取り逃がさないように、じっくりと。火照りを強めるように、ゆっくりと。

 

(なんだ....これっ....足を....舐められているだけなのに....)

 

自然と身体が熱くなり、秘部が疼く。前戯にも似た快楽が、ゆっくりと理性を蕩けさせる。

 

「うぅっ....」

 

(だめだ....これは、だめだ....)

 

「〜っ....お、おい、もう止めろ....!」

 

「ん....」

 

ギミーシェルターは、歪んだ形でその要求に答える。了承したとでも言わんばかりの微笑みと共に、足先から移動するように舌が這う。

 

「ひゃうっ♡」

 

足首、脛、膝を通り、太腿へ。舌が肌を這う感覚が半人前の口を塞ぐ。ゾクゾクとした快感に染まり、身体さえも抵抗しない。舌が動きを止めた頃になって、ようやくアスカロンは消えかけの反発心を頼りに反論を口にしようとする。

 

「....違っ....場所を変えろって意味じゃ....んぅっ♡」

 

しかし

 

秘部の直前。快楽を与え続けた舌が、足と呼べるギリギリの位置を狙って、またアスカロンを舐め始める。反論を押し殺す為に。

 

「っ....♡あっ....♡」

 

意味のある言葉は嬌声に取って代わられる。甘い快楽が脳を支配する。逃げようと思えば逃げられるだろう。だが、アスカロンにはもう抵抗する気力が湧いてこない。彼女は、与えられる快楽を享受し続け、ただ"その先"を期待する。

 

「──さて、これだけ足(・)を(・)舐(・)め(・)れ(・)ば(・)充分でしょうか?」

 

「....え?」

 

快楽が、消え失せる。奉仕を続けていた筈の女が、立ち上がる。そこに居るのは、胡散臭い笑みを浮かべた、いつも通りのギミーシェルター。

 

(あれ....この先、は....?)

 

「どうです?私の事を信じて頂けますか?」

 

「....」

 

そこでようやく、アスカロンは元々の目的を思い出す。

 

(ああ、そっか....最初は、信頼出来るかを試すために、こうしたんだった....)

 

足を舐め終わった事で、ギミーシェルターは自分が信頼に足りうる相手だと証明した。だとすれば、疼き続ける秘部を慰めて貰う、というのは....

 

(....私からの、ただのおねだり....)

 

堕天特区における私服は、かなり布面積が小さい。だが、それでも胸や秘部については大抵の場合、隠されている。アスカロンも、そうだ。しかし── 

 

「た、頼む。おねがい、だから....」

 

大事な部分を守る為の布が、己の意思によって外される。愛液で溢れた秘部が、曝け出される。

 

「....わ、わたしの"ここ"を、慰めてくれ....」

 

「....おやおや」

 

当初の目的を完全に放棄し、慰みを懇願する憐れなハンターの痴態を前に、ギミーシェルターはあくまでも平静を崩さない。

 

「勿論、あなたの思うがままに」

 

ただ、ゆっくりと。蜜に溢れた割れ目へ舌を宛てがった。

 

「ぁあっ....♡」

 

よほど敏感になっていたのだろう。それだけで、アスカロンの身体がビクリと震える。 

 

(さすがに....これはっ....♡)

 

あまりにも激しい身体の反応は、彼女の理性を引き戻す。

 

(....こんなの....受け入れたら....まず──)

 

「──んひぃっ"♡」

 

だが、蜜壺に迎え入れられた舌は、思考が行動に転ずるよりも早く周囲を蹂躙する。それだけでアスカロンの理性は蕩け、全身の力が弛緩してしまう。

 

「んぅっ....♡あッ"♡」

 

(....きもちいい....きもち....あぅ?)

 

されるがままになり、ふわふわと宙に浮く意識。至福の時間の中で、アスカロンは自分のものではない水音に気付く。

 

「んっ....ふぅ....」

 

艷やかな黒髪が揺れ、熱っぽい吐息が、秘部に掛かる。押し殺したような嬌声が、耳に残る。

 

(これって....)

 

「ぎみー....おまえっ....♡」

 

「....♡」

 

アスカロンの疑問を肯定するように、ギミーシェルターは妖艶な笑みを浮かべる。

 

(....私を見て....慰めてる....)

 

「〜っ"♡」

 

自分の身体が、使(・)わ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)。その意識が芽生えた瞬間、快楽がより明瞭にアスカロンの身を襲う。ギミーシェルターが攻勢を強めた訳ではない。ただ、情欲の対象となった悦びが、鼻持ちならない筈の存在を心の底から受け入れさせてしまう。

 

「ぅあっ....♡ぎみぃっ"....♡いっしょにっ....♡」

 

「っ....♡」

 

そこからは、あまりにも早かった。アスカロンを責め立てる水音が激しくなる度に、自慰の水音も激しさを増す。欲望の為だけの、隠しようもない"性交"の中で、与えられる快楽は際限なく高まり、そして....

 

「お"お"お"ッ♡♡」

 

「んぅっ♡」

 

二人は、簡単に絶頂へと導かれる。ギミーシェルターは全身を伝う快楽を押し留め、媚びるような上目遣いで行為の相手を見つめる。

 

「んっ....ふぅ....これで、ご満足頂けましたか?」

 

「あっ"....♡おっ"....♡」

 

しかし、アスカロンは返答しない。思考を蕩かされた彼女は、絶頂の余韻に打ちのめされ、ただ虚空を見つめていた。

 

「....これは聞こえていませんね。ふむ....」

 

体(・)液(・)内(・)の(・)媚(・)薬(・)成(・)分(・)を(・)調(・)整(・)す(・)べ(・)き(・)か(・)。そんな事を考えながら、辺りに散らばるダンボール箱の一つをアスカロンが座っているダンボール箱にくっつける。

 

「大丈夫、直ぐに正気に戻りますよ」

 

そうして自分も箱に座ると、危なっかしくふらついている"お隣さん"の頭を太腿に乗せ、優しく撫で始めた。

 

「....そうでないと、使(・)え(・)ませんので」

 

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