居間に移り腰を下ろし、母さんが用意してくれた麦茶を啜る。染み渡るほどよい冷たさに、変な緊張感で喉がカラカラになってたのに気付く。
あっという間に飲み干す俺に対し、テーブルの対面に座る母さんは、軽く舌を湿らす程度を口にしてからそっとコップを置き、チラリと俺を見やって、
「……先生が出かけられたら、私、優介くんにその場で押し倒されるんじゃないかって思っていました」
なんてことを悪戯っぽい笑みを浮かべて、しれっと言う。
危ない。もし麦茶飲んでる最中だったら噴き出してたところだよ。
で、その言葉に何か言い返そうと俺が口を開けるよりも早く、
「だけど、そうじゃなくって安心しました。優介くんに分別と自制心があるのはとても嬉しいです」
……優しい眼差しでそんなこと言われたら、何も言い返せやしないじゃないですか。
まぁ自制心とかじゃなく、何かしようにも動けなかっただけなんだけど、良い方に誤解してくれているのを都合よく受け取っておこう。
「……改めて、私たちのルールを決めましょう」
なにか言い返そうとして出来なかった俺へと、姿勢を正しながら真っ直ぐな視線を向けて母さんが言った。
その眼差しに射抜かれて、思わず俺も座りなおし、背筋をしゃんとさせる。
「優介くんもわかっていますが、週末まで午後先生は不在。……夏休み前に約束した『私を好きに出来る時間』が取れるようになりました」
一度そこで言葉を切ると麦茶を一口啜る。その素振りで余裕があるみたいに見えた母さんもやっぱり緊張しているのがうかがえて、自分だけじゃないことにホッと胸を撫で下ろす。
「ですけれど、夕飯の仕度とかがありますから、先生が帰られるまでの時間を目いっぱい、そういうことには使えません。買い物に出ないといけない場合とかもありますから、遅くても四時ごろまでで済ませて欲しいと思っていますけど……」
単純に父さんが帰ってくるまでは
なんて思い込んでいたけれど、そういやそうだ。主婦である母さんが家事をやる時間があるのは当たり前で、なんで丸ごと時間が使えるとか考えていたんだろう。
淫欲から下半身へ血が行き過ぎて、こんな簡単なことにも気がつかないほどに頭が回っていなかったのかと、ひたすら自らの浅はかさを感じる。
「……優介くん、聴いてます?」
己の間抜けさを思い知り、自分の世界に入っていた俺へと母さんの怪訝そうな声が掛かる。
「あ、うん、聞いてる聞いてる。色々とやれるのは四時くらいまでって事だよね?」
ハッと我に返り、慌てて返事をする。
そんな俺を『本当にわかって言っているのかな?』って感じに、じとーっと見詰めといて『ま、いいか』みたいな風に母さんが言葉を続ける。
「では、時間帯は先生が出かけられてから午後四時まででいいですね? ……禁止項目の方は覚えていますか、優介くん?」
真摯な態度は変わらないけれど、少しだけ頬を赤くしながらの問いに、
「えーっと、唇へのキスがダメ、それから本番行為がダメ、あと外での行為がダメだったよね?」
「節度を守るが抜けてますよ」
母さんは一瞬やれやれって顔をして、指を折りながら大前提のふたつと昨日言われたひとつを答えた俺に頷くと、
「……大雑把に決めたのはそれだけですけど、私にも遠慮して欲しいなって行為はありますので、それを守ってもらえると嬉しいんですが……? 勿論優介くんの望むことを優先したいと思っていますけど……」
うかがってくるように希望を伝えてくる。
俺としても自分の欲望はともかく、母さんが嫌がるようなことはしたくはないのでその願いに応えたいと思う。
……母さんが可愛くなる、恥ずかしい気持ちにさせたいと思っている事は口にしないし顔にも出さないが。
「俺も母さんが嫌な気持ちになるような真似したくはないからさ、いいよ。で、どんなのがダメになるのか教えてもらえる?」
「ええとですね……」
心の中で不埒なことを考えつつも、しれっと返した俺の言葉に母さんはホッとした表情を浮かべてから、なぜか身体を少しテーブルの上に乗り出して、潜めた声であれやらこれやらのNG行為を並べていった。
母さんが告げたいくつかのNG行為。それは俺が考えもしなかったものだったりで、この人が過去にどんな非道にあったのかをうかがい知れた。
「……一番気をつけて欲しいのが、身体に跡を残さないことです。夏だから薄着ですし、肌も晒しているところが多いですから、そういった痕跡が目に付き易くなります。……私と優介くんのしてることは人様に認められるような行いではないですから、知られるような真似は避けないと……」
先までのヒソヒソ声とは違うもっと重いトーンでNG行為の最後にそう言うと、母さんは視線をテーブルに落としたまま口を閉ざした。
禁忌。
どんなに当人たちが了承し合おうと、母と子とで擬似的な性的行為をするのは世間的に許されることじゃない。
母さんの言葉で、俺は自分がどんなに人の道から外れた真似しているのかを、改めて突きつけられた気がした。
血のつながりがなかろうと、俺とましろ母さんは親子であり、越えてはいけない一線は存在する。
覚悟を持ってそれを越えようとしていたつもりだったのに、実はそれがどれほど罪深いことなのかを本当のところで理解はしていなかったのだと思う。
自分の気持ちをぶちまけた夏休み前の、互いの気持ちを軽くするために口にした悪戯の延長。そんな気分のままで今に至ってる。
昨日プールや帰りのバスの中、停留所でした行為でさえ、やり過ぎのスキンシップ程度の考えだったのだと思う。
……さすがに公園トイレでの
母さんの抱えた覚悟の大きさや重たさは、わかっていなかった。
――あー、もう。俺ってホントに考え足らずだ。
俺は自分のバカさ加減に呆れてひとつ大きくため息をついてから、静かに腰を上げるとゆっくりと回り込み、いまだテーブルへと項垂れたままの母さんの後ろに座り、昨日プールの中でしたようにそっと背中から抱きしめて、
「……俺さ、俺のどうしようもないお願いに応えてくれる母さん大切にしたいって思ってる。だから母さんだけが苦しむような真似はしたくないししようとも思わない。それだけは絶対に約束する」
母さんの身体に回した両腕に柔らかく、でも力強く想いを込めながら、言葉を続ける。
「安心して、とは言えないけどさ、母さん守るためなら俺頑張るから。嫌なことダメなことは言ってよ、俺を甘えさせ過ぎなくったっていいからね?」
「……優介くん」
母さんのお腹のところで組まれた俺の手にそっと手を触れた母さんの小さな声が聞こえた。
「俺にされるばかりじゃなくて、母さんがされたいって思うことも言ってよ。そうしたらさ、もっと俺たち共犯関係っぽくなるし」
俯き加減な母さんの身体を起こすように俺に寄りかかせながら、俺に甘えてくれと願いを込めた言葉を伝える。
なるだけ明るく言ったのは、少しでも気持ちを軽くするため。罪の意識を分かち合おうって思いから。
「……だったら、このまま抱きしめててもらえますか?」
そんな俺の気持ちが伝わったのか、母さんがおねだりしてくれた。
「お安い御用♪」
嬉しいって思いを隠さない声で答える俺。ただ、体勢的にちょいと苦しかったので、身体が伸ばせるように後ろに倒れこんでから横向きになる。
横になってから、包み込む腕の中の母さんの身体が小さく震えているのに気がついた。
「……母さん?」
どうしたの? って気持ちで声をかけると、
「……言い出したのは私の方なのに、今になって怖くなっているなんて、おかしいですよね……」
らしくない自嘲気味な声が返ってくる。
「私は大人なんだから、自制は出来るだろうし快楽に流されたりはしないだろうって思っていました。優介くんがやり過ぎかけても何とか出来るだろうって。……なのに
平常時なら飛び上がるほどに驚き喜んだであろう唐突なカミングアウトの後、母さんの言葉が続く。
「私たちしていることが間違ったことなのはわかっています。それでも最後の過ちを犯さないように制する立場の私がこんな有様です」
揺らいでいる心情を、俺の腕の中でぶちまけるましろ母さん。
「だから、怖いんです……」
自分は大人なのだから、子供の俺が多少無茶してもコントロール出来るだろうと持ちかけた提案。
けれど、軽い実践でその考えが脆くも崩れた事に、母さんは不安を抱えていた。
仮に、俺たちが情欲の赴くまま流されて最後の一線を越えてしまうようなことになったら、この人はきっと家を出て行くだろう。
全ての責任は自分にあると、何もかもひとりで背負って俺や父さんの前から、ひっそりと姿を消してしまうだろう。
ホンワカとした外見とは反対に、思い込みが激しくて自責の傾向が強い、ましろ母さんはそういう人だ。
俺という相手がいなければ成り立たない事柄を、全部自分ひとりの罪にして解決を図り、それで治めてしまおうとするだろう。
それはさせちゃいけないし、そうなっちゃダメだ。
二度も母親を、家族を失うようなことは真っ平御免。
なら、俺のとるべき行動はひとつ。
「――嬉しいな」
腕の中の母さんを優しく抱きなおしながら俺は言う。
「え?」
「母さん、俺の手で気持ち良くなってくれたんだ。こんなに嬉しいことはないよ」
茶化すなと言わんばかりに身じろぐ母さんをぎゅっと抱きしめて、
「俺だけが気持ち良くなるより、母さんにもそうなって欲しかったから、俺は嬉しい。……大丈夫、母さんは絶対に俺がやり過ぎそうになったら止めるって」
告げた俺の言葉に、自分を抱きかかえるみたいに身体を小さくしながら、
「……優介くんはどうしてそんな風に言い切れるんですか? 当の私がこんなに揺らいでいるのに?」
いまだ自分を責めている声音で訊ねてくる母さんに、胸のうちで用意していたセリフを自信たっぷりに俺は口にする。
「母さんは絶対に俺を守るから。俺が道を間違えそうになったら絶対に元に戻そうとするよ。なんたって俺の自慢の母さんだからね」
清々しいまでの俺の宣言に、縮こまろうとしていた母さんの動きが止まり、それから、
「……なん、ですか、それ。全然理由になっていません、よ……?」
くぐもっているけど、さっきとは違う感情の乗った声で言葉が返る。
「理由なんかいらないって、だって俺母さん信じてるもの。それで充分」
勤めて明るく、根拠ない自信の溢れる言葉を想いに乗せて伝える。
「だから絶対大丈夫。母さんはさ、俺が信じてる母さんを信じてて」
しゃくりあげ肩を震わせていた母さんが、両の手で何度か目の辺りを拭った後、ひとつ大きく深呼吸して俺に言った。
「私、優介くんのお母さんになれて良かったって、今心からそう思います」
って、どこか誇らしげに。
俺もだよ。
俺も母さんの息子になれて良かったって思ってます。……照れくさいから口にはしないけどね。
気が付けば母さんの身体から震えはなくなっていた。
身内に情欲抱くような不出来な息子だけど、母親の抱えた不安を抑えられたのは上出来でしょうかね?
母さんの葛藤もとりあえずの答えを見出し、それからしばらく穏やかな時間が過ぎた。
俺に身をゆだねたままで安心の笑みを浮かべる母さんである。
……しかしながら、想いを寄せる相手にこれほどまでに密着し、尚且つ肌の温もりを感じ、ほのかに湧き上がってくる甘い体臭に鼻をくすぐられていたら、やりたい盛りの性少年としたら反応せざるを得ない訳で。
むくむくと積極的に自己主張してくる我が分身に抗えなくなった俺は、今までわざと退いていた腰から下を母さんに接触させる。
先ほどまでのハートウォーミングな母子のやり取りはどうした? と嘆かれる方々も居られましょう。
だが、あえて言わせてもらおう。それはそれ、これはこれであると。
期待に胸と股間を膨らませて待ち構えていた状況、多少の躓きがあろうと初期の目的は果たしたい。
つーか、昨日の経験が色々したいって気持ちに拍車をかけてるのよね。
ほら、それに母さんだって『流されてしまうかもしれないのが怖い』って言っただけで、俺とそういうことしないとか、口にはしていませんでしたからね。
屁理屈並べてるとか言いたきゃ言え。
したくなっちゃったんだよ、思春期の性衝動はちっとやそっとで押し止められるものじゃないんだってば。
てな訳で、膨張した分身の存在を伝えるように、わざと母さんのお尻へと押し付ける俺。
「!」
今まで脱力していた母さんの体がびくりと反応し、首をひねって俺へと視線を向けようとするのを俺の方から顔を寄せて、耳元辺りで囁く。
「ゴメン、いいカッコしてたけど、もう我慢の限界」
いくらかの申し訳なさを含ませた俺の言葉に、
「……少し前までとてもいい感じの話をしていたはずなんですけどね……」
ちょっと残念だって感じで母さんはこぼし、それから、
「……いいですよ、優介くんの思うようにしてください。ですけど、くれぐれも禁止事項は守ってくださいよ?」
どこか照れくさそうな声音でそう言って、再び力を抜いて俺に身体を預けてきてくれた。
さあっ、ここからが桃源郷!
……とは言うものの、例によって具体的に何しようとか思いついていない俺である。
うー、その場の勢いで動く癖、直した方がいいかもなぁ。
とりあえず、頭の中に禁止事項を並べつつ、今の体勢から導き出せる行為の内容を選択していく。
「胸、触るね」
そして導き出した結果をそっと告げ、母さんのお腹のところで交差させていた腕をあげ、そおっと両の胸を包み込むように手のひらに収める。
「……ん」
ふたつの膨らみが俺の手のひらに包まれると、ピクリと体を震わせ母さんが小さな吐息を漏らす。
村のオバちゃん連中や、ミツコさんと比べて小さいとこぼす母さんの胸だけど、それは比較対象が特別なだけ。
確かにあのレベルまで大きくはないけれど、けして小さくはなくて俺の手のひらでも余るほどの十分な質量を誇っていた。
夏らしい明るい色のノースリープのワンピースの上からゆっくりと双丘を揉みしだく。
服と下着を挟んでもそれは柔らかく、そして確かな張りを持っていた。
指に、手のひらに力を込めて、その女性ならではの感触を味わうようにゆっくりと揉む。
昨日この手に触れたお尻も素晴らしかったけれど、勝るとも劣らない感動的な手触りだ。
「あ、……ん、……ん」
唇に力を入れて声を抑えようとする母さんだったけど、それでもこぼれてくる声が耳から脳を刺激してくる。
指先から、手のひらから、そして耳から入力される性的情報に、俺の煩悩中枢がいたく刺激され、分身には血流が大量に流れ込み硬度をずんずんと増していく。
膨張したそれが母さんのお尻の谷間にはまり込み、そこから得られる感触にますます猛々しくなっていく。
俺の着ているルームウェアのハーフパンツと母さんのワンピのスカート部、そして下着を通してもその硬さと熱さが伝わるのか、
「……優介くんの、とても大きくなってます、ね」
お尻の狭間にある俺の分身を感じて母さんが感想を漏らす。その言葉にまた昂ぶる。
『誰のと比べて?』と、エロ漫画みたいな下卑た言葉が口から飛び出そうとするのを、ぐっと堪える。
昨日の告白で、母さんが複数の男たちにもてあそばれていた過去を知った。
母さんがされたこと思うと腹立たしさしか湧いてこなかった、けど否定は出来やしない。
だから、そういった諸々の感情は全部エロスに変換してぶつけることにする。
「……母さんが大きくしたんだよ」
言いながら股間のそれを強く押し付け、
「母さんの身体が気持ち良過ぎて、堪んなくなって、それで大きくなっちゃったんだよ」
本能に任せるまま腰を振りつつ、胸をさらに揉みしだき、言葉を続ける。
「あ、……あぁ、……ぅん」
母さんの押さえ切れない喘ぎがこぼれる。
「気持ちいい? 母さん、俺にされて気持ちいい?」
俺の意地悪い問いかけに、耳まで赤くした母さんは言葉では返さずに、首を小さく縦に振って答えてくれた。
「俺も、気持ちいいよ。母さんの身体、ずっとこうしてたい……」
とは言ったものの、布越しのもどかしさに堪えきれなくなり、更なる先を求め、
「ね、直接触っていい……?」
甘え上手なところを見せる俺である。
禁止事項でもないお願いに母さんが拒むことなどはなく、
「……背中のジッパー、下ろせば、脱がせ、ます……」
あえいで荒くなった呼吸の中、息絶え絶えに返事をしてくれる。
それに即答するように、俺は母さんの背から身体を離し、胸を揉んでいた両手をジッパーの開放のために使う。
急く気持ちがなかなか上手いこと指先を使わせてくれず、やっとこさジッパーを下げることに成功。
母さんの背中から隠されていた白い肌が開放された、まさにその瞬間。
ピンポーンと甲高い呼び出しの電子音が玄関で響き、
「こんにちはーっ、ましろさーんっ、居るよねーっ?」
間髪を入れず明るい調子の大きな声が聞こえてくる。
その声の主がお隣の若奥様・ミツコさんなのはすぐにわかった。