鼻歌交じりにシャワーをかけてくるましろ母さん。
どうにでもなれって感じで気持ちの落ち着いた俺は、その姿を何とはなしに見てしまう。
目に入ってくるのは、白い肌。
普段は衣類という鎧で田舎特有の強い紫外線から守られているその肌は抜けるように白く、陽に焼けて真っ黒な自分との違いが際立つ。
オバちゃんたちのたくましい外観を見過ぎてきたせいだろうか、肩とか腕とかの線の細さを感じ、やっぱり街から来た人なのだと、妙に納得する。
胸もそう大きくはないように見えた。けど、これも基準がオバちゃんたちだから小さく見えてるだけなのかもしれない。
ふたつのふくらみの頂点にある桜色の突起を見詰めまいと視線を下に向けてしまい、へその下から綺麗な三角を形作ってる茂みの間に、縦に走るうっすらと浮かぶ皮膚が引きつったような跡がある事に気がついた。
それと同じものを俺は知っていた。小学二年の時にやった盲腸の手術、その傷跡とそっくりだったから。
ちらちらと視線を動かしていた俺の目が一点を見詰めている事を察したらしいましろ母さんは、シャワーを一旦止め空いてる方の手で傷跡をそおっと触りながら、
「気に、なりますか?」
と、先程までのテンションと打って変わった声音で訊ねてくる。
その声音から、何か重たげなものを感じたけれど、避けたらいけない気がして無言で頷く俺。
「これは……とても大切なものをなくした私が、それでも生きていける希望を残した痕なんです」
淋しげな、でも優しい、そんな複雑な声色で腹の傷跡を撫でながらましろ母さんは言った。
「今までいっぱい辛い事とか悲しい事がありましたけど、
撫でていた腹から俺へと視線を向け、そう言いながら優しく微笑んだ。
その笑みは今までに何度か見た事があった。
「……
何も言えずにいる俺へと、先までの笑みはどこへやらって感じで恐る恐る尋ねてくるましろ母さん。
俺に嫌われたくないってのが明け透けで、それが逆になんだか可愛く見えて、俺もつい口元緩めて、
「関係ないよ。母さんは母さんだろ?」
その時浮かんだ素直な気持ちを伝える。
「んー、優介くんっ、大好きです!」
俺のその言葉がよほど嬉しかったのか、ましろ母さんはパァッと顔を輝かせて、そんな事を言いながら抱きついてきた。
いつもこんな風に抱きついてくる事があったけれど、それは大概服着ているときで、今は風呂場で互いに真っ裸。
ましろ母さんの身体の暖かさ柔らかさが直接素肌に伝わり刺激され、俺の幼いながらも男の体に変化を及ぼす。
「あっ」
「まぁ」
小さいながらも屹立する俺の分身。ポークビッツがウィンナーになった程度だけれど、大きくなった事には変わりはなく。
「……優介くんもオトコノコですねー」
抱きついていた身体を少し離し、マジマジと俺のものを見詰めながら、なにか嬉しそうに呟くましろ母さん。
母親の立場からすれば子供の成長は喜ばしい事なんでしょうけれど、それを間近に見られた息子としてはとてもいたたまれない訳でして。
「――もうあがるっ」
そう言って浴室から出て行くために、ましろ母さんの腕から逃れんとするが、
「えー、私まだ優介くんに流しっこしてもらっていませんよー、してくださいよー」
と、どこまで本音なのか良く判らない事を言いながらしがみつかれる。若い女の人とはいえ大人と子供、俺が抜け出す事は叶わなかった。
「髪の毛はいいですから、体だけ流してください。お願いしますね♪」
俺にシャワーノズルを手渡し、ニコニコしながら告げるましろ母さん。
有無を言わせぬ声音には、シャワーをかけ終わるまでは絶対逃がさないと言う、言外の圧力があった。
逃げられないならさっさと終わらせて上がってしまおう。そう決めた俺は乞われるままにシャワーを浴びせていく。
でも、やっぱり直視するのは躊躇われたので、なるだけ母さんの方を見ないようにしてシャワーを向けるのだが、やはりちゃんと身体にはかからなくて、
「優介くん、真面目にやってくださいね。全然かかっていませんよ?」
なんて、注意されてしまう始末である。
そっちがそれでいいのならと、半分自棄になりつつ、しっかり視線を向けてシャワーを浴びせていく。
風呂椅子に座るましろ母さんの背にお湯をかける。少し丸めた背中を打ったお湯が下へと流れていく。
線が細いと感じた肩や背中と違い、腰の辺りは思ったよりも大きくしっかりしていた。
肉付きが良いというのだろうか? サイズは違えど村のオバちゃんたちのそれと似ている気がした。
椅子の上で柔らかく形を変えているお尻。その谷あいに流れていくお湯、その谷間をもっとじっと見たいと思ってしまい、体を下へと傾けた。
ついでにシャワーの向きもずれた。
「――じゃ、今度は前の方、お願いしますね」
先程のシャワーのズレを合図にしたかのように、ましろ母さんはそう言うと、立ち上がって俺の方へと体を向ける。
前を隠すような仕草は一切取らない。
俺はましろ母さんより頭半分くらい低いので視線は自然と喉元から胸の辺りにいく事になり、それを見越したかのように母さんは両腕を後ろに組んで、胸を反らし気味でシャワーをねだる。
どうぞ御覧なさい、と。胸をじっくりと見ても良いとでも言うように。
分身の変化により、俺がましろ母さんの体、すなわち女体へと興味を持った事に対する幾らかからかいの気持ちもあっての行い、母さんからすればちょっとした茶目っ気のつもりだったのだろう。
そんな母さんの態度に俺もムキになり、見ろっていうならしっかりと見てやらぁっ、てな気持ちでシャワーと一緒に視線を向ける。
白い肌は温水により温まった事で仄かに色づき淡い桃色へ。
ふたつのふくらみも張りを増し、桜色の突起も形を変え主張を始めていた。
ガン見する俺と晒したままのましろ母さん。互いに言葉は無く、ただシャワーからお湯の出る音だけが浴室に響く。
「今度は、ここ。お願いします……」
たっぷりと胸元にお湯を浴びさせたあと、母さんは体の線に沿うように腕を滑らせ、あの傷跡を指し示す。
言われるままにシャワーを向ける俺。母さんは少し距離を縮めて、
「もっと近くで、見てくれませんか……?」
俺に乞い、ほとんど触れ合うまでの距離になると、
「触ってくれますか……?」
と、俺の空いている側の手を取る。
シャワーを浴びせながら、導かれるまま傷跡に触れる。
少しだけ盛り上がりのある傷跡から指先に伝わる感触は、お湯で抵抗が少なくなっているのにどこか引っかかる感じがした。
その脇の素肌のつるつるしたのとは明らかに違うその感触は異質ではあったけれど、不快ではなかった。
傷跡にそって指を滑らせると茂みの端に触れた。濡れた体毛の下の、より柔らかな感触にそのまま先まで指を進めたくもなったが、
「……オイタはダメですよ」
と、どこか上ずった声のましろ母さんに、やんわりと止められる。ハッとして顔を見上げると、母さんの顔はのぼせたように紅潮していた。
「次は……脚をお願いできますか?」
触れ合うほど近付いていた互いの間を少し空けるように下がると、風呂椅子に腰を下ろし、軽くヒザを立てた状態で両脚を開くましろ母さん。
この状況に俺ものぼせていて、誘われるようにふらふらと広げられた脚の間に割り入り、片方の足からシャワーを浴びせかける。
上から下へ、下から上へ。右脚から左脚、また左脚から右脚へと。その往復のさなか中央の茂みへとお湯がかかるのは、偶然を装った必然だった。
そこへお湯が当たる度、ましろ母さんから何かを堪えたような吐息がこぼれる。
濡れぼそった茂みの下からのぞく複雑な形をした秘裂。ヌメヌメとしたそこへ俺の目は釘付けになってた。
もっと近くで見たい。そんな思いからか前のめりになり、俺の持つシャワーヘッドが母さんの肌へと触れるほど近付いた時、
「も、もういいです。……ありがとう優介くん」
上気した顔のましろ母さんが両脚をそっと閉じ、頭をポンと叩いて俺を押しとどめた。
閉じられる脚で押し出される俺は、たぶんずいぶんと情けない顔をしていたのだろう。
例えるなら、お預けを食らった子犬が何かのような。
股間をギンギンに滾らせながら、すがるような眼差しで、じっとましろ母さんを見詰める俺。
絡み合った視線をついとそらした母さんは胸元で腕を重ね、どこか躊躇いつつ、それでも覚悟を決めたような声音で、
「……まだ、どこかシャワーしたいところ、ありますか?」
のぼせただけじゃない、明らかに興奮して赤くなった顔を向け、俺に問う。
その言葉に胸を高鳴らせる俺。
したいところにシャワー、つまり好きなところを見せてあげると言う事なのだと幼いながらも理解し、ましろ母さんの思わぬ申し出に心を躍らせた。
子犬のように尻尾があったなら、それをちぎれるくらいに振り回していた事だろう。
尻尾の代わりに痛いくらいの股間の漲りがそれを物語る。
見詰めあう俺と母さんの呼吸が荒い。言葉は無いけど互いにのどが何かを飲み込むように動く。
あれやこれやと考える俺。胸か脚、それとも茂みに隠された……。
少しの間考えた俺は浴室の中とは思えないカラカラに乾いた声で言った。
「……お尻、がいい」
背中を流したとき、肌に沿うお湯が消えていった先、その谷あいを俺は見たいと強く思った。
俺の言葉にましろ母さんは一瞬体を硬くし、それから少し目を伏せ一呼吸置いてからゆっくりと立ち上がると、背中を向け前かがみになり、浴室の壁へ両手をついて上半身を支え、躊躇いがちに脚を開きひざを少しだけ折り、無防備な下半身を俺の方へ突き出す。
「き、きれいにして、ください、ね」
先の俺と変わらないくらいの掠れた声で言う母さん。
おそらくは一番見られたくないであろう部分を人前へとさらけ出す行為だ、どんな思いで口にしたのだろうか?
羞恥、それともそれを越える期待? 声音から伺えたのはおそらくは後者――。
向けられた双丘に弾かれるように張り付き、躊躇せず谷間に向けてシャワーを当てる。
「あっ」
お湯がかかった瞬間、母さんが声を上げる。その声音に含まれた色は間違いなく快感だったろう。
だけど俺はそれに気付く事もなく、夢中になってお湯の当たるその先を見詰めていた。
のぼせた頭に浮かんだのは桃だった。
色合いといい形といい、それは桃といって差し支えなかった。
中央を走る切れ間の奥のすぼまり、それから俺は目を離せない。
薄紫色の菊の花。母さんの呼吸に合わせて震えるように動くそれが俺を捕らえる。
さらにその下の茂みに覆われた秘裂。そこがシャワーのお湯以外のものでしとどに濡れていた事など、子供の俺には判るはずもなく、得体の知れない軟体動物のようなそこよりも、可憐な菊の蕾に惹かれていた。
谷間へとシャワーを当てながら、そこに触れたい衝動に堪えきれず空いている側の指を伸ばす。
期待に震える指先が菊芯へと今にも触れようとしたその時、
「も、もう十分です。あ、あがりましょう、優介くん」
パッと体を返し、真っ赤な顔をしたまま、息を切らせながらましろ母さんが告げた。
秘密の時間は終わりなのだと。
俺からシャワーを奪うとお湯を止め、元の場所へと戻し、
「ちゃ、ちゃんと体を拭いて、着替えてきてくださいね。お、お昼ご飯は冷麦作ってますから」
そう告げ浴室を出ると、バスタオルを体に巻きつけ、バタバタと慌ただしく自室の方へと去って行った。
残された俺。
母さんが去った事から少しづつ落ち着きを取り戻し、今し方自分が仕出かした事の取り返しのつかなさへの後悔と、大人の世界を垣間見た興奮で硬さを保ったままの分身が大人しくなるまで、しばらく風呂場から出て行けなかった。
その日食べた冷麦は大人な味がした、気がする。
友人たちとの午後の遊びはキャンセルし、自分の部屋でタオルケットに包まって、浴室での出来事の反省と反芻を繰り返していた。
勿論の事だけれど、この出来事は俺も母さんも父さんには話していない。
ふたりの秘密だった。
この日を境に、ましろ母さんは俺に必要以上に構う事はなくなり、表面上は変わらない態度で接してくるけれども、以前のようにベタベタとはせず、気持ち的に微妙に距離を置くようになった。
俺の事を子供だけれど可愛がるだけの子供では無い事を認識したのだろう。
俺のプライバシーを尊重し、ある程度見なかった事にするスルースキルも会得したようだった。
俺も俺で、あの浴室での戯れはいけない行為だったのだと自戒し、母さんとは近付かず過ぎず離れ過ぎずの、本物の家族らしい距離感を取れるようになっていた。
とても危うい形ではあったけれど、あの一件が俺とましろ母さんに家族としてのあり方を判らせたのだと、――そう、思ってた。
浴室での密やかな出来事から半年ほどたったある夜、俺はとても悩ましい夢を見て、翌朝パンツを白い体液で汚す事になる。
俺に精通を迎えさせた淫らな夢に出てきたのが、あの日のましろ母さんのあられもない姿だった事は言うまでもないだろう。
問題なのはこの淫らな夢で、俺がましろ母さんに対して母親への肉親的な情よりも、ひとりの女の人に対する想いを抱いているのを自覚してしまった事。
家族だと、母親なのだと、納得していたはずなのに、これだ。
この気持ちが、女体の神秘に触れた事による情欲から生まれた一時的な感情から来るものなのか?
それとも、もしかして……?
自分でもよく判らないモヤモヤした気持ちを抱えたまま二年の月日が過ぎ、俺は小学校を卒業した。
次回へ続く。