※この作品はR-18です。

母と息子は結ばれる   作:シンカー・ワン

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八 プールにて

 翌日。

 朝の九時前に、父さんに「行って来ます」して家を出る俺とましろ母さん。

 ベースボールキャップを被り、ボーダーのドライTシャツにサマーブルゾン、綿パン、タオルとか諸々を積めたディバックというラフなスタイルの俺。

 母さんの方は涼しげな色合いのふんわりとしたブラウスに七部袖のサマーカーディガン、膝丈のジャージスカートの組み合わせ。肩からは少し大きめのトートバックを下げ、頭にはサマーハットを載せている。

 お出かけだからといって過度に着飾ったりしないのが母さんクオリティ。

 ちなみにふたりとも歩きの事を考えて足元は履き慣れたスニーカーだ。俺のは日頃酷使してクタクタだが、母さんのは手入れが行き届いてて綺麗なものである。むぅ、やはりオシャレは足元からなのか?

 

 一時間に二本しか来ないバスに乗り村から街へ。電車に乗り換えてふた駅向こうまで。そこの駅前から出ているシャトルバスに乗って、やっとこさ目的地に着いた頃には既に十一時を回っていた。

 乗り物での移動中、母さんは、

「いきなり明日とか、女にはそれなりの準備ってものがあるんですから、困るんですよね、そういうのって……」

 とか、珍しく小言を並べて俺を責めたてていた。

 でも聞かされていた俺は涼しい顔。

 ふふん、なに言われようと、家から出てしまえば全て後の祭りさ。

 目的地に着いたというのに未だブツブツと愚痴をこぼす母さんを連れ立ち、尾崎(おざき)センセープレゼンツの優待券で入場門をくぐる。

 泳ぐより先に飲食エリアに赴いて軽く食事を取って休息したのち、俺は直接男子用の更衣室へ、母さんは貸し出しコーナーに立ち寄ってから女性用のそちらへ。

 パパッと着替えた俺の格好はというと、からし色のハーフパンツスタイルの水着。その下には学校で使ってる紺の競泳用パンツを穿いていた。

 競泳パンツの着用は万が一上のが脱げたりした時用なのと、我がままな分身が自己主張をした際に押さえつけて目立たなくするためでもある。

 勃つのを押さえるのにはアンダーサポーターでもいいんだけど、腰のゴムで押さえているだけという、ホールド感がいまいち心許無いハーフパンツがするっといってしまった時の事まで考えたら、こっちの方が安心なのだ。

 水着の重ね穿きってのもどうかとは思うけど、用心に越した事はない。

 更に一応、昨夜はグラビアタレントの水着姿に母さんの顔を脳内コラージュして二回ほど抜き、朝も朝勃ち利用して一発抜いといて、そう簡単には勃たないように手は打ってきた。

 まさに万全を期す、だね。

 何枚かの硬貨と更衣室のロッカーの鍵を水着のマジックテープのふた付きポケットに収め、前もって決めてあった待ち合わせ場所である入場口側へ。

 

 母さんを待ちながら、目の前に広がる水遊びの場を眺める。

 メインとも言うべき楕円形の流れるプールに、定番な波打つプール。小さい子にも安心な低水深のファミリープールとそれに対比するかのような深い飛び込み用。思い切り泳ぎたい人向け、にしては中途半端な二十五メートル六レーンの競泳用プール。そして、これがなくてはもはやプールではないと言われるウォータースライダー。

 平日とはいえ夏休み、しかもこの地域では唯一の大型遊泳娯楽施設、一部を除いてどれも人、人、人でいっぱいだ。プールの中はまさに芋を洗う状態。

 目で追ってしまうのは、やっぱり水辺に色を添える女性たちの水着姿。

 こんな田舎なのに、水着として役に立つとは思えないような派手で布地の少ない際どいのがここにもそこにもあちらにも。いやぁ眼福眼福。来て良かったー。

 そんな艶やかな水着女性たちを鼻の下延ばしながら観察していたら、声が掛かった。

「優介(ゆうすけ)くん、待ちました?」

 待ち人来たる、だ。

「んにゃ、待ってないよー」

 とか言って、延びた鼻の下を戻しつつ振り返って声の主を見る。

 

 目に飛び込んできたのは、赤、青、橙色とかの原色が鮮やかな南国の花たち。光沢ある白のベースに散りばめられた大きな花柄のプリントが、まぁ映える事映える事。

 お腹の傷跡の事もあるから予想はしていたけど、ましろ母さんが着ていたのはそんな花柄があしらわれたワンピースの水着。

 デザインはかなり大人し目で、胸元が大胆にカットされているとか、昔のキャンペーンガールが着ていたような腰骨上まで切れ上がっている極端なハイレグとか、お尻が見えそうになるくらい背中が大きく開けられているとか、そんな事は全然なかったぜ。

 ヤングミセスとか呼ばれる層が、好んで着たがるような定番で無難な水着そのもので、母さんらしいチョイスだと言えたから、それほどがっかりとかしなかった。……うん、しなかったよと言っておこう。

 ちょっぴり、ホントちょっぴりだけ、意表をついて大胆なのを選んだりするんじゃないかなーとか期待したのは、事実ですけれども。

 悲しいけど、期待は裏切られるためにあるのよね。これ、教訓。

「水着着るのなんて、中学の授業の時以来ですから、何か気恥ずかしいです」

 居心地悪そうに首から提げたロッカーの鍵やら小銭入れやらの入った防水ケースを弄りながら、身体をモジモジさせながら母さんが言う。

 中学生、今の俺と同年代の母さん、か。……勿論スク水だよなー、くぅ、是非とも拝みたかったぜ。

「そんな事ないって。いい感じ、似合ってます」

 スク水姿の母さんを妄想しつつも安心させる意もあって、笑顔でそんな事を言ってみる。勿論溢れ出そうとしている下心は隠したままで。

「……ですか?」

 疑い深く上目使いで母さん。俺は含むところなんてありませんよな笑みで大きく頷いて答える。

「……私の水着姿を見たがってた優介くんの言い分じゃ、いまひとつ納得し切れませんけど」

 うっ、悟られてしまっていたか。

 まぁ、昨日あれだけこ(・)こ(・)に来るように仕向けてればわかっちゃうよな。……さすがにスク水姿を想像している方までは察していないでしょうけど。

 指摘されたこともあり、疑惑のまなざしを俺に向けている母さんの水着姿を改めて見返す。

 ……うん。今までなんとなく感じてたことだけど、身体のラインがはっきりする格好になるとハッキリとわかるな。

「母さんてさ、お尻大きいよね」

 思ったことをそのまま口にしたら、

「――優介くん、女性の身体的な特徴をあからさまに言うのは、あまり褒められた事ではないですよ?」

 ものすごい圧のある笑顔で言い返された。

 ……やばい。トラの尾を踏んでしまったか。

「――だから嫌だったんですよ、プールとか。……水着とか、身体の線がモロわかりになっちゃうじゃないですか。せめてもっと前に言ってくれてれば絞れて手入れだってできたのに……」

 圧のある眼差しで俺をひとにらみした後、母さんはブツブツと恨み言のような言葉を発していた。

 ……お尻大きいのって、そんなに嫌かなぁ? むしろどっしりしてて "いかにもお母さん" って感じて、俺はいいと思うんだけどなぁ……。

 ま、こればっかりは人によるか。

「あー、もうだったらさ」

 このままここで不毛に時間を消費するのも嫌だなって思った俺は、今だブツブツと何やらつぶやいている母さんの手をさっと取り、

「さっさとプールに入ろうよ。水ん中入れば人目もそんなに気にならなくなるっしょ?」

 てな事言って、プールサイドをずんずんと進み始める。

 最初は流れるプールかな? そう考えつつ、手を曳かれたままなんか抗議してる母さんの声を聞こえない振りして、人を避けながらごった返す流れるプールへ。

 目的の場所についた俺は手を放し、流れに任せて漂っている人や、その場に留まって水と戯れている人なんかにぶつからないよう、気をつけながらプールサイドからするりと水の中へ入り、まだプールの外にいる母さんに呼びかける。

「気持ちいいよ、入ろうよ?」

 それでも躊躇している母さんに、

「……そうやって只突っ立ってる方が目立つよ。それとも見られてる方がいい?」

 ちょっと意地悪く言ってやる。実際これだけ人が多いと、よほど他と違う、それこそストリングス水着とかでも着てなけりゃ、人目を惹くなんて事はないんだけどね。

 残念ながら母さんの水着は、ありきたりすぎてとても人目を集めてしまうようなものなんかじゃない、まぁ俺は別ですけども。

 それでも、周りから見られている気がしてしまうのは、着慣れていない所為なんだろう。

「うー、わかりました」

 少しだけ恨めしそうに口を尖らせてから、ようやく観念した母さんはプールの縁に一度座り、ゆっくりと脚から水の中へ入ってくる。

 まだちょっとだけ非難がましい目を向けている母さんに、悪びれる事無くニカッと笑って俺は言ってやる。

「じゃ、楽しみましょうか?」

 

 

 ましろ母さんが全力で拒否した飛び込み台を除き全てのプールを巡り、売店エリアで一服したのち、再び流れるプールでのんびりと水と戯れる。

 流れに任せてプカプカするのもいいけれど、あーゆーのはやっぱり浮き輪とかで浮力増してやるものだと思うし、だいいち人が多過ぎてなかなか流れていかなかったりするのだ。

 で、俺と母さんはあまり人の動きの邪魔にならない、円周の内側でふたり並んでプール縁に体を預け、流れていく水を心地よく受けていた。

 ここに着いた当初はご機嫌斜めだった母さんも、プールを巡り水に戯れた今では結構良い気分の様子。

 楽しげな母さんを横目で眺めているうちに、ここまで巡った各プールでの出来事が思い返され、俺の中で沸々と善からぬ心が湧き上がり出す。

 回流プールや波のプールで人に押され波に乗せられ何度か抱き合う形になったのとか、ウォータースライダーから滑り降りたあと、食い込んだ水着とそれを直す仕草にグッときたのとか、ファミリープールで小さい子にじゃれつかれて困った顔して嬉しそうだったのとか、飛び込み台でダメダメダメと嫌がってた姿とか、まぁその他色々ありました。

 軽い接触や水着姿を拝むだけで満足するなんて勿体無くないだろうか?

 ここには父さんは居ない、ふたりだけの時という条件は満たされている。

 ……周りに人がうじゃうじゃいるが、それは敢えて無視だ無視。

 考えるや否や、俺は即行動に出ていた。即断即決即実行っ、それが出来る男の条件!

 

「ひゃっ」

 母さんが小さく声を上げ、それから左側に立つ俺をジト目で睨む。素知らぬ顔をしていると、

「……こんなところで……」

 頬を染め睨んだまま、周りを気にしてか小声で非難の言葉を投げてくる。

「人が多過ぎるから、誰も気になんかとめてないよ」

 木の葉隠すなら森の中理論を展開させ、なんでもないって顔をして同じように小声で返しながら、俺は母さんの尻に這わせた手のひらを静かに動かす。

「……でも……ダメですよ」

  眉根を寄せて言いながら俺の手から逃れようとするが、そうはさせじと俺は母さんの体を引き寄せ、後ろから抱きかかえるような体勢に持っていった。

「え? ちょっと優介くん……」

「……大丈夫。誰も俺たちが親子だなんて気付いてないよ、せいぜい歳の離れたカップルがいちゃついてるくらいにしか見ちゃいないって」

 恋人同士(カップル)、か。自分で言ったこの言葉に胸が一瞬高鳴る。

 たとえ仮初めだとしても、"親子" ではなくそんな関係に見られたいと願っている事に。

 離れようとする母さんをしっかりと抱え込み、安心させるために耳元でそう囁いたが、実のところ、この地域一帯から人が集まってくる場所だ、知り合いなんかがいてもおかしくないので、ちっとも安心とは言えないんだよな。

「だから、大人しくしてて」

 でも、そういうのは全部知らない振り。がっついていると言われても今のこの機会を逃したくなかった。

 周りを見渡せば、俺たちと同じような格好してイチャコラしているカップルが何組もいる。

 すごいのになると、人目も気にせず水着の中に手を差し込んであれこれしてるのもいたりして、お前ら場所を弁えなさいよと言いたくなったりするが、今自分がやろうとしている事を顧みて何も口にせずそっと心にしまう。

 ……分は弁えています、ええ。

 母さんもそんなカップルたちの存在に気を緩めたのか諦めたのか、抵抗するのを止めて身体から力を抜いてくれた。

「……あんまり変な事はしないで下さいよ?」

 衆人環視下での露出プレイすれすれな大胆カップルを意識してか、耳まで赤くしながら訴える母さんに、

「あの人たちほどの度胸はないです」

 と、正直に応える俺。

 そもそも、周りにいる赤の他人たちに母さんの乱れる姿を晒す気なんか、サラッサラ無い。

 ましろ母さんのそういう姿を拝んでいいのは、この夏だけ好きにしていいと言われた俺と、配偶者である父さんだけだい。

 カップルを装うといっても公共の場、大胆な方々のような過激な真似は出来っこない。せいぜいベタベタと触る程度が限界だろう。

 だけど俺にとっちゃ初めてする母さんへ向けての積極的な直接おさわり行為である。テンションだけは最初からクライマックスだ。

 

 背中から抱きかかえていたましろ母さんの向きを変え、お互いが向かい合ってような態勢を取って、母さんをプールの壁面側に回し俺の身体に隠れるようにする。

 抱きしめるように母さんの背中へと回した腕を、すっとお尻に這わせていく。

 水着の生地は思ったよりも厚手でツルツルとしていた。独特の感触とともに母さんのお尻の丸みを撫でる。

「……っ」

 堪能するかのように時折揉みしだき、しばらく双丘の丸みを味わってから指をそろえて這わせはじめる。

 山から谷へと指を進め、谷を前へ前へと指の腹でゆっくりと撫であげていく。

 後ろの谷と前の谷の境目で指を止め、その辺りで細かに震わせたり、弱く押し込んだりを繰り返す。

 二重になっている股座の生地越しでも、母さんの秘部の柔らかさが伝わってくる。

「……んっ」

 荒くなる息を殺し、声を出す事を耐えている母さんの様子と、指先に伝わる感触に分身へと血流が集まっていくのがわかる。

 がっちりと押さえてくれている競泳パンツに、備えあれば憂い無しって言葉が浮かぶ。

 感じてくれている事に調子に乗り、水着の縁から指を侵入させ、生肌に直接触れる。母さんの身体がびくりとしたけど構わずに指を這わせ水着の中へさらに中へ。

 もう少しでいけない場所に指が届くと鼻息荒くしていたら、母さんの両手がいつの間にか俺の脇腹へと添えられていた。

「――!」

 直後、焼け火箸を当てられたような痛みが走り、思わず母さんの拘束を解いてしまう。

 その隙に赤い顔したまま俺から離れる母さん。

「ひどいよ母さん……」

 脇腹の柔らかいところを力いっぱい抓りあげられた俺が涙目でそう言うと、

「ひ、ひどいのはどっちですか? ば、場所を考えてくださいって言ったのにっ」

 羞恥と怒りで真っ赤になりながら、それでも回りへの配慮から小声でお叱りの言葉を飛ばす母さんである。

 確かに。こういう事がやっと出来たからって、ちょっと調子に乗り過ぎた感じはあったし、気持ちが入りすぎて場所が場所だってのを忘れかけていた。

「……ごめんなさい」

 だので頭を下げ、素直に自分の非を認める。脇腹の痛みが母さんの受けてた恥ずかしさと俺の罪を思い知らせてた。

 俺の反省してる態度を見て、体からふうっと怒りを抜いた母さんがそっと近寄って言う。

「わかってくれればいいんです。――今まで何も出来なかったから、ついやり過ぎてしまうのはわかります。けど、初めに言ったように節度は守ってください、特にここは公共の場なんですから」

 小声でそう嗜めたあと、俺の腕を取り、

「そろそろ切りのいい時間になりますし、帰りましょうか?」

 俺の愛撫で垣間見せた "女" の貌(かお)ではなく、いつもの母親の顔で告げた。

 

 そして俺たちはウォーターパークを後にした。

 ……俺がなかなかプールから出なかったのが昂ぶってた股間が収まるまでの時間稼ぎだったのと、帰る前にトイレの個室で悶々してた気持ちを物理的に処理した事はましろ母さんには内緒である。

 

 




次回へ続く。
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