スーパー・プロデューサーとアリアーヌも登場しています。
昔から物事に熱中し始めると視野が極端に狭くなる自覚はあった。
だが、その悪癖もここまで酷かったかと俺は空を仰がずにはいられなかった。
思い返しても、特筆することもない馴染みのカードショップからの帰りだった……はずだ。
強いて挙げるのであれば、そもそもカドショに出向いた目的がようやく組めたM∀LICEデッキを顔馴染みとのフリー対戦でお披露目することだったくらいだろうか。
もちろん事前に動かし方などを念入りに予習していたつもりだったが、やはり一人回しと実戦は似て非なるそれだ。
理解の浅さからプレミをしてしまい、最終的には見事なまでの逆転負けを喫してしまった。
敗因自体は感想戦ですでに振り返っていたが、悔しさがそれで拭いきれるというわけでもない。
だからこそ帰り道でもあらためて決闘を脳内で検証していたのだが、それがひと段落して顔を上げてみればまったく見覚えのない建物の前に立っていたという次第だった。
そびえ立つ謎の建物を見上げてみるが、高さが数階くらいだろうということ以外は外観から特徴を見出せない。
配信でたまに見かけるビルドするゲームで俺が建築をしてみたらこんな感じになるかもしれない。
それくらい素人目には特徴らしい特徴が見出せない、どこか不思議な建物だった。
ほかに手がかりが何かないだろうかと辺りを見回し、すぐ近くにRPGでよく見かけるような木製の立て札が立てられていることに気がつく。
その表面には真っ白な紙が貼られており、以下のように書かれていた。
ここはあなたの願いが叶うかもしれない泡沫の楽園
抱きし思いを叶えたくば、どうぞこの先へ
我々一同はあなた様を心より歓迎いたします
念のため読み返すが、特に何かが変わったりということもない。
謎めいた文章の意味するところが気になって、看板を凝視することしばらく。
もしかしたら――、という妄想にも似た可能性が脳裏を不意に駆け巡った。
だが、あれはあくまで創作の話。
常識的に考えてあり得ないと理性が主張するが、だからどうしたという話だ。
たとえこれが都合のいい夢だとしても、そのもしかしたらが叶うのであれば。
迷う余地なんてあるはずがなかった。
速まる心臓の鼓動を落ち着かせるように大きく深呼吸し、俺はその一歩を力強く踏み出した。
*
「あぁ、あぁ……お待ちしておりました、マスター!
えぇ、貴方様の踏み出した一歩は間違いなく勇気に基づくそれ。私たちはその勇気に対して最大限の敬意を表し、心から称えますとも!
そして、声高々と宣言いたしましょう!
ようこそ、泡沫の楽園に!!」
扉を開けたその先、どことなく薄暗い建物の中で待ち構えていたのは紫を基調としたスーツを着た細身の男だった。
恭しく頭を下げていた男はゆっくりと身体を起こすと、ニィと親しみやすくもどこか胡散臭い笑みを浮かべる。
病的にも見える色合いの肌と先端が尖った耳、独特な形状に固められた髪と顔の半分を覆い隠している髑髏の仮面。
ピンと伸びた背からは一対の翼が生え、臀部の辺りから見える鮮やかな色の表皮をした二頭の蛇が威嚇するようにシャーッと空気を震わせた。
俺が呆然と立ち尽くしていると、男はニヤニヤと笑いながらまるでスポットライトを浴びる演者のように仰々しい仕草で両手を挙げた。
「どうやら私のことはご存知のようですね、マスター。
えぇ、そうです。そうですとも!
私の名前はスーパー・プロデューサー。
この泡沫の楽園では受付を担当し、マスターたちを夢のひと時に案内する仕事をしております」
魔界劇団―スーパー・プロデューサー。
そのテーマを組んだことはなかったが、彼を目にする機会は最近あったので何となく覚えていた。
「おや? おやおやぁ? どうされましたか、マスター。
勇気を振り絞って一歩を踏み出されたのであれば、この地がどのような場所であるのかは凡そ想像できているはず。
それともミステリーの解決篇よろしく答え合わせをご所望でしょうか?」
スーパー・プロデューサーはまる喝采に応えるようにオーバーな動きで歩み寄りながら俺の顔を覗き込む。
整った顔立ちに人間のそれとは思えない青さの肌、そしてキランと光輝く真っ白な歯並びのいい歯。
文字通りカードから抜け出たとしか思えないくらいにイラストの彼に酷似している。
仮に背恰好のよく似た人にメイクを施したとしても、こんなにも忠実に再現することはできないだろう。
その一方で、間近で相対しているから感じる空気感と実在感はソリッドビジョンでは到底説明がつかないリアリティだった。
つまり、これは――
「――えぇ、その通り!
これは夢でも幻でもなく、紛れもなく現実!
そして、ここはマスターたちが愛する者と共にひと時を過ごすための園!
有り得ないと思いながらもその奇跡の成就を願って止まない者にしか辿り着けない地なのです。
ですから貴方様にもいらっしゃるはずですよねぇ、会いたいと願う愛しき存在が」
――いる。
その存在を初めて見たときに一目惚れし、どれほど費やすことになろうともデッキを組もうと決心したきっかけの子が。
そんな彼女と、言葉を交わしてひと時を共に過ごすことができる?
「えぇ、もちろん。もちろんですとも、マスター!
貴方様が愛するカードに宿る精霊を私たちのように顕現させ、ひと時を共に過ごしていただくのがこの楽園なのですから。
さぁ、マスター!
願うのであれば、貴方様のデッキをどうぞこちらに」
どこから持って来たのか、スーパー・プロデューサーの尾である蛇が噛んでいるトレイをちょうどいい高さまで持ち上げる。
俺は迷うことなくケースから組んだばかりのM∀LICEデッキを取り出し、構えられているトレイの上にそっと乗せた。
スーパー・プロデューサーはそれを見届けると青っぽい唇の端を微かに上げて微笑む。
「お預かりしました、マスター。
しかしながら顕現するまでにはしばらく時間がかかります故、どうぞ奥の部屋でお待ちくださいませ」
彼が半身を引きながら示したその先はカーテンで遮られており、陽気な音楽が僅かに空いた隙間から漏れ聴こえていた。
*
極度に緊張したときに口から心臓が飛び出そうなんて言うことがあるが、俺はいままでそれはさすがに大袈裟ではないかと思っていた。
しかし、それくらい緊張する経験をしたことがなかっただけなのだと理解させられていた。
通された部屋はどことなく薄暗く、それなりに広い室内には柔らかそうなソファが幾つも規則的に配置されていた。
天井部分にはプロジェクターと思しき機械が取り付けられており、壁に直接映す形でコミカルなアニメが流されている。
俺はソファの一つに腰を沈めながら流されてるアニメを眺めているはずなのだが、どこか地に足がついていないような心地だった。
そのうえでそろそろ爆発するんじゃないかっていうくらいに鼓動が速いし、足の震えもずっと止まらない。
ほかに誰もいないからいいものの、誰かいたりしたらあまりの鬱陶しさに文句を言われていたかもしれない。
そんな俺の視線の先で流されているアニメではトゥーン・ハーピィ・レディが相対したトゥーン・マーメイドに向かって爪を勢いよく振り下ろしていた。
だが彼女の一撃はトゥーン・マーメイドの貝殻によってコミカルに受け止められ、その内側にいるマーメイドが反撃と言わんばかりに矢を連射する。
『トゥーン・マーメイド・アロー!!』
トゥーン・ハーピィ・レディは放たれた矢の雨を華麗に躱すと、トゥーン・マーメイドを挑発するようにくすくすと笑って見せた。
その背後ではトゥーン・リボルバー・ドラゴンが煽るように乱射してケタケタと笑っていて、もう訳が分からない。
どうやらトゥーン・キングダムを舞台にした作品のようなので、抱く感想としては真っ当なのかもしれないが。
そのままトゥーンモンスターたちの共演を眺めていると、突然俺の視界を遮るように小柄な人影が背後からバッと現れた。
「お客様、お客様っ! そろそろ顕現が果たされそうだってアリアが、アリアがお知らせするよっ!! あははっ!!」
ほっそりとした足を包むピンクと黒のタイツが眩しい少女は楽しそうに笑いながらその場でクルクルと回る。
服装が違うのでもしかして別人かと一瞬思ったが、小刻みに揺れるタイツと同じ色合いの尻尾を目にして確信する。
彼女は白銀の城で姫に仕えている召使い、アリアーヌ。
スーパー・プロデューサーがいたのだから彼女がいても不思議ではないが、何故メイド服ではなくバニーなのだろうか。
クルクルと回る度に胸元の小ぶりなおっぱいがたぷたぷと揺れて、その、目のやり場に困るのだが。
そんな俺の困惑が伝わったのか、アリアーヌはピタッと止まってこちらに向き直った。
「これもお仕事だけど、いまのアリアは召使いじゃないから何を着てもオーケーなの! 今日は兎さんの気分だったから、これ! ぴょんぴょん、ぴょんぴょん!♡
まぁ、アリアは姫様みたいにばるんばるんのゆさんゆさんじゃないけどね! あははっ!」
確かに彼女の主であるラビュリンスは……その、とんでもなく大きい。
目の前で拝んでみたいという好奇心がまったくないと言えばそれはさすがに嘘になってしまうが、いま会いたいと願っているのは彼女ではない。
そしてアリアーヌによれば、そろそろ対面が叶うのだという。
いよいよマジで口から心臓が飛び出るかもしれないと思っていると、目の前に立っていたアリアーヌが素早く席の後ろにぴょんと回り込んで俺の両肩を撫でるように叩いてくれた。
「リラックス、リラックス~♪ リラックスだよぉ、おにーさん♪ あれかな、アリア特製緊張しなくなるお茶を飲む? 中姉様からはお出ししちゃダメって言われるけど、おにーさんになら特別に出しちゃうよ~?」
背筋がゾクッと震えるのを感じ、俺は弾かれたようにソファから立ち上がる。
カードを通して知ってるに過ぎないが、彼女の姉が他人に出すのを禁じるような飲み物を飲んで無事で済むとは到底思えなかったのだ。
アリアーヌはあまりにも俊敏に動いた俺を見て驚いたように目を瞬かせていたが、すぐに愉快そうに声を上げて笑い始めた。
「あははっ! 何だか大丈夫そーだねっ、おにーさん。それじゃあ、出口はあっち! 廊下をちょっと進んだ先にある部屋でその子は待ってるから、頑張ってね~♡」
俺はアリアーヌに礼を伝えると示された出口から部屋を出て、薄暗い廊下をゆっくりと進む。
相変わらず緊張はしていたがそれでも少し落ち着いたような気がするのは間違いなく彼女のおかげだろう。
そして案内通りに廊下の奥にある扉の前に辿り着き、俺は立ち止まって大きく深呼吸した。
出来れば平静さを取り戻すまで深呼吸を繰り返したかったが、それではこの場から永遠に動けないだろう。
覚悟を決め、彼女が待っているという部屋の扉をゆっくりと開ける。
「……んぅ。ますたぁ、おはよぉ」
まるで月の光を思わせる淡く明るい照明の下、彼女はその場に確かに存在していた。
片手にトレードマークとも言えるダイヤ柄の大きな枕を抱え、先端が黄色く染まった白髪の奥に見える瞳はどことなく眠そうだ。
そしてスラッとした身体を黒を基調とした衣装に包み、大胆なシースルーのスカートをばっちりと着こなしているネズミ耳の彼女。
M∀LICE<P>Dormouse――マリスポーンドーマウス。
俺がそのカードを初めて見たときに一目惚れし、ひと時を共に過ごしたいと願った少女だった。
ドーマウスはてくてくと歩み寄ってくると、こてんと首を傾げる。
仄かに漂ってくる紅茶を思わせる香しい匂いとスーパー・プロデューサーやアリアーヌを見たときに感じた実在感が、ドーマウスがいまこの瞬間目の前にいるのだとあらためて確信させる。
いい角度のハイレグを拝めて眼福などと言っていられる余裕なんて微塵もなかった。
「どぉしたの、ますたぁ?」
ドーマウスからどこか舌足らずな調子で問いかけられ、慌てて我に返る。
俺が何でもないよと答えると、ドーマウスは眠そうに微笑んで空いていた右手を伸ばして俺の左手をぎゅっと握ってくれる。
お互いの指と指を絡め合うそれに緊張の度合いがまた一段と高まるが、彼女はそれには気づいていないようだ。
「それじゃあ……、お部屋に行こ?」
夢のような申し出を断るはずもなく、俺はまるで人形のように首をブンブンと何度も上下に振って頷いた。
*
煽情的な色合いの照明に照らされたその部屋の室内は、一言で言えば寝室と浴室が合体したような奇妙な造りをしていた。
宙には黒と金の色合いをしたティーポットと幾つものティーカップがふよふよと浮いているが、これらはおそらくドーマウスの私物だろう。
彼女と手をつないだままベッドに腰かけてしばらく、俺は困り果てて宙に浮かぶティーポットとカップを眺め続けていたのだが、隣に座る彼女からの反応がしばらくないことに気がつく。
気になって恐る恐る様子を見てみれば、ドーマウスは手にしていた枕にほっそりとした身体を預けるようにして眠りに落ちていた。
ある意味でイメージ通りだと納得していると、彼女はまるで電源が入ったかのようにパッと瞼を開けた。
「……んぅ、んっ。寝てない。これはますたぁをリラックスさせるための演技。だから、マウスは寝てない。おーけー?」
苦笑を浮かべながら俺が頷いていると、ドーマウスが身体をもたれさせるにしてグイっと顔を近づけてくる。
まつ毛の数を数えられそうなくらいの至近距離、寝起き特有の気怠さを帯びた彼女は泣きたくなりそうなくらいに色っぽかった。
「ね、ますたぁ。マウスのことをいつも大切にしてくれてありがとぉ。今日はそのお礼をする番。上手にできないかもしれないけどがんばる、ね?」
どこか淡々とした調子ながらも確かな熱が感じられる言葉と共に、唇に柔らかな感触が軽く触れ合う。
ただただ唇同士が触れ合っただけなのに熱が全身を駆け巡り、心地いい痺れが思考に薄っすらと靄をかけさせる。
ドーマウスをもっと感じたくて、離れたばかりの彼女の顔に近づいて突き出されている小さくて柔らかい唇を啄む。
「ます、たぁ♥ ちゅっ、ちゅぷ♥ んっ、ちゅ……ちゅっ♥」
軽やかな音と共に唇同士の触れ合いが繰り返されるほどに、彼女のことがもっともっと欲しくなって。
ちょっとずつ溢れ出る唾液で口の周りが汚れるのも気にせず、求めるまま求められるまま口づけを重ね続ける。
しばらく経って、ドーマウスがゆっくりと顔を離す。
くたぁと脱力した彼女は俺に華奢な身体を預けながら熱っぽい息を短く吐いた。
「はぁ……はふぅ♥ ますたぁ、すきぃ♥ だいすきぃ♥」
囁かれる愛の言葉にただでさえ鼓動が速い心臓が更に強く高鳴り、昂りが猛烈に膨れあがる。
それは下半身に瞬く間に集まり、ズボンの生地を思い切り押し上げるという形で表れた。
そんな光景をマジマジと見ていたドーマウスがゆっくりと顔を上げる。
まるで人形のように整った造りの顔は微かに上気していて、目を逸らすことができないくらいに煽情的だった。
「ますたぁ、マウスのこと……欲しい?」
そんなの当然、欲しいに決まってる。
俺の即答を聞いて彼女は嬉しそうに口元を微かに緩めた。
「じゃあ、その前に……汗を流して身体を綺麗にしよ。マウスが服を脱がしてあげるから。ますたぁ、ばんざーい」
言われるがまま両手を掲げるとドーマウスが器用にシャツを脱がせてくれた。
彼女はそれを綺麗に折りたたんで近くに置かれている籠に入れると、今度は俺の下半身に手を伸ばしてベルトをカチャカチャと外し始める。
そして下に履いているパンツにも手をかけるようにして一気呵成に下ろせば、大きく反るように屹立した肉棒が姿を現す。
竿に血管を薄っすらと浮かび上がらせたそれは先端から我慢汁を溢れさせながら時折ヒクヒクと痙攣したように震える。
「わぁお、ますたぁのおちんちん……おっきぃ」
ドーマウスが驚いたように呟くが、実は自分でも見たことがないくらいの勃起している……などと告げられるはずもなく、俺はとりあえず無言を貫くほかなかった。
まぁ、こんなにも勃起しているのはドーマウスを目の前にしていれば当然の話ではあるのだが。
彼女は手にしていたズボンとパンツも畳んでしまうとすっと立ち上がり、何やら宙に手をかざしてボソボソッと呟いた。
その次の瞬間、彼女の身体が唐突にピカァと金色の眩い光を帯びて着ている衣服が光の粒子になって消え始めた。
それはまるでヒーローや魔法少女が変身する際の光景のようで、気づけばドーマウスは瞬く間に一糸まとわぬ姿になっていた。
元々シースルーの多い衣装だったので明らかだったが透き通るような肌には染みが一切見られず、胸元では少しだけ小ぶりなおっぱいがたゆんと揺れている。
その先端は瑞々しい桜色を帯び、頂上では愛らしい突起が存在を主張するようにツンと屹立していた。
そしてほっそりとした曲線を描く彼女の身体つきは腰の辺りでキュッと引き締まり、スラッとした四肢が伸びている。
それでいながら精緻な顔立ちに浮かぶ眠そうな表情には一切変わりがなく、むしろドーマウスらしくて最高だった。
一糸まとわぬ姿になった彼女がスッと手を差し出しながら口元を緩めて微笑む。
「……それじゃあ、あっち。汗を流しに行こ?」
俺はドーマウスの手を握り、ベッドからゆっくりと立ち上がった。
*
湯椅子に座って待つことしばらく、背後からさぁっと軽やかな水音が聞こえてきた。
「ますたぁ、熱くないか確認してもらってもいぃ?」
背後からひょっこりと顔を覗かせたドーマウスの手にはお湯の流れるシャワーが握られている。
俺が頷いて答えれば、彼女は太ももの辺りにシャワーのお湯を当ててくれた。
それはまさにちょうどよく気持ちいい温度だったので、気持ちいいよとドーマウスに伝えれば彼女は安堵したように笑みを零す。
「……よかった。それじゃあ、このまま背中を流す、ね?」
肩にシャワーからお湯が当たり、その勢いのままに背中全体を覆うように流れていく。
ドーマウスと一緒に裸になっていることへの緊張感は微塵も解れないが、昂揚とはまた違う仄かな温かさが全身を巡って気持ちが自然と落ち着いていくようだった。
「ますたぁが気持ちよさそうでうれしぃ……」
ドーマウスは俺の全身にお湯が行き届いたのを見届けるとシャワーをフックに戻して、ボディソープを手に取る。
もしやと思いながら彼女を見守っていると、ドーマウスは自らの胸元に向かってボディソープを勢いよく押し出した。
「チェシャが男はおっぱいに目がないって言ってた。だから、マウスのおっぱいでますたぁの身体を綺麗にしてあげる」
ドーマウスと同じ、M∀LICEの一員であるチェシャ・キャット。
あくまでイメージでしかないが、彼女が言うか言わないかで言えば状況にとっては実に言いそうな一言だった。
ただし言ったとしても冗談とか揶揄い半分のイメージだが。
ドーマウスがやや小ぶりなおっぱいを寄せるように持ち上げ、捏ねるように動かしながら泡立たせる。
ボディーソープが泡立って桜色の乳首や乳輪が埋もれていく光景は、何と言うか、思わず生唾を呑み込んでしまいたくなるほどの絶景だった。
「んんっ、んっ……これでおーけー。それじゃあ、ますたぁ。背中からきれいきれいするね」
言うや否や、俺の覚悟が決まるよりも早くドーマウスのおっぱいが背中にむにゅっと押しつけられる。
柔らかな感触と確かにある存在感、そしてボディソープによってにゅるりと滑る絶妙な具合は思わず背中を仰け反らさせずにはいられなかった。
しかしドーマウスが背後から胸板に手を回して俺にギュッと抱きつき、おっぱいを更にむにゅっと押しつける。
「ますたぁ、逃げちゃだめ。逃げちゃうと綺麗にならない」
そういう訳ではないのだが、もたらされる刺激があまりにも幸福すぎて口が上手く回らない。
その間にもドーマウスはボディソープを潤滑油代わりにしながら背中のうえで柔らかな果実をにゅるにゅると滑らせていく。
「んっ、んん……っ♥ ますたぁ、どぉ? マウス、上手にできてるぅ?♥」
熱を帯びた囁きが耳朶を撫で、理性が激しく揺さぶられる。
その間にも背中で踊っている柔らかな感触の中に硬さを帯びた感触が混ざっているのに気づき、体内で熱が猛烈に膨れ上がった。
上手く考えられない頭で何とか最高だよと絞り出して答えれば、ドーマウスは嬉しそうに荒い息を零しながら笑う。
「ますたぁに喜んでもらえれて、うれしい♥ 次は前を綺麗にしてあげるね?」
言いながら回り込んで来たドーマウスが俺の下半身を見て驚いたように息を呑む。
先ほどまででも十分に屹立していた肉棒が彼女からの奉仕によって更に勃起し、臍に当たらんばかりに大きく反るように膨らんでいたのだ。
ドーマウスからの視線を受けてビクビクッと震えているそれはいまにも暴発してしまいそうにも見える。
「ますたぁ、マウスのおっぱいにぴゅっぴゅ……する?」
ドーマウスが言いながらボディソープの泡に塗れたおっぱいを持ち上げるようにして見せつける。
考えるより早く首が上下に動き、反射的に湯椅子から立ち上がっていた。
彼女もまた察したように両足の膝を床について座ると、寄せるように持ち上げていたおっぱいで勃起した肉棒をむにゅうと包み込むように挟んでくれた。
「んっ、んんぅ……ますたぁのおちんちん、熱ぃ♥ それにぃ、マウスのおっぱいじゃ挟み切れないほどに太くて硬ぃ♥」
大好きな女の子のおっぱいに愚息が挟まれてるという状況を自覚するだけで容易に達してしまいそうだったが、この至極の柔らかさを一分一秒でも長く味わっていたくって辛うじて生き延びている理性を総動員して何とか踏み止まる。
それでも本能は快楽を欲していて、無意識に腰が揺れ動いてドーマウスの乳肉の合間でむにゅっむにゅうと泡立ち始めていた。
「だめ、だめぇ……♥ ますたぁはマウスが気持ちよくしてあげるのぉ♥ んっしょ……んぅっしょ、しこしこ♥ しこしこ♥ どぉ、どぉ……ますたぁ? はっ、はぁ……マウス、マウス上手に出来てるぅ?♥」
ドーマウスはおっぱいを寄せるように掬いながら上半身を大きくグラインドさせて挟んだ肉棒を扱きあげる。
生じた熱が全身を駆け巡り、脳を強烈に痺れさせる。
瞼の裏が明滅して何も考えられなくなって、ただただ答える代わりにマウスの頭を撫でることしかできなかった。
ドーマウスはえへへと微笑みながら上半身を動かす速度を一気に速める。
「ますたぁ、ますたぁ……出そう? いいよ、このまま……このまま、マウスのおっぱいにぴゅっぴゅして♥ マウスで、マウスで気持ちよくなってぇ♥」
限界まで膨らんだ昂りが弾け、同時に瞼の裏で白すんでいた視界が爆発する。
ドーマウスのおっぱいの間で肉棒が暴発したように暴れ回り、その先端から吐き出された白濁液が彼女の顔面に向かって勢いよく飛び散る。
俺は本能のままに腰を突き出し続け、しばらく経って何とか落ち着きを取り戻した頃にはドーマウスの前髪から鎖骨の辺りにかけてが白く汚され尽くしていた。
「はぁ、はぁ……はぁ♥ これが、ますたぁのせーし♥ 熱くて臭いが強くてぇ……、美味しそぉ♥」
ドーマウスはうっとりとした表情を浮かべながら頬の辺りに付着している白濁液を指で掬い取るとそのままパクッと口に含む。
「これがますたぁの味ぃ♥ んんっ、ちゅっ……ちゅぷぅ♥♥ れろれろぉ……、んんぅ、きゅぽん♥」
付着した白濁液を一滴残さず味わいたいと言わんばかりに音を立てながら舐めると、唇の間から指をゆっくりと抜いた。
唾液に塗れた指が離れていくにつれ、唇の間に銀の滴による橋がかかって何とも艶めかしい。
というかエロすぎて、さっきあんなに激しく射精したばかりにも関わらず下半身に熱が再び集まり始めていた。
徐々に硬さを取り戻していく肉棒を眺めながらドーマウスは嬉しそうに微笑む。
「よく分からないけど、ますたぁのおちんちんが元気になってくれてよかった。だけどこの続きはベッドに移動してから、ね?」
そして、フックに手を伸ばしてシャワーを握ると自らの胸元に向かってお湯をかけ始めた。
ドーマウスに向かって射精するという凄いことをやり遂げたつもりだったのに、彼女の言葉で本番はむしろこれからなんだという実感が遅れてやって来る。
そして、それはドーマウスともっと深くでつながれるということで。
その事実に対する歓喜が全身にゆっくりと満ちていくのが分かり、俺はあらためて打ち震えずにはいられなかった。
*
さっきは少しの間座っただけだったのであまり意識をしていなかったが、あらためて見ると置かれているベッドはドーマウスと一緒でも十分に余裕があるほどに大きく見えた。
ドーマウスはベッドの上に置いたままだった愛用のダイヤ柄の枕に顔を埋めると、そのまま身体をごろんとひっくり返して仰向けの体勢になった。
そして両手で膝の裏を抱えるように持ち上げ、俺に向かって秘裂をくぱぁと開くように見せつける。
その弾みに愛液がしとどに溢れ出て、シーツの上に薄っすらと染みを生じさせながら雌の匂いをほんのりと漂わせた。
「ますたぁ、来て♥ マウスと一緒に気持ちよく、なろ?♥」
媚びるように左右に振られた腰が昂りを膨らませ、向けられる潤んだ瞳が理性をドロドロに溶かす。
俺は横になっているドーマウスに近づくと、大きく膨らんだ肉棒の先端を濡れそぼった彼女の秘裂にゆっくりと宛てる。
「……っっ、んぁ♥ ますたぁ♥」
肉棒が押し当てられて秘裂がぐいっと押し拡げられた拍子にドーマウスが甲高い声を漏らす。
俺はそのまま腰全体をグイっと押し込むようにしながら肉棒を蜜壺の中にぬぷぅと埋没させていった。
「あっ、ああ……ますたぁのおちんちんがマウスのなかぁ♥ ぐいぐいって広げててぇ、あっ……、あ、だめ♥ だめぇ♥ こんなに気持ちいいの、だめ♥ マウス、マウス……変になっちゃうからぁ♥」
マウスは首を左右に振りながら嬌声を零しながら訴えるが、彼女は膝を抱えて見せつける体勢を止まない。
だからこそ、受け入れられた肉棒が間もなく彼女の最奥に達したような感触があった。
「あっ……あ、ますたぁのおちんちんとマウスのおまんこがちゅーしてるぅ♥ ねっ、ねぇ……ますたぁ。ますたぁとマウス、一つになれた?」
俺は頷いて答えると汗に濡れた前髪を指で払い、ドーマウスの額に口づけを軽く落とす。
そして唇にも軽くキスをすると、今度は舌を差し入れて彼女のそれと絡め合った。
「んっ、んんぅ……ちゅっ、ちゅぷぅ♥ れろっ、じゅぷ……れろれろぉ、ちゅう♥」
初めて交わしたキスなんて比にならないくらいの圧倒的多幸感。
汚れるのなんて気にせずお互いの唾液を交換し合い、さっきよりも激しく一心不乱に貪り合う。
いつまでだって続けていられそうだったが息が苦しくなってしまい、俺は渋々ドーマウスから顔を離すしかなかった。
「……はぁ、はぁ。ねぇ、ますたぁ。いつも大切にしてもらってるうえに、こうやって触れ合えることまでできて。気持ちを伝えられて。マウス、本当にしあわせ」
それは自分こそ、だ。
でも、だからこそ――と思っているとマウスが応えるように頷いた。
「ん、マウスも同じ気持ち。ますたぁと一緒に気持ちよくなりたい。だから、遠慮なんてしないでますたぁの好きに動いて?♥」
ありがとうと感謝を口にしながらマウスの頬にキスをし、そして彼女のほっそりとした身体を潰すように覆い被さる。
押しつけるようにしていた腰を蜜壺から抜けてしまわないギリギリまで引くとそのまま打ちつけ始めた。
「あっ、あぁ……あぁん♥ あん、あっ……あぁ♥ ますたぁ、ますたぁ……すき、すきすきだいすきぃ♥♥ あぁ……、あっ、あ゛っ♥ このまま、このままぁマウスの中をますたぁのせーしでいっぱいにしてぇ♥♥」
ドーマウスは悲鳴にも似た嬌声をあげながら、両脚を俺の腰に絡めて背中に手を回す。
それは最早しがみついているような体勢に近く、背中にマウスの爪が食い込んでいるのが分かるがその痛みさえも心地いい。
つながった下腹部の方からもずちゅぬちゅじゅぽぉと卑猥な音が聞こえ続けているが、どうなっているのかはよく分からない。
ただただ熱に導かれるままに腰を無我夢中で振り続け、受け止めてくれている最愛の人と一緒に快楽の階段を一気に駆け上がっていく。
「あ゛あぁぁっ、あぁん、あっ♥ だめっ、だめぇ……マウス、イくイくイっちゃぅ♥ ね、ね……ますたぁも一緒に、一緒にぃ♥♥」
答える余力なんて最早なく、ドーマウスの縋るような叫びに首を縦に振ることしかできない。
それでも頷きは彼女からも見えていたようで、ドーマウスは俺の首筋に顔を埋めるようにギュッと抱きついた。
肉棒が彼女の中で一回り膨張するのを感じながら腰を振り続け、限界まで膨らんでいた昂りが勢いよく弾けた。
「あぁっ、あっ、ますたぁますたぁますたぁ♥♥ あああ、あっ……あああ―――っっっ!!!♥♥♥」
俺は思い切り歯を食いしばり、暴発したように暴れる肉棒をドーマウスの最奥に捻じ込むように腰をぐりぐりと押しつける。
彼女への愛を一滴だって余すことなく、そのすべてを伝えきるつもりで。
ドーマウスは俺にしがみつきながら華奢な身体を震わせ、注ぎ込まれる精の奔流を受け止め続けてくれる。
いつもどこか眠そうな彼女の横顔は燃えてしまいそうなほどに上気し、幸福そうに蕩けているように見えた。
*
まるでスイッチが切り替わったように瞼がゆっくりと開くのを感じ、俺は覚醒していない頭で周囲を見回す。
灯りに照らされた室内の景色はどうにも見覚えのあるそれで、明らかに一人暮らしをしているマンションの室内だった。
目の前に置かれているモニターには深夜から更新されていないSNSのホーム画面が表示され、デスクの上にはカドショでプレミを犯してしまった盤面を再現するようにカードたちが並べられている。
遅れるように全身が痛みを伴った強張りを訴えているのに気づき、モニターの前で寝落ちをしてしまっていたのだと理解した。
ワーキングチェアから立ち上がって強張りを解すように伸びをしていると、デスクの上に並べられたM∀LICEのカードたちが視界の隅に見え、あの『泡沫の楽園』で過ごしたひと時が鮮明に蘇る。
俺が実体化したカードの精霊であるドーマウスと愛し合っていた、だなんて。
抱いていた妄想がいよいよ極まったのだと一笑に付してしまうにはあまりにも鮮烈な体験だった。
それこそ本当に起こったことなんだとしか思えないくらいに。
でも、室内の状況は俺は昨夜この部屋に帰って来ていることを明確に示していて――。
いずれにしても覚醒しきっていない頭では結論なんて到底出せるはずもない。
とりあえず顔を洗おうと思い、俺は洗面所に向かった。
蛇口のハンドルを捻って冷たい水を出し、バシャバシャと音を立てながら顔を無造作に洗う。
傍らにかけているタオルで顔を拭きながら何の気なしに鏡を見上げ、俺はようやくそれに気がついた。
首筋の辺りに、モニターの前で寝落ちしていたのでは到底つくはずのないキスマークが残っていたのだ。
それに気づいた次の瞬間、俺は床に敷かれていたマットに足を脚を滑らせ、後頭部を背後の壁にドンと勢いよくぶつけてしまう。
「……ますたぁ、だいじょぉぶ?」
痛みで後頭部を抱えるように蹲っていると、どこか気怠そうで舌足らずな声が聞こえた。
その声に導かれるように顔を上げると、様子を見ようと屈んでいた彼女とばっちりと視線が重なって。
あのひと時を一緒に過ごした彼女が、ドーマウスが照れたように薄っすらと微笑んだ。