この夜、秘密の仮面舞踏会が開かれていた。広間の片隅で、黒いレースで目元を隠したティーメイドが怯えていた。仮面の紳士がその不躾な視線をなじり、仕置きをしようとしていた。ティーメイドは震えた声で申開きをした。
「
紳士は皮肉っぽく眉をそびやかした。
「ほう、ティーメイドの分際で私の誘いを断るか。ますますそそられる。遊戯室の用意を。このメイドを弄ぼう」
メイドは顔色を変えなかったものの、びくりと肩を揺らした。ティーメイドはじっとレースの奥からメイド長にむけて視線を傾けていた。メイド長が頭を振るのをみると諦めたようだった。メイドは、紳士から差し出された手におずおずと手を重ねた。小さな震える手を引いて、紳士は遊戯室へと消えた。
遊戯室は、絨毯とシャンデリアの明るい広間とは違い、革張りを基調とした部屋で、ほの明るい蝋燭の光に部屋全体が揺らめいている。
男はメイドの服をそのままに、両腕を拘束具へ取り付け、メイドをつま先立ちにさせた。
まじまじとメイドの装いを見つめる。幅のある黒いレースに目許が覆われ、大まかな顔つきしかわからない。メイド服は質素なもので、黒いたっぷりとしたくるぶし丈の襟付きワンピースの上からエプロンをつけた簡素すぎる服であった。
目から感情を消しているメイドを見て、男は反応を確かめたくなった。男は、メイド服の裾を少したくし上げた。細腰に続くおおぶりな尻がドロワーズに覆われている。その下から伸びるガーターが地味なロングソックスを留めていた。
ガーターをぷちりと外し、靴下をまくり、まばゆく白いふくらはぎの生肌を露出させた。
男は、控えていた人間に自分の道具箱を持ってこさせた。道具を取り出しては、ふくらはぎで反応を確かめた。
鞭を取り出す。ビュン、と風を切る音を立てると、顔色は変わらないものの、びく、と体が震える。思わず口元が緩んだ。鞭の先端でスルスルとふくらはぎを撫でると、かたかたとつま先から小さな震えが伝わってきた。
このメイドは顔には出ないように訓練されているようだとやっとわかった。体の反応は素直で、微弱な感覚を拾うことのできるようだ。ならば急いではいけない。少しずつ味合わなければ。
男は、なめされて柔らかな縄を取り出した。眩しいふくらはぎに、縄が擦りつけられるごとに、ふるふるとくすぐったそうに震えた。
こちらのほうがいいだろう。男は頷くと、靴下とガーターを完全に取り去り、少女に縄をかけた。少女は着痩せするたちだったようだ。後ろ手を束ね、胸元、腹、股、脚を縛めるごとに、その輪郭がくっきりとした。地味なロングメイドの上を縄が這い回り、肉が括り出され、大ぶりな胸、細い腰と丸い尻を浮き彫りにしていた。そのくっきりとした体は成熟した女のものだった。地味なメイド服で縛られ転がされているからこそ、淫靡に映えていた。
男は括り出された乳房をつまみ、先を焦らすようにすりすりと弄んだ。ひくん、ひくん、と魚のように腰が波打って、その一擦りごとに切なさがメイドを苦しめているのだとわかった。じわ、と目許の黒いレースが滲んでおり、男はそれを取り去った。肢体に対してまだあどけない印象の少女が、目をキッとこちらに向けて睨んでいた。
なんだ、反応できるじゃないか。男は楽しそうに少女を見下ろした。
「そう睨むな。何か言いたいなら、まずは抜け出してみろ」
少女が抜け出そうともぞもぞ動くごとに、全身の縄が食い込み、少女を甘い苦しみが苛んだ。ひとつ動くごとに、目から恥辱と快楽のないまぜになった涙がこぼれ、メイド服の襟元を汚した。
全身の縄を整えながら、メイド服を締め付け、女体を擽っていく。つま先から太ももの上にのぼっていこうとした時、一際大きく、びくりと体が震えた。
男はこのメイドが生娘であることに思い至った。まぶしく、ふっくらとしたハリとツヤのある太ももが縄で歪められており、男は無骨な手でそっと撫で、少しずつ攻めのぼっていった。
メイドの少女は、男の無骨な手が太ももより上、ドロワーズの中に侵略する気なのを感じ取り、悔しそうに唇を噛み締めて睨みつけていた。しかし、股縄の食い込みを強められてしまい、しどけない声をもらすまい、と顔を真っ赤にした。それでも、身悶えとともに熱いため息がもれた。
男は、じっとりとした手つきで縄を解いた。
少女は、やっと息が吸えた、とホッとした様子で深呼吸をしていた。締付けから解放されるにつれて、自分の理性が溶けていることにも気付けぬまま、ただ目を閉じていた。
男は、快楽に溺れてしまってはつまらないな、と思い、この娘をよりしっかりと玩具にするために思案した。
男は、メイドの少女に水を飲ませ、目を覚まさせた。
「そんなに縄が心地よかったか」
何も言うまいと、唇を引き結んで、こちらを睨みつける姿も、目がここまで潤んでおり、こちらがつけた縄痕まみれとなれば、可愛らしいものだった。
男は、メイドを連れて衣装部屋に行った。衣装係によって、柔らかな乳白色のフヨウの花に似たチュールが折り重なったドレスが見繕われた。
メイドの少女のくっきりとした体には、大層ドレスが似合った。口元に仮面をつければ、高貴な姫君のようだった。
メイドの少女の目には困惑が浮かんでいた。
「あの……よろしいのですか」
「物足りないか?そうだろう、そうだろう。加虐で飾ってやるから心配しなくていい」と言うと、苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見ている。メイドにこのような姫君たちへの貸衣装を着せていいのかと聞きたかったのだろうが、全く構わなかった。そのへんの媚びた娼婦や加虐趣味の姫君たちよりも余程、気高くそして感受性の豊かなメイドは、弄び甲斐のある玩具だった。気に入った玩具を磨き、飾り、持ち歩くことの何が悪いのだろう。
ドレスと化粧を完成され、姫君にしか見えないメイドに向かって、男は優しく言った。
「せっかくの御披露目だ。これをつけよう」
手にあったのは、レースのあしらわれた、無骨な黒革の首輪だった。後ろはチェーンが交差してそのままリードにつながり、引かれると締まる代物だった。
少女はティーメイドとしてこの場に長くいたことのあるゆえ、首輪の意味をよく理解していた。奴隷の結婚指輪チョーカーが出てきたことに大層驚いたのだ。
「そう気負うな、一夜の夢だ」
耳元で囁かれ、少女は目を見開いたあと、切ない顔で首元を差し出した。
しゃらり、と細い鎖の音がして、ドレスの少女の首に無骨な首輪が嵌まった。少女は、リードを引かれて、首が少し締まる苦しさと、繋がれている奇妙な安心感と、先程の言葉に胸をかき乱されていた。
「飾りはこれで終わりではないぞ」
男は、はっと顔を上げた少女を面白そうに眺め、J字型の鉄球棒を片手に愉快な声で言った。
「命令だ、尻をひらけ」
「い、いやです……」
ひどい落差に嫌悪をあらわにして、少女がはっきりと拒絶をした。
「いいのか?力ずくで入れたら裂けてしまうぞ」
少女は、嫌悪と恐怖のないまぜになった顔で、ショーツとドロワーズを脱ぎ、たっぷりとしたドレスをたくし上げ、丸々とした尻をひらいてみせた。小ぶりな鉄球をつるりとピンクの肛門の奥に仕込む。
「うゔぅっ」苦悶の表情を浮かべているが、鉄球はそのうち馴染んで、やわらかい快楽を少女に届けることだろう。肛門の反対側、長い持ち手にチェーンを引っ掛け、首輪の締りとリードに繋ぐ。これで、リードを引っ張るだけで、肛門が刺激され首も締まってしまう。傍目には首輪で繋がれ幸せにリードされる高貴な姫君だが、中身は肛虐のメイドというわけだ。
口元を仮面で覆った少女を伴って再び広間に戻ると、人が囲んだ。
首輪で繋がれた姫君は、淑やかに裾をつまみ、見事な
誰もこの摘まれた裾をよりたくし上げれば、濡れた太ももやショーツの奪われた丸出しの肢体が見えるとは思うまい。
見違えた少女を誰もティーメイドと思わず、ティーメイドを弄んだ男が今度は高貴な姫君に首輪をして連れてきた!と場は持ち切りであった。
「どうだ?胸がすいたろう?」と小声で話しかけると、困惑したまま少女は首を傾げた。
「頷きなさい」男が姫君につながるリードを引っ張ると、首が締まり、肛門の玩具がぐりんと食い込んだ。
「……はい」上擦った甘い声は、よく響いた。快楽と苦痛で板挟みゆえで、本来の声はもう少し低いのだが、それは男しか知らない。場の人々は、姫君の可憐な声に沸き立った。
断続的なリードによる呼吸制限と肛門の刺激に姫君は濡れそぼって、朦朧としていた。
「姫君はいつからこの紳士のものなのですか」
おろおろと姫君が紳士を見上げると、一際強くリードが引かれた。
「〜〜〜〜ッ!」姫君は注目の中、密かに絶頂し、大粒の涙をひとつこぼした。よろけたところを、紳士が抱きとめた。
「失礼、少々疲れているようだ。部屋に帰らせてもらおう」
紳士は、姫君を自ら抱き上げると、部屋に連れ帰った。姫君は人前で絶頂した悲しみと苦しみと恥ずかしさがこみ上げて、ぽろぽろと泣いた。
部屋に連れ帰られた姫君は
「なぜ人前であんなことを……!」と怒りをあらわにした。
「そう怒るな。尻にまだ玩具が入っているのを忘れたのか」紳士が言って間もなくグッとリードをひくと、ごとん、と玩具が抜ける音とともに、
「ああああ!」フヨウの花のドレスの下からぱちゃぱちゃと水音が聞こえた。
姫君は真っ赤な顔でへなへなと座り込んだ。
「見せてみなさい」
男は、応える元気もなく萎れたフヨウの花をかき分け、蜜にまみれた雌芯を見つけるとほくそ笑んだ。ふっとそこに息を吹きかけると、大きく体が震えた。
「ふむ、愉しみは取っておくとするか。大切な玩具だからな……ドロワーズとショーツを奪っておいて正解だったようだ。ネグリジェと風呂を用意させた。着替えていいぞ」と言って風呂場へ放りだした。
少女は拍子抜けしたあと、自分の期待に気付いて赤面した。
湯上がり、ネグリジェに着替えさせられた少女は、ベッドの横に腰掛ける男をずっと睨みつけていた。男は未だに一糸乱れず、仮面もつけたままだった。
「いつまで睨むつもりだ……ティーメイドでありながら、仮面の紳士に持ち帰られるなど栄誉なことのはず。何がそんなに不満だ、何が望みなのだ?」
男は少し困惑した顔で、しっとりとした少女を眺めた。
「……仮面をお取りください。お顔を見て、お名前をお伺いしたいです」ティーメイドの少女は初めて真摯な顔で真っ直ぐに男の目を射抜いた。
「仮面舞踏会なのをわかっているか?不躾だな」男は皮肉げにこちらを見やった。
「申し訳ございません。お名前でなくても構いません、あなたのことを教えてください」少女は頑として目をそらさなかった。
「あなたは首輪をくださいました。もし、私を玩具として末永く愉しんでいただけるのであれば」
男は少し目を見開いたあと、ため息をついた。
「俺には一夜の夢しか見れないものでな。俺がなぜこんなことをするようになったか、話してやろう」と言って、仮面を外した。仮面の下の顔には傷跡があった。
「よくある話だ。俺の父は俺の母を殴っていた。思い返せば勃起していた。母は苦しみ痛がり、嫌がっていたが、俺には優しく『父様は母様に厳しいだけですから』と言うだけだった。俺は、殴る蹴るが父のどうしようもない愛の形だったのだろうと思った」訥々とした語りが少しずつ熱を帯びていく。
「しょうもない、おぞましい。父が。その血が流れる己が。しかし、俺は女性と親しくなるごとに、やわらかな肌をひらくこと以上に、殴りたいと、痛めつけたいと、湧き上がる気持ちがいつも抑え難かった。ゆえにこの顔の傷は会いする女の抵抗によって傷ついたのだ。この気持ち悪さよ!俺が愛を深めるごとに!俺はその者を破壊するのだ!俺は今泣いているのか?いや、これは違う、激情のあまり溢れ出てしまっただけだ」男はとうとう涙をこぼした。
少女は思わず立ち上がり、その胸に男を抱き寄せた。
「その悍ましい者同士で、愛せばいいではありませんか。そのためのあの場でしょうに」
「あの場は一夜の夢だ。花は貴族の子女ではない。俺はいずれ誰かと愛なく結び合い、あの一夜の夢のためだけに生きるのだ」
貴族は義務故に貴族であり、多忙な男は、年に一回夢が見られれば万々歳だと言う。
「ならば一夜の夢が本物になればよろしいのです」
少女は男の頬を伝った涙の筋をぬぐった。
「とある辺境の姫君は靴擦れにすら身を震わせる救いのない体をしていたそうでございます。両親にそのことが伝わった時、この地方で貴族の嫁に出すにはあまりにも異形の性だから、わからないうちにと、御披露目デビュタントにも出さずに城にお仕えに出されたのでございます。その来歴をどこで調べたか、この仮面舞踏会に呼び立てられ、見定めの任を授かりました。『本物は本物に惹かれるだろうから』と。そうして、本当にあなたが見つけてくださいました」少女は夢見るような、挑むような目つきで男を見た。
男は「ならば、この姿勢は相応しくあるまい」と少女を引き剥がし、床に座らせ、顎を捉えて、見下ろした。
「【本物】の姫君よ、私の物になるか」
己の恥を告白し、中身を知られ、所有欲を剥き出しにされ、視線に射抜かれる甘美な震えと不思議な安心感が少女を満たして、朦朧とさせていた。
「返事をしないか」
パン、と平手打ちが響き、男は腫れた頬を撫でた。少女はうっとりとした微笑みでそこに小さな手を重ねて、つぶやいた。
「もしも、お戯れでしたら、ご容赦を」
男は応えて笑った。
「戯れではなく本気だ、容赦はしない」
少女は男にとろけた笑みを向けた
ノクターンノベルスの水辺ほとり投稿作『お戯れにはご容赦を』を本人が改訂、こちらにも投稿したものです
メイドさんをネチネチいじめたい!人前でいかせたい!!好きなこと詰め込みました。楽しんでいただけたら幸いです。