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1、ヨーコとゆう子
ある喫茶店のテーブルで、二人の女が向かい合っていた。
一人は帽子を被り、一人は大きなサングラスをかけている。隠してはいても、ただ者ではないオーラが発せられている。もし他に客がいれば、すぐにでも噂になってしまいそうだった。
この純喫茶は、沖野ヨーコのお気に入りの場所だった。いつでも静かなこの店にいると、ひとときだけ自分がアイドルであることを忘れられる気がした。
彼女のことを知らない者はいないだろうが、あえて表現するなら――今をときめく、飛ぶ鳥を落とす勢い、彼女が地上波に乗らない日はない――そんなところだろう。
「トップアイドルがわざわざ何の用事?」
向かい合ったサングラスの女は、池沢ゆう子。ヨーコとは同期デビューだが、人気はやや劣る。だが、ヨーコが断った仕事のほとんどが「第二候補」としてゆう子に回ってくると言われている。
「ごめんなさい、直接でないと話せないことがあって……」
目深に被った帽子から、ちらっと上目遣いを見せるヨーコ。同性であるゆう子ですら、丸く大きな瞳に吸い込まれてしまうんじゃないかと錯覚してしまうほどだ。
「わたしだって忙しいのよ。あなたほどじゃないけどね」
ゆう子は苛立たしそうに人差し指でトントンとテーブルを叩いた。その動作を見て、ヨーコは思い出すことがあった。ゆう子は喫煙者だったはずだ。
「タバコ、やめたんですか?」
「そうよ。今どき、アイドルがイメージ悪くすることできないでしょ。どこで見られてるか分かったものじゃないんだから。あなただって、スキャンダルひとつでいっぺんに仕事なくすわよ」
アイドルの最大の武器はイメージだ。特に、ヨーコは今どき珍しいぐらいの清純派。美少女で頭の回転が速く、気が利く。そして、表裏がない。共演者の誰も彼女の悪口を言わない。ライバルを公言する池沢ゆう子ですら、である。
「それより、用事って何よ?」
「五日前に、マネージャーの山岸さんがTV局で鍵をなくしたらしくて。その時、ゆう子さんも同じ局で仕事をしてたから……」
「まさか、わたしが盗んだんじゃないかって疑ってるの?」
ゆう子は切れ長の目つきをさらに鋭くして、ヨーコをにらみつけた。
「ち、ちがいます。誰か、怪しい人を見かけてないかと思って」
「ふん。同じ局って言ったって、別のスタジオにいたわたしが知るわけないじゃない」
ゆう子はちらっと窓の外に目を向けた。ヨーコのマネージャー、山岸の車が停まっている。
「鍵をなくしたって、平気なの? まさかカレ、事務所に泊まり込んでるとか……」
負けん気の強いキャラクターで売っているゆう子だが、それは面倒見がいい性格の裏返しだ。付き合いの長いヨーコはよく知っていた。
(鍵を盗んだのはゆう子さんじゃない)
その表情を見て確信した。山岸がなくした鍵というのは、彼の家の鍵ではない。ヨーコのマンションの合鍵だ。
撮影を止めてスタッフが総出で探す事件になったが、けっきょく見つからなかった。スタッフたちに口止めした山岸が、「もしかしたら池沢ゆう子が盗んだのではないか」と言ったのだ。
ゆう子が主演する方針で進んでいたドラマの主演が、スポンサーの意向でヨーコに変更されたことから、彼女が恨んでいるのではないかと山岸は考えたのである。
もし山岸の想像通り、ゆう子が犯人だったら「山岸の家の鍵がなくなった」なんて勘違いはしないだろう。試すようなことをしたことで、ヨーコの心は罪悪感でちくりと痛んだ。
「ありがとう。それだけ聞きたかったんです」
「言っとくけど、『マネージャーが鍵をなくした』だって、イメージダウンには十分よ。管理がなってないとかなんとかで、事務所のイメージを下げることができる。わたしが週刊誌にでもタレこんだらどうなるか考えなかったの?」
「それは……」
「まあ、いいわ。しょうじき、あなたがいてくれた方がわたしもやりやすいのよ。二番手キャラが定着しちゃったのはシャクだけど、あなたが仕事をなくしたって、今さら私のところに主演やイベントのトリが来るわけじゃないだろうし」
ゆう子は先に席を立って、不敵に笑った。
「黙ってるかわりに、仕事を回してよ。あなたのステージにサプライズゲストで呼ぶとかね……」
「あ、あはは……考えておきます」
この人はしぶとく業界で生き残るだろう……笑ってごまかしながら、ヨーコはそう思った。
2、アイドル密室強姦事件
マンションのエレベーターに乗って、25階のボタンを押す。
ひとりになって、ヨーコはため息をついた。
「これでいいのかな、わたしって……」
毎日TV番組やイベントに引っ張りだこ。空いた時間があればインタビューや打合せ。神曲のスケジュールは何年も先まで決まっている。オフは半年に一度あるかないかだ。
ひとりではもてあますような広いマンションに住んでいても、満たされているのかどうか分からなくなる時がある。
「高校生の時はよかったな。毎日、好きな人と一緒に居られて……」
ひとりでに涙があふれてくる。ヨーコが素人モデルとして注目を浴び、アイドルデビューする前には、人並みの恋愛をしていたものだ。
「藤江くん……どうしてるんだろう?」
エレベーターが停止するまでの間、ヨーコの意識は過去に引かれた。純粋で、人を疑うことを知らなかった頃。恋人だった藤江は、ヨーコがTV番組に出演するようになってすぐのころ、別れを切り出した。その時は頭が真っ白になって、ただ泣くことしかできなかった。
「私も、大人になっちゃったな」
ゆう子に対して仕掛けた引っかけを思い出す。16才のヨーコなら、あんなことはしなかっただろう。
チン、という音がして、エレベータの扉が開いた。
曲がりそうになる背中を伸ばす。アイドルはどんなときでも下を向いてはいけない……それが彼女の信念だった。
いつもの通りに、入口の鍵を開けて部屋に入る……
(何か、変なカンジが……)
どこがどう、というわけではない。だが、何かがいつもと違った。
人感センサーで室内照明がつく。
(そういえば、山岸さんがなくした鍵は、どこに……)
見慣れているはずの部屋が、どこか知らない場所のように感じられて見回す。
「……気のせい、よね……」
家具の位置が変わっているような気もする。でも、出かける前にどこに何があったか、全部覚えているはずがない。
ヨーコは首を振って、浴室に向かった。
「とりあえずシャワー浴びちゃお……」
浴室に繋がるパウダールームへのドアを開けた時……
「ヨーコ」
毎日使っている洗面台の前に、男が立っていた。
がっしりとした体格と、どこか内にこもったような顔立ちには見覚えがあった。
「藤江くん……?」
「ヨーコ!」
藤江の顔には暗い決意のようなものがこもっていた。大きな体がヨーコに迫る。
「イヤっ!」
反射的にヨーコは廊下に駆け出した。だが、急なことで反応が遅れてしまった。男がつかみかかってきて、女の体は簡単に押し倒されてしまった。
「藤江くん、どうして……」
ヨーコにはすぐにわかった。合鍵を盗んだのはかつての恋人、藤江だったのだ。以前からつきまとうような行為をしていたから、何とかしてTV局に侵入し、隙を見て盗み出したのだろう。
その目的は……
「俺は……俺はずっと、君に会いたくて……」
男の腕がヨーコの体に回される。反射的に身をよじったせいで、大きな掌がヨーコの胸に触れた。
「あっ……!」
思わず上がった声を聞いて、男の理性がふつりと切れた。その手が服の内側に入り込み、ブラをつかんでぐいっとずらす。
「ま、待って……わたしたち、キスもできなかったのに……」
「あのときは、君を大事にしたかったんだ!」
わめくように声をあげながら、藤江がヨーコの胸をつかんだ。全国民から羨望を寄せられるアイドルの体。人目にさらされることなどない白い柔肌を、男の手がつかむ。
「っ……! い、痛い……」
「ヨーコ……君は、芸能界で俺を忘れたかもしれないけど、俺は一度だって……」
「そんなこと……」
反論したかったが、ヨーコは混乱していた。そもそも、別れを切り出したのは藤江のほうなのだ。フったはずの男がなぜ、鍵を盗んでまで部屋の中に忍び込んでいるのか……
「この体に触れなかったことをずっと公開していたんだ。ヨーコのおっぱい……なんて綺麗なんだ」
乳房は、セクシー路線のゆう子には叶わないものの、すらりとした印象に反して女らしい丸みを描いている。ほんのりと色づいたような乳輪の中に、小ぶりな乳首が桜のつぼみのように収まっている。
「ふうっ……!」
藤江はヨーコに覆いかぶさり、その乳首に吸いついた。
「んんっ……!」
ヨーコは悲鳴とも嬌声ともつかない声をあげた。そして、その声が甘い色を帯びていたことに自分でも驚いた。
(わたし、こんなひどいことをされてるのに……)
拒否しきれない。一度は愛した相手を払いのけられなかった。めいっぱい手を伸ばせば、置物に手が届く、それで力いっぱい殴りつければ……
その先を考えることが、ヨーコにはどうしてもできなかった。彼を傷つけたくないと思ったのだ。
「ヨーコ。ずっと、ずっとこうしたかったんだ」
藤江がベルトを外し、パンツの前を開けた。肌寒い季節のせいか、むわっと湯気を上げるほどに大きく、熱く膨らんだ男根。血管を浮き上がらせ、ぱんぱんに膨らんだそれがびくびくと生々しく跳ね上がる。
「ま、待って。こんなことは……」
そのグロテスクな光景に、思わずヨーコは身を捻った。四つん這いになって逃げようとするが……
「俺は5年も待ったんだ!」
その背後から男ガ襲いかかる。
ビリビリビリッ!
「イヤッ……!」
黒いタイツが引き裂かれる。背中を向けたことで、かえって抵抗ができなかった。藤江はヨーコのスカートを捲り上げ、ショーツをぐいっとずらして……欲望と衝動の赴くままに、その臀部に覆いかぶさった。
「ヨーコ……!」
「いやっ、こんなこと……」
ヨーコは必死にもがいた。なんとか後ろ脚で蹴ろうとするが、力の差はどうしようもない。今度こそ、何かをつかんで殴るしかない、と思った時……
「愛してるんだ……!」
「……!」
その言葉には欲望だけでなく、正直な、真摯な響きがあった。だから、ヨーコは一瞬、抵抗することを忘れてしまって……
ずぶっ……!
「ぁあああっ……!」
信じられないほど大きなものが、ヨーコの中に押し込まれてくる。
剛直は容赦なく、ぶちぶちと彼女の中を貫くように突き刺さっていく。
「ああ、ヨーコの中に……ヨーコと繋がってる!」
ぐっ! ぐっ……! 強引にヨーコの中を貫いた男は、歓喜の声をあげながら腰を押しつける。男根はヨーコの中で暴れるように震え、強引に突き入れられていく。
「あ……ぁ、ぅうう……!」
ヨーコは痛みと苦しさにあえいだ。自分の体の中に、自分ではないものが入ってくる感覚。お腹の奥まで強引に押し込まれると、呼吸すら苦しくなる。ぱくぱくと口を動かして、必死に空気を吸い込もうとするが……
「俺は、ずっと君のことを……!」
ず、く、ずぶぶっ!
「ダメ、藤江くん……!」
本能的な予感に、ヨーコは首を振った。なんとか抜かせようとするものの、藤江の両手がヨーコの細い体をがっしりと捕まえて、逃そうとしない。
「うっ……っく、ヨーコ! おおおおおっ!」
がくん! と、藤江の腰が跳ね上がる。
どぶっ! どぷ、どくん!
男の脈動が伝わってくる。熱いものが、胎奥に撃ち込まれているのがわかった。
「あ……ぁ……」
あまりのショックに、ヨーコは何も考えられなかった。ぽろぽろと涙があふれてくる。たった10分前には、いつも通りの生活をしていたはずなのに……。
「はぁ……はぁ……! ヨーコ……!」
ずるりと、長い肉棒が抜かれていく。その感触さえ、互いの粘膜を通じて伝わってくる。
ぼたぼたと、ヨーコの中から白濁したものがあふれる。中に出された精液の中には赤いものが混じっていた。
「えっ……よ、ヨーコ、まさか……はじめてだったのか?」
「あ……当たり前、でしょ……」
涙でいっぱいの視界で振り返る。藤江は本気で動揺しているようだ。
「お、俺はそんなつもりじゃなくて……」
これだけのことをしておきながら、急に小心さを思い出したらしい。思い込みが激しくて、急に行動を起こすくせに動転すると気が小さくなる人。
16才の沖野ヨーコが好きになった相手に間違いなかった。
3、誤解を解いて……
「ほんとうに、すまない……!」
シャワーを浴びて戻ってきたヨーコに、藤江は床に頭を擦りつけて土下座した。
「……どういうことか、説明してくれる?」
「あ、ああ……ずっと、君と話したかったんだ。でも、君にはいつもマネージャーがついてるから、二人きりで話すにはこうするしかないと思って……」
「鍵を盗んで不法侵入なんて、犯罪よ、これって!」
「どうかしてたんだ……君に会えないなら、生きていても仕方ないと思ってたんだ」
藤江は頭を下げたままぶるぶる震えていた。とてもさっき襲いかかってきた男と同一人物とは思えない。
「だいたい、あなたのほうからフったのにどうして?」
「そ、それは誤解なんだ! ……君のデビューが決まった時、マネージャーから別れるように言われたんだ。キミのイメージに傷がつくからって……」
「傷って……そ、それは、わたしと二人で決めることでしょ」
「あのときの俺はバカだった。君のことを思い出にしようとしたけど……ずっと忘れられなくて、君を泣かせてしまったことをずっと後悔していた」
「今日やったことはもっとひどいんですけど」
「ほんとうに、ほんとうに……ごめん!」
床に頭を擦りつける藤江を見ながら、ヨーコは大きく息をついた。
「はぁ……。わたし、泣く演技の時はいつもあのことを思い出してたのよ。アイドルなんてチャラチャラしたことするから、嫌われたんだと思って……。なのにまさか、フった人が自分から押しかけてくるなんて」
「もう二度と君の前に姿を現さない! 約束する……!」
「あのね! もう二回もわたしの心を傷つけてるんだから、これ以上悲しませるようなことをしないで!」
藤江は元から思い詰める性質だったが、会えなかった期間のせいでさらに悪化している。このまま一人にしたら、ふらっと電車の前に飛び出す……なんてことになりかねない。直感的にヨーコはそう感じていた。
「でも、こんなこと……どうやって償えばいいか……」
「もう! 顔を上げて!」
泣きはらした藤江がゆっくりと体を起こす。すると、そこには……
「よ、ヨーコ!?」
ヨーコはバスローブを脱ぎさり、裸になっていた。白く丸いふたつの乳房も、たった今純潔を奪われた秘裂も、藤江の前にありのままで晒されている。
「あんなのが大事な初めてだなんて思いたくないから……もう一度、きちんとやり直して……ほしいな」
はにかむ表情は、アイドルとしての磨き抜かれた演技力の賜物か。それとも、恋人へのみずみずしい思いを取り戻したからなのか。いずれにしろ、あまりの可憐さに、藤江は罪悪感すら忘れて魅入られた。
「わ、わかった……!」
そして二人はベッドルームで向き合っていた。
「キミに比べたら、だらしない体だ……」
「そんなことない。ふっくらしてるのが好きだったの」
裸になって恥ずかしがる藤江に、ヨーコが抱きついた。縮こまっているのに、股間だけはすっかり硬くなっている。
「ほ、ほんとうにさっきは……」
「もう、謝らなくていいから……それより、ね?」
そっと上目遣いに見上げてから、ヨーコがまぶたを閉じる。藤江は彼女の言わんとするところを察して、肩を抱き寄せ……
「ん……っ、ちゅ、ぅ……」
みずみずしい唇は信じられないほど柔らかく感じられた。藤江は甘いキスを夢中になって求めた。ヨーコが苦しがって離さなければ、一晩中でも続けていそうだった。
「今度は、優しく触って」
そっとヨーコの細い手が男の手を取り、胸に触れさせた。
しっとりと濡れたような肌の感触。なのに、なめらかな肌に触れると、手の中ではずみ出しそうな弾力がある。
「あ、んっ……んっ……はぁ……っ」
ヨーコが甘い吐息を漏らす。先程の強引な愛撫とは違って、触れた場所からじんわりと熱が伝わってくるように思えた。
「気持ちいい……ねえ、私の体、大人になったでしょ」
「ああ、こんな素敵な体……他にないよ」
まさぐるうちに、つぼみのような乳首がぷっくりと立ち上がる。男の手がそこを撫でると、ヨーコの細い体がぴくんと反った。
「んんっ……! こ、こんなに感じちゃうなんて、恥ずかしい……」
「ずっと、テレビ越しでしか見れなかったヨーコの体……すごくきれいだ」
また夢中で胸をいじる。手が吸いついて離せなくなったかのようだ。
「ねぇ、ぎゅってして」
すぐにひとつのことに熱中してしまう藤江にヨーコが囁く。
「こ、こう……かな」
ヨーコは大きな体に身をあずけ、共にベッドの上に身を崩していく。自然と、脚の間に男を受け入れていた。
「ヨーコ……」
「ん……」
ヨーコの丸い瞳が、ひとりの男を見つめていた。日本中から羨望のまなざしで見られているトップアイドルが、けっして他の男には見せない顔。瞳は潤んで熱がこもり、吐息は甘い。
藤江は我を忘れていた。だが、今度は先程のように無理やりではなかった。彼女への愛おしさがあふれ、傷つけたくないと思ったのだ。
ず……ぷ、ずずっ……。
ヨーコの中へ、再び男根が入り込んでいく。女の中は高ぶって熱く濡れ、男を喜んで受け入れるかのようだった。
「あ……っ、んんっ、入ってる……っ、おっきくて……硬い……っ」
「ああ、ヨーコ……愛してる……!」
「ずっと、そう言ってほしかった……」
つながった二人は唇を重ね、ぎゅっと強く抱き合った。女の中は先程の強引な挿入をしたときよりもずっと柔らかく、濡れていた。熱く、繋がった場所から蕩けてしまいそうだった。
「はあっ! ぁあっ……ん、っ、いいよ、動いて……」
「うう……っ、くう……! ヨーコ……!」
本当はすぐにでも達してしまいそうだったが、藤江は体に力を込めて耐えた。今度こそ、共に感じあいたい。ヨーコを喜ばせたい。その一心で腰を揺らし、かき回していく。
「はあっ、ぁあっ! さっきと、ぜんぜん……ちがう、藤江くんので、わたしの体が幸せになってる」
ヨーコの体が弓なりに反り、浮き上がりそうな感覚がした。藤江が腰を振り、肉棒が中を擦るたび、マンションの天井を突き抜けて空まで飛んでいきそうな気がした。
「ああ、くう……ヨーコ! もう……!」
「うん、うんっ! わたしも……一緒に、ぁあ……ぁ、あああっ!」
ずぷ、ずく、ずくっ……!
突き上げが力強く、深くなっていく。アイドルの長い脚が男の腰に絡みつく。男の低い息づかいと、女の甘い嬌声が重なっていく。
「く……っ、ぅ……ぁああっ!」
「あぁっ! ぁ、はぁっ! ぁあああああああっ!」
どくんっ! びゅくっ、びゅるるっ! びゅうううううっ!
「はあっ……ぁあ、ぁ……す、ごい……からだじゅう、あったかくなって……っ」
奥に噴き上がる男の喜びを受け止めながら、ヨーコは甘くうわずった声を漏らした。ぴくん、ぴくん、と脚を震わせ、やがてくったりとベッドの上で脱力する。
絶頂に蕩けたその顔は、今までに藤江が見たどんな表情よりも……思い出の中の16才のヨーコより、テレビの中のトップアイドルより、美しかった。
4、迷探偵、慟哭す
それから半年後、メディアは騒然となった。
『沖野ヨーコ、ステージ上でまさかの結婚報告!』
『お相手は一般男性。デビュー前から続く純愛!』
『まさかの授かり婚にファンは阿鼻叫喚!?』
連日のように新聞が、TVが、ネットニュースが沖野ヨーコの結婚報道を伝えていた。
「ウソだぁぁあああ、ヨーコちゃんーーーー!」
ここ、毛利探偵事務所にも悲嘆に暮れるファンが一人。
熱愛報道を耳に入れないようにしても、あらゆるところから聞こえてくるものだから逃げようがない。ついには布団を被って、探偵・毛利小五郎は(いい歳して)何日も唸っていた。
「お父さん! お客さん来てるよ!」
あまりのショックに起き上がれない世帯主の寝床のドアが叩かれる。
「今は無理だと言ってくれ……もう何も考えられない……」
「芸能人が訪ねてきてるんだよ!」
「芸能人!? まさかヨーコちゃん!?」
バァン!
飛び起きた小五郎が、娘を押しのけて事務所のドアを開いた。
そこに立っていたのは……池沢ゆう子だった。
「……なんだ」
「なんだはないでしょ! なくしたイヤリングを探してほしいんだけど!」
「そうよ! ちゃんと仕事して!」
ふらふらと寝床に戻ろうとする小五郎の首根っこを女ふたりがつかまえて、事務所に引きずり出していく。
これはこれで、新たな事件の幕開け……なのかもしれない。
skebでリクエストを受けて執筆しました。
https://skeb.jp/@Isogai_Button/
むかしそんなエピソードあったなぁという記憶を元にあらためて原作にあたったら、驚くほど悲しい事件だったので誤解が解ける展開があってもいいんじゃないかと思い、書かせていただきました。
あと、池沢ゆう子がかなり味わい深いキャラだと思ったので導入とオチに出演いただいています。