格闘ヤンキー娘・源柳斎マキちゃんが敗北したりヤられたり水責めされたりします!
※pixivと同時公開です

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第1話

 ──その女は、明らかにこの町から"浮いて"いた。

 

「ヒューヒュー!」

「姉ちゃんいい太ももしてんなぁ!」

 

 道端に座る、みるからにワルと言う雰囲気の男たちが口笛を吹いて冷やかすのを、その女は完全に無視して歩いていた。

 

 だが──

 

「よーう、ニンジャガール」

 

 女の前を、何人かの──屈強な体格にモヒカン刈りやタトゥーをいれ革製のスーツを着た、いかにもという男たちが立ちふさがる。

 

「……どきな、邪魔だ」

 

「おうおうツレないねぇ、そんな派手ーなオレンジのニンジャみたいな格好なのに」

「へへ、こいつニンジャじゃねぇな。エロいゲイシャだ!」

「あー、そうかもな! こんなデッケェ乳の谷間見せつけてよ!」

 

 男たちの言うとおり、女は──この町にいるには余りにも色彩が強く、そして腕も太モモも丸出しなオレンジ色の服を着ていたのである。

 

「……なんだか知らねぇが、急いでるんだ。どけよ」

「ちょっと待てよ、ゲイシャガール」

 

 男の一人が、女の腰を手で抱き寄せるように掴む。だが──女は己の身体を触られても、全く動じることはなく、男を睨みつけながら低い声でつぶやく。

 

「なに触ってんだよ、てめぇ」

「あ? いいじゃねぇかよ。せっかくだからよ、俺たちと遊んでいかねぇか? この町の流儀ってものをたっぷり教えてやるからよ」

「いらねぇよ。どけ、チンピラ」

「ああっ?」

 

 チンピラ、と呼ばれた男が気色ばむ。

 

「俺たちゃこの辺を仕切るBLACKCATっていうんだが、知らねえのか?」

「知らねえな」

「なんだと? てめぇ……この町のもんじゃねえな? BLACKCATの名前を出してひるまねぇとは! 俺たちの総長は、あのジャック・タ……」

「うるせぇんだよ!」

 

 ガゴッ!

 

 男が口上を言い終わる前に、女が鬱陶しそうに言い──

 

「ぐ、ぐうぅぇ……」

 

 男が前のめりになり、泡を吹きながら倒れていく。女の──膝蹴りが股間を見事に直撃していたのである。

 

「て、てめぇ!」

 

 男の仲間たちが怒りの表情で構え、そして──その中の目のイった男がそこらに落ちていた鉄の棒を拾い、構える。

 

「舐めたマネしてくれるじゃねぇか……ヒヒヒ……」

「先に粉かけてきたのはあんたらだろ?」

「うるせぇ……うるせぇんだよ……」

 

 薬なのか酒なのか、目のイった男が舌をぺろりと出しながら──

 

「俺たちに逆らうもんは皆殺しだぁ!」

 

 鉄の棒を振りかざし──躊躇なく女を殴ろうとするっ!

 

「……!」

 

 女はそれを、片腕を出して守ろうとするが──

 

「バカめぇ! 腕をへし折ってやるぜぇ!」

 

 男が叫びながら鉄の棒を振り下ろす!

 

 ガキィ!

 

「あっ……お、折れたぁ!?」

 

 折れたのは女の腕ではなく──鉄の棒であった。

 

「てゃああああっ!」

「ぐべぁあっ!」

 

 そして目のイった男が──なにかに顎を撃ち抜かれ、吹っ飛んでいく。

 

「な、なんだそりゃ!?」

「知らないのかい?」

 

 女は両手に持った棒をぐるぐると回し、男たちに突きつける。

 

「これはね、トンファーっていうのさ。あたしの……最高の武器さ!」

 

 バキィ!

 ドカァ!

 

 そう言いながら女がトンファーを振り回し──次々と男たちを倒していく。

 

「く、くそっ!」

 

 チャキッ。

 

 最後に残った黒のレザースーツの男がふところから取り出したのは──

 

「……あん? 銃か?」

「あ、あんたがニンジャだかトンファーだか知らんが、こいつにはかなわねえだろ?」

 

 男が両手で銃を構え、マキの頭に照準をあわせる。

 

「……仲間をボコボコにしやがって……殺してやる……殺してやるぞ!」

「そんなもん使うなよ! シャべえな!」

 

 バァン!

 

 男が銃を撃つ。だが──

 

「……い、いねぇ!? ニンジャガールがいねぇぞ!」

 

 その斜線上に女の姿はなく──

 

「はああっ!」

 

 ガン!

 

「ぐ、ぐうぇ……!」

 

 撃たれるコンマ数秒前に空高く飛翔した女が、頭上から男に強烈な蹴りを食らわす。

 

「武神流はな、銃が怖くちゃやってらんねぇんだよ」

 

 そうつぶやいた女の周りには、すでに逆らう男たちは誰一人としていなかった。いや──全員強烈なトンファーや蹴りの一撃を喰らい、伸びていたのである。

 

「たしかにこいつらの言う通りかもしんねぇな。この格好じゃ目立ちすぎる」

 

 女が一番背の小さい男から黒のレザースーツを剥ぎ取り、そしてモソモソとそれを着用する。

 

「……男モンだから、胸のところがちょいとキツいな」

 

 窮屈で閉まらない前チャックを無理矢理諦め、女は辺りを見回す。

 

「しかし物騒だな、この"サウスタウン"ってとこはよ。まるで昔のメトロシティだ。春麗姉さんのことがなけりゃ、こんなところ早くおさらばしてぇところだな」

 

 金色のポニーテールを揺らし、源柳斎マキは──サウスタウンの裏道に消えていった。

 

 

 源柳斎マキは、武神流忍術の達人・ガイの妹弟子である。彼の婚約者・レナの妹でもある彼女は、度々行方をくらますガイを探すため、世界規模の大型格闘大会に参加した。それが──通称「CAPvsSNK」という大会である。

 

 この大会で彼女は、香港で出会ったICPOの刑事・春麗と意気投合し、その世話になっていた。世界を股にかけるのは初めてのマキの移動や宿泊などの面倒を見てくれた春麗に、マキは一宿一飯の義理を感じていた。

 

 そして大会が終わりしばらく経ってから、マキの元にSNSを通じて動画で連絡が入る。それは──春麗が目をかけている少女からの連絡であった。曰く、春麗が行方不明になった。彼女はすでにICPOを辞めており、探してくれる人もいない、と。少女の困惑する姿を見て、春麗に恩義のあるマキは彼女を探すことを引き受けたのである。

 

 それから、1ヶ月が経過していた──

 

「武神流は忍者とはいえ、人探しは専門外なんだがな……」

 

 春麗がいなくなった部屋のパソコンに映っていた文字。それが

 

 "サウスタウン M地区 MUGEN"

 

 という文字であった。マキが辺りを見回し、そして頭を掻く。

 

「たしかにサウスタウンのM地区はここだけどよ、地区っていっても結構広ぇからなあ。土地勘のないあたしには、どうしたらいいのかわかんねぇよ……それに、MUGEN? ムゲンってのはいったい……」

 

 マキが困り果ててボロボロのコンクリートの壁によりかかった、その時だった。

 

「お……おねえさん?」

「あぁ!?」

 

 マキが思わずスゴんだ相手は──

 

「ひっ……ひいっ!?」

「なんだ、ガキかよ」

 

 この街の風景によく馴染む、身なりのよくない──首までかかる金色の髪をした、栄養さえ取れていれば美少年、と言えるであろう10歳くらいの子供であった。

 

「す、すいません……」

「ああ、すまんな。でもよぉ」

 

 マキが済まなそうな顔をする。

 

「あたしもカネはあんまり持ってねぇんだ。ほしいならもっと金持ちをだな」

「ち、ちがうんです……物乞いじゃないんです。お姉さんを探していたんです」

「はぁ?」

 

 プリントアウトしたものを渡されたのか、少年が持っていたボロボロの紙に写っていたのは、先の大会で戦っているマキの姿である。

 

「あー、確かにあたしだなこれ」

「よかった……一週間前から探してたんですよ」

「あたしを? あんたが?」

 

 マキがぶっきらぼうに問うと、少年がその視線に怯えながらおずおずと答える。

 

「僕、ユメっていいます」

「ああ」

「病気のお母さんが家で待っていて、お金がほしいんです。で、仕事を探していたら、この紙を渡されて、ここで待っていたら、この女が来るからって」

「……ふぅん」

「で、待ってたら、ようやく来てくれて……」

 

(怪しいね)

 

 マキが少年を睨めつけながら心の中で思う。あまりにも都合がよすぎる──失踪した春麗、迷ったところに差し伸べられた"ヒント"。

 

(このガキはただのメッセンジャーかもしれないが、なにかある……)

 

「……で、来てくれますか?」

「あ、スマン。聞いてなかった? なんだって?」

「僕の仕事は、あなたをあるところに案内することなんです。それでお金がもらえて……」

「わかったよ」

 

 マキが、寄りかかっていた壁からスッと身を離す。

 

(罠だって、なんも手がかりがねぇよりは100倍マシだからな。ここは一つ、ノってやるとするか)

 

「そこに案内してくれ」

「ありがとうございます……これで、お金がもらえます……」

 

 ペコペコと頭を下げるユメ少年のあとを、マキは──注意深く歩いていった。

 

 

 ブゥン。

 

 マキが席につき、パソコンのスイッチを入れると──モニターに光が灯り、窓のない地下室を青くボウっと照らす。

 

 マキがユメ少年に連れてこられたのは、サウスタウンの裏道の放置されたビルの地下にある部屋だった。深い階段を下り、入ったところは──誰かが拠点としていたのか、照明やベッド、そしてパソコンなど人の住んでいた気配がある、奇妙な部屋であった。

 

「ここに案内しろって言われたのかい?」

「はい、そうです。ここ、僕の家に近いところなので、土地勘があって……」

「誰かが住んでるようだが、どいつかは知らないかい?」

「知らないです……」

「ユメに仕事を依頼したっていうのは、どんなやつだい?」

「ええと、スーツを着て、サングラスにマスクで……」

「なんもわからねぇってことか」

 

 マキが椅子に座り、お行儀悪く机に足をドサッと乗せると、少年はそれを見て──

 

「じゃ、じゃあ……僕はこれで帰ります」

「ああ、母ちゃんが元気になるといいな」

 

 ペコペコと頭を下げて地下室を出ていくユメの背中を見送り、マキがPCの画面を見る。そこには──

 

 "PASSを入力してください"

 

 の文字が映る。

 

「PASSって言われてもなー。忍者はそういうのはあんまり得意じゃ……」

 

 そこまで言って、マキの顔がハッ、となる。

 

「まさか……」

 

 マキがキーボードから一文字ずつ打ち込んでいく。

 

 M.U.G.E.N

 

 すると画面はデスクトップを映し出し、そして──そこには

 

「フォルダが一つだけか、なんだこりゃ? "MUGEN PROJECT"?」

 

 マキがそのフォルダを開くと、たくさんのファイルがそこに並ぶ。そして──その一番上には"readme"というテキストファイルがある。

 

「なんだろな?」

 

 マキがそのテキストファイルを開くと、短く文章が記されている。

 

 "この蛮行を許してはいけない。

  たとえ私がもうICPOでなくても。

  私は、この事件を解決してみせる"

 

「……こりゃ、春麗姉さんのものに違いねぇ……あの変な文字は、このパソコンのパスワードだったってわけか!」

 

 マキが大きな声でそういい、そして他のファイルにポイントを当て──

 

「これを調べりゃ、姉さんの場所がわかるかもしれねぇ……頼むぜ」

 

 そして、願うようにそれをクリックした。

 

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MUGENproject_report_014

 

■ 若年卵子での生産計画について(3)

 

卵子の年齢が若年であればあるほど遺伝子の優良性が高まるという仮説を元に、サンプル若葉ひなた(以後W.H)への遺伝子の注入(自然性交)を実行し、受精を確認。実験生産のため受精卵を早期成熟させ、薬物強化した母体に戻し、三ヶ月妊娠の上で自然出産。

 

<条件>

父 Y(10)

母 若葉ひなた(15)

 

子 男子

 

<遺伝子評価>

戦闘力 C-

知性  D-

生命力 A+

総合  C

 

<総評>

W.Hの若年卵子による生命力の高さという点については仮説通りの結果となった。ただ母体は格闘能力があるのもの、血統や遺伝子的には特筆すべきものがなく、また促成栽培でもあるため戦闘遺伝子は期待に沿わないものとなった。男子はC評価(兵士──ソルジャー──クラス)。

 

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「は、はぁ~!?」

 

 マキが報告書を読んで思わず首を捻る。そこに書いてあることは──彼女には、一つも理解ができないものであった。

 

 いや、理解はできる。だが──

 "常識"がそれを拒むのであった。

 

「若葉ひなた、っていえば、あの大会に出てた女子校生の格闘家だろ? こんな話、本当なわけが……」

 

 と、そこまで思ってマキがハッとする。あの春麗が、こんな気の狂った男の妄想のようなものを見て、強い言葉を残すであろうか?

 

「とりあえず、続きを見てみるか……」

 

 マキが他のファイルを──少しの躊躇とともに、クリックする。

 

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MUGENproject_report_018

 

■ 超能力遺伝子の生産計画について(1)

サイコパワー(サイコキネシス・テレポート等)を持つ母体・麻宮アテナ(以下A.A)の超能力遺伝子を遺伝させるための計画。母体が貴重な能力を持ち再度の入手が困難であることと、若年で初産ということを考慮し、完全催眠のうえ特殊環境に隔離し、Yを相手とする自然受精の上で一年妊娠させ、その後に自然出産。

 

<条件>

父 Y(10)

母 麻宮アテナ(16)

 

子 男子

 

<遺伝子評価>

戦闘力 A+

知性  B+

生命力 A-

総合  A

 

<総評>

A.Hのサイコパワーを完全に遺伝させた男児の生産に成功。戦闘力、生命力ともに高く、成長後は"将軍"クラスの能力が見込める。ただ生産に時間がかかりすぎるのと、この個体については促成栽培では十分に能力を発揮できないため、生産性に劣るという点は否めない。対策としては、この個体を元にしたクローンを生産し、それを即制栽培により"兵隊"クラスを増産することが適していると考えられる。評価A(将軍──ジェネラル──クラス)

 

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MUGENproject_report_023

 

■ オロチ遺伝子の増産計画について(2)

 

以前実験生産に成功した、オロチ遺伝情報の卵子を持つバイス(以下V)を母体とした、強力な格闘遺伝子であるオロチ遺伝子を持った個体の増産について。母体が凶暴なため卵子を摘出の後、Y遺伝子を人工授精させ、冷凍催眠の状態の母体に受精卵を戻す。6ヶ月の妊娠状態の後、分娩による出産。

 

<条件>

父 Y(10)

母 バイス(27)

 

子 男子、女子、女子

 

<遺伝子評価>

戦闘力 A

知性  (計測不可)

生命力 D

総合  (評価不能)

 

<総評>

Vのオロチ遺伝子の遺伝とその増産という点では成功を収めたものの、三体を同時に受精させ出産させた結果か、戦闘遺伝子は高評価だったものの、生命力が非常に弱い。またオロチ遺伝子に準拠すると思われる知性の凶暴さが目立ち、兵士としては使えないものと想定される。評価不能(廃棄想定)

 

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 ガンッ!

 

 マキが机に拳を叩きつける。

 

「……まさか、とは思ったけどよ」

 

 マキの持っているスマホの画面に映っていたのは──

 

 "スーパーアイドル麻宮アテナ 行方不明"

 "ツアー中の控室で姿を消す!"

 "駆け落ちか? 身代金目的の誘拐か"

 

 という、センセーショナルな見出しが並ぶ1年前のネット記事であった。

 

「こりゃ、マジの話だ……バカじゃねぇのか?」

 

 マキは、改めて開いたファイルをしげしげと見つめる。

 

「なんだ"MUGENproject"ってのは? キチガイの妄想じゃねえのか?」

 

 だが──春麗のメッセージ、そして1年前から行方不明になっているという、先の大会でも拳を交えたことのある麻宮アテナの失踪の日付を見ると、このファイルに書いてあるありえないことはすべて本当のこととしか思えなかった。

 

「ん? このファイルだけ日付が新しいな?」

 

 フォルダに記載されている更新記録の中で、もっとも新しいのは本日から1ヶ月前のことである。

 

「胸糞わりぃが、見るしか……」

 

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MUGENproject_report_045

 

■ 高齢卵子での生産実験について(1)

 

母体としては比較的高齢になる春麗(年齢:三十五)の遺伝情報──

 

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 ガッ!

 

 ファイルをそこまで読んで、マキが椅子から立ち上がる。

 

「おい……マジかよおい……ウソだろっ!?」

 

 とてもその先を読み進める気にはなれなかった。あの春麗が、姉貴分と慕っていた女性が──こんな狂った計画に巻き込まれていることを、それは証明していた。

 

「バッカ野郎!! なんだこりゃ! ふざけんなっ!」

 

 バリン!

 

 思わず持っていたトンファーを振るうと、この暗い部屋に僅かな彩りを与えていた白い一輪挿しが粉々に砕け、床に赤い造花がパサリと落ちる。

 

「姉さん……あたしが、絶対助けてみせる……!! まずは"あいつ"だっ! あいつを捕まえて、首根っこ絞り上げて……!」

 

 マキが地下室から出ようと扉に手をかけた時であった。

 

「なにっ……開かねぇ……っ!」

 

 扉がまるで──最初から壁と一体化していたかのように、ビクともしないのだ。

 

「くそっ! どうなってやがるっ! ハアッ! このヤロー!」

 

 バキッ! ドガァッ!

 

 マキがトンファーの一撃をいくら食らわせても、扉は壊れる様子はない。

 

 ザーッ──

 

「なっ!?」

 

 マキの耳に響いたのは──

 

「み……水!?」

 

 マキが上を向いたところにあったのは、地下室の空気穴。そして、そこから流れ込んでくる──大量の水であった。

 

「じょ、冗談じゃねぇ!」

 

 マキがジャンプし、その空気穴を塞ごうとするが──

 

「ぶべっ! くそっ!」

 

 消防車から噴射されている水のように勢いの強いその水は、マキの力ですら止められない。

 

「くそっ……やべぇ!」

 

 あっという間に狭い地下室を水が満たし始める。マキの足首から膝へ、そして胸へとどんどんと水位が増し──パソコンを置いてあった机と、パソコン自体もそこにぷかりと浮かぶ。

 

「畜生……罠だっ! あいつの……くそっ!」

 

 マキが必死にコンクリートの壁をトンファーで殴るが、地下室のコンクリートの壁を砕くには、人間の力では足りない。

 

「がっ……がっあっ……!!」

 

 いよいよマキの身体が浮き、そして──天井まで水位が上がっていく。

 

「い、いや……こんなところで……死ぬ、なんてっ!」

 

 水に沈みたくないともがくマキを水が襲い、そして──完全に水が満たされた部屋の中で、マキは力なくその中に浮遊していた。

 

 

 ──数分後。

 

 ザアッ──

 

 部屋を満たしていた水が、突如として"圧縮"されていく。物理の動きの法則を無視したそれは、部屋中の水が一点に集まっていき、球体となって──そして消滅する。

 

 ガチャリ、と扉を開けて入ってきたのは──ユメ少年であった。

 

「うまくいったね。人間の捕獲はこの手に限る。どんな強者でも、呼吸を断ってしまえば昏倒するんだから」

 

 先ほどまでのおどおどした表情とはまるで別のように──邪悪な表情をしたユメ少年が手のひらから水をポタポタと垂らしながら、ぐったりと倒れたマキの元へ歩む。

 

「フフフ、日本のニンジャガールか。血はそれほどでもなさそうだが、健康な遺伝子を持っていそうだ。繁殖計画の進行に……んっ!?」

 

 ザッ!

 

 ユメが素早くスウェーした顔のわずか1ミリのところを、トンファーの一撃が鋭く通りすぎる。それを放ったのは──

 

「あれぇ? お姉ちゃん、生きてたんだ?」

「ゲホッ、ゲホッ、ガハァ……てめぇ……死ぬかと思ったぞ!」

 

 口から水を吐きながら、マキが怒りの表情で言う。

 

「普通の女だったら間違いなく気絶する時間、水に漬けてたんだけどねぇ」

「あたしは忍者だからな、そういう訓練は積んでるんだよ! それに!」

 

 マキがトンファーをユメの鼻先につきつける。

 

「あたしが都合良く姉さんの部屋にたどり着けたこと! 報告書に書いてあった"Y"とかいうイニシャル! この地下室! すべて怪しすぎるんだよ!」

 

「まあ、そうだろうね」

 

 ユメがニヤリと笑う。

 

「なるべく"母体"を傷つけたくなかったから水責めにしてみたけど、もとからそんなことしなくても……君を捕らえることはできた。ベストではなくベターになっただけだよ」

 

「その母体って言い方、やめろや!」

 

 マキが憤って言う。

 

「春麗姉さんを……いや他の奴らも返してもらうっ!」

 

 ゴオオオッ!

 

 マキの鋭い飛び蹴りがユメの顔を直撃する──その寸前!

 

 ブウン。

 

 突如としてユメの前に、なにかが現れ──

 

 ガツッ!

 

 マキの蹴りを受け止める。

 

「なっ……どっから出てきた!?」

 

「"ティタン1" 源柳斎マキを捕まえろ。なるべく無傷でな」

「わかりました」

 

 黒色の髪である以外は──ユメにそっくりな少年がそう言い、そして両手に紫色のエネルギーを溜めていく。

 

「サイコボール!」

 

「くっ!?」

 

 ティタン1から放たれた球体のエネルギーを、マキがかろうじてかわす。

 

「サイコボール!? 聞いたことあんぞ!?」

 

 マキが──ティタン1を殴りつけようとトンファーを振り回すが、ティタン1はまるで地上を滑るように動き、それをかわしていく。

 

「ふふ、当たらないよ……」

「てめぇ!」

 

 マキの一撃が当たる瞬間──ユメがフッ、と消え、そしてマキの後ろに現れる。

 

「フェニックスアロー!」

「がああっ!」

 

 バキッ!

 ドガァッ!

 

 背中を蹴り飛ばされたマキが、床に叩きつけられる。

 

「まちがいねぇ……こいつ……さっき書いてあった……麻宮アテナの遺伝子の……!」

 

「君は"ママ"の名前を知ってるのかい」

 

「……」

 

 マキの言うとおりで間違いなかった。彼は──狂った計画により産まれた、格闘に優れた女性の遺伝子を持つ──兵士、なのである。

 

「遺伝子だか、なんだか知らねえが……!」

 

 マキが覚悟を決めた目でティタン1を見据える。

 

「お前らは気に入らねえんだよっ!」

 

「サイコボール!」

 

 ティタンが放ったサイコボールを──マキがかわそうともせず突進する。

 

「なにっ!?」

「ぐうっ!」

 

 サイコボールをまともに喰らいながら、マキがティタン1に近づいていく。

 

「捕まえたぜっ!」

「ばかな……サイコボールをまともに喰らいながらっ!? ぐうっ……動けないっ!」

「うりゃああああああああああっ!」

「サイコテレポ……!」

 

 ドガアアアッ!

 

 ティタン1がテレポートする前に、マキの奥義──戯天狗により、ティタン1が床にしこたま頭を打ち付けられる!

 

「ハァ、ハァ……」

「うっ……」

 

 強烈な衝撃を受けたティタン1は、床に大の字になったままピクりと動かない。

 

「あーあ、大事な兵士が減っちゃったよー」

「てめぇ……」

 

 ティタン1が倒れたのにもかかわらず表情一つ変えないユメを、マキが睨みつける。

 

「こいつ……アンタの"子供"だろ? 悲しんでやらないのかよ」

「えー、確かに僕の遺伝子だけどさー」

「いい加減にしろよ……」

 

 マキが、一歩一歩を踏みしめてユメの元へ歩む。

 

「ぜってぇ許さねえ……姉さんの居場所を吐くまで、ぶん殴り続けてやる!」

 

「おやおや怖い怖い。ねえお姉ちゃん、僕がティタン1をやられて、なんで悲しくないと思う?」

「知るか!?」

 

「それはねぇ」

 

 ユメが腕をバッ、と振り上げると──マキの周囲に、12体のティタンと同じ姿をした少年が現れる。

 

「なっ!?」

「僕の子供、いっぱいいすぎてね! 覚えてないんだ!」

 

 "サイコボール"

 

 マキの周囲から同時に襲いかかる12個のサイコボール!

 

 ズガアアッ!

 

「うわっ……うわぁああああああああああああああああっ!!」

 

 マキは、そのすべてを避けられなかった。

 

 ドゴオオオオオオオオッ!!

 

「フフフ、もう立ち上がれないかな……お姉ちゃん?」

 

 倒れ伏したままピクりとも動かないマキを見て、ユメが笑顔を浮かべる。

 

「さて、なかなかいい母体だからねぇ。どうやって遺伝子を仕込もうかな。楽しみだな……フフフ……」

 

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MUGENproject_report_061

 

■ 第二世代兵士の繁殖実験について(1)

 

MUGENプロジェクトにより誕生した"兵士"に繁殖能力があるのか、あった場合どういった遺伝子を持つのかの検証。サンプル遺伝子はA.H遺伝子によって誕生したオリジナル"ティタン1"と、そのクローンである2~13。母体は源柳斎マキ(以下G.M)。実験の第一段階ということを考慮し、動作を封じた母体にティタン1~12による自然性交と膣内射精を行い、母体が妊娠するか、妊娠した場合の受精卵はどうなるかということを検証した。

 

<条件>

父 ティタン1~12のいずれか(1)

母 源柳斎マキ(22)

 

子 不明(受精卵1個)

 

<遺伝子評価>

戦闘力 (計測不可)

知性  (計測不可)

生命力 (計測不可)

総合  (評価不能)

 

<総評>

母体は性交に抵抗したものの、ティタン1~13のいずれかの遺伝子を受精し、妊娠したことを確認済。オリジナルの1か、もしくはクローンの2~13のどの遺伝子を継いでいるかは不明。また、多人数による遺伝子の提供が功を奏したのか、それが混在することによって成果が出たのかということに関しては検証がいる。今後の予定としては10ヶ月後の自然出産の後に特定の個体と性交させ、再び妊娠するかを検証していく。

 

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終




感想・しおり/評価、skebリクエストなどお待ちしておりますー。
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