佐々木千枝さんと橘ありすさんがお仕事でくすぐり限定キャットファイトするお話 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
原作:アイドルマスター
タグ:R-18 アイドルマスターシンデレラガールズ 佐々木千枝 橘ありす
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くすぐり、キャットファイトともに初めてで勉強しながら、くすぐったくなりながら書きました。
番組Pを和久井さん似とした理由は、米内Pより場数で上を行きそうな貫禄と、「キャット」からの思いつきです。
『いえ、アイドルに興味はありませんけど~』の出典はありすのデレステのメモリアルコミュ1です。
「その……折り入って、相談したいことがあるの……」
「アタシに?」
「……オレぁちょっと外してぶらぶらしておいたほうがいいか」
とあるアイドル事務所の中に、女子小学生アイドルばかりを集めて芸能活動をさせている部署・第3芸能課が存在する。
その芸能課の打ち合わせスペースの端で、所属アイドルである的場梨沙と結城晴の2人がお互いに顔を見合わせ、困惑もあらわな視線を投げあった。
「いえ、あのっ……梨沙ちゃんにも晴ちゃんにも……手伝ってもらえたらなぁ、ってことがあって……」
困惑の原因ははっきりしていた。これまた所属アイドルの一員である佐々木千枝から、もじもじと気まずそうに、あやふやな言い方で手伝いを頼みこまれたせいだった。
千枝は、内気だが他人への気配りができて責任感もある、というのが第3芸能課での評判である。初ライブのときのリーダーを務めたこともある。
「千枝ちゃんさっきからどうしたの? 煮えきらない言い方して、珍しい」
「みりあ……も、か?」
「なんだかけっこう人手がいる話のようね」
「いっそリーダー権限で全員に招集かけるか?」
打ち合わせスペースのパーティションの影から、梨沙、晴、千枝の同僚アイドルである赤城みりあがひょっこり顔を出した。
「とりあえず……汗かいちゃってもいい服を用意して、場所はレッスンルームで……事情は、着いたら話すから」
「結局なんなのよ、時間もどのぐらいかかるか……あーもーっ、千枝じゃなかったらこんなの付きあってあげないんだからねっ」
※
千枝が言葉を濁している“手伝い”の発端は、とある深夜番組の1コーナーの案件だった。
『需要は、幼児性愛者のうち、くすぐっている側に自分を重ねるサディストと、くすぐられてる側に重ねるマゾヒストにあります』
『……方向性の理解はできますが、生々しいというか、ドギツいというか』
『モニターとスピーカーごしですから、ちょっぴりドギツくしてようやく変態どもの琴線に届くのです』
『……あなたの物言いまでドギツくしてくださらずとも』
『言葉は意志疎通の基本ですから』
第3芸能課を担当して「U149P」とも呼ばれる、成人男性にしては童顔で小柄なプロデューサーが、心中でぼやく。
(このプロデューサーさん、和久井留美さんにちょっと似てるな……見た目もだけど、クールそうで仕事となると押しが強いところとか)
彼は、事務所の応接スペースの向かい側に座る深夜番組のプロデューサーに半ば気圧され半ば呆れていた。
『もう少し柔らかい言い方なら……あなたのところの子たちに、真剣でありながら和気あいあいの感じも出しつつ……という』
言葉に耳を傾けつつ、彼女の姿を改めて観察する。毛先をほんの少しだけ遊ばせたショートカットに、涼し気な目鼻立ち。コーディネートは芸能界基準で見るとややかっちりしたスーツとタイトスカート。プロデューサーというより秘書のようだった。アイドルになった和久井留美より少しだけ野暮ったい印象だった。
『……ゲームやレクリエーションの企画のように言ってくださいますけど……その』
『キャットファイトです』
お色気路線において定評のある深夜バラエティ番組を切り盛りする、“和久井留美にちょっと似てる”プロデューサーから、第3芸能課の佐々木千枝、橘ありすにキャットファイト――ただし攻撃はくすぐりのみ――への出演はどうか、とU149Pが持ちかけられていた。
『前もって、どぎつく聞こえるかもしれない言い方をしておきませんと……あとから、こんなはずではなかった、と言われるのが、最悪に近い』
『そのキャットファイトのこれまでの放映、拝見しておりますが……』
『参考になりましたか? いちおううかがっておきますが』
彼としてはお手柔らかにお断りしたかったが、そう簡単にできない状況であった。
『うちの子の……ローティーン以下、これまでに出していませんよね』
『ええ、しょうじきに申し上げればマンネリ防止の変化球ですね、チェンジアップやドロップショットのようなもので』
U149Pは、和久井似プロデューサーの声音――(芸能界全体というスケールで見たら、小学生アイドルの寄せ集めというコンセプトのほうがよほどニッチではありませんか?)――と暗に言われた気がしたが黙って飲みこんだ。
第3芸能課は、U149Pの勤務するアイドル事務所の会長による鶴の一声、つまり思いつきによって創設された部署である。所属アイドルが(現時点で)すべて女子小学生である。
この時点で異色である――所属アイドルやU149Pにとって残念ながら――思いつきが独創的・画期的というより、思いついた人間が具体化を諦めがちなために類例が乏しいのである。
『あのコーナーは、おっしゃるとおりふだんならもっとストレートにセクシー路線ではあります。以前はアンタが出ろ、と言われたこともありますよ』
『じょ、冗談ですか?』
そのプロデューサーが和久井留美に顔もスタイルも雰囲気もどことなく似ているせいで、U149Pは半信半疑そのままを口から漏らしていた。
『どうだか……あなたも、ちゅ……高校生役が足りなくなったとき頼まれたことありませんか』
『いま中学生ってわざと言いかけませんでした?』
『ふふふ』
アイドルを含む女性芸能人の需要は、二次性徴が進む15歳ごろから高まる。
14歳以下は、需要の絶対量が少ない。例えばドラマ一つとっても、“学園モノ”といえば通例は高校生たちが主人公である。小学生や中学生となると需要のほとんどが子供向けの教育ドラマか、社会派の看板を掲げる“問題作”路線となる。ジャンルからしてマイナーとなってしまっている。
さらに子どもの芸能人は、パフォーマンスの専門性よりも、顔と名前で売る商品である。例えばドラマ主演の子役なら歌が苦手でも主題歌を歌わせてしまうなど、一人を多くの案件で使い回す。これも業界全体で子ども芸能人の需要が少ない一因となっている。
わざわざ事務所から買わず制作側で抱える場合もある。読者モデルなど、事務所を通さず出版社が直にスカウトして囲いこんだ例である。佐久間まゆや乙倉悠貴のように、読者モデルで現場慣れしてから本格的に芸能活動に、というルートすら定着している。
『まぁ……この業界、どこもそれなりの苦労はされているのでは? 私だけでなく、それこそあなたのところも』
『こちらは冗談にできないのが……前任プロデューサーと連絡がとれないとか』
パイの少なさ以外の面でも、芸能事務所にとって子どもの芸能人は扱いが難しい。いくら専門性が不問といっても、現場に出せるのは最低限のスキルや業界の“お約束”を飲みこませてからだが、飲みこませる前にコストを回収できるかどうか見極めるのは困難だ。事務所が採りうる方向性は2つ。売れるかどうかわからないうちから素質を青田買いしてレッスンやマネジメントのコストを事務所が負担する。あるいは“候補生”としてとにかく数を集めてコストの一部か全部を候補生の保護者から徴収する塾のようなシステムとする。これら2つの方向性を1つの事務所内にコースで分けるなどして併設している場合が多い。
現下の話題の一人であるありすがかつて候補生の一例だった。アイドルとしてスカウトされたとき――『いえ、アイドルに興味はありませんけど……レッスンは、ちょっと興味があります。実は私、将来、歌や音楽をお仕事にしたいと思っているんです。でも……どうやったらなれるのかわかりませんし、家でも学校でも、練習できる場所はないですし……』――と、今後のための下積みというスタンスだった。
『それは笑えませんね、こちらも他人ごとではありませんので』
『……芸能やらマスコミやらは、右を向いても左を向いても、働き方改革って何ですか? って世界ですからね』
その千枝、ありすであれば比較的“しっかり”しているが、多くの子どものタレントは現場に保護者が随伴せざるを得ない。例え急な穴埋めのために入ってくるエキストラの現場であっても。そのぶん母親が仕事も家事もできなくなり、家庭に負担がかかる。家族の理解が必要な点は多くの習い事と似ている。
そうして活動を続けても、子どもが売れないままで、事務所が『お金と手間暇はかかりましたが、夢は見れたし思い出も作れたでしょう?』と言外に含んで諦めさせるのがほとんどである。
幸運にも子どもが売れると、事務所にまた別の悩みのタネが出てくる。
『どんなお題目があれ、供給過多ですから……ここであなたとグチを言い合うのも悪くはありませんが、案件の話に戻っても?』
繰り返しとなるが、子どもの芸能人は限られたパイを少数の勝者が分けあう構造となっている。さらに芸能界全体と同様に供給過多である。
子ども芸能人のプロデュース主体で部門、あるいは事務所単位での採算を取ろうとすると、まず1人どうにか少数の勝ち組をプロデュースしてからがようやくスタート地点である。その勝ち組を、芸能塾の“生徒”集めの広告塔として、あるいはバーターでほかの人材をねじこむ材料としてフル活用する。
勝ち組の当人や家族からすれば当然不満がたまる。負担をかけさせられてやっと売れたと思うにつれて事務所からいいように使われていると感じる。驚くほど簡単に事務所を移籍する、しないといった深刻なトラブルとなる。トラブルとなっても、大人の芸能人であれば自分の生活やキャリアを考慮し、そこそこの待遇改善でほぼ手打ちとなる。対して親が子のためとなるとそうそう引っ込みがつかない(子どもの仕事に影響が出るぐらいで生活に支障が出る家庭ならば、そもそも成功するまでの負担に耐えられない。支障が出てしまうケースは、得てして親が子どもの稼ぎを“横領”して生活水準を不釣り合いに上げてしまっているのが常で、こちらはもっと抜き差しならない)。
『……佐々木、橘……に限らず、うちの子でできるか不安がありますね、しょうじき』
『あなたもご承知でしょうが、女の子という生き物はみんな演技派ですよ。少なくとも、芸能界の内側なら』
『しかし、くすぐりで、キャットファイトなのでしょう? 白黒ついちゃうのも……勝者が宣伝で目立てる、というのはお約束でしょうが』
『トラブルというなら……キャットファイトの中でうっかり爪で引っかいちゃって肌に傷がついちゃったとかなんとかが多いですね。“猫”と取っ組み合いしているのだから引っかかれて当たり前でしょうに……と、こちらとしては言いたくなりますが』
U149Pとしても、そうしたトラブルのリスクを重く見ている。なるべく所属アイドル間の待遇差を少なくするよう神経を使っている。全員の同時デビュー計画にこだわったことがその最たる例である。そのこだわりに周囲が最終的に折れたのも、そのリスクが暗黙裡に承知されていたことが遠因だった。
『こちらにも考えがあります。年少者用の特別ルールを設ける、として……例えば、時間によって攻撃・守備を交代するとか、素手より安全な道具を使わせるとか。くすぐりですから、やりようはあります』
U149Pは、渋面を――(オレがこんなにうじうじしているのだから、さっさと諦めてくれ……)――隠すのに精一杯で、ごにょごにょと言葉にならない声だけを漏らした。
番組の知名度は、第3芸能課の市場価値からするとなかなかのものだった。断るのは惜しかった。しかし“くすぐりキャットファイト”はなかなか体面が悪い――(もっとどうしようもなくゲスくてあっさりお断りできる案件だったら簡単な話なのに……)――それでも彼は断る方向に傾いていた。事務所の上役の意向を――(目先の数字を追うより、彼女らが数年後に「子ども」でなくなったときの布石として、スキルの基礎固めやコネづくりをやってくれ)――どうやって和久井似の女性プロデューサーにカドを立てず伝えようか、考え始める。
『首を縦に振っていただく前で恐縮なんですが、もし橘さんや佐々木さんがおられるなら、少しごあいさつさせてもらっても?』
『ええと……』
きわめて断りにくい提案だった。
そもそも和久井似の女性プロデューサーが事務所まで赴いている――(『所要で近くを通るので、ついでですから』って言ってたけど……“所要”にも“近く”にも、いろいろ程度があるからな……)――ので、あちらが立ち去ってくれない限り終わらない。
さらに、彼女がほかの案件への影響力を持っていることをどうしても考えてしまう。
芸能界におけるプロデューサーは、どこの組織に属していようフリーだろうと、ヒト、カネ、案件をマッチングさせる力量が勝負となる。彼女がほかのプロデューサーとヒト、カネ、案件を融通し合って貸し借りを作って立場を築いてきた。それは若輩だが同類ではあるU149Pに嫌と言うほどわかる。
『彼女らと話すとき、一つ、お願いしたいことがあります』
『なんなりと』
『オ……私が、技術的に難しいんじゃないかなぁって言ったこと、伏せておいていただけると……それを知ったらあの子ら意地になって……私ならできますっ! とか言い出すに決まってるので』
U149Pは弱みをさらす体でせいいっぱい釘を刺した。
『ふふふ、いいですね、若いって』
和久井似の女性プロデューサーは、U149Pのスキをついてありす、千枝を――特にありすは、和久井似の女性プロデューサーにU149Pが鼻の下を伸ばして仕事を忘れないか気にしていた逆を突いてあっさりと――丸めこんだ。
『借りが一つできてしまいましたねぇ』
『……借りっていうか、押し買いっていうか』
『まぁ、詐欺師のように見えてしまったかしら』
こうしてありす、千枝の出演が決まった。
※
番組の放映時間は深夜であるが、キャットファイトを繰り広げる2人が深夜労働禁止の年齢であるため、コーナーの収録は昼間にセッティングされた。
『……本当にありすちゃんと、くすぐり合いをするんですね』
『ビキニという趣向もうまく乗せられた感じがしますが……ズレたらたいへんですよ、色んな意味で』
『出てしまったら負けと聞いていますが……ふふ、お相撲さんじゃあるまいし』
橘ありすからすると、佐々木千枝の“お相撲さんじゃあるまいし”は、かろうじて状況を笑い飛ばそうとする強がりに聞こえた。ルールはあっても筋書きなし。どちらが勝つかは、対戦する2人も、それ以外の誰にもわからない。勝った側が近日にリリースする新曲の宣伝で目立てる、という見返りはある。ただ、観客や視聴者がそれをどこまで気にしてくれるか――(まぁ、お遊びじゃありませんよ、って演出というのが実際でしょうね……)――ともあれ、それと出演のギャラが別に発生している。
撮れ高を真剣に稼がなければならない。
『……千枝さんにこんなことさせるなんて、悪趣味ですよ。女の子が恥ずかしがってるところを面白がるなんて、クラスの男子ですか』
『ありすちゃん、そういうの慣れてるんですか』
『クラスの男子からは、ですけどっ』
プロレスリングを模した舞台に上がり、観客やカメラの前でプロレスじみたマイクパフォーマンスの合間に、こっそりとぼやきあう。
そのぼやきを、レフェリーを兼ねる進行役によるルール説明の声がかき消してくれる。
勝利条件は相手をギブアップさせること。
時間は無制限であること。
攻撃は相手をくすぐることのみであること。
――今回はいつもの“くすぐりキャットファイト!”と違って、対戦カードが年少者どうしということで特別ルールを適用します。
ボクシングのように一定時間でラウンドを分け、ラウンドごとに攻撃側・守備側を交代すること。くすぐり攻撃は、自分が攻撃側の時間のみ可能――(私が攻めてるときと千枝さんが攻めてるときと、両方の画が必要ですもんね)――ここまでは、あらかじめありす、千枝に知らされていた。
攻撃・守備の交代が一定回数を超えてからは、番組側が用意したくすぐり道具を提示し、2人はそこから選んで使用可能とすること――(何が出てくるか知らされていないのは不安ですが……まぁ、手でくすぐっているだけでは画的に地味だから、でしょうね)――どんな道具が出てくるかは知らされていなかった。
『では行きますよ……っ!』
『っ……っっうぅー……ぅ……!』
くじ引きで先攻を引いたありすが、胸元で腕をクロスさせて構える千枝に対し、その下の脇腹をさらりと撫でる。キャットファイトがお世辞にも似合わない――(似合わない子にむりやり取っ組み合いやらせる需要ってなんですかねぇ……もう……っ……)――千枝を相手として、ありすは自分が盛り上げなければと意気込み、積極的に仕掛ける。
ありすも千枝も、まだ二次性徴が始まりかけといったスタイルである。背丈も肩幅も手足も胸から腰にかけてのラインも、肉付きが細く骨が張って、子どもに近い。ダンスなどのレッスンを通して体力づくりをしているものの、格闘など演技ですら未経験である。端から見れば、キャットファイトというよりじゃれあっているに近いようすだった。
『あっ……ん、うぅ……やぁっ……』
『ふふ、おしとやかさが裏目に出てます……? そんな調子じゃ、千枝さんの攻めの番が回る前に終わっちゃいそうですねぇ』
『む、くっ……あとで覚えておくことですね……!』
その体と不釣り合いな千枝の艶っぽい声が響くと、観客が驚きとともに歓声を上げる。レフェリーがその波を煽り、ありすも挑発を投げつけて撮れ高を稼ぐ。
『えいっ、えいっ……ふぅーっ』
『はふぁあっ!? ちょ、手っ手じゃない、手以外ってありなんですか!?』
『ああ、たまたま息がかかっちゃっただけですよ……? 敏感、なんですね』
守備側の千枝も手によるガードは認められている。手でのくすぐりを防がれたありすは、くちびるを軽くすぼめて、千枝の首筋や耳元にひゅうひゅうと吐息を浴びせくすぐったがらせる。千枝の抗議に対して、ぴゅうぴゅう口笛を吹いて挑発を重ねる。キャットファイトのつかみが上々、とほくそ笑む――(プロレスのヒール役みたいになっちゃってますけど……ちょっと、楽しいかも……)――千枝に抱きついたままロープ際へ強引に追い詰める。ここまで距離を詰められてしまえば、千枝の手でのガードがはかどらない。かといって手で払うぐらいならばともかく、同僚アイドルにヒジ打ちやヒザ蹴りをやるなど千枝は考えることすらできず、またそこまでの抵抗を番組から求められていない。
千枝がくすぐられるままになってしまう。
『はひっ、あ、あはっ……へぅっ、あううっ、うぅぅんっ……!』
観客に届いているのは、千枝の声や表情、手足の震え――それだけでも観客を盛り上げるのにじゅうぶんだったが――ありすは千枝の汗ばみ始めた肌や体温、匂いまでも至近距離で浴びて――(なんだかこっちまで、変な気分に……)――言いようのない危機感に襲われ、千枝に振りほどかれた体裁で距離を取る。
『ん、ぅ、あっ……は、あっ……ありす、ちゃん……』
――のっけから意外と熱い……おっと失礼、期待以上に熱い展開で、会場も大盛りあがりですね! クールなキャラの橘さんが一気に攻めて、おしとやかな佐々木さんが早くもメロメロかぁ~!?
レフェリーが実況のように声を張り上げて間を埋め、ゴングが鳴ってありす攻撃のラウンドが終了した。
インターバルが入る。セコンド役のスタッフから『順調な滑り出しですね』とささやかれるが、ありすは反対コーナーの千枝を見ながら一抹の不安――(千枝さん、あんなようすで攻めなんてできるんでしょうか……)――を心中によぎらせた。
――最初から恥ずかしい声を上げさせられてしまった佐々木千枝ちゃんですが、このままでは終われません、では第2ラウンド、スタートっ!
ありすの不安は半分的中した。
『へひゅっ!? く、ふ、んっ……』
『あ、ありすちゃん……っ!?』
ありすの予想通り、千枝がありすの反応に尻込みして、攻勢を鈍らせてしまう。
『こ、こんなの大したことありませんっ……もっと本気でかかってきたらどうですかっ』
『本気って……えぇと……』
もう半分はありすの予想外だった。
自分が前ラウンドの千枝のように場を盛り上がるリアクションができないでいることだった――(実際にされてみると、思ったよりくすぐったいし、恥ずかしい……!)――千枝のように笑い声をあげたり身もだえさせられると、くすぐる側だったときの勢いや思い切りがしぼんでしまう。そこに千枝の小ぢんまりとした攻めが効いて、そわそわ神経をかき乱される。くすぐったくさせられるだけならともかく、どうも千枝と比べてぎこちない反応になってしまう。ありすとしては観客を冷めさせていないか気になってしまう。つられて千枝も尻込みして探り探りになってしまう。
『え、えいっ、この……こしょっ、こしょっ!』
『口で言っても……たっ確かに、ちょっと気分だけくすぐったくなりますけど!』
千枝のぎこちない攻めが、当初こそ新鮮に受け止められていた。ただゴングが鳴ってありすにもう一度攻撃側、さらに千枝にももう一度攻撃側が回るころには、キャットファイトの雰囲気がありすの危惧どおり停滞しかけていた。
三度目の攻撃を前にしたインターバルで、ありすは『観客が変化を求めている、もう道具を出そうか?』とセコンド役のスタッフに問われる。『もう1ラウンドだけ、手で……もっと攻めておきます』と答える。
『……最初だけは、同じ事務所のよしみで可愛らしく笑わせてあげましたけど……もうお客さんとかカメラとか気にしてられないぐらい、たっぷり笑わせてあげますからねっ』
参考として見ておいたくすぐりキャットファイトの過去映像を思い出し、ありすはギクシャクしながらも千枝をマット上に固める。細い腕と肩を開かせ、無防備になった腋の下に指先を迫らせる。
『ひゃあんっ、くひっ……くぅっふぅふふふふふふっ……!! ありすちゃっ、くすぐったいぃひひひひぃっ……!!』
『無理してしゃべると、舌を噛んじゃいますよ!』
ありすの動きが、前ラウンドの千枝と同じぐらい探り探りになった。一見、ただ人差し指一本でくぼみをなぞっているにとどまる。しかし千枝の敏感なところにその微妙な加減がちょうどよいらしく、鮮明で煽情的な反応を引き出す。観客のテンションが波打ちながらじわじわと熱狂を取り戻す。そのさまに後押しされ、ありすの指先が突き動かされる。
するすると滑らせているだけなのに、新雪をさくさく踏み分けているような軽やかな気分をありすが味わう。同時に千枝のどくん、どくんという鼓動を感じる。ありす自身の拍動と、千枝の腋窩から伝わるそれが重なってしまう気がする。指先で自由にもてあそべる軽い心地よさと、勝手に早くなる鼓動が交わってありすを惑わせる。
『んふっ、ふひゅふふふふふふっ……!! んくっ、くぅ〜……ひゃふっ!』
『がまんしきれますか、私のくすぐりに……』
くすぐったさに耐えかねて、千枝の肩や背中がびくびくとよじれる。ふくらみかけの乳房がビキニで寄せてあげられて、ぷるぷるとささやかに揺れる。千枝の反応で攻めているありすまでくすぐったくなる。ありすの心中で不安がちらりときざす。このまま追い詰めて千枝を降参させるわけにはいかない――(早すぎます……もっと撮れ高を稼がなきゃ、もったいない……でも……)――これと同レベルの攻めを自分が耐えられるだろうか――(いや、まだ道具も出てない……出さずに終わらせるわけにも……)――もはや言葉をなさない甲高い悲鳴を撒き散らしながら、千枝がマットの上でバタバタともがく。体躯がほとんど互角なありすが、ついに振りほどかれる。
『いっ……けっこう本気で抵抗してくれましたね……余裕、なくなっちゃってます?』
『ふ、ぁ……は、ぁはっ……あ……』
『でも、まだゴングは鳴ってません……まだ攻めさせてもらいますよっ』
千枝を再び押し倒し、彼女の足首をつかむ。両足と内ももの間に、ありすの足裏を割り込ませる。
『は、ひやっ……んっ、ふぁぁっ……そ、そこっ……んっ、んくっ……!』
ビキニボトムごしに、足裏で千枝の秘所をぐりぐりと刺激する。これも過去映像を思い出しての見様見真似だった。
ありすにとっても千枝にとっても人生で初めての電気あんまだった。
『んっ、うっ、あ、あっ……! あぁっ、はぁぁぁぁ……!』
『もう笑うこともできませんか……それ、それっ!』
ありすはなるべく土踏まずを使って刺激するよう心がけていた。そうすれば千枝のデリケートゾーンを傷つけにくいだろう、と不慣れなりに配慮した。もしその配慮がなかったら、千枝が痛みを感じてくすぐったさや羞恥がかき消えていたかもしれなかった。
『んっ、うっ、あぁぁっ……あそこ……あひゃっ、あ、ははっ、へぅ……っ!』
千枝の笑い声が、本当にくすぐったさから出ているのか、嬌声をごまかすためなのか、ありすにはどちらともとれてしまう。こんな不特定多数の視線にさらされながら、悪ふざけのような刺激で性感を催させられる。想像だけでも羞恥で消え入りたくなる。なのに自分もすぐあとにそんな目に遭わされるのか、と意識してしまう。そうしながら電気あんまの振動を繰り出す。震えているのか震わされているのかあいまいになる。
ゴングが鳴った。
『ふ、ぁ……は、ぁはっ……電気あんまって、やるほうも、けっこうたいへんですね……』
息も絶え絶えのままな千枝は、ありすの挑発よりセコンドからの耳打ちに視線も意識も向けているようだった。そのままコクリ、と何かうなずくと、レフェリーが道具の使用解禁を宣言した。
『え、ちょ……いまからですか? 私が道具使えるラウンドが少ないのでは……』
電気あんまのほうがハードな刺激だろう、という計算通りのツッコミがレフェリーから来たが、ありすはすぐそれどころではなくなった。
千枝はまるで自分がいままさにくすぐられているような引きつり気味の笑みを浮かべながら、白くふわふわとしたハンディモップを手渡され握りしめていた――『あの、道具って何を使うか選べるんですか……?』『ありすちゃんにも同じぐらい効きそうな道具を渡すよ、なんたって勝負だし』――ゴングが鳴る。
『ここまで、なんだか千枝さんがベビーフェイスっぽい雰囲気でしたけど……プロレスだったら、道具を使うのはヒール側というのがお約束ですよね』
『千枝……やられてばかりじゃ、いられませんからっ……』
ありすはハンディモップのふわふわを見ながら、指先でくすぐられるよりむしろしのぎやすい、と見込んだ。静電気のせいか白くもこもこと広がっていて、画で見れば指先でくすぐるより派手だろう。ただし指先ほど細かい刺激はできないはずで、刺激そのものも生易しそうだった。
『はひゃあひぃ……っ!?』
『ありすちゃん、これに弱いんですか……? それとも……』
すぐに見込みを覆された。
『ひ、ぅ、ぁ……ふぇ、ぁ、あふぁ……っく、んんんっ……!』
千枝がハンディモップを、脇腹や首筋などへ向けてさらさら掃くように動かしてくる。ふわふわとした刺激が広範囲にわたって、ありすの細い腕と手でガードし切れない。そのすきにモップなしの残りの千枝の素手に迫られる。腋窩やへそなどを指先でかりかりとくすぐられたり、こしょこしょとなぞられたりする。くすぐったさをこらえきれずマットに転がってもがき苦しむ。
『逃がしませんからね……!』
千枝に馬乗りになってのしかかられ、さらにハンディモップで追い打ち。ビキニボトムの布地が股の付け根をきゅっと締めつけて、刺激された割れ目がくちゅりと湿った気配を漏らす。まさか感じてなんか、とありすは自分の肉体を疑う。
それを知ってか知らでか、こんどは千枝がありすの手足にハンディモップを這わせる。足裏、膝頭、内ももをつんつんと突いたり、うりうりと押しつけてきたりする。細く硬いプラスチックの持ち手も活用して、ありすを刺激に慣れさせない。
ここまで押されていた千枝が反撃に転じ、観客から歓声が上がる。それが自分の痴態に気づいたせいかと、ありすは妄想してしまう――(そんな、わけ……!?)――首を振って否定する。
『あひっ、ひっ、んきゅ……ぁはあっ……やぁっ、やめ……あぁっ……!』
『止めてと言われても止めません、お仕事ですから……ねっ』
くすぐったさのあまり首を振らされてしまう。逃れようと手足を振り回す。ビキニがズレて胸がこぼれそうになり、怒号にも似た歓声。レフェリーストップが入る。
千枝が握りしめたハンディモップが、2人の汗を吸ってじっとりしぼみかけていた。
『ふ、ぅ、あ……いきなり威勢がよくなって、びっくりしちゃっただけです……ギブアップ? しませんっ、次は私のほうが千枝さんにわからせますっ』
ありすには、ゴングが鳴ってインターバルをもらえるまでが永遠のように感じられた。
『……ぁ、は、ぁっ……わらひ、には……なに、使わせて、もらえるんです……?』
汗だくになったありすの手のひらに、セコンドが何かを押し付けた。何かチクチクと細かい突起が大量に、しかし奇妙な弾力も持ち合わせている。それでいて、どこかで触った記憶がある、と確信できる感触。
『ヘアブラシ、ですか……ふ、ふふっ、これは、これは』
ありすは自分の武器の破壊力を、皮膚で理解した。
またゴングが鳴った。
『ひ……ぃっ、くふっ、んふふふふっ、あはっ、ああああーっはっはふぁはぁはっ!! ひ、いやぁーっ!』
ヘアブラシのくすぐりは、ハンディモップよりも集中的で暴力的だった。しゃかしゃかと千枝の肌を掃いてやれば、千枝がガードにつかっている腕でさえもくすぐったく、千枝が顔をくしゃくしゃに歪めてもだえ苦しむ。その声量の大きさ、ジタバタする抵抗の激しさにありすは驚きつつ、ここが勝負どころとヘアブラシの柄を握り直す。
『ひふ、ぃ、んん……っひぃひひひひひひぃっ!! そこっ、さわら、な、あ……くひゃあぁぁ〜っははあぁはぁははははっ!! やめっ、へひっ、ひいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
ありすは千枝のヒザ下をのしかかって押さえつけ、ビキニトップとボトムのあいだでびくびく震える腹にヘアブラシを迫らせる。千枝の両手の抵抗を自分の手で払い除け、肋骨が浮き沈みする脇腹に矛先を向ける。
『ふひゅ、そ、そぇ、だめ、だ、めぇ……も、もう……んぎゅうっ!』
『ンああぁああ……っ!? くっ……もうなりふりかまってられないってわけですね……!』
ヘアブラシでしゃかしゃかと無造作に脇腹を掃かれるだけで、千枝が鳥肌の立つほどもだえ苦しむ。いっぽうでありすも千枝の抵抗を抑えこもうとして、千枝の太ももでビキニボトムごしに股間をぐりぐりされて、いよいよキャットファイトの攻防が白熱する。
『ぜぇっは、ひ、はっ……あっ、あっ、はひっ、はっ……!』
『ふ、ふっ……気乗りしなさそうだった割に、粘りますね……』
『ぁ、ありすちゃん、こそ……!』
最初のゴングが鳴る前が嘘のように、ありすも千枝も本気でくすぐり、抵抗し、早く相手をギブアップさせようとくんずほぐれつを続ける。
ありすが必死になってヘアブラシで千枝を追い詰めようとするも、ゴングが鳴りあえなく千枝からレフェリーによって引き剥がされる。
インターバルが始まると、観客たちが緊張から解き放たれたような大きなため息をついて、隣どうしでざわざわと何かをしゃべっていた。興奮を通り越して、勝負の行く末を固唾をのんで見守っていたことにようやく気づいた。
『ぜぇ、へ、ふへ……え、へへ、へ……やっとありすちゃんを、くすぐってあげられます……ね……えっ?』
ありすから見た反対側のコーナーで、千枝が場を盛り上げるセリフをどうにかひねり出そうとして、その語尾が唐突に疑問形へ変わった。
『なっなんですか千枝さん……何を使おうっていうんですか!?』
『え、ええと、この……これ……です、か……えぇと』
千枝が次のラウンドの攻撃に使える道具を提示されたらしいが、それは千枝とセコンドにしか見えないよう隠されている。会場が期待混じりの困惑でふくらむ――(もったいぶった演出ですね……っ)――ありすは内心の戦々恐々を押し隠しながらゴングを待った。
『ええと、それは……?』
『……氷、です。ヒヤッとしますよ』
『は?』
千枝がリングに持ち込んできたのは、プラスチック製らしき料理バットと、その中に山積みとなった氷の粒だった――『ナインハーフ』は、ありすちゃんや千枝ちゃんのお父さんお母さんよりもちょっと年代が上かな……さて意外な道具に勝負はどう転がるか?――実況の煽り文句は聞き流すしかなかった。
千枝がその一粒をつまんで迫ってくるのを、ありすは――(コップの飲み物を冷やすには、ちょっと粒が大きいかも)――半ば現実逃避しながら見守った。
『んひぃっ!? ふひっ、あ゛ぁっひっ……!』
『きゃっ……あ、ありすちゃんだいじょうぶ……?』
『やってる側が言うことですかっ……!?』
千枝が滑りやすい氷をつまんで、取り落とさずに気をつけてありすに触れさせようとしている。動きが緩慢で、ありすからすれば、避けようと思えば避けられる――(だけど避けたらギャグみたいな画になっちゃうじゃないですか……)――受けて立たざるを得ない。
『はぁ、はぁ……あああ……ひぃ、ふ、ひぅぅひっ……!』
『ありすちゃん……覚悟してね……?』
鎖骨に氷粒を触れさせられると、ありすの口から震えながらの悲鳴が吹きこぼれる。ハンディモップやブラシと違い、来ることが数呼吸前にはわかっている。
『ふ、ぅ、は……くっ……へひゅっ!? く、んひぃっ、やぁ、あァ……!?』
それでもありすが声を抑えがたいほど、その刺激は冷たく固く鋭く鮮烈である。氷の冷たさとくすぐったさの入り混じった感覚に翻弄される。氷粒が溶けて滴がありすの胸元やへそ、太ももをいくつも滑り落ちていく。そのたびにありすは肌を震わせ、腰をよじらせる。手足をばたつかせるとビキニがずれる。千枝が狼狽し、観客もサーカスのアクロバットを冷や冷やしながら見ているような興奮混じりのため息をもらす。
『きゃっ!? ひやぁっふあっ――ど、どこに、ちょっ――』
『あ、ごめんね、ありすちゃん……いま、取るから……ええと……』
『んきゅっ、ふ……!?』
そのうち、氷の一粒がつるりと滑って、ありすの素肌とビキニのあいだに入り込んでしまった。いきなりデリケートなところを刺激され、しかも氷粒を取り除こうとしてか千枝の手までがそこにもぞもぞと入り込んできて、ありすは内心まですっかり動揺する。
『ん、くっ……ふふっ……!! はぁ、や、めっ……!! んくくっ……!!』
『ありすちゃん……』
千枝の指先が、最初の攻撃ラウンドと別人のようにありすを巧みにかき乱す。
――どうやらここが勝負どころです! 千枝ちゃんが攻め抜くか、ありすちゃんが耐え抜くか?
レフェリーの煽りは2人への合図も兼ねている。すなわち――(撮れ高がじゅうぶんになったからもう勝負をつけていい……ちょっ、いま、いまからですかっ!?)――千枝が本気になっても良い、と言われたことを意味する。
『ふ、うぅ……!! そんな、だめ、さ、さわらな……っ……ひ、いゃ……!!』
『ごめんね……私も、もうきっと限界で、次がないから……こしょ、こしょこしょ……』
『く、うぅ、んひぃあぁぁっ……!!』
ありすの乳房を、千枝が手のひらで包み込むようにうっすらと皮膚どうしをこすりあわせる。汗と溶けた氷と、ありすが垂らしてしまった涙やよだれが入り混じって、ぬちゃぬちゃとセックスのような水音が立つ。ありすの腰がはっきりがくがくと震える。
『ひ、くくっ……!! ん、ひぃ……!! はぁ、ああっ……!! や、め……っ、ほぉうっ……んんっ、くぅっ、ん、ふゅふっ……!!』
千枝やありすの年ごろは、生理的に肌や粘膜が過敏になっていることがある。成人女性ならじゃれ合いで済むぐらいの刺激でも、痛みにも劣らぬほど苦しいくすぐったさに襲われる。
『ひっ、くくっ……!! そ、こはっ……!! はぁ、はぁ……っ、やめっ……!! ひ、はははっ……!!』
『ここが弱いんだね……? それにしても……ありすちゃん、なんだかすごくかわいい……♥』
千枝がついにありすのデリケートゾーンにまで指を伸ばす。ありすはとっさの抵抗ができず、千枝にクロッチごとまさぐられる。その指使いが思ったより繊細で、ありすの性感をさらに煽ってしまう。筋肉や神経がぴんと張り詰めてしまういっぽう、頭は千枝に抵抗する意思をぐにゃぐにゃととろかされてしまう。
対して千枝も、とろんと力のない目でありすを見下ろしながら微笑みかける。
『……もっとかわいくなってくれる?』
『っふう…‥!! くっ、ううぅっ……!! はぁっ、んぅっ……!?』
素肌とビキニごしと微妙に異なるくすぐったさがありすを襲う。千枝の指先はビキニの内側にまで滑り込んで、ありすの下腹部をまさぐっている。柔らかい肉をつんつんと突いたりぷにりとつまんでくる。かと思えばするすると脇腹をなぞりあげる。
『んくくっ、んひっ、はぁ、はぁっ……!! あああっ、そこっ、なでない、で……あああっ、ひゃひぃっ……!?』
『弱点を教えちゃ駄目だよ、ありすちゃん……♥』
何度も緊張と弛緩を繰り返させられたありすは、抵抗もままならない。千枝の指先が縦横無尽に舞い、ありすを追い詰める。
『や、やめっ……、んはっ、あああぁぁぁっ……!!』
ついにゴングが鳴るまで粘る気力さえ尽き果て、ついにありすはマットをべたべた叩いてギブアップを宣言した。
勝者と敗者のコントラストを強調するため、べったりマットに崩折れたままのありすを背景に千枝が新曲の宣伝を披露した。しかし観客も番組スタッフも、宣伝のチャンスを勝ち取った千枝でさえも、もはや痴態というべきほど乱れたありすの姿に意識が傾いていた。
※
「ということがあって、ね」
「……千枝」
「はい?」
「それで、説明しましたぁ……って顔をしないでほしいのだけど。これで理解しろって言うの?」
「……うん、オレもしょうじき同感だ」
「その番組が……ありすちゃんをくすぐる、というのにどうつながるの? もしみりあだったら、むしろもうこりごりって思うんじゃないかなぁってところだけど」
レッスンルームに敷いたマットにありすを寝かせて手を押さえつけながら、千枝が的場梨沙、結城晴、赤城みりあに説明を再開した。
「ありすちゃんが、くすぐったさをがまんできるようになる練習をしたい、と……でも千枝だけだとたいへんで……」
「くすぐったくてジタバタされたら……それで4人がかりで抑える、って?」
「これ端から見たらいじめとか罰ゲームにしか見えないよなぁ」
「……迷惑はかけませんから、誓って」
「こんな名目で声をかけられたのは、迷惑をかけられたうちに入らないのね……」
「まぁ、その……お手柔らかにな、お互い……」
ありすの四肢が“大”の字を象るように、4人がありすの手足をそれぞれ1本ずつまたがって体重をかけて抑えにかかり――「あ、ズルいぞ梨沙っ、ラクなほう黙って取りやがって」「アンタが足を抑えなさいっ、アタシは非力なのよ~っ」――手にはヘアブラシを構えつつ、ありすのレッスンウエアをたくし上げる。
「ひゃい……ふぃぃっ、ひぃっ、ひひっ、ひひひひっ……!! あああっ、んくくっ、んふぅっふふふ――そこっひゃめっ――んひゃわっはっあっはぁっはあはっ、んひゃひぃ……!!」
その後、第3芸能課のアイドルのあいだで密かにくすぐり合いが広まり、U149Pが珍しく厳しい態度でくすぐり禁止令を言い渡すこととなる。
(おしまい)