どうしてこうなったんだろうね(真顔)
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「……」
「ただいま」
どれほど愛し合った妻であったとしても、結婚も10年目となると、冷えてくる。布団が別になり、寒い布団にもぐりこむのが日課になってしまうのだ。そんなことを言っていたのは誰だったか。
鳳翔は艦娘であった頃と外見もほぼ変わらず、未だに現役だ。外では仲良く振る舞っている。だが。
部屋に帰ってきたときの、既に落とされた電気が、酷く寒く感じられる。心が冷え切って、寒くなるのだ。そう思って笑うと、パチン、とスイッチを上げた。
飯は、というと袋めんがどん、とテーブルの上に鎮座している。それをつくり、一人、侘しく啜っていると、鳳翔がのっそりと現れ、言う。眠そう、というよりはつい先ほどまで寝ていたのだろうか。目の端にやにがついている。それをこすり落とすと、けだるげにこちらを見て、鳳翔は言う。
「遅かったのですね」
「ああ」
これが、最近の家庭内での夫婦の唯一の会話だった。
時刻は2200で、まだ寝る必要もないだろうに、彼女はまた寝ている。顔を合わせるのが嫌なのだろう。仕事場では「世間体」が悪いから、仲の良いふりをしている、といういらだちもあるのだろうか。
「……」
ふ、と生卵が目に入った。昔見た合成写真で、空母娘が卵を産んでいるのを見たことを、ふ、と思い出した。盗撮写真が元となっていたため、大騒ぎになったのだ。あれは確か。若かったころの鳳翔だった。そう思い出して。
むら、ときた。
卵を、ゆでる。冷えた関係とはいえ、さすがに妻に怪我をさせる気はない。固くゆで、丹念に殻を剥いていると、不機嫌そうな顔の鳳翔がやってきた。
「……足りなかったんですか?」
そう、足りないとも。なにしろ、お前を三年間も求めようとは思っていなかったのだから。
「なあ、しようか」
「……何をですか?」
「何って、こんな時間に夫婦がするって言ったら一つだろう」
そう言うと、鳳翔は顔をしかめる。嫌悪感と困惑がにじみ出ていた。
「あなたと?」
「ああ。したいことがある」
卵を持ち上げ、そして、笑った。
「あなた……本当にやめてください、なにを、え、ちょっと、何するんですか!」
体をよじる鳳翔を押さえつけ、卵を膣の中にちゅるん、と押し込む。おざかりな反応をしていた鳳翔も燃え上がったらしく、途中からは声の艶が違っていた。これならば。と押し込んだのだ。
「うそ……何を考えてるんですか……」
「なあ、鳳翔」
鳳翔の体を起こし、言う。
「産んでみせてくれないか」
しばらく呆然としていた鳳翔は、立ち上がろうとする。だが。
「中で破れたら大変なことになるぞ」
「何、考えてるんですか……!」
顔を真っ赤にし、鳳翔の目の色は羞恥と怒りの間を行ったり来たりする。ああ、これだ。これが見たかった。
「おかしいわよ……おかしい。んんんっ、変態……!」
しゃがみこみながら、陰唇に指をはわせ、鳳翔は布団の上で力をこめ、強く唸る。
白いものが、顔を出す。にゅるり、とあわを引きながら、半ばまで顔を出すと、はあっ、はあっ、と鳳翔は息をつく。
「ほら、あとちょっとだ」
「ばかっ……ばかっ……!」
涙声になりながら、鳳翔はうめき声を出し、唸る。そして、ずるり、と鳳翔から卵が落ち、粘つく液がぼたぼたと布団のシーツを濡らし、卵をぬめらせた。はあ、はあ、という鳳翔の息の音だけが、聞こえる。口の端からは泡になったよだれがたれ、目からは涙がこぼれている。いい、顔だ。
それを口に運び、信じられない、という顔をしている鳳翔に、言った。
「お前の味がする」
その卵を食べた時、そして、ぽたぽたと布団にたれ落ちるそれを見た時。三年間も求めようとは思わなかった女のそれとは思えない色を感じ、ひたすらに欲をぶつけた。
うめき声。唸り声がする。獣と獣が求め合う声だ。脱力し、すぐに挑みかかり、お互いに高めあう。
その日は、同じ布団で眠った。
数日後、今日もひどく遅くなった。部屋の電気は、当然落とされている。
「……」
「ただいま」
テーブルの上には、卵が置いてある。つまり、それは。鳳翔からの合図だった。
暗い部屋にも関わらず、不思議と寒さは感じなかった。