神格を喪ったヘスティア様と愛し合うのは間違っていないだろうか 作:らん豚
原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
タグ:R-18 NTR ヘスティア ダンまち 独自要素 独自解釈
若き英雄候補はオラリオから追放され、そしてヘスティアは穢される。
そしてかの処女神にとって、地獄ともいうべき凌辱の日々が始まり──唐突に終わった。
かつて彼女に救われた、一人の冒険者によって。
※
本作は原作理解が中途半端&NTRものなので注意してください
独自要素と独自解釈もあります
◆
オラリオには古い廃教会がある。
かつてそこはヘスティア・ファミリアの本拠地であったが、現在では一人の冒険者が所有している。
その冒険者の名はシド。
レベル2のどこにでもいる冒険者だ──表向きは。
そんなシドだが、一人きりで廃教会に住んでいるわけではない。
§
寝室で、二人の男女がむつみ合っている。
一人はシド。
もう一人はヘスティアだった。
「んちゅ、ん……んぅ……」
悩ましい声をあげながら、ヘスティアはシドのペニスを頬張る。
拙いながらも舌を絡めたり、喉奥で締め付けようとしたりと技巧を凝らしている。
シドはそんなヘスティアを複雑な表情で見つめていたが、やがて口を開いた。
「ヘスティア様、その様な事をなさらずとも」
シドが言うとヘスティアはふとシドを見つめ、ペニスから口を抜いてかぶりを振る。
「様なんてつけないでおくれシド君。ボクはもう神格を喪った身だ……。この身を穢されたばかりか、守るべき子を守る事も出来ず……。そのまま "使われ" 続けるはずだった所を助けてくれたのが君なんだ。僕はそんな君にお礼がしたいけれど……神の力を喪った今、僕にできる事はこんな事しかないんだ……」
ヘスティアはベル・クラネルの事を思い出す。
ベル・クラネルとは、かつてヘスティア・ファミリアに所属していた冒険者だ。
しかしアポロンファミリアとの戦争遊戯に敗北し、オラリオから追放された。
ヘスティアはアポロンの所有物となり、その身を穢され──
一しきり弄ばれた後にイシュタル・ファミリアへ買い取られたのだ。
そこで客を取らされ、ありとあらゆる凌辱をその身に受け続けた。
この過程でヘスティアは処女神たる神格を喪い、現在では神としての権能を振るう事もできない。
要するに、 "ただの女" となってしまったのだ。
シドと呼ばれたシドは困った様な表情を浮かべる。
そんなシドにヘスティアは泣き笑いの様な表情を向ける。
「それとも、こんな風に穢れたボクの事なんか、抱きたくない、かな」
ヘスティアは既に純潔とはほど遠い。
穴という穴を "使われて" いるのだ。
前の穴はもちろん、後ろの穴も穢されている。
そればかりではなく、薬を使っての行為も行っている。
ヘスティアの肉体を味わった者は100や200では利かなかった。
肛門に数人分の精液をため込んだまま、押しつぶされる様に膣を抉られ、耳を覆いたくなるような絶叫をあげるヘスティアを男たちは無様だと嗤った。
シドはそれ以上ヘスティアに言わせてはならないと感じる。
だから "鉄仮面" を外し──
「んッ!? ん、ちゅう……ん……」
おもむろに唇を奪い、舌を挿し込む。
シドはヘスティアの事を穢れているだなんて少しも思っていない。
それどころか、 "こういう関係" になった事に薄暗い悦びすら感じている。
だのに躊躇したのは、罪悪感があったからだ。
(彼女は、女神ヘスティアは俺にとって文字通りの救いの女神だ。なのに……)
「ん、シド君……」
ヘスティアはシドの顔一面に刻まれた火傷の痕に唇を落とし、やがて湿った音を立てながら舌を這わせる。
シドは傷痕を舐めるヘスティアの顎を掴むと、その唇に自分のそれを重ねた。
ヘスティアも喜んでそれを受け入れる。
彼女の心の中は、シドへのどろりとしたナニカで満ちあふれている。
それは愛と呼ぶにはあまりに脆く、恋と呼ぶにはあまりにねっとりと濃厚な感情だった。
例えば利き足を喪ったサッカー選手が、自身の義足に対して抱く複雑な想いに少し似ているのかもしれない。
ある種の執着と感謝、そして得体の知れない焦燥や切なさが絡み合って、ヘスティアの胸の奥をじくじくと疼かせるのだ。
凌辱の日々で半ば気が狂いかけていたヘスティアだったが、シドに救い出されてからはある程度の正気を取り戻すことができた。
それでも心のどこかには、あのまま狂ってしまえればどれほど楽だったか、という未練が燻っている。
いっそすべてをなかったことにしてしまいたいのに、理性だけはしぶとく生き残り、自分を現実に縛りつけて離さない。
あのまま心を壊してしまえば、もう二度と苦しまずに済んだかもしれないのに──そんな後ろ暗い思いが、かすかな影のように張りついていた。
穢されてしまった己の肉体、追放されてしまったベル、失ってしまった神としての誇りや尊厳。
喪ったものがあまりにも多すぎて、ヘスティアは貪る様にシドを求める。
シドを抱くことによって、あるいはシドに抱かれることによって、その痛みを少しでも忘れ去ることができるのなら──それはヘスティアにとって、ささやかな救いとなるのだ。
シドの唇を受け止めながら、ヘスティアは目を閉じる。
焼けつくような恨みや憎しみ、後悔や悲壮感を抱えながらも、熱に浮かされたようにしてシドを抱く腕に力を込めた。
互いを抱き潰さんとでもいうような抱擁の後、ヘスティアは言った。
「ねえ、シド君。ボクは少し複雑な気分なんだよね。ボクの身に起きた事の殆どは、ボクにとって最悪のことだった。時を巻き戻せるならばそうしたいと今でも思っている。でも、君とこうなった事を後悔していないし、今こうして君と暮らしている日々に幸せを感じてもいるんだ」
そういってヘスティアは、ゆっくりと自分の乳首に触れた。
もう片方の手は陰部へと伸び、誘うような目でシドを見る。
「いまでも夢に見るよ、あの頃の日々を。だから、シド君。 "君で" 上書きしてほしい」
シドは頷いて、ゆっくりとヘスティアに近づき──
◆
シドの顔の傷は、オルドの戦争に傭兵として参加した時についたものだ。
オルドとはオラリオから遠く離れた小国である。
歴史の浅い小国ながら、その好戦的な性質で知られており、建国からわずか数十年──オルドは周辺諸国との戦争を繰り返し、領土拡大に躍起となっていた。
シドはオルドの傭兵として戦い、とある戦争で敵の魔術師から放たれた強力な炎の直撃を受けた。
通常、魔術の直撃に耐えられる者などそうはいない。
特殊な防具で身を守っていない限り、その一撃は致命傷となるはずだった。
しかしシドは生き延びた。
オラリオの冒険者として鍛え上げた肉体が、常人なら耐えられない一撃を耐え切ったのだ。
シドはかつて、アポロンファミリアに所属する下級探索者だった。
レベル2という実力は最高位のレベル7まで存在するオラリオの冒険者の中では、決して高くはない。
それでもダンジョンの浅い層であれば、十分に探索は可能だった。
よほどの不運で強大なモンスターに出くわさない限りは──たとえば、何らかの理由で浅層に迷い込んだゴライアスのような存在と遭遇しない限りは。
シドは運が悪かったのだ。
例え仲間たちを皆殺しにされ、シドのみが生きて戻る事ができてもとても運が良いとは言えないだろう。
そもそもゴライアスと遭遇してしまった事自体、運が酷く悪い。
だが、本当の運の悪さを思い知るのはそれからだった。
命からがら逃げのびてファミリアへ戻ったシドを、アポロンファミリアは酷く冷淡に扱ったのだ。
シドはファミリアの敷地内にすら立ち入る事を許されなかった。
ゴライアスとの戦闘で負った顔の傷が原因だった。
元はといえば美形ともいえたシドだったからこそ、傷が殊更目立って見える。
アポロンはそんなシドを "不要" と判じた。
ところで、このオラリオは英雄の都と呼ばれる。
当然の話だが英雄とは強く在らねばならない、
弱い事はそれだけで罪なのだ。
弱いならば強くなることが義務であり、シドは弱かったから破れ、弱かったからこそ罪を背負い、そんなシドに手を貸そうする者などいなかった。
炉の女神たる処女神、ヘスティア以外は。
シドは今でも鮮明に覚えている。
『君、そんな場所で何をしてるんだい?』
そう言って手を差し伸べたヘスティアは、シドの傷を見て慌てふためいた。
『ちょっ!? 酷い怪我をしているじゃないか! ええと……ポーションは……ううっ、そんなのを買うと今月は……ええい、ままよ! 君! ちょっと待っててね、眠っちゃだめだよ!』
生活費を切り詰めながら暮らしているとわかる様子だったが、それでもヘスティアは躊躇なくポーションを購入し、見知らぬシドの命を救った。
そうしてヘスティアはシドを自身のファミリアへと連れていき、甲斐甲斐しく看病をした。
だが怪我が治ったシドは、そこがヘスティア・ファミリアだと知るとヘスティアに何も言わずに姿を消す。
かつての主神であるアポロンがヘスティアに執心していた事を知っていたからだ。
元アポロン・ファミリアの自分がヘスティアの世話になり続けていれば、かならずや禍根となると考えての事である。
そうしてシドは他国へと渡り、 "外の冒険者" として生きていったのだが──ある時、オラリオから来たという冒険者と出会う。
ベルと名乗るその冒険者は、ある日ふらりとシドの所属する傭兵団にやってきた。
最初に目に留まったのは、そのやつれきった表情だ。
落ち込んでいるという言葉では到底足りないほど打ちひしがれ、魂が抜けかかっているようにも見える。
それでも彼は元オラリオの冒険者らしく、周囲の傭兵と比べると格段に身のこなしが洗練されていた。
武器を持つ動作ひとつ取っても無駄がなく、実戦慣れしている者だけが持つ鋭さを漂わせているのだ。
傭兵団の仲間たちはどこか浮世離れした雰囲気をまとったその少年を最初は警戒した。
しかし程なくして、彼が戦闘技術において並みの傭兵をはるかに凌駕していると分かるや否や、隊の上層部は彼を戦力として積極的に受け入れる。
ベルは黙々と与えられた任務をこなし、危険な状況にも臆せず飛び込んでいった。
だが笑顔を見せることは決してなく、仲間からの誘いにもほとんど応じずいつも独りでいる。
コミュニケーション能力が不全という事ではない。
顔一面が焼けただれているシドの異様にも怯んだりすることも無く、必要な時に必要な事を話す胆力があるのだから。
そんなベルとシドは、ある日思わぬきっかけで会話を交わすことになる。
たまたま傭兵団の見張り当番を二人で任されたのだ。
夜闇に沈む砦の上で、シドは何とはなしにオラリオについて尋ねてみた。
もともとシドもオラリオで冒険者をしていた経緯があるから、オラリオの噂にはいろいろと興味があった。
とはいえ何より気になっていたのは、長らく顔を合わせていないあの女神が今どうしているのかという一点だった。
だがヘスティアという名を口に出した瞬間、ベルの表情が露骨に強張ったのがはっきりと分かる。
ベルはあからさまな動揺を見せ、しばらく言葉を飲み込んだまま黙りこくった。
夜の静寂が痛いほど耳に響く中、やがてベルは口を開く。
戦争遊戯で破れ、ヘスティア・ファミリアが解体され、ヘスティア自身はアポロンファミリアの手に落ちてしまったこと。
ベル自身はヘスティアを助けたくとも、追放をされた身である以上戻る事は出来ないということ。
思い出すのも苦痛なのかベルの声は途切れがちで、表情には悔恨と絶望の色がありありと浮かんでいた。
その話を聞いているシドの胸の奥で、ごうごうと何かが鳴り響く。
それが怒りなのか、後悔なのかはシド自身にもわからない。
§
その晩、シドは一睡もできなかった。
夜明け前の薄闇を見つめながら、シドは意を決する。再びオラリオへ戻り、ヘスティアを救い出すしかない。
あのときの借りを返さずに生きていくのは、シドにとっては己の誇りを捨てるも同然だった。
翌朝、シドは荷物をひとまとめにして、傭兵団の隊長へ辞意を告げた。
隊長は不機嫌そうに眉をひそめたが、シドの決心が変わらないと見ると最終的には頷いた。
「せいぜい好きにしろ。戻ってくるのは歓迎してやるが、死ぬなよ」と素っ気ない言葉で送り出してもくれた。
シドは深く頭を下げて団の仲間たちと別れ、そしてオラリオへと帰還したのだが──
そこで待っていたのはかつての恩神の、余りにも惨い姿であった。
§
オラリオへ戻ったシドは鉄仮面を被っていた。
万が一にも過去に知り合った冒険者たちに正体を見破られないようという配慮だ。
もっとも、かつてのシドを知る者がいたとしても、今の彼を見て同一人物と気づく者はほとんどいないだろう。
顔一面に刻まれた火傷の痕のせいで、シドの容貌はかつてのそれからは大分かけ離れている。
シドはまず酒場『豊穣の女主人』へと向かった。
オラリオで情報を得るならまずはそこだ。
酒場は賑わっている。
酔客のざわめきと鼻につく酒の匂いが入り混じり、酒場特有の高揚感が空気に溶けていた。
シドは隅の小さな席を選び、酒を一杯注文してからちらりと周囲を見回した。
すると、アポロン・ファミリアの紋章を身につけた男が一人、飽きもせずに酒をあおっているのが目に留まった。
シドは男に媚びるように「良い飲みっぷりだ」と声をかける。
わざとくだけた口調で、いかにも不良冒険者っぽく。
「ところで、この街にはヘスティアという女神が居ると思うんだが、彼女がどうしているか知らないか? ほら、かの女神殿はなんというか、困窮していただろう? 俺は以前彼女に金を貸したんだが、そのあと遠い郷里で家族が病に倒れたという報を聞いてね、オラリオにはつい最近戻ってきたんだ」
バジルはニタリと下卑た笑みを浮かべながらヘスティアの顛末を語りはじめた。
「あの女神サマに逢いたけりゃ、歓楽街へ行ってみるといい。だが金を持ってるかどうかはわからんぜ? ただ、逆に金を払えば良い思いが出来るかもな」
そういってバジルはヘスティアがイシュタル・ファミリアに買い取られ、客を取らされている事を楽しげに語った。
それらの言葉一つひとつが、シドの胸の奥でごうごうと唸る熱を煽る。
仮面の奥で呼吸が浅くなり、怒りなのか後悔なのかわからない衝動がじくじくと膨れあがっていく。
「前の穴だけじゃねえ、後ろの穴も試しておけよ。絶品だぜ?」
バジルが酒臭い息を吐きながら下卑た声で言い放つが、シドは何も答えない。
しかし──
「おい、聞いてるの、……ひっ!」
バジルは短い悲鳴を漏らし、椅子ごとシドから距離を取ろうとする。
店内で視線が集まるが、シドはまるで気にかける素振りすら見せない。
酒場のカウンターの奥では、女店員のリュー・リオンがまばたきを忘れたようにシドたちを見つめている。
冒険者としてレベル4の実力を備え、数多の修羅場を経験してきた彼女でさえ、シドが発する圧に思わず身構えていた。
もしこの男が剣を抜いて店の中で暴れだすというのなら、自分が止めねばならない──そう腹をくくるだけの覚悟を強いられるほどに、シドは危うく見えた。
だが、シドはバジルに手を出そうともしないまま、淡々と金を置いて音もなく席を立った。
かちりと鳴った小銭がカウンターの上で転がり、酔客のざわめきが途切れ途切れに戻ってくる。
リューはシドの姿が店から完全に姿を消すと、ふうと大きく息をつく。
全身がぐっしょりと汗で濡れていた。
「あの男、何者だい?」
酒場の女店主ミアがリューに声をかける。
「わかりません……でも、彼が暴れ出さないで良かったと思います」
リューの言葉にミアも頷く。
「アタシもアレを抑えるのはごめんだね。まだ死にたくない。ありゃおっかないよ」
──あるいは、あの猪坊主よりも
ミア……ミア・グランドはかつてフレイヤ・ファミリアの団長であった。
その実力はレベル6。
小巨人(デミ・ユミル)の異名を持つ女傑だ。
「勝てませんか」
リューの問いに、ミアは思案する。
単純な戦闘能力で言うならば、まず負けはしないだろうと思う。
戦えば勝てる。
しかし──
「死ぬね。多分、 "そういうスキル" なんだろうね」
ミアはその豊富な戦闘経験から、シドのスキルが一種のカウンターのような形で発動するものと判断した。
そして、それは実際にそうだったのだ。
◆
酒場を去ったシドはイシュタル・ファミリアの勢力圏である歓楽街へ足を運ぶ。
周囲にはきらびやかな装飾と、どこか甘い匂いが満ちていた。
人々は闇にうごめく歓楽街に慣れきっているようだったが、そんな中でシドの姿だけが浮いている。
足取りには迷いがなく、常人があふれる狂騒に呑まれることもない。
シドの背からは静かな鬼気が漂い、仮面の奥の瞳にはどうしようもない怒りの色が宿っているようにも見えた。
濃厚な酒の香りと、艶やかな衣装をまとう娼婦たちの甘い笑い声が入り混じる。
どの店の前にも華やかな灯りがともり、欲望に駆られた客たちが夜の帳の奥へと吸い込まれていく。
そんな通りを歩むシドに、何人かの娼婦が声をかけた。
「お兄さん、どうだい? 今夜は楽しんでいかない?」
妖艶な囁き声とともに、きらびやかな装飾を施した女がシドの腕にしなだれかかろうとする。
しかし、彼女の細い指先がシドの袖に触れた瞬間、そこにいた娼婦たちは一様に震えあがった。
シドの肉体からにじみ出す殺意にも似た熱が周囲の空気を圧し、娼婦たちは次の言葉を継ぐことすらできずに後ずさる。
後退る娼婦たちにシドは一瞥すらくれず、歓楽街の奥へと歩を進めていく。
むせかえるほどの香が漂う石畳を踏みしめ、目指すはイシュタル・ファミリアの本拠地だ。
・
・
やがて、イシュタル・ファミリアの楼閣が見えてきた。
扉の奥から漏れ出す妖艶な光、なまめかしい音楽の調べが周囲を彩っている。
その門の前には、屈強な門番が二人、
ファミリアの紋様が描かれた鎧を身につけ、シドを睨みつけてきた。
シドは仮面越しに門番を見据え、はっきりと告げる。
「イシュタルに会わせろ」
だが門番たちは鼻先で笑うように鼻息を吐いた。
まるで、いきり立つ客が度々やってくるのを面白がっているかのように、とりあえず跳ねつけておけばいいと思っているらしい。
「悪いがそんな戯言を聞く義理はない。さっさと失せるんだな」
門番のひとりが腕を組み、挑発するように顔を歪める。
その瞬間、シドの身体がわずかに動いたかと思うと、一閃。
門番は反応する間もなく、呆気なく地面に崩れ落ちる。
もう一人の門番は思わず腰を引き、こぼれ落ちる声を必死に飲みこもうとするが、恐怖と驚愕に震える身体を止められない。
鮮血が門前を染め上げ、あたりの喧騒が一瞬だけ凍りつく。
歓楽街を散策していた人々が悲鳴とともに遠巻きに逃げ出し、もともと怪しげな活気を帯びていた通りは一気に騒然となった。
だがシドは周囲に視線を向けることもなく、そのまま扉を押し開けた。
「何だ貴様はっ……!」
動揺しながらも飛び出してきたイシュタル・ファミリアの眷属たちが、シドを取り囲むように広がっていく。
冒険者たちは一様に臨戦態勢へ移り、その手には短剣やメイスなど思い思いの武器が握られていた。
そして雑踏の向こうから、一際大きな気配がせり出してくる。
やってきたのはずんぐりとした体躯を誇る女──フリュネ・ジャミール。
巨大な目と裂けた口元、短い手足、そしてアンバランスに太った胴体。その外見だけを見れば、とても人とは思えない。
まるで獣がふざけて人間の皮をかぶっているかのような、なんとも強烈な威圧感がある。
しかし、彼女は第一級冒険者として確かな実力を持ち、イシュタル・ファミリアの団長を務める“戦闘娼婦(バーベラ)”だ。
フリュネは裂けた口を大きく曲げて、不快な笑い声をあげた。
まるでモンスターが牙をむくように、「グゲゲゲ……」と笑い声をあげる。
「殴りこみとは随分乱暴じゃないか。そういうのが好きなのかい? だったら相手してやってもいいけど、お前はあたしの好みじゃないねェ」
フリュネの言にシドは微動だにしない。
血の匂いをはらんだ夜の風が、歓楽街の灯りをかき乱しながら吹き抜けていった。
「神ヘスティアはどこだ」
シドが静かに問うとフリュネは一瞬ぽかんと口をあけ、やがて甲高い笑い声を響かせる。
「あの女に会いにきたってかい! なんだい? お前はあの女の眷属なのかい?」
シドは何も言わず、仮面の奥からただフリュネを睨みつける。
その沈黙がフリュネの興味をさらに煽るらしく、彼女は唇を歪めてにやりと笑んだ。
「ま、いいさ。会いたいってんなら会わせてやるよ。ただし、お代はきっちり払ってもらうからねェ」
フリュネが団員へ何か指示すると、その団員は奥へと駆けこんでいく。
ややあって、団員は一台の台車を押しながらもどってきた。
台車の上には重々しい鉄檻が乗せられている。
金属のきしむ音とともに、その鉄格子の中に小さくうずくまる人影が見える。
檻の中にはヘスティアがいた。
全裸で震え続け、視線を上げることすらままならない。
外の様子に気づいたのか、か細く震える声が微かに漏れ出すが、何を言っているのかはわからない。
「もう随分と ‘使われて’ るからねえ。そうだね、一晩三千ヴァリスでどうだい?」
フリュネのからかうような言葉が、冷えきった夜気を伝わってシドの耳へ届く。
そのとき、シドは仮面の奥でぽつりと呟いた。
「……憎い」
その言葉はほとんど息のように吐き出されたもので、誰に向けたのかすら定かではない。
ただひとつ確かなのは、それがシドにとっての“詠唱”であるということ。
憎悪とも怒りとも呼びきれない、その底なしの感情が、まるで燃料のようにシドの内奥で燃え盛る。
この瞬間、シドは自身のスキルの発動条件を満たした。
シドのスキルは“負の想い”を糧に“太陽”を生みだす力。
スキルの名は『****』。
名はない。
その暗い熱は、怒りや憎しみといった言葉ごときではとても表しきれないからだ。
・
・
その日、イシュタル・ファミリアは焼け落ちた。
オラリオの住民たちは、夜天に煌々と光る黒い太陽を見た。
夜の闇より更に暗く深い漆黒の太陽を。
◆
結局誰の仕業かわからないままイシュタル・ファミリアは消滅した。ギ
ルドはこれを失火によるものと公表したが、それが真実ではないことは明らかだった。
ただの火災で一級冒険者をはじめとしたイシュタルの眷属が死ぬはずがないからだ。
さらにいえば、イシュタルそのものも天に還っている。
ギルドも原因を調査したものの、結局理由はわからず仕舞いだった。
そのようにしてオラリオが揺れている中、シドはヘスティアと廃教会にいた。
救出された後数日、ヘスティアは狂乱し、シドに怯えたり、獣のように噛みついてきたりと完全に精神のバランスを崩していたようだったが、シドが甲斐甲斐しく世話を焼いているうちに少しずつ正気を取り戻していった。
だが正気を取り戻す事は果たして幸福な事なのだろうか?
狂ってしまったほうが幸せだったりはしないだろうか?
ある晩、ヘスティアは自らの命を絶とうとした。
ナイフを喉にあてがい、貫こうとした瞬間、シドがそれを止める。
「なんで死なせてくれないんだい?」
ヘスティアは乾いた声で言う。
シドはヘスティアを説得する言葉がなく、もう一緒に生きるということを諦めるしかないのかと胸を痛める。
だが決意を固めたように、ヘスティアの手首をつかみ、ナイフの切っ先を自分の胸にあてて、こう言った。
「神ヘスティア。もしどうしても生きているのが辛いというのならば、もう止めません。その代わりに、俺も従者としてお連れください。俺はあなたに救われたのです。今度は俺があなたを救う番だ。しかし、それが叶わないならば、せめてお傍に置いてください」
シドがそういうと、ヘスティアは息を荒らげ、ナイフを握る手に力を込める。
しかし──
「ボクには出来ないよ、シド君……」
そういって泣き出すヘスティアを、シドはそっと抱きしめた。
「ボクは穢れた」
そんなヘスティアの言葉にシドは「俺はそうは思いません」とだけ答える。
「……ふふ、それが嘘かどうかもボクにはわからない。でも君は優しい子だね。ボクを抱いた男たちはみんな乱暴だった。皆、君みたいな子だったら、ボクも少しは救われたのだろうか。ねえ、シド君。聞きたいかい? ボクがどういう風に扱われてきたか。色んな事をされたよ。君が想像するような事は全てされてきた。言葉に出すのも汚らわしい事もね。聞いてみたいだろう? 君だって男なんだからッ……!」
シドには返す言葉がない。
ただヘスティアを抱きしめるだけしかできない。
「そうだ、君もボクを抱いてみたらどうだい?」
「そんな事はできません、神ヘスティア」
シドが咄嗟にそう返すと、ヘスティアは寂しそうに笑って言う。
「そうか、そうだよね。ボクは何百人という男たちに "使われて" きた。シド君ほどの冒険者なら、そんな女を抱かなくても──」
もはや限界だった。
シドはヘスティアを抱く力を緩め、そっと後頭部へと手を回し、奪うように接吻をする。
暫く唇を重ねたのち、ゆっくりと離すと唾液が銀の糸となって二人の唇を繋いだ。
「神ヘスティア、俺はあなたに救われた。命の借りがある。だが、借りを返してほしくてあなたを救ったわけではない」
「じゃあ……どうして助けてくれたんだい?」
「それは──、あなたが欲しいからです。あなたに必要とされたいからだ。あなたを思慕しているからだ。あなたを愛しているからだ! 野良犬の戯言とお笑いください。品性卑しい俺のような男は、少し優しくされるだけでも舞い上がってしまうものです」
そう、 "あの時" からシドはヘスティアに惚れていた。
そんなシドを、ヘスティアはぼうっと眺め、やがて右手をシドの胸にあてる。
そして段々と下へ。
腹を過ぎて、股間へ。
うっすらと盛り上がった "そこ" を、ヘスティアの手は優しく撫でた。
「君も、男だね。でも──」
──優しい男だね
そういってヘスティアは再びシドへ口づけた。
二つの影がゆっくりと重なっていく。
◆
──俺も男か、そうかもな
かつてヘスティアに言われた事を思い出しながら、シドはヘスティアのもっとも敏感な部分にそっと舌を這わせた。
「シド君、んっ……はぁ……そ、そんな所を……」
ぴちゃりぴちゃりとわざと音を立て、その度にヘスティアは嬌声をあげた。
恥じる素振りはしている。
ただ、口元には歓喜の笑みが浮かんでいた。
シドはヘスティアの反応を見ながら、さらに彼女の秘部に舌を這わせる。舌先でその柔らかい丘を滑らせ、花弁の間に分け入る。ヘスティアの身体が微かに震え、彼女はシドの頭をそっと押さえつけた。
「あ゙、シド君、そこ、そこは……ん゙ぅ……」
シドの舌は彼女のクリトリスに到達し、それを優しく舐め上げる。
舌の動きに合わせて、ヘスティアの息が荒くなり、腰が自然と動き出す。
「い゙っ、シド君、もっと、もっと強く……」
指を使って彼女の入口を探り、ゆっくりと指を差し入れる。
ヘスティアの内部は既に濡れそぼっており、指は容易に滑り込んだ。
そして指を曲げてヘスティアの最も感じる場所を探る。
「ゔ、そこ、そこい゙っ、そこが……!」
やがてヘスティアは強すぎる刺激に耐えきれず、背中を反らし声を上げる。
「あ゙あ゙っ、だめ、だめぇ゙、シド君……」
ヘスティアの身体は熱を帯び、シドの手に触れる部分はすべて火照っていた。
「ね、シド君、もうボク……お願いだから……」
ヘスティアは自身の陰部をシドのペニスに擦り付ける。
しかしまだ早いとばかりに、シドはそれを躱す。
そのまま今度は乳房を掴み、乳首を口に含んだ。
舌で転がすように舐めるたび、乳首はすぐに硬くなる。
同時に膣の中を指でかき回し、親指でクリトリスを押し潰すように捏ね回す。
すると面白いくらいにヘスティアの身体が大きく跳ね上がった。
もはや完全に出来上がっているようで、膣内からは愛液が溢れ出しシーツに大きな染みを作っていた。
(そろそろ頃合いか)
ヘスティアが望むのなら、とシドは自身に言い訳をするがしかし。
快楽に蕩けた顔のヘスティアを見ると、胸の奥に薄暗い歓喜の念が沸き起こってくるのを否定できなかった。
臍にまで反り返った剛直の先端をヘスティアの膣口にあて、一気に突き刺す。
その瞬間、ヘスティアは大きく目を見開き、声にならない悲鳴をあげた。
亀頭が子宮口を突き上げた瞬間、ヘスティアの身体が大きく痙攣したかと思うと弛緩した。
どうやら軽く達してしまったらしい。
「ひい゙ぎぃぃぃぃっ!?」
だがそれでもなお、容赦なく抽送を始める。
腰を動かすたびに結合部から泡立った本気汁が飛び散っていく。
「おごぉっ! イってる! いまイッてるからぁ!」
絶頂の最中にあるにもかかわらず更なる快感を与えられ続け、ヘスティアはもはや半狂乱になっているようだった。
それでも構わずピストン運動を続ける。
肉同士がぶつかり合う音が部屋中に響き渡る。
ベッドが激しく軋み、壊れてしまうのではないかと心配になるほどだった。
腰を打ち付けられる度に、ヘスティアの口から獣じみた喘ぎ声が上がる。
その表情は完全にアヘ顔になっており、口の端からはだらしなく涎を垂らしていた。
しかしシドはやめない。
この女を犯してやれ、と内なる声が響く。
犯して、犯して、気が狂うまで犯して── "あんなこと"なんて忘れるくらいまで。
シドは立ち上がってヘスティアの両膝の裏から手を回し、両脚を開かせたまま持ち上げた。
そしてそのまま上下に突く。突く。突く。
重力に従って身体が沈み込み、より深いところまで届くようになるため、今まで以上に激しい動きとなる。
パンッ! パァン!! という乾いた音と共に二人の体液が飛沫となって飛び散った。
「ひぐぅぅっ!?」
もう自分がどうなっているのかも分からないのだろう、ヘスティアは歯を食いしばり、泣きながら喘いでいる。
だがある瞬間一線を越えてしまったのか、目がぐるりとひっくり返り、ヘスティアはついに気絶してしまった。
◆
「ん、うぅ……」
ヘスティアは意識を取り戻し、自分が寝台に寝かされている事に気付いた。
様々な液体に塗れていたはずの体は綺麗に拭き取られ、寝巻を着せられている。
「シド君……?」
だが隣にシドはいない。
ありえないとは分かってはいるが、胸に一瞬不安が過ぎるが──
「目覚められましたか、ヘスティア様」
そう言ってシドが寝室へと戻ってきた。
手には水差し、そしてグラス。
・
・
グラスに口をつけ、水を飲むヘスティアはちらりとシドの様子を窺った。
シドはいつもの鉄仮面をつけて、静かにたたずんでいる。
何を考えているのかはさっぱりわからない。
シドのこの態度は二人でここへ住む様になってから、ずっと変わらない。
ヘスティアのほうから話しかけないかぎり、シドはいつまでも黙ったままだ。
だが不思議な事に、ヘスティアはそんなシドに些かも圧を感じなかった。
むしろ落ち着くのだ。
陽だまりの中、巨大な樹の下にいるようなそんな気さえする。
「シド君、そんなところに立ってないでこちらへおいでよ」
ヘスティアが声をかけると、シドは恐る恐るといった風情でヘスティアの隣に腰を下ろした。
そんなシドに、ヘスティアはまるで犬が自分の匂いを擦り付けるように、自身の体を寄せる。
(ああ、やっぱりだ)
先ほどまで感じていた不安が、今は影も形もない。
しかし次にシドが口を開いた時──
「ヘスティア様、俺達がここに落ち着いて暫く経ちました。生活の目途も立っております。この辺で一度、彼に会ってみませんか? ベル・クラネルに」
ヘスティアの喉がひゅっとなる。
「ベル、君……」
初めての眷属。
冒険者としての才能に恵まれたばかりでなく、努力を惜しまない有望な少年だった。
長じれば、必ず高名な冒険者になることができただろう。
けなげで紳士で努力家な、愛すべき子。
しかしアポロン・ファミリアとの戦争遊戯に敗れた際、ベルは追放されてしまった。
もはや二度と会う事は叶わないと思っていたが──
「ヘスティア様から神格が無くなったことで、喪われたものは多いとおもいます。しかし、そのおかげというべきか、オラリオの外にもギルドの許可を得る事なく行く事ができます。もしヘスティア様がベル・クラネルと逢いたければ、俺は彼の元へ案内出来るでしょう」
そう言ってシドはベルとの出会いについても話した。
「そう、か……。ベル君が傭兵に……。元気、かどうかは分からないけれど、生きていて良かった……」
ベルが生きている。
それを聞いたヘスティアは、ふと胸のつかえが取れたような気がした。
「オラリオの外で彼を害せる者はそうはいないでしょう。実力もそうですが、まだ若いですが練達の傭兵の様な厳しさを持っている」
「そうなんだよ! ベル君は凄いんだ、志も高くてね。英雄になりたいって言ってて……」
シドはヘスティアの話を黙って聞いていた。
途中、ヘスティアが涙を流し始めてもずっと黙って話を聞いていた。
そして、やがて話が終わった時──ヘスティアは絞り出すように「ベル君には、逢わない」と言った。
シドはすすり泣くヘスティアの目元を清潔な布で拭い、優しく彼女を抱きしめた。
◆◆◆
その夜ボクはシド君に抱かれながら、ベル君の事を考えていた。
逢いたいには逢いたい。
ただ、どの顔を下げて逢えば良いというのだろうか。
神は子を守るもの。
でもボクは彼を守る事ができなかった。
そのせいで、ボクはベル君を酷く傷つける事になってしまった。
そして今のボクときたら、ステイタスの更新すらも出来ないポンコツに成り下がって──
ベル君に逢ったとしても、彼の為に何をしてやることもできないだろう。
シド君からベル君のことを聞いた時、ボクはとても安心した。
あのベル君なら、たとえオラリオじゃない場所でだって名を馳せる事が出来るに違いない。
役立たずのボクの出る幕はないのだ。
ああ、でも。
ボクは気付いている。
ボクの心の中の、闇に。
"ベル君は、ボクをまもってはくれなかった" 。
ボクをあそこから救ってくれたのはシド君だった。
きっとシド君はボクの為なら何だってしてくれるだろう。
ボクの為に何人も、何十人も、神すらも殺したくらいなのだから。
今回は事の大きさからバレなかったみたいだけど、オラリオでそんな事をしたら冒険者としてはやっていけなくなる。
オラリオにだって居れなくなるだろう。
冒険者にとってそれは死ぬ事と同じ様なものだ。
でもシド君はやった。
ベル君はどうだろうか。
ボクの為に夢を諦める事が出来るだろうか。
……分からない。
それに……そう、 "ベル君は、あの地獄からボクを救い出してはくれなかった"のだ。
ボクは本当に酷い女だ。
ベル君の事は今でも大好きだけれど──
ああ、シド君のものがボクを貫く度に。
シド君から出たものがボクのお腹を満たしていく度に。
ベル君……君の姿がどんどん薄くなっていく。
ごめんね、ベル君。
本当にごめんね。
あ~すっきり。ベル君可哀想(´;ω;`)