悪いやつがこうなると気持ちええんじゃ
ある凍れる夜のこと。
あるアパートの一室で、男と少女は身体を重ね合っていた。
ぎしぎし、ぎしぎし。暗い室内で艶かしく揺れて、古めの床は軋む。
華奢な少女は上、男は下。
2人にそこまで激しい動きはないが、密着した裸体同士は煎餅布団の上で深く繋がり合ったまま、互いにくねり悶えている。
ともすればよくある普通の情事。しかし、しかし。
「──ん、ふ」
馬乗りで長い髪を振り乱し喘ぐ少女の表情は、月光に照らされてなお漆黒の影の奥。
浮かべられた笑みはとても純粋な愛情とは思えない、暗い悦びに満ちていた。
彼女の喉奥から艶っぽく絞り出される声。そこにも「ふっ、ふふっ」と、怪しげな笑い声が混じっており、普通とは程遠く。
下敷きになった男は必死に顔貌を歪め、くぐもったうめき声をあげるばかり。
彼は手脚の動きを拘束具で封じられながら、心中で弱々しく、困惑を吐露する。
なんで、どうしててめえが……これは、どうなって────
時はふた月ほど遡る。
かの男は誰からも「札付きのワル」と呼ばれるような、どうしようもないクズである。
毎日毎日、人を虐げることで金を巻き上げるような、本人曰く「たのしいお仕事」をしていた。
借金を理由にして女は犯し、男は脅す。そんな仕事だ。
大した稼ぎにはならないが、自身は悦に浸りながら金が貰えるので、彼は満足していた。
何十人、何百人に多少恨まれようが考えに変わりはなく、改心する素振りは皆無。
自己中心的な刹那主義者。神も仏も見放す悪童であり。
その日も一家庭の母娘へ勤勉に暴虐を働き、白昼堂々、満足そうに大手を降って家路についていた。
「あ?」
と、その横柄な歩みが男自身の住むアパートの前に差し掛かったときだ。
彼は寒さに震える少女を見つけた。
彼女は癖のない黒髪を肩の下、胸の辺りまで伸ばし、この辺りでは見かけない制服を着て、小さく縮こまっていた。
冬特有の彩りの少ない景色に映える、華奢なシルエットである。
それが男の目には酷く蠱惑的に映った。
一応最初彼は訝しんだ。
周辺住居は世間一般でいうところの反社の縄張りである。誰かの手付け品の可能性は大いにあった。
しかし、男の守備範囲は広いが、女子中高生は特に好むところである。すぐに短絡的に「いや家出だろう、そうにちがいない」と勝手に決めつけることにして、口角を醜く歪めた。
「お嬢ちゃん、どうしたの? こんな時間にこんなところで」
下衆な狙いをひた隠しにして、男は少女に声をかけた。
さも親切そうな感じでだ。声色だけならば、かなり優男に擬態できていた。
が、少女は長い前髪で目元を隠したまま、何の反応も示さなかった。
男は無視されるのが大の苦手である。相手によってはこの時点で一発暴力にて挨拶をしていただろう。
しかし彼は幸い仕事終わりである。依然機嫌よく、少女の前に回って今一度「どうしたの?」と問いかけた。
すると少女は長い前髪の隙間から吸い込まれるような黒の双眸を男へ向け、「どうもしないよ」と、無気力かつ無機質な、鈴の鳴るような声を返した。
初見で、男はこれはしめたものだと心中嘲った。
体格がよく威圧的な風貌である自身を目にしても、なんのリアクションも示さないほど感性が麻痺している。
彼の経験上、それは既に暴行に慣れている人間にしか見られない反応であった。
「どうもしなくなんかないでしょ」
少し優しくすれば、すぐにいける。
目論みに従って、彼は根気強く話しかけた。
側から見て酷く滑稽であるにも関わらず、さも親身に、一時の止まり木を装って。
「ここじゃ寒いし、危ないよ。うちが近くだから、少し入ってあったまらない?」
「……馴れ馴れしいね。おじさん、ぼくと知り合い?」
生意気な口を聞かれても、関心のない目を向けられ続けても我慢して。気のいい男を演じた。
「違うけど、おじさん心配なんだ」
「……あっそ」
「あったかい飲み物もあるからさ、せめて飲み物だけでも飲んでいかない?」
「……」
かくして、狙い通り少女は頷いて、男は目的を達した。
家に入ればこちらのものだ、と。親切を装い、薬を混ぜた温かいお茶を出し、少女に飲ませた。
少女は特に疑う素振りも見せずに飲み干し、ほどなくその場で意識を失った。
「ふっ、へへへっ、上玉じゃねえか」
前髪を上げれば、そこには男の最も好むタイプの整った顔があった。
彼には昔一目惚れした理想の女がいたが、これまでで一番近似していたと言っていいだろう。
血色は悪いが柔らかそうな頬。少し広めの富士額。
どちらも光を弾いて傷一つなく。
閉じた瞼から伸びたまつ毛は長く、薄紅の唇は豊かに艶めいていた。
まさに男の理想の体現である。
軽い口ぶりの割に、真に心を打ち抜かれていた。
「すぅー……はぁ」
若い女子特有の、甘い香り。
目一杯堪能し、いきり勃つ欲望の権化を擦り付けながら。
「カラダのほうはまあ、ちょい貧相だが……」
乱暴に制服を剥き、下着をずらして、少し浮いたあばらの上にある慎ましやかな乳房を確認。
胸板は薄く、男の手で簡単に挟みこめてしまうほどだったが、確かにわずかばかり柔和な脂肪の感触があった。
摘んだり、撫でたりして、冬の乾燥した空気に触れてなお、しっとりとした滑らかさを保つひんやりとした肌を堪能したのち。
「十分楽しめるだろ」と、彼はざらつく大きな舌で、その中心のささやかな蕾にむしゃぶりついた。
寒さのおかげか、それは最初から既に十分な硬さがあった。
微かに膨れた桜色の乳輪をなぞってから、包み込むように舌べらを当てて、歯で甘噛んで、転がして。
暇な右手の人差し指でも、空いたほうの突起を弾いたり、親指と挟んで弄んだりした。
これはいい、いつまでもいじっていられそうだ。
退屈凌ぎにテレビを見ながらいじるのもいいし、寝る前に落ち着くためにいじるのもいい。手慰みには最適だ。
そう評して、擦り切れる勢いで弄り続けたあと。反応の不足にふと物足りなさを感じ始め、彼は趣向を変えた。
スカートを脱がし、爽やかな水色のレースショーツを露わにして。
太くはないが、決して細くはない肉感のある太ももの質感を味わってから。
そのショーツは脱がさずに、ソフトなタッチで柔らかな股の間に指を這わせた。
すりすりと鳴る、布擦れの音。ハの字にひそめられた少女の整った眉。
乙なものだ、と。男は倒錯して、没頭しかけるが。
ほどなくその指先は乳首と同じ、硬くしこった突起を捉えた。
それみたことかと、男はその柔らかな感触のなかに現れた芯を中心に弄んだ。
指の腹で回して、ガラにもなく丁寧に丁寧に。輪郭を掘り起こした。
すると、ひくり、ひくり。少女の肢体は指の動きに合わせて、微かに痙攣を始め。
「あ、ふ」と。微かに甘い吐息を漏らすようになった。
「ほほう」と感心する男。
心を覗けば、膨らんだ醜悪な期待に血管が浮き出て脈打つ様が見られたことであろう。
彼は親指でその突起をいじくりながら、中指をその下に続く一本の溝に這わせ、埋めるように圧した。
瞬間、じっとりと。溝は湿り気を帯び始め、濃い色のシミを浮かび上がらせた。
愛の字がつく分泌液。感じている何よりの証拠だった。
つけたり、離したり、とんとんと叩いたりを繰り返すと、それは一層濃くなっていった。
合図と見なした男は、迷わず筋ばった手をショーツに滑り込ませた。
案の定、しっかりと濡れそぼっていて。あっという間にその指先は温い粘液でぬめった。
少し動かすだけで、くちゅりと。したない音が立つほどの量だった。
太いミミズのような男の指が欲望に忠実にかの突起を責め立てれば、その量はさらに増えていき。
男の指先は粘液のなかを泳ぐようにまでなってしまった。
痴態。少女ならば誰もが恥ずべきあられもない有り様。
が、意識のない少女にはその権利すら無く。
男が溝の奥へと指をすべり込ませると、腰のうねりは快楽の波を表現し始め、吐息は甘く甘高く上擦った。
もはや疑う余地もなかった。
誰の目にも明らかに、彼女は官能の海に溺れ始めていた。
随分と敏感なんだなあ、おい。
男は自身のテクニックに自信があった。
しかし、無理やり犯した女で、これほど早く深く身体を拓けてしまった者は初めてであった。
想像を超える淫靡。
男は確信した。こいつは被虐に慣れていると。
調教済みの、淫乱のカラダ。男の欲望の捌け口として拵えられた、男のための一級品だと。
一層そそられ、彼はもう辛抱ならんと予定を前倒した。
目を血走らせ、鼻息荒く、悦び勇み。
ショーツに手をかけ、乱雑にずり下ろした。
露わになる、縦一本のスリット。薄紅の粘膜。
つーっと伸びる、そことショーツのクロッチとを繋ぐ、はしたない銀の露橋。
甘くさい、メスの色香が放たれて。
男はただ、彼自身の経験と、遺伝子に刻み込まれたものを頼りに腰を向かわせ。
膨張肥大した欲望の権化。そそり勃った自慢の陽根の先端をその溝へと当てがい、一気に挿しこんだ。
瞬間、「くっ、おぉ」と男は走る快感に思わず間抜けな声を漏らした。
溝は狭く、小さく見えた。なので勢いよく裂き広げ、一気にねじ込まれるかに思われたが。
しかし、溝はねっとりとした肉壺として十二分に機能し、細かな肉襞のある内壁で男の暴力的な圧力を包み込んで。
ゆっくり、ゆっくりと、その先端を最奥まで導き、そしてずっぷりと、根元まで飲み込んでしまったのだ。
まるで、初めからここにあるべきであったかのような、これ以上なくはまり込んだ感覚。
男は完全な挿入を果たしてからもしばし「おお、おおぉ」と情けなく、耽溺した声を漏らしてしまった。
なんだよこりゃ、とんでもない名器じゃねえか。
「ふっ、はは、腰抜けちまったぜちくしょう」
悪態を吐きながら、男は少女をひしと抱き寄せて。
当初の予定通り、その細い身体を性処理道具として使い始めた。
少女は、男をまったく飽きさせなかった。
蜜壺は突けば突くほど締まり、飛沫をあげて快感に喘ぎ。
吐精すれば吸い付き、甘えるように彼の男根を絞り。
回数を重ねれば、ふわりとろりと蕩けた。
「こっちは、どうだ」と試した尻穴も同じ。
既に指4本が平気で挿入るほどに拡張調教済み。
挿入すれば男を丁寧に迎え入れ、肉感で包み込み、よく締め付け。
劣情の濁流を一滴も溢さず飲み込んだ。
口内も、ほぼ性器。
男がキスをすれば、意識もないのに勝手に舌を絡め。
男根を捻じ込めば、勝手に吸いねぶった。
それら壮絶な性的調教の痕跡が残っているにも関わらず。
すべての粘膜は薄桃色であり、まるでこの姿でつい少し前に産み出されたかのように瑞々しく、美しいのである。
「ふーっ、ふーっ、ふーっ……」
非現実的なまでの耽美な肉体に魅了され。
冬なのに、玉のように汗をかき。
男は時間も忘れて少女を犯した。
行為は夜を過ぎ、明朝まで続いた。
そこまで盛り狂って、ようやく男の体力の限界を迎え、束の間の一服に入り始めたのだが。
「……」
薬が切れたのか。
ついに少女が目を覚ました。
「へっ」
端正な顔立ちを観察していた男は、偶然その瞬間に目が合った。
タバコをふかし、少女を見下ろしながら蹲踞の姿勢を取ると。
まだ互いの体液でぬらりと光っている勃起した肉棒を彼女の頬に添えて、悪辣に顔を歪めてみせた。
どうだ、寝ている間に散々蹂躙された感想は、と。
しかし、紫煙混じりのむせかえるような性臭のなか、少女は顔色ひとつ変えず。
ただ無表情、かつ無言で、気だるげに。
近くに添えられた男の男根へ自ら舌を伸ばして、巻き取るようにして咥え込み、しゃぶり始めた。
あまりにもシームレスな行動である。それ自体はもはや、彼女の具合からして男を驚かせるものではなかった。
ただ、その舌使いがあまりにもさりげなくそれでいて巧みであり、「うおぉっ⁉︎」と驚いて、男はまた腰を抜かしてしまった。
「くっ、起きて早々お掃除フェラとは、心得てるじゃねえか」
強がる男。ひとえに性対象でしかない女ごときにペースを握られたくないという彼のプライドがそうさせた。
が、少女はそんなプライドを挫く勢いで、男受けする舌技を披露。
鈴口を舌先でちろちろと高速で舐めたり。
裏筋に沿って舌を這わせたり。
鬼頭をカリに沿ってぐるりと舐めまわしたあと、喉の奥まで迎え入れ、喉輪で締め付けたり。
ありとあらゆる方法で男を責めたて、おうおうと鳴かせた。
「おっぶ……!」
男の余裕はみるみるうちに奪われ、吸っていたたばこを落とし、危うく火事を起こしそうになった。
彼は指で火元を潰し「あぶねえだろ!」と八つ当たりしたが、それでも少女は一切気にも留めず。
男の男根を唾液のローションで包み、ひたすらに蕩し続けた。
「こっ、の……!」
背骨の熱さと、視界の瞬きにいよいよ危険を感じた男は、少女の頭を掴んで、暴力的に最奥に捩じ込み、予定にない吐精を果たした。
「おっ……おおおぉっ」
少女はそれすらも吸いねぶった。次々に胃の中へ落としていって、なおも続けた。
男根は流石にもう打ち止めだった。しかしそれでも射精感は止まらず。
ついには情けない透明な飛沫を連続して吐き出してしまった。
「っ、もういい、やめろこのっ……!」
男はこのとき、人生で初めて異性相手に根負けして、自ら男根を引き抜きにかかった。
辛うじて、ひょっとこのように吸われて粘られたものの、引き抜くことができた。
バランスを崩し、男は尻餅をついた。
少女は動じなかった。先ほどまでとなんら変わらない姿勢を保ったまま、男を静かに見据え続けた。
はーはーと、息も絶え絶え。
余韻のなか、しばし肩を震わせた男は、ようやく息を整えると少女に食ってかかった。
「おいこのアマ、お前名前はなんて言うんだ? ああ?」
少女は粘つく口内に苦戦しながらも、相変わらず無機質に、されど皮肉たっぷりに返事した。
「ホオズキ」
「あ? それが名前か?」
「ちがうけど」
男は彼女の腹を一発殴った。
しかし、彼女は声ひとつ上げず。
満足のいかない男はいっそう凄んで詰め寄った。
「てめえ、こんだけ俺に恥かかせといて、ただで済むと思ってんのか?」
「恥? 眠らせて犯す、情けない男が?」
少女は綺麗な顔に一切の感情を乗せず。
淡々と、彼の嗜虐心を煽るセリフを並べた。
「……いい」
おかげで男の虚栄心が、言葉となって震えた。
「……いい度胸じゃねえか、気に入ったよ」
男は言葉通り、それはもう心底、彼女を気に入ってしまった。
なんとしてでも表情の乏しい美貌を屈辱で歪ませてやりたい。
そんな欲望で頭がいっぱいになり、周りにも秘密で少女を監禁し、これまで以上に背徳的で、爛れた日常を送り始めた。
「感謝しろよ、どうせ身よりもないんだろ? 俺が飼ってやる」
元より常習犯である彼の根城には専用の道具が揃っており、手段には事欠かず。
彼女の手脚と首には枷が嵌められた。
自由の効かない相手であれば、もはや男の独壇場。
「騒いでもいいぞ? ここに住んでる連中は気にしないからな」
もちろん独占できなくなるのは不本意。だが念入りに心を折るために、彼はきちんと口枷も嵌めて、そう告げた。
騒げばもちろん殴る。反抗的な態度を取れば痛めつけてやる。
それら彼の常識では至極当たり前のルールも添えられて。少女にとって地獄の時間が幕を開けるはずだった。
が、少女は不気味なほどに従順であった。
一切騒がず、行為を求めれば一切反抗せず。男の要求に完全に従い続けた。
「帰ってくるまでそのまんまな」と性玩具を穴という穴に差し込んだままの放置プレイをさせられて、干からびるほどに絶頂を繰り返したあとでも。
さんざん尻の穴に浣腸をされて、漏らすまで我慢を強いられたあとでも。
彼に頼まれれば無機質な表情のまま、泣き言のひとつも言わず、ありとあらゆる奉仕をした。
「ははっ、そうだ……そのうっすい胸板でしごいて見せろ」
「……ん」
くっ、なんでこんな巧いんだよ。
つるつるの脇で散々しごいて、横乳から乳頭にかけてを滑らせた後の状態で。
豆のような乳首と舌先とで、上向きに反り立った男根の鈴口を弄る少女。
貞操帯の内側についた張型を股座に挿し込まれ、振動を与えられ、背筋を逸らしてよがりながら、決してその手技は乱れず。
柔い頬も、耳の頭も赤らめ、心地よさそうに目だけは細めつつも、相も変わらず作り物のような表情であった。
男は「妖怪かよ」と心中で恐れ入った。
淡々と、粛々と。
それでいて耽美に。寒い部屋で、冷たくなった肌で、灼熱の肉棒を扱い続ける。
男の情欲を満たすために生まれたような、そんな妖怪。
そんなものが、はたしてこの世にいるものか。
男の疑問に、答えはなかった。
「射精すぞ、受け止めろ」
勢いよく噴き出した白濁にどれだけ絹肌を汚されようと、少女は当然あり方を変えなかった。
肢体を艶やかにテカらせながら、何も言わずとも、彼にとって好い反応をひたすらに返した。
屈辱に歪まない、氷のような美貌のまま。程よく喘ぎ、頬を染め、快感を滲ませるような。
もっと嫌がれ。もっと抵抗してみせろ。もっと恥辱に歪んだ顔をしろと。
もっと、もっとを引き出し続けるような絶妙な完全解答を延々と続ける、最高の逸材としての振る舞いを一切崩さなかった。
「鎖なんかで繋がなくても、出て、行かないよ? そっちが、追い出さないかぎりは」
度を越した快楽依存か。はたまたこれ以外、生き方を知らないのか。
「黙れこの雌豚が」
「んんっ」
まさに理想の肉人形。
いったいどのようにすれば、このようなものが完成するのか。
出来過ぎであり、流石の男でもひと月も続くと、なにか得体の知れないものを掴まされたのではないかと不安になり始めた。
「お前、いい加減本当の名前を教えろ」
「やだ」
少女はいくら脅されたり薬を盛られたりしても、一切本当の名前を答えなかった。
しかし、行為を重ねていくうち、少しずつだが男にそれ以外の情報を与えた。
「これだけヤッといて強情すぎんだろ、ならせめてガキのころの話を教えろ」
「あまり話したいものじゃない」
「なら話せ」
「……僕には、おねえちゃんがいたんだ」
曰く、少女には姉がいた。
母のみの片親家庭であり、男が今住んでいるアパートと同じような場所に住み、風呂も衣服の洗濯もままならないような貧しい生活をしていた。
学校ではそのことで常にいじめられており、あだ名は「ぞうきん」だった。
「はっ」
男も両親こそ健在であったが、荒れ果てた家庭で育っていた。
しかし、彼の受けたネグレクトは彼の暴力性を発露させる根幹である。
生まれたころから己は常にひとり。
喧嘩を売るやつはねじ伏せ、常に虐げる側として生き延びてきた。
つまりは強者としてのアイデンティティーに結実しているのである。
ゆえに弱者に甘んじる者など理解不能。
鼻で笑い、「どこにでもあるような話じゃねえか」と一切同情せず一蹴した。
「そうかな?」
「そうだろ、俺がお前くらいの年のころにゃだいたいクラスに1人はいたぜ? そんな感じの、しょーもない不幸を自慢するヤツがな」
一蹴しつつ、どうにも。かつていじめていた、自身を苛立たせる誰かと話が似ている気がして、男の胸中にはモヤがかかった。
特に「ぞうきん」というあだ名。
これは彼が学生時代いじめていた男子生徒のひとりに該当しており、彼の頭のなかで、その顔が朧げに想起されていた。
しかし、男はどこまでも無神経である。
自身が虐げてきたものを意識することなどあるはずがなく。
当たり前のように忘れており、それゆえにいっそう煩わされた。
どんな顔と名前だったか────ああ、思い出せねえし思い出す気にもならねえ。
もっとも、刹那主義者である彼にとっては今がすべてである。
通り過ぎた過去に煩わされることなど、まったくもって我慢ならなかった。
「なんていったかなぁ、アイツ。はは、よく思い出せねえや」
そう言いながら、その苛立ちを少女のカラダにぶつけた。
より一層、深く、強く。彼女の溝を剛直で抉り、違和感を白濁りした濁流によって押し流そうとし続けた。
「あ、ふ、僕の、おねえちゃんはね、ん、ちょうどいまみたいなかんじで、犯されたんだよ」
少女は、なぜかそれを許さなかった。
相変わらず長い前髪の奥、光の吸い込まれそうな深い闇を湛えた瞳で、男ではないどこか遠くを見通すようにして。
温度のない声を喉の奥から絞り出し、絶妙に艶っぽく響かせた。
「僕とはちがって、っ、やめて、やめて、って叫びながらね」
男が途中で「きもちわりいからやめろ」と遮ろうとしても、珍しく従順に従わなかった。
知る限り2度目の不服従。どちらも「ストップ」に関するものである。
本来気に食わないものだが、あまりに完璧に近い少女だ。
男にとってはそれが若干の愛嬌にも感じられた。
そして、だからこそ。男は少女の唇を奪い、彼女の口内を徹底的に蹂躙した。
んぶ、ちゅぶ、ちゅく。
サイズの圧倒的に異なる唇同士。粘液の混ざり合う卑猥な音を立て、その間で甘美が延々と生じる。
側から見れば男という名の肉食獣が行う捕食行動。
舌を絡め、しゃぶり転がしている間は少女も喋れない。
このまま喋れなくしてやると、男は腰の動きも加速させ、極上の雌膣を擦り切らせる勢いで荒々しい抽送運動を繰り返した。
ぷしっ、ぷしぃっ。
男の剛直が最奥を潰すたび、可憐な粘膜は悲鳴の如き噴水を噴き出した。
なお、それでも足りないと男。
不服従は徹底的に躾けねばと、自分が息継ぎをするために唇を離したところで、相手に息継ぎをさせないために首を絞めて、更に責め立てた。
すると、やはり男の理想通り。少女の瞳はぐるりと上向き、雌穴はいっそう強く強く痙縮し締め付けた。
なんと健気で、なんと従順な身体だろうか。
愛おしさで加速する暴力性は留まることを知らず。
男自身息も整わないうちに、おあつらえ向きに突き出されたピンク色の舌べらをダボハゼのごとく咥え込んだ。
酸欠で暗む世界で響き合う、汁気たっぷりの肌同士がぶつかり合う音。
延々と、延々と繰り返され、そのたび締まる蜜壺が何度も痙縮して男の剛直を締め付け、なおも止まらぬ男の前後運動が少女を蹂躙し、彼女は反り返り悶えた。
しねっ! イキしね! デスアクメキメろ!
殺意と情欲の入り混じったドブ色の感情は頂点に達し、果てに汚濁の灼熱として吐き出した。
男の身体の下で、少女の身体が大きく痙攣して、力無く沈んだ。
流石に壊れたか、と男はほんのわずかな心配、不安、後悔と、途方も無い悦に心を揺らし。
唇を離して、ふーふー息を切らしながら身体を起こした。
回復していく暗んだ視界。
男の荒い吐息に吹かれて、透明な粘液の糸がはたと途切れたその向こう。
少女は変わらぬ無機質な表情で、男の向こうの虚空を見つめていた。
「おねえちゃん、どうなったか、知りたい?」
普段の男ならば、歯牙にも掛けなかったであろう。
しかし、少女の姿と言葉は彼の脳髄に突き刺さり、その拙い感情には余るなにかを抉り出していった。
男は気付けば少女のする話の断片を繋ぎ合わせて、もはやほとんど個人を特定しているかのような口ぶりで、贔屓にしている探偵に調査を依頼していた。
「随分と妙な話ですね」
「いいからやれ」
まるで溺れまいと必死に足掻く海難者の如き必死の形相。
誰の目にも常軌を逸していると察するにあまりある態度だった。
加えて、男の風貌そのものにも、他者から見て明確な変化が現れ始めていた。
「落ち着いてください、そんなやつれた顔で凄まれても困ります」
「あ?」
このころになると、男は会う者のほとんどから「やつれた」「様子が変わった」と言われるようになっていた。
しかし男自身は自覚がないのか、それとも自覚すること自体を恐れたか。「そんなことはない」と頑なだった。
彼は自己を省みない傾向のある人間であったが、流石にこれほどまで酷くはなく、異常は明らかであった。
ただ、自業自得である。
そんな明確な異常を見ても、見知った者は大体が「とうとう何か相当な厄介ごとを抱えたか」もしくは「やばい薬つかまされたか」と、軽薄に納得するだけで心配などせず、深入りを避けた。
「やれっていってんだろ!」
「っ、はいはいわかりましたよ」
男は苛立ちを募らせながら、ますます少女がもたらす快楽に依存していった。
何かがおかしい。
そう感じながらも、味わってしまった禁断の果実は彼の脳髄を犯し、今更手放せないというところまできてしまっていたのだ。
今まであれだけ楽しくやっていた仕事もおざなりにして、朝起きるときは少女のフェラで起き、夜は抱き潰して眠る。
真意はどうあれ「おまえはたしかにここにあるんだよな」「おまえだけは、なにがどうあっても俺のものだろう」と。
少女自体に不可思議な不安を感じながら、その不安を少女で解消するという、あまりに愚かしい負の循環に嵌まり込んでしまった。
して、どんな界隈でも成果が振るわないのであれば問題になるのが仕事というものである。
彼の雇用主は、たとえ彼の仔細に興味がなくとも、彼の凶暴性には暴力装置としての一定の信頼を置いていた。
ゆえにそれが精細を欠き失われつつあれば問題視せざるを得ず。人を介して彼に忠告を始めた。
「話はわかってるよな?」
「ああ?」
事務所に呼び出され、筋骨隆々の黒服を従えたメッセンジャーに冷淡な視線を向けられながら。
「しゃんとしねえと、そろそろだぞ」と釘を刺された男。
いささか抽象的な表現であったが、あくまで仕事の話だと、冷静であれば理解できる範疇であった。
しかし、男は少女のことで頭がいっぱいで。難癖をつけられ、少女を他の男たちに取られそうになっているのではと思い込んでしまった。
「なんだよ、オレの性奴隷がそんなに羨ましいのか?」
「は?」
男は半狂乱で叫んだ。「悪いがてめえらにはやらねえよ!」と。
その瞬間部屋はしんと静まって、男に向けられる視線はどこか憐憫を含んだものに変わった。
「……お前さんよぉ、シャブはほどほどにしたほうがいいんじゃねえか?」
「んだと?」
メッセンジャーは幾分良心的であった。
だからこそ、本来であれば伝えられるはずのない自身に対するの身辺調査の結果を、男は耳にすることになる。
「こっちとしてもプライベートに口出しすんのは憚られるんだがよぉ、毎晩ひとりで猛り狂ってるやつの報告受ける身にもなってくれや」
狐につままれるとは、まさにそのときの男のことをいうのだろう。
そう。男を監視報告する者は、否、それに限らず男のほかの者は皆、少女の存在を認識していなかったのだ。
「…………!?」
冷静さを欠く男でも、その異常性は直感的に理解し、心を掻き乱された。
確かに男は少女を独占すべく、通常よりも過剰にその存在を隠匿しようと尽力していた。
しかしそれは所詮男の浅知恵レベルであり、せいぜいが隣人たちに少女の姿を明かさない程度のものである。
“ひとりで猛り狂っている”などという表現には、なるはずがないのだ。
「マジで大丈夫か、おま」
「──んな」
「あ?」
だが、男の拙い頭のなかでは、なぜかパズルのピースが嵌っていくような感覚があった。
自身がどれだけ乱暴に扱っても壊れない理想の性玩具。
かつてそんなものがあっただろうか。
自身がどれだけ恐れられていたとしてもこれだけの期間、周囲の股間に脳味噌の付いたゲスたちが誰も手を出そうと寄ってこなかった。
かつてそんなことがあっただろうか。
少女の実在性の希薄さ。
その雰囲気の面妖さ。
どれもこれもが不確かで、あやふやで。幻覚であると考えたほうが的確だと感じるものである。
しかし。
────んなわけねえ。
しかし、しかし、だとしても。いや、だからこそ。
男は認めるわけにはいかなかった。
あの官能が幻だと。限りあるものだとは、断じて受け入れられなかった。
「──んなわけねえだろ」
男は呟きを震わせて、踵を返し。
「あ、おいこら待て」と虚をつかれたメッセンジャーの制止も振り切って、大慌てでその場を後にした。
そんなわけがない。あいつは今もあの部屋にいる。
雌膣を淫らに濡らして待っている。オレの、オレだけの性奴隷だ。
ふっとふいたタバコの煙のように消えてしまう想像をして、肌をひりつかせ、心臓を締め付けられるような思いをしながら。
男は自室のドアの前に辿り着き、まるで燃え盛る炎のなか、新鮮な酸素を求めるが如く開いた。
「……はは」
玄関横、磨りガラスの向こう。
淫猥にくねる少女の影は、部屋を出たときと変わらずそこにあり。
微かだがはしたない悶々とした息遣いで、その存在を主張していた。
んだよ、ちゃんといるじゃねえか。
男は安堵して腰を抜かし、その場に座り込んでタバコを吸ったあと、大きく息を吐いた。
新鮮なニコチンが血を巡って脳に入り、シナプスが弾けて、想像力を齎す。
今浴室のドアを開け放てばどうなるか。
ディルドを咥え込んだ割れ目からも、猿轡をした口元からも雫を垂れ流した少女の姿があるはずだ。
密閉された空間につまった卑猥な雌の香りが放たれるはずだ。
血流が巡り、ズボンを破るのではないかと思うほどかつてない股間の張りを覚えた男は、その場で服を上下とも脱ぎ捨て立ち上がった。
が、その瞬間、玄関横に置かれた姿見に自身の姿が移り、強烈な違和感を覚えた。
「……は? お?」
あれだけ鍛え上げられていた身体が、随分と貧相な姿になっていた。
まるでみすぼらしい優男である。日サロで焼いていた肌の色まで薄くなっていた。
加えて、横の筋が失せて縦筋一本だけになった腹の、へその下のほう。
既視感のある植物が、なにか見たこともないようなデザインで子宮に似た形を模っているような、そんなタトゥーが浮かんでいた。
もちろん男にこんなものを彫った記憶はなく、身体もここまで痩せ衰えた自覚はなかった。
しかしなぜかそのとき、その瞬間、自覚してしまったのだ。
なんだよ、これ。
咥えていたタバコが玄関に落ち、昂り滾っていた血の気が一気に引いていくなか。
畳み掛けるように男のポケットからバイブレーションが響いた。
着信は、かの探偵からであった。
茫然自失の男は、気もそぞろに応答してしまった。
「……もしもし」
探偵は男の名前を呼び、「今大丈夫ですか」と時間的余裕があるかどうか、前置きとして尋ね。
男が「ああ」と答えると、特になんの思い入れもなさそうな淡々としたトーンで結果を話した。
「まず結果から言うと、あなたが調べるように言っていた女の子ね、10年以上前に亡くなってましたよ」
パニックになった男の頭は、話に追いつけなかった。
「性的な暴行を苦に自殺だそうです。その地域では有名な話になっていたので、情報は簡単に集まりました」
ただひとつ「有名だって?」と引っかかったワードに反応。
身を強張らせ、頬に冷や汗をたらーりと伝わせた。
「ええ、その後の顛末が随分悲劇的で、なんでも彼女の家族、弟と母も、半年後に心中してしまったという話で────」
皮肉混じりに続いた、探偵の話にようやく彼の頭は追いつき。
そして、合わない辻褄を前にして絶句した。
じゃあ、なんなんだ。
俺の家にいるあの少女は、一体────
瞬間、男は後頭部に衝撃を感じて、意識を失った。
「────あ?」
次に男が目を覚ますと、すっかり降りた夜の帷のなか、彼は布団の上に裸のまま仰向けで寝かせられており。
彼が買い揃えていた拘束具で、手脚を床に拘束されていた。
「は?」
尻穴には、感じたことのない栓をされたかのような圧迫感。
首元には、屈辱的な性奴隷の証たる首輪。
まさに、自身がこれまで女性に対して与えてきた格好そのものに近しい。悲惨な有り様であった。
「なんだよ、なにがどうなって」
「やっと起きた」
疑問を遮るように、冷淡で艶のある少女の声が響いた。
男は首を動かし、網膜にその姿を捉える。
そうしてやっと、完全ではないが自身がまずい状況にあることを悟り、急速に頭に血を昇らせ「っ、てめえ、なにやってくれてんだ!」と叫んで暴れた。
「……」
少女は何も返さなかった。
ただ表情の乏しい顔はそのままに、さも厭わしげに微かに目を細めて彼を見下ろすのみ。
男はしばし怒りのままに暴れたが、脱出には程遠く。
生まれて初めての無力感に蝕まれつつ、ついに脱力して「なあ……」と少女へ問いかけた。
「おまえ……本当に、なんなんだ……!」
少女は凍えるような温度を瞳に宿し、答えた。
「まだわからないんだ」
本当に残念だ。
少女は表情ではなく、その身に纏う重々しい空気と、腰を下ろす動作のみで落胆を表現した。
なお、その過程で彼女の手元は男の股間の輪郭をさっとひと撫で。
「ふぐっ!?」
瞬間男は腰の奥まで熱くなるような表皮の灼熱感を覚えた。
自身の逸物が、今までにない異様な勃起の仕方をしていたのだ。
それに気づき、「ぐっ、なんだっ、これはぁ」と困惑を漏らした。
が、少女は答えず。その逸物へ自身の涎を垂らし、ヌメらせ。
その刺激にすら悶絶し腰を浮かせる男のそれを、すべらかなその手で扱き上げ始めた。
「こっ、やめっ」と男は少女を睨め付け意思を伝えるも、もはや生殺与奪は彼女にあり。
懇願は無意味で、ただただ今まで散々行われた淫技が彼を襲った。
裏筋を人差し指でなぞり上げられたり。
手のひらで包み込まれながら、とんとんくちゅくちゅと鈴口を撫でられたり、叩かれたり。
加えて舌先で玉の裏や、カリを舐められたり、ちろちろと竿先を弄ばれたりした。
「こっのおおおっ」
イかさず冷まさずの、絶妙な加減具合であった。
絶頂寸前のまま、男の尿道は何度も痙攣し、そのたびにカウパーを滾々と垂れ流してしまった。
もういい、やめろ。手段が見当たらないまま、そんな意思を伝え続ける男。
それも虚しく、少女の口元は男の股間へと向かい、彼の逸物を咥え込んだ。
「ぐっ、おおお」
男の喉から、一切の余裕のない苦悶が漏れた。
咥え込まれた男根から走る衝撃がそれほどまでに大きかったのだ。
虚を突かれたのと相まって、あまりにも情けない声が出てしまった。
敵意を充填し「てっめえええ」と凄んでも、時すでに遅し。
たっぷりの生暖かい唾液に、妙に鋭敏化した肉棒を包まれ、しなやかで感触のいい舌に弄ばれてしまえば、たちまち腰を仰け反らせて喘いでしまった。
「よせっ、っ、くううぅっ」
教え込んでいたつもりが、教え込まされていた。
男の逸物は、完全に少女の舌技に飼い慣らされていた。
おまけに、尻穴の奥。
挿し込まれた異物の圧迫が、未開発のはずであるにも関わらず異常なほどに成熟させられてしまっている男の前立腺をごりごりと刺激し、男の官能中枢を狂わせた。
「おぉっ!」
喉輪で締め上げられ、蠕動するように頬の肉と舌とを動かされながら吸い上げられる動きで、あっという間に吐精。
なおも尿道から一滴も残らない勢いで絞り上げられ、男は情けなくおうおうと鳴かされた。
「くそっ、おおおお!」
散々鳴かされて、声も枯れて。
ようやくちゅぽん、と解放され、訪れた一時の安寧。
ぴくぴくと痙攣を繰り返す男を、少女は相変わらずの表情で見下しながら言った。
「いつも忘れるんだよね、虐げる側の人間って」
「っ、ふーーっ、っ……?」
「こっちは絶対に忘れないのにさ」
そのとき、チカチカ明滅する男の視界の奥で。
ぼやけた少女の顔貌と、脳裏に浮かび上がったかつていじめていた者の顔貌とが重なり合った。
「てめえ……あの“ぞうきん”、なのか……?」
「──ふふ」
これまで決して上がることのなかった少女の口角が上がった。
「虐げられれば、少しは忘れないようになるかな?」
彼女は彼の視線を釘付けにしたまま、脚を開きながら腰を開け。
張りを失って痙攣する彼の肉棒の真上に下の口を置いて、その縦割れから飢えた獣の如く涎を流す。
「あ……」
男は目の当たりにした。
少女のへその下で怪しく灯る、男の下腹部に浮かび上がっているものと同じ形の紋様を。
「いっ、いかれてやがるっ……いかれてやがるぜチクショウっ」
いったいどこのどんな伝手をつかえば、ここまで姿形をいじれるのか。
どんな執念で、ここまで異様になるのか。
いくら現実的に考えても、男にはその説明をつけられず。
されるがまま、少女の股の割れ目に肉棒を押し倒され、そのままずにゅりずにゅりと擦り付けられ「ぐああっ」とまた情けなく喘いだ。
「てめえ男だろっ! くそっ、なんだって、こんなっ」
否定してこないゆえに、男は少女を“彼”と断定して嘲ろうとした。
男のくせに女になって男の逸物しゃぶるホモが、や、キモいんだよカマホモ野郎など。
しかし、どう足掻いてもそれに執心していた心と、現実離れしていると考える頭が受け入れられず。中途半端なかたちの罵倒ばかりが口を突いて出た。
そうこうしている間にも、竿先からトロトロと垂れ流される汁と、少女の粘液。
混ざって白濁りのローションとなり、柔い肉感をとろりとヌメらせた。
快感に包まれた肉棒は意図せず無理矢理に怒張させられていき、あっという間に再びはち切れんばかりに怒張。
「くっ、おおおっ」と男は腰を抜かし、やがて取り留めもなく喘ぐしかできなくなった。
「ふふ、ははは」
どうしようもなく情けない有り様になっていく男を見下し、嘲笑う少女。
その艶やかにくねる細腰は、彼に一切容赦せず。
淡々と追い詰め、その末に一瞬だけ浮かされ、
「ホオズキおーちたっ」
と、静かに下ろされた。
かくして、季節外れの鬼灯は実る。
底なしだった、男の精を糧にして。
どうしてだ、どうして────
吸い上げて、吸い上げて。
萎んでなおも、根をはみ、穴を抉り、吸い上げて。
薄くなっても、そのつゆすらも吸い上げて。
「もぉ゛っ、いいだろお゛おおおおおおおおおおおおおおおおおお……!」
立派に実って、そして堕ちた。
「────はぁっ!」
彼は久方ぶりに呼吸を取り戻したかのようにして、朝を迎えた。
が、深く刻み込まれた悪夢は簡単には拭えず。布団の上で手脚をばたつかせ、後退り。
ひどく情けない、声にもならないような悲鳴をあげながら、両目をぐるぐると目まぐるしく動かした。
「はぁっ! はぁっ! はっ、ははっ……!」
いない。
いくら探しても、恐怖の対象はもういない。
窓から差し込む光が、冷たくなった手と足を暖める。
その感覚を噛み締め、彼は安堵した。
「はぁああああああああああ……」
緊張で溜まった肺の中の空気を吐き切って、一服しようとした。
が、それも束の間。
安堵の吐息の途中、首を下ろした瞬間、ぱさり。
彼の視界に、あの黒の長い髪がかかった。
「はひゅっ」
再び男は呼吸は取り留めを失い。
小さく丸くなって身を強張らせ、心臓を張り裂けんばかりに打ち鳴らす。
は? なんだ、なんだなんだなんだなんだ────
理解できず、理解しようとも思えず、ひたすらに震えた。
声の出し方も忘れて、ガタガタと。
「はっ、は、は」
しかし、どう足掻いても逃避し切れず、気づいてしまう。
見えている長い髪の毛が、自分の頭髪であることに。
「あ、あ……」
声も、よく聞けばおかしかった。
上手く出ないだけでなく、掠れたまま裏返るわけでもなく、甲高く出るのだ。
手も脚も、身体の全部が異常なまでに細く、軽かった。
表面がつるりとしていて、冷たい空気に包まれると、ひどく心許なく。
自然と内股になって自身を抱いてしまい、それがまた男を動揺させた。
わなわなと震える男は、確かめずにはいられず。
徐に立ち上がり、そして玄関横の姿見の前に立った。
映ったのは、あの少女の姿だった。
「ああ……あああ…………!」
戦慄。震える膝が落ち、その内腿を暖かい液が伝う。
直後、けたたましくインターホンが連打され。
ならず者たちが、打ち破る勢いでドアをノックしながら、一斉に男の名前を叫んだ。