※この作品はR-18です。

パパ、いい匂い……   作:夜狩景士

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娘の自慰

 真夜中に眼が覚めた。

 女が啜り啼く声がする。

 テレビかパソコンの音声だろうか。くぐもった音が耳を撫でる。

(……あんっ)

 壁を隔てた娘の部屋から、声がする。

 裕也は耳を澄ませた。

(……あんっ、ううんっ、あんっ!)

 女の嬌声だ。

 裕也は息を呑んだ。

 娘の希美(のぞみ)が啼いているのに違いない。

 希美が、自分を慰めているのだろうか?

 胸がざわついた。

 そっと壁に身を寄せ、耳をつける。

「……ああっ、いいっ、うんっ、いいっ!」

 くっきりとした娘の嬌声が耳に響く。

 亡き妻に面影が似ている希美が、あられもない声で啼いている。

 いけないことだとは思いつつも、裕也は想像してしまう。左手で乳房を揉み上げながら、右手で自分の股間を弄る娘。

「……あふんっ、うんっ、あっ、イ、イクっ、イクイクイクうううう!」

 ひときわ声が高まる。

「あんっ……パパっ!」 

 

 

「おはよう、パパ」

 食卓にはトーストとスクランブルエッグが並んでいる。

「おはよう、希美」

 朝食の席についた裕也は娘の表情をちらりと窺ってしまう。

 屈託のない笑顔を見せる希美と、昨夜の嬌声が結びつかない。

 スレンダーな身体にさらりと伸びた黒髪。そして、そんな華奢な身体に不釣り合いな巨乳に眼が行ってしまい、あわてて視線を外した。

 十五年前に亡くなった妻の冴子に成長するたびに似てくる希美。

 中学生になってから、その美しさが周りの眼を惹くようになった。

 高校では、芸能事務所からスカウトが来るほどだったが、本人は全くそういった浮ついた話には興味ないようだった。

 父親である裕也の贔屓目を差し引いても、希美の美貌は群を抜いていた。

 そんな娘が昨夜、肉体をくねらせ性欲を散らせていたのだろうか?

 裕也が聞き違えたのでなければ、希美は自慰をしながら、「パパ」と言った。

 これは、何を意味するのだろうか?

「どうしたの、パパ?」

 娘の痴態を想像していたことを悟られたような気がして、裕也は焦る。

「い、いや。いつも朝食とお弁当、ありがとうって、思って……」

 取り繕った言葉が不自然に聞こえなかったかと思い、裕也は希美の顔を真っ直ぐ見れなかった。

「何よ、あらたまって……私が好きでやってることなんだから、そんなこと気にしないで」

 眼を細めて笑う切れ長の眼は亡き妻の冴子とそっくりだ。

「でも、希美も就職したし、希美にばっかりご飯作らせて、悪いなって思って……」

 進学校で成績上位だった希美は、周りの勧めを断り、頑なに地元の企業への就職にこだわった。

 進学したら、パパと離れるから嫌、というのが理由だという。

 実は希美は裕也の勤める工場に事務員として応募したのだが、先に内定した女性がいたので、それは叶わず、別の会社に就職した。

「今さら何言ってんの、パパ。希美はパパのお嫁さんになるんだから、ご飯作るのなんて、当たり前だから」

 ちろり、と舌を出して微笑む希美。

 お嫁さん、という言葉に裕也の胸がざわつく。

 

「パパがスーツ着るのも、珍しいね」

 希美が洗面台の鏡を覗き込んできた。

 裕也は工場勤務で、いつもは私服で通勤している。

「今日は、朝イチで本社に行かなければならないんだ」

「そうなんだ……じゃ、電車に乗るのも久しぶりだね」

 いつもなら自家用車で工場に向かっている。

 四月に入り、都内にある本社で新年度の会議に出席しなければならない。

「丁度、通勤ラッシュの時間帯なんで、うんざりだよ……」

 出勤前に、タンスの上の冴子の位牌と写真に手を合わせた。

 娘が慕ってくれるのは嬉しい。だが、それが度を過ぎている気がする。

(冴子、希美の気持ちが分からなくなってきたよ……) 

 写真の冴子はいつものように微笑んで、裕也に答えることはない。

 

 玄関に向かう裕也を希美が見送る。

「じゃ、行ってくる」

「待って、パパ」

 希美がぐいっと近づいてきて、裕也のネクタイを直した。

 甘い香りがふんわりと裕也を包み、希美の息が首にかかる。たわわに膨らんだ柔らかい胸が裕也の腹に当たった。

 肉棒がびくりと反応する。

 (いかん、娘に発情してしまうなんて!)

 裕也は湧き出した妄想をあわてて打ち消した。

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