瑞希を自宅に呼びセックスしている最中に、会社の宿泊研修に行っているはずの娘の希美が現れた。
「私、帰ります……」
散らかった服を手早く着て、瑞希は裕也の家を出て行った。
翌朝、裕也は瑞希に声をかけようとしたが、避けられているようで捕まらなかった。
昼休みの食堂に入って来た瑞希は、裕也の姿を見て一瞬躊躇ったようだったが、眼を伏せて裕也の席に近づいてきた。
いつもより距離を置いて、瑞希が裕也の横の席についた。
「瑞希。昨夜は、済まなかった……」
「会社で名前を呼ばないでください」
棘のある言葉が返ってきた。
「すまん……」
裕也が頭を下げる。
「ところで、娘さんとは、話をしたんですか?」
瑞希がこちらをちらりと見た。
「いや……」
泣きじゃくる希美に、裕也は声をかけることができなかった。
朝食の席に希美は現れなかったが、それでも食事と弁当は用意されていた。
「何やってんですか! 娘さんの気持ち、ちゃんと聞いてあげないんですか!」
声は抑えているが、強い口調で瑞希が非難する。
裕也には返す言葉がなかった。
「職長……聞きますけど、職長は、娘さんとシましたか?」
「な……?」
突然の瑞希の質問に、裕也は言葉を失った。
「娘さんと、エッチ、しましたか?」
「するわけないだろ!
思わず裕也は声を荒げた。
「父娘かどうかなんて、関係ないですよ! 娘さんは真剣に職長のこと愛してますよ!」
「そんなこと、許されるわけないだろ……」
「世間一般の常識なんて、この際、関係ないですよ。一人の男として、娘さんのこと、どう思っているんですか?」
裕也は答えられなかった。
「娘さんの気持ち、前から気づいてたんでしょ? どうして真剣に向き合ってあげないんですか? これじゃ娘さんが可哀想すぎますよ!」
瑞希が大きな声を出したことで、食堂の工員たちの視線が集中した。
安藤がこちらを見てにやりとしているのが眼についた。
瑞希が声を落として呟いた。
「とにかく、娘さんとちゃんと話をつけるまで、私、職長に会いたくありません……」
瑞希は食事の途中で席を立ち、食堂から出て行った。
「パパ」と甘え、若く豊満な肉体を晒して裕也と身体を重ねた瑞希。
セックスの最中に希美に乱入されたことで、怒るのは当然だ、と裕也は思っていた。
だが、瑞希の口から出て来たのは、意外にも希美の気持ちを
娘と関係を持ったか? と瑞希は言った。即座に否定したが、既に裕也は娘の口に精液を注いでいるのだった。
瑞希のいう世間一般の常識に照らせば、すでに常識をはみ出している。
希美は冴子を亡くしてから、一生懸命裕也を助けてくれた。
母親を亡くして寂しいはずなのに、母親の代わりになろうと幼くして必死に家事に取り組んでくれた。
それらのことには、感謝しかない。
一方で、「パパのお嫁さんになる」と事あるごとに宣言し、風呂や寝る時もいつも一緒だった。
幼い頃は、自分に懐いてくれていることが嬉しかったが、成長して大人の女性に変わっていく希美が冴子に似てくると、生々しさと妖しさを感じて距離を置いた。
希美は頭のいい娘だ。近親相姦がタブーとされていることなんて、当然わかっている。
それでも裕也を求めてくる希美の想いとは、どれだけ心の奥底で煮詰められたものだろうか?
瑞希は、一人の男として希美をどう思うか、と訊いてきた。
世間一般の常識をもって、裕也は反射的に希美と性的関係を持つことを拒絶してきた。
瑞希の誘惑を受け入れ、瑞希を抱いたのも、希美の想いから逃げたからではないか、と裕也は思う。
午後の事務室で、裕也は仕事が手につかずにいた。
今夜、希美と話そう。希美の想いはわかっている。自分はその想いに応えられるのか? 応えるべきなのか? 応えたとして瑞希との関係はどうなる?
裕也の思考がふたりの女性のことでぐるぐる脳内を巡っている。
「職長、すいません。ちょっと機械がおかしいです」
新人工員が事務室の裕也のところに来た。
「安藤は、どうした?」
「呼び出したんですが、来ません」
機械の担当班長である安藤を呼び出している放送が耳に届いていた気がする。
「仕方ないな……」
ぐずぐずしていると生産ロスが増えてしまうので、裕也は席をたって現場に向かった。
異音をする機械を見て、過去に同じ状態で故障したことがあった事を思い出した。
すぐに部品を交換しなけらばならない。
裕也は第二倉庫に向かう。
倉庫のドアを引いたところで裕也は手を止めた。
女の声がしたからだ。
裕也は中に入り、そっと開けたドアを音がしないように後ろ手で閉めた。
「あんっ、はんっ、ああんっ!」
ひときわ女の声が高まり、裕也は眼を見開いた。
(瑞希?)
昨夜裕也に組み敷かれて啼いていた瑞希の声に違いない。
そっと声のする方に裕也は近づいた。
ぱんっ、ぱんっ、と肉の当たる音も響いている。
「あっ、あっ、あっ、あんっ!」
裕也は驚いた。
壁に手をつき、下半身裸で大きく円い尻を晒した瑞希が、安藤に後ろから
「ああっ、瑞希ちゃん! エッチな
前を
「あんなオッサンより、俺のチンコがいいだろっ!」
安藤は激しく腰を打ち付けている。
「あんっ、いいっ、いいっ!」
安藤は猛然と腰を振りながら、両手で揺れる乳房を掴み、瑞希の首に舌を這わせている。
昨夜、素肌を晒してあれだけ愛しあった瑞希が、今日は別の男に身体を開いて、悦びの声をあげている。
「ああんっ、安藤さんのチンポっ、凄いのおおっ!」
瑞希の叫びが胸を刺す。
安藤は動きを止め、瑞希の尻にぴたりと腰を密着させたまま小刻みに震えている。
おそらく瑞希の
裕也の心はなんともいえない悲しみで塞がれた。
中年男より自分に近い若い男とのセックスの方が気持ちいいのだろうか?
昨夜、希美の乱入で中途半端に充たされなかった性欲を発散しているのだろうか?
(瑞希は俺のことなんて愛してなかったんだ……)
絶望で身体の力が抜けた裕也は、ふらふらと倉庫を出ていった。
夕方になって得意先から納期変更の依頼が急に入ってきた。現場の進行状況を確認して、生産予定の変更を行った。
工場長の許可がいるので、デスクに電話をかけたが、出ない。
仕方なく裕也は、事務室に向かった。
事務室のドアをあけると誰もいない。どこに行ったのだろう?
工場長のデスクの裏に事務備品の倉庫があり、そこに人の気配がする。
「工場長……?」
ドアを開けると、背中を向けた工場長が驚いた顔で振り向く。
その奥で瑞希がゆっくりと立ち上がった。
口元を手で押さえ、眼を逸らして裕也の方を見ない。
「ああ……職長っ、長坂君に、探し物してもらってね……」
引き攣った笑顔で工場長が言い訳のようなニュアンスで喋る。
「そうですか……失礼しました……」
しばらくして、工場長がデスクに戻った。
「生産予定の変更の件なんですが……」
裕也の横を瑞希が通り過ぎて、そのまま事務室を出て行くのを眼の端で捉えた。
狭い密室で二人で何をしていたのだろう?
あれは状況からして、瑞希が工場長にフェラチオしていたのではないか?
いつも工場長は、瑞希の尻を眼で追っている。だからといって、いつも事なかれ主義の彼に瑞希を誘うような度胸があるとは思えない。
瑞希の方から誘惑したのだろうか?
昼過ぎに安藤にバックで
思い切りお互いの肉体を貪るように求め合ったその次の日に、複数の別の男と性行為を行うことなどできるのだろうか?
瑞希はそういう女性なのかもしれない、と裕也は思い始めた。
自分に見せていたのは瑞希の一部分で、本当は情欲を抑え切れない性癖があるのかもしれない。
「淫乱」という言葉を裕也は思い浮かべた。
「パパ」と呼んで裕也に甘えてきた瑞希。柔らかい肌で裕也を包み込むように受け入れてくれた瑞希。
その瑞希をそんな侮蔑的な言葉で呼びたくなかった。
何かの間違いだ、と思う。
何らかの事情があるのかもしれない。
だが、その事情とは何?
裕也の胸が疑惑と嫉妬で抉られた。