R-18の紅美鈴×十六夜咲夜(めーさく)です。
舞台はお馴染み紅魔館。
二人は公認のカップル設定。
咲夜に降りかかるある異変。
当然百合です。レズです。
しかも途中(サンプルサイズ)
官能初挑戦なので語力に欠けることがございますが、悪しからずご了承お願いします。
1
「きゃぁぁぁぁあっ──!?」
「のわっ!?」
いつも通り平和な紅魔館。
そんな館のメイド長の部屋から黄色い甲高い悲鳴があがり、ベッドで寝ていた紅美鈴は一瞬で飛び起きた。
布団の柔らかい感触が眠気を誘うなか、何事かと目をこすり隣を見た美鈴は、悲鳴をあげたであろう裸の彼女の姿を捉えた。
白い柔肌とほんのり赤くなった程よい胸をシーツで隠し、顔を真っ赤に染めて震えている彼女──十六夜咲夜に、美鈴の欲望が湧き上がっていく。
シーツで隠している柔肌に、胸に触れたくてついつい手を伸ばした美鈴に、咲夜の身体がより一層震えが酷くなる。
「咲夜さん? 大丈夫ですか?」
「や……っ」
本気でこの反応はおかしいと思い始めた美鈴が、シーツではなく頬に触れようとした手でさえ、咲夜は拒絶を見せて後退りしていく。
「咲夜さん!? ホントにどうしたんですか? 私の顔、分かります?」
床に散らばっていたシャツを鷲掴み、ひとまず服を着てから咲夜と目を合わせようとする。
目尻から涙さえ滲ませて、口許までシーツで隠した咲夜が怖々と美鈴を一瞥し、蚊が鳴くような声で呟いたのは、
「……あの、あなたは誰ですか?」
「…………は?」
咲夜の問い掛けに、思わず素で返してしまった美鈴は、頭の中で何度も咲夜の言葉を繰り返させ、ようやく理解した。
ところで、咲夜からの疑問という名の猛威が奮われた。
「ど、どうして私裸なんですか?
その、あなたと一緒に寝てるのは、ど、どうして? ここはそもそも、何処ですか!?」
次第にパニックに陥っていく咲夜を、どうすればいいのか分からなくなって、美鈴は思わず頭を抱え、
「えっ!? あ、あの!? ちょっと!?」
そのまま頭が真っ白になって気が遠くなった美鈴は、咲夜の戸惑いの言葉を最後に気を失ってしまった────。
「記憶喪失?」
「そう」
紅魔館の主であるレミリア=スカーレットの自室に集まった、門番や従者や妹や魔女たち。
そこで咲夜についての異変を説明したところ、パチュリー=ノーレッジが間髪入れずに答えを導き出した。
「この幻想郷でかなり少数の異変になっているみたい。あの異変解決する博霊の巫女でさえ、今はその状態よ」
「まさか、あの霊夢が?」
パチュリーの言葉に額に手を当てたレミリアだが、隣に人形さんのようにちょこんと座っていたフランドール=スカーレットは、訳が分かっていないようだ。
「咲夜が咲夜じゃない?」
「自分の名前すら分かっていない状態ですからね」
フランの呟きに、美鈴は渋い表情で腕を組む。
それに対しフランは興味なさげに「ふーん」と、だけ相槌を打ち、自分の羽根で遊び始める。
「アナタ、昨日結構激しかったけど、どんなプレイしてたのよ」
本をパラパラとめくるパチュリーの問いに、美鈴はさも悪気などなく思い出す作業に入る。
「目隠しした状態で、パチュリー様に作って頂いた媚薬飲ませて、通販で届いたバイブ一式試しました」
「……ちなみにその数は?」
「全部で17種類くらいですかね」
美鈴のとんでもない発言に、レミリアが両手で頭を抱えた。
パチュリーも久しく、レミリアと言いたいことは同じらしい。
「……原因はそれじゃないのか?」
「4、5回程気絶したくらいですよ?」
「充分だろう……!」
天然な美鈴のダークじみた言葉に、レミリアが思わず前のめりで立ち上がり突っ込んだが、椅子がガタッと鳴ったくらいで怯える咲夜も問題だ。
この状況では、まともに紅茶を淹れるどころか、掃除や洗濯もままならないのではないか?
「パチェ、戻る可能性は?」
「さあ? ショック療法とか試せばいいんじゃない?」
ショック療法、とレミリアが椅子に腰を下ろしながら呟く。と、美鈴が手のひらをポンっと叩き、満面の笑みで人差し指を立てた。
「もう一回同じことすれば──」
「お前がしたいだけだろうがっ!!
フラン、ちょっと美鈴と遊んできなさい」
「いいの、お姉様? わーい!」
調子に乗った美鈴に、キレたレミリアは優しい笑顔でフランの頭を撫でる。
撫でられたことと、美鈴との遊びが許されたフランは、天使の如く満面の笑顔で頷く。
瞬間、ビーズが弾け飛ぶような勢いで美鈴の服が引き裂かれ、後ろに隠れていた咲夜の顔が真っ赤に染めあがる。
「まままま待って下さいっ!!!! 妹様!」
「待たないよ。だってお姉様の許可が下りたんだもん。今日は一杯遊ぼう? そうだ、美鈴が昨日使ったものでいいよ。どれか選ばせてあげるから」
「ご、ご勘弁を……っ!」
「あ、先に鬼ごっこするの? 負けないよワタシ。ウッフフハハハハハッ待てー!!」
顔面蒼白の美鈴が真っ裸で全力疾走し、狂気に満ちたフランがそれを追いかけていく。何故かレーヴァンティンを片手に。
「……いいの?
あの子、今日は門番出来なくなるけど」
「罰よ罰。私の咲夜をここまで追い詰めたんだから、当然よ」
(ホントにレミィは子供ね……)
パチュリーの呆れなど知らずに、レミリアは鼻で笑いながら、立ちすくんでいた咲夜の手を優しく掴む。
「十六夜咲夜」
「??」
試しに名前を呼んでみるが、咲夜は首を傾げるのみ。本当に自分のことが分かっていないようだ。
「十六夜咲夜。それが貴女の名前よ」
「私の、名前?」
「そう。次呼んだ時に返事しなかったから、罰を与えるからね」
頬杖を付いて微笑むレミリアの言葉を、咲夜は訳が分からないまま、微笑み返す。
それがまた愛らしくて、咲夜らしくないのだが、レミリアを欲情させるには充分の効果があった。
「止めなときなさい。
こんな無垢な人間に手を出したら、カリスマおぜうの名が泣くわよ」
「バッカ。何がカリスマおぜうよ。
手なんか出すわけないでしょ? パチェはすぐに勘違いするんだから」
パチュリーの警告に、レミリアは目線を遠くに逸らし、咲夜は不思議そうに首を傾げる。
「私の世話はいいわ。
掃除とか洗濯なら、覚えてるわよね?」
「は、はい」
「じゃあそれお願いね。
パチュリーは異変の原因究明」
「レミィは?」
「私は寝るのよ。ということで、帰った帰った」
パチュリーの呆れは溜め息と共に吐き出され、咲夜の腕をとってレミリアの部屋から出て行く。
誰もいなくなった部屋のなか。
レミリアは不意に身体を震わせ、胸元を掴み大きく息をついた。
「……危なかった」
脱力して椅子の背にもたれ掛かったレミリアは、テーブルに突っ伏して再び大きく息をつく。
「美鈴のやつ……」
[newpage]
「……時間掛かった……」
紅魔館のエントランスで腰を下ろし、モップ片手に肩で息をしていた咲夜は、呼吸を整えながら少しずつ立ち上がる。
記憶喪失というものが自分の身に起こっているなどと、現実を受け止めたくはなかったが、どうやら嫌でも思い知らされてしまうらしい。
なにせ名前まで忘れてしまったのだ。
そして大事な人が誰なのかも。
あのナイトキャップを被った幼いお嬢様の寂しそうな表情を見たときに、心臓を鷲掴みされた痛みが走った。
そして特に胸を締め付けたのは、あの綺麗で長い紅髪を揺らした女性。
見覚えがないといえば、嘘になる。
どこか懐かしくて、触れられそうになると反射的に身体が逃げるように引っ込めてしまう。
何故かは分からない。
その分からないが、咲夜を徐々に苛々させていく。
「暑い……」
記憶が失おうと、人間の身体にはなんら変わりない。季節は夏真っ盛り。どこか遠くから耳障りな蝉の鳴き声が響き渡り、それだけで体力を奪っていく。
掃除と洗濯を終えた段階で、身体はもう汗に侵略され気持ち悪い。
(……シャワーだけでも浴びたい)
そんな欲望に駆られて、咲夜は浴室に向かうことにする。こんな状態で、あのお嬢様に見られたらきっと怒られる気がするから。
「えっと、確か浴室は……」
モップ片手にウロウロする咲夜。
蒸し暑くて適わないのに、一度しか回らなかった館から浴室を探し当てることは、なかなかに難しい。
記憶がないという概念が、そもそも咲夜にはない。
周りは自分を知っている。
だけれど、私の記憶は痛みしか知らない。
愛情なんて文字もなくて、文字すら分からなくて。優しさや暖かさも分からない。
ただなんとなく、あの人たちには心を──隙を見せられるような気がして。
「……あ、咲夜さん!」
ようやく浴室を見つけられたと安心した先に、朝に聞いた元気いっぱいの声が後ろから咲夜の不意を突いた。
振り返ると、この夏に似合う向日葵にも似た満面の笑みで、艶やかな長く紅い髪を揺らして、女性が歩いてくる。
「えっと、あなたは……確か」
「紅美鈴です。
いつもみたいにめーりんって呼んで下さいね!」
両手を後ろに組み、上目遣いで見つめてくる美鈴に、咲夜は一歩後退りモップを構える。さながら野良猫の警戒心とその構えに、美鈴は不満気に背筋を伸ばして腰に手を当てた。
よく見れば、額にジワリと汗が滲み出ている。首筋からも汗粒が流れていき、大胆に開けていた胸元の谷間に吸い込まれていく。
「咲夜さん。ちょっとでも、せめて私のことぐらいは思い出してくれませんかね」
「そ、そんなこと言われても……」
胸元に目線が止まってしまう咲夜は、美鈴と胸元と交互に目まぐるしく上下しながら、恥ずかしくなって逃げるように浴室の扉を開けた。
そのまま閉めてしまおうかと思ったのだが、美鈴も続けて浴室に入ってきた。
これはもう逃げられない。
そう覚悟して、モップを壁に立てかけた咲夜は、美鈴の胸元に手を伸ばし──。
「え、咲夜さん何して……」
焦る美鈴を無視し、開いた胸元をしっかりと隠すためにボタンを首筋まで閉めてしまう。
濡れたシャツの襟が首筋をヒヤリとさせ、美鈴は咄嗟に首筋を撫でた。
「だらしないから」
「あ、はい。すみません」
渋い表情で咲夜に理由を言われ、美鈴は困った顔で頬を掻き頭を垂れる。
記憶がなくとも、元の性格はそのままらしい。だが、どこか幼い対応と言動が可笑しくて、たまらなく愛おしく感じるのは、きっと末期だという証拠だ。
「……咲夜さんはどうしてバスルームに?ここの掃除はもう済ませたんじゃないんですか?」
何とかペースを戻したい──出来れば握りたい美鈴は、咲夜が立てかけたモップを一瞥して尋ねた。
その瞬間、見間違いかも知れない。
咲夜の肩がほんの一瞬ビクッと跳ねたのだ。
怪訝な表情に変わる美鈴をよそに、咲夜はよそよそしい雰囲気で目を逸らし、眉をしかめた。
「……ちょっと汗を流そうかなって」
「ああ、そういうことですか。
暑いですもんね。特に咲夜さんは人間ですし」
笑顔の美鈴の裏が気になる咲夜。
そんな咲夜の反応が手に取るように分かってしまう美鈴。
何故こんなにも警戒されているのかは、美鈴にも分かっている。
記憶の位置がどこで止まっているのかは正直分からないが、この寂しそうな、意志が強い瞳を美鈴は覚えている。
「……まだ私たちには会っていないんですね」
「?」
特殊な能力により迫害され、ナイフ一本で戦い続け、この幻想郷に送られてきた人間。
人を、誰も、信じられなかったあの頃。
まだ十六夜咲夜という名前ではなかった頃。
「咲夜さん。
今日のお仕事が終わったら、私の部屋に来てもらっていいですか? あ、部屋分からないか」
「それは、大丈夫ですけど……」
美鈴の真剣な表情に、咲夜は俯き加減で首を横に振る。その反応に、美鈴は微笑みを返し、浴室から出て行った。
「何時でも構いませんから。
お願いします。優しく、しますから」
扉越しに優しい声で美鈴は念を押し、足音も立てずに去っていく。その姿が気になって、咲夜はゆっくり扉を開き美鈴の背中を探したが、靡く髪の一片も見つけられなかった。
(あの声……言葉……どこかで)
聞き覚えがある。
嫌な予感と、勝手に疼き出す身体。
無性に愛情が欲しくなって、それが一体何か分からず、突如として頭に激痛が走り始める。
息が、呼吸すらまともに出来なくて、床に膝をついた咲夜は、そのまま胸を強く押さえた。
2
「……やけにソワソワしているわね」
ディナーの時間。
レミリアにそう指摘された咲夜は、ハッと我に返り、必死に頭を下げていた。
真紅の紅茶を眺めながら、咲夜と美鈴を交互に見つめるレミリアに、パチュリーも同じことを習ってみる。
咲夜は朝と少し変わって、緊張していたのが打って変わって怖がっている様子。逆に美鈴は、朝はあれだけ元気だったにも関わらず、今はお通夜の如くテンションが低い。
これは何かあったとしか考えない他ないだろう。
「咲夜はともかく、美鈴の奴どうかしたのか?フランだけの原因とは思えないけど」
「名前を呼んでもらえないとか、そういう下らない理由なんじゃない?わたしは興味ないわ」
レミリアの疑問にパチュリーはさくらんぼを掴み、肩を竦めて見せる。
フランが上機嫌で美鈴に色々と話をしているが、美鈴は微妙な反応だ。フランの機嫌を悪くしなければ別段構わないのだが、レミリアはどうしても気になるらしい。
かといって本人に聞くのも野暮というもの。
ここは咲夜自身に聞く方がいいだろう。
とは思うものの、咲夜はどうしてかレミリアを怖がっている。それもあからさまに。
少し手を動かしただけで、肩をビクビク震わせるのだ。いいかげん怒ってもいいかもしれない。
「咲夜。もう今日は休みなさい」
「で、ですが……片付けがまだ残って……」
「二度は言わないわ」
怯えきった子犬に優しさなんてあげるつもりはない。レミリアの言葉にピンと背筋を伸ばした咲夜は、盆を胸の前に添え、ぎこちない歩き方で食堂を後にした。
そのやりとりを見ていた美鈴は、フランに断りを入れて席を立ち、手拭い片手に食堂を出て行った。
「美鈴の動きが怪しいわね」
「小悪魔に付けさせる?」
「そうして」
パチュリーの提案にレミリアが頷く。
その瞬間、どこからともなく小悪魔が現れ、パチュリーの指示で動き始めた。
不安はあるが、こっそり覗くわけにもいかないため、今は小悪魔に任せるしかない。
食事を終えたフランが美鈴を追いかけようと席を立つが、邪魔をされては面倒だ。レミリアがしっかりとフランの腕を掴み、パチュリーを残して食堂を出た。
「……どうなるかしらね」
──
───
────
パチュリーの心配をよそに、咲夜はさっそく美鈴に捕まっていた。
月明かりが夜を妖しく照らす空の下で、ほっと一息ついたところで隙を突かれたのだ。
開放的なテラスの冊に手をついていた咲夜の腰に手を回し、服越しにでも分かる美鈴の柔らかい胸が背中に当てられる。
それが恥ずかしくもあり、感じたこともない母性なんてものを美鈴から感じ取り、黙ってそのままの体制を続ける咲夜。
「あ、あの、何を……っ!?」
不意に柔らかい指先が肌に触れ、咲夜は不快感と同時に大きく心臓を跳ね上がらせた。
その反応で調子付いてしまったのか、美鈴はゆっくりと手を腰からお腹、胸、そこからピンポイントで乳首を探り当てる。
下着越しに尖り始めた乳首を一発で探り当てられ、肩が震え始める。押したり指で弾いたり。その行為をする度に、肩がビクンッと跳ね上がるのは、見ていて愉快だ。
黙ってされるがまま、声を出さないよう口元を覆う咲夜の手を掴み、導くように外しそのままお腹へと当てる。
しかし美鈴の目的地はお腹ではない。その下。下半身。謂わば秘部へ。エプロンドレスを雑に捲り、艶やかなシルク生地のショーツに、自分の手を当てさせる。
柔らかく、既にうっすらと濡れていた秘部。その陰核へと指を滑らせると、見事なまでに身体は反応する。一瞬逃げるように後退り、名残惜しかったのか、再び自分から体制を戻してくる。
「んっ……ふ──」
記憶は無くとも、やはり身体はこの快感を覚えているらしい。それが堪らなく嬉しい美鈴は、ブラの前ホックを器用に外し、すっかり硬くなり突起した乳首を掌で転がす。勿論、咲夜の手はやり方を教えるようにショーツに押さえたまま。
ゆっくり動かし、休みがちになる指を陰核に叩いたりと、色々遊んでみる。
「も、もう……やめ、んっ……!」
「こんな所では嫌ですか?」
乳輪まで硬くなってしまい、乳首は指で乳房に押し込んでもすぐに戻ってくる。まるで乳首がもっとして欲しいと催促しているようで、美鈴は思わず吐息を漏らす。
嬌声と共に吐息が漏れてくるのは、感じているという証。実際、膣口から溢れ出る愛液でそんなことは気にもしなくていい。
しかも、美鈴が指を動かさなくとも、咲夜自身が自分で自慰行為をし始めている。これは完全に墜ちていると見ていい。
「ホント、淫乱ですね。
そろそろちゃんと脱ぎましょうか」
「や、いや──やめ……」
涙声と喘ぎが入り混じって、欲情する心と制御しようとする心が咲夜の中でぶつかり合うが、美鈴は知っている。欲している。全部をだ。
だからこそ、こんな所でこのような真似はしたくなかった。それでも隙を見せたあなたなのだから。
「優しくさせて下さい」
「んあっ……ひゃ──」
後ろ手にリボンを解き、美鈴はそれを口に咥えて手際よく銀鈕を外していく。紺のベストと白のニックシャツを脱がし、火照った身体に肌寒いくらいの風が心地良く素肌に当たる。
刹那、咲夜は我に返った。
唐突だった。
突然振り返り、力任せに美鈴の身体を突き飛ばし、エプロンドレスで一生懸命濡れた秘部をカクそうともがく。
数秒に起こった出来事。
きょとんとした表情で現状を理解しようとした美鈴は、咲夜の目尻から頬にかけて流れ出す涙を見据え、額に手を当てた。
やってしまったと、後悔よりも自分を責めた。きっと彼女自身、どうしてこんな身体なのか疑い、羞恥に溺れ、自分を恥じている。
「咲夜さん」
「いや、来ないで……やめて」
手を伸ばそうとした。
それだけで拒絶され、美鈴は見えない程度に唇を噛み締める。下手をすれば二度と元に戻れなくなるというのに、どうして愛欲のままに手を出したのか。
後悔と混乱に陥る美鈴に対し、咲夜は泣きじゃくりながらその場から動かない。
「……部屋に、戻りましょうか」
意味深な言葉ではなく、素直に、冷静に、美鈴は咲夜に優しく諭してあげる。そう、出会った時のように。出来るだけ優しく。
肩を震わせて動こうとしなかった咲夜は、その言葉だけで、まるで見えない糸から解放されたように走り出した。だが、その足は、身体は美鈴の腕の中ではなく、そのままテラスを出て行ってしまったのだった。