変態エロしかないので何でも許せる方だけご覧下さい。pixivにも投稿済み。
「10万!」
暗くてもカミュから表情が見えるほど近い位置に座っていた紳士がいやらしい笑みを浮かべながら手を挙げた。
――くそっ…変態め!
カミュが心の中で歯噛みする。
ここは会員制のクラブで、ディナーを摂りながら擽りショーを楽しめるというフェチの間では知る人ぞ知る店である。今カミュは小さなステージの上に天井から吊り下げられた革のバンドに両手を水平に拘束され、局所を辛うじて隠す、ほぼ“紐パン”と呼んで差し支えない下着のみを身に着けた姿で立たされていた。照明はステージのみを照らしていて客席は暗く、すべてがステージの方を向いて設置されている。ディナーは始まったばかりでまだ料理も出ていなかったが、店内は異様な興奮に包まれていた。もしも誰も手を挙げる者がいなければほぼ全裸の状態で見世物になるだけでいいのだが、客が会費・食事代にプラスして追加料金10万を支払う度にスタッフ1名がステージの上の拘束者をディナーの間ずっと擽るというオプションがあった。オプションの追加は最大3人までと聞かされていたためカミュはこれ以上客の手が挙がらないことを願った。
「はい!オプション入りました!」
白いスーツを着た司会の男が愛想よく笑い、従業員の“黒衣”たちに目配せをする。黒衣はまず大きなバケツにこんもりと入った白い泡をカミュの全身に手で塗り付けていった。泡の幾らかはカミュの足元の大きく平たい盥――聞くところに依ると擽られ気持ちよくなり過ぎてショーの最中”粗相”をしてしまった者が過去にいたらしい――に落ちる。泡を塗り終えると黒衣たちは一人を残してステージから去り、残った一人がカミュの背後に回り込み、泡に隠れた乳首を指先で探り当てた。
「ひゃっ…」
突然乳首に触れられてカミュが驚いて身体を揺らす。黒衣が乳首を指の腹で撫で擦り時折爪を掠めて弄るとカミュは堪らず声を上げた。
「あっ…あ…ぁ……」
決して乱暴ではないし、泡のおかげで擦過の辛さもなかった。の、だが。
――これが二時間も、続く、のか……
カミュが愕然とする。ディナーの時間は二時間。客が食べ終えるまでずっと弄られるのだ。
「ん……っ…」
カミュはどうにか乳首から起こるぞわぞわしたむず痒い感覚から意識を逸らそうとするが、そんなことはお見通しなのか、やや強めに乳首を爪で掻かれてピクン、と身体を震わせた。粘ついた視線が自身に注がれているのがわかる。カミュが耐えきれずに声を洩らす度、身を捩る度に、暗い店内に淫靡な熱気が満ちていった。そして――
「10万!」
カミュの感じる様子に嗜虐心をそそられたのか、更なる追加料金の声が響いた。その声を合図に黒衣がもう一人ステージに上がり、カミュの乳首を弄っている黒衣とカミュの間に立ち膝の体勢で陣取る。
「ひゃあっ!?」
徐に脇腹を擽られてカミュは思わず声を上げた。
「や…や……あ…ん……」
ゾクゾクとした快楽が起こってカミュが身体を揺らす。
――まだ始まったばかりだってのに。最期まで耐えられるだろうか?
その自問は客の更なる追加の声に絶望的となった。
「10万!」
「やっ…ん!」
客の声が響いた直後に今まで乳首を弄っていた手が腋を擽りだしてカミュはビクン、と身体を撥ねさせた。乳首や脇腹とは比べ物にならないくらい強い快楽にカミュは何とか逃れようと激しく身悶えるが拘束されていてはどうにもならずに、その指先の動きに翻弄され続ける。カミュが激しく動くことで最初に塗り付けられた泡は徐々に足元の盥へと流れ落ちていった。胸も泡が落ちて濃く色づいた茶色の小さな突起が露わになっていた。そしてカミュがもがく最中に。
ウィィィーーン…
意識の片隅で何かの機械音を聞いたと思った。そして次の瞬間。
「あっ……ん!」
両乳首に強烈な刺激を感じてカミュは閉じていた目を見開き仰け反った。脳天を突き上げるような快楽にどうにかなりそうになりながらも何とか自身の胸を見下ろすと、いつの間にかステージに上がって来た黒衣二人が左右から棒の先端についた平たい円形の、洗車に使うような刷毛を乳首に押し当てていて、強風の日の風車のように回転していた。先ほど指先で弄られて色づき硬くなったそこは感度が増しており、幾ら刷毛が柔らかくとも毛先がそこを擦ると快楽が波濤のように広がった。
「あ…ん!あ…ああん、あ……!」
カミュは敏感な六カ所を責め苛まれて、ただ身悶えながら啼くことしかできなかった。
――もう、保た、ねぇ……
カミュが朦朧とする頭でそう思い始めた時。ふいに腋と脇腹を擽る手の動きが緩慢になり、刷毛の動きも遅くなった。
「………?」
カミュが不思議に思って目を開けると、暗い客席にウェイターたちが甲斐甲斐しく前菜を運んでいるのが見え、ディナーが始まることがわかった。ああ確か……とカミュが思い出す。擽りショーがこの店の一番の売りではあるが、ショーに気を取られ過ぎずにディナーを味わってもらうためと、単純に激しく責め苛み過ぎて拘束者がバテてしまわないために食事の間は“演出”を控えめにすると聞かされていた。
――……くっ…これなら何とか保つ、か…?マヤのためにも頑張らねえと。
カミュが必死に自身に言い聞かせる。数年前に両親を亡くして以来、カミュは妹のマヤとともに二人で生きてきた。親が遺してくれたなけなしの金とバイトで自身はこの春、何とか高校を卒業できたものの、これから就職する身では同じ春に高校進学するマヤの分の金を工面できなかった。かと言ってマヤに高校進学を諦めて欲しくはない。そのため気は進まなかったが手っ取り早く稼げるこのバイトをすることにしたのだ。……そんなカミュの思いとはまったく関係なくショーは続く。
こちょこちょこちょ……
ウィィィィーーーン……
「あ……っ…ん……ふふ……や……」
幾ら緩慢な動きとは言え、腋と脇腹、乳首と敏感な処を間断なく擽られ続けてカミュの口から艶めいた声が漏れる。カミュの切なげな喘ぎと時折混じる苦し気な笑い声を心地よいBGMに、白い肢体が艶めかしくくねる様をねっとりとした視線で見つめながら、前菜、スープ、パン、メイン、デザート、ドリンクと客たちがディナーを摂っていく。
そして……二時間が経ち、すべての客が食事を終えたとき、漸くカミュの身体を苛んでいた手と刷毛車が離れていった。
――終わった、のか……?
時間の感覚もとうの昔になくなっていたが、疲れ果て焦点の合わない目でぼんやりと会場を見ながらカミュが安堵した矢先。
「10万を出して下さったお三方に特別サービスです。」
司会の男の愛想のよい声が響いた。
「一人5分間お触りOKです。さあ、ステージへどうぞ!」
事前に聞かされていなかったことにカミュがぎょっとして目を上げると、揃いも揃ってチビ、デブ、禿げの身なりの良い中年の紳士がニヤついた顔でステージへと上がって来た。
――オイ、聞いてねえぞ。
と思っても逃げることはできない。スタッフが泡で濡れた盥に足を踏み入れるためのバスブーツをサッと用意し、まず一人目の太った客が嬉々としてカミュの傍にやってきた。卑猥な笑みを浮かべる顔が目の前にあり、脂ぎった加齢臭に吐き気がする。彼は早速カミュの身体に手を伸ばした。
「や…っ……ふふ…あ…ん……」
短く太い指がおぞましい芋虫のように蠢いて両腋を擽り、カミュは嫌悪感に苛まれながらも快楽に翻弄される。
「フフ……近くで見ると君、本当に可愛いね。」
カミュの感じている顔を真ん前で見ながらおっさんがいやらしく笑う。そして暫く楽しんだ後、両手を後ろに廻して剥き出しの尻たぶを撫で、鷲掴んだ。
「く……」
「耐える顔もソソるね。」
言いながら、片方の手を尻から放しカミュの下腹の膨らみに触れる。
「ひっ…!?」
芯を持ち始めていたそれを紐パン越しにスリスリと撫で、やんわりと包み、軽く揉み…
「ひ……イヤ……イヤだ……んっ」
最期にキュッと握ってからそこを解放した。
「いい反応だ……君は本当に私の好みだよ。」
それからカミュの身体中を戯れに擽りながら撫で廻し……
「あっ…ん!!」
ずっと弄られ続けて腫れ始めた乳首を勢いよく指先で掻いた。その刺激でカミュは軽くイッてしまった。
「お時間です!次の方に替わって下さい!」
その時、交替を告げる司会の声が響き、中年男は名残惜し気にカミュから離れた。
――あと、二人……
カミュは荒く息を吐きつつ、自身を奮い立たせ――そしてとうとう仕事をやり遂げたのだった。
「えっ?こんなに?」
店の宿直室のシャワーを借り、疲れ切り汚れた身体を何とかきれいにした後、封筒に入った給金をもらったカミュはその中身に驚いた。バイト代は一回10万のはずだったが明らかに多く入っている。
「ああ……オプションのこと、伝えてなかったわよね?お客様がオプションで出してくれた半額はアナタの歩合になるのよ。だからプラス15万で計25万ね。」
「え…そうなの?」
そうと知れば思わずあのキモいおっさんたちにも感謝の念さえ湧き起こる。
「……まあ。よっぽどの事情がないと再びこのバイトをしようってコはいないんだけど。」
とおネェのマネージャーが前置きして。
「カミュちゃんアナタ、けっこうお客様たちに気に入られていたようだから、気が向いたらまた来てちょうだい?」
カミュに片目を瞑って見せた。
*
「制服5万、教科書3万5千、電子辞書3万、体操着3万5千、通学カバン1万、入学金6千、4月授業料1万、絶対に必要なモノだけで17万6千円もかかったんだぜ?その他にもノートに弁当箱に定期、スマホ……なのに何とかなった、だって?」
マヤは信じられない思いで兄を見た。
「マヤ、暗算できるなんてすごいぞ。」
「んなこたどーでもいいんだよ!」
素直に妹の暗算能力を褒めた兄に、だがしかしマヤはキレた。そして声を潜めて。
「あにき、まさかヤベーことしてないだろうな?いきなりサツがやってきて、あにきがしょっ引かれるなんて御免だぜ?」
「大丈夫だ。俺はもう成人してっからな。法には触れねぇ。」
「? お、おう。何かよくわかんねーケド。とにかく大丈夫なんだな?」
「ああ。」
ドヤ顔で『大丈夫』と言う兄にマヤは安堵の溜息を吐いた。あれから数日。あの夜の出来事は、まだ乳首に疼痛が残っているものの、終わってしまえば全部夢だったと思えるような現実味のない体験で、それでもそこで得た金で”マヤが高校に進学できる”ことは紛れもない現実だった。
――修学旅行も何だかんだで金がかかりやがるが……
そして鼻唄を歌いながら新しい教科書を整理し始めた妹を見ながらカミュは思う。
――その時までに多少の貯金もできるはずさ。
妹の幸せそうな顔を見守りながらカミュは微笑んだ。
ストーリーのないごく短いSSを書くのも良い経験になりました。もっと短いSSをポンポン書けるようになりたいです(^^)