その為、(一部ネタバレを含みますので)、原作はこれから或いは原作を読み終えられた方で原作のイメージを大事にしたい方はご遠慮ください。
また本作を読まれる方も、可能なら事前に原作を読んでおけば(特に最終章以降)本作はすんなり入ってくると思います。
無論本作は官能小説扱いなので、本作だけでも読み進められるとは思います。
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―――――佐々木が杏子を抱き寄せてからどれだけの時間が経ったのだろう。
二人きりだけの部屋の中では、室外の喧騒も届かない。或いは気を効かせたせいだろうか。
壁時計が規則正しく時を刻む音に混じって互いの息遣いだけが微かに聞こえた。
だから佐々木がおもむろに杏子の両肩に両手を添えて自らの胸から彼女の身体を離した時、杏子が佐々木を見つめてくる瞳には明らかに戸惑いと若干の恨めしさが浮かんでいたのも無理はなかった。
「三樹さん・・・・・?」
「一度、下に戻ろうかと思います。従業員に事情を話しておかなければ」
「・・・・そうですね」
「我々はともかく、従業員にはこの後の事を考えさせた上で次の仕事の道筋をつけてあげなければ。それに・・・・・」
「それに・・・・・?」
「花ホテルを閉じるにしても、彼等の力は必要ですから・・・・・」
佐々木の言葉に、杏子もコクリと頷いた。
「私も行きます。・・・・いえ、寧ろオーナーとして、それは私がやらなければいけない義務ですから」
「そうですね、確かに・・・」
「少し化粧を直させて下さい・・・そうね、30分後にはロビーに皆を集めておいてくれれば」
「分かりました」
ここで佐々木がドアの方に向かって踵を返そうとした時、
「 !!! 」
佐々木の首に杏子の細い両腕が絡み付き、その唇が佐々木のそれに触れ重なった。
一瞬目を見開いて動きを止めた佐々木だったが、次の瞬間には再び杏子の背中に両腕を回し、杏子の身体を自身の方に引き寄せた。
互いの鼻息が触れあう近さの中で、
唇の隙間から舌と舌が相手を求めて絡み付きリズミカルに蠢動する。
咄嗟の動きとはいえ、佐々木には杏子と交わす初めての接吻だった。
杏子の激しい思いの丈は、今の彼女の舌の動きと激しい息づかいで十分に確認することができた。
「・・・・・・・」
ひとしきり顔の角度を微妙に変えながら口づけに没頭していた2人だったが、どちらともなくゆっくりと唇を離す。
互いの唇の間に伸びる銀の糸が、2人の中での名残惜しさを如実に示していた。
「では・・・・・・」
微かに頬を赤らめ上気している杏子の瞳の中に先程までは浮かんでいなかった欲望の揺らめきを確認し、
佐々木は先程同様杏子の両肩に両手を添えながら微笑んだ。
そして今度はくるりと向きを変えてドアの方に向かう。
背中に杏子の視線を感じながら、ドアノブに手をかけた時、先程まではなかった強い口調の杏子の声が室内に響く。
「今夜、来て下さい・・・・・」
「・・・!!」
「待っています・・・・・・・」
振り返った佐々木の目に、胸元で両手を組み合わせ、哀願するかのような形の杏子の姿が映った。
彼女の言葉の意味は分かりすぎるほど分かっていた。だから佐々木にとっても返答に余計な言葉の修飾は不要だった。
「9時に・・・・・・」
杏子の顔に恥じらいと安堵の笑みが浮かんだのを確認し、佐々木も知らず知らず爽やかな微笑みを浮かべながらドアを開けて廊下に出た。
**************
―――――30分後、ロビーに現れた杏子は佐々木の見守る中、集まった従業員に対して正式に花ホテルの廃業とそこに至った経緯の概要について説明した。
直前まで警察がホテルに立ち入っていたことから「もしかしたら」と薄々考えていた従業員が大半で、杏子の説明を聞いて大きな驚きを示す者は僅かであった。
杏子の口からホテル閉鎖・廃業に向けての残務への協力の要請、そして従業員の身の振り方についてはできる限りのことをする旨伝えた時、
従業員からは寧ろ女主人への共感や協力の申し出の声が次々と上がり、
杏子が感極まって目頭を押さえる一幕もあった。
傍らで無言だった佐々木はここでそっと杏子の肩に手を置いて背後の椅子に座らせた。
その後具体的な話やホテルの宿泊客への対応について佐々木がテキパキと指示し、一同それぞれの持ち場に散っていった。
ようやく落ち着いた杏子も自分で居間の方に戻り、佐々木もフロントに位置して自ら関係部署に電話をかけ、書類仕事に没頭していった。
そんな彼と杏子のやり取りは「今まで通り」のように見え、仕事の慌ただしさもあったことから、ふたりの関係の変化に気づいた者は現段階ではいなかった。
唯一知っていた浜口の姿もこの場にはなく、佐々木が見せたささやかな心遣いからそれを第3者が見抜くのはなかなか難しかっただろう。
ともあれ、その日は佐々木も杏子も仕事の慌ただしさのなかでお互いが声を掛け合うことはほとんどなかった。
気づけば日も暮れ、辺りに夜の帳が降りる頃、
佐々木と杏子はこの日に限って、それぞれが理由をつけて自室に引き取っていた。
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――――――先程まで頭上から降り注いでいた熱いシャワーの元栓を閉めながら、杏子は壁に手をついて足元を流れる湯の流れをじっと見つめていた。
髪はべっとりと顔と肌に張り付き、髪の毛の先からは一滴また一滴と湯の滴がタイルの上に滴る中で杏子の脳裏を占めていたのは、
あと1時間足らずでやってくる自分にとって”3人目“の男の姿。
(・・・・・・)
あの花ホテルの就職面談で初めて顔を合わせた時には、まさかこんなことになるとは思いもよらなかった。
ただ長い時間ホテル経営に関わる中で、客のセクハラやホテル内の事件に直面した時、佐々木の様々な顔や対応を目の当たりにし、彼と言う人間がより身近になってきたことは間違いない。
そしてホテルを手放すことになった時に、自らを支えてくれる姿に逞しさと頼り甲斐を覚え、
彼を離したくないという思いが昼間の行動に杏子を駆り立てたのだろう。
「ああ・・・・・」
おもむろに顔をあげ豊かな胸元を両手で抱き締めた時、
杏子の肢体は男の愛撫を受ける前から小刻みに震え、下腹部の茂みの奥は数年ぶりの男の訪れを想像して熱を帯びてくる。
「こんな風に、なるなんて・・・・」
恥ずかしさにぶんぶんと顔を左右に降りつつも、杏子の足はシャワー室のドアを開け、取っ手に引っ掻けてあったバスタオルを手にしていた。
頭からバスタオル特有の柔らかさに包まれながら、杏子は約束の時間までに部屋を片付けなければと頭を巡らせていた。
夫を亡くして以来ずっと1人寝が続いていた寝室に、久方ぶりに夜を共にするであろう男を迎えるために――――――
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「・・・・・・行くか」
腕時計が午後8時53分になったのを確認し、佐々木は自室のソファから腰を上げた。
今の佐々木の出で立ちは普段のホテル勤務の際の寸分の隙のないスーツではなく、仕事外でくつろぐ時のもの。
シャツのボタンを上から2個外して首元を露にし、腕捲りしている姿は普段のホテル勤務中には絶対に見せなかったもの。
その日はあえて夕方前には残業を切り上げて自室に戻り、用意していた軽食で夕食を済ませると手早くシャワーを終え、こうして時間になるまでソファに身を委ね、落ち着かぬ時間を過ごしていたのである。
自室を出てから杏子のいる部屋に向かう間、行き慣れた筈の僅かな距離が佐々木にとって妙に長く感じられた。
(遂に・・・・・・)
数年のホテル勤務を経て心の中で育んできた杏子への愛が今夜結実する。
自らの輝かしい将来を棒に振ったことで得たこの瞬間に、
佐々木は1人の男として全身、いや下半身が熱くなっていることを自覚していた。
これまで何度も目の当たりにした女主人の肢体が今夜自分の手の中に。
そうした興奮は杏子の部屋の前に立った時には流石に落ち着いていた。
もっとも杏子の姿を目にしてしまったならば、その落ち着きも再び波打つことになろうが―――――――
―――――コン、コン、コン・・・・・
「・・・・・・どなた?」
「・・・・・佐々木です」
「・・・・・どうぞ」
佐々木によるノックからドアを挟んでそれぞれ言葉をかける2人。
互いに一拍以上の沈黙を伴っているところに、共通した緊張感を察することができる。
佐々木の右手が杏子の部屋のドアノブにかかり、ゆっくりと回していく。
鍵のかかっていないドアは金属が軋む音もなく、すんなりと内側へ開いていく。
室内の明るさが目に入り、自分の身体が入れるまでドアが開ききった時、
佐々木はそのまま室内に滑り込んでいた。
廊下には人の気配がなかったにも関わらず、つい自分のしていることに関して人目を気にする後ろめたさが佐々木は覚えていた。
だが彼の後ろめたさも部屋の中からドアを後ろ手に閉め、眼前に立つ杏子に視線を動かしていた時には無くなっていた。
室内に漂う女性特有の籠るような香り。
室内に据えられた花瓶の中の花とも違う独特な香りが、杏子のものであることを無意識のうちに察した時、
佐々木は今まで嗅いだことのない香りそのものに、杏子の女としての別の一面を見た思いだった。
そして佐々木の視線が自分を見つめてくる杏子の全身を捉え重なった時、
佐々木には杏子の寝室がやけに広々としたものに感じられた。
これまでも食事や打ち合わせの為に何度も訪れており、その時には1度も感じたことのない感覚だった。
それが部屋のベットの傍らに立っている杏子自身の存在がそのように感じさせているのは明らかだった。
シャワーを浴び終えた事を示す髪の湿り具合。
日本人離れした細い手足とはアンバランスな肉感ある乳房と尻を包み込むようにして身に纏うタオル生地の白色バスローブ。
絨毯を直接踏みしめる素足。
そして潤みを帯びて佐々木を見つめてくる杏子の瞳。
口許は緊張感を隠そうとするかのように唇をきゅっとしめている。
目の前に立つ女性が自分と同年代の熟女であることを忘れそうになるくらいの儚さがそこにあった。
「・・・・・・・・・」
杏子から視線を外すことなく、佐々木は音もなく歩を進める。
杏子を見下ろす形で互いの距離を詰めた時、
佐々木は意識することなく左手を杏子の右肩に添えていた。
バスローブ越しに杏子の身体がピクリと動くのが分かった。
この部屋に入るまで脳裏に浮かんでは消えていった雑念は残っておらず、
今は言葉ではなく所作によって相手を求めることだけが佐々木の身体を動かす原動力となっていた。
佐々木の右手がバスローブ正面の結び目の紐にかかる。
杏子の方も息を詰めながらの身体の無意識の反応はさておき、佐々木の所作に抗うことなく為すがままになっている。
完全にほどかれたバスローブの中央が左右に別れ、
佐々木の目に杏子の豊かな形の良い乳房と、
はにかむようにして太ももを合わせられた両足が曝された。
一切の下着を身に付けていないことで乳首の屹立や下腹部の黒い茂みもはっきりと分かる。
この姿だけでも、佐々木を求める杏子の想いを言葉を介さず雄弁に物語っているといえよう。
心なしか佐々木も杏子も呼吸が荒くなってきたのが分かる。
佐々木もブリーフの下で自身の欲望が膨れ上がり、今にもズボンからはち切れんばかりになっていることに対して、正直自身の理性を保つことに精一杯だった。
.佐々木の左手が杏子の右肩に触れるのを合図に、彼の両手がほぼ同時に杏子の肩口からバスローブを滑らせていった。
衣擦れと共に杏子の肌を滑り落ちていくローブが足元に落下し、そのまま山のように重なる。
完全な造形美と形容できそうな杏子の裸体が佐々木の胸の中に収められたのもほぼ同時であったろう。
「柔らかい、そして熱い・・・・・」
思わず感嘆のため息をついた佐々木は、杏子の言葉を待つことなく、彼女の身体をくるりと回転させていた。
杏子の背中が密着しもたれ掛かる形で佐々木の胸に彼女の重みが直に伝わってきた。
「・・・・三樹さんも、こんなに」
肩越しに佐々木の顔を横目に、後ろ向きの杏子の右手が佐々木のズボンに触れる。
ズボンの下で膨れ上がっていた肉の塊が杏子の指の微かな動きと触れ方によって、佐々木が恥ずかしくなるくらい敏感に反応し小刻みに震えるのが分かる。
佐々木の右手が杏子の茂みをかき分け、そのまま2本の指がまとわりつく恥毛とその先の茂みの果てにたどり着く。
ふっくらした割れ目を佐々木の指が優しく広げ、そこが蜜によって十分に潤っているのを確認すると、そのままゆっくりと指先を沈み込ませていった。
「あ・・・・・ん、ふっ」
空気中に吐き出された杏子の吐息を聞きながら、
佐々木は杏子の中の心地よさと締め付け、そして外観の肌以上に熱が宿っている温かさに感動していた。
無駄のない杏子の肢体のお陰で、
彼女の微妙な腰の動きですら、
佐々木の指を締め付け波打たせる。
佐々木は親指を割れ目の入り口にある敏感な部分に押し当てつつ、
沈み込ませた2本の指を曲げ、ゆっくりとしたテンポで上下させていった。
微かに、それでいて生々しい水音と杏子の荒くなる息づかいが室内に響き始める。
やがて佐々木に身を預ける彼女の身体が震え始める。
そして、
「・・・・んんんんっっっ!!!」
大きく喉仏を正面に曝す形で、杏子喉身体が大きく後ろに反り返り硬直する。
佐々木の指を飲み込む杏子の内襞が今までになく収縮し、
溢れ出た生暖かい蜜が佐々木の指から手を伝い、そのまま足元の絨毯に糸を引くようにゆっくり落ちていった。
****************
―――――逞しい両腕で横抱きにされ、ベットの上にゆっくりと降ろされた時、
杏子は自然と両足を曲げ、両腕を頭の後に回す形で横たわった。
首をやや前方に傾けると、ベットの足元に立つ佐々木が自らのシャツを脱ぎ、ズボンのベルトを緩めズボンを下ろしているのが見える。
身体の内側に先程の愛撫の余韻が残る中、
佐々木が自らの裸体、特に彼の下腹部で脈打ち立ち上がっているものを外気に曝している様を目の当たりにし、
杏子は思わず唾を飲み込み、その乳房の先と茂みが自然と熱を帯びた。
花ホテルの経営を初めてから今の今まで男と夜を共にする機会もなかった杏子には本当に久しぶりの昂りだった。
いや、過去の結婚の時にもあったかどうかも分からない。
ある意味で初めての昂り、なのかもしれなかった。
杏子への眼差しを外さないまま、
佐々木がベットの上に片膝をつく。
ベットのスプリングが新たなる重みを受けて軋む。
杏子をやや見下ろす形でベットに上がってきた佐々木が、杏子の両膝に手を添えて閉じられていた両足を開き始める。
「やっ・・・・・・」
恥ずかしさのあまり思わず足を閉じようとするも、佐々木はそれを許さない。
杏子の抗いも受け流す形で彼女の両足を開き切る。
先程佐々木の指の愛撫に曝された下腹部の茂みが、改めて彼の視線に曝されることになった。
「ああっ・・・・・」
杏子は恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆う。既に結婚を2度経験した熟女とは思えぬ初々しい所作だった。
「なぜ、恥ずかしがるんです?」
「だって・・・・汚ないわ」
「シャワーは浴びられているんでしょう?それに・・・・さっきまで私の指を受け入れてくれて」
「やぁあ・・・・もう・・・・」
「私も男ですから、こんなことができれば・・・貴女を味わえればと心の片隅でずっと思っていたんです」
次の瞬間、杏子の両腿は大きく抱えあげられ、佐々木の両肩に担ぎ上げられる格好になった。
佐々木の鼻先に蜜でぬめった茂みがあらわになる。
佐々木はそのまま唇を茂みの中に押し付けた。
「あっ、それは・・・・っっ」
杏子は腰をひねり、佐々木の口から逃れようとする。
だが佐々木の口が茂みの割れ目に押し付けられ、その舌が割れ目の蜜をすすり出した時には声なき唸りを上げて腰を震わせ、
寧ろ自ら下腹部を佐々木の口に押し付けていった。
「こんなの・・・ああ・・・もっと、もっと・・・・」
杏子の男性経験の中でこのような愛撫を受けることは初めてではない。
寧ろ日本人ではない亡き夫は積極的であったと行っていいだろう。
だが今夜のような恥ずかしさと新鮮さを感じるのは初めてのように思う。
恐らくそれは相手が佐々木であるからだろう。これまでの部下、そしてこれからの“人生のパートナー“だからこそ。
「これが杏子さんの、味・・・・」
「三樹さん・・・・・・ああ・・・」
「綺麗だし、僕を誘っているようだ・・・・・」
「ん、あっ・・・んふぅぅ」
「こんなことを・・・亡きご主人は、してくれたのかな」
「いやっ、そんなことを、聞かないでっっ・・・」
舌の動きを止めることなく、茂みに唇を押し付けた佐々木のくぐもった問いかけ。
杏子は言葉では抗いながらも、自らの手を佐々木の頭に添えて更なる刺激をねだるような仕草を見せた。
いつしか杏子の肌はじんわりと汗ばみ、男の汗と蜜の香りとが混じりあって、さながら寝室が別の空間のような空気に満ちていった。
佐々木は鼻先かるその空気を十分に肺の中に取り込んだ。
そして、
「はあ・・・・・ぅっっ!!」
突如背骨を伝って全身を貫いた感覚。
杏子は思わず腰を浮かせ、唇を噛み締めつつ背中を弓なりに反らして大きくのけぞった。
佐々木も杏子の腰がガクガクと震える様子を察し唇を茂みから離す。
やや息を弾ませ、目を閉じたまま全身に残る気怠さの中、杏子は佐々木が自身の腰をベットの上に下ろし、覆い被さるようにして近づいてくるのに反応できないでいた。
手足をだらりと垂らしたままベットの上で脱力する中、
ふと気づくと仰向けの乳房に鼻息を感じる。
目を開けて首を動かすと、杏子の裸体に覆い被さりながら胸元に顔を寄せる佐々木の頭が間近に映った。
「ここも綺麗だ・・・・・」
佐々木の呟きに杏子は返事すらできない。
だが汗ばんだ彼女の乳房の先端は、彼女の内心を代弁するかのように屹立し、眼前の男の愛撫を待ち受けていた――――――――
***************
―――――佐々木の手の中にある右乳房は形の見事さだけではなく、肌の滑らかさの下にある表面の柔らかさ、そしてその奥に確固たる弾力さを秘めていた。
佐々木は絶頂の後に眼前で横たわる杏子の脇に手を置き、ベットの上で姿勢をとりながらそう思った。
本当はすぐにでも下腹部で滾りに滾っているものを先程まで佐々木が舌を這わせていた茂みの中に突き入れ、
彼女と1つになり、その肢体のうねりがもたらす快感の波の中に溺れてしまいたかった。
だが眼前で上下する乳房に触れずに済ませることは男としてできない。
佐々木は本能的にそのことを悟っており、
やがて右掌の中で屹立する乳首を口に含んだ。
「ぁああ・・・・・」
ピクリと動いた杏子の反応に、彼女が感じていることを確認するや、
佐々木は口の中の乳首に舌を絡め、軽く歯をたて、更には舌先で転がしていく。
杏子の身体はその度にうち震え、彼女の発した甘いため息と喘ぎはより高くなりながら空気中に吐き出された。
佐々木の口が杏子の左乳房に移動した頃には、杏子の両手が再び佐々木の後頭部に回され、更なる愛撫を煽り立てる。
佐々木の身体が杏子の真上に密着するかどうかの姿勢になっているため、いつしか佐々木の下腹部で爆発寸前の熱が知らず知らずに真下の茂みに擦るように触れてしまっていることも拍車をかけていた。
(甘い乳房、というものか、これが・・・・)
杏子から漂う体臭に、彼女の汗や官能を刺激されたことによる効果が佐々木を文字通り感嘆させていた。
同時に佐々木自身も杏子と1つになることを躊躇う要因が既にないことが分かっていた。
彼の下腹部では滾りに滾った欲望が、眼前の杏子を求めて荒れ狂っていたのだから。
「三樹さん、もう・・・・・」
頭上からの杏子の呟きに、佐々木ははっとして唇を離し頭を上げた。
頭を上げて佐々木を見つめてくる杏子の表情、特に頬の赤みにも瞳の潤みにも佐々木を求める正直な感情がはっきりと浮かび上がっていた。
佐々木にとって、その呟きと表情こそが、
杏子が彼と同じ思いであり彼女にとっての承諾の意思表示に他ならなかった。
佐々木は無言でコクリと頷き、ゆっくりと上体を起こす。
閉じかけていた杏子の両足首を持って再び左右に開かせると、その間に自分自身が入り込んだ。
自ら腰を微妙に動かして屹立した尖端を彼女の茂みに触れさせる。
自分を見上げてくる杏子の視線を視界の外から感じながら、佐々木は一呼吸おいた後、腰を前に進めた。
茂みをかき分けた先の割れ目を押し広げ、佐々木の熱い象徴が杏子の中を突き進む。
「ああああああっっっ!!!」
杏子が今までで一番高い矯声を上げ、
胸元を大きく反らせベットの上でのけ反った。
今までの愛撫の繰り返しにより十分に蜜をたたえていたせいか、杏子の中は圧迫感があるはずの佐々木の象徴を寄せ来る荒波のようにうねりつつ、奥へ奥へと導き飲み込んでいく。
「くうっ・・・・・!!」
佐々木も自分自身が念願の杏子の中に入り、本当の意味で結ばれた衝撃に一瞬うめき声を出して天を仰いでいた。
根元まで飲み込んだ肉の全てを包み込む形で、柔らかい襞の一つ一つが練っとりと絡み付き、これらが杏子の腰の動きにあわせて伸縮を始めたのだ。
その心地よさと締め付けの強弱は、佐々木の予想していたものよりも遥かに強烈であり、
一瞬でも気を抜けば滾っている象徴をも降参させてしまいかねなかった。
1人の男としてここまできた以上、佐々木はここで意地を見せなければと歯を食い縛る。
「ようやく・・・ようやく、あなたと1つになれた・・・・・」
「私も・・・・こうなりたかった」
「杏子さん・・・・・」
見下ろす佐々木と見上げる杏子。
ホテルの女主人とスタッフという関係ではない、身も心も1つに溶け合った男と女がそこにいた――――――――
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―――――夜の9時に佐々木が杏子の寝室を訪れてから、実際に結ばれるまでは僅か2時間足らずの出来事。
この2時間ですら佐々木にとっては一生ものの忘れられない時間だったが、
そこから明け方近くに杏子のベットの中で揃って意識を取り戻すまでの長い時間は、その2時間すら凌駕した忘れられないものではなかっただろうか。
言葉を変えれば、めくるめく、という表現がぴったりだろう。
また夢かうつつか、という言い回しも当てはまるものだった。
―――――杏子の右足の膝裏を肩に乗せ、彼女の左足を跨ぐ形で更に腰を前へと進ませる。
互いの腰と足が固定される中、佐々木は腰を短く早く刻みながら杏子を蹂躙していく。
噛み殺すような小さい悲鳴をあげ続ける杏子の顔を見つめながら、無言で体重を傾けつつ、最奥を突いた瞬間に見せた彼女の恍惚の表情をしっかりと目に焼き付けた―――――――
――――― 一転して立場を逆転させられてベットに仰向けに横たわる中、
先程杏子の中に欲望を吐き出した直後の佐々木の象徴を杏子が手にし、口に含んで舌を這わせていく。
巧みな舌使いと口の中のなめらかな心地よさに、たちまち蘇った佐々木自身を右手に持って、
杏子は佐々木の下腹部を跨ぐ形で自らの茂みにゆっくりと熱い尖端を導く。
再び佐々木の象徴が杏子の中に包み込まれると、
今度は杏子が自ら腰をくねらせ揺らせて佐々木を締め上げていく。
歯を食いしばる佐々木を尻目に、杏子は両手を彼の肩付近に添えながら、更に腰の動きを加速させていった。
「・・・別れた奥さん、こんなことをしてくれなかったでしょう?」
立場を逆にした杏子の挑発に抗する術もなく、佐々木はここでは杏子の軍門に降った――――――――――
――――ベットを抜け出し、化粧用鏡台の前に置かれた洋風椅子に座る佐々木。
そんな彼の太腿に杏子が股がり、そのまま腰を下ろし佐々木と繋がる。
椅子の肘掛けには彼女の細い足が乗せられる形で前方に投げ出されていた。
鏡の中には絡み合う佐々木と杏子の横顔、そして互いの繋がった下腹部の動きすらはっきりと映し出されている。
ゆっくりとした腰の動きの合間、目の前で揺れる桃色の乳首に舌を這わせながら、佐々木はホテル勤務中に見せることはなかった別の顔を露にして杏子を翻弄する。
杏子も佐々木の首に両腕を回しつつ、
彼と舌を絡ませたり胸先への愛撫に身を曝していた。
既に男の腰の動きを自身の下腹部の茂みの中で感じながら、
杏子は佐々木の身体に抱きついたまま、ただ感情の赴くがまま快感に身を任せて喘ぎに喘いでいた。
「君がここまでならば・・・・以前ホテルにも来ていた君のお姉さん。あちらはどんなものかな」
「ひどいわ、こんな時に姉を持ち出すなんて・・・・姉と比較して私をいじめるのね」
「お互い様だよ」
既に互いの口調には、身体を重ねてきた男女特有の気安さが漂っている。
杏子の顔が佐々木の左耳に動き、その舌が丸い溝をゆっくりとなぞっていく。
そのまま耳だを口に含んで歯をたて、最初はゆっくり次第に力を加えていった。
佐々木の口から悲鳴とも喘ぎともつかぬ吐息が吐き出されるや、
今度は彼の唇が彼女のそれに覆われる。
互いの唇が開かれ、杏子の舌が入り込み佐々木の歯列の裏をなぞろうとする。その動きを同じく自らの分厚い舌で阻止し、激しく舌を絡ませあった。
互いの口許の隙間から唾を交換させる水音とくぐもった吐息が漏れ、
それぞれが頭の角度を変え、
絡ませた舌を更にリズミカルに動かしていく。
口づけに合わせて杏子自身の腰がゆっくりと上下し始めた。
佐々木の機先を制しつつ自ら腰を動かすことで、自身の中に収まる佐々木の固さから更なる快楽を貪ろうとするかのような動きだった。
(全て吸いとられるかもな・・・・・)
目の前で杏子の乳房が激しく揺れ、黒髪が空中を乱舞する様を視界の内にぼんやりと収めながら、佐々木は下半身が波打つ襞の伸縮によりガクガクと震えていく中でひとりごちていた。
男女の一線を越えてから、今まで我慢していたものを吐き出すかのように奔放に振る舞う杏子。
淫らな言葉や仕草をもって佐々木を惹き付け、その肢体をもって佐々木からありとあらゆる力を吸い上げる、さながら快楽のブラックホールのような怖さ。
だが同時にそれならそれでもいい、と佐々木は思う。
杏子と共に花ホテル再建に向かい新たなる歩みを始めるのと、
杏子によって未知の恍惚のなかに導かれ命を失うのも、
それほど大きな差はないことのように思えたからだ。
「もう、もう、私、私はっ・・・」
眼前の杏子が佐々木の首に回した両手に更なる力を込めつつ、まるで泣き出すかのような表情を浮かべて、絶頂を予告する。
佐々木も杏子の腰に回していた両手を形の良い尻付近に添えるや、
より強い力で自ら腰を突き上げ真上にある杏子の中を深々と何度も突き刺した。
互いの吠えるような叫びが室内に響き渡り、
杏子の中で互いの熱と欲望が混じりあった後、
一瞬の硬直とともに脱力したままの裸体を支え合うようにして椅子の上で抱き合う2人。
気づけば互いの荒い息づかいのテンポも、まるで1人の人間のそれのように重なりあっていたのだった――――――
&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
――――――それから1ヶ月後、
「ああ、お陰さまでうまくいっているよ・・・うん・・・うん、従業員の方も、そう・・・何とか落ち着くところに落ち着きそうだ・・・・いや、こちらこそ、色々気を遣わせてしまって・・・・」
卓上電話の受話器越しに、佐々木は友人の浜口に礼を言う。
だが流石の浜口も、電話の相手が昼間から恋人の寝室において全裸の状態で立ったまま会話していることなど想像すらしていなかっただろう。
「・・・・で、僕の方?ああ、お陰さまで・・・・そう、とりあえず次の落ち着き先は目処をつけた。当面はそこが新たなるスタートラインになるかな・・・・杏子、さんか・・・・・うん、そうだ。元気にしている」
杏子とのことをつい他人行儀な言い回しに訂正しながら、
佐々木はチラリと自らの足元に目をやった。
紺色のワンピース水着に身を包み、両膝を床につけ、そして佐々木の反り返った象徴を口に含んでいる杏子の姿に。
一瞬会話が途切れたことで、杏子の方も上目遣いで佐々木の方を見上げてくる。その妖しい雰囲気に流石の佐々木も息を飲んだ。
佐々木としては下腹部から緩急つけてじわりじわりと押し寄せてくる杏子の
愛撫に、電話先に気づかれないよう声をあげるのを必死で我慢している状態だった。
「ああ、分かった。それじゃあ、また目処がついたら・・・・」
ようやく会話が終わって受話器を下ろしたのを見計らい、
杏子の方も愛撫をやめ口を離した。
「浜口から杏子に宜しくと言っていたよ」
「そう・・・・貴方のお陰で花ホテルの残務処理も滞りなく終わりそうだから、そのことを言えば良かったのに」
「僕は大したことをしていないよ。全ては従業員にも慕われていた君の人間力の賜物さ」
初めて身体を重ねて以来、いつしか「杏子」「貴方」と呼び合うくらい夜を重ねてきた2人。
既に従業員達も2人に見送られる形で花ホテルを後にしていた。
もっとも彼等は口々に「最高のホテルでしたマダム」「ここで働けて幸せでした」「花ホテルが復活したら報せてください、飛んでいきますよ」、
或いは「お二人ともお似合いです」「お幸せに!」等の様々な言葉を紡ぎ、2人にとって短い時間の中での人と人との結びつきの強さを改めて感じさせる瞬間だった。
というわけで、あと2週間足らずで引き渡される建物に残っているのは、実質的に佐々木と杏子の2人だけだった。
だから残務の見通しが立った今、
2人は今まで考えたこともないようなことを誰憚ることなくできるのだった。
屋内外を問わず、昼間から裸になったり、水着のまま相手を翻弄したり、今までのホテルマン生活では絶対にできないようなことを。
「さて、今日は必要な打ち合わせや連絡に、電話も終わったことだから・・・・」
佐々木の呟きに、足元に膝をついていた杏子が腰を上げて立ち上がると、彼の眼前で艶然とした微笑みを浮かべ、そのの手を取った。
「浜口さんには悪いけど、貴方の望んだ水着姿の私をほったらかしにすることになったんだから、その埋め合わせはしてもらうわ。無論貴方がね」
佐々木も苦笑しつつ、それでもこれからと言う時にタイミング悪く電話してきた友人の電話には苦々しい思いがあったわけなので、杏子の言葉は全く同感だった。
「行きましょう」
杏子に導かれるまま、佐々木は彼女に手を引かれ部屋を出ていく。
2人が去った杏子の寝室には、最初の夜からずっと積み重ねられて蓄積された時間と、
互いの身体から発する香りが混じりあった独特の空気がおいてけぼりを食らった形で残った。
****************
(それにしても・・・・)
南仏独特の日差しの下、
プールサイドで4つん這いになり、佐々木の愛技に身を委ねながら杏子は思った。
(こことも、あと少しでお別れ・・・)
両脇から佐々木の手が水着の生地の下に差し入れられ、
彼の手と指が杏子の豊かな実りとその先端に向かって巧みに刺激を与えていく。
(本当に色々あったけど・・・・)
背中に佐々木の胸板の堅さと熱を直接感じつつ、耳元では杏子の黒髪に顔を埋めている男の荒い吐息を直接受け止めている。
(ホテルの女主人で呼ばれるのも、もう終わりね・・・・・)
大きく足を広げた杏子の臀部は、
下腹部を覆う水着の生地を大きくずらす形で佐々木と繋がっていた。
(あと少しで、彼と肩を並べてホテルを後にする・・・)
杏子の身体の奥で波打つ中でも、熱さと固さを失うことなく前後上下に動く
熱と固さ。
互いが繋がっている部分からは佐々木の腰の動きにあわせて、肉と蜜とが絡み合い擦れ合う音が微かに漏れ出てくる。
物思いに耽っていた杏子の意識はその都度途切れ、自然と柔らかい唇の隙間からは喘ぎと吐息と共に、佐々木を求める哀願の声が漏れ出ていた。
(次に向かうのは、彼と作っていく第2の花ホテル・・・)
既に杏子の中には、かつて2人の夫を喪った直後や、女主人として花ホテルを取り仕切り始めた当初に感じていた不安はない。
新たなるパートナーを得、彼と身も心も1つになることで、
次なる花ホテル実現に向けて希望と期待が宿るのみ。
「貴方・・・・・」
「杏子・・・・・」
つい口に出た言葉に佐々木が答えた時、2人は全身で相手の絶頂を共有していた。
そのまま男と繋がったままプールサイドに崩れ落ちるようにうつ伏せで倒れこみ、
忘我の縁で杏子がぼんやりと垣間見たもの。
それはまだ行ったこともない海岸の岸壁に佇む花ホテルの白い建物の姿だった――――――――
――――― 完 ――――――
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