そんな疲れたサラリーマンと女占い師のお話。
寒さも緩んできた年度末。
曇天で今夜は星どころか月すらも隠れていた。
会社のドアを閉め、カードをかざして最終退室処理を行った
連日の深夜にまで及ぶ残業で疲れ果てているのだ。
「はぁ……………………ホント疲れたなぁ」
エレベーターホールに向かう途中の窓ガラスに、疲れ切った自分の姿が映る。
180センチの長身も、今は猫背気味で縮こまって見えた。学生時代はそこそこ筋肉質だった身体も、ここ最近運動していないせいか重く感じる。先日も給湯室で女性社員から心配そうに声をかけられた。
「ちょっとやつれてませんか? イケメンが台無しですよ?」
心配そうな表情なだけにちょっと返答に困った。
「おっと」
時計を見る。
やはりというか終電の時刻はとっくに過ぎていた。
「タクシーもなぁ……」
深夜料金のタクシーなど高すぎてそうそう利用できない。
というか移動時間がもったいない。
その時間でもっと眠りたかった。身体が休息を求めているのだ。
特に最近は身体が重くて仕方がない。
「結局いつもの場所か」
駅周辺にもビジネスホテルはあるが予約を入れてないからこんな時間では
ネカフェでもいいけど環境がいいとはいえず、一番必要としてる質のいい睡眠など望めない。
なので深夜までの残業になった時、最近は繁華街のラブホテルを宿泊場所として利用することが多い。
男一人の場合はダメなところもあるが、大抵は大丈夫だし、値段と睡眠の質を考えると一番バランスがいい。
「……うん?」
繁華街と言えど深夜を回れば人通りはやはり少なくなる。
その人通りの減った深夜の路上に小さな机と椅子を置いて座っている女がいた。
路上占い師という奴だろうか?
紙でできた四角いランタンのフードには『占』の文字が書かれていて、フードの奥で揺らめく蝋燭の灯りがこんな繁華街では逆に幻想的だった。椅子に静かに座っているその占い師の女もそんな雰囲気とマッチしていて、繁華街には甚だ場違いな女に見えた。
実際、繁華街の喧騒から切り離されたかのように彼女の周りだけが奇妙に静まり返っている。
見られていることに気づいたのか、占い師の女の目が
暗がりの中でも輝くような黒い瞳だった。
「何か……悩みでもございますか?」
問いかけてくる彼女の声は小さかったのに妙に通りがよく、耳に心地よく響いた。
◇◇◇◇◇◇
手前の小さな椅子に座るように女占い師に勧められたので、
簡素な椅子だがクッションが置いてあったので座り心地は悪くない。
腰を落ち着け、改めて正面に座る女占い師に目をやり、そして
……決して美人ではない。
少し吊り目過ぎるし、切れ長ではあるが瞼は二重ではなく一重だ。
鼻梁は形よく通ってるが、それゆえに怜悧というかキツい感じがする。それでいて逆に唇はぽってりして肉感的な印象を受ける。
厖大がみたところ女はおそらく20代後半くらいだろうか。多分厖大と同年代だ。
年齢より若く見えるタイプでもないし可愛らしいという感じもしない。
だが、刺さった。
理由は厖大にも分からないが
彼女と向かい合って椅子に座っているだけなのに、まるで思春期の頃のように胸が高鳴ってしまう。
厖大だって子供ではない。
ちょっとした化粧で可愛いは作れるのは知ってるし、美人だって作れるのは知っている。
だが気が強そうでいて、どこか隙だらけで肉感的に見えるこの女占い師のようなチグハグなイメージの化粧をわざわざしたりしないだろう。
多分、素なんだろう。
第一印象に過ぎないが、彼女はそういうのをヨシとしないような性格をしているのだ。
実際、彼女の佇まいから伝わってくるのは実直さや誠実さといったものだった。
出会ってまだ一分も経っていないのに、厖大はますます彼女に強く惹かれていくのを自覚した。
「お手を」
その静かな言葉に、厖大はこの女が手相の占い師であることに気づいた。
厖大は別にオカルトにかぶれてなどいなかったので占いなど信じていない。
だがそういうオカルトを切って捨てる青臭い時期はずいぶん昔に通り過ぎて、社会経験をそれなりに積んだ今では、占いは一種の精神カウンセリングのようなものだと理解している。
占いはツールと言うか手段の一つであって、お客の精神的な安定や、お客が押して欲しがってる背中を押す……まあ、そのような役割があるのだと、一部の心が弱ってる人間に時には必要なものなのだ、と。
たとえば今の自分のように。
「これでいいのかな?」
厖大は言われるままに右手を差し出した。
「両手を出していただけますか?」
「え? 手相をみるのって両手が必要なんだ?」
「そうなんです。それで利き手はどちらですか?」
「右手です」
厖大は素直に答えた。
手相をみてもらうのは生まれて初めてだ。当然作法など知らない。
「手相をみられるのは初めてなんですね?」
「ええ、機会がなくて」
女占い師は少し微笑みながら厖大を見つめてきた。
「では手相について説明しながら見ていくようにいたしましょうか」
厖大は女占い師の声も好みだなと思いつつ頷いた。
◇◇◇◇◇◇
「親指と人差し指の間から始まって弧を描きながら手首に向かって伸びる皺があるでしょう。これが生命線です。そうですね、両手で見比べると分かりやすいかも」
厖大は言われるがままに自分の右手と左手の生命線を見比べてみた。
「あれ? 右手と左手で皺の感じが違うんですね」
手相に興味がなかったので厖大は両手の皺の比較など今までしたことがなかった。
改めてよく見れば両手で皺の感じが違う。
「そうなんです。よく使う利き手はその人の現在の生活の様子が反映されて、逆の利き手じゃない方はその人の持っていた素質や資質が反映されるんです。まあ絶対とは言い切れませんけどね」
「へぇ……」
「たとえば転職をされたりすると半年後には利き手の皺の様子が変わったりしますよ。それくらい日々のお仕事は手相に影響を与えます」
厖大は手相の解説を受けながらなるほどと思った。
「実は手相って人の生き方を蓄積して分析した統計学に近いんですよ。お薬の漢方もそうですけど、トライ&エラーの塊なんです」
少し自信あり気に微笑む彼女に厖大はまたも見惚れてしまった。
「では実際にみていきましょうか」
そう言うと、女占い師は厖大の手を取って手のひらの皺を指先でなぞりつつ解説を始めた。
「ほら、あなたの生命線は左手では力強く太い線で手首まで続いていますよね。これは健康で活力ある人生を過ごせる素質というか身体の持ち主であることを示しています」
「へー」
女占い師の言葉がなんだか褒めているようで厖大は単純にうれしく思った。
仕事で疲れた身体に少し活力が戻ったような気さえした。
それに女占い師が指先で触れている手のひらがなんだか心地よい。
「他の線はどんなのがあるんですか? 例えば……そう、運命線とか?」
厖大がそう言うと、女占い師は少し困ったように視線を彷徨わせた。
そして厖大の右手に視線を落とすと、なぜか少し顔を赤らめながら……ゆっくりと指先で確認するように手のひらの皺をなぞっていく。
その感触が妙に心地よくて、厖大は腰のあたりに少し熱が籠るのを感じた。
「運命線は……そうですね、中指の付け根に向かって伸びる線です。人生の転機や仕事運、社会的な成功などを示します。あなたの場合は……」
彼女はそこで言葉を切った。
ランタンの揺れる蝋燭の炎に照らされて彼女の顔が赤く見える。
その女占い師がちらりと厖大の顔を見る。
切れ長の目で見てくる彼女の視線を受け止めつつ、厖大は自分の顔が赤くなってないか心配した。
「そう……ですね。近いうちに大切な出会いがあるみたいですね。あなたの人生に大いに関わる……新しい恋人か、もしくは生涯を共にするほどの女性かも」
「……え?」
予想外の言葉に厖大は自分の手相をマジマジと見直した。
生涯を共にする女性?
もう何年も女っ気一つないこの俺に?
もしかして会社の女性社員の誰かだろうか?
気安く軽口を叩ける人もいるにはいる。
いや……新しい出会いだから来月入社してくる女性社員の誰かとか?
色々考えている間に女占い師が厖大の手相の解説を続けていた。
「──それで、右手の生命線が現在の…………あら?」
口に手を当ててしばらく考え込んだ女占い師が目をパチパチさせながら厖大の顔を覗き込んだ。
「もしかして、今お身体の調子が悪かったりします?」
「あ、すごい! そんなことも分かるんですね。そうなんです、ちょっと残業続きで」
「残業……?」
怪訝そうに眉を顰める女占い師を見て、厖大は話題を変えようと他の手相について尋ねた。
残業100時間超えとか不幸自慢のような生々しい話をこの女性としたくはなかったというのが本音だ。
「……これは単なる疲労ではありませんよ。何か……良くないものが貴方に憑いているようです」
女占い師は真剣な顔でそう言った。
真顔だった。
手相占いまでは厖大の許容範囲だったが、憑いてると言われるとラインオーバーだ。
一歩どころじゃなく二歩ほど超えている。
もろにオカルトだ。
口から否定の言葉が出かけたのを何とか止めた。
手相占いで占って貰っておいて、オカルトだと言い放ちかけた自分の滑稽さに内心苦笑いする。
それに、彼女の真剣な眼差しに何かあるのかもしれないと少しだけ思う自分がいる。
体調が悪いのは事実だ。ここ最近、身体が鉛のように重く気力も湧いてこない。
「……良くないもの、ですか?」
「ええ。……あの、もちろん対価は頂きますが、よろしければ私が処置いたしましょうか?」
女占い師はそう言うと、自分のすぐ背後を指差した。
そこは厖大が今夜の宿にしようとしていたラブホテルだった。
「え……?」
厖大は一瞬、言葉の意味を理解できなかった。
処置? ラブホテルで?
まさか。
頭の中で、点と点が線で結ばれる。
深夜の路上占い。怪しげな雰囲気。
身体の不調を言い当て、「良くないもの」がいると言い「処置」を申し出る。そして、その場所としてラブホテルを指差す。
あぁ……なるほど。
そういうことなのか、と。
厖大の中で目の前の女性に対して持っていたイメージが音を立てて崩れていく。
さっきまで感じていた清廉さや実直さのようなものはすべて自分の勝手な思い込みだったというわけだ。
彼女はこういう形で客を取る……いわゆる、そういう商売をしている女性だったのだ。
胸の奥が急速に冷えていくのを感じる。
だが、同時に別の感情がむくむくと鎌首をもたげてくるのを厖大は自覚していた。
この女性と身体の関係を持ちたい。
たとえそれが金銭によるものであっても、この独特な魅力を持つ女性に触れたいという欲求。
勝手に期待して、勝手に幻滅して……それでも抱きたいと。
結局、俺も大概だな。
自分の身勝手さを内心で自嘲しながら厖大は立ち上がった。夜風がコートの隙間から吹き込んでくる。外で「処置」とやらができるはずもないだろう。
「……お願いします」
厖大がそう言うと、女占い師は少し安堵したような、それでいてどこか複雑そうな表情を浮かべた。
◇◇◇◇◇◇
ラブホテルの手続きは、意外にも女占い師が手慣れた様子で済ませた。厖大はその後ろについていくだけだった。これも「仕事」の一部なのだろうかと、妙に冷静な自分がいる。
案内された部屋は広くはないが清潔で落ち着いた内装だった。ダブルベッドが部屋の大部分を占めている。
部屋に入るなり女占い師はくるりと厖大に向き直った。彼女の名前すらまだ聞いていないことに今更気づく。
「では……まず、服を全て脱いでいただけますか?」
やはりそう来るのか、と厖大は思った。もしかしたら自分の勘違いではないのかと彼女と一緒に部屋に入ってもまだどこかで諦めきれていなかった自分に驚く。
そしていざそう言われ緊張した。
女性を買うのは初めてだし、そもそも女性の前で裸になる経験など大学時代の元カノ以来だ。
「……わかった」
ぎこちなくジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めシャツのボタンを外していく。女占い師はベッドの端に腰掛け静かに厖大の様子を見ていた。その黒い瞳が何を考えているのか全く読めない。
下着一枚になり、最後にそれを脱ぐ段になって厖大は躊躇った。
しかし、ここまで来て引き返すわけにもいかない。
意を決して全て脱ぎ去り、女占い師に身体を向けると意外にも彼女は顔を赤らめた。
「ベッドに仰向けになってください」
言われるがままにベッドに横たわる。シーツのひんやりとした感触が妙に生々しく背中に伝わってくる。
女占い師は立ち上がると、ベッドに横たわっている厖大の身体に上半身を傾け手を伸ばしてきた。
冷たい指先が厖大の胸に触れる。
「──ッ!」
思わず変な声が出た。
女占い師の指がゆっくりと厖大の身体の上を滑っていく。
胸から腹へ、そして脇腹へ。まるで何かを探るように、慎重に、丁寧に。
こ、これが手順なのか?
女性を買った経験などない厖大にはこれがどういう流れなのか全く分からない。
ただ、女性の指が自分の裸の肌を撫でていく感覚は妙に背徳的で、それでいて興奮を煽ってくる。股間のモノが意思とは無関係に熱を持ち始めるのを感じた。
女占い師の指が下腹部へと近づいてくる。
焦らして煽るのが狙いなら大成功だ。
厖大のペニスは完全に臨戦態勢だ。
「────ッ!?」
自分の指先に集中していた女占い師がようやく厖大の厖大が目に入り、ビクッと息を飲む様子が厖大の視界に入る。
彼女の顔がみるみるうちに赤く染まっていく。
さっきまでの落ち着いた雰囲気はどこへやらものすごく動揺している。
そういうプレイの一環なんだろうか?
まるで初めて男の勃起を見た生娘みたいな反応だ。
だが厖大の厖大がさらに膨大した。
厖大は認めざるを得なかった。
このプレイというか彼女が演じてるシチュエーションは男をかなり煽る。
そして顔を真っ赤にした彼女が、厖大のビクビクと首を振っているペニスに恐る恐る触れた。
パッと手を離す。
胸に手を当てて深呼吸を繰り返し始めた。
「あの?」
さすがに不審過ぎるので声をかける。
女占い師は耳まで真っ赤にしたまま厖大のペニスをチラチラ見続けている。
だがやがて膨大に顔を向け、意を決したように……しかし声を震わせながらこう言った。
「あ、あの……その…………あなたのですね。
き、きんたま……!?
彼女の雰囲気からあまりにもかけ離れた単語に今度は厖大が固まった。
しかも彼女はその単語を口にしたことで恥ずかしさが極まったのか、赤くなったまま俯いてしまう。
なんだこの状況。
「……その、やっぱり……祓いますよね……?」
か細い声で、上目遣いに尋ねてくる。
顔を真っ赤に染めて上目遣いなのは厖大を煽っているのか?
だとしたら大成功だ。
ペニスに血液が盛大に流れ込んで大きさが1割増しだ。
だが悪霊? 金玉に?
意味が分からないが目の前の女性のあまりにも初心な反応と、恥じらいながら「祓う」という言葉のアンバランスさに、厖大の中で最後の疑念のようなものが霧散した。
……やはりそういう生娘プレイなのか。
迫真の演技に厖大の厖大がビクンっと跳ね上がる。
だが効果は絶大だ。厖大は込み上げてくる興奮をなんとか抑えつつ、努めて冷静に答えた。
「はい、是非! お願いします!」
厖大の言葉を聞いて、女占い師は眉をキリっとさせ決意を固めた表情を見せた。
しかしそれも束の間で、すぐに顔の赤みが増し、眉はへにゃっとなって視線を泳がせ始める。
この照れてるのって演技なんだよな。
相当な役者だ。
厖大がそんなことを考えていると、彼女はおもむろに自分の着ている服に手をかけ、ゆっくりと、しかし迷いのない手つきで服を脱ぎ始めた。
露わになった彼女の身体は、厖大の予想以上に華奢だった。
だが、細いながらも女性らしい丸みを帯びた曲線が薄暗い照明の下で艶めかしく浮かび上がる。
特に、豊かな乳房は服の上からでは想像できなかった大きさで、厖大は思わず息を飲んだ。
彼女は下着もすべて脱ぎ去ると厖大の視線を感じたのかわずかに身を震わせた。
その白い肌は緊張のためか、うっすらと赤みを帯びている。
「……では、始めます」
絞り出すような声でそう言うと、覚悟を決めた彼女はゆっくりと厖大の身体に跨ってきた。
しっとりとした柔らかな肌が厖大の腹に触れる。
数年ぶりの異性の肌に直接触れるその感触に、厖大の身体は正直に反応した。すでに十分に硬くなっていたペニスが次の展開を期待して自己主張を強める。
彼女は震える手で厖大のペニスを掴むと、ゆっくりと自分の股間の方へと導いていく。
その手つきは驚くほどぎこちなく慣れているようには到底見えなかった。
本当に……プレイなのか? まるで初めてみたいじゃないか。
疑念が再び頭をもたげた。
だが敏感な亀頭の先端に触れる女性の柔らかい割れ目とその奥の粘膜の熱さに厖大の意識がもっていかれる。
彼女の下腹部の翳りは驚くほど薄い。
まるで少女のような割れ目が丸見えだった。
そこに自分のペニスが突き刺さろうとしている。
「はぁ……」
興奮に熱い息を吐いた。
股間のペニスが待ちきれなくていきり勃っている。
「──ッん!!」
次の瞬間、彼女が腰を沈めた。
熱くぬめる粘膜で厖大の亀頭がたちまち包み込まれる。
「──ッ!?」
狭い!?
おまけにめちゃくちゃ締め付けてくる!
驚いている厖大の上から小さな呻き声が聞こえてきた。
彼女は眉を顰め、苦痛に耐えているかの表情を浮かべていた。
なのにゆっくりと、本当にゆっくりと、彼女は律儀に腰を降ろしてくる。
ギチギチに狭く、火傷しそうなほどに熱い肉襞がギリギリと厖大のものを締め付けてくる。
まるで初めてペニスを受け入れているような抵抗感。
この感触は明らかに初めてのものだった。
プレイなどではない。
この女性は今ここで、厖大に処女を捧げているのだ。
「ん……ふっ……」
彼女の腰が厖大の腰と完全に密着した。
彼女は深い溜息を洩らし、腰を震わせながら天井を仰ぎ見た。よく見たら肩が小刻みに震えている。
「あの……大丈夫ですか?」
声をかけられた彼女は潤んだ瞳で厖大を見つめた。
「だ、大丈夫です。続けます……よ。激しく動きますから、が、我慢してくださいね?」
そう言うと彼女はゆっくりと腰を上げ、厖大のペニスを引き抜き始めた。
「くぅ!」
加減も何もなく全力で締め付けてくる処女の膣穴に厖大のペニスが搾られる。
肉襞がカリ首に纏わりつきながら、一方で亀頭のエラが彼女の内側の粘膜をこそぎ落としていく。
刺激が強すぎる!
彼女の処女穴から亀頭の先端が抜ける寸前で再び振り下ろされた。
「おうっ!!」
想像していた以上の気持ち良さがペニスの根元から背中を駆け上がって来る。
そういえば射精なんて半年以上していなかった。
忙しすぎて自慰をする暇も性欲もなかった。
溜めすぎてた、俺。
ぎこちないながらも彼女が懸命に腰を上下に動かし始めた。
その度に、膣内の狭い肉襞が厖大のペニスを擦り上げ、締め付け搾り上げていく。
彼女が腰を上下に動かす度に強烈な快感が厖大の背中を駆け上がってくる。
「んんっ!」
彼女の苦痛を思うと罪悪感を感じなくもないが、それ以上にこのどこか背徳的な状況と彼女の処女穴の感触が厖大の理性を焼き切ろうとしていた。
ぱちゅんっ、ぱちゅん、ぱちゅんっ!
彼女の動きは徐々に、滑らかになっていった。
吐息も荒くなり、彼女の顔には苦痛とそしておそらくは初めて感じるであろう快感の色が混じり始めていた。
「あっ……んっ…………」
小さく漏れる声が、厖大の興奮をさらに煽った。
厖大は無我夢中で手を伸ばし、彼女の背中と豊かな乳房を支えるように抱き寄せた。
灼けてしまいそうなほど熱くぬめる処女穴で締め付けられ、亀頭の先端から根元まで擦り上げられて、快感の波が何度も押し寄せてくる。
こんなもの耐えられるわけがない。
限界はすぐに来た。
半年射精していなかったのだ。
ペニスが快感で焼ききれそうなほど気持ちいい。
「くっ、
厖大の叫びと共に精液が熱い奔流となって彼女の膣奥へと注ぎ込まれる。
「あぁっ!! 熱いのが、んんっ! 奥にぃいいいっ!!」
彼女は悲鳴を上げ、膣奥で厖大の亀頭にしがみ付いてきた。
ぎゅっぎゅっとカリ首を何度も締め上げ、左右にうねりながらペニスを搾りたてた。
亀頭の先端に密着して
「あぁあ、と、止まらない!?」
5分か、もしくは10分だろうか?
あり得ないほどの長さの射精がようやく終わると、力尽きたのか彼女はパタリ厖大の胸に顔を埋めるとその身を預けてきた。
ぐったりとした彼女が密着する部分がとても熱く感じる。
二人の荒い息遣いだけが静かな部屋に響いていた。
抱き合ったままでいると彼女の心臓の鼓動が厖大の胸に直接伝わってくる。
ゆっくりと興奮が冷めていく中で、厖大は奇妙な感覚に気づいた。
あれ……?
身体が、軽い!?
ここ数週間、ずっと感じていた鉛のような重さが嘘のように消え去っている。残業疲れが抜けたというレベルではない。
明らかに何かが違う。視界もクリアになったような気さえする。
「ん……」
腕の中で、彼女がゆっくりと身を起こした。
そして、まだ息が整わない様子ながらも、真剣な眼差しで自分の下腹部あたりを見つめると、右手の人差し指と中指を立て、複雑な印を結んだ。
「
凛とした声で呪文を唱えると、彼女は印を結んだ指先を、自らの腹部──おそらくは子宮のあたり──に突き立てるような仕草をした。
次の瞬間信じられない光景が厖大の目の前で繰り広げられた。
彼女の指先が触れた場所から、まるで黒い煙のような
それは不定形でざわざわと蠢き、禍々しい気配を放っていた。
「は……?」
厖大は呆然とその光景を見つめた。
夢でも見ているのか、もしくはハリウッド映画のSFXでも観させられているのか。
彼女は引きずり出した黒い靄を睨みつけると、今度は両手で別の印を結び、再び鋭く言い放つ。
「滅ッ!」
その言葉と共に黒い靄は一瞬で霧散し跡形もなく消え去った。
部屋には静寂が戻り、先ほどの出来事がまるで幻だったかのようだ。
彼女はふぅ、と深く息を吐くと、少し疲れたような、しかし安堵した表情で厖大に向き直った。
「安心してください。あなたに憑いていた悪霊は今完全に滅しました」
悪霊。
滅した。
その言葉と今しがた目の前で起こった超常現象。
そして、自分の身体から消えた倦怠感。
「え…………本物、だったの……?」
プレイなんかじゃなかった。
手相占いも体調不良の指摘も悪霊の話も、そしてこの行為も……全部、本物だったのだ。
厖大は目の前の女性、本物の陰陽師であろう彼女を改めて見つめた。
厖大の問いかけに、目の前の陰陽師はこくりと小さく頷いた。
だが、その問いかけの意味するところに気づいてプクっと頬を膨らませた。
「じゃあ、何だと思ってたんですか!?」
「あ、いや。今のはナシで、ごめん。ほんとごめん」
彼女の頬はまだ少し赤いままだったが、それ以上は追及してこなかった。
◇◇◇◇◇◇
「ええ、私は
夕莉は、先ほどまでの行為が金玉に憑いた悪霊を祓うための唯一の方法だったことを淡々と、しかし少し恥ずかしそうに説明した。
つまり、俺を助けるために、彼女は……処女を、捧げた。
プレイだと勘違いしていた自分が恥ずかしく、そして申し訳なかった。
同時に自分を救うためにそこまでしてくれた夕莉に対して、感謝とも違う、もっと強い感情が込み上げてくるのを感じていた。
だがなんとなく気まずくて、長い沈黙が続いた後、どちらからともなく服を着てラブホテルを出た。
夜明け前の冷たい空気が火照った頬に心地よかった。
夕莉が足早に去ろうとしたので厖大は慌てて引き留める。
「待って、夕莉さん!」
厖大は思わず彼女の腕を掴んでいた。夕莉は驚いて振り返る。
「あの……俺、対価を払ってません」
「え……? あ、そ、そうでしたね。あ、でも手持ちのお金じゃ絶対無理だと思いますし、そのお祓いって高いんです」
「大丈夫です、絶対払います!! だから会いましょう!」
やたら力説する厖大を見て夕莉は少し困ったように微笑み、膨大に耳打ちすると、今度こそ繁華街の人混みの中に消えていった。
◇◇◇◇◇◇
翌日、厖大は世界が変わったかのように感じていた。
まず身体が驚くほど軽い。ここ最近常に肩にのしかかっていたような重圧感が嘘のように消え、視界も思考もクリアだ。
ほとんど寝ていないのに長年溜まっていた疲労物質が一掃されたような爽快感さえある。
その効果は仕事にも現れた。
頭が冴え、普段なら時間のかかる作業もサクサクと片付いていく。周りの同僚からは「多磨さん、今日なんか調子良さそうですね」「いいことでもあったんですか?」などと声をかけられる始末だ。
定時を少し過ぎた頃、厖大は業務を終わらせ会社を飛び出した。
ATMでお金を下ろしてからすぐに繁華街へと足を向けた。
昨日と同じ場所。
夕方遅い時間。
人通りがこれから増えてくる時間帯。
そこだけ繁華街とはまるで雰囲気の違う静かな一角があった。
そこに彼女はいた。
昨日と同じように小さな机と椅子を置き、『占』のランタンを灯してどこかそわそわしながら座っていた。
「夕莉さん!」
厖大が声をかけると夕莉はびくりと肩を震わせた。こちらをちらりと見る。
その反応がなんだか小動物のようで厖大は思わず笑みがこぼれた。
「あ、あの……多磨さん。大声で名前を呼ばれるのはちょっと」
「やっぱり来てくれたんですね」
「え? いや、その、仕事ですから……」
慌てて言い訳する夕莉が可愛らしい。
そして厖大は封筒を手渡した。
対価だ。
だけど彼女は複雑そうな表情でそれを受け取り、しばらく悩んでからカバンに仕舞った。
「それでですね、デートのお誘いなんですが、次の日曜ってお暇ですか?」
「は?」
呆気にとられた夕莉の顔がこれまた可愛らしい。
20代後半の女性に可愛らしいとはちょっと言えないが、それはそれとしてとりあえず断られてしまった。
次の日の夕刻。繁華街の例の場所に行くと夕莉さんがいた。
「どうも、夕莉さん!」
「……なんでまた来るんですか」
「次の次の日曜日は空いてますか?」
断られてしまった。
次の日の夕刻。
繁華街のいつもの場所に行って夕莉さんの様子をしばらく眺める。
椅子に座ったままそわそわしている。
やはり声をかけねば不作法というもの。
「どうも、夕莉さん!」
「ひぅ!」
背後から近づいて声をかけた。
「それで次の次の次の日曜日は空いてますか?」
「あ、あの……多磨さん。……ど、どうしてそんなに毎日、グイグイくるんですか?」
その問いに、厖大は待ってましたとばかりに笑って返した。
「それは俺のセリフですよ、夕莉さん。貴女もどうして、僕が来るって分かってるのに、毎日ここで手相占いを続けてるんですか?」
「う……そ、それは仕事ですから」
「僕に会うのが嫌なら、場所を変えるとか、時間をずらすとか、やりようはいくらでもあるでしょう?」
「ぐ……」
図星だったのか、夕莉は言葉に詰まって顔を赤くする。その反応がまた可愛くて、厖大はさらに畳み掛けたくなった。
「ねえ、夕莉さん。一つ聞きたいんですけど」
「な、なんですか?」
「自分の手相って、自分で見ることできます?」
その質問に、夕莉は一瞬きょとんとした後、さらに顔を赤らめた。
「……で、できますけど?」
「じゃあ、見せてくださいよ。夕莉さんの手相」
「ええっ!? わ、私のなんて、見ても面白くもなんとも……」
「いいから、いいから」
強引に夕莉の左手を取る。彼女の手は小さくて、少し冷たかった。
厖大は夕莉の手のひらを覗き込みながら、以前彼女に教えてもらった知識を思い出すように尋ねた。
「ええと、これが生命線で、こっちが頭脳線……でしたっけ?」
「は、はい……そうですけど……」
夕莉は恥ずかしそうに俯きながらも、自分の手のひらに視線を落とす。
「それで、この……中指に向かってる線。運命線、でしたよね? これは、夕莉さんの場合、どういう意味があるんですか?」
厖大がそう尋ねると、夕莉は「う……」と唸って、ますます顔を赤くした。そして、蚊の鳴くような声で答える。
「その…………近日中に、ですね……」
「うんうん、近日中に?」
期待を込めて先を促す。夕莉は観念したように、小さな声で続けた。
「…………
その言葉を聞いた瞬間、厖大の心臓が大きく跳ねた。
「へぇ!? 奇遇ですね、僕もそうなんですよ! 先日、あなたにそう占ってもらいましたよね? もちろん、知ってますよね?」
畳み掛けるように言うと、夕莉は顔を真っ赤にして肯定するように小さく頷いた。
「ええ、まあ……し、知って、ます……」
厖大は夕莉の手を取り、彼女の顔を覗きこんだ。
赤くなっている顔を隠すために夕莉が明後日の方向を向く。
「それで、デートの話をしたいんですが、いいですか?」
「……はい」
夕莉の声は小さかったが、そこに喜びが込められているのを厖大は聞き取った。
「やった!」