※この作品はR-18です。

侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従   作:ドン・ドナシアン

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プロローグ
1   婚約破棄


「お持ちいたしました、ルシアン様」

 

 扉が音もなく開き、女の低い声が静かな礼式をまとって室内に落ちた。

 部屋にはいってきたのは、ルシアンの「部下」のソニアと侯爵家の使者である。

 普段は侍女の柔らかな装いをしているソニアだったが、この日はルシアンの命を受け、女従僕の役目を担っていた。

 

 ソニアが身にまとうのは、漆黒の詰襟コートと女性用に仕立てたスラックス。

 銀の細工を施した小さなボタンが光を鈍く返し、胸には白いストールが簡素にあしらわれている。細い腰には、魔道識別用の細帯がきっちりと締められていた。

 

 一方で侯爵家の使者は、仕立てられた紺のコートに金刺繍、白いシャツと黒のスラックスだ。

 侯爵家の使者の服装より、子爵家の家人のソニアの服装の方が、見るからに良質で金がかかっていそうだというのは面白い。

 

 磨き上げられたソニアの履いている革靴が、床に一歩ごとに静かな影を落とす。

 彼女は、まるで音すら従わせるかのように、盆を両手に掲げながら、ひとつひとつ歩み寄ってきた。

 

 さすがは、ソニアだとルシアンは思った。

 頬にかすかな熱の気配があり、呼吸にも抑えきれない甘い震えが混じっている。だが、それ以外には一分の隙もない。

 男装の麗人めいた美貌と、堂々とした仕草。

 彼女が実際は孤児院育ちの孤児だと、誰が想像できるだろうか。

 ルシアンは両手の指に、合わせて六個の指輪をしている。そのうちのひとつに軽く触れ、魔道を流した。

 

「あっ……」

 

 ソニアがルシアンの前に立った瞬間、小さく声を漏らしかけて、かすかに膝を折った。

 だが、すぐに姿勢を立て直して動揺を覆い隠す。

 後ろに控える侯爵家の使者に気づかれぬよう、わずかに視線だけでルシアンを睨みつけた。

 ルシアンは素知らぬ顔のまま、再び指輪に魔道を注ぐ。

 

「くっ……」

 

 声にはならなかったが、スラックスに包まれた太腿が微かに震えた。

 仕掛けは単純だ。

 ソニアの股間には、ルシアンの命令で装着された淫具──前と後ろ、それぞれにディルドが埋められている。さらに、敏感な陰核にも小枝のような突起が配され、前後の刺激に連動して振動が伝わるようになっているのだ。

 それらを制御するのは、ルシアンの指輪に込めた魔道である。魔力の流れに応じて、強さも蠕動も自在に操れる。

 

 ソニアは三歳年上。

 同じ孤児院で育った幼なじみだ。

 ルシアンが十歳で伯爵家に引き取られたとき、すでにふたりの関係は始まっていた。

 早熟だったルシアンの性衝動を、ソニアはすべて受け止めてきた。

 それは、伯爵家の養子となり、ソニアを無理に同行させてからも変わらなかった。

 いまでは、表向きは伯爵家からは独立した子爵となったルシアンと、筆頭侍女となったソニア──。

 

 あれから約二十年……。二人で支え合って生き延びた。

 立場は変われど、本質は何も変わらない。

 彼女の弱さも、感じやすい部位も、堪えられる限界も、すべて知っている。

 だからこそ、ルシアンは余裕を持って、指輪の悪戯を続けることができた。

 

「……こ、侯爵家からの書状です」

 

 ソニアがわずかに声を震わせながら、盆を差し出した。

 盆の上には一通の書状が載っている。

 封蝋には、ヴァランティーヌ侯爵家の紋章──金色の鷲が刻まれていた。

 

 後方に控えている使者は、ルシアンの動きと書状とを交互に見つめながら、わずかに身構えているようだった。

 ソニアの異変には気づいていない。あるいは、気づかないふりをしているのかもしれない。

 いずれにせよ、その表情には緊張と、軽い警戒が読み取れた。

 

 ルシアンは書状に手を伸ばした。

 左手の別の指輪を封蝋にかざすと、そこに込めた魔道が光を帯び、ぱんと弾けるように封が割れる。

 紙の口が静かに開いた。

 

 文面に目を走らせた瞬間、ルシアンはほんの僅か、息を吐いた。

 そこには──こう記されていた。

 

 

 “本状をもって、貴子爵閣下と、ヴァランティーヌ三女、セリーヌ=ヴァランティーヌとの婚約を白紙に戻すこと、ヴァランティーヌ侯爵家一同、正式にご通知申しあげる。

  ──アルマン=ド・ヴァランティーヌ”

 

 

 ルシアンは、書状から目を離さず、ほんの一拍だけ肩を竦めた。

 理由の記載はない。謝罪もない。時候の挨拶もなければ、言葉の礼もない。

 書かれているのは、ただ婚約を“白紙に戻す”という一文だけ。

 

 どこまでも、無礼だった。

 この一年、自身の商会から侯爵家に流れ続けた多額の資金──それによって立ち直った彼らの財政。

 そのすべてを踏みにじる一通の紙切れ。

 

 侯爵家がこの子爵家を、どれほど軽く見ているかがよくわかる。

 だが、ルシアンは感情を表には出さなかった。

 むしろ、使者の顔を穏やかに見返しながら、丁寧に口を開いた。

 

「承知したと閣下にお伝えを……。正式な返信は改めて送る」

 

「かしこまりました」

 

 使者は安堵の色を浮かべた。

 その頬に浮かぶわずかな侮蔑──見下すような微笑を、ルシアンは見逃さなかった。

 

 いくら爵位に差があるとはいえ、一方的な婚約破棄。

 怒りを見せないことで、ルシアンを下に見たのだろう。

 だが──それも構わない。

 この場では、怒る必要はない。

 いずれ、怒りに応じた代償を支払わせればいいだけのこと。

 ルシアンは鈴を鳴らし、扉の外に待機していた家人を呼び寄せる。

 

「ソニアは残れ」

 

 やってきた家人に使者の退出を任せると、ルシアンは静かにソニアへと声をかけた。

 使者が一礼して部屋を出ていく。その扉が閉じた瞬間──。

 ソニアがその場に崩れ落ちた。

 

「ひ、酷いわ、ルシアン……。こ、こんなところで、淫具を動かすなんて……」

 

 扉が閉まると同時に、ソニアはその場にしゃがみ込み、スラックスの股間を両手で押さえた。

 声は抗議の体だったが、目元に滲む涙と、震える太腿が示すのは──明らかに羞恥と快感の入り混じった陶酔。

 それは、彼女の二十年来の恋人のルシアンの嗜虐心をただ刺激するだけだ。

 ルシアンはゆっくりと立ち上がり、ソニアが持っていた盆を卓上に置く。

 

「でも、ばれなかったのは偉かったよ。ソニア姉ちゃん、ご褒美だ」

 

 そう言って、椅子に座り直してから、ルシアンは指輪に再び魔道を流し込む。

 

「おうっ」

 

 直後、ソニアの身体がびくりと震えた。後ろのディルドが蠕動を始めたのだ。

 ソニアの調教されたアナルが、即座に快感を拾い上げ、背筋が跳ねる。

 

「あっ、んあっ」

 

 押し殺した呻きが、天井に抜けるように漏れた。

 ソニアの身体は弓なりに反り返り、膝が床を擦った。

 さらに、前方のディルドも振動を開始させる。陰核に当たる突起が強く押し込まれ、ソニアの脚がぶるりと震えた。

 

「あっ……ああっ……あああ……。だ、だめぇ……」

 

 三点同時の責めに、ソニアの身体が悲鳴を上げていた。

 呼吸が乱れ、顔は朱に染まり、唇は潤み、目は焦点を失っている。

 

 だが──ルシアンは、寸前で動作を止めた。

 すべての振動が一斉に途絶える。

 

「あんっ」

 

 ソニアの身体から一気に力が抜け、がくりと崩れ落ちた。

 快楽の波がすぐには引かず、震えは残っている。

 

「……相変わらず、淫乱な身体だな。立つんだよ、ソニア姉ちゃん」

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

 ソニアは荒い息をするだけだ。

 ルシアンは苦笑した。

 

「一応は、子爵様と専属侍女の関係だ。僕の前で座ったままなんて、侍女失格だろう?」

 

 ソニアは呻きながら、ゆっくりと立ち上がった。

 スラックスの股間には、愛液が染み込み、明確な輪を描いている。

 ルシアンはその染みを見て、口角をわずかに上げた。

 それを指摘する必要すらなかった。支配の余韻は、視線ひとつで伝わる。

 

「まあ、いずれにしても、愚かなことだね」

 

 そう言いながら、ルシアンは改めて机の上の書状を取り上げ、文字を見返す。

 そこに記された「“三女”、セリーヌ=ヴァランティーヌ」という表現に、ルシアンはわずかに眉を動かす。

 

 しかし、実際、セリーヌは“四女”だ。

 だが侯爵家は、三女ジャンヌを存在しないものとして扱っているらしい。

 ジャンヌは美貌と武芸の持ち主で、父に逆らい騎士の道を選んだ変わり者。侯爵家からは勘当同然の扱いだと、以前から調べがついていた。

 そのジャンヌが、セリーヌにとって最も親しい姉であることも、ルシアンは知っていた。

 いずれにせよ、この一通の書状によって、侯爵家は自ら罠に足を踏み入れたも同然だった。

 

「……他家に嫁いだふたりの姉はともかく、三番目もセリーヌ嬢と一緒に責任を取ってもらうか」

 

 ルシアンは書状を灰皿の上に移すと、指輪の魔道回路にそっと触れた。

 次の瞬間、紙は静かに、しかし鮮やかに燃え尽き、黒い灰だけを残した。

 

「……まあ、仕方ないわね。しかも、白紙、か。随分と馬鹿にしたものよね」

 

 ソニアが口を開いた。声には怒気が込められていた。

 彼女もまた、ルシアンのために怒っていた。

 その事実が、わずかにルシアンの心を和らげる。

 

 侯爵家の思惑は明白だった。

 最初からルシアンを金づるとしか見ていなかった。爵位を買った売官貴族として蔑み、支援だけを搾取し、娘は別の名家へと嫁がせる。

 だが、彼らは知らない。

 ルシアンが、ただの子爵ではないことを。

 

「もちろん、仕返しはするよ」

 

 ルシアンは頷く。

 

「じゃあ、ヴァランティーヌ侯爵家に報復を」

 

「それと、僕の婚約者を“寝取った”ルネ=ベルモントかな……。順番に切り取っていこう。あっという間に没落するだろうけどね」

 

「寝取ったって……“魔合わせ”でしょう?」

 

 ソニアがくすりと笑った。

 それは、皮肉にも似た、呆れを含んだ微笑だった。

 

「──魔合わせ、なあ……」

 

 ルシアンは椅子に戻り、嘆息した。

 魔合わせというのは、高位貴族を主体に伝わる古い性慣習であり、つまりは、正式に婚姻をする前に、高位魔道者同士が受胎の反撥をしないことを確認する行為のことだ。

 要するに、まぐあいだ。

 高位魔道者同士だと、魔道が反撥し合ってうまく受胎しないことがあり、それが発生しないことを事前に検証するのそうだ。

 

「……いまでも純血派の家系では、正式な婚姻前にそれを“伝統”と称して行うというのは本当なのね。でも、正式な解消前にそれをするなんて、案外、あの子も慎みがないのね」

 

「親の命令に従っただけだろう。セリーヌ嬢はそういう娘だ」

 

 ルシアンは、結局一年間一度も会わせてもらえなかった十六歳の婚約者……いや、元婚約者のことを思い浮かべながら言った。

 

「……でも、理解できないわ。好きでもない相手と、ただ血統のために“そういうこと”をするなんて」

 

 ソニアが眉をひそめる。

 

「政略結婚というのは、そういうものだよ。──魔合わせを重視する連中は、純血は気にするが、純潔はそれほど気にしない。むしろ、平民の方が純潔を気にするくらいだ」

 

「でも、今なら薬で魔反撥なんて防げるでしょう?」

 

「そう。反撥を抑える薬なんて、新米の薬師でも調合できる。だが、魔道鑑定で父親も特定できるし、専門の魔道薬で避妊も受胎も自由自在。妊娠の失敗を恐れる必要なんてない。純潔を重視する理由もないということさ」

 

 ルシアンは指輪をくるくると弄びながら、呟くように言った。

 

「とにかく、レヴィニア財閥の力を使うわよね?」

 

 ソニアが尋ねる。

 ルシアンは短く頷いた。

 

「本気を出すまでもない。侯爵家も伯爵家も、僕の“手”に触れた時点で詰みだよ。いまや魔道結晶の流通は……」

 

 指が机の上の銀盆を軽く叩く。澄んだ音が、静かに響いた。

 

「……レヴィニア製でなければ、魔道具も兵器も、国家運営も成り立たない」

 

 かつて、魔道結晶──通称“魔晶石”は不安定な存在だった。

 出力や寿命にばらつきがあり、常に破損や暴走のリスクを孕んでいた。

 だから、小さな魔道具ひとつ使うにも、魔道による制御が必要で、魔道具は魔道を扱える貴族の独占だった。

 だが、その問題を解決したのが、ルシアンだ。

 粗悪な魔瘴石を高純度に安定的に精錬する技術を開発し、それを教会と組んで独占。

 

 その結果、生み出されたのが、周辺諸国すべてを巻き込んで拡大したレヴィニア巨大財閥の絶対的支配力だった。

 安定して良質なレヴィニア製の魔晶石は、たちまちに王国の主流になり、いまやレヴィニア製魔晶石が周辺国を含めた市場を独占している。

 それだけでなく、魔道制御が不要になったので、魔道具は魔道を持ってない平民層にも拡大することとなった。

 かつては、貴族が独占していた魔道具が、いまや、平民用の小さな商家でも扱っている。

 

 しかし、誰も、それを十年で成し遂げたレヴィニア財閥の長が誰なのか知らない。

 公表してないからだ。

 そして、その謎とされているレヴィニア財閥の総帥が、世間的には中級クラスの若き商会長と認識されているルシアンなのである。

 まだ、流通の世界では若い世代である二十代のルシアンがまさか世界を牛耳るレヴィニア財閥の総帥だというのは、まさに秘中の秘だ。

 

「……王国中の商会も、軍需も、魔道具職人も、みんな僕の精錬結晶に依存している。今さら、他に乗り換えるなんてできないさ」

 

「……侯爵家も、よくもまあ、ルシアンに喧嘩を売ったものね。度胸だけはあるのかしら」

 

 ソニアが小さく呆れたように言った。

 ルシアンは肩をすくめる。

 

「自分たちが、どれだけ脆いかも知らないのさ。……その程度だよ、彼らは」

 

「……でも、王家は? 潰す相手が上級貴族となれば、介入される危険もあるでしょう?」

 

 ソニアの問いに、ルシアンは表情を緩めた。

 その目には、確信に満ちた光が宿っている。

 

「大丈夫。王家は──というより、皇太子殿下は僕の友人だからな」

 

 それは誇張ではなかった。

 ルシアンが財閥の正体を明かしている数少ないの存在のひとりが皇太子だった。

 

「彼は表向きこそ貴族を重んじているけど、実のところ、社会の発展に寄与しない純血派のような存在を嫌ってる。感謝はしても、邪魔なんてしないさ。……いや、“邪魔しているふり”くらいはするかもしれないけどね」

 

 言いながら、ルシアンは小さく笑った。

 

「……ふふ、考えてみれば、ルシアンはすごいね。あたしと同じ孤児だったのに、いまや、王子様が友達なんて言える立派な人になったんだもの」

 

 ソニアが笑みを浮かべて言った。

 だが、その言葉に、ルシアンは首を横に振る。

 

「立派ではないよ。みんなと同じ孤児なのに、なぜか魔道の才能があった。それだけだ。運に恵まれた。モントレイユ伯爵家の養子になれたのも、そういう偶然だ」

 

「違うよ。魔道の力も、頭の良さも、誰より優れてた。だから選ばれた。……あたしは何もなかった。ただ、ルシアンに拾ってもらっただけの、何の価値もない孤児」

 

 言いながら、ソニアの視線は床へ落ちた。

 その肩がわずかに震えているのを、ルシアンは見逃さなかった。

 

「それだけじゃないだろう。……誰よりも淫乱で、誰よりも僕に従順な“性奴隷”だ。僕のお気に入りのね」

 

 ルシアンは椅子に座ったまま、手を軽く振る。

 

「ほら、手を背中で組むんだ。見えない手錠だ。絶対に、外すなよ」

 

 ソニアの顔が一気に紅潮した。

 だが、命じられるままに背中に手を回す。両手を背中で組んだ姿勢で、視線だけがルシアンを見ている。

 その従順さを確認しながら、ルシアンは座ったまま指輪に魔道を流した。

 ソニアのヴァギナに埋められたディルドが、静かに、蠢くように動き始める。

 

「あんっ……あっ……」

 

 抑えきれない甘い吐息が、ソニアの唇からこぼれた。

 膝がかすかに震え、足元がふらつく。

 

「座らないで。立ったまま堪えるんだ。勝手に達するのは、許してないよ」

 

 ルシアンは冷静に、命じるように言った。

 次に、前方のディルドの動きを止め、陰核に触れている突起だけに振動を集中させる。

 ソニアの腰が跳ねた。

 

「ひんっ、あっ、ああっ……。が、我慢できない……ああっ……」

 

 泣きそうな声だった。だが、ルシアンは手を止めない。

 

「こっちも好きなんだろう?」

 

 クリトリスの突起を震わせたまま、今度は後方──アナルのディルドに蠕動を加える。

 

「おんっ……」

 

 ソニアの背が弓なりに反った。身体が跳ね上がり、喉から洩れる声が震える。

 ルシアンはその動きと音とを冷静に観察しながら、後ろを止め、前のディルドに再び刺激を加える。

 

「ああっ……」

 

 絶頂寸前の快感に震えながら、ソニアの膝が折れかける。

 だが、ルシアンはまたしてもすべての振動を止めた。

 

 ソニアは悶えるように腰を揺らし、歯を食いしばって耐えている。

 絶頂には届かず、寸前で打ち切られる快楽の蓄積だけが、彼女の身体を熱く縛りつけているはずだ。

 

 そして、束の間だけ休ませ、ソニアの快楽の波がほんの少し落ちついたところで、また淫具を作動させる。

 

「はんっ」

 

 ソニアが弾けるように身体を悶えさせる。

 ルシアンは、しばらくのあいだ、指輪の魔道操作を繰り返した。

 前後のディルド、陰核の突起──それぞれを交互に、あるいは同時に。

 蠢き、振動し、止まり、また動く。

 

 ソニアの身体はすでに限界寸前だった。

 全身が汗ばんで震え、唇は濡れ、目は潤み切っている。

 だが、彼女は耐えていた。命じられている限り、最後の一線は越えない。

 

 そして──ルシアンはようやく、すべての淫具の振動を止めた。

 室内に、静けさが戻る。

 

「どうしたい、ソニア姉ちゃん?」

 

 ルシアンは椅子に腰を埋めたまま、指先で指輪の表面をなぞった。

 

「うう……、はあ、はあ……」

 

 しかし、ソニアはまだ喋れないみたいだ。

 必死に息を整えようとしている。

 

「自分で言うんだ。さもないと──また魔道の貞操帯で封印して、三日間はお預けにするよ。セリーヌ嬢の監禁準備に、それくらいはかかるだろうし。その間ずっと、淫具だけで我慢してもらおうか」

 

「うう……意地悪言わないで、ルシアン……おまんこしてよ……。ルシアンに……犯して欲しくて、たまらないの……」

 

 声は震えていた。切実さが滲み、懇願が含まれている。

 ルシアンは、ほんの少しの沈黙を置いたのち、ゆっくりと頷いた。

 

「だったら──まずは奉仕だな。上手にできたら、ご褒美をやろう」

 

 ズボンに手をかけ、下半身を露わにする。

 その動きに応じて、ソニアがひざまずく。

 背中で手を組んだまま、小さな口を精一杯に開き、ルシアンの一物にむしゃぶりついてきた。

 

 舌が這い、唇が締まり、喉の奥に沈み込んでいく。

 ごくりと音を立てるたび、ソニアの眼差しが恍惚と濡れていく。

 その姿に、ルシアンはわずかに目を細めた。

 

 支配と従順。命令と奉仕。羞恥と快楽。

 それらすべてが、この空間に、いま確かに存在している。

 

 王国を支配する財閥の長であることも、世界の物流を握っていることも──。侯爵家の婚約破棄も──。

 このひとときには、どうでもよかった。

 

 ルシアンが望んだのは、ただひとつ。

 自らの命令で、愛しき“従属者”が悦び、膝をつく姿──。

 その絶対の隷属の証だった。

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