侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従 作:ドン・ドナシアン
セリーヌは、クロエに導かれて、重く閉ざされた扉の奥へと足を踏み入れた。
空気は静まり返り、どこか澄みきっていて、それでいて異様に重い。
部屋の奥にはルシアンが椅子に腰を下ろしていた。
その彼の少し前には濃緋の敷布の上に、何かがぽつんと置かれている。
平たく、光を反射するように艶めいた陶器の皿──。
その存在が、いやに視線を引いた。しかし、なんのためのものかはわからない。
「来たか、セリーヌ嬢」
その一言が、部屋の空気を切り裂いた。
「は、はい……」
セリーヌの背筋が自然と伸びる。だがそれは令嬢としての矜持ではない。彼からもたらされる不可思議な威圧のようなものへの反射だった。
すると、クロエが背後から近づき、そっと外套に手をかける。
「……お脱ぎください、お嬢様」
声はいつも通り穏やかだった。
それでも、セリーヌの心は小さく揺れた。
「あっ、待って……」
ほんのわずか、拒みかけた──。だが、振り返る力が残っていなかった。
便意は、すでに切迫している。
腹の奥が圧迫され、意識の半分がそこに引きずられる。
そして前にいるルシアンのまなざしが、あまりにも無言のまま重い。
セリーヌは、クロエの手を拒めなかった。
抵抗という意志は、もはやほとんど剥がれ落ちていた。
クロエもまた、セリーヌの控えめな抗議を無視した。
外套が肩から滑り落ち、クロエにより足元に落とされる。
下には、何もつけていない。
汗と熱と、粘ついた愛液の感触が肌に貼りつき、冷たい空気が太腿をなでるたびに皮膚が粟立つようだった。
セリーヌは、レコルの淫具が根元を喰い込んでいる乳首とクリトリスが固く勃起し、便意に耐えることによって肌から噴き出る脂汗のほかに、股間から足首にまで伝わるほどの愛液が滴り落ちていることに気がついた。
思わず両腕で胸を、手で下腹部を覆った──。
「くっ……」
一方で、こうしているあいだも、限界を越えている便意がセリーヌを追い詰めている。必死にお尻の穴に力を入れる。決して緩めてはならない力だ。少しでも気を抜けば、その瞬間に崩壊することはわかっている。
乳房が震え、尻がきゅっとすぼまり、膝が揺れる。
脂汗はまるで水でも浴びたかのように、絶え間なく滴り落ちていく。
「隠すな──。セリーヌ嬢、その身体はもう自分のものではない。許されるのは──命じられたときだけだ。勝手に手を動かしてはいけない。いま、貴方の発情している身体を僕は愉しんでいる」
「わ、わたしは、身体を隠す自由もないのですか……」
「そうだな。羞恥は感じていい。だが、隠す自由は与えない。勝手に排泄をする自由もね。羞恥に震えながら、許されることを待つ。命令によって動き、苦しみを悦びと錯覚する。そこにこそ、不自由の中の幸福がある」
「……不自由の幸福」
「人は“従属することでしか得られない歓び”が、確かに存在するんだよ、セリーヌ嬢」
ルシアンのまるで、出来の悪い生徒に言い諭すかのような物言いに、彼女の中に残っていた“己”という輪郭が便意と羞恥と命令の狭間で、ゆっくりと溶けはじめていく。
そういうものなのだろうか……。
おそるおそる手を離した。
乳房が晒され、恥部が空気を撫でる。
クロエは何も言わず、横で静かに控えていた。
耐えられないような長い……あるいは短い時間が過ぎていく。
見られている。
命じられて、裸で立っている。
一方で、便意で腹の奥がねじれ、震え、悲鳴をあげていた。
今にも零れそうな圧迫が、腸を内から絞り上げる。
下腹が焼けるように熱く、汗は背中を伝い、太腿に貼りつくように流れていた。
──限界だった。
侯爵令嬢として生まれ、礼儀作法と教養に囲まれた日々……。
使用人がいて、誰もが自分に頭を下げた。
便意さえ、屋敷の奥で静かに済ませるのが当然だった。
それなのに、いまの自分は──
見られながら、晒されながら、苦悶に身を震わせている。
この苦しみは、明らかに“普通”ではなかった。
恥ずかしくて、苦しくて、情けなくて、泣き出したいのに──。
……なのに。
どうして……。
どうして、その苦しみが、どこか“甘い”と感じてしまったのか……。
力を入れるたび、震える肉が露わになるたび、“見られている”ことへの羞恥とともに、心の奥がほんの少し震えていた。
こんな……こと、あってはならないのに……。
セリーヌは自分の心に、驚きと恐怖を覚えた。
身体は確かに苦しんでいる。死んでしまいたいくらいに恥ずかしい。だが、心のどこかが、それを悦んでいる……。
そんな自分がいる。
羞恥も痛みも、命じられずになにもできない屈辱すら──。
ほんの一滴、快感に似た感情として滲んでいた。
わたしは……なにか、おかしくなってしまったのだろうか……?
だが、思考はもうままならない。
限界が、すべてをのみこんでいく。
「……お、お願いでございます……。どうか、ルシアン様……、もう……耐えることができません……。どうか、お許しを……。この“苦悶”より、解き放っていただけますよう……」
「はっきり言え。なにがしたい?」
ルシアンが静かに睨む。
セリーヌは腹の重みに震えながら、声をしぼり出した。
「……ルシアン様……どうか、この身に、お許しを……。耐えがたきものが、いまにも──」
「なにを、許して欲しいのかさっぱりとわからないな。貴方の口で、はっきりと言え。望みを偽るな。これは命令だ。命令には従え。婚約破棄の償いに、十日間の誓いをしたのを忘れるな」
その言葉に、思わず息が詰まった。
口にするなど、到底できない。だが──命令だ。従わねば……。
「わ、わたしは……この身に、とめ難き……不浄が……」
「まだだ。曖昧にするな。何を“したい”のか、言葉にしろ。さもなくば、許しはやらんぞ」
「……お腹が……限界でございます……だから……」
「だから、どうしたい? なにをする?」
「……わたくしは……その……排泄を……」
「言い換えろ。もっと正確にだ。排泄で出すものはなんだ? “なに”を出したいのか、その名を言え」
羞恥で顔が熱くなった。頭が真白になる。
でも、命じられた──逃げられない。
唇が、震えながら開く。
「……う……うん……」
だめだ、言えない。言ってはならない気がする。
でも、彼の目が、それを許さなかった。
「言え。自分が望んでいることを他人の言葉で誤魔化すな。貴方自身の声で、貴方自身の欲を語るんだ。恥を晒せ」
その瞬間、羞恥と快感の境が壊れた。
「……うんちが、したいのです……。どうか……お許しを……」
膝が震え、涙がひとすじ頬を伝った。
「わかった。よく言った。頑張ったな。許す……」
ルシアンが言った。
心の底からの安堵がわく。
やっと、この便意から解放される……。
すると、ルシアンがセリーヌたちをルシアンのあいだにある、敷布の上の皿を顎で指す。
「そこに準備してある。跨ぐがいい。僕の顔を見ながらするんだ」
一瞬、なにを言われたのか理解できなかった。
しかし、やっと言葉が頭に飲み込めたとき、自分の顔色が変わるのを感じた。
「ま、まさか。そこに置いてある皿のことを申しておられるのですか。そんなことできるわけがありません」
セリーヌの抗議にルシアンは鼻で笑い返す。
「心の中で拒んで構わない。いや──拒まねばならない。それが矜持ある者の、最後の尊厳だからな」
ルシアンは立ちあがり、静かに歩み寄ってきた。そして、皿の前に待ち構えるように立つ。
セリーヌは圧倒されるものを感じて、身体を竦ませてしまった。
「……だが、この場において、貴方には“拒絶する権利”はない。命令されれば、従うしかない。それが“躾”であり、“調教”というものだ。貴族令嬢の矜持にかけて、十日間は奴隷になることを誓ったのではないのか?」
ルシアンが挑発するように言った。
「さあ、お嬢様……」
クロエに背中を押される。
さすがに、躊躇する。
「まずは皿を跨げ。話はそれからだな。それとも、いつまでもそうやって、突っ立ってもいいぞ。羞恥と苦痛に喘ぐ貴方は……、とても美しい」
ルシアンがほんの少しだけ口の端をあげた。
もう余裕など存在しない。
腹の奥から、圧倒的な波が押し寄せてきていた。
それもまた、もはや痛みではなく──命令のようだった。
腸が捩じれ、背筋が痙攣し、喉奥に熱があがる。脂汗が裸身から滴り落ちる。
視界が白く滲む。
──もう、考えられない。
羞恥を守ろうとする理性も、貴族としての誇りも……。
なにひとつ、もう思考できない。
ただ、ルシアンの声だけが残っていた。
足が動いた。
自分で動かしているはずなのに、どこか他人のようだった。
早くは動けない。
セリーヌにできるのは、まるで幼児のような歩みで進むだけ。
皿へと向かう。
それが排泄の器だと、はっきりと認識した瞬間、心は激しく軋んだ。
けれど、とまれなかった。とまるという選択肢は、もう“命令されていなかった”。命令を拒む権利も与えられてない……。
近づきながら、いまからセリーヌが排泄しなければならない容器を改めて見る。
濃緋の敷布の上に、それは置かれている。
一見して皿──けれど、あまりにも大きく、平たく、重厚すぎる。
縁には金糸の唐草模様、中心には獣の浮彫。威圧感すら帯びた、“晒すための皿”。
しかも、陶ではなく、魔道土器──。
艶めく表面が、光を受けるたびに微かに脈打つように揺れる。
羞恥よりも先に、なぜか膝が震えた。
これは、祈りにも似た儀式なのだと直感した。
やっと、皿を跨ぐ位置に着いた。
もう少し……。
「うっ、くっ」
膝が敷布に沈む音がして、口から呻き声がこぼれた。しゃがむという行為はクリトリスのレコルをこれでもかと刺激するのだ。激痛のような甘美感と、これから晒さなければならない想像もできなかった恥辱がセリーヌを襲う。
熱い涙が、頬を伝って落ちた。
どうか……これが夢であれば……。
そう願う余裕さえ、次の瞬間には消えていた。
皿の上に完全に腰を落とす。
余裕はない……。
セリーヌは覚悟を決めて、肛門を緩めようとした……。しかし……。
「あっ」
後ろから手が伸び、すっと皿全体がさがったのだ。
びっくりして、慌ててお尻に力を入れ直す。
「……跨いだら、両膝は左右に水平になるほどに開いてください。ルシアン様から眼を逸らしてはなりません。そして、まだですよ。ルシアン様のご許可は、皿をお跨ぎになるまでです。排泄はルシアン様のお言葉がかかってからです。ご許可があれば、皿を下に入れて差し上げます」
クロエだ。
セリーヌは歯を喰いしばる。
覚悟を決めて、そのあとに我慢させられるのは、途方もない苦痛に感じた。
逆らえない……。
クロエがセリーヌの両膝に後ろから手を伸ばして、大きく開脚させる。
なんという浅ましい格好──。
あまりもの羞恥で意識が飛びそうだ。
その恥ずかしい姿をじっとルシアンが見下ろしている。
「……恥ずかしいです、せめて、見ないで……頂けませんか……」
「だめだ。これは“清めの儀”。本来はルーゼニアが教えるべきだったが……。よく覚えておけ、セリーヌ嬢。命じられることこそ、貴方の価値だ……。クロエ、皿を下に……」
クロエが後ろから皿を押して、セリーヌのお尻の真下に差し入れ直した。
「まだだ。そのまま動くなよ」
「ああ……」
まだ、許しは与えられないのか……。
セリーヌは、あまりもの苦悶に、眼を固く閉じて喉を思い切り仰け反らせた。
「つらいか、セリーヌ嬢?」
ルシアンが静かな口調で声をかける。
「つ、つらい……です。どうか……ご許可を……」
「排泄さえも、命令なしに許されない。そのうち、この苦しみを快感に思うようになる……。クロエ、ペドとして、セリーヌ嬢を任せる。セリーヌ嬢、クロエは貴方の侍女であるが、絶対服従だ。それが僕からの命令だ」
「かしこまりました」
「は、はい……」
眼をつぶって、排泄の許可をひたすら待ちながら、クロエに次いで返事をする。
そのときだった……。
──目の前で衣擦れの音がして、眼を開いた。
ルシアンがセリーヌに向かって屈み込んでいた。
そして、ルシアンの手が前からから這って、レコルを嵌められているクリトリスに触れてきたのだ。
仰天した。
「ひああっ、なにを──」
「だめですよ、お嬢様。お動きになっては……」
反射的に逃げようとした身体をクロエがくすくすと笑いながら後ろから押さえる。
いずれにしても、もう避けることはできなかった。
ルシアンの指が股間に触れた瞬間、途轍もない快感が衝撃となって襲いかかり、大きな痙攣とともにセリーヌは黄金色の汚物を噴出してしまったのだ。
「ひいいいいっ」
お尻からまずは汚水が噴流となって皿に落ちていく。
だが、ルシアンの愛撫は続いている。
また、セリーヌの排泄も続いている。
排泄をしながら愛撫をされる──。
想像もしたこともない恥辱にセリーヌは頭が真っ白になった。しかも、勢いを失わない汚物は皿に向かって、激しい噴出を続けている。
頭が真っ白になっていく。
一方で、ぼたぼたと固形物が皿に落ちていく。
感情が崩壊してセリーヌは号泣してしまった。
すると、今度はおしっこまで股間から飛び出した。愛撫をしているルシアンの手にかかり、部屋のあちこちに飛び散る。
「あああああっ」
なにがなんだかわからず、セリーヌは排泄を続けながら、泣きじゃくった。
「排泄をしながら愛撫をされると、多くの女が赤ん坊になったかのように泣く。面白いな。だが、快感だろう? これが恥に耐えた貴方への褒美だ」
ルシアンが笑い声をあげた。
そのルシアンの指にも、セリーヌが排泄する汚物がかかっているだろう。
だが、耐え続けた排泄はなかなか終わらない。
しかも、一気に快感が飛翔し、あっという間に臨界を突き抜けた。
「ひいいっ、い、いぐうう──。ル、ルシアン様、きょ、許可を──。お許可を──」
セリーヌは排泄をしながら全身を突っ張らせて叫んだ。許しなく絶頂してはならないという馬車の中での言葉が辛うじて頭に残っていたのだ。
「いくらでもいけ。セリュースによる排泄は、ただでさえ快感が伴うそうだ。豊かな性感を持つヴェールスの貴方がこの愛撫を我慢できるとは思わない」
ルシアンがクリトリスへの繊細な愛撫を続けながら言った。
許可を与えられた──。
セリーヌは、心からの安堵とともに、汚物を皿にぶちまけながら、身体をがくがくと震わせて、官能の桃源郷に向かって、泣き飛翔していった。
この世のものとは思えないほどの背徳感と幸福感に包まれて……。
まるで赤ん坊のように泣きながら……。
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