※この作品はR-18です。

侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従   作:ドン・ドナシアン

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11  オプセリカの開花

 セリーヌの意識が還ってきた瞬間、最初に感じたのは、どこか、遠くから漂ってくるような香りだった。

 ──なにか、焦げたような、熱を含んだ匂い……。

 息をするたび、わずかに喉の奥がくすぐられる。

 それは煙のようでいて、煤けてはいなかった。

 乾いた松の薪、くすぶる香木の残り香──そんな、火と静けさの混じった匂い。

 

 紅茶の香り……?

 葉の種類は……ラプサンスーチョン……?

 

 ……これ、は……?

 

 意識はまだ、夢と(うつつ)を淡く彷徨(さまよ)っている。

 そして、目を開ける前に、香りだけが彼女の世界を染めていく。

 

 視界がゆっくりと滲むように明るくなり、まぶたの向こうに、やわらかな光と天井の模様がぼんやりと浮かびあがる。

 やがて、セリーヌはゆっくりと目を開いた。

 天井は漆黒だったが、白い紋様が刻まれている。淡い琥珀を含んだような黒の天蓋に、細く彫られた蔦模様──。

 魔道が流れているのか、風もないのに流れ揺れるそれを、セリーヌは夢の続きかと思った。

 

 また、裸の肌に、なにかが触れていた。

 絹──?

 ぬるく冷たく、しっとりとまとわりつく感触。

 服のように纏っているのではない。誰かが寝かせられたセリーヌの身体にそっと載せたような重み……。

 けれど、指をわずかに動かすと、空気のように滑り落ちる。

 なにかを纏っている、というより、素肌の上に布がそっと載せられているだけのような……。

 その絹の感触が、眠っていた羞恥を呼び覚ます。

 セリーヌは、自分が床の絨毯の上に横たわった状態であることに気がついた。

 

 ……わたし……?

 

 そして、記憶の波が静かに押し寄せてくる。

 羞恥と快楽、排泄──。……わたしは……。

 ……そうだ、わたしは……。

 思い出してしまった。

 

 排泄──とルシアンの愛撫……。

 快感に揺られながら、身体が限界を超えて崩れていった瞬間──。

 抑えようとしても間に合わず、無様にはしたなく、あの場で汚物を撒き散らしながら、激しい絶頂とともに意識を失ってしまった自分を……。

 喉が詰まり、声にならぬ呻きが漏れる。

 涙が浮かぶわけでもないのに、視界が滲む。

 

 なんという醜態を……。

 

 あの最中──いや、正確にはその寸前──。

 ルシアンの指が恥部をなぞり、頭が一瞬で白くなるような衝撃を受けて……。

 

 ──快楽に溺れながら、排泄した。

 

 ──恥辱に震えながら、絶頂した。

 

 ──ルシアンに小尿どころか、噴出する汚物さえもかけてしまったと思う──。

 

 ──そして……気を失った。

 それが事実だった。

 ……だめ……思い出したくない……。

 

 あれは夢ではない。幻でもない。

 身体は、はっきりと覚えている。

 あのとき、足を震わせながら、腹から尻へと力が抜け、音を立てて解放された瞬間──

 汚物の感触が、熱が、音が、匂いが──すべて悦びの中に絡まっていた。

 

 ……最低……最悪……。

 自分が侯爵令嬢であるという誇りが、貴族として育てられてきた矜持が、その瞬間にすべて崩れ去っていた。

 

 だが──

 ……おかしい……。

 

 視線を巡らせたセリーヌは、違和感に気づいた。

 床にあったはずの、排泄を受けとめた銀の皿は消えていた。

 糞尿の飛び散ったはずの敷布も、どこにも痕跡がない。

 臭気も存在せず、身体にも、なにも残っていなかった。

 髪も、背中も、腿の間さえも──。

 なにひとつ、汚されてなどいない。

 すると、カップが受け皿に触れたかすかな音がした。

 

「目覚めたか、セリーヌ嬢」

 

 横たわったまま視線だけを向けると、部屋の奥側の椅子に座ったルシアンが紅茶の湯気越しにこちらを見下ろしていた。

 卓の傍らでは、クロエが静かに給仕をしている。

 クロエの制服は、いつもの学園のもの──整えられた紺のブレザーに、プリーツスカート。ただ一点、違っていたのは、胸元にきらめく黒い徽章だった。

 光沢のある漆黒の金属で中央には「双頭の蛇」が絡み合い、円環を(かたど)っている。双頭の一方の蛇の口は開かれ、もう一方の蛇は牙をむいて睨みを利かせているかのようだ。

 また、その中央には深紅の石で象られた“D”の文字……。

 

 ドミエンヌ……?

 その頭文字……?

 

 そうだ。ここは、ドミエンヌの館……。

 恥辱と悦楽の場所……。

 やっと、頭がはっきりと覚醒した。

 

「あっ、どうして……?」

 

 慌てて上体を起きあがらせる。

 

「あんっ」

 

 その瞬間、全身に走った甘い疼きに、セリーヌは思わず声を詰まらせた。

 わずかな身じろぎでさえ、身体を苛むくすぐりのような愛撫にかえてしまう両乳首とクリトリスの「レコル」だ。その刺激に、思わず身体が反応してしまったのである。

 すると、くすくすという笑い声がした。

 

「……お嬢様がレコルの感覚にお慣れになるには、少々お時間がかかるかもしれません」

 

 給仕の手をとめずに、クロエが淡々と告げる。

 

「確かに反応がいい。これまでに、多くの女性が館に身を寄せたが、これほど敏感な反応を見せるのは珍しいかもしれない」

 

 ルシアンだ。

 セリーヌは両手で身体を覆う布を握ったまま、顔を俯かせて小さく肩を震わせた。

 なにを言っているのか、理解できないわけではない。

 むしろ、火照り始めた身体が言葉の意味を正確に思い出してしまう。

 

「刺激に対して、あまりにも全身が素直すぎますから……。お嬢様には触れられただけで震える箇所が全身にございます」

 

「ふむ……」

 

 紅茶を口に運びながら、ルシアンが低く応じた。

 その声はあくまで穏やかで、たとえ話す内容がどれほど倒錯していようと、品位を失わなかった。

 

「……惜しいな。どうだ、セリーヌ嬢。まだ、十日後に侯爵令嬢へ戻るつもりか?」

 

「や、約束は十日です。まさか、それを覆すのですか──」

 

 セリーヌは思わず声を荒げてしまった。

 

「いや、約束は守る。ただ、貴女が望むなら、このままここで暮らしてもいいということだ。このドミエンスの館には、さまざまな人間がやってくる。なかには高貴な夫人もいる。定期的に訪れては、支配される享楽をここで味わい、現実の世界に戻っていく。貴方が望むなら、ここでの生活を保障しよう」

 

「……わたしは、十日後に戻ります」

 

「そうか。あなたの父君くらい、僕がそれらしく説得してやってもいい。婚約者の伯爵家にも、しかるべき“退場”の場を用意する……。貴女がそれを望むならば、ね」

 

 セリーヌは唇を噛みしめた。

 この館に来たときに交わされた約束。それを、必死に思い出して声を発する。

 

「……約束は……十日間だけです。卑劣で下劣な脅迫でしたが、約束を交わした以上、わたしはそれを守ります。ルシアン様も約束だけは守りになられますように……。それに、父は人の言葉に耳を貸すような人ではありません。無理です……それは」

 

「そうか。だが、ひとつだけ、覚えておくがいい」

 

 彼の前のテーブルからかちんと音が聞こえた。

 顔をあげる。

 ルシアンが指で紅茶の入ったカップを指で弾いた音だった。

 

「この館では、支配され調教を受ける者たちを“オプセリカ”と呼ぶ。そして、オプセリカに求められているのは、“望むこと”だけだ。その望みをどう実現させるか、どのように“形”にするかを決めるのは、命ずる側“ドミナ”の責務となる。オプセリカのあなたは、ただ欲望を口にするだけで言い。それが、オプセリカに許された唯一の“特権”だ」

 

「オプセリカ……」

 

 支配され調教を受ける者……。

 セリーヌは、オプセリカ……。

 

 そして、ルシアンは勿論、セリーヌの侍女であるはずのクロエもまた、支配する側の“ドミナ”なのだろう。

 おそらく、あのクロエの胸の徽章がその象徴に違いない。

 侯爵令嬢のセリーヌがオプセリカとして従属させられ、侍女のクロエがドミナとして、セリーヌを支配する……。

 

「……もっとも、“オプセリカ”は、常に束縛され、拘束され、調律される存在でもあるがね。求めたものを渡すか、渡さないかはドミナが決める。オプセリカの意思も欲望も、常に無視される」

 

 その言葉に、セリーヌは言葉を失った。

 望むだけでよい。けれど──自由にそれを得ることは許されていない。

 すべては、他人……支配者のドミナの支配の意志に委ねられる……。

 

 セリーヌの喉が震える。

 すると、椅子に腰掛けたまま、ルシアンがこつこつとテーブルを指で叩いた。

 大きな音ではなかったが、セリーヌはびくんと身体が反応してしまう。

 

「ところで、いつまで寝ている。起きたなら、立て」

 

 セリーヌは怯えにも似た羞恥の中で、膝に力を込めて震える足で立ち上がろうとする。

 

「布は置いてください。身体を隠してはいけません、お嬢様」

 

 すると、クロエが声をかけてきた。

 立ちあがろうとするとき、セルーヌが被せられていた絹の大きな布を持ったままだったからだ。

 仕方なく、手を離して立ちあがる。

 

 そして、反射的に両腕が動いた。

 ひとつは胸を隠し、もうひとつは股間を覆う。

 自分でも気づかぬまま、貴族の令嬢としての羞恥が無意識に身体を防御していた。

 

「非服従ですね」

 

 クロエの声が、鋭く、そして冷淡に響いた。

 次の瞬間、全身に衝撃が走った。

 セリーヌに嵌められている三個のレコルが、セリーヌの身体に電撃を貫かせたのだ。

 

「ひがああああっ」

 

 電撃の奔流が背骨を駆け上がり、腰を抜かすように全身が仰け反る。

 足元がもつれ、セリーヌは床に倒れ込んだ。身体が勝手に震え、涎と息が漏れる。

 

「あがあああっ、や、やめてえええ──」

 

 セリーヌは床でのたうち回りながら悲鳴をあげた。

 

「お嬢様。わたしは、お嬢様のペドです。わたしの言葉には絶対服従。お忘れですか? 羞恥を忘れてはなりませんが、羞恥を隠す自由はありません」

 

 クロエが給仕の位置から、セリーヌに向かって歩み寄ってくる。

 やっと電撃がとまり、セリーヌは脱力した。

 びりびりと肌を抜けた最後の感覚の残滓がじわじわと皮膚の奥にまで染み込んで、消えていく。

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

 セリーヌはあまりもの出来事にただ息を喘がせることしかできなかった。

 

「お嬢様、ルシアン様に、なんとご命令を受けましたか?」

 

 クロエがすぐ横に来ていた。

 けれど──セリーヌの身体はすぐには動けなかった。

 脚が震えて立てない……。

 喉がひくひくと痙攣して、息が吸えないのだ。

 心臓の鼓動だけが、耳の内側で激しく跳ねている。

 

 一方で、乳首は赤く腫れたように勃っていた。

 指一本触れられていないのに、電気が流れた感覚だけで張りつめたまま硬く、火照っている。

 股間も同じだ。

 秘部の奥に突き刺さるように響いた電撃の刺激が、快楽とは違う何か──恐怖の震えとなって、腹の内側に残っていた。

 怖ろしいほどの恐怖が全身を包んでいる。

 

「ひぎいいいい」

 

 すると、またも雷光のような衝撃が、秘所の奥を直撃した。

 

「あがああああっ、はががががが」

 

 膝が跳ね、腰が浮き、全身が弓のように反り返る。

 口から出るのは獣のような奇声だけだ。

 快感とも痛みともつかぬ震えが、脊髄を駆けあがり頭の奥を白く染めていく。

 下腹部が痙攣し、意識が弾けそうになる。

 そして……電撃が終わる。

 がくりと脱力した。

 

「お嬢様、不服従には懲罰です。そして、これが懲罰の電撃です。もう一度、命じます。立ちあがりなさい。身体を隠すことは許されません。これはペドとしての命令です」

 

 クロエがセリーヌを見下ろしながら言った。

 今度は恐怖が身体を動かす。

 よろける身体で必死に立ちあがる。

 両手は身体の横に置いた。

 

「よくできました。でも、これに加えて、清めの儀の際に、ルシアン様のお手による愛撫を受けながら、許可なく排泄された罰が残ってます。覚えておられますか?」

 

「えっ?」

 

 羞恥が鋭く脳を焼いたが、記憶はすぐに蘇る。

 そういえば……。

 

「いかなる状況であれ、命なくして排泄することは、重大な背信行為です。命に従えぬ者は、従う覚悟が欠けていたとみなされます」

 

 クロエは静かに一歩近づき、指の指輪に触れた。気がつかなかったが、それはいままでクロエが装着しているのを見たことがなかった魔道刻印のある指輪だった。

 セリーヌは自分の顔から血の気が引くのがわかった。

 

「や、やだっ──。やめて、クロエ──」

 

 涙声で懇願するセリーヌに、クロエは首を振った。

 

「これは懲罰です。お嬢様は、まだ“服従”という言葉の意味を理解していません。躾は恐怖とともに、身体で覚えて頂きます」

 

 そして。三回目の電撃がセリーヌの腹部から腿にかけて長く走った。

 

「──ああ、あああああ──」

 

 身体はまたもや床に崩れ落ち、全身が弓なりに反り返る。

 意識が黒く霞む。

 喉からは声にもならぬ悲鳴が漏れ、呼吸さえもままならない。

 

 やがて、電撃がやんだ。

 呼吸と震えだけが残り、大量の脂汗とととも床に転がるセリーヌの耳元で、クロエが柔らかく囁いた。

 

「……目を開けてください、お嬢様」

 

 その声は優しい。

 だが命令であった。

 眼を開く。

 視界は虚ろだ。涙でセリーヌに屈み込んでいるクロエの姿が歪んでいる。

 

「この館では、“できなかった”では済まされません。できなかったのは、従う意志と覚悟が足りなかったからとみなされます。それが、ドミエンヌの掟です。のちほど、しっかりとお教えいたします。全部で二十三箇条あります。明日の朝までに暗記していただきます。試験もしますからね。ひとつの間違いにつき、クリトリスへの電撃一回です」

 

 恐怖で身体が震えた。

 二十三個の掟……。

 明日の朝までに暗記…。

 

「大丈夫です……。聡明なお嬢様なら成し遂げられます……。さあ、立ちあがってください。命令です」

 

 クロエの口調は、やはり優しかった。

 だが、もはや、逆らうという意思は、セリーヌには存在しなかった。

 脚が震え、身体に力はまだ入らないが、なんとか立ちあがる。

 

「偉いですね、お嬢様……。ルシアン様、頑張りましたお嬢様へのご褒美をあげてよろしいでしょうか? これから、わたしとお嬢様の十日間が始まります。ルシアン様との契約のときに交わした権利のひとつを行使してよろしいでしょうか?」

 

 クロエがルシアンを見る。

 すると、ルシアンがほんの少しだけ口角をあげるのがわかった。

 

「お前は、セリーヌ嬢のペドだ。以後、彼女の躾については、僕の指示を仰ぐ必要はない。すべてを任せる。それが、お前との契約だったからな。必要とあれば、この館の掟すらも、お前の判断で曲げて構わない。……僕は、商人だ。契約だけは絶対に破らない。金と名誉が揺らいでも、契約を破ることだけはしないよ……。それが、僕の信条だ」

 

「ありがとうございます……。では、お嬢様、立ちあがるという命令をきけましたお嬢様に、ご褒美です」

 

 クロエがセリーヌの前に立ち、再び彼女の指にある指輪に触れる。

 びくりと恐怖が走ったが、襲ってきたのはレコルの甘い刺激だった。

 直接の外部からの振動の刺激と、魔道で加えられる内面からの快感の昂ぶりが全身を駆け抜ける。

 

「ひゃん」

 

 思わず甲高い声をあげてしまう。

 

「……ふふふ、さっきは電撃の懲罰によくお耐えになりました」

 

 クロエの声は静かだった。すると、クロエが裸のセリーヌの全身を両手で抱きしめてきた。

 一方で、そのあいだも三個のレコルはセリーヌに快感の波を次々に加えてくる。

 また、セリーヌを抱きしめるクロエの手が背中を這い回り、さらにお尻をさする。

 そして、お尻の穴の表面をくすぐるように指でなでてきた。

 

「ひんっ」

 

 貫いた快感の矢に膝が砕けそうになった。

 だが、必死に踏ん張る。

 立ったままでいろと命令を受けているからだ。

 

 セリーヌは、両脚を揃えて立ったまま、肩を震わせていた。

 膝はかすかに笑い、吐息は細く途切れている。けれど、倒れることは許されていない。

 命じられていないのだ──。

 

「頑張っていますね……。さすがはお嬢様です……。素晴らしいです……」

 

 その言葉と同時に、つるんとお尻の中に指が挿入されてきた。

 お尻の中を揉み動かされる。

 そして、レコルの振動も強さを増す。

 

「──ああっ、あああ」

 

 下腹部の芯から──。お尻の中から──、甘く鋭い痺れが突きあげる。

 心の内側からを優しくなぞる細い光のような刺激──。

 気持ちがいい──。

 

 クロエの手が動き続ける。

 優雅な所作で、今度はお尻に入っていない手で乳房の輪郭をなぞり、レコルが振動する乳首を包み込むように愛撫する。

 まるで楽器の調律のように、指が確かめるたびに、身体の奥が震えた。

 

「……ま……待って、そんなっ……、ああっ、あああ──」

 

 セリーヌは必死に声を絞った。

 あまりにも急激に、絶頂の感覚がせりあがってきたのだ。

 

「お嬢様、これはただの快楽ではありません。オプセリカとなられるお嬢様へのわたしの想いです。どうか、心して受け入れてください。動かないでください。命令です」

 

 クロエの声が優しく囁いた瞬間──。

 セリーヌの身体がぴたりととまった。

 「命令」なのだ……。動いてはならない……。

 脚は閉じたまま、膝を揃えたまま、腕は下げたまま……指先の動きでさえも懸命に自重する。

 まるで人形のように……。

 

 必死に静止する。

 ……けれど、身体の奥では、快感だけが勝手に高まっていく。

 

 クロエの指が今度はお尻から移動して秘部を撫でる。

 ちょっとだけ屈んだクロエが舌でセリーヌの乳首を転がす。

 

「あっ、ああっ、だ、だめえっ、いく、いきそうなの……。クロエ、い、いきそうっ──」

 

 息が浅くなり、腰が勝手に揺れそうになるのを必死に堪えた。

 「命令」なのだ。

 しかし、突きあがった快感は容赦なく、セリーヌを追い詰める。

 

「お嬢様、──おいきなさい。命令です」

 

 その言葉が、耳元に落ちたとき──。

 

「……ああああっ──」

 

 セリーヌの身体がびくびくと跳ねた。

 目が見開かれ、口から甘く濡れた喘ぎが漏れる。

 快感の大きな波が、一気に堰を切ったように押し寄せる。

 クロエに抱きしめられて、立ち尽くした姿勢のまま、セリーヌは絶頂を迎えていた。

 汗が首筋を伝い、腿を震わせ、胸が波打ち、膝がわずかに折れた。

 けれど──崩れ落ちることは許されない。

 命じられていないのだ──。

 セリーヌは必死に崩れ落ちることを耐えた。

 

「随分と純情になってきた。侯爵令嬢を辞める日も遠くなさそうだ」

 

 絶頂の余韻の残る眼で声の方向を見る。

 ルシアンが微笑んでいた。

 胸の奥で、なにかがゆっくりと崩れ落ちる音がした気がした。

 だが、それは恐怖ではなく、紛れもなく、甘く堕ちてゆく悦びの兆しに違いなかった。




《ご感想・高い評価をいただけますと、次の執筆の力になります。どうか応援よろしくお願いいたします。》

 また、拙作『異世界で淫魔師ハレム』がカドコミでコミカライズ中です。エロチックで迫力のあるイラストで製作して頂いています。合わせて応援お願いします。
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