侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従 作:ドン・ドナシアン
「えっ?」
セリーヌは、思わず息を飲んだ。
逞しい……。
貴族の男たちにありがちな虚飾や柔弱な白さとは違う。
引き締まった胸元、張った肩、腹筋の浮いた腹──。
だが、それ以上に彼女の目を釘付けにしたのは、その肌に刻まれた傷痕の数々だった。
肩の裏に、刃物で切られたような線──。
腰の脇に、焼け焦げたような痕──。
腹には、古い縫い跡らしき歪な線もある。
この人……。
セリーヌは思った。
何度も、命を賭けるような戦いをくぐってきた……。そんな傷……。
服に隠されていたそれらは、ルシアンがただの知略家でも、貴族でもないことを明確に示していた。
そして──。
視線が、下へと移る。
セリーヌは、はっとして目を逸らそうとした。
だが、遅かった。
男根は、すでに猛々しく勃ち上がっていた。
怒張し、
太く、硬く、熱を帯びたそのものを前にして──。
……す、すごい……。
縄に縛られ、寝台にお尻をついたままのセリーヌは、全身がかすかに震えた。
羞恥と恐怖と、そして、なぜか抗えぬ憧れにも似た感情がこみ上げてくる。
こんなものを、わたしは……。
これから、あの男根を受け入れるのだ……。
身体の奥に──。
意思など関係なく、命じられ、犯されるために……。
あれを一度は受け入れたことがあるという事実が信じられない。
セリーヌの喉がひくりと震えた。
だが、逃げられない。
そして、ルシアンが静かに寝台に上がってきた。
その動作には、いささかの逡巡もなかった。
裸のまま、縛られたセリーヌの正面に膝をつき、その姿を見下ろす。
天蓋の帳の内側にふたりきりの世界が閉じていくようだった。
次の瞬間……ルシアンの手が、セリーヌの乳房に触れた。
「──あっ」
軽く撫でられただけなのに、背筋に快感の衝撃が迸る。
わずかに中心へと手が滑り、乳房を包む縄筋の上からレコルが喰い込んでいる乳首に親指が押し当てられた。
「ふあぁ……んんっ」
セリーヌの身体が小さく跳ねた。
今度は、ルシアンの指が胸から股間側に移動する。
「ひいっ」
今度はレコルの嵌まるクリトリスを揺らされ、熱い衝撃が全身を貫く。
セリーヌは全身を突っ張らせた。
「……ほとんど、前戯は無用だな」
セリーヌの上のルシアンが笑ったような気がした。
すると、ルシアンがセリーヌの両腿を抱え、脚を大きく開かせる。
や……でも……もう……。
縄で抱き締められたままの肢体は汗ばんで、呼吸はすでに浅い。
焦らすこともなく、ルシアンはそのまま……セリーヌのの中へと……挿れた──。
「──んくくうっ」
驚くほどにあっさりと、ルシアンを受け入れたセリーヌの股間は余程に濡れていたようだ。
ルシアンは、一気に深く奥まで逞しい男根を貫いてきた。
淫靡な水音がセリーヌの股間で弾ける。
「ああああっ」
セリーヌの縄掛けされている上半身がのけ反った。
ルシアンがセリーヌを抱え、すぐに激しい抽送が始まる。
「あああっ、んああ……ああっ──」
セリーヌは、すぐに喘ぎを漏らし始めた。
縄が胸と腹を締めるたび、抽送のたびに全身が震え、快感が一点に集まっていく。
ルシアンの怒張は、セリーヌの気持ちのいい場所を的確に、これでもかと激しく突いてくる。
凄い──。
だめ、もう……あっ、ああ、いきそう……。
耐えきれず、言葉を漏らす。
「……い、いいっ、いっても……よ、よろしい、でしょうかあああ?」
抽送で息がとまりそうな状態の隙を突き、叫ぶように口にした。
「早いな……。許す」
その問いに、ルシアンは腰を前後させながら短く頷く。
その瞬間だった。
「──ああああっ」
セリーヌの背が大きく仰け反り、両手は後ろで縛られたまま、脚が震え、喉から甘い悲鳴が溢れた。
胸元の縄がきつく締まり、絶頂の震えを強調するように全身を包む。
寝台の上、汗と蜜と羞恥の中で、セリーヌは完全に支配された悦びの中へ堕ちていった。
「あ、あっ、んぁ──っ、あああああ……っ」
だが、セリーヌが達したところで、ルシアンの律動は終わらなかった。
たちまちに、セリーヌは再び絶頂近くまで引きあげられる。
「あっ、ああっ、ああっ」
必死に汗まみれの身体をくねらせ、悶えさせる。
ルシアンの動きは止まらない。
緩むことも、慰めることもなく、同じ律動で──否、それ以上に鋭く、深く、支配するように突き上げてくる。
縄で縛られた身体は、逃げ場を失い、すべての刺激を受け入れるしかなかった。
腕は背で高く縛られ、胸は突き出され、腰は拘束されたまま晒されている。
逃れられない、のだ。
そして──。
「や、やだっ、また、またあっ、いく、いっちゃう、いく──っ」
限界を超えた快感が、波のように押し寄せた。
脚が跳ね、喉が詰まり、目の奥が白く塗りつぶされる。
今度は、許しを乞う余裕もなかった。
だが──それで終わらない。
またしても、すぐに高見へと連れ戻される。
抽送は続く。
熱の塊が腹の奥を打ち、縄が胸元を締め上げ、快感が崩れた意識の中で形を変えながら、再び昇ってくる。
「あああっ、また……っ、また……いぐううっ、いくのおお──。い、いかせてくださいっ──」
「わかった。いけ」
またしても抽送を止めることなく、ルシアンの短い命令──。
セリーヌは三度目の絶頂をした。
そして……。
四度目……。
五度目……。
セリーヌの身体は、己の意志では止められない絶頂の連鎖に囚われていた。
これが……“犯される”ということか。
自分で望んだわけではない。
命じられて、縛られて、犯されて……。
それなのに──
どうして、こんなに……。
涙がにじむ。
でも、それは痛みでも後悔でもなく、混乱と甘い絶望のしずくだった。
……あのときの、“契り”とは……全然……違う……。
いきすぎて朦朧としてきた頭の奥に、ルネとの夜が蘇る。
──触れられ、名前を囁かれながら結ばれたあの夜──。
──約束された関係、形だけの愛、痛いだけの繋がり……。侯爵家の娘としての“婚約の証”の魔合わせのとき……。
けれど、いま……。
なにこれ……なに、この感覚……?
香茶サロンで辱めを受けたときも、たしかにおかしかった。
拘束され観客という他人の眼を浴びながら犯され、なぜか感じてしまった身体──。
その時は違うと思っていた。媚薬も使われていたし、錯覚だと──。
だがいまは違う。
ルシアンに命じられ、縛られ、抱かれ、自分の意志などどこにも介在していないのに……。
……どうして……?
意思を奪われることが、こんなにも甘く──。
快楽と支配に染まることが、こんなにも“心地よい”なんて……。
まるで、縄に酔ったように。
いえ──これはもう、“わたし”という存在が酔っているのだ。
快楽に、従属に、そして──ルシアンに──。
そして……。
「あああ、またああ、いきますうっ──っ」
セリーヌは身体を大きく仰け反らせながら叫んだ。
何度目の絶頂なのか、もはや数えられない。
絶頂の波が終わらぬまま、次の波が押し寄せてくるのだ。
胸を縛る縄が、熱く張った肌を締め、子宮の奥を打つ律動が、そのたびに痺れを誘発する。
身体の奥底──自分という意識のもっと下で、なにかが崩れていた。
こんなに何度も、何度も……。
自由などない。
選ぶことも拒むことも、望むことさえ許されず──ただ、命じられて抱かれる。
それなのに、いや、それだからこそ──。
心の奥が、疼き、濡れ、歓びに近いなにかを確かに感じている。
これが……わたしの……性癖……。
羞恥と屈辱の中に潜む甘美さを求める欲望……。
受虐癖……ヴェールス──。
侯爵令嬢として育てられた自分が……。
婚約者の手を受けた夜には知り得なかった感覚……。
契り合うという“優しい交わり”では、決して届かなかった場所──。
それが──
いま、ルシアンに与えられている。
なおも律動を止めぬルシアンの下で、セリーヌの身体はもう終わることのない小刻みな震えが続いている。
その時、寝台の端にクロエの気配が忍び寄ったのがかすかにわかった。
ルシアンが彼女に目をやり、口元をわずかに歪める。
「……クロエ。我慢できなくなったか?」
「はい。お嬢様の……あまりに愛らしいお姿に……」
クロエが囁きながら寝台へと手を添える。
その手がセリーヌの乳房を包む縄筋にふれる。
「ひあっ、あああ──っ、ク、クロエ……っ、いまは──」
セリーヌの口から懇願するような声が洩れる。
だが、ルシアンが愉しげに笑った。
「クロエ。少し手を貸してやれ。……君が愛し子にした“スレア”が、どれほど感じているか──僕にも見せてくれ」
「……はい。では、僭越ながら……」
ルシアンの怒張が一度抜かれて、少しだけ離れる。
代わりにクロエが服のまま寝台にあがり、汗まみれのセリーヌを抱きしめるようにした。
クロエの指が、縄の交差部にそっと添えられる。
そこは、胸を締め上げる縄が重なり、皮膚がわずかに紅潮している部分……。
優しく円を描くようになぞられ、縄の締め跡が疼きとともに蘇る。
「ああっ、やっ……そんな、あっ……クロエ、ルシアン様の前で……」
「うふふ。……恥ずかしがることはありません。乱れていいのですよ。それがオプセリカです。欲望に正直になっていいのです。そして、あたしも、あまりに可愛らしいお嬢様に欲情しております」
クロエの手が徐々に下に向かい……レコルの根元──クリトリスを覆う金具の下に指を差し込む。
微かに揺らされる。
それだけで、セリーヌの腰が跳ねた。
「は、ぁっ、あああ……っ、やめて……、もう、またああっ」
クロエの指先が、濡れた蜜をすくい上げるように撫でる。
「……お嬢様、とても熱い……。可愛い……。もっと見ていたい……」
クロエの手が縄で縛られている全身を這い回る。
どこをどんな風に触れられても、セリーヌは自分でも驚くほどの恥ずかしい反応をした。
「恥ずかしいですか? でも、可愛らしいですよ、お嬢様」
「や……あっ、ああっ……そんな、指……そこ……もうっ……」
快楽、羞恥、そして、支配される快感──。
そのすべてが重なり、セリーヌの目から涙がぼろぼろと零れ落ちる。
そして……ふと、ルシアンの声が低く響いた。
「……さて、まだ今日は終わらない……。今日の“調教”は、まだほんの序の口だ……。しかし、その身体が悦びで壊れる前に、せめて一度、終わらせてやろう……。クロエ、いいか?」
「はい」
クロエの愛撫は続いていたが、ルシアンが再びセリーヌの腰を抱える。
次の瞬間、ルシアンの男根がセリーヌを貫き、腰が突き上げられた。
奥へと、重く、深くへ──。
「……は、はああっ、ル……シアンさまああ──……」
縛られた身体で震えながら、最後の衝撃に耐える。
クロエの指はゆっくりと離れ、その余韻が残るまま、セリーヌの全身は快楽の頂へと導かれていった。
「……まだ、今日は終わらない……。今日の“調教”は、まだほんの序の口だ……。しかし、その身体が悦びで壊れる前に、せめて一度、終わらせてやろう」
ルシアンが抽送をしながら苦笑したと思った。
その直後──抽送の動きが変わった。
奥へと、重く、深く──。
「……は、はああっ、ル……シアンさまああ──……」
縛られた身体で震えながら、最後の衝撃に耐える。
その瞬間──。
──どくっ、と……。
身体の奥に熱が注がれた。
虚ろな眼を開くと、いきむようなルシアンが吐息とともに、小さく身体を震わせるのがわかった。
……ああ、いま、わたしの中に……。
それが、たまらなく嬉しかった。
ルシアンが、彼女の奥に、己を刻んでくれたということ。
支配し、命じ、犯しきったあとで、ようやく彼が“満たされた”という証──。
……よかったああ……。
ルシアンが少しは満足してくれて……。
縛られ、犯され、貶められたまま、セリーヌはその“射精”を、心の底からのご褒美のように感じていた。
まるで、それこそが──支配される者としての存在価値のようにさえ思えて……。
……わたしは……本当に、どうしてしまったのだろう……。
涙が頬を伝った。
でもそれは、悔しさではなかった。
「食事のときに会おう。クロエに館の案内を受けてから、準備をせよ。夕食は二時間後だ」
ルシアンがセリーヌの身体から離れる。
すると、すぐにクロエが寝台に横たわるセリーヌのもとに寄ってきた。
「……お嬢様、とても綺麗でした。愛されるたびに、貴女は少しずつ、本当の“セリーヌ様”になっていきますね。命じられて、従って、悦びに震える貴女を、わたしは……とても誇らしく思います……。どうか、これからも……わたしの誇りでいてくださいね」
クロエがそっと微笑み、セリーヌの額に口づけを落とした。
「ああ……クロエ……」
セリーヌはまだ整わない息を肩で続けながら、クロエの優しい笑みを見上げる。
従わされるほど、愛されている気がした。
それが、なにより怖くて、なにより……嬉しかった。
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