侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従 作:ドン・ドナシアン
──なに、これ……。
まぶたの裏に、じんわりとした熱。
視界は黒い。けれど、それは夢の中だからではない。
目隠し──昨夜のまま。まだ外されていない。
「……ん、っ……ふ……あ……」
唇が、開いた。
吐息が、洩れる。
そのことに、セリーヌは戸惑う。
──口枷が、外れている……?
次の瞬間だった。
乳首に、ぴり、と甘く鋭い刺激が走る。
続けざまに、股間の奥にも──焦らすような振動。
クリトリス、そして陰唇の裏側まで、何かが律動している。
「や……あ、っ、なに、これ……っ」
快感が、全身を舐めていく。
波のように。
まるで、乳房から脚の先まで、ぬるい水に沈められたように、身体が熱を帯びていく。
──動いてる。レコルが……全部……。
乳房にひとつずつ。
股間の奥にひとつ。
三点の装飾が、まるで脈を持った生き物のように、痙攣するような震えを断続的に送り込んでくる。
やめて……これ、強すぎる……。
それは“昨日のレコル”とは違っていた。
動いているのに“触れられている”ようには思えない。
ただ、神経の芯を直接揺さぶられているような──そんな感覚。
「んっ、く、や、やだ……やだぁっ」
身体が逃げようとしても、振動は止まらない。
目隠しの向こうに何があるのか分からないまま、快感だけが濃く、重くなっていく。
オルフェ……アルフェ……。
ふと、股の奥を意識した。
──ない。
あの硬さも、沈み込む圧も、まったくない。
昨夜、たしかに装着されたはずの異物が、どこにもない。
「っ……じゃあ、これ……レコル……?」
混乱した。
でも、止まってくれなかった。
「やっ、あ……あっ、だめっ、だめ……きちゃう……っ」
言葉よりも先に、快感が果てを越えた。
「あああっ、あああああっ……っ」
腰が跳ねた。
太腿がひとりでに震える。
唇が震え、喉がうまく動かない。
全身の感覚がいったん白く塗りつぶされる。
しばらくして、ようやく息を吸った。
「あっ……っ、は……はあ、はあ、はあ……」
理解も、納得も、まだ追いつかない。
ただ、果ててしまった事実と、なにに果てたのかもわからないまま、快感の余韻に包まれた自分自身だけが、そこに残っていた。
そのことが、どうしようもなく──恥ずかしかった。
絶頂の余韻が、まだ太腿の奥に残っていた。
汗ばむ肌が寝台に張りつき、胸元は上下に波を打っている。
──言葉にならない。
なにをされたのかもわからないまま、ただ身体だけが感じてしまった。
そのことに、セリーヌは、声を上げることすらできなかった。
そのとき──。
「……おはようございます、お嬢様」
すぐそばから、あまりにも穏やかな声が落ちてきた。
クロエだった。
その声音は、叱責でも賞賛でもない。
──ただ、すべてを見通した者の声。
「今朝は、お元気なお目覚めでしたね。よく眠られていたようで、安心いたしました」
そっと手がのび、セリーヌの目隠しの紐がほどかれる。
光が差し、セリーヌは瞳を細める。
次に、両手首と足首の留め具が外された。
「……レコルだけで、もう充分に“いける”ようになりましたね。お嬢様は、実に優秀です」
耳元にかかるその声は、ほめるでも、試すでもなく──ただ“事実の確認”だった。
けれど、それが逆に、セリーヌの羞恥心を焼いた。
「さて、今日は……学園に行きます」
その一言が、静かに突きつけられる。
セリーヌの喉が、乾いたように詰まった。
「まずは、身を清めてください。……ですが、その前に」
クロエは足元に目を落とす。
寝台の脇、すでに敷かれていた深皿──排泄のための、銀縁の大皿を、さも当然のように示した。
「排尿の許可を差しあげます。どうぞ、ここで」
「……え……、い、ま……っ?」
戸惑いと羞恥が、いっぺんに込み上げる。
けれど、クロエは一切揺らがずに続けた。
「命令ではありません。けれど、“従った”という事実は、ルシアン様へのご報告事項です」
──また、それだ。
命令ではない。
けれど、逃げ場もない。
セリーヌはゆっくりと脚を開き、震える膝で大皿の上に身を寄せた。
両手を寝台に突いて腰を浮かせ、顔を背けるようにして目を閉じる。
「……っ……う……」
そのとき──。
「気持ちを楽になさってください、お嬢様。少しだけ……お手伝いしますね」
クロエの指が、そっと太腿の付け根を撫でた。
陰核の先端にレコルがある。
その周辺を、クロエの指がやさしくなぞるだけで──
「や、んっ、あ……あっ……」
排尿の反射が、こみ上げてくる。
だが、愛撫によって膨らんだ快感の波がそれと混ざり、身体がわずかに跳ねた。
「だめ、あ……っ、だめ、そんな……ぁあ……っ」
ぴしゃり、と。
銀の皿の上に放たれる音。
けれど、そこに混じる小さな絶頂の予兆──。
セリーヌの身体は、吐息とともにわずかに弾け、排尿の最中にまた、小さく果てていた。
水音が跳ね、太腿に飛沫がかかる。
床に撒き散らされた放尿の酷さに、セリーヌは絶句するしかなかった。
「っ……あ……ご、ごめんなさい……っ……」
手で顔を覆い、項垂れるようにうずくまる。
羞恥と自己嫌悪が、胸の奥を締めつける。
クロエは無言で布を取り、肌に触れる。
冷たくもなく、優しすぎるその手つきが、かえって罪悪感を強くした。
「……よろしければ、そのまま浴室へどうぞ」
クロエは顔を覗きこむようにして、ふと一言だけ添えた。
「──ただし、三十分以内に、自慰で三度、絶頂すること。これは、命令です……。お嬢様なら、できますよね?」
逃げ場はなかった。
でも、それが“日常”になり始めている自分の心に──セリーヌは、気づきたくなかった。
脱衣場と浴槽側の隔てはない。もともと全裸なので、そのまま浴槽のある側に向かう。
セリーヌしかいない空間には湿気と水音だけがあった。
──三十分以内に、自慰で三度、果てること。命令……。
その言葉だけが、頭のなかに残っていた。
いまこの場にいるのは、自分ひとり──それでも……。
……恥ずかしい……。
誰にも見られていないのに、心臓が早鐘を打つ。
湯気が肌を撫で、火照った身体の輪郭を浮かび上がらせる。
指先が、自然と下腹部へと滑っていった。
「はぁ……っ、ん……」
湯に指を浸し、脇腹から腰、そして脚のつけ根へ──。
撫でるたび、皮膚がじんと熱を帯びてゆく。
──どうして、こんなに感じるの……。
乳首を軽くつまみながら、もう一方の手が秘所に触れる。
濡れていた。もうとっくに。
そのぬめりに戸惑う間もなく、快感の波が押し寄せ──
「あっ……ん、ああっ……!」
一度目の絶頂は、早すぎるほどだった。
なのに、身体は止まってくれない。
二度目は、腰を落とし、脚を開いた姿勢で。
膣口を円を描くように撫で、指先をわずかに沈ませる。
「ふ……く、んんっ……!」
腰が揺れ、吐息が漏れ、身体が波打つように震えた。
絶頂──指の中で、熱が弾けた。
──二回目。
そして三度目。
指を抜き、深呼吸を一つ。
だが、終わらせたくなかった。
まだ、命令は果たされていない。
指を揃え、慎重に膣内へと差し入れる。
浅く、そして少しずつ深く。
内部をなぞるたび、身体の奥が熱を持って応えてくる。
「ん……んんっ、あっ……だめ、もう……!」
快感が臓腑を震わせ、全身の感覚が一点に集まる。
濡れた太腿の間で、己の動きがいやらしく音を立てた。
羞恥が突き刺さる──それでも、止まれない。
「……いく……いっちゃう、の……」
最後は、ひときわ強く奥を擦り上げた瞬間だった。
腰が跳ね、声が洩れ、身体がびくびくと震えた。
これで、三度……。命令は完遂した……。
けれど、自分の中の「なにか」が、また一つ──戻らぬものとなった気がして。
セリーヌは、湯に沈めた指先を見つめたまま、しばらく動けなかった。
身体を洗い終え、湯を絞るようにして上がると、湯気の向こう──。
脱衣所の入口に、見覚えのある影が立っていた。
「……っ」
湯気の輪郭に沈んだその姿は、まるで最初からそこにいたかのようだった。
クロエ──。
その微笑は、やわらかく、けれどすべてを見透かすような色を宿している。
「お疲れさまでした、お嬢様。……素晴らしい自慰でしたね」
その一言に、セリーヌの心臓が跳ねた。
「あ……」
なにも答えられない。
恥ずかしさが、喉を塞ぐ。
見られていた──いや、それ以上に、すべてが知られていた。
「羞恥は、よい香りを生みます。いまのお嬢様は、とても清らかで、淫らで、愛らしい」
まるで詩でも詠むような声。
クロエは手を伸ばし、乾いた布でセリーヌの背をそっと包む。
セリーヌは俯いたまま、手拭いを取り、自分の身体を拭きはじめた。
羞恥に追い立てられるように──その手の動きは、やや乱暴だった。
乳首にまだ貼りついたレコルがぴくりと震えるたび、身体の奥がじんわりと熱を帯びる。
だが、声は洩らさない。
──さきほど、三度も果てた身体。
快感の残滓を残したまま、セリーヌは肌を拭いた。
拭き終え、用意された寝椅子に腰をかけたそのとき──。
クロエが静かに、衣桁にかかった一式を手に取った。
「では、お召し替えを」
そこにあったのは、淡いベージュと白を基調とした学園制服。
──けれど、そのスカートの丈を見た瞬間、セリーヌは言葉を失った。
「……えっ……」
短い。
あまりにも。
膝上どころか、太腿の半ば──いや、それ以上。
脚を揃えて立っても、股下が露わになるほどではないが、少しでも動けば、スカートの中が露わになりそうだ。
学園には優秀な平民の学生もいて、彼女たちの中では貴族令嬢たちのような足首までのスカートではなく、膝上丈のスカートが流行っていることは認識しているが、これはさらに短い。
しかも──その下に添えられていたのは、ただの黒いソックスと革靴だけ。
「……下着は、どこ……?」
震える声で訊ねると、クロエは微笑んだまま、静かに答えた。
「不要です。遮る布は、本日も“許可”されておりません。お忘れですか?」
「で、でも……こんなの、外に出たら……」
喉元まで込み上げた羞恥と抗議が言葉になる。
だが、クロエはたった一瞥──。
それだけでセリーヌの口を封じた。
「……禁止でごさいますので」
有無を言わせぬ響き。
その瞳に、従わなければならないと刻まれていた“立場”を、セリーヌは思い出させられる。
言葉を喉の奥に沈める。
いずれにしても、それを着せられる自分が──もう、昨日までの自分ではないのは明らかだ。
新しい朝が始まったのだと改めて自覚する。
制服に袖を通すと、すぐに素肌に布が擦れる感触が、乳首のレコル越しに鋭く伝わった。
スカートの丈は、やはり短すぎる。
脚を揃えても、動けば太腿の奥が覗くほど。
下着は与えられていない。股間には何の布もなく、ただスカートの内側に体温と羞恥がこもる。
クロエの手が、髪を梳き、櫛を通す。
胸元のリボンを整えながら、ささやくように囁いた。
「──準備は整いました。では、ルシアン様のもとへ。お呼びがかかっております。朝食をともにしたいとのことです」
「ルシアン様が?」
「どうぞ、お早く」
クロエに急かされて、昨夜も通った廊下を導かれて歩く。
すれ違う使用人は誰もいないはずなのに、セリーヌは視線を感じていた。
何も見られていないはずなのに、ひたすら「見られている気がしてならない」──。
スカートの裾を何度も直しながら、扉の前に立つ。
また、やはり途中で方向感覚が混乱し、気がつくと眼の前には昨夜の晩餐のときの扉があった。
「失礼いたします。セリーヌ=ド・ヴァランティーヌ嬢、入室いたします」
クロエの淡々とした声とともに、扉が開かれる。
そこには、変わらぬ姿勢で水の入っているらしいグラスを手にしたルシアンが、静かに微笑んでいた。
深紅と金の絨毯。銀の食器。整然と配置された朝食の膳。
セリーヌは足を進め、定められた椅子へと座る。
腰掛けるとき、椅子と身体のあいだにスカートを挟まないようにとクロエに言われ、スカートを拡げながら座った。椅子の座椅子のひんやりとした感触が熱を帯びているセリーヌの生尻を冷やす。
「くっ」
──座った瞬間、レコルが微少に震えた。
乳首をぴたりと締めつけ、陰核の奥が、熱を帯びて疼く。
「今日の朝食は、香草卵と林檎のジャムだそうだ。貴方のために取り寄せたものだよ、セリーヌ」
ルシアンの声は、まるで「どうでもいい雑談」のようだった。
だが、セリーヌの身体はすでに落ち着かない。
昨夜の晩餐のときと同じように、ルシアンの向かい合わせの席。クロエは…給仕の位置だ。
スプーンを取り、ジャムをすくう。
口元へ運んだとき──乳首のレコルが強く弾かれる。
「ん……っ」
甘さと快感が、同時に舌と神経を貫いた。
ひとくち食べるたび、レコルが一瞬激しく連動する。
さらに、飲み込むたびに、やはり股間のレコルがびくりと震え、内腿が震えた。
「味とは、“感じること”だ。君の味覚が、いまどこにあるか……それを教えてくれないか?」
ルシアンが、指輪に触れながら笑っていた。
やっぱり……。
そして、ルシアンは食事を口に運びながら、セリーヌの返事を明らかに“待って”いた。
セリーヌは言葉に詰まりながら、かろうじて呟く。
「……あ、あまくて……、でも、くるしくて……」
「そうだろう。快楽と食欲は、別のものじゃない。満たされながら、“従って”ごらん」
次の瞬間、レコルの振動が少しだけ強まった。
スプーンを口に運ぶと、舌の上と乳首が同時に痺れる。
膣の奥が疼いて、足先がぴくりと動く。
「……く……あ、あ……っ」
見られている。
命じられていないのに、感じてしまっている。
──そのことが、何よりも、恥ずかしかった。
クロエが背後に立ち、やわらかな声で囁く。
「お口をお拭きいたします、お嬢様」
布を口元に添えながら、背中から手が伸び──。
スカートの裾を通して、腰の奥の内腿に、そっと触れられた。
「くっ……」
吐息が洩れる。
快楽の残響が、果実よりも甘い刺激となって広がっていった。
「──あとで、“達してもよい時間”を設けよう。いまは、ただ味わって、覚えておくんだ。どう感じたか、どこで反応したか。ちなみに、貴方の淫らな食事姿は魔道具で記録している。昨夜の映像もある。清めの儀もね」
「えっ」
絶句した。
ずっと記録されていた?
いまも?
「貴方が契約を守る限り、記録は封印されるだろう。しかし、もしも契約を破れば、遠慮なく公開させてもらう。淫らなヴァランティーヌ侯爵家のご令嬢の姿としてね」
「そ、そんな、記録なんて──」
セリーヌは思わず抗議の声をあげた。
「どうして記録されてないと考えたのだ? 当然だろう。貴方の弱みを作る機会を逃すわけがない。愚かなことを抗議しないことだ。もっとも、最初に言ったように、僕は貴族である前に商人だ。契約は破らない。十日後にここを出ていくかは、貴方の自由意思に委ねる。そのときには、記録で脅迫するようなことはしない。ただ、貴方や侯爵家の弱みがここに残るのみだ」
セリーヌは唇を噛んだ。
契約は十日……。
逆らえない……。
どんなに耐えられないような命令でも……。
セリーヌは自覚した。
そして、セリーヌにできることは、ルシアンとの契約をセリーヌが守り、彼が契約を守ることを信じるしかない。
いま、できるのはそれだけ……。
「さあ、食事だ。僕は貴方が羞恥に乱れる姿を観察したい」
ルシアンの声は、飢えたものではなかった。
ただ、実験者のそれだった。
セリーヌは、スプーンを持つ手を震わせながら、ふたたび皿の上へと向けた。
命じられていないのに。
けれど──身体が、もう従うことに、抗えなくなっていた。
「クロエ、セリーヌの横に座るといい。そして、セリーヌが上の口で朝食をとるあいだ、存分に下の口を慰めてやってくれ」
「かしこまりました」
ルシアンの指示でクロエが横の椅子をぴたりと寄せて腰掛けた。
右手が伸びセリーヌのスカートの中に入り、指を膣の中に潜り込ませた。
二本……。
「うくっ、ク、クロエ……」
セリーヌは歯を喰い縛った。
クロエの指が中で淫らなに動き始めたのだ。
「食事をやめてはなりませんよ、お嬢様」
クロエが感情のこもってないような口調でささやく。
「そうだな。一切の抵抗は禁止だ。そして、達することもね」
ルシアンが愉しそうに笑いながら、またもや指輪に触れるのが見えた。
「あああっ」
セリーヌは思わず淫らな声をあげる。
身体の三個のレコルがまたもや振動を強くしたのだ。一斉に。
「ほら、手がとまってますよ」
クロエが愛撫を続けながら、セリーヌを叱った。